説明

画像形成装置

【課題】感光体表面の帯電工程が接触式のDC帯電により行われる場合において、画像品質を低下することなく、感光層の摩耗を極力抑制して感光体の長寿命化を図ることのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】CPU91は画像入力部40からI/F96を介して一時記憶部94に記憶された画像データを読み出し、各色の画像データに写真領域が含まれるか否かを判断する。写真領域が含まれる場合は、CPU91は写真領域を含む色に対応する感光体ドラムの表面電位を高電位に設定する。一方、写真領域を含まない場合は、その色に対応する感光体ドラムの表面電位を低電位に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザプリンタ、ファクシミリ等の、電子写真式の画像形成装置に関し、特に、感光体ドラムの表面を接触若しくは非接触の状態で帯電させる帯電部材を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置において、感光体ドラムの表面を均一に帯電させる好適な手段としては、コロナ放電器を備えたコロナ帯電方式と、帯電ローラに代表される導電性の帯電部材を備えた接触帯電方式とがある。コロナ放電器はオゾン等のコロナ生成物が多く発生するので、オゾンにより空気中の成分が分解され、NOxやSOx等のイオン生成物が生成される。そのため、近年ではコロナ帯電方式に代えて接触帯電方式が採用される傾向が認められる。この接触帯電方式は、特にDC電圧若しくはDC電圧にAC電圧を重畳した電圧を印加することによりオゾン、NOx、SOx等の発生を抑制可能である。
【0003】
特に、複数の帯電装置を有するタンデム式のカラー画像形成装置では、オゾン発生量が多くなるため接触帯電方式を採用するメリットは大きい。また、DC電圧のみを印加する方式(以下、DC帯電ともいう)と、DC電圧にAC電圧を重畳した電圧を印加する方式(以下、AC+DC帯電ともいう)を比較した場合、帯電均一性を確保するためにはAC+DC帯電が優れているが、DC帯電の方が発生するオゾン量も少なく、電源(高圧トランス)のコストも低減できるため、近年ではDC帯電が主流となりつつある。
【0004】
しかし、DC帯電では、AC電圧による帯電の均一化効果がないため、帯電部材の汚れや感光体ドラム表面の凹凸等により放電が不均一になりやすい。また、感光体ドラム上に形成されたトナー像を記録媒体へ転写する際に、帯電とは逆の電荷がドラムに印加され、ドラム表面電位が低下する。このときの表面電位のギャップを転写メモリ電位と呼び、転写メモリ電位が許容値を超える場合は記録媒体の先端と後端で画像濃度が変化したり、前回印字された画像が次の画像上に残像となって現れたりするが、DC帯電ではこの転写メモリも発生しやすい傾向にある。
【0005】
DC帯電において帯電の均一性を向上させるためには、印加するDC電圧を上げて、帯電部材と感光体ドラムとの微小空隙で発生する放電を強くすれば良い。一方で、接触帯電方式では感光体ドラム表面の帯電工程が表面近傍での放電により行われるため、感光層の摩耗(膜削れ)が促進されることが知られている。この理由は、ドラム表面に衝突するイオンのエネルギーが高く、ドラム表面の感光層が劣化してクリーニングブレード等の摩擦力で削れやすくなるためであると考えられる。
【0006】
特に有機感光層(OPC)を有する感光体を用いる場合、感光層が摩耗すると静電容量が増大し、画像形成に最適な静電潜像を形成するために感光体表面に与えるべき電荷量が変化する。また、感光層の摩耗が進行すると、感光体の耐圧特性が低下するため、帯電部材に高電圧が印加されたときに感光層がピンホールと呼ばれる局所的な絶縁破壊を起こしやすい。このピンホールは画像上で黒点(色点)となって現れ、画像品質上の大きな問題となる。
【0007】
AC+DC帯電においては、感光層の摩耗を抑制する方法が種々提案されており、例えば特許文献1には、転写材の搬送中におけるAC電圧のピーク間電圧ないし電流値を、画像形成時に比べて低下させる方法が開示されている。また、特許文献2には、画像中に占める中間濃度部の割合に基づいてAC+DC帯電とDC帯電とを切り替える画像形成装置が開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、画像形成モード、画像モード、解像度などの条件に応じてAC+DC帯電とDC帯電とを切り替えるとともに、AC+DC帯電或いはDC帯電が選択されたとき、同じ環境条件であってもACバイアス値或いはDCバイアス値の大きさを制御する画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−120197号公報
【特許文献2】特開平11−174785号公報
【特許文献3】特開2004−347751号公報(段落[0064]〜[0068]、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、2の方法は、AC+DC帯電のみ、或いはAC+DC帯電とDC帯電とを併用する場合の技術であり、上述したようなDC帯電における感光層の摩耗を抑制する方法として不十分であった。
【0011】
また、複数の感光体ドラムと、これを帯電する複数の帯電部材とを有するタンデム式のカラー画像形成装置においては、例えば、原稿画像に文字領域と写真領域とが混在しており、文字領域をブラックで、写真領域をカラーで印字する場合等のように、各感光体ドラムを用いて形成される各色の画像モードが異なることがある。
【0012】
この点、特許文献3には、カラー複写機、プリンタに応用可能であると記載されているが(段落[0072])、通常は原稿画像全体としての画像モード(文字モード、写真モード等)を判断するため、特許文献3の技術をタンデム式のカラー画像形成装置に適用した場合、原稿画像全体の画像モードに応じて複数の帯電部材に印加される帯電バイアスを一律に制御することを想定していると考えられる。即ち、各色の画像モードを個別に判断し、画像モードに応じて各感光体ドラムに対応する帯電部材に印加される帯電バイアスを個別に制御する具体的な方法については何ら記載されていなかった。
【0013】
なお、感光体表面を非接触の状態で帯電させる場合においても、帯電部材と感光体とが近接している場合は上述したような接触帯電方式と同様の問題が生じる。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑み、感光体表面の帯電工程が接触式のDC帯電により行われる場合において、画像品質を低下することなく、感光層の摩耗を極力抑制して感光体の長寿命化を図ることのできる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、 表面に感光層が形成された複数の像担持体と、該像担持体の表面に接触若しくは非接触状態で直流電圧のみからなる帯電バイアスを印加することで前記像担持体表面を帯電させる複数の帯電部材と、該帯電部材に直流電圧を印加する電圧印加手段と、を備えた画像形成装置において、出力画像の画像データを記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された各色の画像データから所定の階調数以上の中間調濃度を含む写真領域を検出するとともに、検出結果に基づいて前記電圧印加手段から前記帯電部材に印加される帯電バイアスを制御することにより前記各像担持体の表面電位を個別に設定する制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0016】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記制御手段は、画像データ中に写真領域を含む色に対応する前記像担持体の表面電位を第1の電位に設定するとともに、画像データ中に写真領域を含まない色に対応する前記像担持体の表面電位を第1の電位よりも低い第2の電位に設定することを特徴としている。
【0017】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された画像データを多数の領域に区切り、各領域内に存在する所定以上の濃度変化をエッジとして検出するとともに、エッジの割合が基準値よりも少ない領域を写真領域として判別することを特徴としている。
【0018】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記感光層が有機感光層であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の構成によれば、記憶手段に記憶された各色の画像データから写真領域を検出するとともに、検出結果に基づいて電圧印加手段から帯電部材に印加される帯電バイアスを制御して各像担持体の表面電位を個別に設定することにより、帯電均一性が要求される写真領域を含む画像を出力する場合にはDC電圧を高くして転写メモリや異常帯電を抑制し、中間調の階調再現性を高めることができる。また、写真領域を含まない文字や線、ベタ領域のみの画像を出力する場合は実用上問題のない画像が得られる必要最低限のDC電圧を印加すれば良いため、感光層の摩耗を極力抑えることができる。従って、写真領域を含む画像の品質を維持しつつ感光体ドラムの長寿命化も達成することができる。
【0020】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の画像形成装置において、写真領域の有無に応じて像担持体の表面電位を第1の電位と第1の電位よりも低い第2の電位に2段階制御することにより、簡単な制御で写真領域を含む画像の品質を維持しつつ感光体ドラムの長寿命化を達成できる。
【0021】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1又は第2の構成の画像形成装置において、記憶手段に記憶された画像データを多数の領域に区切り、各領域内に存在する所定以上の濃度変化をエッジとして検出するとともに、エッジの割合が基準値よりも少ない領域を写真領域として判別することにより、写真領域を簡単に且つ高精度で判別することができる。
【0022】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の画像形成装置において、感光層が摩耗し易い有機感光層である像担持体においても、画像品質を維持しながらピンホールの発生リスクを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の画像形成装置の全体構成を示す概略断面図
【図2】図1における画像形成ユニットPa周辺の部分拡大図
【図3】本発明の画像形成装置の制御経路を示すブロック図
【図4】トナー像の転写時における感光体の表面電位変化を示すグラフ
【図5】感光体の表面電位を変化させたときの、感光層の層厚と転写メモリ電位ΔV1との関係を示すグラフ
【図6】帯電ローラに印加されるDC電圧と感光体の表面電位との関係を示すグラフ
【図7】DC電圧印加時に帯電ローラから感光体表面に流れる帯電電流と感光体の表面電位との関係を示すグラフ
【図8】帯電電流と単位時間当たりの感光層の摩耗量との関係を示すグラフ
【図9】本発明の画像形成装置における帯電ローラへ印加する印加電圧の制御例を示すフローチャート
【図10】写真領域の有無に応じて表面電位設定を切り替えた場合(本発明)と、表面電位設定を一定にした場合(比較例)における、印字枚数と感光層の削れ量との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の画像形成装置の構成を示す概略図である。カラープリンタ100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、Pc及びPdが、搬送方向上流側(図1では右側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa〜Pdは、異なる4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程によりシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの画像を順次形成する。
【0025】
この画像形成部Pa〜Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1c及び1dが配設されており、さらに駆動手段(図示せず)により図1において時計回りに回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa〜Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a〜1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次一次転写されて重畳された後、二次転写ローラ9の作用によって記録媒体の一例としての転写紙P上に二次転写され、さらに、定着部7において転写紙P上に定着された後、装置本体より排出される。感光体ドラム1a〜1dを図1において反時計回りに回転させながら、各感光体ドラム1a〜1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0026】
トナー像が転写される転写紙Pは、装置下部の用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラ12a及びレジストローラ対12bを介して二次転写ローラ9へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが主に用いられる。また、二次転写ローラ9の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナーを除去するためのブレード状のベルトクリーナ19が配置されている。
【0027】
次に、画像形成部Pa〜Pdについて説明する。回転自在に配設された有機感光層(OPC)を有する感光体ドラム1a〜1dの周囲及び下方には、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる帯電装置2a、2b、2c及び2dと、各感光体ドラム1a〜1dに画像情報を露光する露光ユニット4と、感光体ドラム1a〜1d上にトナー像を形成する現像装置3a、3b、3c及び3dと、感光体ドラム1a〜1d上に残留した現像剤(トナー)を除去するクリーニング装置5a〜5dが設けられている。
【0028】
ユーザにより画像形成開始が入力されると、先ず、帯電装置2a〜2dによって感光体ドラム1a〜1dの表面を一様に帯電させ、次いで露光ユニット4によって光照射し、各感光体ドラム1a〜1d上に画像信号に応じた静電潜像を形成する。現像装置3a〜3dは、感光体ドラム1a〜1dに対向配置された現像ローラを備え、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの各色のトナーを含む二成分現像剤が所定量充填されている。このトナーは、現像装置3a〜3dの現像ローラにより感光体ドラム1a〜1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光ユニット4からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0029】
そして、一次転写ローラ6a〜6dにより一次転写ローラ6a〜6dと感光体ドラム1a〜1dとの間に所定の転写電圧で電界が付与され、感光体ドラム1a〜1d上のイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、感光体ドラム1a〜1dの表面に残留したトナーがクリーニング装置5a〜5dにより除去される。
【0030】
中間転写ベルト8は、従動ローラ10、駆動ローラ11を含む複数の懸架ローラに掛け渡されており、駆動モータ(図示せず)による駆動ローラ11の回転に伴い中間転写ベルト8が時計回りに回転を開始すると、転写紙Pがレジストローラ12bから所定のタイミングで中間転写ベルト8に隣接して設けられた二次転写ローラ9へ搬送され、中間転写ベルト8とのニップ部(二次転写ニップ部)において転写紙P上にフルカラー画像が二次転写される。トナー像が転写された転写紙Pは定着部7へと搬送される。
【0031】
定着部7に搬送された転写紙Pは、定着ローラ対13のニップ部(定着ニップ部)を通過する際に加熱及び加圧されてトナー像が転写紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された転写紙Pは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられる。転写紙Pの片面のみに画像を形成する場合は、そのまま排出ローラ15によって排出トレイ17に排出される。
【0032】
一方、転写紙Pの両面に画像を形成する場合は、定着部7を通過した転写紙Pの一部を一旦排出ローラ15から装置外部にまで突出させる。その後、転写紙Pは排出ローラ15を逆回転させることにより分岐部14で用紙搬送路18に振り分けられ、画像面を反転させた状態でレジストローラ対12bに再搬送される。そして、中間転写ベルト8上に形成された次の画像が二次転写ローラ9により転写紙Pの画像が形成されていない面に転写され、定着部7に搬送されてトナー像が定着された後、排出トレイ17に排出される。
【0033】
図2は、図1における画像形成部Pa付近の拡大図である。なお、画像形成部Pb〜Pdについても基本的に同様の構成であるため説明を省略する。感光体ドラム1aの周囲には、ドラム回転方向(図2の反時計回り)に沿って帯電装置2a、現像装置3a、クリーニング装置5a、及び除電ランプ20が配設され、中間転写ベルト8を挟んで一次転写ローラ6aが配置されている。
【0034】
帯電装置2aは、感光体ドラム1aに接触してドラム表面に帯電バイアス(DC電圧)を印加する帯電ローラ21と、帯電ローラ21をクリーニングするための帯電クリーニングローラ23とを有している。本発明においては、発生するオゾン量を少なくし、且つ帯電バイアス電源42(図3参照)のコストを低減するために、直流電圧のみからなる帯電バイアスを帯電ローラ21に印加している。
【0035】
現像装置3aは、2本の攪拌搬送スクリュー25と、磁気ローラ27と、現像ローラ29とを有する二成分現像式であり、磁気ローラ27表面に起立する磁気ブラシを用いて現像ローラ29にトナー薄層を形成し、現像ローラ29にトナーと同極性(正)の現像バイアスを印加してドラム表面にトナーを飛翔させる。
【0036】
クリーニング装置5aは、クリーニングブレード31及び回収スクリュー33を有している。
【0037】
感光体ドラム1a表面の、中間転写ベルト8との当接面よりも回転方向下流側には、クリーニングブレード31が感光体ドラム1aに当接した状態で固定されている。クリーニングブレード31としては、例えばJIS硬度が78°のポリウレタンゴム製のブレードが用いられ、その当接点において感光体接線方向に対し所定の角度で取り付けられている。なお、クリーニングブレード31の材質及び硬度、寸法、感光体ドラム1aへの食い込み量及び圧接力等は、感光体ドラム1aの仕様に応じて適宜設定される。クリーニングブレード31によって感光体ドラム1a表面から除去された残留トナーは、回収スクリュー33の回転に伴ってクリーニング装置5aの外部に排出される。
【0038】
クリーニング装置5aと帯電装置2aの間には除電ランプ20が配置されている。除電ランプ20は、感光体ドラム1a表面に光照射することによりドラム表面の残留電荷を除去する。
【0039】
次に、本発明の画像形成装置の制御経路について説明する。図3は、本発明の画像形成装置に用いられる制御経路の一例を示すブロック図である。なお、カラープリンタ100を使用する上で装置各部の様々な制御がなされるため、カラープリンタ100全体の制御経路は複雑なものとなる。そこで、ここでは制御経路のうち、本発明の実施に必要となる部分を重点的に説明する。
【0040】
制御部90は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)91、読み出し専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)92、読み書き自在の記憶部であるRAM(Random Access Memory)93、一時的に画像データ等を記憶する一時記憶部94、カウンタ95、カラープリンタ100内の各装置に制御信号を送信したり操作部50からの入力信号を受信したりする複数(ここでは2つ)のI/F(インターフェイス)96を少なくとも備えている。また、制御部90は、装置本体内部の任意の場所に配置可能である。
【0041】
ROM92には、カラープリンタ100の制御用プログラムや、制御上の必要な数値等、カラープリンタ100の使用中に変更されることがないようなデータ等が収められている。RAM93には、カラープリンタ100の制御途中で発生した必要なデータや、カラープリンタ100の制御に一時的に必要となるデータ等が記憶される。また、ROM92(或いはRAM93)には、累積印刷枚数や、後述する除電光量や帯電バイアスの決定に用いられる累積印刷枚数と除電光量との関係、及び累積印刷枚数と帯電バイアスとの関係も格納されている。カウンタ95は、印刷枚数を積算してカウントする。なお、カウンタ95を別途設けなくても、例えばRAM93でその回数を記憶するようにしてもよい。
【0042】
また、制御部90は、カラープリンタ100における各部分、装置に対し、CPU91からI/F96を通じて制御信号を送信する。また、各部分、装置からその状態を示す信号や入力信号がI/F96を通じてCPU91に送信される。制御部90が制御する各部分、装置としては、例えば、画像形成ユニットPa〜Pd、露光ユニット4、一次転写ローラ6a〜6d、定着部7、二次転写ローラ9、画像入力部40、バイアス制御回路41、操作部50等が挙げられる。
【0043】
画像入力部40は、パーソナルコンピュータ等からカラープリンタ100に送信される画像データを受信する受信部である。画像入力部40より入力された画像信号はデジタル信号に変換された後、一時記憶部94に送出される。
【0044】
バイアス制御回路41は、帯電バイアス電源42、現像バイアス電源43、及び転写バイアス電源44と接続され、制御部90からの出力信号によりこれらの各電源を作動させるものであり、これらの各電源はバイアス制御回路41からの制御信号によって、帯電バイアス電源42は帯電装置2a〜2d内の帯電ローラ21に、現像バイアス電源43は現像装置3a〜3d内の磁気ローラ27及び現像ローラ29に、転写バイアス電源44は一次転写ローラ6a〜6d及び二次転写ローラ9に、それぞれ所定のバイアスを印加する。
【0045】
操作部50には、液晶表示部51、各種の状態を示すLED52が設けられており、ユーザは操作部50を操作して指示を入力することで、カラープリンタ100の各種の設定をし、画像形成等の各種機能を実行させる。液晶表示部51は、カラープリンタ100の状態を示したり、画像形成状況や印刷部数を表示したり、タッチパネルとして、両面印刷や白黒反転等の機能や倍率設定、濃度設定など各種設定を行えるようになっている。
【0046】
その他、操作部50には、画像形成を開始するようにユーザが指示するスタートボタン、画像形成を中止する際等に使用するストップ/クリアボタン、カラープリンタ100の各種設定をデフォルト状態にする際に使用するリセットボタン等が設けられている。
【0047】
図1に示したカラープリンタ100においては、帯電ローラ21にDC電圧のみを印加するDC帯電方式を採用しているため、AC電圧による帯電の均一化効果が期待できるAC+DC帯電方式に比べて転写メモリが発生し易くなっている。図4は、トナー像の転写時における感光体の表面電位変化を示すグラフである。転写バイアスをONにすると、帯電とは逆(トナーと逆極性、ここでは負)の電荷(転写電流)が感光体表面に流れるため、感光体の表面電位が部分的に低くなる。このときの表面電位のギャップΔV1を転写メモリ電位と呼び、図4に示すように、転写バイアスのON直後と、転写バイアスのOFF直前とで表面電位が変化し、画像の先端と後端における画像濃度が変化してしまう。
【0048】
また、トナーが付着する露光部(画像部)と、トナーが付着しない未露光部(白地部)とで感光体表面に流れる転写電流が異なる。即ち、露光部では転写電流がトナーに取られるため未露光部に比べて表面電位の低下が小さくなる。その結果、転写バイアスがOFFとなって再び表面電位が上昇するとき、露光部の表面電位が未露光部に比べて高くなり、例えば高濃度の画像を印字した後に画像領域全面のハーフトーン画像を印字した場合、前回印字された画像が残像(ゴースト)となって白っぽく浮かび上がる。
【0049】
図5は、感光体の表面電位を変化させたときの、感光層の層厚と転写メモリ電位ΔV1との関係を示すグラフであり、図6は、帯電ローラに印加されるDC電圧と感光体の表面電位との関係を示すグラフである。図5に示すように、感光体の表面電位が300V(図の◆で表示)、600V(図の■で表示)、900V(図の●で表示)と高くなるにつれて転写メモリ電位ΔV1は低下する。また、図6に示すように、帯電ローラに印加されるDC電圧と感光体の表面電位は比例関係にあり、印加するDC電圧が高くなるほど感光体の表面電位も高くなる。
【0050】
従って、転写メモリ電位が許容値以下となるように低下させ、感光体表面の帯電の均一性を維持するためには、DC電圧を上げて表面電位を高めに設定する必要があることがわかる。
【0051】
図7は、DC電圧印加時に帯電ローラから感光体表面に流れる帯電電流と感光体の表面電位との関係を示すグラフであり、図8は、帯電電流と単位時間当たりの感光層の摩耗量(以下、摩耗レートという)との関係を示すグラフである。図7に示すように、帯電電流と感光体の表面電位とは比例関係にあり、図8に示すように、帯電電流と摩耗レートも比例関係にあることから、DC電圧を上げて表面電位を高めに設定すると、感光層の摩耗レートが増加することがわかる。
【0052】
ところで、図1に示したようなカラープリンタ100においては、各画像形成部Pa〜Pdは、画像入力部40から入力された画像データに基づいて、例えば0から255までの256階調の中間調(ハーフトーン)濃度を出力可能となっている。この中間調濃度の階調を再現性良く均一に出力するためには感光体ドラム1a〜1d表面の帯電均一性が要求されるため、表面電位を高めに設定する必要がある。
【0053】
しかし、一般的な出力画像は、写真原稿のように多階調の中間調濃度が含まれるものばかりではなく、多階調を含まない文字や線、ベタ(ソリッド)画像のみの原稿も多い。文字や線、ベタ原稿は写真原稿に比べて厳密な階調再現性が要求されないため、感光体の表面電位が少々不均一であっても実用上問題のない画像が得られる。
【0054】
以上のことから、本発明においては1枚の画像データ中に階調再現性が要求される所定の階調数以上の中間調濃度を含む領域(以下、写真領域という)が存在するか否かに応じて帯電ローラ21に印加されるDC電圧を制御することとした。具体的には、画像入力部40から入力され、一時記憶部94に保存された各色の画像データをCPU91により読み出して多数の微小領域に区切り、各領域内に存在する所定以上の濃度変化(エッジ)を検出する。そして、エッジの割合が予め定められた基準値よりも少ない領域は中間調が多用されている写真領域として判別する。また、エッジが基準値以上の割合で存在する領域は文字、線、ベタ領域(以下、文字領域という)として判別する。
【0055】
なお、文字領域か写真領域かの判別は、実際の画像とは必ずしも一致しない。例えば、実際の画像が写真や図であっても、周囲濃度からの濃度変化の立ち上がり(コントラスト)が所定値以上であればエッジとして検出し、エッジが基準値以上の割合で含まれている場合は文字領域と判別する。逆に、実際の画像が文字であっても、装飾文字など階調変化のある写真のような文字であり、周囲濃度からの濃度変化の立ち上がりが所定値よりも小さければエッジとして検出せず、エッジの割合が基準値よりも少ない場合は写真領域と判別する。
【0056】
この判別結果を用いて、画像データ中に写真領域が存在する色に対応する帯電装置(例えばシアンの画像データであれば帯電装置2a)に印加されるDC電圧を高く設定して表面電位の均一性を確保する。一方、写真領域が存在しない色に対応する帯電装置に印加されるDC電圧を低く設定して感光体表面に流れる帯電電流を小さくする。
【0057】
これにより、帯電均一性が要求される写真領域を含む画像を出力する場合にはDC電圧を高くして転写メモリや異常帯電を抑制し、中間調の階調再現性を高めることができる。また、写真領域を含まない文字や線、ベタ領域のみの画像を出力する場合は実用上問題のない画像が得られる必要最低限のDC電圧を印加すれば良いため、感光層の摩耗を極力抑えることができる。従って、写真領域を含む画像の品質を維持しつつ感光体ドラム1a〜1dの長寿命化も達成することができる。
【0058】
特に、図1に示したタンデム式のカラープリンタ100では、出力画像によっては中間調を出力しない画像形成部Pa〜Pdも存在する。例えば、文字原稿の割合が多いユーザの場合、ブラックの画像形成部Pdは中間調を出力する割合が極めて少ない。従って、本発明のように各画像形成部Pa〜Pdにおける感光体ドラム1a〜1dの表面電位を個別に設定することで、各感光体ドラム1a〜1dの感光層を無駄に摩耗することがなくなり、耐用期間を延長することができる。
【0059】
図9は、本発明の画像形成装置における帯電ローラへ印加する印加電圧の制御例を示すフローチャートである。必要に応じて図1〜図3を参照しながら、図9のステップに従い帯電ローラへ印加されるDC電圧の設定手順について説明する。先ず、パソコン等から印字命令及び画像データが送信され、印字が開始されると(ステップS1)、CPU91は画像入力部40からI/F96を介して一時記憶部94に記憶された画像データを読み出し(ステップS2)、各色の画像データに写真領域が含まれるか否かを判断する(ステップS3)。
【0060】
そして、写真領域が含まれる場合は、CPU91は写真領域を含む色に対応する感光体ドラムの表面電位を高電位(ここでは600V)に設定する(ステップS4)。一方、写真領域を含まない場合は、その色に対応する感光体ドラムの表面電位を低電位(ここでは300V)に設定する(ステップS5)。
【0061】
次に、CPU91はバイアス制御回路41に制御信号を送信し、各感光体ドラム1a〜1dがステップS4或いはS5で設定した表面電位となるように帯電装置2a〜2dの帯電ローラ21に所定のDC電圧を印加する(ステップS6)。そして、露光ユニット4によって各感光体ドラム1a〜1d上に画像データに応じた静電潜像を形成し、現像装置3a〜3dでトナー像に現像した後、中間転写ベルト8上に一次転写し、転写紙P上に二次転写する画像出力を行う(ステップS7)。その後、所定枚数の印字が終了している場合は処理を終了し、印字が継続中である場合はステップS2に戻り、以下同様の制御を繰り返す(ステップS3〜S7)。
【0062】
なお、図9に示した制御例では写真領域の有無に応じてDC電圧を2段階に設定しているが、写真領域の割合に応じてDC電圧を3段階以上に設定しても良い。また、感光体の表面電位の設定値も感光層の層厚や帯電特性に応じて適宜変更すれば良い。
【0063】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば上記実施形態に記載されている構成部品の材質、形状、その相対配置などは、特定的な記載がない限りはこの発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0064】
また、上記実施形態において、帯電ローラ21は、感光体ドラム1a〜1dの表面に接触した状態で感光体ドラム1a〜1dの表面を帯電させるように構成されているが、帯電ローラ21が感光体ドラム1a〜1dの表面に近接して配置され、非接触の状態で帯電させるように構成される実施形態においても、実質的に同じ作用により実質的に同じ効果を奏することができる。
【0065】
また、本発明は図1に示したタンデム型のカラープリンタに限らず、モノクロプリンタ、ロータリー式或いはタンデム式のカラー複写機等の、種々のカラー画像形成装置に適用できるのはもちろんである。
【実施例】
【0066】
図1に示すような試験機(京セラミタ社製FC−C5300DN改造機)を用い、本発明の制御を行った場合の画像品質及び感光体ドラムの耐久性について調査した。試験機の条件としては、印字速度を160mm/secとし、初期層厚が35μmの正帯電単層OPC感光層を有する直径30mmの感光体ドラムと、直径12mmのエピクロルヒドリンゴム製の帯電ローラを用いた。
【0067】
試験方法としては、23℃、65%RH環境下においてテスト画像(10枚で1セットとし、10枚中5枚は写真領域混在原稿、残りの5枚は文字原稿)の耐久印字を行い、帯電ローラに印加するDC電圧を写真領域混在原稿のとき600V、文字原稿のとき300Vに切り替えた場合(本発明)と、DC電圧を600V、或いは300Vのまま維持した場合(比較例1、2)とで、感光層の層厚を測定し、画像品質を目視により観察した。また、感光層の許容削れ量(摩耗限度)を25μm、感光体ドラムの目標寿命を20万枚とした。結果を図10に示す。
【0068】
図10に示すように、写真領域混在原稿は600V、文字原稿は300Vの表面電位設定に切り替えた本発明(図の●で表示)では、感光体寿命は目標寿命である20万枚から約23万枚まで延長することができた。また、写真領域混在原稿では表面電位を高く設定したので、シミ、ムラ等の異常画像は見られなかった。文字原稿の場合は300Vに表面電位を下げたものの、少々帯電が不均一であってもシミ、ムラ画像として認識することはなく、実用上問題のない良好な画像として出力された。
【0069】
これに対し、表面電位設定を600Vに維持して印字した比較例1(図の×で表示)では、18万枚あたりで感光層の削れ量が磨耗限度である25μmに達した。目標寿命である20万枚では感光層の削れ量が許容値の25μmをオーバーし、表面にピンホールが発生した。ただし、写真領域混在原稿はムラなく均一に再現した。
【0070】
一方、表面電位設定を300Vに維持して印字した比較例2(図の◇で表示)では、感光層の削れ量は低減され、磨耗限度の25μmに達するまで24万枚程度印字でき、目標寿命である20万枚を上回った。しかしながら、表面電位設定が低いため、写真領域混在原稿にシミ、ムラが発生し、画像の均一性という面では著しく損なわれる結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、感光体ドラムの表面を接触若しくは非接触の状態で帯電させる帯電部材を備えた画像形成装置に利用可能である。本発明の利用により、階調再現性が要求される写真領域を含む画像の品質を維持しつつ感光体ドラムの長寿命化も促進可能な画像形成装置を提供することができる。
【0072】
また、画像データを多数の領域に区切り、各領域内に存在する所定以上の濃度変化をエッジとして検出し、エッジの割合が基準値よりも少ない領域を写真領域として判別するので、写真領域を簡単に且つ精度良く判別可能となる。
【0073】
特に、感光層が摩耗し易いOPC等の有機感光体を備えた画像形成装置に適用した場合、文字原稿及び写真原稿を印字する場合の画像品質を維持しつつ、感光層の摩耗に伴うピンホールの発生リスクを低下させて装置の長寿命化、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0074】
Pa〜Pd 画像形成部
1a〜1d 感光体ドラム(像担持体)
2a〜2d 帯電装置
3a〜3d 現像装置
4 露光ユニット
6a〜6d 一次転写ローラ
8 中間転写ベルト
9 二次転写ローラ
20 除電ランプ
21 帯電ローラ(帯電部材)
41 バイアス制御回路(電圧印加手段)
42 帯電バイアス電源(電圧印加手段)
90 制御部(制御手段)
94 一時記憶部(記憶手段)
100 カラープリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に感光層が形成された複数の像担持体と、
該像担持体の表面に接触若しくは非接触状態で直流電圧のみからなる帯電バイアスを印加することで前記像担持体表面を帯電させる複数の帯電部材と、
該帯電部材に直流電圧を印加する電圧印加手段と、
を備えた画像形成装置において、
出力画像の画像データを記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された各色の画像データから所定の階調数以上の中間調濃度を含む写真領域を検出するとともに、検出結果に基づいて前記電圧印加手段から前記帯電部材に印加される帯電バイアスを制御することにより前記各像担持体の表面電位を個別に設定する制御手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、画像データ中に写真領域を含む色に対応する前記像担持体の表面電位を第1の電位に設定するとともに、画像データ中に写真領域を含まない色に対応する前記像担持体の表面電位を第1の電位よりも低い第2の電位に設定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された画像データを多数の領域に区切り、各領域内に存在する所定以上の濃度変化をエッジとして検出するとともに、エッジの割合が基準値よりも少ない領域を写真領域として判別することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記感光層が、有機感光層であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−128373(P2011−128373A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286794(P2009−286794)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】