説明

画像形成装置

【課題】緊急停止により感光体ドラムに異常な残電位が発生しても、その異常な残電位を簡単な制御で、かつ確実に取り除き、異常な残電位に起因する磁性キャリアの付着や画像不良を防止すること。
【解決手段】画像形成中の緊急停止により帯電ローラ122への電圧の瞬断が発生した場合の、画像形成への復帰時において、回転が停止された感光体ドラム121の回転開始直前に、電源1221から帯電ローラ122に対して、直流電圧(帯電DC)が0Vであって、放電開始の閾値電圧Vth以上のピーク間電圧Vppの交流電圧(帯電AC)を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 複写機、レーザープリンタ、ファクシミリ、印刷装置、あるいはこれらの複合機等に応用される電子写真方式による画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式による画像形成装置としては、感光体ドラムの表面を帯電ローラで帯電した後、レーザ光等による像露光を行って潜像を形成し、現像スリーブを用いて現像剤を供給して、前記潜像を現像する技術が知られている。現像剤としては、非磁性トナー(負極性)と磁性キャリア(正極性)とを主成分とした二成分現像剤が知られている。この二成分現像剤を用いる場合は、帯電ローラにより帯電された感光体ドラムの電位Vdと現像スリーブの電位Vdcの電位差(以降、Vbackと表記する、Vback=Vd−Vdc)を一定に保つ必要がある。この電位差Vbackが大きいと、感光体ドラムと現像スリーブが対向する現像位置において、負帯電した感光体ドラムに、正極性の磁性キャリアが付着してしまい、画像不良を起してしまう。
【0003】
また、帯電ローラに関しては、所望の被帯電体の表面電位Vdに相当する直流電圧に放電開始電圧Vth以上のピーク間電圧を持つ交流電圧を重畳したバイアス電圧を接触帯電部材に印加するAC帯電方式が知られている(特許文献1参照)。このAC帯電方式は、実用にも供されているDC帯電方式よりも更なる帯電の均一化を図ることができ、被帯電体の電位は交流電圧のピークの中央であるVdに収束する。
【0004】
なお、上述の放電開始電圧Vthは、特許文献2で定義されている。放電電流量制御は、非放電領域である帯電交流電圧を3点、 放電領域である帯電交流電圧を3点、順次、帯電ローラに階段状に印加して、各々帯電交流電圧を検知する。その検出された非放電領域で3点からなる直線、 放電領域で3点からなる直線を取り、それらの直線の交点になる電圧がVthである。
【0005】
上述したような画像形成装置において、画像形成中に緊急停止(紙づまりJAMや設定値レンジオーバーによるエラー停止、停電、コンセント抜け、使用者による強制電源OFF)により高圧が瞬断されて画像形成が中断する場合がある。例えば、画像形成中に印加していた帯電ローラにおいて、瞬時に高圧が遮断されると、異常に高い電圧であるサージ電圧が発生し、帯電ローラと接触している感光体ドラムに部分的に異常な残電位を残してしまう。
【0006】
そして、この画像形成中断の復帰時に感光体ドラムが回転されると、帯電ローラと対向する帯電位置にて発生した異常な残電位部分が、現像位置に達したときに、現像スリーブの電位との電位差Vbackが正常にとれなくなってしまう。これにより、現像位置にて感光体ドラムの異常な残電位の部分に磁性キャリアが付着してしまい、画像不良(カブリ)が発生してしまう。
【0007】
そのため、正常な画像形成終了時は、高圧を瞬断させないためにも感光体ドラムの電位と現像スリーブの電位間の電位差Vbackを保ったまま、徐々に帯電と現像の高圧を落としていく、高圧立ち下げシーケンスを行っている。
【0008】
また、特許文献1では、画像形成中断の復帰時に感光体ドラムが回転し、 異常な残電位部分が現像位置に達するときに一時的に現像バイアスを印加して、感光体ドラムの異常な残電位に対して電位差Vbackを正常に保つようにしている。
【0009】
また、特許文献2では、画像形成中断の復帰時に感光体ドラムの回転と同時に画像形成時と同様な直流と交流を重畳した電圧を印加して感光体ドラムの電位Vdをつくり、それに応じて現像スリーブに電圧を印加して、電位差Vbackを保つようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭63−149669号公報
【特許文献2】特許第3768931号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1では、感光体ドラムの異常な残電位部分が現像位置に達するタイミングに合わせて一時的に印加する現像バイアスしているため、制御が複雑になってしまう。また、少しでもタイミングがずれると、弊害として、異常な残電位部分以外においても、画像不良(カブリ)が発生してしまう。
【0012】
また、特許文献2では、感光体ドラムの回転と同時に直流と交流を重畳した電圧を印加しているが、感光体ドラムの回転開始直後は、ドラムの回転が安定せず、帯電による感光体ドラムの電位が不安定である。そのため、電位差Vbackを所定の値に押さえていくスロープ制御等を正確にできず、画像不良(カブリ)発生してしまう。
【0013】
本発明の目的は、緊急停止により感光体ドラムに異常な残電位が発生しても、その異常な残電位を簡単な制御で、かつ確実に取り除き、異常な残電位に起因する磁性キャリアの付着や画像不良を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、像担持体と、前記像担持体に接触して前記像担持体を帯電処理する帯電部材と、前記帯電部材により帯電処理された前記像担持体に露光して潜像を形成する露光手段と、前記像担持体に形成された潜像に現像剤を供給して可視化する現像手段と、を有する画像形成装置であって、前記帯電部材に直流と交流を重畳した電圧を印加するための電源と、前記像担持体を回転駆動するための駆動源と、前記電源と前記駆動源を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、画像形成中の緊急停止により前記帯電部材への電圧の瞬断が発生した場合の、画像形成への復帰時において、回転が停止された前記像担持体の回転開始直前に、前記電源から前記帯電部材に対して、直流電圧が0Vであって、放電開始の閾値電圧Vth以上のピーク間電圧Vppの交流電圧を印加するよう制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、緊急停止により発生した像担持体の異常な残電位を、前記帯電部材からの電圧の印加により取り除いた後に、像担持体の回転を開始する。これにより、緊急停止により感光体ドラムに異常な残電位が発生しても、その異常な残電位を簡単な制御で、かつ確実に取り除くことができ、異常な残電位に起因する磁性キャリアの付着や画像不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】画像形成装置の概略構成を示す模式断面図
【図2】画像形成部の構成を示す模式断面図
【図3】第1実施形態に係る画像形成装置のブロック図
【図4】画像形成装置の動作の流れを示すフローチャート
【図5】正常時の立ち上げシーケンスのタイミングチャート
【図6】正常時の立ち下げシーケンスのタイミングチャート
【図7】緊急停止時の立ち下げシーケンスのタイミングチャート
【図8】緊急停止後の従来の復帰立ち上げシーケンスのタイミングチャート
【図9】緊急停止後の本発明に係る復帰立ち上げシーケンスのタイミングチャート
【図10】第2実施形態に係る画像形成装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、この発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1を用いて、第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成について説明する。図1は第1実施形態に係る画像形成装置の概略断面図である。
【0019】
図1において、画像形成装置200は、複数色の画像形成部PM,PC,PY,PKを備え、同一の記録媒体にトナー像を順次重畳してカラー画像を形成することが可能である。また、画像形成装置200は、中間転写ベルト128、レジストローラ132、搬送ベルト127、定着器129、パッチ検出部133、及びクリーニングブレード130を備えている。中間転写ベルト128は、図1の矢印X方向に走行する。この中間転写ベルト128は、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン等の誘電体樹脂により形成されている。
【0020】
給送カセット(不図示)から給送された記録媒体108は、レジストローラ132を経て、中間転写ベルト128の二次転写部位に供給される。中間転写ベルト128の上方には、4つの画像形成部PM,PC,PY,PKが直列上に配置されている。これらの画像形成部PM,PC,PY,PKは、それぞれマゼンタ(M),シアン(C),イエロー(Y),ブラック(K)のトナー像を中間転写ベルト128上に形成する。これらのトナーの極性はマイナスである。
【0021】
クリーニングブレード130は、二次転写後の中間転写ベルト128上の残留トナーを除去する。トナー像が二次転写された記録媒体108は、搬送ベルト127により定着器129に搬送される。定着器129は、搬送されてきた記録媒体108の表面にトナー像を定着させ、画像が形成された記録媒体108を画像形成装置200の外部に排出する。
【0022】
画像形成部PM,PC,PY,PKの構成は、基本的に同じであり、以下、図2を用いて画像形成部Pとしてその構成を説明する。図2は、図1における画像形成部Pの構成を概略的に示す断面図である。
【0023】
図2において、画像形成部Pは、露光装置120、感光体ドラム121、帯電ローラ122、現像器123、転写ローラ124、及びクリーナ125を備えている。図2において、帯電ローラ122は、感光体ドラム121に接触して前記感光体ドラム121を帯電処理する帯電部材である。像担持体としての感光体ドラム121は、図2の矢印R2方向に回転自在に軸支されている。
【0024】
ここで、画像形成装置の制御ブロック図を図3に示す。
【0025】
画像形成が始まる場合、図3の操作部1000からコントローラとしてのCPU1010に信号が来て、CPU1010からドラムモータ駆動基板1211に命令をして、駆動源としてのドラムモータ1210を駆動し、感光体ドラム121を回転させている。また感光体ドラム121を回転駆動するドラムモータ1210とは別に、現像スリーブを回転駆動する現像モータ1230を持っている。
【0026】
露光装置(露光手段)120は、例えばLED,レーザ等により構成され、不図示の制御部により出力された画像信号に応じて帯電ローラ122により帯電処理された感光体ドラム121を露光して感光体ドラム121上に静電潜像を形成する。
【0027】
現像手段としての現像器123は現像剤担持体としての現像スリーブ123aを有している。現像スリーブ123aは、感光体ドラム121上に形成された静電潜像に現像剤をなすトナーを供給して可視化する。すなわち、現像スリーブ123aは、潜像にトナーを付着させ、感光体ドラム121上にトナー像を形成する。なお、ここでは、非磁性トナーと磁性キャリアを用いた二成分現像剤を使用する二成分現像方式を用いている。また、負極性に帯電のトナーを用いている。画像形成が始まる場合、図3の操作部1000からCPU1010に信号が来て、CPU1010から現像モータ駆動基板1232に命令をして、駆動源としての現像モータ1230を駆動し、現像スリーブ123aを回転させている。
【0028】
一次転写手段としての転写ローラ124は、感光体ドラム121上に形成されたトナー像を中間転写ベルト128に静電的に転写する。このトナー像は、中間転写ベルト128に担持されて図2の矢印X方向に搬送される。クリーナ125は、クリーニングブレード125a、及び廃トナー搬送スクリュー125bを備えている。クリーニングブレード125aは、トナー像を転写した後の感光体ドラム121上の残留トナーを除去する。廃トナー搬送スクリュー125bは、クリーニングブレード125aにより除去した残留トナーを不図示の廃トナー容器に送る。
【0029】
本実施形態の帯電ローラ122は、芯金として直径6mmのステンレス丸棒を用い、表面層としてフッ素樹脂にカーボンを分散させており、ローラとしての外径は15mm、ローラ抵抗は10Ω〜10Ωとしている。この帯電ローラ122は、芯金の両端部をそれぞれ軸受部材により回転自在に保持させると共に押圧バネによって感光体ドラム121方向に付勢して感光体ドラム121の表面に対して所定の押圧力をもって圧接させている。帯電ローラ122は、感光体ドラム121に接触して感光体ドラム121の回転に従動して回転する。
【0030】
そして、直流電圧に周波数fの交流電圧を重畳した所定の振動電圧(バイアス電圧Vdc+Vac)が芯金を介して帯電ローラ122に印加されることで、回転する感光体ドラム121の周面が所定の電位に帯電処理される。本実施形態においては、直流電圧=−700Vに、周波数f=1270Hz、ピーク間電圧1700Vpp、正弦波の交流電圧を重畳した振動電圧が帯電ローラ122に印加される。これにより、感光体ドラム121の電位Vdは−700Vに一様に帯電処理される。
【0031】
次に、画像形成動作について図4に示すフローチャートを用いて説明する。まず、緊急停止がない場合の画像形成動作について説明する。
【0032】
図4において、まず、フラグf1の確認(S101)を行う。なお、緊急停止が起きていない場合はフラグf1=1であり、緊急停止が起きた場合はフラグf1=0である。S102にてフラグf1=1であるか否かを判別する。S102にてフラグf1=1が確認されると、まず、画像形成が始まる前に正常立ち上げシーケンス(S103)を行う。
【0033】
そのときの正常立ち上げシーケンスのタイミングチャートを図5に示す。操作部1000から画像形成信号がCPU1010に伝達され、CPU1010からドラムモータ駆動基板1211、現像モータ駆動基板1232、帯電高圧電源1221、現像高圧電源1231に命令が送られる。まず、ドラムモータ1210を駆動し、感光体ドラム121が回転を始め(S104)、その回転が安定するまで回る。つづいて、帯電ローラ122に帯電AC(交流電圧)が印加される(S105)。更に、帯電ACの印加後、帯電DC(直流電圧)の印加前に、現像モータ1230を駆動し、現像スリーブ123aが回転を始める。そして、画像形成中に緊急停止があるかを見分けるフラグf1をリセット(f1=0)する(S106)。
【0034】
正常立ち上げシーケンスS103が終わり、画像形成が始まると(S107)、帯電DC(直流電圧)の印加前に、現像モータ1230を駆動し、現像スリーブ123aが回転を始める。その後、帯電ローラ122に帯電DC(直流電圧)が印加され、感光体ドラム121が所定の電位Vdに帯電処理される。この帯電による感光体ドラム121の電位Vdが、現像スリーブ123aと対向する現像位置に来たときに、現像スリーブ123aに現像DC(直流電圧)=―520Vを印加する。そして、現像位置における、帯電による感光体ドラム121と現像スリーブ123aの電位差Vback=180Vを保つように行う。
【0035】
そして、画像形成中に緊急停止が起きなかった場合は(S108)、画像形成を終了するために高圧立ち下げシーケンス(S109)を行う。この場合の高圧立ち下げのタイミングチャートを図6に示す。図6に示すように、高圧立ち下げとは、高圧を瞬断させないためにも帯電による感光体ドラム121と現像スリーブ123aの電位差Vbackを保ったまま、徐々に高圧を落としていくことを行っている。帯電DC,現像DCを落としきったところで、帯電DC=0状態で帯電ACを印加させ、画像形成による感光体ドラムの残電位を除電させる。その後、帯電ACを徐々に落とし、感光体ドラムの駆動を停止させて終了させる。緊急停止することなく、画像形成が無事に終了できたため、S111にてフラグf1に1をたてる。
【0036】
次に、画像形成中に緊急停止(紙づまりJAMや設定値レンジオーバーによるエラー停止、停電、コンセント抜け、使用者による強制電源OFF)が起きた場合の緊急停止シーケンス(S114)について説明する。その場合の緊急停止シーケンスのタイミングチャートを図7に示す。
【0037】
まず、エラーとは、例えば、回路基板が壊れて画像形成条件の設定ができず、機内に設定された検出センサー値(図示しないが、感光体のトナー付着量センサーなど)が異常値を示し、画像形成を緊急に止めて使用者/管理者に告知することである。
【0038】
また、JAMとは、画像形成中に予期せず紙づまりが起きることである。例えば、給送カセットから送り出された記録媒体がレジストローラ132付近の不図示のセンサーで搬送遅延を検知させ、本体の故障を防ぐために、画像形成を緊急に止めて使用者/管理者に告知することである。
【0039】
図7に示すように、画像形成中に緊急停止する必要がある場合は、CPU1010から帯電高圧電源1221や現像高圧電源1231、ドラムモータ駆動基板1211、現像モータ駆動基板1232に異常停止を命じる。そして、感光体ドラムの駆動、現像スリーブの駆動、高圧出力すべてを瞬時に止めさせる。
【0040】
このように画像形成中に緊急停止した場合には、従来は、緊急停止に対応し(紙詰まりの除去等)、再度画像形成させるために正常の立ち上げシーケンスを行っていた。この場合の現像位置における、感光体ドラムの電位、現像スリーブの電位の関係(図8(a))、高圧/駆動関係(図8(b))のタイミングチャートを図8に示す。
【0041】
画像形成中に緊急停止が起きてしまうと、画像形成のために印加していた帯電ローラにおいて、瞬時に異常に高い電圧であるサージ電圧が発生し、感光体ドラムの帯電ローラと接触している部分に異常な残電位(Vd=−550V)を残してしまう。そして、緊急停止の復帰時に感光体ドラム121が回転されると、図8(a)に示すように、前記感光体ドラム121の異常な残電位部分が、現像位置に達したときに、現像スリーブの電位との電位差Vbackが正常にとれなくなってしまう。これにより、現像位置にて感光体ドラムの異常な残電位の部分に磁性キャリアが付着してしまい、画像不良(カブリ)が発生してしまう。
【0042】
ただし、緊急停止が起きた場合の高圧瞬断直後の帯電ローラ通過後で現像スリーブ通過前の感光体ドラムは所定の電位Vdになっている。この感光体ドラムの所定の電位は、時間が経つにつれて感光体ドラムの表面から電荷が逃げていき、0Vに減衰していくため、問題にならない。しかし、緊急停止が起きた場合の感光体ドラムの帯電ローラと接触している部分の電位は、帯電ローラが高抵抗であるため、感光体ドラムから電荷が逃げにくい。そのため、その部分だけ感光体ドラムに異常な電位が残ってしまう。
【0043】
そこで、本実施形態では、上述の如く緊急停止した後の復帰時に行う、復帰立ち上げシーケンス(S111)を設けている。画像形成が始まってから(S107)、緊急停止シーケンス(S115)が行われた場合、高圧立ち下げシーケンス(S109)が正常に終了していないため、S101以降のフラグf1の確認ではフラグf1が0になっている。そのため、正常時立ち上げシーケンス(S103)ではなく、復帰シーケンス(S111)を開始する。
【0044】
図9に復帰シーケンスの場合の立ち下げ/立ち上げ時の、現像位置における感光体ドラムの電位、現像スリーブの電位の関係(図9(a))、及び高圧/駆動関係(図9(b))のタイミングチャートを示す。
【0045】
図9(b)に示すように、緊急停止した後の復帰時に、復帰シーケンスを行う。具体的には、回転が停止された感光体ドラム121の回転開始直前(ここでは300msec前)に、帯電ローラ122に交流電圧(帯電AC)=1500Vpp、直流電圧(帯電DC)=0Vを印加し始める(S112)。そして、帯電ACを印加した後、感光体ドラム121が回転し始め(S113)、その後、画像形成に移っていく。
【0046】
ここで、感光体ドラムの回転が停止された状態で所定時間以上(ここでは1000msec以上)、帯電ローラに前述の電圧の印加を行うと、感光体ドラムに過剰な電流が流れるため、メモリが発生してしまう。そのため、感光体ドラムの回転が停止された状態では、帯電ACの印加時間が前述の所定時間より短いことが望まれる。
【0047】
これは、感光体ドラム121に対する帯電ローラ122の放電が十分であったために、感光体ドラムの異常な残電位を十分に除電できたためである。帯電ローラに、放電開始の閾値電圧Vthのピーク間電圧Vppの交流電圧(帯電AC)を印加すると、感光体ドラムの電位Vdの収束性がよく、除電に対しても効果が高いと考えられる。ここでは、放電開始の閾値電圧Vthは1200V程度である。
【0048】
感光体ドラムに残る異常な電位は、緊急停止時に帯電ローラと接触している部分のため、残電位は−150V程度まで除電される。上述したように、帯電ACが印加された後、感光体ドラムが回転し始め(S113)、その後、帯電DC,現像DCと電位差Vbackを保った状態で立ち上げていく。これにより、図9(a)に示すように、緊急停止した後の復帰時であっても、感光体ドラムに部分的に異常な電位を残すことなく、画像形成に入ることができる(S107)。
【0049】
このように、緊急停止した後の復帰時に、感光体ドラムの回転開始前に、帯電ローラに、直流電圧が0Vであって、放電開始の閾値電圧Vth以上のピーク間電圧Vppの交流電圧を印加する。そのため、緊急停止時に帯電ローラ位置にあった感光体ドラムの異常な電位を除電でき、その部分が現像位置に来たときに、感光体ドラムと現像スリーブ間の電位差Vbackを正常に保つことが出来る。これにより、制御が複雑でなく、簡便に緊急停止後の復帰を問題なく行うことができる。
【0050】
ここで、緊急停止時の高圧瞬断による感光体ドラムの残電位と感光体ドラムの回転開始直前の帯電AC印加量によるキャリア付着に対する効果を表1に評価した。画像比率5%の画像を1000枚流したあとに、故意的に折り曲げた記録媒体を給送カセットにセットして、JAMを起こす。その後JAM処理をして、動作を復帰させ、画像比率5%の画像を10枚プリントし、そのプリントの画像を評価した。
【0051】
【表1】

【0052】
帯電ACが1150Vpp以下では、現像スリーブ123aから磁性キャリアが感光体ドラム121上に付着してしまい、感光体ドラムをつれまわったキャリアによる画像不良、クリーニングブレードの欠けによる白スジの不良画像が発生してしまった。これは、帯電ローラが十分に放電していないために、JAM時に発生した感光体ドラムの異常な電位の除電がほとんど行われなかったためである。
【0053】
帯電ACが1200Vppでは、不良画像は発生しなかった。しかし、感光体ドラム上にキャリアが見つかり、耐久枚数を重ねると中間転写ベルト、帯電ローラへの傷等の懸念はされる。これは、帯電ローラの放電は起こっているものの、感光体ドラムの除電能力不足で、多少の磁性キャリア/少量のポジトナー等が感光体ドラムに付着してしまったためである。
【0054】
帯電ACが1250Vpp以上では、不良画像は発生しなかった。これは、帯電ローラの放電が十分であったために、感光体ドラムの異常な電位を十分に除電できたためである。帯電ローラに、放電開始の閾値電圧Vthのピーク間電圧Vppの交流電圧を印加すると、感光体ドラムの電位Vdの収束性がよく、除電に対しても効果が高いと考えられる。ここでは放電開始の閾値電圧Vthは1200V程度である。ただし、ピーク間電圧Vppが多すぎるとドラムメモリを起こす可能性があるので、上げすぎずに使用する。
【0055】
上述したように、本実施形態によれば、緊急停止により発生した感光体ドラムの異常な残電位を、感光体ドラムの回転開始前に、帯電ローラからの電圧の印加により取り除いている。これにより、緊急停止により感光体ドラムに異常な残電位が発生しても、その異常な残電位を簡単な制御で、かつ確実に取り除くことができ、異常な残電位に起因する磁性キャリアの付着や画像不良を防止することができる。
【0056】
〔第2実施形態〕
上述した実施形態では、感光体ドラムと現像スリーブをそれぞれ独立した別の駆動源で駆動する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上述した効果をより低コストで実現するために、感光体ドラムと現像スリーブを同一の駆動源(モータ)で回転駆動する構成としても良い。この構成を図10のブロック図を用いて説明する。
【0057】
CPU1010から駆動信号がくると、ドラム/現像モータ駆動基板1251から駆動源としてのドラム/現像モータ1250へ信号が送られ、感光体ドラム121を回転駆動させる。現像スリーブ123aの駆動に関しては、現像スリーブ123aに対して現像モータ1250の駆動力を伝達又は遮断するクラッチ1252を用いている。クラッチ1252を用いることでモータギアから現像スリーブギアに駆動力を伝達し、モータの駆動力を現像スリーブ123aに伝達する。また、現像剤の劣化の観点から現像スリーブを常に廻したくないため、クラッチ1252の切り替えでモータギアから現像スリーブギアへの駆動力の伝達を遮断し、現像スリーブ123aに対するモータの駆動力伝達を遮断する。
【0058】
画像形成中は感光体ドラムと現像スリーブ間の電位差Vbackを一定内におさえて制御している。JAM時、エラー時において高圧が瞬断され、それまでに印加していた帯電ローラにおいて、サージ電圧が発生し、感光体ドラムの帯電ローラが接触している部分に異常な残電位を残してしまう。
【0059】
そこで、上述した実施形態と同様に、緊急停止により発生した感光体ドラムの異常な残電位を、感光体ドラムの回転開始前に、帯電ローラからの電圧の印加により取り除いている。これにより、緊急停止により感光体ドラムに異常な残電位が発生しても、その異常な残電位を簡単な制御で、かつ確実に取り除くことができ、異常な残電位に起因する磁性キャリアの付着や画像不良を防止することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、画像形成中に緊急停止した場合、クラッチ1252は現像スリーブに対してモータの駆動力を伝達する状態のまま、JAM、エラー状態になる。そのため、JAM処理後の復帰時に感光体ドラム121の回転が始まると、現像スリーブ123aの回転も始まる。
【0061】
このように構成することで、上述した実施形態と同様の効果をより低コストで実現することができる。
【0062】
〔他の実施形態〕
上述した実施形態では、二成分の現像剤を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、一成分の現像剤を用いた場合も不要なカブリで帯電ローラ等の汚染を招くため、本発明を用いる効果は大きい。
【0063】
また上述した実施形態では、画像形成部を4つ使用しているが、この使用個数は限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定すれば良い。
【0064】
また、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置等の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の画像形成装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。また、上述した実施形態では、中間転写体(中間転写ベルト)を用いた画ぞ形成装置を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、記録媒体担持体を使用し、該担持体に担持された記録媒体に各色のトナー像を順次重ねて転写する画像形成装置であっても良く、該画像形成装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0065】
PM,PC,PY,PK …画像形成部
120 …露光装置
121 …感光体ドラム
122 …帯電ローラ
123 …現像装置
123a …現像スリーブ
124 …転写ローラ
125 …クリーナ
1000 …操作部
1010 …CPU
1210 …ドラムモータ
1221 …帯電高圧電源
1230 …現像モータ
1221 …現像高圧電源
1252 …クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、前記像担持体に接触して前記像担持体を帯電処理する帯電部材と、前記帯電部材により帯電処理された前記像担持体に露光して潜像を形成する露光手段と、前記像担持体に形成された潜像に現像剤を供給して可視化する現像手段と、を有する画像形成装置であって、
前記帯電部材に直流と交流を重畳した電圧を印加するための電源と、
前記像担持体を回転駆動するための駆動源と、
前記電源と前記駆動源を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、画像形成中の緊急停止により前記帯電部材への電圧の瞬断が発生した場合の、画像形成への復帰時において、回転が停止された前記像担持体の回転開始直前に、前記電源から前記帯電部材に対して、直流電圧が0Vであって、放電開始の閾値電圧Vth以上のピーク間電圧Vppの交流電圧を印加することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像手段に対して前記駆動源の駆動を伝達又は遮断するクラッチを有し、前記駆動源で前記像担持体と前記現像手段を回転駆動することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−113076(P2011−113076A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272517(P2009−272517)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】