画像形成装置
【課題】カラートナーとクリアトナーによって画像形成する画像形成装置において、1種類のクリアトナーを用いて、周りの光沢に対して、部分的に光沢度を下げた領域、あるいは、部分的に光沢度を上げた領域、もしくは両者が混在するような、幅広い光沢度制御がなされた出力物を得る。
【解決手段】記録材にカラートナーによるトナー像を形成可能な像形成手段と、同一の記録材にクリアトナーによるトナー像を形成可能な像形成手段と、トナー像の定着手段と、出力画像の光沢度を部分的にアップ又は/及びダウンさせる領域を指定することが可能な指定手段と、制御手段と、を有する。クリアトナーは定着温度における溶融粘度がカラートナーの定着温度における溶融粘度がよりも高い。制御手段は指定手段で指定された領域の光沢情報に応じて記録材に対するカラートナーによるトナー像とクリアトナーによるトナー像との付与順を決定する。
【解決手段】記録材にカラートナーによるトナー像を形成可能な像形成手段と、同一の記録材にクリアトナーによるトナー像を形成可能な像形成手段と、トナー像の定着手段と、出力画像の光沢度を部分的にアップ又は/及びダウンさせる領域を指定することが可能な指定手段と、制御手段と、を有する。クリアトナーは定着温度における溶融粘度がカラートナーの定着温度における溶融粘度がよりも高い。制御手段は指定手段で指定された領域の光沢情報に応じて記録材に対するカラートナーによるトナー像とクリアトナーによるトナー像との付与順を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラートナー(有色トナー)とクリアトナー(透明トナー)によって画像形成を行うことが可能なプリンタ、複写機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、クリアトナーを用いた電子写真装置が提案されている。クリアトナーを用いることで、様々な表現ができるようになり、出力物の付加価値が向上する。このクリアトナーによる画像形成方法は、記録材上にカラートナー画像とクリアトナー像を順次画像形成し、一度に定着する方法が挙げられる。また、特許文献1や特許文献2に記載されているように、記録材上にカラートナー像を形成し、そのカラートナー像を一旦定着し、さらに、その上にクリアトナー像を画像形成し、そのクリアトナー像を定着する2回定着方法が挙げられる。
【0003】
一方、クリアトナーの使用方法としては、まず、画像部の光沢付与や均一光沢化が上げられる。成果物表面(出力される画像形成物表面)の光沢は全面均一光沢が好ましい。また、写真画像などは、より高光沢なものが好まれる。しかしながら、電子写真方式においては、出力画像の光沢が均一にならない場合が多い。例えば、白地部はトナーが乗らないため、記録材である紙の表面光沢がそのまま出力されるために常に一定の光沢となる。一方、ハイライト部では、トナーが細かい網点状に形成され、凹凸ができるため、光沢が下がってしまう。さらに、ソリッド部では、トナーが紙表面を十分に覆い、表面が滑らかになるため、光沢が上がってしまう。したがって、画像全体が不均一な光沢になってしまい画像品位を落としてしまう。そこで、全面をクリアトナーで覆って定着することで、白地部からベタ部まで均一光沢となる。さらに高光沢な画像を得る場合には、定着で紙に与える熱量を増やしてトナーを十分に溶したり、クリアトナーの溶融粘度を下げたりすることで、高光沢が得られる。
【0004】
もう一つのクリアトナーの使用方法としては、ウォーターマーク、アイキャッチ、セキュリィティマークなどと言われるような、クリアトナーによるマークによって、表現する使用方法が上げられる。このようなクリアトナーによるマークは、光沢が高いものから低いものまで、ユーザーの意図よって、目立つようにしたり、目立たないようにしたり、目的に応じて自由に選べることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−318482号公報
【特許文献2】特開2006−251722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなクリアトナーによるマークは、目立つようにしたり、目立たないようにしたりという意図と同時に、周りの光沢に対して高くしたり、低くしたりすることまで選択できることが望ましい。この周りの光沢に対して高くしたり、低くしたりする意図に対しては、例えば、光沢度が異なる複数のクリアトナーを備える方法が考えられる。しかし、この場合、新たな製造ラインが必要となったり、装置が複雑化するといった問題が発生する。
【0007】
一方、部分的な光沢度制御を行うために、定着工程を1回もしくは2回通すことによって、部分的に光沢度を上げた画像、もしくは部分的に光沢度を下げた画像を出力する方法も提案されている。しかし、定着工程を2回通す必要があり、生産性が低下してしまう。また、上記のような方法を用いた場合、幅広いグロスコントロールが可能になる。しかし、1つの出力物の同一面内において、周りの光沢に対して、部分的に光沢度を下げた領域と、部分的に光沢度を上げた領域が混在するような出力物を得る手段は、未だ提案されていない。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものである。その目的とするところは、カラートナーとクリアトナーによって画像形成を行い定着する画像形成装置において、1種類のクリアトナーを用いて、さらに生産性を落とさずに、上記のような出力物を得ることができる画像形成装置を提供することである。即ち、出力物の同一面内において、周りの光沢に対して、部分的に光沢度を下げた領域、あるいは、部分的に光沢度を上げた領域、もしくは両者が混在するような、幅広い光沢度制御がなされた出力物を得ることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、記録材にカラートナーによるトナー像を形成可能なカラートナー像形成手段と、同一の記録材にクリアトナーによるトナー像を形成可能なクリアトナー像形成手段と、記録材に形成されたトナー像を熱定着させる定着手段と、出力する画像について光沢度を部分的にアップまたはダウンもしくはアップとダウンさせる領域をユーザーが指定することが可能な光沢度領域指定手段と、制御手段と、を有し、前記クリアトナーは定着温度における溶融粘度が前記カラートナーの定着温度における溶融粘度がよりも高いトナーであり、前記制御手段は前記光沢度領域指定手段で指定された領域の光沢情報に応じて前記記録材に対する前記カラートナーによるトナー像と前記クリアトナーによるトナー像との付与順を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カラートナーとクリアトナーによって画像形成を行い定着する画像形成装置において、1種類のクリアトナーを用いて、さらに生産性を落とさずに、幅広い光沢度制御がなされた出力物を得ることができる。即ち、出力物の同一面内において、周りの光沢に対して、部分的に光沢度を下げた領域、あるいは、部分的に光沢度を上げた領域、もしくは両者が混在するような、出力物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1における画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】操作ディスプレイ部の平面図である。
【図3】(a)は制御系統の概略のブロック図、(b)は実施例1において用いたカラートナー及びクリアトナーの溶融粘度特性を示す図である。
【図4】実施例1における光沢処理モード選択時の制御フロー図である。
【図5】(a)は光沢処理モード選択時の操作ディスプレイ部の指示画面、(b)はグロスアップ補正またはグロスアップ補正における色原稿読み込み指示画面、(c)は同補正における光沢原稿読み込み指示画面、(d)はグロス混合補正における色原稿読み込み指示画面、(e)は同補正におけるグロスアップ用光沢原稿読み込み指示画面、(f)は同補正におけるグロスダウン用光沢原稿読み込み指示画面である。
【図6】(a)は実施例1における色原稿画像の一例、(b)はグロスアップ用光沢原稿画像の一例、(c)はグロスダウン用光沢原稿画像の一例、(d)はグロスアップ出力物の画像の一例、(e)グロスダウン出力物の画像の一例、(f)はグロス混合出力物の画像の一例である。
【図7】(a)はグロスアップモードの画像形成状態の一例の模式図、(b)はグロスダウンモードの画像形成状態の一例の模式図、(c)はグロス混合モードの画像形成状態の一例の模式図である。
【図8】(a)と(b)はトナー量が少ない場合の記録材上の未定着トナー状態及び溶融状態を示す概略図、(c)と(d)はトナー量が多い場合の記録材上の未定着トナー状態及び溶融状態を示す概略図、(e)はトナー量によるグロスの変化を示す概略図である。
【図9】定着ニップ部内の記録材搬送方向位置におけるトナー温度及びトナーの溶融粘度を模式的に示した図である。
【図10】(a)はグロスが高くなるトナー溶融状態を模式的に示した図、(b)はグロスが低くなるトナー溶融状態を模式的に示した図、(c)はクリアトナーがカラートナーの上側にある場合と、ない場合のトナー溶融状態を模式的に示した図である。
【図11】実施例1において用いたカラートナーとクリアトナーのグロス−温度特性図である。
【図12】(a)はカラートナーのみの記録材上における未定着状態を模式的に示した図、(b)は(a)の部分的拡大図、(c)はカラートナーのみの記録材上におけるトナー溶融状態を模式的に示した部分的拡大図、(d)はカラートナーのみの記録材上におけるトナー溶融状態を模式的に示した図である。
【図13】(a)は上側がカラートナー、下側がクリアトナーであるトナー像の記録材上における未定着状態を模式的に示した図、(b)は(a)の部分的拡大図、(c)は上側がカラートナー、下側がクリアトナーであるトナー像の記録材上におけるトナーが溶融した状態を模式的に示した部分的拡大図、(d)は上側がカラートナー、下側がクリアトナーであるトナー像の記録材上におけるトナーが溶融した状態を模式的に示した図である。
【図14】(a)は実施例2におけるグロス混合モードの画像形成状態の一例の模式図、(b)は色原稿画像の一例、(c)はグロスアップ用光沢原稿画像の一例、(d)はグロスダウン用光沢原稿画像の一例である。
【図15】(a)は実施例1における、透明トナーを付与しない場合、上側に付与する場合、下側に付与する場合、のグロス変化を示す図、(b)は実施例2における、透明トナーを付与しない場合、上側に付与する場合、下側に付与する場合、のグロス変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0013】
<実施例1>
(1)画像形成部
図1に、本発明の画像形成装置の一実施例である、電子写真方式、タンデム方式、中間転写方式の4色フルカラー画像形成装置100の概略断面構成を示す。この装置100は、クリアトナー(透明トナー)によって光沢処理した画像形成を行うことが可能な、複写機、プリンタ、ファクシミリとして機能する複合機である。図2は操作ディスプレイ部Bの平面図である。図3の(a)は制御系統の概略のブロック図である。Kは装置100を統括制御するコントローラ(制御手段)である。コントローラKはCPU(演算部)や記憶部(ROM、RAM)を含む。1000はパーソナルコンピュータ・ファクシミリ装置等の外部入力装置(外部ホスト装置)であり、コントローラKとインターフェイスを介して電気的に接続されている。装置100の上面側には、原稿読取り部(イメージスキャナ)Aと操作ディスプレイ部Bが配設されている。操作ディスプレイ部Bは、ユーザー(使用者、操作者)によるコマンド入力や、ユーザーへの装置状態等の報知を行う。装置100の内部には、図面上、左側から右側に水平方向に並べて(タンデム配列)、第1乃至第6の6つの電子写真画像形成部P(Pa・Pb・Pc・Pd・Pe・Pf)が順次に配設されている。
【0014】
原稿読取り部Aにおいて、101は原稿台ガラス、102はそのガラス101に対して開閉可能な原稿押え板である。コピー(原稿複写)モードの場合は、ガラス101上にコピーするカラー原稿(又はモノカラー原稿)Oを画像面下向きで所定の載置基準に従って載置し、その上に板102を被せることで原稿Oをセットする。板102を原稿自動送り装置(ADF、RDF)にしてガラス101上にシート状原稿を自動的に給送する構成にすることもできる。そして、操作ディスプレイ部Bにより所望のコピー条件を設定した後にコピースタートキー400を押す。そうすると、移動光学系103がガラス101の下面に沿って移動駆動されて、ガラス101上の原稿Oの下向き画像面が光学的に走査される。その原稿走査光が光電変換素子(固体撮像素子)であるCCD104に結像されて、RGB(レッド・グリーン・ブルー)の三原色で色分解読取りされる。読取られたRGBの各信号が画像処理部105に入力する。そして、画像処理部105で、C(シアン画像分)、M(マゼンタ画像分)、Y(イエロー画像分)、K(ブラック画像分)に処理された電気的画像情報がコントローラKに入力する。コントローラKは、画像露光装置としてのレーザー走査機構Cを制御して、電気的画像情報に対応して変調したレーザー光Lを各対応する画像形成部Pに対してそれぞれ出力する。
【0015】
プリンタモードの場合は、ホスト装置1000であるパーソナルコンピュータからコントローラKに電気的画像情報が入力して、装置100がプリンタとして機能する。ファクシミリ受信モードの場合は、ホスト装置1000である相手方ファクシミリ装置からコントローラKに電気的画像情報が入力して、装置100がファクシミリ受信機として機能する。ファクシミリ送信モードの場合は、原稿読取り部Aで光電読取りした原稿の電気的画像情報が画像処理部105からコントローラKに入力し、相手方ファクシミリ装置に送信されて、装置100がファクシミリ送信機として機能する。
【0016】
各画像形成部Pはそれぞれの現像器3に収容させた現像剤(以下、トナーと記す)の色が異なるだけで互いに同様の構成の電子写真画像形成機構である。各画像形成部Pは、それぞれ、静電潜像が形成される回転ドラム型の電子写真感光体(第1の像担持体:以下、ドラムと記す)1を有する。各ドラム1は矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。また、ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電器2、現像器3、1次転写帯電器4、ドラムクリーナ5を有する。帯電器2はドラム1の表面を所定の極性・電位に一様に帯電する帯電手段である。現像器3はドラム1の表面に形成された静電潜像をトナー像として可視化する現像手段であり、供給装置3aよりトナーが所定量充填されている。本実施例の装置100においては、第1の画像形成部Paの現像器3にはクリア(Cl)のトナー(クリアトナー)が収容されている。第2の画像形成部Pbの現像器3にはブラック(K)のカラートナーが収容されている。第3の画像形成部Pcの現像器3にはシアン(C)のカラートナーが収容されている。第4の画像形成部Pdの現像器3にはマゼンタ(M)のカラートナーが収容されている。第5の画像形成部Peの現像器3にはイエロー(Y)のカラートナーが収容されている。第6の画像形成部Pfの現像器3には第1の画像形成部Paの現像器3と同じクリア(Cl)のクリアトナーが収容されている。クリーナ5はドラム1の表面の1次転写残トナーを除去するクリーニング手段である。
【0017】
本実施例においては、第2乃至第5の画像形成部Pb・Pc・Pd・Peが、記録材にそれぞれカラートナーによるトナー像を形成可能な複数のカラートナー像形成手段である。また、第1と第6の画像形成部Pa・Pfが、それぞれ、記録材にクリアトナーによるトナー像を形成可能なクリアトナー像形成手段である。第1と第6の画像形成部Pa・Pfに収容されているクリアトナーは互いに同じものである。即ち、クリアトナーとしては同じ特性の1種類のクリアトナーを用いている。
【0018】
レーザー走査機構Cは、光源装置としての半導体レーザー、ポリゴンミラー、fθレンズ等を有し、各画像形成部の帯電処理されたドラム1の表面を、それぞれ、対応色の画像情報に応じて変調されたレーザー光Lで走査露光する。即ち、機構Cは、半導体レーザーから発せられたレーザー光をポリゴンミラーを回転して走査し、その走査光の光束を反射ミラーによって偏向し、fθレンズによりドラム1の母線上に集光して露光する。これにより、各ドラム1の表面に、それぞれ、露光された画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0019】
各画像形成部Pの下方部には中間転写ベルトユニット7が配設されている。ユニット7は、中間転写体としての可撓性を有するエンドレスベルト(第2の像担持体:以下、ベルト記す)8を有する。また、このベルト8を懸回張設している駆動ローラ9、2次転写対向ローラ10、テンションローラ11を有する。ベルト8はローラ9により矢印の時計方向にドラム1と同じ周速度をもって回転駆動される。各画像形成部Pの1次転写帯電器5は本例においては転写ローラ(導電性の帯電ローラ)であり、ベルト8の内側に配設されている。そして、各転写ローラ5は、ローラ9とローラ11との間のベルト部分を介して対応するドラム1の下面に対して圧接している。各ドラム1とベルト8との当接部(ニップ部)がそれぞれ1次転写部T1である。ローラ10にはベルト8を介して2次転写ローラ12が圧接している。ローラ12は導電性の帯電ローラである。ベルト8とローラ12との当接部(ニップ部)が2次転写部T2である。また、ローラ11のベルト巻回部にはクリーナ13が配設されている。本例においてこのクリーナ13はクリーニング部材としてクリーニングウエブ(不織布)を用い、これをベルト12の表面に当接させてベルト表面の2次転写残トナー及び紙粉等の異物を拭い取るようにして除去している。
【0020】
ユニット7の下方部には、シート状の記録材(記録媒体)Sを積載して収納している給紙カセット14が配設されている。カセット14から2次転写部T2に至る間には記録材搬送路15が配設されている。また、2次転写部T2よりも記録材搬送方向下流側には定着装置19が配設されている。
【0021】
フルカラー画像を形成するための動作は次のとおりである。各画像形成部Pのドラム1が矢印の反時計方向に所定の制御速度で回転駆動される。ベルト8も矢印の時計方向(ドラム回転に順方向)にドラム1の速度に対応した速度で回転駆動される。レーザー走査機構Cも駆動される。この駆動に同期して、各画像形成部Pにおいてそれぞれ所定の制御タイミングで帯電器2がドラム1の表面を所定の極性・電位に一様に帯電する。機構Cは各ドラム1の表面を各色の画像情報に応じて変調されたレーザー光Lで走査露光する。これにより、各ドラム1の表面に対応色の画像情報に応じた静電潜像が所定の制御タイミングをもって形成される。そして、その静電潜像が現像器3によりトナー像として現像される。上記のような電子写真画像形成プロセス動作により、第1の画像形成部Paのドラム1には予めの指定領域パターンに対応したClトナー像が形成される。そのClトナー像が転写部T1においてベルト8上に1次転写される。第2の画像形成部Paのドラム1にはフルカラー画像のK色パターンに対応したKトナー像が形成される。そのKトナー像が転写部T1において、ベルト8上にすでに転写されているClトナー像に重畳されて1次転写される。第3の画像形成部Pcのドラム1にはフルカラー画像のC色パターンに対応したCトナー像が形成され、そのCトナー像が転写部T1において、ベルト8上にすでに転写されているCl+Kのトナー像に重畳されて1次転写される。第4の画像形成部Pdのドラム1にはフルカラー画像のM色パターンに対応したMトナー像が形成される。そのMトナー像が転写部T1において、ベルト8上にすでに転写されているCl+K+Cのトナー像に重畳されて1次転写される。第5の画像形成部Peのドラム1にはフルカラー画像のY色パターンに対応したYトナー像が形成される。そのYトナー像が転写部T1において、ベルト8上にすでに転写されているCl+K+C+Mのトナー像に重畳されて1次転写される。第6の画像形成部Pfのドラム1には予めの指定領域パターンに対応したClトナー像が形成される。そのClトナー像が転写部T1においてベルト8上にベルト8上にすでに転写されているCl+K+C+M+Yのトナー像に重畳されて1次転写される。
【0022】
各画像形成部Pにおいて、ドラム1からベルト8へのトナー像の1次転写は、ローラ5に対して電源部(不図示)からトナーの正規帯電極性とは逆極性で所定電位の帯電バイアスが印加されることによる電界と転写部のニップ圧力によりなされる。かくして、ベルト8上にCl+K+C+M+Y+Clの、クリアトナー像をCl含む4色フルカラーK+C+M+Yの未定着トナー像が合成形成される。各画像形成部Pにおいて、ベルト8に対するトナー像の1次転写後のドラム1面に残留したトナーはクリーナ5により除去される。
【0023】
ここで、第1と第6の画像形成部PaとPfとにおけるクリアトナー像の形成は、光沢処理モードにおける選択モードに応じて、第1又は第2の画像形成部でなされる場合と、その両方の画像形成部でなされるPaだけでなされる場合と、がある。これについては後述する。
【0024】
一方、所定の制御タイミングで給紙カセット14における給紙ローラ(不図示)が駆動される。これにより、カセット14または14Bに積載されている記録材Sが1枚分離給送される。そして、記録材Sは、搬送路15を通ってレジストローラ対16に至る。ローラ対16はコントローラKで制御されるモーター(不図示)により回転、回転停止される。ローラ対16は搬送路15を搬送される記録材Sの先端部を一旦受け止めて記録材Sの斜行を矯正するとともに、所定の制御タイミングでその記録材Sを送り出す。送り出された記録材Sは転写前ガイド117により2次転写部T2に導入される。そして、記録材Sは2次転写部T2を挟持搬送されていく過程において、ベルト8上の未定着トナー像の転写(2次転写)を順次に受ける。この2次転写は、ローラ12に対して電源部(不図示)からトナーの正規帯電極性とは逆極性で所定電位の帯電バイアスが印加されることによる電界と転写部のニップ圧力によりなされる。記録材Sに対するトナー像転写後のベルト面は引き続くベルト8の回転によりクリーナ13に至り、2次転写残トナー及び紙粉等の異物の除去を受けて清掃されて繰り返して画像形成に供される。記録材Sへのトナー像転写時の2次転写バイアスは、トナー電荷とは逆極性であり、環境(装置周囲の温湿度)及び記録材種類(坪量、表面性)に応じて最適に設定されるように、コントローラKにて制御している。
【0025】
転写部T2を通過した記録材Sはベルト8の面から順次に分離されて搬送路18を通って定着装置(定着部)19に導入される。定着装置19は記録材Sに形成されたトナー像を熱定着させる定着手段である。記録材Sは定着装置19の定着ニップ部Nで挟持搬送されて加熱及び加圧されることにより未定着トナー像が固着像として熱定着される。本実施例における定着装置19はヒートローラタイプであり、互いに圧接させて定着ニップ部Nを形成させた定着部材としての回転可能な定着ローラ19aと加圧ローラ19bとを有する。より具体的には、ローラ19aとローラ19bは、それぞれ、中空芯金の外周面に、弾性層を成形し、さらにその表面を表面離型層で被覆した、外径φ60の複合材ローラである。芯金は、内径φ54.6mm、外径φ56.0mm、厚み0.7mmのFeからなる中空芯金である。弾性層は厚さ2mmのシリコーンゴム層である。表面離型層は30μm厚みのPFAチューブの被覆層である。各ローラ19a・19bの内部にはそれぞれローラ加熱ヒータが設置されている。またと、各ローラ19a・19bの表面には温度を検知するサーミスタが設置されている。ローラ19aとローラ19bとの間に印加する圧力は総圧で80kgf(784N)とした。ローラ19aは駆動源により矢印の時計方向に所定の速度で回転駆動される。ローラ19bはローラ19aの回転に従動して回転する。各ローラ19a・19bはそれぞれ内部のヒータに対して給電部から電力が供給されることで加熱される。そして、各ローラ19a・19bの温度が対応するサーミスタで検知され、各検知温度情報がコントローラKに入力する。コントローラKは、入力する各検知温度情報に基づいて、各ローラ19a・19bの温度がそれぞれに定められた所定の温度に昇温してその温度に維持されるように、給電部から各ヒータへの電力供給を制御する。そして、上記の状態において、ニップ部Nに画像形成部側から未定着トナー画像が形成された記録材Sが導入されて挟持搬送される。その挟持搬送過程で定着ローラ19aの熱とニップ部圧により未定着トナー画像が固着像として定着される。
【0026】
定着装置19を出た記録材Sは、片面画像形成モードの場合には、第1姿勢に制御されている第1フラッパ21により排出搬送路22側に導入されて排出口23から排出トレイ24に片面フルカラー画像形成物として排出、積載される。両面画像形成モードの場合には、定着装置19を出た第1面側画像形成済みの記録材Sが第2姿勢に制御されている第1フラッパ21により反転搬送路25側に案内され、更に第1姿勢に制御されている第2フラッパ26によりスイッチバック搬送路27に導入される。そして、記録材Sはスイッチバック搬送されて第2姿勢に制御された第2フラッパ26により両面搬送経路28に導入される。さらに記録材Sは両面搬送経路28から再び搬送路19に導入されて、レジストローラ対16、転写前ガイド17を経由して表裏反転された状態にて2次転写部T2に導入される。これにより記録材Sの第2面に対して転写部T2にてトナー像の転写がなされる。以後は、第1面に対する画像形成動作と同様に記録材Sは、搬送路18、定着装置19、排出搬送路22、排出口23を通って両面画像形成物として排出トレイ24に排出、積載される。また、モノクロなどモノカラー画像形成モードの場合には、その画像を形成するための画像形成部だけが画像形成動作して片面又は両面のモノカラー画像形成物が排出トレイ24に排出、積載される。
【0027】
画像形成モードがクリアトナーを用いない非クリアモード(非光沢処理モード)の場合には、上記の画像形成動作において、クリアトナー像を形成するための第1と第2の画像形成部PaとPbにおける画像形成は実行されない。そして、その他のカラートナー像の画像形成部での画像形成が実行されることで、上記と同様の動作により非クリアのフルカラー或いはモノカラーの片面又は両面の画像形成物を出力することが可能である。
【0028】
(2)操作ディスプレイ部B
操作ディスプレイ部Bにおいて、400は複写開始を指示するコピースタートキーである。401は標準モードに戻すためのリセットキーである。標準モードは、「モノクロ−片面−非クリア」の画像形成の設定にしてある。402はガイダンス機能を使用するときに押下するガイダンスキーである。403は設定枚数等の数値を入力するテンキーである。404は数値をクリアするクリアキーである。405は連続コピー中にコピーを停止させるストップキーである。406は各種モードの設定やプリンタの状態を表示する液晶表示部およびタッチパネルである。407は連続コピー中あるいはファックスやプリンタとして使用中に割り込んで緊急コピーをとるための割り込みキーである。408は個人別や部門別にコピー枚数を管理するための暗証キーである。409は画像形成装置本体の電源をON/OFFするためのソフトスイッチである。410は画像形成装置の機能を変更するときに使用する機能キーである。411は、オートカセットチェンジのON/OFFや省エネモードに入るまでの設定時間の変更など、予めユーザーが項目を設定するユーザモードに入るためのユーザモードキーである。450は光沢処理モード(グロスアップ/ダウン/混合モード)選択キー、451は両面画像形成モード選択キー、452はフルカラー画像形成モード選択キー、453はモノカラー画像形成モード選択キーである。
【0029】
(3)トナー
本実施例において用いているトナーについて説明する。トナーは、ポリエステル系の樹脂を使用したトナーを用いた。トナーは粉砕法によって製造することも可能であるが、トナーを製造する方法としては、懸濁重合法・界面重合法・分散重合法等の媒体中で直接トナーを製造する方法(重合法)が好ましく挙げられる。トナーの成分、製造方法はこれに限定されるものではない。各色C・M・Y・Kのカラートナーとしては、各色の色素を含有した透明な熱可塑性樹脂で構成されたものを用いることができる。本実施例においては、図3の(b)のトナーの温度−粘度特性を示すような溶融粘度特性を有するポリエステルをバインダとしたカラートナーを用いた。クリアトナーとしては、カラートナーよりも高い粘度の色素を含有しない透明な熱可塑性樹脂を用いた。
【0030】
本実施例においては、カラートナーとクリアトナーは、それぞれ、図3の(b)のような溶融粘度特性をもつものを用いた。使用温度領域内において、温度T(℃)における溶融粘度をη(Pa・s)が、
ηcolor(T)<ηclear(T)
ηcolor(T):カラートナーがT℃のときの溶融粘度
ηclear(T):クリアトナーがT℃の時の溶融粘度
の関係を満たせば、図3の(b)のような溶融粘度特性に限定されるものではない。
【0031】
(4)画像データ量
本発明の説明に用いている画像データ量とは、原稿となる画像のC、M、Y、Kの各色に分解された画像情報の1画素当たりのデータ量である。各色の最大の画像データ量を100%として表す。この0〜100%の画像データ量に応じて、画像形成すべきトナー量が計算される。
【0032】
トナー量とは、記録材上に画像形成される1画素当たりのトナーの量である。トナー量も、画像データ量と同様に、0〜100%で表す。1cm2に画像形成した場合のトナーの重量を載り量という。単色で100%のトナー量のときに、その色の最大濃度となる。
【0033】
この最大濃度を基準にして、トナー量の0〜100%に対応して、画像濃度が直線的に0〜100%になるように、現像条件などの本体プロセス条件を決定する。最大濃度は、トナーの特性、定着装置19の定着条件、記録材Sの種類などによって左右される。また、各色の最大濃度をどの濃度にするかといった画像設計によっても異なる。
【0034】
本実施例では、プロセススピードは200mm/sとした。定着装置19の制御温度(定着温度)は180℃とした。このとき、坪量80g/m2の普通紙(紙グロス6%程度)を用いて、カラートナーの載り量0.4mg/cm2で、全色ともに、濃度1.5が得られた。このトナーの載り量0.4mg/cm2を1色の最大載り量とした。また、このときのグロスは15%程度であった。グロスの測定方法は、日本電色工業株式会社製ハンディ型光沢計(PG−1M)を用いた(JIS Z 8741 鏡面光沢度−測定方法に準拠)。
【0035】
このデータをもとに、出力すべき画像の各色の画像データ量に対して、色調が一致するように、いわゆるガンマ補正などの画像補正を行い各々の画素ごとのトナー量を算出し画像形成が行われる。そして、各色のトナーを重ね合わせて、様々な色を表現する。このとき、理論上は、カラー画像情報としては、最大で400%の画像データ量となる。さらに、クリアトナーの画像情報も100%追加される。クリアトナー像は、濃度ではなく所望の光沢度になる載り量を設定する。クリアトナーのグロスは、坪量が80g/m2の普通紙(紙グロス6%)にクリアトナーで画像形成を行ったところ、0.4mmg/cm2の載り量で60度グロス測定において、10%程度のグロスを得た。
【0036】
また、コート紙においては、プロセススピード100mm/sとし、定着装置19の制御温度は160℃とした。このとき、坪量128g/m2のグロスコート紙(紙グロス30%)を用いて、トナーの載り量0.4mg/cm2で、全色ともに、濃度1.9が得られた。また、このときのグロスは、40%程度であった。
【0037】
クリアトナーのグロスは、坪量が128g/m2のグロスコート紙(紙グロス30%)にクリアトナーで画像形成を行ったところ、0.4mmg/cm2の載り量で60度グロス測定において、20%のグロスを得た。クリアトナーの最大載り量は、カラートナーの最大載り量と一致している必要は無く、所望のグロスが得られる載り量を最大載り量として良い。
【0038】
上記したように、理論上は、カラー画像情報としては、最大で400%の画像データ量となる。しかし、実際の画像形成において、400%のトナーが用いられることはなく、以下に説明するUCRや、GCRといった方法を用いて、カラー画像の最大画像データ量が180%〜240%になるように設定するのが好ましい。
【0039】
UCRとはUnder Color Removal(下色除去)のことである。カラー原稿を4色分解するときに、C・M・Yの3色が重なった部分にはグレーの成分が発生する。その成分をスミ版(Bk版)に置き換える時の方式で、ある程度以上の濃さのグレー成分をスミ版に置き換えトータルの画像データ量を減らすことを目的としている。
【0040】
GCRとはGray Component Replacement(グレー置換)のことである。色分解画像において、C・M・Yの比率が同じ点は、黒またはグレーになる。この部分をKに置き換えることによって、網点の比率を下げることが可能になり、網点総面積率が低くなることをいう。
【0041】
本実施例では、これらの手法を用いて、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量を200%、カラートナー量とクリアトナー量とを足しあわせた最大総トナー量を240%とした。そして、この240%のトナー量が一度に定着できるように、定着装置の設計を行った。
【0042】
(5)光沢処理
図4は光沢処理モード(光沢モード、クリアモード)選択時の制御フロー図である。光沢処理モードは、同一の記録材にカラートナー像とクリアトナー像とが重畳されて形成された画像形成物を出力する場合である。図4のフローチャートの実行主体は制御手段としてのコントローラKのCPUである。CPUがROMに保存されているプログラムに基づき各部を制御する。CPUはプログラムによって、順序決定手段として機能する。
【0043】
光沢処理モードの選択は、操作ディスプレイ部Bの各種モードの設定やプリンタの状態を表示する液晶表示部およびタッチパネル406において、光沢処理モード選択キー450を選択することでなされる。その選択により、図5の(a)のようにパネル406にグロスアップ補正/グロスダウン補正/グロス混合補正モードキーが表示される。グロスアップ補正モードキーは、ユーザーが選択した領域を他の領域よりもグロスをアップさせたい場合に用いる。グロスダウン補正モードキーは、ユーザーが選択した領域を他の領域よりもグロスをダウンさせたい場合に用いる。グロス混合補正キーは、ユーザーが指定した領域のグロスに関して、他の領域よりもアップさせる領域とダウンさせる領域の両方が存在する画像を出力する場合に用いる。光沢処理出力モードでは、第2から第5の画像形成部Pb・Pc・Pd・Peによるカラートナー像の形成に加えて、第1または/および第6の画像形成部Pa・Pfによるクリアトナー像の形成がなされる。
【0044】
1)コピーモードにおいて、原稿Oのクリアな画像は、原稿読取り部(イメージスキャナ)Aでは読取れない。しかし、予め、周囲のカラートナー像部よりもグロスをアップもしくはダウンして出力したい部分の画像をたとえば、白黒で出力しておく。その画像を、操作ディスプレイ部Bで、原稿の白黒画像部をグロス指定画像として認識されるように読取るモードに設定してから、原稿読取り部Aでスキャンすればよい。なお、ここでのグロス指定画像とは、文字、色情報などのオブジェクトとして判別/指定されるものや、ある領域として判別/指定されるものなどに分類され、適宜決定されるものである。
【0045】
コピーモードにおいて、光沢処理モード選択キー450が選択されると、パネル406に図5の(a)のようなグロスアップ補正/グロスダウン補正/グロス混合補正モードキーが表示される。このアップ/ダウン/混合キーを選択した後、C・M・Y・Kの色情報を読み込むための原稿O(図6の(a))を原稿読取り部Aにて読み込む(図4のステップS101)。また、光沢処理を行うために、例えば予め白黒画像として作成したグロスアップ指定用画像Ou(図6の(b))、あるいは、グロスダウン指定用画像Od(図6の(c))、もしくはその両方を順次に、原稿読取り部Aにて読み込む(ステップS101)。
【0046】
例えば、図5の(a)の選択画面にてグロスアップ補正ボタン、もしくはグロスダウン補正ボタンが選択されると、図5の(b)で示すように、色原稿(色情報)を読み込ませるように指定する画面が表示される。そこで、原稿読取り部Aに図6の(a)の原稿Oをおき、図5の(b)の画面のOKボタンを押すことによって、原稿Oの画像情報の読み込みが実行されて完了する(ステップS101)。次に、図5の(c)で示すように、パネル406には、光沢原稿(光沢情報)を読み込ませるように指定する画面が表示される。そこで、原稿読取り部Aに図6の(b)のグロスアップ指定用画像原稿Ou、あるいは図6の(c)のグロスダウン指定用画像原稿Odを置く。そして、図5(c)の画面のOKボタンを押すことによって、光沢原稿OuあるいはOdの読み込みが実行されて完了する(ステップS101)。
【0047】
以上のような操作を行うことによって、コントローラKはC・M・Y・Kの各色の画像情報及びクリアの光沢情報を得る。そして、図6の(d)で示すように部分的に光沢がアップした画像を有する出力物Suを出力させることが可能になる(ステップS102・S105・SS107・S108)。あるいは図6の(e)で示すように部分的に光沢がダウンした画像を有する出力物Sdを出力させることが可能になる(ステップS102・ステップS106・SS107・S108)。
【0048】
一方、図5の(a)の選択画面にてグロス混合補正ボタンが選択されると、図5の(d)で示すように、パネル406に色原稿を読み込ませるように指定する画面が表示される。そこで、原稿読取り部Aに図6の(a)の原稿Oをおき、図5の(d)の画面のOKボタンを押すことによって、色原稿の読み込みが実行されて完了する(ステップS101)。次に、図5の(e)で示すように、パネル406にグロスアップ用の光沢原稿(光沢情報)を読み込ませるように指定する画面が表示される。そこで、原稿読取り部Aに図6の(b)のグロスアップ指定用画像原稿Ouを置き、図5の(e)の画面のOKボタンを押すことによって、グロスアップ用の光沢原稿の読み込みが実行されて完了する(ステップS101)。次に、図5の(f)に示すように、パネル406にグロスダウン用の光沢原稿を読み込ませるように指定する画面が表示される。そこで、原稿読取り部Aに図6の(c)のグロスダウン指定用画像原稿Odを置き、図5の(f)の画面のOKボタンを押すことによって、グロスダウン用の光沢原稿の読み込みが実行されて完了する(ステップS101)。
【0049】
以上のような操作を行うことによって、コントローラ部KはC・M・Y・Kの各色の画像情報及びクリアの光沢情報を得る。そして、図6の(f)で示すように部分的に光沢がアップした領域とダウンした領域が混在した画像を有するプリントSu−dを出力させることが可能になる(ステップS102・103・104・107・108)。
【0050】
上記において、操作部である操作ディスプレイ部Bのパネル406と、原稿読取り部Aと、が出力する画像について光沢度を部分的にアップまたはダウンもしくはアップとダウンさせる領域をユーザーが指定することが可能な光沢度領域指定手段である。
【0051】
2)また、プリンタモードにおいては、外部ホスト装置1000であるパーソナルコンピュータで、クリア画像、あるいは光沢情報が扱える画像ソフトを用いて、出力したい画像を作成する。そして、作成された画像データをもとに、RIP(Raster Image Processor)部で、C・M・Y・K+クリアの各色の画像情報に変換される。このとき、作成したグロス指定領域画像のグロスをアップさせたいか、あるいはダウンさせたいかをソフト上で指定できるようにしておく。各色の画像情報に変換された画像データは、プリンタドライバによって、出力機器に合わせた画像情報に変換して、画像形成装置本体に電気信号が送られる。そして、図6の(d)や(e)や(f)で示すように部分的に光沢の異なる画像を有する出力物Su、Sd、Su−dを出力させることが可能になる。
【0052】
上記において、外部ホスト装置1000が出力する画像について光沢度を部分的にアップまたはダウンもしくはアップとダウンさせる領域をユーザーが指定することが可能な光沢度領域指定手段である。
【0053】
(6)光沢処理モード選択時の画像形成及び定着工程
次に、光沢処理モードが選択された場合のカラートナー及びクリアトナーによる画像形成及び定着工程について説明する。なお、本実施例においては、コピーモードにおいて、操作ディスプレイBのパネル406で光沢処理モード選択キー450が選択された場合について詳細を述べるが、プリンタモードにおいて光沢処理信号が送られた場合も同様の動作を行う。また、以下には、グロス指定画像として、ある領域として判別/指定するものを例に説明を行うが、文字情報や、さらには色情報などのオブジェクトとして判定/指定される場合も同様の動作を行う。
【0054】
ここで、光沢処理を行うモードにおいては、カラートナーとクリアトナーによって画像形成・定着を行うが、この場合、カラー画像データ量とクリア画像データ量、及びカラー画像とクリア画像を足し合わせた画像データ量が必要になる。このとき、画像データ量の計算は、全ての画素について計算される。本実施例においては、コントローラKは、画像処理部、或いは外部ホスト装置等から入力した電気的画像情報に基づいて、記録材に形成するトナー像の、カラートナー量やクリアトナー量、及びカラートナー量+クリアトナー量である総トナー量を演算する。
【0055】
1)グロスアップ補正キーが選択された場合
図5の(a)のパネル画面においてグロスアップ補正キーが選択されると、図4の[UPフロー]に従って画像形成が実行される。クリアトナー付与決定手段はコントローラKのクリアトナー付与決定機能部であり、クリアトナーをカラートナーの上側もしくは下側に付与することを決定する。[UPフロー]においては、グロスをアップするように指定された領域には、クリアトナーをカラートナーの下側に付与することが決定される(図4のステップS105)。この決定に基づいて、コントローラKは第2から第6の画像形成部Pb・Pc・Pd・Pe・Pfを画像形成動作させて、記録材Sにクリアトナーをカラートナーの下側に付与した形態の画像形成を行う。その記録材Sが定着装置19に導入されて、カラートナー像及びクリアトナー像の定着がなされる。
【0056】
この画像形成モードにおいては、光沢がアップするように指定された領域には第6の画像形成部Pfにて、記録材上近傍、即ちトナー像面最下層側にクリアトナー像が画像形成される。また、本実施例においては、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量を200%、カラートナー量とクリアトナー量とを足しあわせた最大総トナー量を240%としている。しかし、これに限られず、例えば、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量が180%の場合には、カラートナー及びクリアトナーの載り量の合計が、240%以下になるように画像形成されれば良い。
【0057】
一例として、画像形成状態の例を図7の(a)に示す。なお、ここで説明するのは一例であり、これに限定されるものではない。領域Aはカラートナーのみで形成された190%画像領域である。領域Bは部分的に光沢をアップするように指定された領域で、190%カラートナーの下側に50%クリアトナー層が形成され、その合計が240%になる領域である。ここで、部分的に光沢をアップしたい領域Bは、総トナー量が他の領域よりも多くなるように設定され、ここでは240%と設定した。領域Bにおいては、トナー像面の上側にカラートナーが190%、下側にクリアトナーが50%の載り量になるように設定されている。即ち、部分的に光沢をアップしたい領域において、カラートナーの載り量をX1、クリアトナーの載り量をX2とした時、[X1+X2=240]となるように設定されている。
【0058】
グロスアップ補正キーが選択され、必要な色情報、光沢情報の読み込みが終了すると(ステップS101)、前記した試算式に基づいてカラートナー及びクリアトナーのトナー量が決定される(ステップS107)。続いて、第2から第6の画像形成部Pb・Pc・Pd・Pe・Pfにてカラートナー像とクリアトナー像の画像形成が行われる。そして、2次転写部T2にて、記録材Sに対して、カラートナー像と、トナー像面の上側にカラートナー像、及び下側の指定領域にクリアトナーの載ったトナー像が形成される(ステップS108)。その記録材Sが定着工程を経て出力されて、部分的に光沢がアップした出力物(図6の(d)、図7の(a))を得ることができる。
【0059】
2)グロスダウン補正キーが選択された場合
図5の(a)のパネル画面においてグロスダウン補正キーが選択されると、図4の[DOWNフロー]に従って画像形成が実行される。[DOWNフロー]においては、クリアトナー付与順決定手段によって、グロスをダウンするように指定された領域には、クリアトナーをカラートナーの上側に付与することが決定される(ステップS106)。この決定に基づいて、コントローラKは第1から第5の画像形成部Pa・Pb・Pc・Pd・Peを画像形成動作させて、記録材Sにクリアトナーをカラートナーの上側の指定領域に付与した形態の画像形成を行う(ステップS108)。その記録材Sが定着装置19に導入されて、カラートナー像及びクリアトナー像の定着がなされる。
【0060】
この画像形成モードにおいては、光沢がダウンするように指定された領域には第1の画像形成部Paにて、定着装置19の定着ローラ19aとの接触面近傍側、即ちトナー像面最表層側にクリアトナー像が画像形成される。また、本実施例においては、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量を200%、カラートナー量とクリアトナー量とを足しあわせた最大総トナー量を240%としている。しかし、これに限られず、例えば、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量が180%の場合には、カラートナー及びクリアトナーの載り量の合計が、240%以下になるように画像形成されれば良い。
【0061】
一例として、画像形成状態の例を図7の(b)に示す。なお、ここで説明するのは一例であり、これに限定されるものではない。領域Aはカラートナーのみで形成された190%画像領域である。領域Cは部分的に光沢をダウンするように指定された領域で、190%カラートナーの上側に50%クリアトナー層が形成され、その合計が240%になる領域である。ここで、部分的に光沢をダウンしたい領域Cは、総トナー量が他の領域よりも多くなるように設定され、ここでは240%と設定した。領域Cにおいては、トナー像面の下側にカラートナーが190%、上側にクリアトナーが50%の載り量になるように設定されている。即ち、部分的に光沢をアップしたい領域において、カラートナーの載り量をX1、クリアトナーの載り量をX2とした時、[X1+X2=240]となるように設定されている。
【0062】
グロスダウン補正キーが選択され、必要な色情報、光沢情報の読み込みが終了すると(ステップS101)、前記した試算式に基づいてカラートナー及びクリアトナーのトナー量が決定される(ステップS107)。続いて、第1から第5の画像形成部Pa・Pb・Pc・Pd・Peにてクリアトナー像とカラートナー像の画像形成が行われる。そして、2次転写部T2にて、記録材Sに対して、カラートナー像と、トナー像面の下側にカラートナー像、及び上側の指定領域にクリアトナーの載ったトナー像が形成される(ステップS108)。その記録材Sが定着工程を経て出力されて、部分的に光沢がダウンした出力物(図6の(e)、図7の(b))を得ることができる。
【0063】
3)グロス混合補正キーが選択された場合
図5の(a)のパネル画面においてグロス混合補正キーが選択されると、図4の[混合フロー]に従って画像形成が実行される。[混合フロー]においては、グロスをアップするように指定された領域には、クリアトナーをカラートナーの下側に付与する。そして、グロスをダウンするように指定された領域には、クリアトナーをカラートナーの上側に付与することが決定される(ステップS103,S104)。この決定に基づいて、コントローラKは第1から第6の画像形成部Pa・Pb・Pc・Pd・Pe・Pfを画像形成動作させる。そして、記録材Sにクリアトナーをカラートナーの下側に付与した形態の画像形成と、クリアトナーをカラートナーの上側に付与した形態の画像形成を行う(ステップS108)。その記録材Sが定着装置19に導入されて、カラートナー像及びクリアトナー像の定着がなされる。
【0064】
この画像形成モードにおいては、光沢がアップするように指定された領域には第6の画像形成部Pfにて、記録材上近傍、即ちトナー像面最下層側にクリアトナー像が画像形成される。また、光沢がダウンするように指定された領域には第1の画像形成部Paにて、定着装置19の定着ローラ19aとの接触面近傍側、即ちトナー像面最表層側にクリアトナー像が画像形成される。また、本実施例においては、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量を200%、カラートナー量とクリアトナー量とを足しあわせた最大総トナー量を240%としている。しかし、これに限られず、例えば、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量が180%の場合には、カラートナー及びクリアトナーの載り量の合計が、240%以下になるように画像形成されれば良い。
【0065】
一例として、画像形成状態の例を図7の(c)に示す。なお、ここで説明するのは一例であり、これに限定されるものではない。領域Aはカラートナーのみで形成された190%画像領域である。領域Bは部分的に光沢をアップするように指定された領域で、190%カラートナーの下側に50%クリアトナー層が形成され、その合計が240%になる領域である。領域Cは部分的に光沢をダウンするように指定された領域で、190%カラートナーの上側に50%クリアトナー層が形成され、その合計が240%になる領域である。ここで、部分的に光沢をアップしたい領域B及び部分的に光沢をダウンしたい領域Cは、総トナー量が他の領域よりも多くなるように設定され、ここでは240%と設定した。領域B、Cにおいては、カラートナーが190%、クリアトナーが50%の載り量になるように設定されている。即ち、部分的に光沢を変化させたい領域において、カラートナーの載り量をX1、クリアトナーの載り量をX2とした時、[X1+X2=240]となるように設定されている。
【0066】
グロス混合補正キーが選択され、必要な色情報、光沢情報の読み込みが終了すると(ステップS101)、前記した試算式に基づいてカラートナー及びクリアトナーのトナー量が決定される(ステップS108)。続いて、第1から第6の画像形成部Pa・Pb・Pc・Pd・Pe・Pfにてクリアトナー像とカラートナー像の画像形成が行われる。そして、2次転写部T2にて、記録材Sに対してグロス混合のトナー像が形成される。即ち、カラートナー像と、トナー像面の上側の指定領域にカラートナー像、及び下側の指定領域にクリアトナーの載ったトナー像と、トナー像面の下側にカラートナー像、及び上側にクリアトナーの載ったトナー像が形成される(ステップS108)。その記録材Sが定着工程を経て出力されて、部分的に光沢がアップ及びダウンした出力物(図6の(f)、図7の(c))を得ることができる。
【0067】
上述した、光沢処理モード(図4)において、出力する画像について光沢度を部分的にアップまたはダウンもしくはアップとダウンさせるためのクリアトナーによる画像形成は、記録材Sの画像形成可能領域について部分的になされる。
【0068】
(7)トナー溶融粘度とグロスの関係
ここで、トナーの溶融粘度とグロスの関係について模式図を用いて説明する。出力物のトナー像のグロスは、定着装置19の定着部材(定着ローラ)19aの表面平滑性、記録材の表面平滑性、加圧力やスピード等の定着条件の他に、トナー量やトナー溶融状態によって決まる。
【0069】
トナー量のグロス依存性については、記録材の表面平滑性が高くない場合において顕著で、これはトナー量が少ない場合は、記録材の表面平滑性の影響を受けやすくなるためである。図8の(a)→(b)に示すように、トナー量が少ない場合はトナーが記録材S上に定着されたときに記録材Sの表面平滑性の影響を受けやすい。しかし、図8の(c)→(d)に示すように、トナー量が多くなってくると記録材Sの凹凸面にトナーが充填されてくるので画像面最表層側は記録材の表面平滑性の影響を受けにくくなってくる。従って、十分に定着される条件下においては、図8の(e)に示すように、トナー量が増える方がグロスが高くなる。また、トナー溶融状態は、定着温度や定着スピード、加圧力等の定着条件と、その条件下におけるトナーの粘度特性によって決まる。これは、ある定着条件に到達したときに、トナーの粘度が低いほうがトナー溶融の進行度合いが高く、従ってグロスが高くなる。逆に、トナーの粘度が高い場合は、トナー溶融が進まず、グロスが低くなってしまう。
【0070】
図9は、定着ニップ部N内の記録材搬送方向の位置と、その位置におけるトナー温度、そのトナー温度におけるトナーの溶融粘度の関係を示している。なお、トナー温度は記録材上に熱電対((株)アンベ エスエムティ、極細薄熱電対KFST−10−100−200)を貼り付けて計測し、圧力分布はタクタイルセンサ(ニッタ(株)、シーラー)を用いて計測した。トナーの溶融粘度は、高架式フローテスター(島津フローテスターCFT−100型)を用いて測定した。加圧成形器を用いて成形した重量1.0gの試料を昇温速度5.0oC/minでプランジャーにより20kgfの荷重をかけ直径1mm、長さ1mmのノズルより押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量を測定した。図9から分かるように、定着ニップ部N内においては、トナー温度は徐々に上昇し、定着ニップ部Nの記録材出口にて最も高い温度になる。例えば、定着ニップ部N内において、トナー温度が90℃に到達した時点では、それに対応するトナー粘度、ここでは、1×105Pa・sとなる。定着ニップ部Nの記録材出口においては、トナー温度は120℃に達し、この時点でトナー粘度は、1×103Pa・sになっている。このようにトナー粘度は定着ニップ部N内において変化し、その粘度が高いか低いかによってグロス値は変化することになる。本実施例に用いたカラートナーとクリアトナーを比較すると、図3の(b)に示すように定着温度に対して常にクリアトナーの粘度はカラートナーの粘度よりも高いために、グロスが低くなる。
【0071】
一方、グロスに寄与するトナーの溶融状態は、トナー像の下層側よりも表層側の溶融による依存の方が高い。これは、例えば、トナー像の最下層側の溶融状態が良好でなくても(溶融状態−低)、最表層側の溶融状態がよく(溶融状態−高)、平滑面が形成されていれば、グロス自体は高くなる(図10の(a))。逆に、トナー像の最下層側の溶融状態が高くても、最表面側の平滑性が低ければグロスは低くなる(図10の(b))。従って、定着部材19aに接しているトナー像の最表層側の粘度が高ければ、溶融状態が良好でなく、そのためにグロスが低くなり、逆に最表層側の粘度が低ければ、溶融状態がよくグロスが高くなる。
【0072】
本実施例においては、クリアトナーをカラートナーの上側に付与することによって、カラートナー部よりもグロスを低減させることを特徴とする。即ち、本実施例に用いたクリアトナーは、カラートナーと比較して溶融粘度が高い(図3の(b))。そのため、定着部材側(トナー像最表層側)にあるカラートナーと、クリアトナーを比較すると、カラートナーの方がグロスが高く、クリアトナーはグロスが低くなる。図10の(c)に示すように、カラートナーのみの画像面(領域A)と、カラートナーの上にクリアトナーを載せた画像面(領域C)を比較すると、画像面表面近傍において、温度に対する粘度が異なる。そのため、領域Aのグロス−高、領域Cのグロス−低、のグロス差が発生する。
【0073】
前述したように、本実施例において用いるカラートナー、及びクリアトナーは、図3の(b)のような溶融粘度特性をもつ。即ち、使用温度領域内において、温度T(℃)における溶融粘度η(Pa・s)が
ηcolor(T)<ηclear(T)
ηcolor(T):カラートナーがT℃のときの溶融粘度
ηclear(T):クリアトナーがT℃の時の溶融粘度
の関係を満たす。この溶融粘度特性の関係によってグロスを効果的に制御できることが望ましいが、例えば本実施例に用いたよりもより高温な温度領域で使用した場合、グロス制御の効果が十分に得られない場合もある。例えば、上記関係を満たしていても、クリアトナー部がカラートナー部よりもグロスが高くなる場合もある。これはカラートナー部の溶融が過多になったために、それ以上のグロス上昇はない、あるいは高温によるオフセット現象等、カラートナー部が画像劣化している状態が挙げられる。本実施例において用いたカラートナーとクリアトナーのグロスは、図11に示すような温度特性を示す。即ち、カラートナーはトナー温度が140℃近傍においてグロスが最大値を示し、140℃よりも高温の領域においてはグロスが降下する傾向がある。これは前記したような高温によるオフセット現象が発生しているためである。ところが、クリアトナーは溶融粘度が高いために、カラートナーがホットオフセットする温度領域においてもある温度まではグロスが上昇するため、140℃以上の領域においては、カラートナー部のグロスがクリアトナーのグロスよりも低くなる場合がある。このカラートナーが高温によるオフセット現象が発生しない領域、即ち、140℃近傍におけるカラートナーの溶融粘度以下で画像形成定着を行うことが好ましい。
【0074】
また、本実施例に用いたよりもより低温の温度領域で使用した場合、トナーが記録材Sに定着しない現象、所謂低温側のオフセット現象も発生する。本実施例においては、カラートナーの溶融粘度に比べて、クリアトナーの溶融粘度が高いものを用いているため、低温側のオフセット現象は、クリアトナーの方が発生しやすい。本実施例に用いた定着構成においては、トナーの溶融粘度が2×105 (Pa・s)以上で用いた場合、低温オフセットが発生する。
【0075】
従って、上記溶融粘度の関係は、好ましい画像品質が得られる領域において重要である。本実施例においては、定着ニップ部N内におけるトナー温度が100℃〜140℃程度の領域において、
2×105>ηclear(100)>ηcolor(100)
2×102<ηcolor(140)<ηclear(140)
であることがより好ましい。
【0076】
次にカラートナーをクリアトナーの上側に付与した場合について説明する。カラートナーをクリアトナーの上側に付与した領域では、カラートナー部よりもトナー総量自体が大きくなる。この場合、前記したように載り量に応じてグロスが上昇するので、カラートナーのみのトナー像面よりも、カラートナーとクリアトナーを載せた画像面の方がグロスが高くなる。
【0077】
ところが、この場合、トナー総量に応じたグロス変化量以上のグロス上昇があることがわかった。つまり、カラートナーのトナー総量をA、この時のグロスをGA、クリアトナーとカラートナーとを併せた載り量をB、このときのグロスをGBとした時、A=Bのとき、GA<GB、となることが分かった。この現象について、出力物をレーザー顕微鏡((株)キーエンス、VK8000シリーズ)で観察した結果、トナー溶融状態が次のような状態になること分かったので、模式図を用いて説明する。
【0078】
図12はカラートナーのみの溶融過程であり、図13はカラートナーの下にクリアトナーがある場合の溶融過程である。図12の(a)は、未定着カラートナーの記録材S上での状態であり、(b)は(a)の部分的拡大図、(c)は(b)の状態からトナーが溶融した状態、(d)は未定着カラートナーが溶融定着された場合の記録材上でのトナー像面状態の模式図である。また、図13の(a)は、上側がカラートナー、下側がクリアトナーである未定着トナー像の記録材上での状態である。(b)は(a)の部分的拡大図、(c)は(b)の状態からトナーが溶融した状態、(d)は上側がカラートナー、下側がクリアトナーである未定着トナーが溶融定着された場合の記録材上でのトナー像面状態の模式図である。
【0079】
図12のように、一定のトナー量に対して、一定の溶融粘度を持ったトナーが溶融された場合、最下層側のトナーの広がりも大きくなり、画像面の最表面側のトナー面も、記録材の表面状態の影響を受けやすくなり、従ってグロスが下がりやすくなってしまう。一方、図13のように、トナー下層側に溶融粘度の高いトナーがある場合、トナー下層側の広がりが抑えられ、画像面の最表面側のトナー面が、記録材の表面状態の影響を受けにくくなり、この結果、画像表面側のトナーのグロスが上がる。
【0080】
(8)検証実験1
クリアトナーの付与順の違いによるグロス変化についての検証実験を行った。記録材Sとして、坪量80g/m2の普通紙(紙グロス6%程度)と、坪量128g/m2のグロスコート紙(紙グロス30%)の2種類について検証した。検証に用いた普通紙については、プロセススピードは200mm/s、定着装置19の制御温度(定着温度)は180℃とした。また、コート紙については、プロセススピードは100mm/s、定着装置19の制御温度は180℃とした。また、用いたトナーは、図3の(b)に示すような溶融粘度特性をもったカラートナー及びクリアトナーを用いた。
【0081】
本実施例における検証において、用いたカラー画像は、カラートナー量を60%、120%、180%の3水準にした。それに対して、下記の1)、2)、3)の場合のグロス効果を比較した。1)60%のクリアトナーを付与しない場合(光沢補正を行わない通常のカラー画像)である。2)60%のクリアトナーをカラートナーの下側に付与する場合(光沢アップ補正を行ったカラー画像)である。3)60%のクリアトナーをカラートナーの上側に付与する場合(光沢ダウン補正を行ったカラー画像)である。以上のような画像を定着させた出力物における、各々のグロスは、表1及び図15の(a)のようになる。
【0082】
【表1】
【0083】
上記のように、クリアトナーをカラートナーの上側に付与することによって、クリアトナーを付与しない領域に対してグロスを下げることが可能になることが分かる。また、クリアトナーをカラートナーの下側に付与することによって、クリアトナーを付与しない領域に対してグロスを上げることが可能になることが分かる。
【0084】
以上説明したような構成を用いることによって、カラートナーとクリアトナーによって画像形成を行い定着する画像形成装置において、1種類のクリアトナーを用いて、さらに生産性を落とさずに、幅広い光沢度制御がなされた出力物を得ることができる。即ち、出力物の同一面内において、周りの光沢に対して、部分的に光沢度を下げた領域、あるいは、部分的に光沢度を上げた領域、もしくは両者が混在するような、出力物を得ることができる。
【0085】
<実施例2>
(1)グロス混合モード
本実施例においては、実施例1で説明したグロス混合補正キー(図5の(a))が選択された場合において、グロスのアップもしくはダウンのレベルに強弱をつけることを可能にした制御についての説明を行う。なお、使用した画像形成装置は実施例1と同様である。また、以下には、グロス指定画像として、ある領域として判別/指定するものを例に説明を行うが、図6で説明したような、文字情報や、さらには色情報などのオブジェクトとして判定/指定される場合も同様の動作を行う。
【0086】
以下、グロス混合補正キーが選択された場合のカラートナー及びクリアトナーの画像形成及び定着工程について説明する。なお、本実施例においても実施例1と同様に、コピーモードにおいて、操作ディスプレイ部Bのパネル406上で光沢処理モード選択キーが選択された場合について詳細を述べる。プリンタモードにおいて外部ホスト装置1000から光沢処理信号が送られた場合も同様の動作を行う。
【0087】
本実施例では、例えば図14の(a)に示すような光沢情報を持った画像を出力する場合について説明する。なお、図14の(a)はある領域として判別/指定するものであるが、文字情報や色情報などのオブジェクトとして指定される場合も同様の動作を行う。領域Aはカラートナーのみが形成された領域である。また、領域Bと領域Dは領域Aよりもグロスが高く指定された領域である。領域Bは領域Dよりもグロスが高く指定されている。また、領域C及び領域Eは領域Aよりもグロスが低く指定された領域である。領域Cは領域Eよりもグロスが低く指定されている。すなわち、上記の各領域における光沢度情報は、以下のようになっている。
【0088】
領域B>領域D>領域A>領域E>領域C
なお、ここでは5段階の光沢度差を持った画像出力の説明を行うが、これに限定されるものではない。
【0089】
グロス混合補正ボタン(図5の(a))を選択すると、実施例1と同様に、図5の(d)で示すように、色原稿を読み込ませるように指定する画面が表示される。そこで、原稿読取り部Aに図14の(b)の色原稿Oをおき、図5の(d)の画面のOKボタンを押すことによって、色原稿の読み込みが実行されて完了する。次に、図5の(e)で示すように、グロスアップ用の光沢原稿を読み込ませるように指定する画面が表示される。そこで、原稿読取り部Aに図14の(c)のグロスアップ指定用画像原稿Ouを置き、図5の(e)の画面のOKボタンを押すことによって、グロスアップ用の光沢情報の読み込みが実行されて完成する。この時、領域Bと領域DのグロスUPの度合いは、例えば各領域BとDの画像の濃度情報として読み込ませることによって可能である。すなわち、ある領域のグロスの強弱を濃度差として認識させる。次に、図5の(f)で示すように、グロスダウン用の光沢原稿を読み込ませるように指定する画面が表示される。そこで、原稿読取り部Aに図14の(c)のグロスダウン指定用画像原稿Odを置き、図5の(f)の画面のOKボタンを押すことによって、グロスダウン用の光沢情報の読み込みが実行されて完成する。この時、グロスDOWNの度合いは、例えば各領域EとCの各画像の濃度情報として読み込ませることによって可能である。すなわち、ある領域のグロスの強弱を濃度差として認識させる。
【0090】
以上のような操作を行うことによって、C・M・Y・Kの各色の画像情報及びクリアClの光沢情報を得る。そして、図14の(a)で示すように、多段階に部分的に光沢度がアップした領域DとB、及びダウンした領域EとCが混在する画像Aを得ることが可能になる。
【0091】
また、プリンタモードにおいては、外部ホスト装置1000であるパーソナルコンピュータで、クリア画像、あるいは光沢情報が扱える画像ソフトを用いて、出力したい画像を作成する。そして、作成された画像データをもとに、RIP(Raster Image Processor)部で、C・M・Y・K+Clの各色の画像情報に変換される。このとき、作成したグロス指定領域画像のグロスをアップさせたいか、あるいはダウンさせたいかをソフト上で多段階に指定できるようにしておく。各色の画像情報に変換された画像データは、プリンタドライバによって、出力機器に合わせた画像情報に変換して、画像形成装置本体に電気信号が送られ、図14の(a)で示すように多段階に部分的に光沢の異なる画像を得ることが可能になる。
【0092】
(2)画像形成及び定着工程
次に、本実施例においてグロス混合補正キー(図5の(a))が選択された場合のカラートナー及びクリアトナーの画像形成及び定着工程について説明する。実施例1と同様に、コントローラKは、グロス混合補正キーが選択されると、クリアトナー付与順決定手段によってクリアトナーをカラートナーの上側もしくは下側に付与することを決定する。即ち、グロスをアップするように指定された領域B・Dには、クリアトナーをカラートナーの下側に付与し、グロスをダウンするように指定された領域C・Dには、クリアトナーをカラートナーの上側に付与することが決定される。そして、第2から第5の画像形成部Pb・Pc・Pd・Peによるカラートナー像の画像形成と、第1の画像形成部Paと第6の画像形成部Pfによるクリアトナー像の画像形成が行われる。その記録材Sが定着装置19に導入されて、カラートナー像及びクリアトナー像の定着がなされる。
【0093】
このとき、光沢がアップするように指定された領域B・Dには第6の画像形成部Pfにてクリアトナー像を形成して、記録材上近傍、即ちトナー像面最下層側に画像形成される。また、光沢がダウンするように指定された領域C・Eには第1の画像形成部Paにてクリアトナー像を形成して、定着部材接触面近傍側、即ちトナー像面最表層側に画像形成される。また、本実施例においては、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量を200%、カラートナー量とクリアトナー量とを足しあわせた最大総トナー量を240%としている。しかし、例えば、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量が180%の場合には、カラートナー及びクリアトナーの載り量の合計が、240%以下になるように画像形成されれば良い。
【0094】
一例として、図14の(a)のような光沢度情報を持った画像を出力する場合について説明する。なお、ここで説明するのは一例であり、これに限定されるものではない。領域Aはカラートナーのみで形成された180%画像領域である。領域Bは部分的に光沢をアップするように指定された領域で、トナー像面における上側にカラートナー180%と下側にクリアトナー60%で形成され、その合計が240%になる領域である。領域Dは部分的にグロスを弱アップするように指定された領域で、トナー像面における上側にカラートナー180%と下側にクリアトナー20%で形成され、その合計が200%になる領域である。領域Cは部分的に光沢をダウンするように指定された領域で、トナー像面における下側にカラートナー180%と上側にクリアトナー60%で形成され、その合計が240%になる領域である。領域Eは部分的に光沢を弱ダウンするように指定された領域で、トナー像面における下側にカラートナー180%と上側にクリアトナー20%で形成され、その合計が200%になる領域である。
【0095】
グロス混合補正キー(図5の(a))が選択され、必要な色情報、光沢情報の読み込みが終了すると、前記したようにカラートナー及びクリアトナーのトナー量が決定される。続いて、カラートナーとクリアトナーの画像形成が行われると、図14の(a)に示すように記録材上にカラートナー及びクリアトナーの載ったトナー像が形成され、定着工程を経て部分的に光沢が変化した出力物を得ることができる。
【0096】
(3)検証実験2
ここで、クリアトナーの付与量の違いによるグロス変化についての検証実験を行った。検証に用いた定着装置、記録材体、トナーの各条件は、実施例1における検証実験1と同様である。本実施例における検証において、用いたカラー画像は、カラートナー量180%の画像にした。それに対して、下記の1)、2)、3)の場合のグロス効果を比較した。1)クリアトナーを付与しない場合(光沢補正を行わない通常のカラー画像)である。2)クリアトナー量20%、40%、60%をカラートナーの下側に付与する場合(光沢アップ補正を行ったカラー画像)である。3)クリアトナー量20%、40%、60%をカラートナーの上側に付与する場合(光沢ダウン補正を行ったカラー画像)である。以上のような画像を定着させた出力物における、各々のグロスは、表2及び図15の(b)のようになる。
【0097】
【表2】
【0098】
上記のように、クリアトナーをカラートナーの上側に付与することによって、クリアトナーを付与しない領域に対してグロスを下げることが可能になる。さらにクリアトナーの付与量を変化させることで、グロスの下げ幅を調整することが可能になることが分かる。また、クリアトナーをカラートナーの下側に付与することによって、クリアトナーを付与しない領域に対してグロスを上げることが可能になる。さらにクリアトナーの付与量を変化させることで、グロスの上げ幅を調整することが可能になることが分かる。
【0099】
以上説明したように、制御手段Kは、光沢度のアップもしくはダウンのレベルに応じて、記録材Sに対するクリアトナーの載り量を変化させる。この構成を用いることによって、カラートナーとクリアトナーによって画像形成を行い定着する画像形成装置において、幅広い光沢度制御がなされた出力物を得ることができる。
【0100】
<その他の事項>
1)実施例1と2においては、4色フルカラーの画像形成の場合の部分的な光沢処理モードを説明したが、モノクロなどモノカラーの画像形成の場合にも上記のような部分的な光沢処理モードを適用して同様の効果を得ることができることは勿論である。
【0101】
2)画像形成装置は中間転写方式に限られるものではない。記録材を搬送ベルトあるいは転写ドラムに保持させて画像形成部に搬送することで、記録材に対してフルカラーまたはモノカラーのカラートナー像とクリアトナー像とを決定された付与順序にて転写方式又は直接方式で形成する。そしてその記録材を定着装置に導入する装置構成であってもよい。
【0102】
3)トナー像の形成プロセスは電子写真方式に限られるものではない。像担持体として静電記録誘電体を用いる静電記録プロセス、磁気記録磁性体を用いた磁気記録プロセスなどであってもよい。
【0103】
4)定着手段は実施例のヒートローラタイプの定着装置に限られるものではない。定着部材または加圧部材もしくは両者にベルト部材(又はフィルム)を用いたベルト定着装置、赤外線や高周波を照射してトナーを加熱定着する非接触タイプの定着装置などであってもよい。
【符号の説明】
【0104】
100・・画像形成装置、Pb・Pc・Pd・Pe・・カラートナー像形成手段、Pa・Pf・・クリアトナー像形成手段、19・・定着手段、406・A・・光沢度領域指定手段、K・・制御手段、S・・記録材
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラートナー(有色トナー)とクリアトナー(透明トナー)によって画像形成を行うことが可能なプリンタ、複写機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、クリアトナーを用いた電子写真装置が提案されている。クリアトナーを用いることで、様々な表現ができるようになり、出力物の付加価値が向上する。このクリアトナーによる画像形成方法は、記録材上にカラートナー画像とクリアトナー像を順次画像形成し、一度に定着する方法が挙げられる。また、特許文献1や特許文献2に記載されているように、記録材上にカラートナー像を形成し、そのカラートナー像を一旦定着し、さらに、その上にクリアトナー像を画像形成し、そのクリアトナー像を定着する2回定着方法が挙げられる。
【0003】
一方、クリアトナーの使用方法としては、まず、画像部の光沢付与や均一光沢化が上げられる。成果物表面(出力される画像形成物表面)の光沢は全面均一光沢が好ましい。また、写真画像などは、より高光沢なものが好まれる。しかしながら、電子写真方式においては、出力画像の光沢が均一にならない場合が多い。例えば、白地部はトナーが乗らないため、記録材である紙の表面光沢がそのまま出力されるために常に一定の光沢となる。一方、ハイライト部では、トナーが細かい網点状に形成され、凹凸ができるため、光沢が下がってしまう。さらに、ソリッド部では、トナーが紙表面を十分に覆い、表面が滑らかになるため、光沢が上がってしまう。したがって、画像全体が不均一な光沢になってしまい画像品位を落としてしまう。そこで、全面をクリアトナーで覆って定着することで、白地部からベタ部まで均一光沢となる。さらに高光沢な画像を得る場合には、定着で紙に与える熱量を増やしてトナーを十分に溶したり、クリアトナーの溶融粘度を下げたりすることで、高光沢が得られる。
【0004】
もう一つのクリアトナーの使用方法としては、ウォーターマーク、アイキャッチ、セキュリィティマークなどと言われるような、クリアトナーによるマークによって、表現する使用方法が上げられる。このようなクリアトナーによるマークは、光沢が高いものから低いものまで、ユーザーの意図よって、目立つようにしたり、目立たないようにしたり、目的に応じて自由に選べることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−318482号公報
【特許文献2】特開2006−251722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなクリアトナーによるマークは、目立つようにしたり、目立たないようにしたりという意図と同時に、周りの光沢に対して高くしたり、低くしたりすることまで選択できることが望ましい。この周りの光沢に対して高くしたり、低くしたりする意図に対しては、例えば、光沢度が異なる複数のクリアトナーを備える方法が考えられる。しかし、この場合、新たな製造ラインが必要となったり、装置が複雑化するといった問題が発生する。
【0007】
一方、部分的な光沢度制御を行うために、定着工程を1回もしくは2回通すことによって、部分的に光沢度を上げた画像、もしくは部分的に光沢度を下げた画像を出力する方法も提案されている。しかし、定着工程を2回通す必要があり、生産性が低下してしまう。また、上記のような方法を用いた場合、幅広いグロスコントロールが可能になる。しかし、1つの出力物の同一面内において、周りの光沢に対して、部分的に光沢度を下げた領域と、部分的に光沢度を上げた領域が混在するような出力物を得る手段は、未だ提案されていない。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものである。その目的とするところは、カラートナーとクリアトナーによって画像形成を行い定着する画像形成装置において、1種類のクリアトナーを用いて、さらに生産性を落とさずに、上記のような出力物を得ることができる画像形成装置を提供することである。即ち、出力物の同一面内において、周りの光沢に対して、部分的に光沢度を下げた領域、あるいは、部分的に光沢度を上げた領域、もしくは両者が混在するような、幅広い光沢度制御がなされた出力物を得ることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、記録材にカラートナーによるトナー像を形成可能なカラートナー像形成手段と、同一の記録材にクリアトナーによるトナー像を形成可能なクリアトナー像形成手段と、記録材に形成されたトナー像を熱定着させる定着手段と、出力する画像について光沢度を部分的にアップまたはダウンもしくはアップとダウンさせる領域をユーザーが指定することが可能な光沢度領域指定手段と、制御手段と、を有し、前記クリアトナーは定着温度における溶融粘度が前記カラートナーの定着温度における溶融粘度がよりも高いトナーであり、前記制御手段は前記光沢度領域指定手段で指定された領域の光沢情報に応じて前記記録材に対する前記カラートナーによるトナー像と前記クリアトナーによるトナー像との付与順を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カラートナーとクリアトナーによって画像形成を行い定着する画像形成装置において、1種類のクリアトナーを用いて、さらに生産性を落とさずに、幅広い光沢度制御がなされた出力物を得ることができる。即ち、出力物の同一面内において、周りの光沢に対して、部分的に光沢度を下げた領域、あるいは、部分的に光沢度を上げた領域、もしくは両者が混在するような、出力物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1における画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】操作ディスプレイ部の平面図である。
【図3】(a)は制御系統の概略のブロック図、(b)は実施例1において用いたカラートナー及びクリアトナーの溶融粘度特性を示す図である。
【図4】実施例1における光沢処理モード選択時の制御フロー図である。
【図5】(a)は光沢処理モード選択時の操作ディスプレイ部の指示画面、(b)はグロスアップ補正またはグロスアップ補正における色原稿読み込み指示画面、(c)は同補正における光沢原稿読み込み指示画面、(d)はグロス混合補正における色原稿読み込み指示画面、(e)は同補正におけるグロスアップ用光沢原稿読み込み指示画面、(f)は同補正におけるグロスダウン用光沢原稿読み込み指示画面である。
【図6】(a)は実施例1における色原稿画像の一例、(b)はグロスアップ用光沢原稿画像の一例、(c)はグロスダウン用光沢原稿画像の一例、(d)はグロスアップ出力物の画像の一例、(e)グロスダウン出力物の画像の一例、(f)はグロス混合出力物の画像の一例である。
【図7】(a)はグロスアップモードの画像形成状態の一例の模式図、(b)はグロスダウンモードの画像形成状態の一例の模式図、(c)はグロス混合モードの画像形成状態の一例の模式図である。
【図8】(a)と(b)はトナー量が少ない場合の記録材上の未定着トナー状態及び溶融状態を示す概略図、(c)と(d)はトナー量が多い場合の記録材上の未定着トナー状態及び溶融状態を示す概略図、(e)はトナー量によるグロスの変化を示す概略図である。
【図9】定着ニップ部内の記録材搬送方向位置におけるトナー温度及びトナーの溶融粘度を模式的に示した図である。
【図10】(a)はグロスが高くなるトナー溶融状態を模式的に示した図、(b)はグロスが低くなるトナー溶融状態を模式的に示した図、(c)はクリアトナーがカラートナーの上側にある場合と、ない場合のトナー溶融状態を模式的に示した図である。
【図11】実施例1において用いたカラートナーとクリアトナーのグロス−温度特性図である。
【図12】(a)はカラートナーのみの記録材上における未定着状態を模式的に示した図、(b)は(a)の部分的拡大図、(c)はカラートナーのみの記録材上におけるトナー溶融状態を模式的に示した部分的拡大図、(d)はカラートナーのみの記録材上におけるトナー溶融状態を模式的に示した図である。
【図13】(a)は上側がカラートナー、下側がクリアトナーであるトナー像の記録材上における未定着状態を模式的に示した図、(b)は(a)の部分的拡大図、(c)は上側がカラートナー、下側がクリアトナーであるトナー像の記録材上におけるトナーが溶融した状態を模式的に示した部分的拡大図、(d)は上側がカラートナー、下側がクリアトナーであるトナー像の記録材上におけるトナーが溶融した状態を模式的に示した図である。
【図14】(a)は実施例2におけるグロス混合モードの画像形成状態の一例の模式図、(b)は色原稿画像の一例、(c)はグロスアップ用光沢原稿画像の一例、(d)はグロスダウン用光沢原稿画像の一例である。
【図15】(a)は実施例1における、透明トナーを付与しない場合、上側に付与する場合、下側に付与する場合、のグロス変化を示す図、(b)は実施例2における、透明トナーを付与しない場合、上側に付与する場合、下側に付与する場合、のグロス変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0013】
<実施例1>
(1)画像形成部
図1に、本発明の画像形成装置の一実施例である、電子写真方式、タンデム方式、中間転写方式の4色フルカラー画像形成装置100の概略断面構成を示す。この装置100は、クリアトナー(透明トナー)によって光沢処理した画像形成を行うことが可能な、複写機、プリンタ、ファクシミリとして機能する複合機である。図2は操作ディスプレイ部Bの平面図である。図3の(a)は制御系統の概略のブロック図である。Kは装置100を統括制御するコントローラ(制御手段)である。コントローラKはCPU(演算部)や記憶部(ROM、RAM)を含む。1000はパーソナルコンピュータ・ファクシミリ装置等の外部入力装置(外部ホスト装置)であり、コントローラKとインターフェイスを介して電気的に接続されている。装置100の上面側には、原稿読取り部(イメージスキャナ)Aと操作ディスプレイ部Bが配設されている。操作ディスプレイ部Bは、ユーザー(使用者、操作者)によるコマンド入力や、ユーザーへの装置状態等の報知を行う。装置100の内部には、図面上、左側から右側に水平方向に並べて(タンデム配列)、第1乃至第6の6つの電子写真画像形成部P(Pa・Pb・Pc・Pd・Pe・Pf)が順次に配設されている。
【0014】
原稿読取り部Aにおいて、101は原稿台ガラス、102はそのガラス101に対して開閉可能な原稿押え板である。コピー(原稿複写)モードの場合は、ガラス101上にコピーするカラー原稿(又はモノカラー原稿)Oを画像面下向きで所定の載置基準に従って載置し、その上に板102を被せることで原稿Oをセットする。板102を原稿自動送り装置(ADF、RDF)にしてガラス101上にシート状原稿を自動的に給送する構成にすることもできる。そして、操作ディスプレイ部Bにより所望のコピー条件を設定した後にコピースタートキー400を押す。そうすると、移動光学系103がガラス101の下面に沿って移動駆動されて、ガラス101上の原稿Oの下向き画像面が光学的に走査される。その原稿走査光が光電変換素子(固体撮像素子)であるCCD104に結像されて、RGB(レッド・グリーン・ブルー)の三原色で色分解読取りされる。読取られたRGBの各信号が画像処理部105に入力する。そして、画像処理部105で、C(シアン画像分)、M(マゼンタ画像分)、Y(イエロー画像分)、K(ブラック画像分)に処理された電気的画像情報がコントローラKに入力する。コントローラKは、画像露光装置としてのレーザー走査機構Cを制御して、電気的画像情報に対応して変調したレーザー光Lを各対応する画像形成部Pに対してそれぞれ出力する。
【0015】
プリンタモードの場合は、ホスト装置1000であるパーソナルコンピュータからコントローラKに電気的画像情報が入力して、装置100がプリンタとして機能する。ファクシミリ受信モードの場合は、ホスト装置1000である相手方ファクシミリ装置からコントローラKに電気的画像情報が入力して、装置100がファクシミリ受信機として機能する。ファクシミリ送信モードの場合は、原稿読取り部Aで光電読取りした原稿の電気的画像情報が画像処理部105からコントローラKに入力し、相手方ファクシミリ装置に送信されて、装置100がファクシミリ送信機として機能する。
【0016】
各画像形成部Pはそれぞれの現像器3に収容させた現像剤(以下、トナーと記す)の色が異なるだけで互いに同様の構成の電子写真画像形成機構である。各画像形成部Pは、それぞれ、静電潜像が形成される回転ドラム型の電子写真感光体(第1の像担持体:以下、ドラムと記す)1を有する。各ドラム1は矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。また、ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電器2、現像器3、1次転写帯電器4、ドラムクリーナ5を有する。帯電器2はドラム1の表面を所定の極性・電位に一様に帯電する帯電手段である。現像器3はドラム1の表面に形成された静電潜像をトナー像として可視化する現像手段であり、供給装置3aよりトナーが所定量充填されている。本実施例の装置100においては、第1の画像形成部Paの現像器3にはクリア(Cl)のトナー(クリアトナー)が収容されている。第2の画像形成部Pbの現像器3にはブラック(K)のカラートナーが収容されている。第3の画像形成部Pcの現像器3にはシアン(C)のカラートナーが収容されている。第4の画像形成部Pdの現像器3にはマゼンタ(M)のカラートナーが収容されている。第5の画像形成部Peの現像器3にはイエロー(Y)のカラートナーが収容されている。第6の画像形成部Pfの現像器3には第1の画像形成部Paの現像器3と同じクリア(Cl)のクリアトナーが収容されている。クリーナ5はドラム1の表面の1次転写残トナーを除去するクリーニング手段である。
【0017】
本実施例においては、第2乃至第5の画像形成部Pb・Pc・Pd・Peが、記録材にそれぞれカラートナーによるトナー像を形成可能な複数のカラートナー像形成手段である。また、第1と第6の画像形成部Pa・Pfが、それぞれ、記録材にクリアトナーによるトナー像を形成可能なクリアトナー像形成手段である。第1と第6の画像形成部Pa・Pfに収容されているクリアトナーは互いに同じものである。即ち、クリアトナーとしては同じ特性の1種類のクリアトナーを用いている。
【0018】
レーザー走査機構Cは、光源装置としての半導体レーザー、ポリゴンミラー、fθレンズ等を有し、各画像形成部の帯電処理されたドラム1の表面を、それぞれ、対応色の画像情報に応じて変調されたレーザー光Lで走査露光する。即ち、機構Cは、半導体レーザーから発せられたレーザー光をポリゴンミラーを回転して走査し、その走査光の光束を反射ミラーによって偏向し、fθレンズによりドラム1の母線上に集光して露光する。これにより、各ドラム1の表面に、それぞれ、露光された画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0019】
各画像形成部Pの下方部には中間転写ベルトユニット7が配設されている。ユニット7は、中間転写体としての可撓性を有するエンドレスベルト(第2の像担持体:以下、ベルト記す)8を有する。また、このベルト8を懸回張設している駆動ローラ9、2次転写対向ローラ10、テンションローラ11を有する。ベルト8はローラ9により矢印の時計方向にドラム1と同じ周速度をもって回転駆動される。各画像形成部Pの1次転写帯電器5は本例においては転写ローラ(導電性の帯電ローラ)であり、ベルト8の内側に配設されている。そして、各転写ローラ5は、ローラ9とローラ11との間のベルト部分を介して対応するドラム1の下面に対して圧接している。各ドラム1とベルト8との当接部(ニップ部)がそれぞれ1次転写部T1である。ローラ10にはベルト8を介して2次転写ローラ12が圧接している。ローラ12は導電性の帯電ローラである。ベルト8とローラ12との当接部(ニップ部)が2次転写部T2である。また、ローラ11のベルト巻回部にはクリーナ13が配設されている。本例においてこのクリーナ13はクリーニング部材としてクリーニングウエブ(不織布)を用い、これをベルト12の表面に当接させてベルト表面の2次転写残トナー及び紙粉等の異物を拭い取るようにして除去している。
【0020】
ユニット7の下方部には、シート状の記録材(記録媒体)Sを積載して収納している給紙カセット14が配設されている。カセット14から2次転写部T2に至る間には記録材搬送路15が配設されている。また、2次転写部T2よりも記録材搬送方向下流側には定着装置19が配設されている。
【0021】
フルカラー画像を形成するための動作は次のとおりである。各画像形成部Pのドラム1が矢印の反時計方向に所定の制御速度で回転駆動される。ベルト8も矢印の時計方向(ドラム回転に順方向)にドラム1の速度に対応した速度で回転駆動される。レーザー走査機構Cも駆動される。この駆動に同期して、各画像形成部Pにおいてそれぞれ所定の制御タイミングで帯電器2がドラム1の表面を所定の極性・電位に一様に帯電する。機構Cは各ドラム1の表面を各色の画像情報に応じて変調されたレーザー光Lで走査露光する。これにより、各ドラム1の表面に対応色の画像情報に応じた静電潜像が所定の制御タイミングをもって形成される。そして、その静電潜像が現像器3によりトナー像として現像される。上記のような電子写真画像形成プロセス動作により、第1の画像形成部Paのドラム1には予めの指定領域パターンに対応したClトナー像が形成される。そのClトナー像が転写部T1においてベルト8上に1次転写される。第2の画像形成部Paのドラム1にはフルカラー画像のK色パターンに対応したKトナー像が形成される。そのKトナー像が転写部T1において、ベルト8上にすでに転写されているClトナー像に重畳されて1次転写される。第3の画像形成部Pcのドラム1にはフルカラー画像のC色パターンに対応したCトナー像が形成され、そのCトナー像が転写部T1において、ベルト8上にすでに転写されているCl+Kのトナー像に重畳されて1次転写される。第4の画像形成部Pdのドラム1にはフルカラー画像のM色パターンに対応したMトナー像が形成される。そのMトナー像が転写部T1において、ベルト8上にすでに転写されているCl+K+Cのトナー像に重畳されて1次転写される。第5の画像形成部Peのドラム1にはフルカラー画像のY色パターンに対応したYトナー像が形成される。そのYトナー像が転写部T1において、ベルト8上にすでに転写されているCl+K+C+Mのトナー像に重畳されて1次転写される。第6の画像形成部Pfのドラム1には予めの指定領域パターンに対応したClトナー像が形成される。そのClトナー像が転写部T1においてベルト8上にベルト8上にすでに転写されているCl+K+C+M+Yのトナー像に重畳されて1次転写される。
【0022】
各画像形成部Pにおいて、ドラム1からベルト8へのトナー像の1次転写は、ローラ5に対して電源部(不図示)からトナーの正規帯電極性とは逆極性で所定電位の帯電バイアスが印加されることによる電界と転写部のニップ圧力によりなされる。かくして、ベルト8上にCl+K+C+M+Y+Clの、クリアトナー像をCl含む4色フルカラーK+C+M+Yの未定着トナー像が合成形成される。各画像形成部Pにおいて、ベルト8に対するトナー像の1次転写後のドラム1面に残留したトナーはクリーナ5により除去される。
【0023】
ここで、第1と第6の画像形成部PaとPfとにおけるクリアトナー像の形成は、光沢処理モードにおける選択モードに応じて、第1又は第2の画像形成部でなされる場合と、その両方の画像形成部でなされるPaだけでなされる場合と、がある。これについては後述する。
【0024】
一方、所定の制御タイミングで給紙カセット14における給紙ローラ(不図示)が駆動される。これにより、カセット14または14Bに積載されている記録材Sが1枚分離給送される。そして、記録材Sは、搬送路15を通ってレジストローラ対16に至る。ローラ対16はコントローラKで制御されるモーター(不図示)により回転、回転停止される。ローラ対16は搬送路15を搬送される記録材Sの先端部を一旦受け止めて記録材Sの斜行を矯正するとともに、所定の制御タイミングでその記録材Sを送り出す。送り出された記録材Sは転写前ガイド117により2次転写部T2に導入される。そして、記録材Sは2次転写部T2を挟持搬送されていく過程において、ベルト8上の未定着トナー像の転写(2次転写)を順次に受ける。この2次転写は、ローラ12に対して電源部(不図示)からトナーの正規帯電極性とは逆極性で所定電位の帯電バイアスが印加されることによる電界と転写部のニップ圧力によりなされる。記録材Sに対するトナー像転写後のベルト面は引き続くベルト8の回転によりクリーナ13に至り、2次転写残トナー及び紙粉等の異物の除去を受けて清掃されて繰り返して画像形成に供される。記録材Sへのトナー像転写時の2次転写バイアスは、トナー電荷とは逆極性であり、環境(装置周囲の温湿度)及び記録材種類(坪量、表面性)に応じて最適に設定されるように、コントローラKにて制御している。
【0025】
転写部T2を通過した記録材Sはベルト8の面から順次に分離されて搬送路18を通って定着装置(定着部)19に導入される。定着装置19は記録材Sに形成されたトナー像を熱定着させる定着手段である。記録材Sは定着装置19の定着ニップ部Nで挟持搬送されて加熱及び加圧されることにより未定着トナー像が固着像として熱定着される。本実施例における定着装置19はヒートローラタイプであり、互いに圧接させて定着ニップ部Nを形成させた定着部材としての回転可能な定着ローラ19aと加圧ローラ19bとを有する。より具体的には、ローラ19aとローラ19bは、それぞれ、中空芯金の外周面に、弾性層を成形し、さらにその表面を表面離型層で被覆した、外径φ60の複合材ローラである。芯金は、内径φ54.6mm、外径φ56.0mm、厚み0.7mmのFeからなる中空芯金である。弾性層は厚さ2mmのシリコーンゴム層である。表面離型層は30μm厚みのPFAチューブの被覆層である。各ローラ19a・19bの内部にはそれぞれローラ加熱ヒータが設置されている。またと、各ローラ19a・19bの表面には温度を検知するサーミスタが設置されている。ローラ19aとローラ19bとの間に印加する圧力は総圧で80kgf(784N)とした。ローラ19aは駆動源により矢印の時計方向に所定の速度で回転駆動される。ローラ19bはローラ19aの回転に従動して回転する。各ローラ19a・19bはそれぞれ内部のヒータに対して給電部から電力が供給されることで加熱される。そして、各ローラ19a・19bの温度が対応するサーミスタで検知され、各検知温度情報がコントローラKに入力する。コントローラKは、入力する各検知温度情報に基づいて、各ローラ19a・19bの温度がそれぞれに定められた所定の温度に昇温してその温度に維持されるように、給電部から各ヒータへの電力供給を制御する。そして、上記の状態において、ニップ部Nに画像形成部側から未定着トナー画像が形成された記録材Sが導入されて挟持搬送される。その挟持搬送過程で定着ローラ19aの熱とニップ部圧により未定着トナー画像が固着像として定着される。
【0026】
定着装置19を出た記録材Sは、片面画像形成モードの場合には、第1姿勢に制御されている第1フラッパ21により排出搬送路22側に導入されて排出口23から排出トレイ24に片面フルカラー画像形成物として排出、積載される。両面画像形成モードの場合には、定着装置19を出た第1面側画像形成済みの記録材Sが第2姿勢に制御されている第1フラッパ21により反転搬送路25側に案内され、更に第1姿勢に制御されている第2フラッパ26によりスイッチバック搬送路27に導入される。そして、記録材Sはスイッチバック搬送されて第2姿勢に制御された第2フラッパ26により両面搬送経路28に導入される。さらに記録材Sは両面搬送経路28から再び搬送路19に導入されて、レジストローラ対16、転写前ガイド17を経由して表裏反転された状態にて2次転写部T2に導入される。これにより記録材Sの第2面に対して転写部T2にてトナー像の転写がなされる。以後は、第1面に対する画像形成動作と同様に記録材Sは、搬送路18、定着装置19、排出搬送路22、排出口23を通って両面画像形成物として排出トレイ24に排出、積載される。また、モノクロなどモノカラー画像形成モードの場合には、その画像を形成するための画像形成部だけが画像形成動作して片面又は両面のモノカラー画像形成物が排出トレイ24に排出、積載される。
【0027】
画像形成モードがクリアトナーを用いない非クリアモード(非光沢処理モード)の場合には、上記の画像形成動作において、クリアトナー像を形成するための第1と第2の画像形成部PaとPbにおける画像形成は実行されない。そして、その他のカラートナー像の画像形成部での画像形成が実行されることで、上記と同様の動作により非クリアのフルカラー或いはモノカラーの片面又は両面の画像形成物を出力することが可能である。
【0028】
(2)操作ディスプレイ部B
操作ディスプレイ部Bにおいて、400は複写開始を指示するコピースタートキーである。401は標準モードに戻すためのリセットキーである。標準モードは、「モノクロ−片面−非クリア」の画像形成の設定にしてある。402はガイダンス機能を使用するときに押下するガイダンスキーである。403は設定枚数等の数値を入力するテンキーである。404は数値をクリアするクリアキーである。405は連続コピー中にコピーを停止させるストップキーである。406は各種モードの設定やプリンタの状態を表示する液晶表示部およびタッチパネルである。407は連続コピー中あるいはファックスやプリンタとして使用中に割り込んで緊急コピーをとるための割り込みキーである。408は個人別や部門別にコピー枚数を管理するための暗証キーである。409は画像形成装置本体の電源をON/OFFするためのソフトスイッチである。410は画像形成装置の機能を変更するときに使用する機能キーである。411は、オートカセットチェンジのON/OFFや省エネモードに入るまでの設定時間の変更など、予めユーザーが項目を設定するユーザモードに入るためのユーザモードキーである。450は光沢処理モード(グロスアップ/ダウン/混合モード)選択キー、451は両面画像形成モード選択キー、452はフルカラー画像形成モード選択キー、453はモノカラー画像形成モード選択キーである。
【0029】
(3)トナー
本実施例において用いているトナーについて説明する。トナーは、ポリエステル系の樹脂を使用したトナーを用いた。トナーは粉砕法によって製造することも可能であるが、トナーを製造する方法としては、懸濁重合法・界面重合法・分散重合法等の媒体中で直接トナーを製造する方法(重合法)が好ましく挙げられる。トナーの成分、製造方法はこれに限定されるものではない。各色C・M・Y・Kのカラートナーとしては、各色の色素を含有した透明な熱可塑性樹脂で構成されたものを用いることができる。本実施例においては、図3の(b)のトナーの温度−粘度特性を示すような溶融粘度特性を有するポリエステルをバインダとしたカラートナーを用いた。クリアトナーとしては、カラートナーよりも高い粘度の色素を含有しない透明な熱可塑性樹脂を用いた。
【0030】
本実施例においては、カラートナーとクリアトナーは、それぞれ、図3の(b)のような溶融粘度特性をもつものを用いた。使用温度領域内において、温度T(℃)における溶融粘度をη(Pa・s)が、
ηcolor(T)<ηclear(T)
ηcolor(T):カラートナーがT℃のときの溶融粘度
ηclear(T):クリアトナーがT℃の時の溶融粘度
の関係を満たせば、図3の(b)のような溶融粘度特性に限定されるものではない。
【0031】
(4)画像データ量
本発明の説明に用いている画像データ量とは、原稿となる画像のC、M、Y、Kの各色に分解された画像情報の1画素当たりのデータ量である。各色の最大の画像データ量を100%として表す。この0〜100%の画像データ量に応じて、画像形成すべきトナー量が計算される。
【0032】
トナー量とは、記録材上に画像形成される1画素当たりのトナーの量である。トナー量も、画像データ量と同様に、0〜100%で表す。1cm2に画像形成した場合のトナーの重量を載り量という。単色で100%のトナー量のときに、その色の最大濃度となる。
【0033】
この最大濃度を基準にして、トナー量の0〜100%に対応して、画像濃度が直線的に0〜100%になるように、現像条件などの本体プロセス条件を決定する。最大濃度は、トナーの特性、定着装置19の定着条件、記録材Sの種類などによって左右される。また、各色の最大濃度をどの濃度にするかといった画像設計によっても異なる。
【0034】
本実施例では、プロセススピードは200mm/sとした。定着装置19の制御温度(定着温度)は180℃とした。このとき、坪量80g/m2の普通紙(紙グロス6%程度)を用いて、カラートナーの載り量0.4mg/cm2で、全色ともに、濃度1.5が得られた。このトナーの載り量0.4mg/cm2を1色の最大載り量とした。また、このときのグロスは15%程度であった。グロスの測定方法は、日本電色工業株式会社製ハンディ型光沢計(PG−1M)を用いた(JIS Z 8741 鏡面光沢度−測定方法に準拠)。
【0035】
このデータをもとに、出力すべき画像の各色の画像データ量に対して、色調が一致するように、いわゆるガンマ補正などの画像補正を行い各々の画素ごとのトナー量を算出し画像形成が行われる。そして、各色のトナーを重ね合わせて、様々な色を表現する。このとき、理論上は、カラー画像情報としては、最大で400%の画像データ量となる。さらに、クリアトナーの画像情報も100%追加される。クリアトナー像は、濃度ではなく所望の光沢度になる載り量を設定する。クリアトナーのグロスは、坪量が80g/m2の普通紙(紙グロス6%)にクリアトナーで画像形成を行ったところ、0.4mmg/cm2の載り量で60度グロス測定において、10%程度のグロスを得た。
【0036】
また、コート紙においては、プロセススピード100mm/sとし、定着装置19の制御温度は160℃とした。このとき、坪量128g/m2のグロスコート紙(紙グロス30%)を用いて、トナーの載り量0.4mg/cm2で、全色ともに、濃度1.9が得られた。また、このときのグロスは、40%程度であった。
【0037】
クリアトナーのグロスは、坪量が128g/m2のグロスコート紙(紙グロス30%)にクリアトナーで画像形成を行ったところ、0.4mmg/cm2の載り量で60度グロス測定において、20%のグロスを得た。クリアトナーの最大載り量は、カラートナーの最大載り量と一致している必要は無く、所望のグロスが得られる載り量を最大載り量として良い。
【0038】
上記したように、理論上は、カラー画像情報としては、最大で400%の画像データ量となる。しかし、実際の画像形成において、400%のトナーが用いられることはなく、以下に説明するUCRや、GCRといった方法を用いて、カラー画像の最大画像データ量が180%〜240%になるように設定するのが好ましい。
【0039】
UCRとはUnder Color Removal(下色除去)のことである。カラー原稿を4色分解するときに、C・M・Yの3色が重なった部分にはグレーの成分が発生する。その成分をスミ版(Bk版)に置き換える時の方式で、ある程度以上の濃さのグレー成分をスミ版に置き換えトータルの画像データ量を減らすことを目的としている。
【0040】
GCRとはGray Component Replacement(グレー置換)のことである。色分解画像において、C・M・Yの比率が同じ点は、黒またはグレーになる。この部分をKに置き換えることによって、網点の比率を下げることが可能になり、網点総面積率が低くなることをいう。
【0041】
本実施例では、これらの手法を用いて、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量を200%、カラートナー量とクリアトナー量とを足しあわせた最大総トナー量を240%とした。そして、この240%のトナー量が一度に定着できるように、定着装置の設計を行った。
【0042】
(5)光沢処理
図4は光沢処理モード(光沢モード、クリアモード)選択時の制御フロー図である。光沢処理モードは、同一の記録材にカラートナー像とクリアトナー像とが重畳されて形成された画像形成物を出力する場合である。図4のフローチャートの実行主体は制御手段としてのコントローラKのCPUである。CPUがROMに保存されているプログラムに基づき各部を制御する。CPUはプログラムによって、順序決定手段として機能する。
【0043】
光沢処理モードの選択は、操作ディスプレイ部Bの各種モードの設定やプリンタの状態を表示する液晶表示部およびタッチパネル406において、光沢処理モード選択キー450を選択することでなされる。その選択により、図5の(a)のようにパネル406にグロスアップ補正/グロスダウン補正/グロス混合補正モードキーが表示される。グロスアップ補正モードキーは、ユーザーが選択した領域を他の領域よりもグロスをアップさせたい場合に用いる。グロスダウン補正モードキーは、ユーザーが選択した領域を他の領域よりもグロスをダウンさせたい場合に用いる。グロス混合補正キーは、ユーザーが指定した領域のグロスに関して、他の領域よりもアップさせる領域とダウンさせる領域の両方が存在する画像を出力する場合に用いる。光沢処理出力モードでは、第2から第5の画像形成部Pb・Pc・Pd・Peによるカラートナー像の形成に加えて、第1または/および第6の画像形成部Pa・Pfによるクリアトナー像の形成がなされる。
【0044】
1)コピーモードにおいて、原稿Oのクリアな画像は、原稿読取り部(イメージスキャナ)Aでは読取れない。しかし、予め、周囲のカラートナー像部よりもグロスをアップもしくはダウンして出力したい部分の画像をたとえば、白黒で出力しておく。その画像を、操作ディスプレイ部Bで、原稿の白黒画像部をグロス指定画像として認識されるように読取るモードに設定してから、原稿読取り部Aでスキャンすればよい。なお、ここでのグロス指定画像とは、文字、色情報などのオブジェクトとして判別/指定されるものや、ある領域として判別/指定されるものなどに分類され、適宜決定されるものである。
【0045】
コピーモードにおいて、光沢処理モード選択キー450が選択されると、パネル406に図5の(a)のようなグロスアップ補正/グロスダウン補正/グロス混合補正モードキーが表示される。このアップ/ダウン/混合キーを選択した後、C・M・Y・Kの色情報を読み込むための原稿O(図6の(a))を原稿読取り部Aにて読み込む(図4のステップS101)。また、光沢処理を行うために、例えば予め白黒画像として作成したグロスアップ指定用画像Ou(図6の(b))、あるいは、グロスダウン指定用画像Od(図6の(c))、もしくはその両方を順次に、原稿読取り部Aにて読み込む(ステップS101)。
【0046】
例えば、図5の(a)の選択画面にてグロスアップ補正ボタン、もしくはグロスダウン補正ボタンが選択されると、図5の(b)で示すように、色原稿(色情報)を読み込ませるように指定する画面が表示される。そこで、原稿読取り部Aに図6の(a)の原稿Oをおき、図5の(b)の画面のOKボタンを押すことによって、原稿Oの画像情報の読み込みが実行されて完了する(ステップS101)。次に、図5の(c)で示すように、パネル406には、光沢原稿(光沢情報)を読み込ませるように指定する画面が表示される。そこで、原稿読取り部Aに図6の(b)のグロスアップ指定用画像原稿Ou、あるいは図6の(c)のグロスダウン指定用画像原稿Odを置く。そして、図5(c)の画面のOKボタンを押すことによって、光沢原稿OuあるいはOdの読み込みが実行されて完了する(ステップS101)。
【0047】
以上のような操作を行うことによって、コントローラKはC・M・Y・Kの各色の画像情報及びクリアの光沢情報を得る。そして、図6の(d)で示すように部分的に光沢がアップした画像を有する出力物Suを出力させることが可能になる(ステップS102・S105・SS107・S108)。あるいは図6の(e)で示すように部分的に光沢がダウンした画像を有する出力物Sdを出力させることが可能になる(ステップS102・ステップS106・SS107・S108)。
【0048】
一方、図5の(a)の選択画面にてグロス混合補正ボタンが選択されると、図5の(d)で示すように、パネル406に色原稿を読み込ませるように指定する画面が表示される。そこで、原稿読取り部Aに図6の(a)の原稿Oをおき、図5の(d)の画面のOKボタンを押すことによって、色原稿の読み込みが実行されて完了する(ステップS101)。次に、図5の(e)で示すように、パネル406にグロスアップ用の光沢原稿(光沢情報)を読み込ませるように指定する画面が表示される。そこで、原稿読取り部Aに図6の(b)のグロスアップ指定用画像原稿Ouを置き、図5の(e)の画面のOKボタンを押すことによって、グロスアップ用の光沢原稿の読み込みが実行されて完了する(ステップS101)。次に、図5の(f)に示すように、パネル406にグロスダウン用の光沢原稿を読み込ませるように指定する画面が表示される。そこで、原稿読取り部Aに図6の(c)のグロスダウン指定用画像原稿Odを置き、図5の(f)の画面のOKボタンを押すことによって、グロスダウン用の光沢原稿の読み込みが実行されて完了する(ステップS101)。
【0049】
以上のような操作を行うことによって、コントローラ部KはC・M・Y・Kの各色の画像情報及びクリアの光沢情報を得る。そして、図6の(f)で示すように部分的に光沢がアップした領域とダウンした領域が混在した画像を有するプリントSu−dを出力させることが可能になる(ステップS102・103・104・107・108)。
【0050】
上記において、操作部である操作ディスプレイ部Bのパネル406と、原稿読取り部Aと、が出力する画像について光沢度を部分的にアップまたはダウンもしくはアップとダウンさせる領域をユーザーが指定することが可能な光沢度領域指定手段である。
【0051】
2)また、プリンタモードにおいては、外部ホスト装置1000であるパーソナルコンピュータで、クリア画像、あるいは光沢情報が扱える画像ソフトを用いて、出力したい画像を作成する。そして、作成された画像データをもとに、RIP(Raster Image Processor)部で、C・M・Y・K+クリアの各色の画像情報に変換される。このとき、作成したグロス指定領域画像のグロスをアップさせたいか、あるいはダウンさせたいかをソフト上で指定できるようにしておく。各色の画像情報に変換された画像データは、プリンタドライバによって、出力機器に合わせた画像情報に変換して、画像形成装置本体に電気信号が送られる。そして、図6の(d)や(e)や(f)で示すように部分的に光沢の異なる画像を有する出力物Su、Sd、Su−dを出力させることが可能になる。
【0052】
上記において、外部ホスト装置1000が出力する画像について光沢度を部分的にアップまたはダウンもしくはアップとダウンさせる領域をユーザーが指定することが可能な光沢度領域指定手段である。
【0053】
(6)光沢処理モード選択時の画像形成及び定着工程
次に、光沢処理モードが選択された場合のカラートナー及びクリアトナーによる画像形成及び定着工程について説明する。なお、本実施例においては、コピーモードにおいて、操作ディスプレイBのパネル406で光沢処理モード選択キー450が選択された場合について詳細を述べるが、プリンタモードにおいて光沢処理信号が送られた場合も同様の動作を行う。また、以下には、グロス指定画像として、ある領域として判別/指定するものを例に説明を行うが、文字情報や、さらには色情報などのオブジェクトとして判定/指定される場合も同様の動作を行う。
【0054】
ここで、光沢処理を行うモードにおいては、カラートナーとクリアトナーによって画像形成・定着を行うが、この場合、カラー画像データ量とクリア画像データ量、及びカラー画像とクリア画像を足し合わせた画像データ量が必要になる。このとき、画像データ量の計算は、全ての画素について計算される。本実施例においては、コントローラKは、画像処理部、或いは外部ホスト装置等から入力した電気的画像情報に基づいて、記録材に形成するトナー像の、カラートナー量やクリアトナー量、及びカラートナー量+クリアトナー量である総トナー量を演算する。
【0055】
1)グロスアップ補正キーが選択された場合
図5の(a)のパネル画面においてグロスアップ補正キーが選択されると、図4の[UPフロー]に従って画像形成が実行される。クリアトナー付与決定手段はコントローラKのクリアトナー付与決定機能部であり、クリアトナーをカラートナーの上側もしくは下側に付与することを決定する。[UPフロー]においては、グロスをアップするように指定された領域には、クリアトナーをカラートナーの下側に付与することが決定される(図4のステップS105)。この決定に基づいて、コントローラKは第2から第6の画像形成部Pb・Pc・Pd・Pe・Pfを画像形成動作させて、記録材Sにクリアトナーをカラートナーの下側に付与した形態の画像形成を行う。その記録材Sが定着装置19に導入されて、カラートナー像及びクリアトナー像の定着がなされる。
【0056】
この画像形成モードにおいては、光沢がアップするように指定された領域には第6の画像形成部Pfにて、記録材上近傍、即ちトナー像面最下層側にクリアトナー像が画像形成される。また、本実施例においては、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量を200%、カラートナー量とクリアトナー量とを足しあわせた最大総トナー量を240%としている。しかし、これに限られず、例えば、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量が180%の場合には、カラートナー及びクリアトナーの載り量の合計が、240%以下になるように画像形成されれば良い。
【0057】
一例として、画像形成状態の例を図7の(a)に示す。なお、ここで説明するのは一例であり、これに限定されるものではない。領域Aはカラートナーのみで形成された190%画像領域である。領域Bは部分的に光沢をアップするように指定された領域で、190%カラートナーの下側に50%クリアトナー層が形成され、その合計が240%になる領域である。ここで、部分的に光沢をアップしたい領域Bは、総トナー量が他の領域よりも多くなるように設定され、ここでは240%と設定した。領域Bにおいては、トナー像面の上側にカラートナーが190%、下側にクリアトナーが50%の載り量になるように設定されている。即ち、部分的に光沢をアップしたい領域において、カラートナーの載り量をX1、クリアトナーの載り量をX2とした時、[X1+X2=240]となるように設定されている。
【0058】
グロスアップ補正キーが選択され、必要な色情報、光沢情報の読み込みが終了すると(ステップS101)、前記した試算式に基づいてカラートナー及びクリアトナーのトナー量が決定される(ステップS107)。続いて、第2から第6の画像形成部Pb・Pc・Pd・Pe・Pfにてカラートナー像とクリアトナー像の画像形成が行われる。そして、2次転写部T2にて、記録材Sに対して、カラートナー像と、トナー像面の上側にカラートナー像、及び下側の指定領域にクリアトナーの載ったトナー像が形成される(ステップS108)。その記録材Sが定着工程を経て出力されて、部分的に光沢がアップした出力物(図6の(d)、図7の(a))を得ることができる。
【0059】
2)グロスダウン補正キーが選択された場合
図5の(a)のパネル画面においてグロスダウン補正キーが選択されると、図4の[DOWNフロー]に従って画像形成が実行される。[DOWNフロー]においては、クリアトナー付与順決定手段によって、グロスをダウンするように指定された領域には、クリアトナーをカラートナーの上側に付与することが決定される(ステップS106)。この決定に基づいて、コントローラKは第1から第5の画像形成部Pa・Pb・Pc・Pd・Peを画像形成動作させて、記録材Sにクリアトナーをカラートナーの上側の指定領域に付与した形態の画像形成を行う(ステップS108)。その記録材Sが定着装置19に導入されて、カラートナー像及びクリアトナー像の定着がなされる。
【0060】
この画像形成モードにおいては、光沢がダウンするように指定された領域には第1の画像形成部Paにて、定着装置19の定着ローラ19aとの接触面近傍側、即ちトナー像面最表層側にクリアトナー像が画像形成される。また、本実施例においては、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量を200%、カラートナー量とクリアトナー量とを足しあわせた最大総トナー量を240%としている。しかし、これに限られず、例えば、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量が180%の場合には、カラートナー及びクリアトナーの載り量の合計が、240%以下になるように画像形成されれば良い。
【0061】
一例として、画像形成状態の例を図7の(b)に示す。なお、ここで説明するのは一例であり、これに限定されるものではない。領域Aはカラートナーのみで形成された190%画像領域である。領域Cは部分的に光沢をダウンするように指定された領域で、190%カラートナーの上側に50%クリアトナー層が形成され、その合計が240%になる領域である。ここで、部分的に光沢をダウンしたい領域Cは、総トナー量が他の領域よりも多くなるように設定され、ここでは240%と設定した。領域Cにおいては、トナー像面の下側にカラートナーが190%、上側にクリアトナーが50%の載り量になるように設定されている。即ち、部分的に光沢をアップしたい領域において、カラートナーの載り量をX1、クリアトナーの載り量をX2とした時、[X1+X2=240]となるように設定されている。
【0062】
グロスダウン補正キーが選択され、必要な色情報、光沢情報の読み込みが終了すると(ステップS101)、前記した試算式に基づいてカラートナー及びクリアトナーのトナー量が決定される(ステップS107)。続いて、第1から第5の画像形成部Pa・Pb・Pc・Pd・Peにてクリアトナー像とカラートナー像の画像形成が行われる。そして、2次転写部T2にて、記録材Sに対して、カラートナー像と、トナー像面の下側にカラートナー像、及び上側の指定領域にクリアトナーの載ったトナー像が形成される(ステップS108)。その記録材Sが定着工程を経て出力されて、部分的に光沢がダウンした出力物(図6の(e)、図7の(b))を得ることができる。
【0063】
3)グロス混合補正キーが選択された場合
図5の(a)のパネル画面においてグロス混合補正キーが選択されると、図4の[混合フロー]に従って画像形成が実行される。[混合フロー]においては、グロスをアップするように指定された領域には、クリアトナーをカラートナーの下側に付与する。そして、グロスをダウンするように指定された領域には、クリアトナーをカラートナーの上側に付与することが決定される(ステップS103,S104)。この決定に基づいて、コントローラKは第1から第6の画像形成部Pa・Pb・Pc・Pd・Pe・Pfを画像形成動作させる。そして、記録材Sにクリアトナーをカラートナーの下側に付与した形態の画像形成と、クリアトナーをカラートナーの上側に付与した形態の画像形成を行う(ステップS108)。その記録材Sが定着装置19に導入されて、カラートナー像及びクリアトナー像の定着がなされる。
【0064】
この画像形成モードにおいては、光沢がアップするように指定された領域には第6の画像形成部Pfにて、記録材上近傍、即ちトナー像面最下層側にクリアトナー像が画像形成される。また、光沢がダウンするように指定された領域には第1の画像形成部Paにて、定着装置19の定着ローラ19aとの接触面近傍側、即ちトナー像面最表層側にクリアトナー像が画像形成される。また、本実施例においては、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量を200%、カラートナー量とクリアトナー量とを足しあわせた最大総トナー量を240%としている。しかし、これに限られず、例えば、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量が180%の場合には、カラートナー及びクリアトナーの載り量の合計が、240%以下になるように画像形成されれば良い。
【0065】
一例として、画像形成状態の例を図7の(c)に示す。なお、ここで説明するのは一例であり、これに限定されるものではない。領域Aはカラートナーのみで形成された190%画像領域である。領域Bは部分的に光沢をアップするように指定された領域で、190%カラートナーの下側に50%クリアトナー層が形成され、その合計が240%になる領域である。領域Cは部分的に光沢をダウンするように指定された領域で、190%カラートナーの上側に50%クリアトナー層が形成され、その合計が240%になる領域である。ここで、部分的に光沢をアップしたい領域B及び部分的に光沢をダウンしたい領域Cは、総トナー量が他の領域よりも多くなるように設定され、ここでは240%と設定した。領域B、Cにおいては、カラートナーが190%、クリアトナーが50%の載り量になるように設定されている。即ち、部分的に光沢を変化させたい領域において、カラートナーの載り量をX1、クリアトナーの載り量をX2とした時、[X1+X2=240]となるように設定されている。
【0066】
グロス混合補正キーが選択され、必要な色情報、光沢情報の読み込みが終了すると(ステップS101)、前記した試算式に基づいてカラートナー及びクリアトナーのトナー量が決定される(ステップS108)。続いて、第1から第6の画像形成部Pa・Pb・Pc・Pd・Pe・Pfにてクリアトナー像とカラートナー像の画像形成が行われる。そして、2次転写部T2にて、記録材Sに対してグロス混合のトナー像が形成される。即ち、カラートナー像と、トナー像面の上側の指定領域にカラートナー像、及び下側の指定領域にクリアトナーの載ったトナー像と、トナー像面の下側にカラートナー像、及び上側にクリアトナーの載ったトナー像が形成される(ステップS108)。その記録材Sが定着工程を経て出力されて、部分的に光沢がアップ及びダウンした出力物(図6の(f)、図7の(c))を得ることができる。
【0067】
上述した、光沢処理モード(図4)において、出力する画像について光沢度を部分的にアップまたはダウンもしくはアップとダウンさせるためのクリアトナーによる画像形成は、記録材Sの画像形成可能領域について部分的になされる。
【0068】
(7)トナー溶融粘度とグロスの関係
ここで、トナーの溶融粘度とグロスの関係について模式図を用いて説明する。出力物のトナー像のグロスは、定着装置19の定着部材(定着ローラ)19aの表面平滑性、記録材の表面平滑性、加圧力やスピード等の定着条件の他に、トナー量やトナー溶融状態によって決まる。
【0069】
トナー量のグロス依存性については、記録材の表面平滑性が高くない場合において顕著で、これはトナー量が少ない場合は、記録材の表面平滑性の影響を受けやすくなるためである。図8の(a)→(b)に示すように、トナー量が少ない場合はトナーが記録材S上に定着されたときに記録材Sの表面平滑性の影響を受けやすい。しかし、図8の(c)→(d)に示すように、トナー量が多くなってくると記録材Sの凹凸面にトナーが充填されてくるので画像面最表層側は記録材の表面平滑性の影響を受けにくくなってくる。従って、十分に定着される条件下においては、図8の(e)に示すように、トナー量が増える方がグロスが高くなる。また、トナー溶融状態は、定着温度や定着スピード、加圧力等の定着条件と、その条件下におけるトナーの粘度特性によって決まる。これは、ある定着条件に到達したときに、トナーの粘度が低いほうがトナー溶融の進行度合いが高く、従ってグロスが高くなる。逆に、トナーの粘度が高い場合は、トナー溶融が進まず、グロスが低くなってしまう。
【0070】
図9は、定着ニップ部N内の記録材搬送方向の位置と、その位置におけるトナー温度、そのトナー温度におけるトナーの溶融粘度の関係を示している。なお、トナー温度は記録材上に熱電対((株)アンベ エスエムティ、極細薄熱電対KFST−10−100−200)を貼り付けて計測し、圧力分布はタクタイルセンサ(ニッタ(株)、シーラー)を用いて計測した。トナーの溶融粘度は、高架式フローテスター(島津フローテスターCFT−100型)を用いて測定した。加圧成形器を用いて成形した重量1.0gの試料を昇温速度5.0oC/minでプランジャーにより20kgfの荷重をかけ直径1mm、長さ1mmのノズルより押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量を測定した。図9から分かるように、定着ニップ部N内においては、トナー温度は徐々に上昇し、定着ニップ部Nの記録材出口にて最も高い温度になる。例えば、定着ニップ部N内において、トナー温度が90℃に到達した時点では、それに対応するトナー粘度、ここでは、1×105Pa・sとなる。定着ニップ部Nの記録材出口においては、トナー温度は120℃に達し、この時点でトナー粘度は、1×103Pa・sになっている。このようにトナー粘度は定着ニップ部N内において変化し、その粘度が高いか低いかによってグロス値は変化することになる。本実施例に用いたカラートナーとクリアトナーを比較すると、図3の(b)に示すように定着温度に対して常にクリアトナーの粘度はカラートナーの粘度よりも高いために、グロスが低くなる。
【0071】
一方、グロスに寄与するトナーの溶融状態は、トナー像の下層側よりも表層側の溶融による依存の方が高い。これは、例えば、トナー像の最下層側の溶融状態が良好でなくても(溶融状態−低)、最表層側の溶融状態がよく(溶融状態−高)、平滑面が形成されていれば、グロス自体は高くなる(図10の(a))。逆に、トナー像の最下層側の溶融状態が高くても、最表面側の平滑性が低ければグロスは低くなる(図10の(b))。従って、定着部材19aに接しているトナー像の最表層側の粘度が高ければ、溶融状態が良好でなく、そのためにグロスが低くなり、逆に最表層側の粘度が低ければ、溶融状態がよくグロスが高くなる。
【0072】
本実施例においては、クリアトナーをカラートナーの上側に付与することによって、カラートナー部よりもグロスを低減させることを特徴とする。即ち、本実施例に用いたクリアトナーは、カラートナーと比較して溶融粘度が高い(図3の(b))。そのため、定着部材側(トナー像最表層側)にあるカラートナーと、クリアトナーを比較すると、カラートナーの方がグロスが高く、クリアトナーはグロスが低くなる。図10の(c)に示すように、カラートナーのみの画像面(領域A)と、カラートナーの上にクリアトナーを載せた画像面(領域C)を比較すると、画像面表面近傍において、温度に対する粘度が異なる。そのため、領域Aのグロス−高、領域Cのグロス−低、のグロス差が発生する。
【0073】
前述したように、本実施例において用いるカラートナー、及びクリアトナーは、図3の(b)のような溶融粘度特性をもつ。即ち、使用温度領域内において、温度T(℃)における溶融粘度η(Pa・s)が
ηcolor(T)<ηclear(T)
ηcolor(T):カラートナーがT℃のときの溶融粘度
ηclear(T):クリアトナーがT℃の時の溶融粘度
の関係を満たす。この溶融粘度特性の関係によってグロスを効果的に制御できることが望ましいが、例えば本実施例に用いたよりもより高温な温度領域で使用した場合、グロス制御の効果が十分に得られない場合もある。例えば、上記関係を満たしていても、クリアトナー部がカラートナー部よりもグロスが高くなる場合もある。これはカラートナー部の溶融が過多になったために、それ以上のグロス上昇はない、あるいは高温によるオフセット現象等、カラートナー部が画像劣化している状態が挙げられる。本実施例において用いたカラートナーとクリアトナーのグロスは、図11に示すような温度特性を示す。即ち、カラートナーはトナー温度が140℃近傍においてグロスが最大値を示し、140℃よりも高温の領域においてはグロスが降下する傾向がある。これは前記したような高温によるオフセット現象が発生しているためである。ところが、クリアトナーは溶融粘度が高いために、カラートナーがホットオフセットする温度領域においてもある温度まではグロスが上昇するため、140℃以上の領域においては、カラートナー部のグロスがクリアトナーのグロスよりも低くなる場合がある。このカラートナーが高温によるオフセット現象が発生しない領域、即ち、140℃近傍におけるカラートナーの溶融粘度以下で画像形成定着を行うことが好ましい。
【0074】
また、本実施例に用いたよりもより低温の温度領域で使用した場合、トナーが記録材Sに定着しない現象、所謂低温側のオフセット現象も発生する。本実施例においては、カラートナーの溶融粘度に比べて、クリアトナーの溶融粘度が高いものを用いているため、低温側のオフセット現象は、クリアトナーの方が発生しやすい。本実施例に用いた定着構成においては、トナーの溶融粘度が2×105 (Pa・s)以上で用いた場合、低温オフセットが発生する。
【0075】
従って、上記溶融粘度の関係は、好ましい画像品質が得られる領域において重要である。本実施例においては、定着ニップ部N内におけるトナー温度が100℃〜140℃程度の領域において、
2×105>ηclear(100)>ηcolor(100)
2×102<ηcolor(140)<ηclear(140)
であることがより好ましい。
【0076】
次にカラートナーをクリアトナーの上側に付与した場合について説明する。カラートナーをクリアトナーの上側に付与した領域では、カラートナー部よりもトナー総量自体が大きくなる。この場合、前記したように載り量に応じてグロスが上昇するので、カラートナーのみのトナー像面よりも、カラートナーとクリアトナーを載せた画像面の方がグロスが高くなる。
【0077】
ところが、この場合、トナー総量に応じたグロス変化量以上のグロス上昇があることがわかった。つまり、カラートナーのトナー総量をA、この時のグロスをGA、クリアトナーとカラートナーとを併せた載り量をB、このときのグロスをGBとした時、A=Bのとき、GA<GB、となることが分かった。この現象について、出力物をレーザー顕微鏡((株)キーエンス、VK8000シリーズ)で観察した結果、トナー溶融状態が次のような状態になること分かったので、模式図を用いて説明する。
【0078】
図12はカラートナーのみの溶融過程であり、図13はカラートナーの下にクリアトナーがある場合の溶融過程である。図12の(a)は、未定着カラートナーの記録材S上での状態であり、(b)は(a)の部分的拡大図、(c)は(b)の状態からトナーが溶融した状態、(d)は未定着カラートナーが溶融定着された場合の記録材上でのトナー像面状態の模式図である。また、図13の(a)は、上側がカラートナー、下側がクリアトナーである未定着トナー像の記録材上での状態である。(b)は(a)の部分的拡大図、(c)は(b)の状態からトナーが溶融した状態、(d)は上側がカラートナー、下側がクリアトナーである未定着トナーが溶融定着された場合の記録材上でのトナー像面状態の模式図である。
【0079】
図12のように、一定のトナー量に対して、一定の溶融粘度を持ったトナーが溶融された場合、最下層側のトナーの広がりも大きくなり、画像面の最表面側のトナー面も、記録材の表面状態の影響を受けやすくなり、従ってグロスが下がりやすくなってしまう。一方、図13のように、トナー下層側に溶融粘度の高いトナーがある場合、トナー下層側の広がりが抑えられ、画像面の最表面側のトナー面が、記録材の表面状態の影響を受けにくくなり、この結果、画像表面側のトナーのグロスが上がる。
【0080】
(8)検証実験1
クリアトナーの付与順の違いによるグロス変化についての検証実験を行った。記録材Sとして、坪量80g/m2の普通紙(紙グロス6%程度)と、坪量128g/m2のグロスコート紙(紙グロス30%)の2種類について検証した。検証に用いた普通紙については、プロセススピードは200mm/s、定着装置19の制御温度(定着温度)は180℃とした。また、コート紙については、プロセススピードは100mm/s、定着装置19の制御温度は180℃とした。また、用いたトナーは、図3の(b)に示すような溶融粘度特性をもったカラートナー及びクリアトナーを用いた。
【0081】
本実施例における検証において、用いたカラー画像は、カラートナー量を60%、120%、180%の3水準にした。それに対して、下記の1)、2)、3)の場合のグロス効果を比較した。1)60%のクリアトナーを付与しない場合(光沢補正を行わない通常のカラー画像)である。2)60%のクリアトナーをカラートナーの下側に付与する場合(光沢アップ補正を行ったカラー画像)である。3)60%のクリアトナーをカラートナーの上側に付与する場合(光沢ダウン補正を行ったカラー画像)である。以上のような画像を定着させた出力物における、各々のグロスは、表1及び図15の(a)のようになる。
【0082】
【表1】
【0083】
上記のように、クリアトナーをカラートナーの上側に付与することによって、クリアトナーを付与しない領域に対してグロスを下げることが可能になることが分かる。また、クリアトナーをカラートナーの下側に付与することによって、クリアトナーを付与しない領域に対してグロスを上げることが可能になることが分かる。
【0084】
以上説明したような構成を用いることによって、カラートナーとクリアトナーによって画像形成を行い定着する画像形成装置において、1種類のクリアトナーを用いて、さらに生産性を落とさずに、幅広い光沢度制御がなされた出力物を得ることができる。即ち、出力物の同一面内において、周りの光沢に対して、部分的に光沢度を下げた領域、あるいは、部分的に光沢度を上げた領域、もしくは両者が混在するような、出力物を得ることができる。
【0085】
<実施例2>
(1)グロス混合モード
本実施例においては、実施例1で説明したグロス混合補正キー(図5の(a))が選択された場合において、グロスのアップもしくはダウンのレベルに強弱をつけることを可能にした制御についての説明を行う。なお、使用した画像形成装置は実施例1と同様である。また、以下には、グロス指定画像として、ある領域として判別/指定するものを例に説明を行うが、図6で説明したような、文字情報や、さらには色情報などのオブジェクトとして判定/指定される場合も同様の動作を行う。
【0086】
以下、グロス混合補正キーが選択された場合のカラートナー及びクリアトナーの画像形成及び定着工程について説明する。なお、本実施例においても実施例1と同様に、コピーモードにおいて、操作ディスプレイ部Bのパネル406上で光沢処理モード選択キーが選択された場合について詳細を述べる。プリンタモードにおいて外部ホスト装置1000から光沢処理信号が送られた場合も同様の動作を行う。
【0087】
本実施例では、例えば図14の(a)に示すような光沢情報を持った画像を出力する場合について説明する。なお、図14の(a)はある領域として判別/指定するものであるが、文字情報や色情報などのオブジェクトとして指定される場合も同様の動作を行う。領域Aはカラートナーのみが形成された領域である。また、領域Bと領域Dは領域Aよりもグロスが高く指定された領域である。領域Bは領域Dよりもグロスが高く指定されている。また、領域C及び領域Eは領域Aよりもグロスが低く指定された領域である。領域Cは領域Eよりもグロスが低く指定されている。すなわち、上記の各領域における光沢度情報は、以下のようになっている。
【0088】
領域B>領域D>領域A>領域E>領域C
なお、ここでは5段階の光沢度差を持った画像出力の説明を行うが、これに限定されるものではない。
【0089】
グロス混合補正ボタン(図5の(a))を選択すると、実施例1と同様に、図5の(d)で示すように、色原稿を読み込ませるように指定する画面が表示される。そこで、原稿読取り部Aに図14の(b)の色原稿Oをおき、図5の(d)の画面のOKボタンを押すことによって、色原稿の読み込みが実行されて完了する。次に、図5の(e)で示すように、グロスアップ用の光沢原稿を読み込ませるように指定する画面が表示される。そこで、原稿読取り部Aに図14の(c)のグロスアップ指定用画像原稿Ouを置き、図5の(e)の画面のOKボタンを押すことによって、グロスアップ用の光沢情報の読み込みが実行されて完成する。この時、領域Bと領域DのグロスUPの度合いは、例えば各領域BとDの画像の濃度情報として読み込ませることによって可能である。すなわち、ある領域のグロスの強弱を濃度差として認識させる。次に、図5の(f)で示すように、グロスダウン用の光沢原稿を読み込ませるように指定する画面が表示される。そこで、原稿読取り部Aに図14の(c)のグロスダウン指定用画像原稿Odを置き、図5の(f)の画面のOKボタンを押すことによって、グロスダウン用の光沢情報の読み込みが実行されて完成する。この時、グロスDOWNの度合いは、例えば各領域EとCの各画像の濃度情報として読み込ませることによって可能である。すなわち、ある領域のグロスの強弱を濃度差として認識させる。
【0090】
以上のような操作を行うことによって、C・M・Y・Kの各色の画像情報及びクリアClの光沢情報を得る。そして、図14の(a)で示すように、多段階に部分的に光沢度がアップした領域DとB、及びダウンした領域EとCが混在する画像Aを得ることが可能になる。
【0091】
また、プリンタモードにおいては、外部ホスト装置1000であるパーソナルコンピュータで、クリア画像、あるいは光沢情報が扱える画像ソフトを用いて、出力したい画像を作成する。そして、作成された画像データをもとに、RIP(Raster Image Processor)部で、C・M・Y・K+Clの各色の画像情報に変換される。このとき、作成したグロス指定領域画像のグロスをアップさせたいか、あるいはダウンさせたいかをソフト上で多段階に指定できるようにしておく。各色の画像情報に変換された画像データは、プリンタドライバによって、出力機器に合わせた画像情報に変換して、画像形成装置本体に電気信号が送られ、図14の(a)で示すように多段階に部分的に光沢の異なる画像を得ることが可能になる。
【0092】
(2)画像形成及び定着工程
次に、本実施例においてグロス混合補正キー(図5の(a))が選択された場合のカラートナー及びクリアトナーの画像形成及び定着工程について説明する。実施例1と同様に、コントローラKは、グロス混合補正キーが選択されると、クリアトナー付与順決定手段によってクリアトナーをカラートナーの上側もしくは下側に付与することを決定する。即ち、グロスをアップするように指定された領域B・Dには、クリアトナーをカラートナーの下側に付与し、グロスをダウンするように指定された領域C・Dには、クリアトナーをカラートナーの上側に付与することが決定される。そして、第2から第5の画像形成部Pb・Pc・Pd・Peによるカラートナー像の画像形成と、第1の画像形成部Paと第6の画像形成部Pfによるクリアトナー像の画像形成が行われる。その記録材Sが定着装置19に導入されて、カラートナー像及びクリアトナー像の定着がなされる。
【0093】
このとき、光沢がアップするように指定された領域B・Dには第6の画像形成部Pfにてクリアトナー像を形成して、記録材上近傍、即ちトナー像面最下層側に画像形成される。また、光沢がダウンするように指定された領域C・Eには第1の画像形成部Paにてクリアトナー像を形成して、定着部材接触面近傍側、即ちトナー像面最表層側に画像形成される。また、本実施例においては、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量を200%、カラートナー量とクリアトナー量とを足しあわせた最大総トナー量を240%としている。しかし、例えば、カラートナーのみで画像形成される領域の最大総トナー量が180%の場合には、カラートナー及びクリアトナーの載り量の合計が、240%以下になるように画像形成されれば良い。
【0094】
一例として、図14の(a)のような光沢度情報を持った画像を出力する場合について説明する。なお、ここで説明するのは一例であり、これに限定されるものではない。領域Aはカラートナーのみで形成された180%画像領域である。領域Bは部分的に光沢をアップするように指定された領域で、トナー像面における上側にカラートナー180%と下側にクリアトナー60%で形成され、その合計が240%になる領域である。領域Dは部分的にグロスを弱アップするように指定された領域で、トナー像面における上側にカラートナー180%と下側にクリアトナー20%で形成され、その合計が200%になる領域である。領域Cは部分的に光沢をダウンするように指定された領域で、トナー像面における下側にカラートナー180%と上側にクリアトナー60%で形成され、その合計が240%になる領域である。領域Eは部分的に光沢を弱ダウンするように指定された領域で、トナー像面における下側にカラートナー180%と上側にクリアトナー20%で形成され、その合計が200%になる領域である。
【0095】
グロス混合補正キー(図5の(a))が選択され、必要な色情報、光沢情報の読み込みが終了すると、前記したようにカラートナー及びクリアトナーのトナー量が決定される。続いて、カラートナーとクリアトナーの画像形成が行われると、図14の(a)に示すように記録材上にカラートナー及びクリアトナーの載ったトナー像が形成され、定着工程を経て部分的に光沢が変化した出力物を得ることができる。
【0096】
(3)検証実験2
ここで、クリアトナーの付与量の違いによるグロス変化についての検証実験を行った。検証に用いた定着装置、記録材体、トナーの各条件は、実施例1における検証実験1と同様である。本実施例における検証において、用いたカラー画像は、カラートナー量180%の画像にした。それに対して、下記の1)、2)、3)の場合のグロス効果を比較した。1)クリアトナーを付与しない場合(光沢補正を行わない通常のカラー画像)である。2)クリアトナー量20%、40%、60%をカラートナーの下側に付与する場合(光沢アップ補正を行ったカラー画像)である。3)クリアトナー量20%、40%、60%をカラートナーの上側に付与する場合(光沢ダウン補正を行ったカラー画像)である。以上のような画像を定着させた出力物における、各々のグロスは、表2及び図15の(b)のようになる。
【0097】
【表2】
【0098】
上記のように、クリアトナーをカラートナーの上側に付与することによって、クリアトナーを付与しない領域に対してグロスを下げることが可能になる。さらにクリアトナーの付与量を変化させることで、グロスの下げ幅を調整することが可能になることが分かる。また、クリアトナーをカラートナーの下側に付与することによって、クリアトナーを付与しない領域に対してグロスを上げることが可能になる。さらにクリアトナーの付与量を変化させることで、グロスの上げ幅を調整することが可能になることが分かる。
【0099】
以上説明したように、制御手段Kは、光沢度のアップもしくはダウンのレベルに応じて、記録材Sに対するクリアトナーの載り量を変化させる。この構成を用いることによって、カラートナーとクリアトナーによって画像形成を行い定着する画像形成装置において、幅広い光沢度制御がなされた出力物を得ることができる。
【0100】
<その他の事項>
1)実施例1と2においては、4色フルカラーの画像形成の場合の部分的な光沢処理モードを説明したが、モノクロなどモノカラーの画像形成の場合にも上記のような部分的な光沢処理モードを適用して同様の効果を得ることができることは勿論である。
【0101】
2)画像形成装置は中間転写方式に限られるものではない。記録材を搬送ベルトあるいは転写ドラムに保持させて画像形成部に搬送することで、記録材に対してフルカラーまたはモノカラーのカラートナー像とクリアトナー像とを決定された付与順序にて転写方式又は直接方式で形成する。そしてその記録材を定着装置に導入する装置構成であってもよい。
【0102】
3)トナー像の形成プロセスは電子写真方式に限られるものではない。像担持体として静電記録誘電体を用いる静電記録プロセス、磁気記録磁性体を用いた磁気記録プロセスなどであってもよい。
【0103】
4)定着手段は実施例のヒートローラタイプの定着装置に限られるものではない。定着部材または加圧部材もしくは両者にベルト部材(又はフィルム)を用いたベルト定着装置、赤外線や高周波を照射してトナーを加熱定着する非接触タイプの定着装置などであってもよい。
【符号の説明】
【0104】
100・・画像形成装置、Pb・Pc・Pd・Pe・・カラートナー像形成手段、Pa・Pf・・クリアトナー像形成手段、19・・定着手段、406・A・・光沢度領域指定手段、K・・制御手段、S・・記録材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材にカラートナーによるトナー像を形成可能なカラートナー像形成手段と、同一の記録材にクリアトナーによるトナー像を形成可能なクリアトナー像形成手段と、記録材に形成されたトナー像を熱定着させる定着手段と、出力する画像について光沢度を部分的にアップまたはダウンもしくはアップとダウンさせる領域をユーザーが指定することが可能な光沢度領域指定手段と、制御手段と、を有し、前記クリアトナーは定着温度における溶融粘度が前記カラートナーの定着温度における溶融粘度がよりも高いトナーであり、前記制御手段は前記光沢度領域指定手段で指定された領域の光沢情報に応じて前記記録材に対する前記カラートナーによるトナー像と前記クリアトナーによるトナー像との付与順を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記光沢情報が光沢度をアップさせるものである場合には、前記制御手段は、前記付与順を、前記クリアトナーによるトナー像を前記カラートナーによるトナー像の下側に付与するように画像形成動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記光沢情報が光沢度をダウンさせるものである場合には、前記制御手段は、前記付与順を、前記クリアトナーによるトナー像を前記カラートナーによるトナー像の上側に付与するように画像形成動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記光沢度のアップもしくはダウンのレベルに応じて、前記記録材に対する前記クリアトナーの載り量を変化させることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記クリアトナーによる画像形成は、記録材の画像形成可能領域について部分的になされることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
記録材にカラートナーによるトナー像を形成可能なカラートナー像形成手段と、同一の記録材にクリアトナーによるトナー像を形成可能なクリアトナー像形成手段と、記録材に形成されたトナー像を熱定着させる定着手段と、出力する画像について光沢度を部分的にアップまたはダウンもしくはアップとダウンさせる領域をユーザーが指定することが可能な光沢度領域指定手段と、制御手段と、を有し、前記クリアトナーは定着温度における溶融粘度が前記カラートナーの定着温度における溶融粘度がよりも高いトナーであり、前記制御手段は前記光沢度領域指定手段で指定された領域の光沢情報に応じて前記記録材に対する前記カラートナーによるトナー像と前記クリアトナーによるトナー像との付与順を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記光沢情報が光沢度をアップさせるものである場合には、前記制御手段は、前記付与順を、前記クリアトナーによるトナー像を前記カラートナーによるトナー像の下側に付与するように画像形成動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記光沢情報が光沢度をダウンさせるものである場合には、前記制御手段は、前記付与順を、前記クリアトナーによるトナー像を前記カラートナーによるトナー像の上側に付与するように画像形成動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記光沢度のアップもしくはダウンのレベルに応じて、前記記録材に対する前記クリアトナーの載り量を変化させることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記クリアトナーによる画像形成は、記録材の画像形成可能領域について部分的になされることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の画像形成装置。
【図4】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−150158(P2011−150158A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11753(P2010−11753)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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