説明

画像形成装置

【課題】クラッチが連結/連結解除されることによりトルクが変化する際に、ステッピングモータの脱調や異音が発生するのを防止可能な画像形成装置を提供する
【解決手段】本発明の画像形成装置は、各装置の駆動を行うモータと、駆動対象の装置とモータとを連結するクラッチとを備えている。また、クラッチの連結/連結解除を指示する制御部を備えている。制御部は、クラッチの連結を行う連結タイミングから所定時間だけ早いタイミングを第一タイミングとし、第一タイミングが到来した時点で、モータに与える電流を増加させる。また、クラッチの連結解除を行う連結解除タイミングから所定時間だけ遅いタイミングを第二タイミングとし、第二タイミングが到来した時点で、前記モータに与える電流を低減させる。これにより、連結タイミングにおけるモータの脱調や異音の発生を回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものであり、特にステッピングモータ、クラッチ、及び搬送ローラを用いてシートの搬送を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コピー機、プリンタ、FAX等の画像形成装置においては、粉末の現像剤(以下、「トナー」という)が使用され、感光体ドラム等の像担持体上に形成された静電潜像をトナーによって可視化し、そのトナー像を記録媒体(以下、「シート」という)上に転写した後、定着処理を行うものが一般的である。
【0003】
上記のような画像形成装置として、ステッピングモータ、クラッチ、及び搬送ローラによりシートを搬送するシート搬送部を備えた、画像形成装置が実用化されている。ステッピングモータと搬送ローラとはクラッチにより連結可能であり、クラッチを連結/連結解除することにより、搬送ローラの動作をON/OFFすることが可能である。
【0004】
しかしながらステッピングモータはトルク変動に弱いという欠点がある。特にクラッチに連結されて使用される場合、クラッチが連結した時点でトルクが急激に増加するため、このタイミングで脱調もしくは異音が発生しやすくなるという問題があった。
【0005】
上記に関連して特許文献1には、シート搬送の補正制御を安定させ、ステッピングモータの回転角の補正を任意の分解能で行うことができる紙搬送装置が開示されている。この紙搬送装置は、シート搬送方向の挙動を検出する紙位置検出手段と、得られた検出値と基準値を比較することにより、シートの挙動を補正するようにステッピングモータの回転数の制御を行う補正制御手段とを備えている。そして補正制御手段の制御に応じてステッピングモータへの入力電流を可変させることより、ステッピングモータのトルク不足や脱調を回避している。
【特許文献1】特開2004−331293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1の画像形成装置は、紙位置検出手段や補正制御手段を新たに設ける必要があるため、装置構成や処理内容が複雑になるという問題があった。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するために考案されたものであり、その目的は、シート搬送部が備えるクラッチが連結/連結解除されることによりトルクが変化する際に、トルク不足に起因するステッピングモータの脱調や異音が発生するのを簡易な構成で防止できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の画像形成装置は、被駆動体の駆動を行うモータと、前記被駆動体及び前記モータを連結するクラッチとを備えた画像形成装置において、前記クラッチの連結を行うタイミングである連結タイミングから予め定められた時間だけ遡った時点を第一タイミングとし、前記第一タイミングにおいて前記モータに与える電流を増加させ、前記クラッチの連結解除を行うタイミングである連結解除タイミングから予め定められた時間が経過した時点を第二タイミングとし、前記第二タイミングにおいて前記モータに与える電流を低減させる制御部を備えたことを特徴としている。
【0009】
これによると、本発明の画像形成装置は、画像形成装置に含まれる被駆動体、例えば搬送ローラ等の駆動を行うモータと、被駆動体とモータとを連結するクラッチとを備えている。また、クラッチの連結/連結解除を指示する制御部を備えている。制御部は、クラッチの連結を行う連結タイミングから所定時間だけ早いタイミングを第一タイミングとし、第一タイミングが到来した時点で、モータに与える電流を増加させる。また、クラッチの連結解除を行う連結解除タイミングから所定時間だけ遅いタイミングを第二タイミングとし、第二タイミングが到来した時点で、前記モータに与える電流を低減させる。このようにクラッチの連結/連結解除タイミングと、電流の増加/低減タイミングとに間隔を設けることにより、連結タイミングにおけるモータの脱調や異音の発生を回避できる。また、状況に応じて電流を変化させるため、常に電流を一定に保つ場合と比較して消費電力の削減を図ることができる。
【0010】
また上記目的を達成するために本発明の画像形成装置は、前記モータに複数の前記クラッチが連結した構成を備え、前記クラッチの連結数に応じて前記モータが必要とする電流を示す管理情報を記録した記録媒体を備え、前記制御部が、前記記録媒体より読み出した前記管理情報に基づいて、前記モータに与える電流を決定することを特徴としている。
【0011】
これによると、本発明の画像形成装置は、モータに複数のクラッチが連結可能な構成をしている。そしてクラッチの連結数に応じてモータが必要とする電流を示す管理情報を、記録媒体に予め記録している。制御部は、クラッチの連結/連結解除を行う際に、クラッチの連結数と、記録媒体より読み出した管理情報とに基づいて、モータに与える電流量を決定する。このため、適切な電流をモータに与えることができる。
【0012】
また上記目的を達成するために本発明の画像形成装置は、前記記録媒体が、前記モータに連結されている前記クラッチの連結数に応じた前記第一タイミング及び前記第二タイミングを示すタイミング情報を記録しており、前記制御部が、前記記録媒体より読み出した前記タイミング情報が示すタイミングに基づいて、前記モータに与える電流の増加又は低減を行うことを特徴としている。
【0013】
これによると、本発明の画像形成装置が備える前記記録媒体は、モータに連結されているクラッチの連結数に応じた第一タイミング及び第二タイミングを示すタイミング情報を記録している。制御部は、記録媒体よりタイミング情報を読み出し、読み出したタイミング情報と、クラッチの連結数とを参照することにより各クラッチの連結タイミングを判別し、判別した連結タイミングの所定時間前後に、モータに与える電流の増加又は低減を行う。このため、例えば連結数が増えて必要となる電流が増加した場合に、通常よりも早いタイミングで電流の増加を行うことにより、トルク不足をより確実に回避できる。
【0014】
また上記目的を達成するために本発明の画像形成装置は、前記被駆動体が、シートの搬送を行う搬送ローラ、トナーの撹拌を行う撹拌スクリュー、又は排トナーの搬送を行う搬送スクリューであることを特徴としている。
【0015】
これによると、本発明の画像形成装置が備えるクラッチは、シートの搬送を行う搬送ローラ、トナーの撹拌を行う撹拌スクリュー、又は排トナーの搬送を行う搬送スクリューと、モータとを連結する。このため、上述の部材において、トルク不足による脱調や異音を防止できる。
【0016】
また上記目的を達成するために本発明の画像形成装置は、シートの搬送を行う搬送ローラと、シートの検出を行うシート検出部とを備え、制御部が、前記シート検出部がシートを検出した時間に基づき、前記搬送ローラに連結された前記クラッチに対する連結タイミング及び連結解除タイミングを決定することを特徴としている。
【0017】
これによると、本発明の画像形成装置は、シートの搬送を行う搬送ローラと、シートの検出を行うシート検出部とを備えている。制御部は、シート検出部がシートを検出した時間に基づき、搬送ローラに連結されているクラッチの制御タイミング、クラッチのON/OFFタイミングや、クラッチに与える電流の増加/低減タイミングを決定する。このため、既存の部材を用いて容易にタイミングを取得できる。
【0018】
また上記目的を達成するために本発明の画像形成装置は、前記モータが、ステッピングモータであることを特徴としている。
【0019】
これによると、本発明の画像形成装置は、モータとして、パルス信号を与えられることによって予め定められた単位で回転するステッピングモータを備えている。そしてこのステッピングモータにより、クラッチを介して、搬送ローラ等を駆動する。このように、トルク変動に弱いステッピングモータに本発明を適用することにより、トルク不足による脱調や異音の回避をより効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、シート搬送部が備えるクラッチが連結/連結解除することによりトルクが変化した際に、ステッピングモータの脱調や異音が発生するのを防止できる。また、ステッピングモータにかかるトルクの状況やクラッチ連結数に応じて電流量を変化させ、必要なだけの電流を流すことができる。このため、従来のように常に所定の電流を流している場合と比較して、消費電力の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照しつつ説明する。なお、ここで示す実施形態は一例であり、本発明はここに示す実施形態に限定されるものではない。
【0022】
〈1.装置の概略構成〉
ここで、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の概略を、図2を用いて説明する。図2は、画像形成装置1の概略構成を示す正面から見た模型的断面図である。
【0023】
図2に示すように、画像形成装置1は、箱形を呈した本体部4を有している。本体部4の上方には画像読取装置2が配され、その上面に載置された原稿搬送装置3が設けられている。
【0024】
ここではまず、原稿搬送装置3の概略構成について説明する。
【0025】
原稿搬送装置3は、本体部4に図2の紙面奥側を支点として、本体部4に開閉自在に取り付けられる。原稿搬送装置3は、一般にADF(Auto Document Feeder)と呼ばれている原稿自動送り装置がこれに相当する。原稿搬送装置3は、原稿載置トレイ10から原稿搬送路11に沿って原稿搬送方向上流側から順に、原稿載置トレイ10、原稿ピックアップローラ12、原稿搬送ローラ対13、原稿排出ローラ対14、原稿排出トレイ15等を備える。
【0026】
原稿載置トレイ10は、複数枚の原稿を載置できるようになっていて、原稿搬送路11上流端に接続される。原稿ピックアップローラ12は、原稿載置トレイ10上の原稿のうち、最上面の原稿に当接する位置に配されている。原稿読み取り、又は画像形成の実施指示が画像形成装置1に対してなされると、原稿ピックアップローラ12は原稿搬送路11に向けて原稿を送り出す。
【0027】
原稿搬送路11に送り出された原稿は、複数の原稿搬送ローラ対13やガイドに導かれつつ、原稿通過面51の上面を通過する。詳細は後述するが、この際に、画像読取装置2によって、原稿の読み取りがなされる。そして、読み取りが完了した原稿は、ガイドや原稿搬送ローラ対13、原稿排出ローラ対14を通過して、排出トレイ15に排出される。
【0028】
次に、本体部4の概略構成について説明する。
【0029】
本体部4は、その内部に、シート供給部20、シート搬送路24、画像形成部30、定着装置40、シート排出部43等を備えている。本体部4の中央上方位置には、排紙空間が設けられる。そこで、これらの構成をシートSの搬送経路に沿って説明する。なお、図2において、シートSの本体部4内での搬送経路を実線矢印で図示する。
【0030】
まず、シート供給部20は、画像形成部30に向けて、コピー用紙やOHPシート等のシートSを送り出すためのものであり、本体部4の最下部に設けられる。シート供給部20は、給紙カセット21、シート載置板22、給紙ローラ23を含むように構成される。
【0031】
給紙カセット21は、複数のシートSを積載し収容するためのものであって、箱型かつ上面が開放されていて、シート補給のため本体部4から引き出して脱着可能である。給紙カセット21内には、複数のシートSが載置されるシート載置板22が設けられる。又、給紙カセット21のシート搬送方向下流側上部(図2における左上方位置)に、給紙ローラ23が設けられる。
【0032】
シート搬送路24は、画像形成装置1内でシートSを搬送するためのものであり、シート供給部20から、画像形成部30、定着装置40を経て、シート排出部43までシートSを搬送する。そのため、シート搬送路24は、本体部4内を上下方向に貫くように形成される。そして、シート搬送路24は、搬送ローラ対25やシートSを案内するための複数のガイド板(不図示)で構成される。
【0033】
画像形成部30のシート搬送方向上流側の手前には、レジストローラ対26が設けられる。レジストローラ対26は、搬送されてきたシートSを一旦止め、シートSの適切な位置でトナー像が転写されるように、所定のタイミングと速度でシートSを画像形成部30に向けて送り出す。
【0034】
前記画像形成部30は、画像読取装置2が読み取った原稿や画像形成装置1に入力された画像データに基づき、形成すべき画像のトナー像を形成し、シートSに転写を行う。図2の例では、本体部4の中央よりやや左方の位置に配される。そして、画像形成部30は、像担持体としての感光体ドラム31、帯電装置32、露光装置33、現像装置34、転写ローラ36、クリーニング装置37等で構成されている。
【0035】
感光体ドラム31は、画像形成部30の略中央位置に配され、駆動装置(不図示)によって所定の方向(図2では時計方向)に回転駆動される。前記感光体ドラム31は例えば、アルミニウム製のドラムの外周面上に、正帯電のOPCやアモルファスシリコンの感光層を有するように構成される。そして、感光体ドラム31の周面上に静電潜像が形成された後、トナーが供給されトナー像が感光体ドラム31の周面上に形成される。
【0036】
帯電装置32は、図2の例では感光体ドラム31の右斜め上方に対向して配され、所定の電位で感光体ドラム31の周面を帯電させる。本実施形態では、帯電装置32としてコロナ帯電器を用いるが、感光体ドラム31表面を所定の電位に帯電できるものであれば、帯電ローラやブラシによる帯電装置32を用いてもよい。
【0037】
露光装置33は、図2の例では感光体ドラム31及び帯電装置32の右側方に配される。露光装置33は、一様に帯電された感光体ドラム31の周面に、形成すべき画像の画像データに基づき、光を感光体ドラム31に対し照射し、感光体ドラム31の周面を走査、露光する。これにより、感光体ドラム31の周面上に静電潜像が形成される。
【0038】
現像装置34は、図2の例では感光体ドラム31の下方に設けられ、トナーを収容するとともに、トナーを所定の電位に帯電させ、そのトナーを感光体ドラム31の周面上に形成された静電潜像に向けて供給する。現像装置34内には、トナー供給のため、感光体ドラム31と所定の隙間が設けられつつ対向する位置に現像ローラ35が設けられる。現像ローラ35は、周面にトナーを担持しつつ所定の方向に回転する。現像ローラ35に所定の電圧が印加されると、トナーは像担持体に向けて飛翔し、静電潜像の現像が行われる。
【0039】
転写ローラ36は、図2の例では感光体ドラム31の左斜め下方に回転可能に支持される。転写ローラ36は、感光体ドラム31上に形成されたトナー像をシートSに転写するためのものであり、感光体ドラム31に当接し、転写のためのニップを形成する。ニップにシートSが進入すると、転写ローラ36に感光体ドラム31の帯電極性と逆の極性の電圧が印加され、トナー像がシートSへ転写される。
【0040】
クリーニング装置37は、図2の例では感光体ドラム31の上方に配される。クリーニング装置37は、感光体ドラム31の周面上の残トナーや塵芥等を除去、回収するものである。本実施形態では、感光体ドラム31の軸線方向に伸びて形成されるブレードを感光体ドラム31に当接させている。ただし、感光体ドラム31を清掃可能であればローラを用いる形態でもよく、またブレードとローラを併用しても構わない。
【0041】
前記定着装置40は、シートSに転写されたトナー像を加圧、加熱してトナーを溶融し、シートSに固着させるためのものである。前記定着装置40は、加熱ローラ41、加圧ローラ42等で構成されている。加熱ローラ41内には発熱体(不図示)が内蔵されている。発熱体は、トナーを溶融できる温度にまで加熱ローラ41を暖める。加圧ローラ42は、例えばシリコンゴム等の弾性を有する材料を用いて形成されている。
【0042】
加熱ローラ41と加圧ローラ42とは、圧接されニップを形成している。このニップに、トナー像が転写されたシートSを進入させることにより、シートSへのトナーの定着が行われる。定着が完了したシートSは、排出部43へと搬送される。そして排出部43の側方に設けられた排出トレイ44に向けて、排出ローラ対45により排出される。
【0043】
次に、画像読取装置2の概略構成について説明する。
【0044】
図2に示すように、本実施形態における画像読取装置2は本体部4の上部に備え付けられた箱形の筐体50を有する。そして、画像読取装置2の上面には、図2の左方から、原稿通過面51、原稿搬送ガイド53、原稿載置面52が配される。
【0045】
前記原稿通過面51は、原稿搬送装置3により搬送される原稿が接触しつつ通過する面である。後述する読取ユニット60を原稿通過面51の下方に配置した状態で留めておき、原稿を通過させて原稿の読み取りを行う。一方、前記原稿載置面52は、原稿搬送装置3を使用できない場合、例えば書籍や新聞等を読み取る場合において、原稿搬送装置3を持ち上げた上で、読み取るべき原稿を下向きにして原稿を載置する面である。
【0046】
原稿載置面52における原稿の読み取りは、読取ユニット60を原稿載置面52の下方に配置して、ワイヤ54及び巻取ドラム55によりホームポジションから図2の右方向に水平に移動させて行う。これらの原稿通過面51及び原稿載置面52は、例えば、ガラスのような透光性の材料で一定の厚さを有する矩形状の板状部材により形成される。
【0047】
図2に示すように、原稿通過面51と原稿載置面52の間に挟み込まれるように、原稿搬送ガイド53が設けられる。原稿搬送ガイド53は、原稿通過面51を通過した原稿を、原稿排出ローラ対14に導き、原稿を斜め上方にガイドするための曲面を有する。
【0048】
画像読取装置2の筐体50内には、図2に示すように、ワイヤ54、巻取ドラム55、レンズ56、イメージセンサ57、読取ユニット60等が配される。
【0049】
読取ユニット60は、第1読取ユニット601と、第2読取ユニット602から構成される。なお、第1読取ユニット601は上方に、第2読取ユニット602は下方に配される。そして、この第1及び第2読取ユニット601、602にはワイヤ54が取り付けられ、ワイヤ54の他端が巻取ドラム55につながり、巻取ドラム55が回転することで、読取ユニット60が水平方向に移動する。なおワイヤ54及び巻取ドラム55は図示している数に限定されるものではなく、複数のものを組み合わせた構成でもよい。
【0050】
例えば、巻取ドラム55一つに対して、二本のワイヤ54が巻き付けられており、この二本のワイヤ54は、それぞれ長手方向において異なる方向に伸びるように(図2では簡略化のため一本のみ図示)巻取ドラム55に巻き付けられる。片側につき二本(計四本)のワイヤ54を複数のプーリ(不図示)によって適宜架け渡し、この二本のワイヤ54と第1読取ユニット601及び第2読取ユニット602を連結させる。そして、モータの正逆回転を制御すると、走査方向に沿って自在に読取ユニット60を移動させることができる。
【0051】
具体的な読み取り動作について説明すると、読取ユニット60の光源から発せられた光が、原稿載置面52上の原稿19に当たり、その反射光を第1読取ユニット601の第1ミラーが、読取ユニット60の走査方向の上流側に向けて反射する。そして、その光路上には、第2読取ユニット602の第2ミラーが配され、第2ミラーは下方に向けて、光を反射する。更に、その光路上には、第3ミラーが配され、第3ミラーは、走査方向下流側に向けて光を反射する。
【0052】
その後、反射光は、レンズ56に集光され、例えば、CCDのラインセンサ等から構成されるイメージセンサ57で結像され、画像濃度に応じた電気信号に変換される。そして、これらの走査動作を、読取ユニット60が最初に位置するホームポジションから順次原稿端部まで連続的に行うことで、原稿画像全体が読み取られ、原稿画像がデータ化される。
【0053】
シート検出部83(83a〜83c)は、シート搬送路24に存在するシートSが、シート検出部83に到達している場合、シート検出部83を通過中である場合、及びシートSが存在していない場合により、出力信号が切り替わる。制御部90(後述)は、この出力信号の切り替わりを監視することにより、シート搬送路24に存在するシートSの搬送状態や枚数を把握することができる。
【0054】
シート検出部83は、例えば赤外線センサや動態検知センサ等を用いて、シートSがシート検出部83を通過したことを検知する。例えば、分岐の無い搬送路において、シート検出部83(図2の83a)でシートが検知され、且つその下流のシート検出部83(図2の83b)でシートが検知されていない場合に、両シート検出部83の間にシートが存在すると判断することが可能である。
【0055】
搬送スクリュー84は、画像形成部30で発生する排トナーを排トナーボトル(不図示)まで送りこむための排出用部材である。図2に示す例では、クリーニング装置37の内部に設けられている。
【0056】
〈2.機能部の構成について〉
次に、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1が含む各装置の機能構成を、図1のブロック図を参照しつつ説明する。
【0057】
図1のブロック図に示すように、本実施形態の画像形成装置1は少なくとも、本体部4が備えるシート供給部20、画像形成部30、定着装置40、フラッシュメモリ71(=記録媒体)、電源部72、搬送部80、シート検出部83、及び制御部90と、画像読取装置2が備える読取ユニット60と、原稿搬送装置3が備える制御部100、フラッシュメモリ111、EEPROM112、原稿搬送部120、及び電源部130とを含むように構成されている。なお、図2において既に説明を行っている装置については、ここでは説明を省略する。
【0058】
フラッシュメモリ71は、本体部4が保持する各種データを一時的に記録する記録装置である。フラッシュメモリ71は、例えば制御部90が各装置の制御を行うために用いる制御用プログラムや、各種制御よって発生する処理データ、設定データ、ユーザデータ等を記録する役割を持つ。また本実施形態では、後述する管理情報やタイミング情報を記録するのに用いられる。
【0059】
電源部72は、本体部4備える各装置に対して駆動電圧を供給する。電源部72は、例えば外部の商用電源(不図示)や内部バッテリー(不図示)から電力を受けて、交流から直流への変換や整流、電圧調整等を行う。
【0060】
搬送部80は、シートSを画像形成部30まで移動させた後、シート排出部43へ排出するためのものである。搬送部80は図1に示す搬送路ローラ対25の他に、図2のシート搬送路24、レジストローラ対26、排出ローラ対45等を含む。また搬送部80は、これらのローラを回転駆動させるためのステッピングモータ81(=モータ)及びクラッチ82を含んでいる。
【0061】
ステッピングモータ81は、固定された電磁石と回転軸に取り付けられた磁石で構成されたモータである。電磁石に巻きつけられたコイルに電流を流して、磁化し磁力を発生させることにより、磁石を引きつけて回転する。本実施形態では、搬送ローラ対25等を駆動するのに用いられる。ステッピングモータ81は、ステッピングモータ81を制御するドライバ回路(不図示)に所定のパルスを送ることで、ドライバ回路から所定の電流を流すことが可能である。
【0062】
クラッチ82は、回転動力を伝達するための部材であり、入力軸と出力軸とを機械的、或いは電磁的に連結し、原動機軸の回転を被駆動軸に伝える。また一方、その連結を解除することにより、被駆動軸への回転を遮断することができる。本実施形態では、ステッピングモータ81と、搬送ローラ対25等のシート搬送部材とを連結するのに用いる。
【0063】
制御部90は、本体部4を構成する各装置の動作を制御することにより、印刷処理やシート搬送処理等を実施する。制御部90は、例えば複数のマイクロプロセッサから構成されている。また制御部90は、各装置、例えば画像形成装置1の制御やデータの計算、画像処理等を行う中枢部分となっている。また制御部90は、後述するモータ制御動作を行うことにより、ステッピングモータ81の脱調や異音を防止する機能を持つ。
【0064】
原稿搬送装置3が備える制御部100、フラッシュメモリ111、及び電源部130については、上述の制御部90、フラッシュメモリ71、及び電源部72とほぼ同一の構成であるため、ここでは説明を省略する。なお、電源部130に関しては、電源部72に接続されて電力供給を受ける形態であってもよい。
【0065】
原稿搬送部120は、原稿の載置及び搬送を行い、原稿を読取ユニット60の読取部まで移動させるものである。図2の例では、原稿載置トレイ10〜原稿排出トレイ15がこれに相当する。
【0066】
〈3.モータ制御動作について〉
ここで、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1のモータ制御動作について、図3のフロー図と、図5の模式図とを参照しつつ説明する。
【0067】
図3に示す処理フローは、画像形成装置1の電源が起動され、且つ印刷処理の開始等によりシート供給部20からシートSの搬送が開始されることにより開始される。シートSの搬送が開始されると、制御部90はステップS110において、搬送部80が含む各部について、クラッチ82の連結タイミングの所定時間前(=第一タイミング)であるかどうかの判定を行う。
【0068】
この判定の具体例を、図5を用いつつ説明する。図5では、上段がステッピングモータ81に与える電流値の変化を、下断がクラッチのON/OFF状態(=連結/連結解除状態)を示している。図5に示す例では、T2がクラッチの連結タイミングであり、T1がその所定時間前を示している。なお、クラッチ連結タイミングは部材毎に予め定められており、例えば搬送路24において所定のシート検出部83によりシートSが検出されてから所定時間後を連結タイミングとする。従って、上流側の部材から下流側の部材の順に連結タイミングが到来し、上流から下流にかけての搬送ローラが回転される。ただし両面印刷のための反転処理やスイッチバック処理等を行う場合はこの限りではない。
【0069】
ステップS110において、連結タイミングの所定時間前が到来した部材が存在しない場合、再びステップS110に移行する。連結タイミングの所定時間前が到来した部材が一つでも存在する場合、制御部90はステップS120において、該当する部材を駆動するステッピングモータ81に対し、与える電流値を増加させる。この結果、図5のT1に示すように、電流値がI1からI2に増加する。
【0070】
次に制御部90はステップS130において、連結タイミング(図5のT2)が到来することにより、クラッチ82の連結を行う。これにより、ステッピングモータ81から該当部在への動力の伝達が開始され、搬送ローラ対25等の駆動が行われる。この状態で所定時間が経過し、クラッチ82の連結解除タイミング(図5のT3)が到来すると、制御部90はクラッチ82の連結解除を行う。これにより、ステッピングモータ81から該当部在への動力の伝達が停止され、搬送ローラ対25等の駆動が停止される。
【0071】
次に制御部90はステップS140において、上記の連結解除タイミングから所定時間が経過したかどうかを判定する。所定時間を経過していない場合、ステップS140に再び移行する。所定時間を経過した場合、つまり図5に示すT4(=第二タイミング)が到来した場合、制御部90はステップS150において、ステッピングモータ81に対し、与える電流値を低減する。この結果、図5のT4に示すように、電流値がI2からI1に低減する。
【0072】
次に制御部90はステップS160において、シートSの搬送処理が完了したかどうかの判定を行う。具体的には例えば、シート搬送路24に供給されたシートの全てが、シート排出部43の近傍に設けられたシート検出部83により検知された場合に、搬送処理が完了したとみなす。搬送処理が完了した場合、本処理を終了する。搬送処理が完了していない場合、ステップS110に再び移行する。
【0073】
以上に説明した本実施形態によると、クラッチ82が連結/連結解除することによりトルクが変動した際に、ステッピングモータ81の脱調や異音が発生するのを防止できる。また、クラッチ82が連結/連結解除するタイミングに基づいて電流量を変化させるため、常に所定の電流を流している場合と比較して、省電力化を図ることができる。
【0074】
[その他の実施の形態]
以上、好ましい実施の形態及び実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。
【0075】
従って本発明は、以下の形態にも適用可能である。
(A)本実施形態では、本発明の実施対象としてコピー機1を例に説明を行っているが、上記以外の画像読取装置において本発明を実施したとして、同様の効果が達成される。例えば、スキャナ装置、複合機、FAX装置等の画像読取装置において実施することが可能である。また、後処理装置等のオプション装置において実施することも可能である。
【0076】
(B)本実施形態では、本発明のシート搬送動作に関連する処理が、マイクロプロセッサ等の演算処理装置上でプログラムを実行することにより実現されているが、各処理が複数の回路により実施される形態でもよい。
【0077】
(C)本実施形態では、ステッピングモータ81に連結されるクラッチ82が一つである形態を例に説明したが、連結されるクラッチ82が複数である場合に、連結数に応じて制御内容を変える形態でもよい。例えば、0.2Aを必要とするクラッチ82aと、0.3Aを必要とするクラッチ82bが連結されていたとする。これらのクラッチ82に個別に電流を与える場合は0.2A、もしくは0.3Aが必要であるが、同時に電流を与える場合は0.5Aが必要となり、電流値が変化する。従って、連結状態に応じて必要とされる電流値を示した管理情報を、フラッシュメモリ71に記録しておき、図4に示すステップS105のタイミングで読み出して参照する。なおこの管理情報は、予め製品生産時等において行われる各種調整結果等に基づいて算出され、記録されている。
【0078】
(D)上記に関連して、クラッチ82の連結数が増加し、必要となる電流値が増加した場合に、電流の制御タイミング(=電流の増加/低減タイミング)を変更する形態でもよい。例えば図5に示す例では、クラッチ82の連結数や電流値が上昇するのに従い、T1のタイミングを早めるように変更する。なお、連結数に応じたタイミングの変更量については、予め製品生産時等において行われる各種調整結果等に基づいて算出され、タイミング情報としてフラッシュメモリ71等に記録されているものとする。
【0079】
(E)本実施形態では、クラッチ82によりステッピングモータ81に接続される被駆動体として搬送ローラ対を例に説明を行っているが、これ以外の被駆動体の駆動を行う場合において、本発明のモータ制御動作を用いる形態でもよい。例えば、トナーの撹拌を行う撹拌スクリュー85(図2)や、感光体ドラム31、又は搬送スクリュー84を駆動するのに用いることが可能である。
【0080】
(F)本実施形態では、クラッチ82に接続されるモータとしてステッピングモータ81を例に説明を行っているが、これ以外のモータ、例えばブラシレスDCモータ等を用いる形態でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の画像形成装置の概略構成を示す正面から見た断面図である。
【図3】本発明のモータ制御処理の処理フローを示すフロー図である。
【図4】その他の実施形態におけるモータ制御処理の処理フローを示すフロー図である。
【図5】電流値の変化とクラッチの連結/連結解除タイミングとを示した模式図である。
【符号の説明】
【0082】
1 コピー機(画像形成装置)
2 画像読取装置
25 搬送ローラ対(被駆動体)
71 フラッシュメモリ(記録媒体)
81 ステッピングモータ(モータ)
82 クラッチ
83 シート検出部
84 搬送スクリュー
85 撹拌スクリュー
90 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動体の駆動を行うモータと、前記被駆動体及び前記モータを連結するクラッチとを備えた画像形成装置において、
前記クラッチの連結を行うタイミングである連結タイミングから予め定められた時間だけ遡った時点を第一タイミングとし、前記第一タイミングにおいて前記モータに与える電流を増加させ、前記クラッチの連結解除を行うタイミングである連結解除タイミングから予め定められた時間が経過した時点を第二タイミングとし、前記第二タイミングにおいて前記モータに与える電流を低減させる制御部を備えたこと
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記モータに複数の前記クラッチが連結した構成を備え、
前記クラッチの連結数に応じて前記モータが必要とする電流を示す管理情報を記録した記録媒体を備え、
前記制御部が、前記記録媒体より読み出した前記管理情報に基づいて、前記モータに与える電流を決定すること
を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記録媒体が、前記モータに連結されている前記クラッチの連結数に応じた前記第一タイミング及び前記第二タイミングを示すタイミング情報を記録しており、
前記制御部が、前記記録媒体より読み出した前記タイミング情報が示すタイミングに基づいて、前記モータに与える電流の増加又は低減を行うこと
を特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記被駆動体が、シートの搬送を行う搬送ローラ、トナーの撹拌を行う撹拌スクリュー、又は排トナーの搬送を行う搬送スクリューであること
を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
シートの搬送を行う搬送ローラと、
シートの検出を行うシート検出部とを備え、
制御部が、前記シート検出部がシートを検出した時間に基づき、前記搬送ローラに連結された前記クラッチに対する連結タイミング及び連結解除タイミングを決定すること
を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記モータが、ステッピングモータであること
を特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−54992(P2010−54992A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222071(P2008−222071)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】