説明

画像形成装置

【課題】
感光体ドラムと、複数の支持ローラ間に張架される弾性層を有する中間転写ベルトと、前記感光体ドラムに担持された現像剤像を前記中間転写ベルトに転写する一次転写ローラとを備え、前記一次転写ローラは前記中間転写ベルトを挟んで前記感光体ドラムと圧接する画像形成装置において、中間転写ベルトと一次転写ローラとの圧接位置のニップ領域を充分確保させるとともに、環境変化に関らず、転写性能を常に安定化させることを課題とする。
【解決手段】
前記画像形成装置において、一次転写ローラは中間転写ベルトより硬質とすることで、ニップ領域を充分確保することができる。また、一次転写ローラが導電性樹脂で構成されており、ゴムローラと比較して抵抗を低くすることができるため、環境変化に関らず、転写性能を安定化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、現像剤像を転写電圧によって中間転写体に転写する転写処理を行う電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置には、現像剤像担持体(感光体ドラム)の表面に担持された現像剤像を中間転写ベルトに一次転写した後、中間転写ベルトから記録媒体へ二次転写する中間転写方式を採用しているものがある。
【0003】
このような画像形成装置では、例えば中間転写ベルトは少なくとも駆動ローラと従動ローラとに架け渡され、中間転写ベルトを挟んで現像剤像担持体に圧接する一次転写ローラとの間で、現像剤像が中間転写ベルトに一次転写される。
【0004】
従来の画像形成装置では、中間転写ベルトとしてポリイミド樹脂やポリアクリルアミド樹脂等で構成された単層ベルトが用いられている。また、特開2006−201470(特許文献1)には、弾性中間層を有する三層構成の中間転写ベルトが開示されている。該中間転写ベルトと圧接する二次転写ローラに関しては、JISA硬度65度と中硬度で抵抗(体積抵抗率)も1×10Ω・cmと中抵抗のNBR(ブタジエンアクリロニトリルゴム) 材料を採用している。
【0005】
一方、特開2006−64957(特許文献2)においては、一次転写には中間転写ベルトと一次転写ローラとの間にニップ圧が必要なので、一次転写ローラとして導電性ゴムローラが用いることが提案されている。該一次転写ローラのASKER−C硬度は20度〜40度と低硬度で、抵抗値Rの範囲もLogRが7.7〜8.2と中抵抗の導電性ゴムローラを採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−201470公報
【特許文献2】特開2006−64957公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、導電性ゴムローラの抵抗は、環境依存性が大きく、低温低湿環境下と高温高湿環境下とでは2桁ほどの変動が発生する場合がある。
【0008】
高温高湿環境下では、用紙等の記録媒体の抵抗が低下するだけでなく、導電性ゴムローラの抵抗も1桁ほど下がる。このため、定電流制御の場合は、転写電圧が低くなり、必要な転写電圧に達しないことから、転写性能が低下しやすくなる。一方、定電圧制御の場合は、電流が過剰に大きくなるので、再転写等の転写不良が発生しやすくなる。ここで、再転写とは、中間転写ベルトの移動方向において上流側の画像形成部で中間転写ベルトに転写された現像剤像の一部が、下流側で現像剤像担持体に付着する現象をいう。
【0009】
低温低湿環境下では、記録媒体の抵抗が高温高湿環境下と比べて高くなるだけでなく、導電性ゴムローラの抵抗も1桁ほど上がる。このため、定電流制御の場合は、電圧が異常に高くなり、リーク現象、再転写やトナーの飛び散り現象が発生しやすくなる。一方、定電圧制御の場合は、電流が小さくなるので、充分な転写性能が得られなくなりやすい。
【0010】
導電性ゴムローラの抵抗が変動した場合、印字された文字の中抜けや、全体的に高濃度のいわゆるベタ画像における粒状度(高い空間周波数で発生する濃度の不均一性)やモットル(低い空間周波数で発生する濃度の不均一性)の悪化等の転写不良が発生することがあった。
【0011】
このように、一次転写ローラとして導電性ゴムローラを用いた場合、環境によって抵抗が変動しやすいので、転写性能を高く安定させることができなかった。
【0012】
この発明の目的は、転写性能を高く安定させることができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の画像形成装置は、現像剤像を担持する感光体ドラム(現像剤像担持体)と、複数の支持ローラ間に張架される弾性層を有する中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトを挟んで、前記感光体ドラムと対向圧接する一次転写ローラを備えた画像形成装置であって、前記一次転写ローラは、前記中間転写ベルトより硬質であって導電性樹脂で構成されることを特徴とするものである。
【0014】
更に、本発明は、前記中間転写ベルトは、硬度(JISA硬度)が40度以上75度以下の範囲内であって、前記一次転写ローラの硬度(JISA硬度)が、80度以上であることが好ましい。
【0015】
更に、本発明は、一次転写ローラの抵抗(体積抵抗率)が10Ω・cm〜10Ω・cmの範囲内であることが好ましい。
【0016】
更に、本発明は、前記中間転写ベルトが、基材、前記基材層上に配置された弾性層、及び前記弾性層上に配置された表面層を有することが好ましい。
【0017】
更に、本発明は、前記弾性層が、ウレタンゴムで構成され、前記表面層は、フッ素樹脂で構成されることが好ましい。
【0018】
更に、本発明は、前記中間転写ベルトと前記一次転写ローラとの圧接位置における前記中間転写ベルトの変形量が、0.10mm以上0.25mm以下であることが好ましい。
【0019】
更に、本発明は、前記基材が、ポリイミド樹脂で構成されることが好ましい。
【0020】
また更に、前記基材の厚さが、30μm以上55μm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、一次転写ローラは、中間転写ベルトより硬質としたため、中間転写ベルトと一次転写ローラとの圧接位置において中間転写ベルトが変形することで、ニップ領域を充分確保することができる。また、一次転写ローラが導電性樹脂で構成されており、ゴムローラと比較して抵抗を低くすることができるため、一次転写ローラの抵抗は、温度や湿度といった環境の影響度が小さい。従って、環境変化に関らず、ゴムローラを用いた場合と比較して転写性能を安定化することができる。
【0022】
また、本発明によれば、中間転写ベルトは、基材、基材上に配置された弾性層、及び弾性層上に配置された表面層を有するように構成されている。このように、中間転写ベルトは、基材を有することで中間転写ベルトの強度が保持される。
【0023】
また、弾性層を有することで、中間転写ベルトと一次転写ローラとの圧接位置において中間転写ベルトが変形し、ニップ領域を適切に形成することができる。
【0024】
更に、表面層を有することで中間転写ベルトの劣化を抑制することができる。
【0025】
また、本発明によれば、弾性層はウレタンゴムで構成し、表面層はフッ素樹脂で構成されている。ウレタンゴムは適度な弾性を有するので転写処理に必要なニップ圧を一次転写ローラとの間に適度に生じさせることができる。また、表面層をフッ素樹脂で構成することでクリーニングブレードや記録媒体との摩擦による中間転写ベルトの劣化を抑制することができるので、転写性能を高く安定させることができる。
【0026】
また、本発明によれば、中間転写ベルトの変形量を0.10mm以上0.25mm以下としており、中間転写ベルトと一次転写ローラとの間に転写処理に適した圧接力を生じさせることができる。
【0027】
また、本発明によれば、基材はポリイミド樹脂で構成されている。このポリイミド樹脂は、ポリカーボネート樹脂やポリアミドイミド樹脂に比して引張弾性率が高く、伸び難いので、中間転写ベルトの耐久性を向上させることができる。
【0028】
また、本発明によれば、基材の厚さは、30μm以上55μm以下としている。そのことで、中間転写ベルトに必要とされる強度を保持するとともに、一次転写ローラ、感光体ドラム、及び二次転写ローラに柔軟に接触できるので、転写性能を高く安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置のの全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置を構成する中間転写ベルトの断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像形成装置を構成する中間転写ベルトと一次転写ローラ及び感光体ドラムによる1次転写部の構成を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は発明を実施する形態の一例であって、本発明に係る画像形成装置の構成を示す説明図である。
【0031】
画像形成装置10は、画像読取ユニット100、画像形成ユニット200、給紙ユニット300、及び制御部400を備えている。
【0032】
画像読取ユニット100は、画像形成装置10の上部に配置され、自動原稿搬送装置(ADF:Automatic Document Feeder)90、及び画像読取部20を備えている。画像読取部20は、第1原稿台21、第2原稿台22、第1ミラーベース23、第2ミラーベース24、レンズ25、及び固体撮像素子(CCD:Charge Coupled Device)26を備えている。
【0033】
ADF90には、原稿積載トレイ91から第2原稿台22を経由して原稿排出トレイ92へ至る原稿搬送路93が形成されている。ADF90は、原稿搬送路93に原稿を1枚ずつ搬送する。ADF90は、第1原稿台21の上面を開閉自在に被覆するように、背面側を支点に回動自在にされている。前面側が上方に移動するようにADF90を回動させて第1原稿台21の上面を露出させることにより、ADF90を用いずに手動操作によって第1原稿台21に原稿を載置することができる。
【0034】
第1原稿台21及び第2原稿台22は、ともに硬質ガラス板によって構成されている。
第1ミラーベース23及び第2ミラーベース24は、第1原稿台21及び第2原稿台22の下方において水平方向に移動自在に配置されている。第2ミラーベース24の移動速度は、第1ミラーベース23の移動速度の1/2にされている。第1ミラーベース23は、光源及び第1ミラーを搭載している。第2ミラーベース24は、第2ミラー及び第3ミラーを搭載している。
【0035】
ADF90によって搬送される原稿の画像を読み取る際に、第1ミラーベース23は、第2原稿台22の下方に停止している。光源の光は、第2原稿台22上を通過する原稿の画像面に向けて照射され、原稿の画像面における反射光が第1ミラーによって第2ミラーベース24に向けて反射される。
【0036】
第1原稿台21に載置された原稿の画像を読み取る際には、第1ミラーベース23及び第2ミラーベース24は、第1原稿台21の下方を水平方向に移動する。光源の光は、第1原稿台21上に載置された原稿の画像面に向けて照射され、原稿の画像面における反射光が第1ミラーによって第2ミラーベース24に向けて反射される。
【0037】
ADF90を用いるか否かにかかわらず、原稿の画像面における反射光は、光路長を一定にして、第2ミラー及び第3ミラーによってレンズ25を経由してCCD26に入射する。
【0038】
CCD26は、原稿の画像面における反射光の光量に応じた電気信号を出力する。この電気信号は、制御部400に画像データとして入力される。このようにして、画像読取部20は、原稿の画像を読み取って画像データを取得する。制御部400は、必要に応じて画像データを画像形成ユニット200へ出力する。
【0039】
画像形成ユニット200は、画像読取ユニット100の下に配置され、露光ユニット3、4個の画像形成部31,32,33,34、中間転写ベルトユニット6、二次転写ローラ66、定着装置7、排紙トレイ67、及び用紙搬送路68,69を備えている。
【0040】
中間転写ベルトユニット6は、中間転写ベルト61、駆動ローラ62、従動ローラ63、及びテンションローラを有している。中間転写ベルト61は、駆動ローラ(支持ローラ)62と従動ローラ(支持ローラ)63との間に張架されてループ状の移動経路を形成している。
【0041】
画像形成ユニット200は、ブラック、並びに、カラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン、マゼンタ及びイエローの4色の各色相に対応した画像データを用いて、画像形成部31,32、33,34において画像形成処理を行う。画像形成部31〜34は、中間転写ベルト61の移動経路に沿って一列に配置されている。画像形成部32〜34は、画像形成部31と実質的に同様に構成されている。
【0042】
ブラックの画像形成部31は、感光体ドラム1、帯電装置2、現像装置4、一次転写ローラ5、及びクリーニングユニット64を備えている。
【0043】
帯電装置2は、感光体ドラム1の表面を所定の電位に均一に帯電させる。露光ユニット3は、図示しない半導体レーザ、ポリゴンミラー、第1fθレンズ及び第2fθレンズを備えており、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データによって変調されたレーザービームのそれぞれを、画像形成部31〜34のそれぞれの感光体ドラム1に照射する。4個の感光体ドラム1のそれぞれの周面には、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データによる静電潜像が形成される。
【0044】
現像装置4は、静電潜像が形成された感光体ドラム1の周面に、画像形成部31〜34のそれぞれの色相のトナー(現像剤)を供給し、静電潜像を現像剤像に顕像化する。
【0045】
クリーニングユニット64は、現像及び画像転写の後における感光体ドラム1の表面に残留したトナーを回収する。
【0046】
中間転写ベルト61の外周面は、4個の感光体ドラム1に順に対向する。中間転写ベルト61を挟んで各感光体ドラム1に対向する位置のそれぞれに、一次転写ローラ5が配置されている。中間転写ベルト61と感光体ドラム1とが互いに対向する位置のそれぞれが、一次転写位置である。
【0047】
一次転写ローラ5には、感光体ドラム1の周面に担持された現像剤像を中間転写ベルト61上に転写するために、トナーの帯電極性(マイナス)と逆極性(プラス)の一次転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム1のそれぞれに形成された各色相の現像剤像は中間転写ベルト61の外周面に順次重ねて転写(一次転写)され、中間転写ベルト61の外周面にフルカラーの現像剤像が形成される。
【0048】
但し、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色相の一部のみの画像データが入力された場合は、4個の感光体ドラム1のうち、入力された画像データの色相に対応する一部のみにおいて静電潜像及び現像剤像の形成が行われる。例えば、モノクロ印刷モード時には、ブラックの色相に対応した画像形成部31の感光体ドラム1のみにおいて静電潜像の形成及び現像剤像の形成が行われ、中間転写ベルト61の外周面にはブラックの現像剤像のみが転写(一次転写)される。
【0049】
画像形成部31〜34の全てにおいて画像形成処理が行われるフルカラー画像形成時には、4個の一次転写ローラ5が中間転写ベルト61を全ての感光体ドラム1に圧接する。一方、画像形成部31のみにおいて画像形成処理が行われるモノクロ画像形成時には、画像形成部31のみにおいて一次転写ローラ5が中間転写ベルト61を感光体ドラム1に圧接する。
【0050】
各一次転写ローラ5は、直径8mm〜10mmのステンレス等の金属を基材とする軸の表面を硬質の導電性樹脂(例えば、導電性POM(ポリアセタール)樹脂、導電性ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、導電性ウレタン樹脂等)によって被覆、もしくは、導電性樹脂から形成されたチューブを被覆して構成されており、軸に高電圧(転写バイアス)を印加することで、中間転写ベルト61に転写電圧を均一に印加することができる。抵抗は、カーボン、ZnO、SnO及びTiO等の導電性の充填材により調整した。
【0051】
二次転写ローラ66は、中間転写ベルト61を挟んで駆動ローラ62に所定のニップ圧で圧接している。二次転写ローラ66は、芯金をベース基材とし、その表面は一般的なウレタンゴムで構成されている。二次転写ローラ66は、中間転写ベルト61の外周面に担持された現像剤像を、記録媒体の一例である用紙に転写(二次転写)するためのものである。
【0052】
上記一次転写ローラ5及び二次転写ローラ66の硬度は、一般的にはJISA硬度で15度〜100度程度である。そのうち、一次転写ローラ5は、芯金部に対して樹脂部が厚い場合でも、芯金に樹脂が被覆された状態で80度以上は必要である。
【0053】
これら一次転写ローラ5及び二次転写ローラ66には、図示しない高圧電源よりトナーを電気的に引き寄せるため、高電圧(転写バイアス)が印加される。上記電圧としては、0.5kV〜4kVであり、画像形成装置10が使用される温度、湿度の環境によって変更される可変制御を行う場合がある。
【0054】
給紙ユニット300の給紙トレイ81には、用紙が収容されている。用紙搬送路68には、複数の搬送ローラ12A,12Bが配置されている。用紙搬送路68は、給紙トレイ81に収容されている用紙を、二次転写位置及び定着装置7を経由して排紙トレイ67へ送るために、略垂直方向に配置されている。
【0055】
用紙搬送路69には、複数の搬送ローラ12C,12Dが配置されている。用紙搬送路69は、用紙の搬送方向において、定着装置7の下流側から二次転写位置の上流側まで配置されている。用紙搬送路69には、定着装置7を通過した後で排紙トレイ67へ排出される用紙が、それまでの後端を前にして搬送される。これによって、用紙は表裏を反転した状態で、二次転写位置へ再送される。
【0056】
給紙ユニット300は、画像形成ユニット200の下に配置され、給紙カセット81の他に、手差しトレイ82を備えている。給紙カセット81及び手差しトレイ82のそれぞれには、用紙が収容される。
【0057】
給紙ユニット300は、給紙カセット81又は手差しトレイ82の何れかから1枚ずつ用紙を給紙する。給紙カセット81に収容された用紙は、ピックアップローラ11Aによって給紙され、用紙搬送路68を経由して二次転写位置へ搬送される。手差しトレイ82に収容された用紙は、ピックアップローラ11Bによって給紙され、用紙搬送路68を経由して二次転写位置へ搬送される。
【0058】
用紙搬送方向において二次転写位置の上流側に、レジストローラ13が配置されている。給紙カセット81又は手差しトレイ82から給紙された用紙は、レジストローラ13が停止した状態で先端をレジストローラ13に突き当てられる。レジストローラ13の回転軸は、用紙の搬送方向に直交する方向に配置されている。用紙の先端が、停止した状態のレジストローラ13に突き当てられることで、用紙が斜行している場合は斜行が補正される。
【0059】
レジストローラ13は、用紙の先端を、中間転写ベルト61の表面に形成された現像剤像の先端と合わせるタイミングで回転を開始し、二次転写位置へ用紙を供給する。
【0060】
この実施形態では、中間転写ベルト61の移動方向において二次転写位置の上流側近傍に、二次転写前帯電装置14、及び対向ローラ15が配置されている。二次転写前帯電装置14は、中間転写ベルト61の外周面側に配置され、対向ローラ15は、中間転写ベルト61を挟んで二次転写前帯電装置14に対向するように配置されている。二次転写前帯電装置14は、中間転写ベルト61の外周面に担持された現像剤像に、トナーの帯電極性(マイナス)と同極性(マイナス)の電荷を付与する。
【0061】
給紙ユニット300から給紙された用紙が二次転写位置を通過する際に、駆動ローラ62に、トナーの帯電極性(マイナス)と同極性(マイナス)の高電圧の転写電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト61の外周面から用紙の表面に、現像剤像が二次転写(転写処理)される。
【0062】
現像剤像が用紙に転写された後の中間転写ベルト61上に残留した現像剤は、中間転写ベルト用クリーニング装置65によって回収される。
【0063】
現像剤像が転写された用紙は、定着装置7に導かれ、加熱ローラ71と加圧ローラ72との間を通過することで加熱及び加圧される。これによって、現像剤像が、用紙の表面に堅牢に定着する。現像剤像が定着した用紙は、現像剤像が定着した面を下にして排紙トレイ67上へ排出される。
【0064】
図2は、中間転写ベルト61の断面構成を示す。中間転写ベルト61は、基材41、弾性層42、及び表面層43からなる3層構造に構成されている。弾性層42は、基材41上に配置されている。表面層43は、弾性層42上に配置されている。
【0065】
本実施例では、基材41は、厚さ40μmのポリイミド樹脂で構成されている。弾性層42は、厚さ300μmのウレタンゴムで構成されている。表面層43は、厚さ10μmのフッ素樹脂で構成されている。この時、中間転写ベルト61の硬度は60度、変形量は0.20mmであった。
【0066】
中間転写ベルト61の硬度は、弾性層42の厚さによって適宜調整される。弾性層42の厚さは、中間転写ベルト61の硬度がJISA硬度で40度以上75度以下の範囲内に入るように適宜調整されている。
【0067】
基材41として、ポリイミド樹脂を用いることで、中間転写ベルト61の耐久性を向上させることができる。これは、ポリイミド樹脂が引張弾性率がポリカーボネート樹脂やポリアミドイミド樹脂に比して最も高く、伸び難いためである。
【0068】
弾性層42として、ウレタンゴムは適度な弾性を有するので、一次転写に必要なニップ圧を中間転写ベルト61と一次転写ローラ5との間に適度に生じさせることができる。また、ウレタンゴムは基材41として用いられるポリイミド樹脂との接着性が高いので、弾性層42と基材41との接着性を高めることができる。
【0069】
また、表面層43をフッ素樹脂で構成することで、中間転写ベルト用クリーニング装置65のクリーニングブレードや用紙との摩擦による中間転写ベルト61の劣化、厚さの削れを抑制することができるので、転写性能を安定化させることができる。
【0070】
図3は、中間転写ベルト61と一次転写ローラ5及び感光体ドラム1による1次転写部の圧接状態を示している。上述のように、中間転写ベルト61は、図1に示す、駆動ローラ62と従動ローラ63との間に張架されている。一次転写ローラ5は、硬質の導電性樹脂で構成されており、中間転写ベルト61を挟んで感光体ドラム1に圧接されている。
【0071】
一次転写時に、転写電圧は一次転写ローラ5に印加され、感光体ドラム1の外周面に担持された現像剤像は中間転写ベルト61に転写される。
【0072】
本願発明においては、一次転写ローラ5が導電性樹脂で構成されているので、抵抗が小さく、温度や湿度といった環境の影響度が小さい。従って、本願発明の画像形成装置10によれば、環境変化に関らず、一次転写性能を高く安定させることができる。
【0073】
中間転写ベルト61は、一次転写ローラ5及び感光体ドラム1より硬度が小さいので、一次転写ローラ5の圧接力によって中間転写ベルト61が変形する。中間転写ベルト61の変形量に応じて、中間転写ベルト61と一次転写ローラ5とが圧接するニップ領域16の大きさが決定される。一次転写における転写には、ニップ領域16の大きさをある程度、確保する必要がある。
【0074】
【表1】

【0075】
表1は、一次転写ローラ5と中間転写ベルト61の硬度(JISA硬度)の関係について示しており、一次転写ローラ5の環境での抵抗変動、ニップ領域16の幅、一次転写ローラ5の永久歪みの有無について評価した。
【0076】
以下、表1の結果について効果があるものの一例を実施例として、効果が充分には得られなかったものの数例を比較例として説明する。
(実施例)
中間転写ベルト61の硬度を60度、一次転写ローラ5の硬度を90度とした。この時、中間転写ベルト61の弾性層42には、厚さ300μmのウレタンゴムを用いた。変形量は0.20mmであった。
【0077】
この場合、一次転写ローラ5の抵抗が環境によって変動しにくく、ニップ領域16の幅も適切に形成されている。従って、環境変化に関らず、一次転写性能を高く安定させることができる。
【0078】
中間転写ベルト61の硬度が40度以上75度以下の範囲内であって、一次転写ローラ5が中間転写ベルト61より硬質である○の範囲内では、一次転写ローラ5の環境での抵抗変動が少なく、ニップ領域16の幅も適切で、一次転写ローラ5の永久歪みも発生しなかった。
(比較例1)
中間転写ベルト61の硬度を60度、一次転写ローラ5の硬度を40度とした。
【0079】
この場合、一次転写ローラ5に永久歪みが発生してしまう。
(比較例2)
中間転写ベルト61の硬度を40度、一次転写ローラ5の硬度を40度とした。この時、中間転写ベルト61の弾性層42には、厚さ500μmのウレタンゴムを用いた。変形量は0.30mmであった。
【0080】
この場合、ニップ領域16の幅も大きくなり過ぎて、圧接力が不安定となる。
(比較例3)
中間転写ベルト61の硬度を60度、一次転写ローラ5の硬度を60度とした。
【0081】
この場合、一次転写ローラ5に永久歪みが発生したり、ニップ領域16の幅が大きくなり過ぎて圧接力が不安定となることはないが、環境によって一次転写ローラ5の抵抗が変動しやすい範囲なので、転写性能を高く安定させることができない。
(比較例4)
中間転写ベルト61の硬度を90度、一次転写ローラ5の硬度を60度とした。この時、中間転写ベルト61の弾性層42には、厚さ10μmのウレタンゴムを用いた。変形量は0.10mmであった。
【0082】
この場合、転写に必要なニップ領域16の幅が充分確保されるものの、環境によって一次転写ローラ5の抵抗が変動しやすい範囲なので、転写性能を高く安定させることができない。
(比較例5)
中間転写ベルト61の硬度を90度、一次転写ローラ5の硬度を90度とした。
【0083】
この場合、環境によって一次転写ローラ5の抵抗は変動しにくいものの、転写に必要なニップ領域16の幅が確保できない。
【0084】
一次転写ローラ5の硬度が50度以下で、中間転写ベルト61の硬度が40度より大きく75度以下であって、かつ中間転写ベルト61と一次転写ローラ5の硬度の差が20度以上である×の範囲内では、一次転写ローラ5の環境での抵抗変動が少なく、ニップ領域16の幅も適切だったが、比較例1と同様に一次転写ローラ5の永久歪みという致命的不具合が発生した。
【0085】
一次転写ローラ5の硬度が40度以上75度以下であって、中間転写ベルト61の硬度が40度もしくは、中間転写ベルト61の硬度が50度でかつ中間転写ベルト61と一次転写ローラ5の硬度の差が20度以上の◇の範囲内では、一次転写ローラ5の環境での抵抗変動が少なく、一次転写ローラ5の永久歪みも発生しなかったが、比較例2と同様にニップ領域16の幅が大きくなり過ぎて、圧接力が不安定であった。
【0086】
中間転写ベルト61と一次転写ローラ5の硬度の差が20度未満でかつ、中間転写ベルト61の硬度が40度より大きく75度以下の範囲内であって、一次転写ローラ5の硬度が50度より大きく75度以下の△の範囲内では、ニップ領域16の幅は適切で、一次転写ローラ5の永久歪みも発生しなかったが、比較例3と同様に一次転写ローラ5の環境での抵抗が変動しやすかった。
【0087】
一次転写ローラ5の硬度が40度以上75度以下であって、中間転写ベルト61の硬度が75度を超える□の範囲内では、ニップ領域16の幅は適切で、一次転写ローラ5の永久歪みも発生しなかったが、比較例4と同様に一次転写ローラ5の環境での抵抗が変動しやすかった。
【0088】
一次転写ローラ5の硬度が80度以上であって、中間転写ベルト61の硬度が75度を超える▽の範囲内では、一次転写ローラ5の抵抗が環境によって変動しにくく、一次転写ローラ5の永久歪みも発生しなかったが、比較例5と同様にニップ領域16の幅が確保できなかった。
【0089】
【表2】

【0090】
表2は、一次転写ローラ5の抵抗を変えた場合における、一次転写ローラ5の表面への異物付着による抵抗変動、転写電界(強度)を評価した結果について示している。一次転写ローラ5は、直径10mmのステンレス等の金属を基材とする軸の表面を導電性の硬質ウレタン樹脂によって被覆した。抵抗は、導電性カーボンの充填材により、体積抵抗率5×10Ω・cm〜5×10Ω・cmの範囲内となるよう適宜調整した。
【0091】
一次転写ローラ5の抵抗が10Ω・cm〜10Ω・cmの範囲よりも低い場合には、一次転写ローラ5の表面にトナーがフィルミングする等の異物付着により大きな抵抗変動が発生してしまうと、充分な強度の転写電界が印加されず、画質の劣化を招いてしまう。逆に、この範囲よりも高い場合には、抵抗変動は少なくなるものの、充分な強度の転写電界を印加することができない。
【0092】
【表3】

【0093】
表3は、中間転写ベルト61の抵抗(体積抵抗率)の範囲について示しており、中間転写ベルト61からのリークの発生、中間転写ベルト61上への電荷の蓄積を評価した。中間転写ベルト61は、弾性層42として使用したウレタンゴムの抵抗を調整する等により、体積抵抗率5×10Ω・cm〜5×1013Ω・cmの範囲内となるようにした。中間転写ベルト61の抵抗が10Ω・cm〜1013Ω・cmの範囲よりも低い場合には、中間転写ベルト61からのリークを生じて一次転写時に充分な転写電力を維持することができない。逆に、この範囲よりも高い場合には、中間転写ベルト61上に電荷が蓄積され過ぎてしまうため、各転写位置を通過後の中間転写ベルト61を除電する手段が別途必要になってしまう。
【0094】
【表4】

【0095】
表4は、中間転写ベルト61の変形量mmと、現像剤像の転写性能、現像剤の飛散、中間転写ベルト61を駆動させるための回転トルクN・m、中間転写ベルト61の破断、及び用紙のシワ寄りの関係について示している。
【0096】
中間転写ベルト61の変形量が0.10mm未満であれば、中間転写ベルト61と一次転写ローラ5との圧接力が小さすぎて、画像の一部欠落や、現像剤の飛散が発生する。また、中間転写ベルト61の変形量が0.25mmを超えると、中間転写ベルト61と一次転写ローラ5との圧接力が大きすぎて、中間転写ベルト61を駆動させるための回転トルクの上昇、中間転写ベルト61の破断、及び用紙のシワ寄りのおそれがある。
【0097】
これに対して中間転写ベルト61の変形量が0.10mm以上0.25mm以下であれば、中間転写ベルト61と一次転写ローラ5との間に一次転写に適した圧接力を生じさせることができ、画像の欠落、現像剤の飛散、回転トルクの過剰な上昇、中間転写ベルト61の破断、及び用紙のシワ寄りを防止することができる。従って、中間転写ベルト61の変形量は、0.10mm以上0.25mm以下であることが好ましい。
【0098】
【表5】

【0099】
表5は、中間転写ベルト61の基材41の厚さμmと、現像剤像の転写性能、基材41にクラックが入るまでの印刷枚数(×1000枚)、及び中間転写ベルト61を駆動させるための回転トルクN・mとの関係について示している。
【0100】
中間転写ベルト61の硬度を60度、弾性層42の厚さは300μmのウレタンゴム、変形量は0.20mmで、表面層43は、厚さ10μmのフッ素樹脂、一次転写ローラ5の硬度を90度とした。
【0101】
基材41の厚さが異なる種々の中間転写ベルト61を作成し、これらの中間転写ベルトを画像形成装置10に適用して、A4サイズの国内中質紙(シャープ株式会社推奨紙の北越紀州製紙株式会社製MI紙)に連続印字を行った。なお、基材41はポリイミド樹脂で構成されている。
【0102】
基材41の厚さが小さいほど、回転トルクが小さくて済むので、駆動源として小容量の駆動モータを用いることができる。しかし、基材41の厚さが30μm未満であると、基材41にクラックが入るまでの印字枚数が極端に少ない。即ち、中間転写ベルト61は強度不足となる。一方、基材41の厚さが55μmを超えると、文字抜け等、画像の一部欠落が発生し、一次転写性能が低下する。これは、中間転写ベルト61の剛性が大きくなり過ぎるので、感光体ドラム1上に対して、中間転写ベルト61が柔軟に接触できなくなるためである。また、基材41の厚さが55μmを超えると、中間転写ベルト61の回転ムラが発生するおそれもある。
【0103】
これに対して、基材41の厚さが30μm以上55μm以下であれば、基材41にクラックが入るまでの印字枚数が少な過ぎることはなく、中間転写ベルト61に必要とされる強度を充分に保持できる。また、中間転写ベルト61が感光体ドラム1及び一次転写ローラ5に柔軟に接触できるので、転写性能を高く安定させることができる。従って、基材41の厚さは、30μm以上55μm以下であることが好ましい。
【0104】
なお、本発明は、感光体ドラムが一つのカラー画像もしくはモノクロ画像のみを形成可能な電子写真方式の画像形成装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 感光体ドラム(現像剤像担持体)
2 帯電装置
3 露光ユニット
4 現像装置
5 一次転写ローラ
6 中間転写ベルトユニット
7 定着装置
10 画像形成装置
13 レジストローラ
14 二次転写前帯電装置
15 対向ローラ
16 ニップ領域
20 画像読取部
31 画像形成部(32,33,34)
41 基材
42 弾性層
43 表面層
61 中間転写ベルト
62 駆動ローラ
63 従動ローラ
64 クリーニングユニット
65 中間転写ベルト用クリーニング装置
66 二次転写ローラ
67 排紙トレイ
71 加熱ローラ
72 加圧ローラ
81 給紙トレイ
82 手差しトレイ
100 画像読取ユニット
200 画像形成ユニット
300 給紙ユニット
400 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤像を担持する感光体ドラム(現像剤像担持体)と、複数の支持ローラ間に張架され搬送される弾性層を有する中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトを挟んで前記感光体ドラムと圧接し、前記感光体ドラムに担持された現像剤像を前記中間転写ベルトに転写する一次転写ローラとを備えた電子写真方式の画像形成装置であって、前記一次転写ローラは、前記中間転写ベルトより硬質であって導電性樹脂で構成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記中間転写ベルトは、硬度(JISA硬度)が40度以上75度以下の範囲内であって、前記一次転写ローラは、硬度(JISA硬度)が80度以上である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記一次転写ローラは、抵抗(体積抵抗率)が10Ω・cm〜10Ω・cmの範囲内である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記中間転写ベルトは、基材、前記基材上に配置された弾性層、及び前記弾性層上に配置された表面層を有する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記弾性層は、ウレタンゴムで構成され、前記表面層は、フッ素樹脂で構成される請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記中間転写ベルトと前記一次転写ローラとの圧接位置における前記中間転写ベルトの変形量は、0.10mm以上0.25mm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記基材は、ポリイミド樹脂で構成される請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記基材の厚さは、30μm以上55μm以下である請求項7に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−128262(P2011−128262A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284907(P2009−284907)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】