説明

画像形成装置

【課題】 シート補給中に、両面搬送パスにおけるジャムが発生した場合、シート収納部を引き出した状態で、引き出しユニットを引き出して両面下ガイドを下方に開放する操作を行う場合があった。この場合、開放された両面下ガイドとシート収納部とは干渉位置にあるため、シート収納部や引き出しユニットの挿抜動作で、両面下ガイド、シート収納部、シート収納されたシートを損傷してしまう恐れがあった。
【解決手段】 上段シート収納部31、32を最大に引き出した状態における、引き出し方向の規制面の位置を、規制面位置401とした場合に、引き出しユニット2を引き出す際に、両面下ガイド3の端部が引き出し方向で規制面位置401を越えるまで、両面下ガイド2と規制板31a、32aとが接触しないように押し上げコロ6が両面下ガイド2の開放を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート上に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置のシート搬送路でシート詰まり(以下、ジャムと称する)が発生した場合の、ジャム処理の操作性を向上するための構成として以下のものがある。画像形成装置のレジスト手段、転写手段、定着前搬送手段、定着手段、両面搬送手段等のシート搬送手段を、一体的に引き出しユニットとして構成して、装置本体の装置前面側から引き出し可能に設けられている。そして、引き出しユニットを引き出した後に、搬送ガイドを構成する開閉部材を上方又は下方に開放してジャム処理を行う。これによって、ジャムしたシートの視認性と取り出すためのアクセス性を良くしている(特許文献1参照)。このように、引き出しユニットの構成によりジャム処理を行うようにすると、引き出しユニットとその上方又は下方に配設された画像形成部やシート収納手段との間にジャム処理空間を予め設ける必要がなく、装置の小型化に有効である。
【0003】
また、シート収納部を装置本体の、前側から引き出せるように構成すると、シート収納部へのシート補給およびジャム処理を装置の同一方向から作業することが可能となり作業性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−69770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、引き出しユニットを引き出して開閉部材を下方に解放するジャム処理構成の装置において、シート収納部を引き出してシートを補給しているときに、ジャムが発生した場合には以下の問題があった。
ジャムしたシートを取り除くために、誤って引き出しユニットの開閉部材を下方に開放した状態で、シート収納部を移動する操作を行ったり、シート収納部を引き出した状態で引き出しユニットの開閉部材を下方に開放してしまったりすることが考えられる。このときに、下方へと開放された開閉部材と、引き出されたシート収納部や収納されたシートとが接触することで、開閉部材、シート収納部若しくはシート収納部に収納されたシートの損傷を招く恐れがあった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、シート収納部を引き出して開閉部材を開放した状態で、引き出しユニットやシート収納部を移動した場合に起き得る、開閉部材、シート収納部若しくはシート収納部に収納されたシートの損傷を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、画像形成部でシートに画像を形成する画像形成装置であって、装置本体に対して、スライド可能な引き出しユニットと、前記画像形成部で画像が形成されるシートが搬送されるシート搬送路を形成するとともに、前記引き出しユニットに開閉自在に設けられた開閉部材と、前記開閉部材の下方への開放を規制する開放規制部材と、前記引き出しユニットの下方に隣接して配設され、前記引き出しユニットと同一方向にスライド可能なシート収納手段と、前記シート収納手段に配設され、前記シート収納手段に積載されたシートの側端部を規制するためのシート規制部材と、を有し、前記シート収納手段を引き出した状態において、前記引き出しユニットを引き出す過程で、前記開閉部材の端部が前記引き出し方向で前記シート規制部材の位置を越えるまでは、前記開閉部材と前記シート規制部材とが接触しないように前記開放規制部材が前記開閉部材の開放を規制し、更に、前記開閉部材の端部が前記引き出し方向で前記シート規制部材を越えた後に、前記開放規制部材による前記開閉部材の開放の規制が解除されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、引き出しユニットに開閉自在に取り付けられた開閉部材やシート収納手段の損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る画像形成装置の斜視図。
【図2】本発明に係る画像形成装置の概略断面図。
【図3】本発明に係る画像形成装置の両面下ガイド部を示す側面図および部分断面図。
【図4】本発明に係る画像形成装置の両面下ガイド部を示す側面図および部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置等は、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
図1は本発明の実施形態の一例である画像形成装置の斜視図である。図2は、本発明の実施形態の一例である画像形成装置の概略断面図である。
【0012】
画像形成装置は電子写真方式を用いたカラー画像形成装置であり、多種多様なシート材への適応性やプリント生産性に優れるという利点から、4色の画像形成ユニットを中間転写ベルトの上方に並べて配置した、中間転写タンデム方式を採用している。
【0013】
画像形成装置1の構成について図2を参照して説明する。
画像形成装置1は、シートを給送する給送部101と、給送部101によって給送されたシートを搬送するシート搬送装置109と、を備える。さらに画像形成装置は、シート搬送装置109によって搬送されるシートに画像を形成する画像形成部102が設けられている。
【0014】
給送部101は、上段シート収納部31、32、中段シート収納部33、下段シート収納部34および手差しシート収納部30、各シート収納部にからシートを給送する給紙手段35〜39によって、構成されている。
【0015】
画像形成部102は、感光体61(61Y、61M、61C、61K)、帯電装置62(62Y、62M、62C、62K)、露光装置63(63Y、63M、63C、63K)、現像装置64(64Y、64M、64C、64K)を備える。また、画像形成部102は、一次転写装置66(66Y、66M、66C、66K)、および感光体クリーナ65(65Y、65M、65C、65K)を備える。
【0016】
画像形成部102は、感光体61Y、61M、61C、61Kに形成されたトナー像が1次転写される中間転写ベルト67を備える。なた、中間転写ベルト67に重畳転写されたフルカラートナー像をシートに転写するための転写手段としての転写ローラ43が画像形成部102に設けられている。像担持体としての中間転写ベルト67は駆動ローラ68、テンションローラ69および二次転写内ローラ70等のローラによって張架され、図中矢印Bの方向へと搬送駆動される。画像形成部102は、さらに、トナー像が転写されたシート上に画像を定着する定着器45を備える。
【0017】
シート搬送装置109は、給紙手段35〜39によって送られたシートが通過する搬送パス40、41や、中間転写ベルト67と転写ローラ43とのニップ位置(転写位置)にシートを送り出すレジストローラ42を備える。また、シート搬送装置109は、トナー像が転写されたシートを定着器45へ送る定着前搬送ベルト44を備える。
【0018】
シート搬送装置109は、定着器45の搬送方向下流側に、排紙搬送パス51、反転パス52および反転パス52を経たシートが通過するスイッチバックパス55を備えている。シート搬送装置109は、スイッチバックパス55内に設けられた反転上ローラ53と反転下ローラ54とを備える。47は、スイッチバックパス55において搬送方向を反転されたシートが搬送される両面搬送パスであり、搬送パス41に繋がっている。
【0019】
<シートの搬送プロセス>
シートは、各シート収納部30〜34に積載収納されており、各給紙手段35〜39により画像形成タイミングに合わせて給紙される。給紙手段35〜39により送り出されたシートSは搬送パス40または41を通過し、レジストローラ42へと搬送される。
【0020】
レジストローラ42は、各シート収納部30〜34から搬送されてくるシートSを突き当ててループを作成することによりシートSの先端を倣わせ斜行を修正する。またレジストローラ42は、シートSへの画像形成のタイミング、即ち、中間転写ベルト67上に担持されたトナー像に合わせて、所定のタイミングにてシートSを二次転写部へ搬送する。斜行修正を行った後に、所望のタイミングにて、レジストローラ42はシートSを二次転写部へ送り出す。二次転写部は、対向配置された二次転写内ローラ70および転写ローラ43により形成されるシートSへのトナー像転写ニップ部である。二次転写部において、所定の加圧力と静電的負荷バイアスを与えることでシートS上にトナー像が転写される。
【0021】
<画像の作像プロセス>
二次転写部までの上記シートの搬送プロセスと同じ時期に行われる画像の形成プロセスについて説明する。
【0022】
帯電装置62により表面を一様に帯電され、回転する前記感光体61に対し、送られてきた画像情報の信号に基づいて露光装置63が駆動され潜像が形成される。感光体61上に形成された静電潜像は、現像装置64によるトナー現像を経て、感光体61上にトナー像として顕在化する。その後、一次転写装置66により所定の加圧力および静電的負荷バイアスが与えられ、中間転写ベルト67上にトナー像が転写される。その後、感光体61上に僅かに残った転写残トナーは前記感光体クリーナ65により回収され、再び次の画像形成に備える。以上説明した画像形成は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の夫々について行われる。
【0023】
感光体61に形成されたY、M、CおよびK各色のトナー画像は、中間転写ベルト67上に一次転写されて、フルカラーのトナー像が中間転写ベルト67に形成されることになる。
【0024】
<二次転写以降のプロセス>
二次転写部においてシート上にフルカラーのトナー像が二次転写される。その後、シートSは定着前搬送ベルト44により定着器45へと搬送される。定着器45は、対向するローラもしくはベルト等による所定の加圧力と、一般的にはヒータ等の熱源による熱とで、シートS上にトナー像を溶融固着させる。このようにして得られた定着画像を有するシートは、内排紙ローラ46を経由して、排紙搬送パス51か、もしくは反転排紙や両面画像形成を行う場合には反転パス52のいずれかに搬送されるべく経路選択が行われる。内排紙ローラ46によって排紙搬送パス51内を搬送されたシートは、排紙トレイ50に排紙される。
【0025】
シートの両面に画像形成を行う場合、シートSは反転パス52から反転上ローラ53、反転下ローラ54を経由してスイッチバックパス55内へと引き込まれる。スイッチバックパス55において、反転下ローラ54の回転方向をそれまでとは逆転させること(スイッチバック動作)を行うことでシートの先後端を入れ替え、両面搬送パス47へと搬送される。その後、両面ローラ48a〜48dによって、各給紙手段35〜39より搬送されてくる後続シートとのタイミングを合わせて搬送パス41に合流し、レジストローラ42を経て二次転写部へと送られる。裏面(2面目)の画像形成プロセスに関しては、先述の表面(1面目)の場合と同様なので説明は省略する。
【0026】
シートを反転排紙させる場合には、反転パス52からスイッチバックパス55へと引き込んだ後、反転上ローラ53、反転下ローラ54の逆転により、送り込まれた方向と反対向きに退出させ、反転排紙パス56を経由して排紙トレイ50に排紙される。
【0027】
<引き出しユニットの構成>
図1に示すように、引き出しユニット2は、スライド支持機構としてのレール901で支持されることで画像形成装置本体1a(以下、装置本体と称する)に対してスライド可能可能となっている。引き出しユニット2は、レジストローラ42、転写ローラ43、定着前搬送ベルト44、定着器45、内排紙ローラ46、両面搬送パス47、両面ローラ48a〜48dを含むシート搬送手段(図2の破線で示す範囲)を一体に支持したものである。引き出しユニット2と、上部シート収納部32、31とは、互いに隣接して設けられている。
【0028】
引き出しユニット本体2aには、両面搬送パス47を形成する両面下ガイド3が開閉自在に取り付けられている。即ち、開閉部材としての両面下ガイド3は閉位置でシート搬送路としての両面搬送パス47を形成する。
【0029】
両面下ガイド3の先端側には、把手3aおよびマグネット吸着板3bが取り付けられている。図1において、4は両面下ガイド3の開放を所定な最大角度で規制するガイドテープである。ガイドテープ4の一端は引き出しユニット本体2aに取り付けられており、ガイドテープ4の他端は両面下ガイド3に取り付けられている。両面下ガイド3は、両面下ガイド3に配設されたマグネット吸着板3bが、引き出しユニット本体2aの下面に配設された不図示のマグネットに吸着することにより、閉じた状態に保持される。
【0030】
引き出しユニット2を引き出した状態で、把手3aを操作することにより、両面下ガイド3を閉鎖位置にてロックするロック手段としてのマグネット吸着板3bによる吸着(ロック)を解除することができる。つまり、把手3aの操作によって両面下ガイド3が両面搬送パス47の下ガイド3を下方に開放することが可能な構成となっている。
【0031】
上記構成によれば、引き出しユニット2内のシート搬送経路でジャムしたシートを処理する際、視認性とアクセス性の良い状態でジャム処理操作が行え、ジャム処理操作性が向上する。また、各シート搬送手段を個別に引き出す構成と比較して、スライド機構や枠体を削減でき、上段シート収納部31,32との間にジャム処理空間を予め設ける必要がなく、装置の小型化に有効である。なお、ジャムしたシートとは、搬送路で詰まったシートの他に、ジャム等によって画像形成装置が停止させられた時に、搬送路を搬送中で停止させられたシートも含む。
【0032】
なお、マグネット吸着板3bは、両面下ガイド3に対して揺動可能に支持されている。よって、両面下ガイド3が自重や両面ローラ48a〜48dの反力で傾いた場合や、引き出し操作時に振動等の力を受けた場合であっても、マグネット吸着板3bが両面下ガイド3と独立して引き出しユニット2のマグネットに追従する。したがって、両面下ガイド3を閉じた状態に確実に保持可能な構成となっている。
【0033】
また、各シート収納部31〜34も、装置本体の手前に引き出してシート補給を行う構成である。よってシート補給およびジャム処理を同一方向から作業することが可能となり作業性が向上する。
【0034】
<両面下ガイドの開放角規制構成>
図3,4は、画像形成装置の側面図および部分断面図である。図3は、第2シート収納手段としての中段シート収納部33、および、引き出しユニット2を最大量引き出し、尚且つ両面下ガイド3が下方に開放された状態を示す。
【0035】
中段シート収納部33にシートSを補給している最中にジャムが発生して両面搬送パス47に滞留したシートを取り除くために、中段シート収納部33を閉じる前にジャム処理操作を行うと、図3の状態になる場合がある。これは、引き出しユニット2を、例えば一旦最大に引き出して両面下ガイド3が回動自在となるようにマグネット吸着板3bによるロックを解除してから、引き出しユニット2をスライド移動させる動作を、シート補給中に行うような場合である。
【0036】
図3に示すように、両面下ガイド3は、ガイドテープ4により吊り下げられる構成となっている。更に、ガイドテープ4の端部に設けられたストッパー5が両面下ガイドの曲げ部3cに当接することにより、ガイドテープ4は、最大量となる最大開放角θ1を超えて両面下ガイド3が開放するのを規制する。本実施形態では、最大開放角θ1にある両面下ガイド3の下端は、中段シート収納部33の上面よりも高い位置に空隙量X1をもつように設定されているため、両面下ガイド3と中段シート収納部33が干渉することはない。
【0037】
よって、いかなる操作手順をとった場合でも、両面下ガイド3、中段シート収納部33、および、中段シート収納部33内部の規制板33a,33b、33cやシートSの変形や破損を招く恐れがなく、スムーズなスライド操作を行うことが可能となる。このことは、下段シート収納部34においても同様の効果が得られる。
【0038】
なお、本実施形態では、両面下ガイド3の最大開放角θ1を23°に設定したが、両面搬送パス47でのジャム処理が十分に行え、かつ、中段シート収納部33との干渉が回避できる角度であればこれに限定されるものではない。
【0039】
図4は、上段シート収納部31,32を最大に引き出した状態で、引き出しユニット2を途中まで引き出し、且つ、両面下ガイド3が下方に開放された状態を示す。この状態は、上段シート収納部31,32にシートを補給している最中にジャムが発生し両面搬送パス47の滞留したシートを取り除くために、上段シート収納部31,32を閉じる前にジャム処理操作を行う場合に生じる。
【0040】
なお、図4において、Sは上段シート収納部31、32に収納されたシートである。31a,31b、31c、32a,32b,32cは、上段シート収納部31、32に設けられ、収納されたシートの側端部を規制する鉛直方向に延びた規制面を備えた規制板である。
【0041】
図4に示すように、両面下ガイド3は、装置本体1aに設けられた押し上げコロ6によって開放角度が規制される。つまり、押し上げコロ6は、両面下ガイド3の下面(下部)3dに接して両面下ガイド3を下方から支持することにより、最大開放角θ1より小さい開放角θ2の範囲内となるように両面下ガイド3の開放を規制する。開放規制部材としての押し上げコロ6によって規定される両面下ガイド3の開放角度θ2は、引き出しユニット2のスライド量により変化し、押し上げコロ6と両面下ガイド3の下面3dとの当接が外れる直前で最大となる。つまり、押し上げコロ6は、引き出しユニット2のスライド移動に両面下ガイド3の開放を連動させるようになっている。
【0042】
本実施形態では、押し上げコロ6によって開放が規制された状態において、両面下ガイド3の下端は、上段シート収納部31,32内部の規制板31a、32aに対しては、図4に示す空隙量X2以上を有する高い位置に設定されており、干渉することはない。
【0043】
上段シート収納部31,32が最も引き出された状態において、シートを規制するシート規制部材としての規制板31a,32aの規制面の位置(スライド方向の位置)を規制面位置401と言う。引き出しユニット2を引き出していく過程で、規制面位置401を両面下ガイド3の先端が通過してから、押し上げコロ6と両面下ガイド3の下面3dとの当接が外れる。言い換えると、引き出しユニット2を引き出していく過程で、引き出し方向において規制面位置401を両面下ガイド3の先端が通過するまでは、押し上げコロ6によって両面下ガイド3の開放が規制される。そして、押し上げコロ6は、少なくとも上述のように両面下ガイド3の先端と上段のシート収納部31、32との間に隙間が生じるように両面下ガイド3の開放を規制する。
【0044】
よって、開放角θ2内に両面下ガイド3の開放が押し上げコロ6で規制されているとき、両面下ガイド3、規制板31a,32a、シート収納部31、32内のシートSの変形や破損を招く恐れがなく、スムーズなスライド操作を行うことが可能となる。
【0045】
図4の状態から、更に引き出しユニット2を引き出すと、両面下ガイド3の下面3dと押し上げコロ6との当接が外れて、押し上げコロ6による両面下ガイド3の開放規制が解除される。そして、両面下ガイド3の自重で両面下ガイド3は開く方向に回動する。このとき、図4に示すように上段シート収納部31,32が引き出された状態となっている場合には、両面下ガイド3の下端が、自重で上段シート収納部31,32の筐体上部31Hに接する。両面下ガイド3の下端が接触する上段シート収納部31,32の筐体上部31Hは、段差がない形状(略フラットな形状と以下では呼ぶ)となっている。図4で示した実施形態では、筐体上部31Hは、段差のない略フラットな形状として、平面およびテーパ面で構成された形態を例示している。
【0046】
このように筐体上部31Hが、略フラットな形状となっているため、両面下ガイド3の先端が筐体上部31Hに接した状態で引き出しユニット2を最大引き出し位置まで引き出しても、両面下ガイド3が引っ掛からずスムーズなスライド操作を行うことができる。つまり、引き出しユニット2をスライドさせると、両面下ガイド3の先端が引っ掛からずにスムーズに筐体上部31Hと摺接するようになっている。また、両面下ガイド3の下面3dも、段差のない略フラットな形状で構成されている。よって両面下ガイド3の先端が筐体上部31Hに接した状態で、上段シート収納部31,32をスライドした場合であっても、引掛り無くスムーズなスライド操作を行うことが可能となる。
【0047】
ここで、仮に、引き出しユニット2を引き出していく過程で、規制面位置401を両面下ガイド3の先端が通過する以前に、押し上げコロ6による両面下ガイド3の開放規制が解除されるように構成した場合には以下の不具合がある。
【0048】
即ち、押し上げコロ6による開放規制が解除されて自重で両面下ガイド3が回動することで、両面下ガイド3の先端が、規制板31a,32aと装置本体1aとの間に位置してしまう。この状態で、引き出しユニット2を引き出す動作若しくは上段シート収納部31、32を装置本体1aに装着する方向へ移動させる動作を行うと、両面下ガイド3の先端と、鉛直に起立した規制板31a,32aの規制面とが接してしまう。そして、両面下ガイド3や規制板31a、32aが損傷してしまう恐れがある。また、上段シート収納部31、32に収納されたシートSの上面に両面下ガイド3が接する。このようにシートSの上面に両面下ガイド3が接した状態で、引き出しユニット2若しくは上段シート収納部31、32をスライド移動させると、収納されたシートの上面を両面下ガイド3の先端で損傷してしまう恐れがある。
【0049】
本実施形形態では、引き出しユニット2を引き出していく過程で規制面位置401を両面下ガイド3の先端が通過してから、押し上げコロ6による両面下ガイド3の開放規制が解除されるので、上記不具合が生じることがない。
【0050】
なお、本実施形態の押し上げコロ6は、両面下ガイド3を閉め忘れた際の操作性向上にも効果がある。即ち、両面搬送パス47におけるジャム処理を行い、両面下ガイド3を開状態のまま引き出しユニット2を収納した場合に以下のように押し上げコロ6は作用する。即ち、引き出しユニット2のスライド動作に連動して、押し上げコロ6が、両面下ガイド3の下面3dと当接し、マグネット吸着板3bを不図示のマグネットに吸着する位置まで押し上げることが可能な構成となっている。よって、両面下ガイド3を閉め忘れた際でも、両面下ガイドの変形や破損を招く恐れがなく、自動的に下ガイド3を閉状態に戻しながらスムーズなスライド操作を行うことが可能である。
【0051】
本実施形態では、いかなる操作手順をとっても、両面下ガイド3、上段シート収納部31,32、上段シート収納部31,32内部の規制板31a,32b,32cやシートSの変形や破損を招く恐れがなく、スムーズなスライド操作を行うことが可能となる。
【0052】
なお、上記実施形態では、上段シート収納部31,32を左右に配設する構成として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、中段、下段と同様なシート収納部を上下に4段配設した形態であっても、両面下ガイド3と1段目、2段目のシート収納部との間で前述したの配置関係が維持できる構成であれば同様な効果が得られる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態では、装置の大型化を招くことがなく、視認性とアクセス性の良いシート補給およびジャム処理操作性を維持できる。さらに、両面搬送パス47に滞留したシートを取り除くために開放される両面下ガイド3の開放が押し上げコロ6やガイドテープ4によって適切に規制される。したがって、シート収納部31,32,33,34の少なくとも1つを引き出した状態でも、引き出されたシート収納部は、両面下ガイド3と不具合が生じるような干渉を起こさずに、引き出しユニット2をスムーズにスライド移動させることができる。
【0054】
つまり、マグネット吸着板3bによる両面下ガイド3のロックが解除されていても、シート収納部および引き出しユニット2の挿抜手順によらず、両面下ガイド3が、シート収納部31,32,33,34内のシートに接触することがない。また、両面下ガイド3が、シート収納部31,32の規制板31a、32aに接触することがない。また、両面下ガイド3は、シート収納部31、32と不都合が生じるような接触が起らないようになっている。このように押し上げコロ6やガイドテープ4が両面下ガイド3の開放を規制している。
【0055】
よって、シート収納部31,32,33,34、および、それらの内部の規制板やシートSにストレスを付与することがなく、スムーズなスライド操作を行うことが可能な操作性に優れた画像形成装置を提供できる。
【0056】
なお、本実施の形態では、上段シート収納部31,32が最も引き出された状態において、シートを規制する規制板31a,32aの規制面の位置(スライド方向の位置)を「規制面位置401」と規定している。そして、この規制面位置401を両面下ガイド3の先端が通過した後に両面下ガイド3の開放規制を解除する構成としている。このように規定することにより、上段シート収納部31,32が引き出し途中の状態でも、必ず両面下ガイド3の先端が規制板31a,32aの規制面を通過するまで両面下ガイド3の開放規制が解除されることがない。
【符号の説明】
【0057】
1 画像形成装置
2 引き出しユニット
3 両面下ガイド
4 ガイドテープ(第2開放規制部材)
5 ストッパー
6 押し上げコロ(開放規制部材)
42 レジストローラ
43 二次転写外ローラ
44 定着前搬送ベルト
45 定着器
46 内排紙ローラ
47 両面搬送パス47
48 両面ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成部でシートに画像を形成する画像形成装置であって、
装置本体に対して、スライド可能な引き出しユニットと、
前記画像形成部で画像が形成されるシートが搬送されるシート搬送路を形成するとともに、前記引き出しユニットに開閉自在に設けられた開閉部材と、
前記開閉部材の下方への開放を規制する開放規制部材と、
前記引き出しユニットの下方に隣接して配設され、前記引き出しユニットと同一方向にスライド可能なシート収納手段と、
前記シート収納手段に配設され、前記シート収納手段に積載されたシートの側端部を規制するためのシート規制部材と、を有し、
前記シート収納手段を引き出した状態において、前記引き出しユニットを引き出す過程で、前記開閉部材の端部が前記引き出し方向で前記シート規制部材の位置を越えるまでは、前記開閉部材と前記シート規制部材とが接触しないように前記開放規制部材が前記開閉部材の開放を規制し、更に、前記開閉部材の端部が前記引き出し方向で前記シート規制部材を越えた後に、前記開放規制部材による前記開閉部材の開放の規制が解除されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記シート規制部材は、積載されたシートの側端部を規制する規制面を備え、
前記シート収納手段を最大に引き出した状態における、引き出し方向の前記規制面の位置を、規制面位置とし、前記開閉部材の端部が前記引き出し方向で前記規制面位置を越えるまでは、前記開放規制部材が前記開閉部材の開放を規制し、前記開閉部材の端部が前記引き出し方向で前記シート規制部材を越えた後に規制が解除されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記開放規制部材は、前記装置本体に設けられ、前記開閉部材の下部を支持することで前記開閉部材の開放を規制するとともに、前記引き出しユニットのスライド移動に連動して前記開閉部材を開閉させることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記開放規制部材による前記開閉部材の開放の規制が解除されると、前記開閉部材は自重で開放されるとともに、前記シート収納手段が最大に引き出された位置にある場合には、前記シート収納手段の筐体上部に前記開閉部材の先端は当接され、
前記開閉部材が当接する前記筐体上部は、前記引き出しユニットおよび前記シート収納手段のスライド移動を行ったときに前記開閉部材の先端と前記シート収納手段の筐体上部が摺接するような平面もしくはテーパ面となっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記開放規制部材による前記開閉部材の開放規制が解除された後に、前記開閉部材の前記開閉部材の開放を規制する第2の開放規制部材を備え、
前記シート収納手段は、高さ方向に複数配設され、
複数の前記シート収納手段のうちの下方に配置されたシート収納手段と、前記開閉部材とが干渉しないように、前記第2の開放規制部材が前記開閉部材の開放を規制することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成部は、像担持体と、像担持体に担持されたトナー像を転写位置にて転写する転写手段と、を備え、
前記画像形成装置は、前記転写位置へシートを送るレジスト手段と、前記トナー像が転写されたシートを定着手段へ搬送する定着前搬送手段と、第1面に画像が形成されたシートの第2面に画像を形成するために再度前記転写位置にシートを搬送するために両面搬送パスと、を備え、
前記引き出しユニットは、前記レジスト手段、前記転写手段、前記定着前搬送手段、前記定着手段を備え、
前記開閉部材は前記両面搬送パスを形成する部材であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−13332(P2011−13332A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155681(P2009−155681)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】