説明

画像形成装置

【課題】メインタンクがエンド状態になるとメインタンク交換を行うことなく印刷を継続することができない。
【解決手段】インク使いきり緊急印刷が選択されているとき、サブタンク35内の圧力を検出し、サブタンク35内の圧力が記録ヘッド34からの滴吐出が可能な正常値範囲内になければ、インク消費量が予め定めた閾値未満か否を判別し、インク消費量が閾値未満であれば、サブタンク35の大気開放機構207を大気開放状態にして、サブタンク35内に大気を導入してサブタンク35内の圧力を上昇させ、圧力上昇後大気開放機構207を閉じ、サブタンク35からインクカートリッジ10にインクを吸入してサブタンク35内の圧力を低下させ、正常値範囲内にした後、印刷動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッド及及び記録ヘッドに液体を供給するサブタンクを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
このような画像形成装置において、記録ヘッドにインクを供給するサブタンク(ヘッドタンク、バッファタンクとも称される。)を備え、装置本体側に着脱自在に装着されるメインタンク(インクカートリッジとも称する)からサブタンクに対してインクを供給する方式のものが知られている。
【0005】
従来のサブタンクの制御に関しては、例えば、サブタンクに吸引を行った内容物の吸引量を測定する手段と、サブタンク内の空気量を測定する手段とサブタンク内のインク量を測定する手段を用いて、空気もしくはインクを適切な量吸引することで適切な負圧を形成することが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−130979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般に、インクカートリッジがインクエンド(インクニアエンドを含む)状態になったときには、インクカートリッジの交換を要求するようにしているが、インクカートリッジのストックがない場合には直ちに交換することができず、印刷が中止されることになるという不都合がある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、メインタンクがエンド状態になっても印刷を継続できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部内を大気に開放する開閉可能な大気開放機構とを有するサブタンクと、
前記サブタンクに供給する前記液体を収容するメインタンクと、
前記サブタンクと前記メインタンクとの間に設けた可逆型送液手段と、
前記サブタンク内の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記メインタンクから前記サブタンクへ前記液体を供給したとき、前記圧力検知手段で検知した前記サブタンクの圧力が予め定めた圧力未満であるときには、前記前記大気開放機構を開いて前記サブタンク内の圧力を上昇させた後、前記可逆型送液手段で前記サブタンクから前記メインタンクに前記液体を送液して前記サブタンク内の圧力を低下させる制御を行なう制御手段を有する
構成とした。
【0010】
なお、本願において、「負圧」とは「大気圧よりも圧力が小さいこと」を意味し、「負圧を低下させる」とは「圧力を低下させる」若しくは「圧力をより負圧にする」ことを意味する。
【0011】
ここで、前記制御手段は、前記記録ヘッドから吐出された液体の消費量を測定する消費量測定手段と、サブタンク内のインクの最大使用可能インク量を算出する手段と、前記算出結果に基づいて前記制御を行なうか否かを判定する手段とを備えている構成とできる。
とできる。
【0012】
また、前記制御手段は、前記メインタンクがエンド状態のまま前記サブタンク内の残量液体を使用した画像形成動作を行う旨の指示を受けたときに、前記制御を行う構成とできる。
【0013】
また、前記制御手段は、前記サブタンクから前記メインタンクに送液した前記液体を前記サブタンクに供給する制御を行なう構成とできる。
【0014】
また、前記制御手段は、前記サブタンクから前記メインタンクに送液するとき、前記サブタンクの液体残量に応じて前記送液ポンプの送液速度を変更する構成とできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る画像形成装置によれば、メインタンクからサブタンクへ液体を供給したとき、圧力検知手段で検知したサブタンクの圧力が予め定めた圧力未満であるときには、大気開放機構を開いてサブタンク内の圧力を上昇させた後、可逆型送液手段でサブタンクからメインタンクに液体を送液してサブタンク内の圧力を低下させる制御を行う構成としたので、サブタンク内の圧力を滴吐出可能な状態に保ちつつサブタンク内の残量液体を使用して画像形成動作を行うことができるようになり、メインタンクがエンド状態になっても印刷を継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部の全体構成を説明する側面概略構成図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】サブタンクの一例を示す模式的平面説明図である。
【図4】同じく図3の模式的正面説明図である。
【図5】インク供給排出系の説明に供する模式的説明図である。
【図6】サブタンクの圧力検出の説明に供するキャリッジと満タン検知センサの要部説明図である。
【図7】同じくサブタンクの圧力検出の説明に供する模式的説明図である。
【図8】同装置の制御部を説明する概略ブロック説明図である。
【図9】同制御部が行う本発明の第1実施形態における印刷制御処理の説明に供するフロー図である。
【図10】同じくサブタンク内圧力の満タン検知フィラの位置の説明に供する説明図である。
【図11】同じく同印刷制御を行うときの満タン検知フィラの位置及びサブタンク内液面の変化の説明に供する説明図である。
【図12】インク使い切り緊急印刷時のインク残量とインク吸入可否判定の一例の説明に供する説明図である。
【図13】インク使い切り緊急印刷時のインク残量とインク吸入可否判定の他の例の説明に供する説明図である。
【図14】インク使い切り緊急印刷実施可否の判定の他の例の説明に供するフロー図である。
【図15】本発明の第2実施形態における印刷制御処理の説明に供するフロー図である。
【図16】本発明の第3実施形態における印刷制御処理の説明に供するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、後述する主走査モータによってタイミングベルトを介してキャリッジ主走査方向に移動走査する。
【0018】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0019】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0020】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのサブタンク35a、35b(区別しないときは「サブタンク35」という。)を搭載している。このサブタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のメインタンクであるインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色のインクが補充供給される。
【0021】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0022】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0023】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、後述する副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0024】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0025】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0026】
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0027】
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0028】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0029】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0030】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0031】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0032】
次に、サブタンク35の一例について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同サブタンクの1つのヘッド分の模式的上面説明図、図4は同サブタンクの1つのヘッド分の模式的正面説明図である。
サブタンク35は、インクを保持するための一側部が開口したインク収容部を形成するタンクケース201を有し、このタンクケース201の開口部は可撓性フィルム203で密閉し、タンクケース201内に配置した弾性部材としてのバネ204によってフィルム203を常時外方へ付勢している。これにより、タンクケース201のフィルム203がバネ204によって外方への付勢力が作用しているので、タンクケース201内のインク残量が減少することによって負圧が発生する。
【0033】
また、タンクケース201の外側には、一端部を支軸202で揺動可能に支持され、タンクケース201側に向けて付勢されているフィラからなる変位部材(満タン検知フィラともいう。)205がフィルム203に接着などで固定され、フィルム203の動きに連動して変位部材205が変位するので、装置本体側に配置された光学センサからなる満タン検知センサ301によって変位部材205の変位量を検知することによりサブタンク35内のインク残量などを検知することができる。
【0034】
また、タンクケース201の上部には、インクカートリッジ10からインクを供給するための供給口209があり、インク供給チューブ36に接続されている。また、タンクケース201の側部には、サブタンク35内を大気に開放する大気開放機構207が設けられている。この大気開放機構207は、サブタンク35内に連通する大気開放路207aを開閉する弁体207b及びこの弁体207bを閉弁状態に付勢するスプリング207cなどを備え、装置本体側の大気開放ソレノイド302によって弁体207bを押すことで開弁されて、サブタンク35内に大気開放状態(大気に連通した状態)になる。
【0035】
また、サブタンク35内のインク液面高さを検出するための電極ピン208aと208bが取り付けられている。インクは電導性を持っており、電極ピン208aと208bの所までインクが到達すると、電極ピン208aと208b間に電流が流れて両者の抵抗値が変化するため、インク液面高さが所定高さ以下になった、すなわち、サブタンク35の空気量が所定量以上になったことを検出することができる。
【0036】
ここで、この画像形成装置における負圧形成動作についてインク供給系の概要を示す図5を参照して説明する。
まず、インクカートリッジ10とサブタンク35との間には、チューブポンプなどの可逆型(供給及び吸引を行なえる意味)ポンプからなる送液ポンプ241を配置している。そこで、サブタンク35の大気開放機構207を閉じた状態で、送液ポンプ241を逆転駆動してサブタンク35からインクカートリッジ10側にインクを送液する(これを「インク逆送」又は「インク吸入」という。)ことで、弾性部材204が可撓性フィルム203を外方に押すことによってサブタンク35内に負圧が形成される。
【0037】
また、サブタンク35の大気開放機構207を閉じた状態で、維持回復機構81の吸引キャップ82aで記録ヘッド34のノズル面をキャッピングし、維持回復機構81の吸引ポンプ811を駆動することで吸引チューブ812を介してノズルからインクを吸引することによってサブタンク35内のインクを吸引することができ、弾性部材204が可撓性フィルム203を外方に押すことによってサブタンク35内に負圧が形成される。なお、吸引された廃インクは廃液タンク813に排出される。
【0038】
さらに、サブタンク35の大気開放機構207を閉じた状態で、記録ヘッド34から前述した空吐出受け84に向けて画像形成に寄与しない液滴を吐出することによってサブタンク35内のインクが消費されるので、同様に、弾性部材204が可撓性フィルム203を外方に押すことによってサブタンク35内に負圧を形成できる。
【0039】
次に、サブタンク35の負圧(圧力)の検出について図6及び図7を参照して説明する。
ここでは、図6に示すように、装置本体側には、キャリッジ33が主走査方向に移動するときに各サブタンク35の変位部材(満タン検知フィラ)205の先端205aが通過する位置に、前述した透過型光センサである満タン検知センサ301が設置されている。ここで、キャリッジ33の主走査方向の位置は、エンコーダセンサ331によってキャリッジ主走査方向に沿って配置されたエンコーダスケール332を読み取ることで検出している。
【0040】
したがって、図7(a)に示すように、サブタンク35の負圧(圧力)が正常であるときには、実線図示の所定の位置から矢印方向にキャリッジ33を移動させてサブタンク35を距離L1だけ移動させることで、満タン検知センサ301によって変位部材205の先端205aを検知することができる。
【0041】
これに対して、図7(b)に示すように、サブタンク35の負圧が低い(圧力が高い)方向で異常であると、本来サブタンク35側に移動しているべき変位部材205がサブタンク35から離れている(弾性部材204の復元力で外方に押されている状態になっている)ので、同様に実線図示の所定の位置から矢印方向にキャリッジ33を移動させたとき、負圧が正常なときの移動距離L1よりも短い距離L2だけ移動した時に満タン検知センサ301によって変位部材205が検知されることになる。
【0042】
同様に、サブタンク35の負圧が高い(圧力が低い)方向で異常であると、本来サブタンク35側から離れた方向に移動しているべき変位部材205がサブタンク35側に近づいている(弾性部材204の復元力に抗して内包に押されている状態になっている)ので、同様に所定の位置(正常値の位置)から矢印方向にキャリッジ33を移動させたとき、負圧が正常なときの移動距離L1よりも長い距離だけ移動した時に満タン検知センサ301によって変位部材205が検知されることになる。
【0043】
このようにして、変位部材205が検知されたときのサブタンク35の位置(移動距離)を検知することで、変位部材205の変位量(サブタンク35内部の弾性部材204の変位量に対応する)やサブタンク35内の圧力、更にはインク残量に応じて変位部材205が変位することからインク残量をも検出することができる。
【0044】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図8を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部500は、この装置全体の制御を司り、本発明に係る制御手段、消費量測定手段、圧力検出手段、判定手段などを兼ねるCPU501と、CPU501が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
【0045】
また、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、維持回復機構81の維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510と、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部511と、サブタンク35の大気開放機構207を開閉する大気開放ソレノイド302を駆動するソレノイド駆動部512と、送液ポンプ241を駆動するポンプ駆動部516などを備えている。
【0046】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0047】
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0048】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
【0049】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0050】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動信号を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド7の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド7を駆動する。このとき、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0051】
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ制御部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度、湿度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。このI/O部513に入力されるセンサ群515には、前述したサブタンク35の変位部材205を検知する満タン検知センサ301、検知電極ピン208a、208bなどの信号も入力される。
【0052】
この制御部500のCPU501は、前述したように、満タン検知センサ301の検知信号によって変位部材205を検知してサブタンク35内の圧力を検出する手段を構成し、また、吐出滴数及び吐出滴量などからインク消費量を測定する消費量測定手段を構成し、また、サブタンク35内のインクの最大使用可能インク量を算出する手段を構成し、この算出結果に基づいてサブタンク35の負圧を形成する制御を行なうか否かを判定する手段を構成する。
【0053】
次に、この画像形成装置におけるメインタンクがエンド状態になったときにサブタンクの残量インクを使用したインク使い切り印刷に関する制御を含む印刷制御処理について図9のフロー図を参照して説明する。なお、以下、フロー図に付記するステップS1等は処理の順序を規定するものではなく、単なる符号の意味で用いる。
【0054】
まず、現在の印刷状態が、通常印刷中か、緊急印刷中か、インク使いきり緊急印刷中のいずれかであるかを判定する(S1)。ここで、「通常印刷」は、メインタンク10にインクがあり、印刷に伴ってサブタンク35から消費されたインクの供給を行いながら印刷を行なう画像形成動作である。「緊急印刷」は、メインタンク10にインクがない(エンド状態である)が、サブタンク35内の残量インクを使用して印刷を行なう画像形成動作である。「インク使い切り緊急印刷」は、メインタンク10にインクがない(エンド状態である)が、サブタンク35内の残量インクを使用し、かつ、サブタンク35内の圧力が滴吐出不可能になるまで残量インクを使い切って印刷を行なう画像形成動作である。
【0055】
ここで、ユーザーからの指示によりインク使い切り緊急印刷が選択されているときには、満タン検知フィラ205によってサブタンク35内の圧力を検出し、サブタンク35内の圧力が記録ヘッド34からの滴吐出が可能な正常値範囲内にあるか否か(ここでは、正常値範囲内か正常値範囲より小さいか)を判別する(S2)。なお、正常値範囲より大きいと判別された場合は、エラーと判断する。
【0056】
そして、サブタンク35内の圧力が記録ヘッド34からの滴吐出が可能な正常値範囲より小さいときには、インク消費量が予め定めた閾値未満か否かを判別する(S3)。この「インク消費量」(ヘッドから吐出したインクの量)は、「吐出する滴の滴量×吐出した滴数」の総和で求められる値のことであり、「吐出する滴の滴量」は予め定めた値(量)である。
【0057】
このとき、インク消費量が閾値未満であれば、サブタンク35の大気開放機構207を大気開放状態にして、サブタンク35内に大気を導入してサブタンク35内の圧力を上昇させ、圧力上昇後大気開放機構207を閉じる(S4)。その後、送液ポンプ241を逆転駆動してサブタンク35のインクをインクカートリッジ10に吸入(インクを逆送)し、サブタンク35内の圧力を低下させる(S5)。その後、このステップS5のインクカートリッジ10に吸入したインク量(インク吸入量)をインク消費量に加算する(S6)。
【0058】
その後、インク吐出を行って印刷動作(画像形成動作)を行い(S7)、画像形成動作で消費した(吐出した)インク量分をインク消費量に加算する(S8)。
【0059】
これに対し、インク消費量が閾値異常であれば、インクエンドを操作パネル514に表示し、あるいはホスト600側に通知する(S9)。
【0060】
また、ステップS1で緊急印刷中と判別されたときには、満タン検知フィラ205によってサブタンク35内の圧力を計測し、サブタンク35内の圧力が正常値範囲内にあるか否か(ここでは、正常値範囲内か正常値範囲より小さいか)を判別する(S11)。
【0061】
ここで、サブタンク35内の圧力が記録ヘッド34からの滴吐出が可能な正常値範囲内にあるときには、印刷要求に従い、インク吐出を行って印刷動作(画像形成動作)を行い(S12)、画像形成動作で消費した(吐出した)インク量分をインク消費量に加算する(S13)。
【0062】
一方、ステップS11でブタンク35内の圧力が正常値範囲より小さいときには、インクエンド状態であるが、前述したインク使い切り緊急印刷が可能である旨(インク使い切り緊急印刷可)を操作パネル514やホスト600側に通知する(S14)。
【0063】
ここで、上述した印刷制御処理と満タン検知フィラの位置関係について図10を参照して説明する。
先ず、図10(b)に示す状態でインク吐出を行った場合、滴吐出によって消費されたインク容量分サブタンク35内圧力が下がり、同図(c)に示すように、満タン検知フィラ205の先端205aの位置が主走査方向(図の左右方向:以下同じ)における矢示A方向に移動し、印刷を続けた場合、サブタンク35内の圧力が低い状態に移行する。
【0064】
この図10(c)に示す状態でサブタンク35にインクカートリッジ10からインクを供給した場合(サブタンク35側でインク吸引を行った場合)、吸引したインク容量分サブタンク35内の圧力が上昇するため、満タン検知フィラ205の先端205aの位置が主走査方向における矢示A方向と反対方向(矢示B方向とする。)に移動し、図10(b)に示す状態に遷移する。
【0065】
また、図10(c)に示す状態でサブタンク35にメインカートリッジ10からインクを供給した場合(サブタンク35側でインク吸引を行った場合)、インクカートリッジ10が空の状態(エンド状態)であると、サブタンク35にインクが供給されないため、満タン検知フィラ205の先端205aの位置は変化しない。したがって、インクカートリッジ10からのインク供給動作を行っても満タン検知フィラ205の位置が変化しないときにはインクカートリッジ10がエンド状態であることを検出できる。ただし、インクエンド状態は、インク消費量とインクカートリッジ10の容量との差に基づいて検出することもできる。
【0066】
また、図10(c)に示す状態で大気開放機構207を大気開放状態にした場合、外気圧と同じ圧力になる。サブタンク35内は負圧となっているため、吸入された空気分だけ圧力が増加し、図10(a)に示すように、満タン検知フィラ205の先端205aの位置が主走査方向における矢示B方向に移動して同図(a)に示す状態に遷移する。
【0067】
この図10(a)の状態でサブタンク35からインクカートリッジ10にインク吸入(インク逆送)を行った場合、逆送されたインク容量分サブタンク35内の圧力が下がり、満タン検知フィラ205の先端205aの位置が主走査方向における矢示A方向に移動し、図10(b)に示す状態に遷移する。
【0068】
次に、上述した印刷制御処理を行った場合の満タン検知フィラの位置及びサブタンク内のインク液面の変化について図11を参照して説明する。なお、図11(a)〜(d)における左側の図がサブタンク正面図、中央の図がサブタンク側面図、右側の図がサブタンク正面におけるインク液面を表した説明図であり、図中の斜線領域はインク領域である。
【0069】
先ず、図11(a)に示す状態で滴吐出(インク吐出)を行った場合、インク吐出により消費されたインク容量分サブタンク35内の圧力が下がり、同図(b)に示すように、満タン検知フィラ205の先端205aの位置が主走査方向における矢示A方向に移動する。このとき、サブタンク35内の圧力は低下するが、インク400のインク液面401は変化しない。
【0070】
図11(b)に示す状態で大気開放を行った場合、空気が流入するため流入した空気の分だけサブタンク35の圧力が上がり、同図(c)に示すように、満タン検知フィラ205の先端205aの位置が主走査方向における矢示B方向に移動する。このとき、サブタンク25内の圧力が上昇し、かつ空気が流入するためインク液面401は下がる。
【0071】
図11(c)に示す状態でサブタンク35からインクカートリッジ10にインク吸入(インク逆送)を行った場合、インク吐出されたインク容量分サブタンク35の圧力が下がるので、満タン検知フィラ205の先端205aの位置が主走査方向における矢示A方向に移動する。このとき、サブタンク35内の圧力は低下するが、インク液面401は変化しない。
【0072】
図11(d)に示す状態は通常状態である。
【0073】
次に、サブタンク35内のインク残量とサブタンク35からインクカートリッジ10へのインク吸入(インク逆送)可否の判定(図9のステップS3)について図12及び図13を参照して説明する。
まず、前述した図9の処理を繰り返した場合、サブタンク35内の空気領域が徐々に増加する。前述した処理のステップS4、S5でサブタンク35を大気開放した後サブタンク35内の圧力を低下させるためのインク吸入を行うときに必要なインク量は決まっている。インクカートリッジ10へのインク吸入に必要なインク量が不足する場合、サブタンク35が空になって、ノズルが損傷するおそれがある。そのため、現在のインク残量を満タン時インク量とインク消費量の差を用いて算出する(ただし、上記図9の処理のステップS3では、インク消費量を用いている。)。
【0074】
そして、図12(a)に示すようにインク残量がインク吸入必要量を下回っているときにはインク吸入不可であるので、サブタンク使いきり緊急印刷実施不可と判断し、図12(b)に示すようにインク残量がインク吸入必要量を上回っているときにはインク吸入可であるので、サブタンク使いきり緊急印刷実施可と判断する。
【0075】
また、サブタンク35からインクカートリッジ10へのインク吸入(インク逆送)を行なうとき、必要なインク量を満たしていても、インク供給口209が液面に触れていない、又は液面に近い状態ではインク吸入時に気泡が混入するおそれがある。
【0076】
そこで、図13に示すように、サブタンク35に電極ピン220をインク供給口109の近くに配置し、同図(a)に示すように電極ピン220に液面が触れない場合はインク吸入不可(サブタンク使い切り緊急印刷実施不可)、同図(b)に示すように液面に触れた場合はインク吸入可(サブタンク使い切り緊急印刷実施可)と判断することもできる。
【0077】
なお、前記図9の例では、図12の構成で判別しているが、図13の構成で判別するようにすることもできる。
【0078】
次に、サブタンク使いきり緊急印刷実施の判定の例について図14のフロー図を参照して説明する。
前述した図12に示すインク消費量(サブタンク残量)に基づくはんていでは、サブタンク内のインクを使い切ることができない可能性がある。ここで、インク吸入を行うときに必要なインク量とインク吸入を行った後に最大で吐出できるインク量は予め決まっているので、これらの値を元に最大使用可能インク量を算出し、インク吸入の実行可否を判定する。
【0079】
このインク吸入の実行可否の判定を行なうタイミングとしては、印刷実行中や印刷終了時点での、サブタンクのインク残量が(インク吸入を行う際の必要量以上)〜(大気開放後の吸入インク量と最大吐出インク量の合計以下)となる場合の一度だけ行えばよい。
【0080】
つまり、まず、サブタンク35の満タン時のインク量と消費インク量(吐出及び吸入)からサブタンク35のインク残量を、サブタンクインク残量=サブタンク満タン時のインク量−消費インク量(吐出時+吸入時)、の演算を行なって算出する(S21)。
【0081】
次いで、インクの吐出が可能な限界の圧力値が決まっていることから、一度に可能である吐出インク量の最大値は決まっているので、吐出可能インク量A=吐出インク量最大値−消費インク量(吐出時)、の演算を行なって、吐出可能インク量Aを算出する(S22)。
【0082】
その後、現在の吐出可能インク量Aと現時点でインク吸入した場合の残りサブタンク35の残インク量Bを比較、A≧Bか否かを判別する(S23)。ここで、インク吸入した場合の残インク量Bは、インク吸入時の残インク量B=サブタンクのインク残量−インク吸入量(固定値)、で算出される。
【0083】
このとき、A≧Bであれば、そのまま処理を終了する。
【0084】
これに対し、A≧Bでなければ、サブタンク35の大気開放機構207を開いて大気開放を行い、サブタンク35内の圧力を上昇させ、圧力上昇後大気開放機構207を閉じる(S24)。そして、サブタンク35内のインクをインクカートリッジ10へ吸入し、サブタンク35内の圧力を低下させる。
【0085】
このような制御(処理)を行なうことで、サブタンク内に残るインクを可能な限り使い切ることができる。
【0086】
次に、本発明の第2実施形態におけるメインタンクがエンド状態になったときにサブタンクの残量インクを使用したインク使い切り印刷に関する制御を含む印刷制御処理について図15のフロー図を参照して説明する。
本実施形態の印刷制御処理は、主に、図9で説明した前記第1実施形態の印刷制御処理において、ステップS3で「インク消費量」に代えて「インク残量」を判別のパラメータとした点、及びステップS15〜S17の処理を追加した点が異なっている。
【0087】
すなわち、インク使い切り緊急印刷が選択され(S1)、サブタンク35内の圧力が記録ヘッド34からの滴吐出が可能な正常値範囲より小さい(S2)ときには、サブタンク35のインク残量が予め定めた閾値以上か否かを判別する(S3)。この判別は、前述したように、サブタンク35からインクカートリッジ10にインクを逆送するインク吸入を行うことが可能な否かを閾値と比較することで行うものである。
【0088】
このとき、サブタンク35のインク残量が閾値以上であれば、前記第1実施形態と同様に、サブタンク35の大気開放機構207を大気開放状態にして、サブタンク35内に大気を導入してサブタンク35内の圧力を上昇させ、圧力上昇後大気開放機構207を閉じる(S4)。その後、送液ポンプ241を逆転駆動してサブタンク35のインクをインクカートリッジ10に吸入(インクを逆送)し、サブタンク35内の圧力を低下させる(S5)。その後、このステップS5のインクカートリッジ10に吸入したインク量をインク消費量に加算する(S6)。
【0089】
その後、インク吐出を行って印刷動作(画像形成動作)を行い(S10)、画像形成動作で消費した(吐出した)インク量分をインク消費量に加算する(S11)。
【0090】
これに対し、サブタンク35のインク残量が閾値未満であれば、インクカートリッジ10のインク残量が予め定めた閾値以上か否かを判別する(S15)。
【0091】
なお、インクカートリッジ10からサブタンク35へのインク送液(インク吸引)が実行可能か否かの判別は、大気開放後の負圧形成のためにサブタンク35からインクカートリッジ10へと吸入されるインク量は決まっていること、インクカートリッジ10からサブタンク35に吸引できるインク量は、サブタンク35からインクカートリッジ10へのインク吸入が実行された時に吸入されたインク量と同量であることから、インク吸引実行可否を判定する方法としては、インク吸入とインク吸引の実行回数情報、あるいは、インク吸入量の加算値とインク吸引量の減算値のいずれかを用いる方法が挙げられるが、ここでは、インク吸入量の加算値とインク吸引量の減算値を使用している。
【0092】
このとき、インクカートリッジ10のインク残量が予め定めた閾値以上であれば、送液ポンプ241を正転駆動して、インクカートリッジ10からサブタンク35にインクを吸引(送液)し、サブタンク35内の圧力を上昇させる(S16)。そして、このステップS16でインクカートリッジ10から吸引したインク量をインク消費量から減算する(S17)。
【0093】
その後、インク吐出を行って印刷動作(画像形成動作)を行い(S10)、画像形成動作で消費した(吐出した)インク量分をインク消費量に加算する(S11)
【0094】
つまり、本実施形態では、インク使い切り緊急印刷を行なうときには、サブタンク35からインクカートリッジ10にインクを戻して負圧形成動作を行い、更にインクカートリッジ10にサブタンク35から戻したインクを再度サブタンク35に供給して、印刷を行なうようにしている。
【0095】
これにより、サブタンクの残量インクを最大限使用して印刷を継続することができる。
【0096】
また、この実施形態では、インク使い切り緊急印刷実行時のサブタンク内の負圧形成のときに、インク吸入を優先して行っているので、サブタンク内の負圧形成の度に、インクカートリッジへインクを蓄積していくことになる。そのため、この間に、ユーザーによるインクカートリッジの交換が行なわれた場合、インクカートリッジに戻した分のインクは無駄になるが、負圧形成後、負圧の限界まで印刷を行うことができるため、負圧形成のための印刷が中断される頻度が低くなるという利点がある。
【0097】
次に、本発明の第3実施形態におけるメインタンクがエンド状態になったときにサブタンクの残量インクを使用したインク使い切り印刷に関する制御を含む印刷制御処理について図16のフロー図を参照して説明する。
本実施形態の印刷制御処理は、主に、図15で説明した前記第2実施形態の印刷制御処理において、ステップS3〜S6とステップS15〜S17の処理を逆にした点が異なっている。
【0098】
すなわち、インク使い切り緊急印刷が選択され(S1)、サブタンク35内の圧力が記録ヘッド34からの滴吐出が可能な正常値範囲より小さい(S2)ときには、インクカートリッジ10のインク残量が予め定めた閾値以上か否かを判別する(S15)。このとき、インクカートリッジ10のインク残量が予め定めた閾値以上であれば、送液ポンプ241を正転駆動して、インクカートリッジ10からサブタンク35にインクを吸引(送液)し、サブタンク35内の圧力を上昇させる(S16)。そして、このステップS16でインクカートリッジ10から吸引したインク量をインク消費量から減算する(S17)。
【0099】
その後、インク吐出を行って印刷動作(画像形成動作)を行い(S10)、画像形成動作で消費した(吐出した)インク量分をインク消費量に加算する(S11)。
【0100】
これに対し、インクカートリッジ10のインク残量が閾値未満であるときには、サブタンク35のインク残量が予め定めた閾値以上か否かを判別する(S3)。この判別は、前述したように、サブタンク35からインクカートリッジ10にインクを逆送するインク吸入を行うことが可能な否かを閾値と比較することで行うものである。
【0101】
このとき、サブタンク35のインク残量が閾値以上であれば、前記第1実施形態と同様に、サブタンク35の大気開放機構207を大気開放状態にして、サブタンク35内に大気を導入してサブタンク35内の圧力を上昇させ、圧力上昇後大気開放機構207を閉じる(S4)。その後、送液ポンプ241を逆転駆動してサブタンク35のインクをインクカートリッジ10に吸入(インクを逆送)し、サブタンク35内の圧力を低下させる(S5)。その後、このステップS5のインクカートリッジ10に吸入したインク量をインク消費量に加算する(S6)。
【0102】
その後、インク吐出を行って印刷動作(画像形成動作)を行い(S10)、画像形成動作で消費した(吐出した)インク量分をインク消費量に加算する(S11)。
【0103】
つまり、本実施形態では、インク使い切り緊急印刷を行なうときには、前記第2実施形態と異なり、先にインクカートリッジ10にインク残量があれば、そのインクをサブタンク35に送ってインクを補給し、インクカートリッジ10にインク残量がなければ、サブタンク35からインクカートリッジ10にインクを戻して負圧形成動作を行い、印刷を行なうようにしている。
【0104】
これにより、サブタンクの残量インクを最大限使用して印刷を継続することができる。
【0105】
また、この実施形態では、インク使い切り緊急印刷実行時のサブタンク内の負圧形成を行うとき、インク吸引とインク吸入を交互に行なっている。この場合、サブタンク内の負圧形成を行うときには、前回インクカートリッジへ戻したインクをそのままサブタンクに戻して使用することができ、前記第2実施形態に比べて、サブタンク内のインクを減らすことが少なくなり、インクカートリッジが交換されたときにインクが無駄になることが少なくなるという利点がある。ただし、インク吸入後に印刷に使用できるインク量は吸入した分のインク量のみとなるため、負圧形成のために印字が中断される頻度は多くなる。
【0106】
次に、上述した各実施形態におけるサブタンクからインクカートリッジへのインク逆送(インク吸入)動作における送液ポンプ241の駆動制御について説明する。
前述したように、本発明では送液ポンプ241として可逆型ポンプを使用して、インク使い切り緊急印刷を行なうときには、サブタンク35からインクカートリッジ10にインクを戻すことで、サブタンク35に負圧を形成する。
【0107】
このインク使い切り緊急印刷では、インク消費に伴ってサブタンク内の空気領域が徐々に増加していくため、サブタンクからインクカートリッジへのインク吸入を行うときに空気が混入するおそれが高くなる。
【0108】
そこで、緊急印刷実行時には、サブタンク内インク残量を判定するときに、送液ポンプ241の送液速度、例えば送液ポンプ241を駆動する駆動モータの回転速度を変更するか否かの閾値も判定し、モータ回転速度の変更の切り替えを行うようにすることで、空気混入のおそれを低減させることができる。特に、前記第2実施形態のステップ3でこの判定を行なうことが好ましい。
【0109】
以上のサブタンク使い切り緊急印刷動作に関する制御、サブタンクの圧力検出処理、インク消費量測定処理など、判定などの各種の本発明に係る処理は、ROM502に格納されているプログラムによってコンピュータに実行させる。このプログラムは、情報処理装置(ホスト600)側にダウンロードして画像形成装置にインストールすることができる。また、上記処理は、情報処理装置(ホスト600)側のプリンタドライバで行う構成とすることもできる。さらに、本発明に係る画像形成装置と情報処理装置又は画像形成装置と本発明に係る処理を行うプログラムを有する情報処理装置とを組み合わせて画像形成システムとして構成することもできる。
【符号の説明】
【0110】
10 インクカートリッジ
33 キャリッジ
34、34a、34b 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
35 サブタンク
81 維持回復機構
201 タンクケース(液体収容部)
203 可撓性部材(可撓性フィルム)
205 変位部材(満タン検知フィラ)
207 大気開放機構
241 送液ポンプ
301 満タン検知センサ
500 制御部
600 ホスト(情報処理装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部内を大気に開放する開閉可能な大気開放機構とを有するサブタンクと、
前記サブタンクに供給する前記液体を収容するメインタンクと、
前記サブタンクと前記メインタンクとの間に設けた可逆型送液手段と、
前記サブタンク内の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記メインタンクから前記サブタンクへ前記液体を供給したとき、前記圧力検知手段で検知した前記サブタンクの圧力が予め定めた圧力未満であるときには、前記前記大気開放機構を開いて前記サブタンク内の圧力を上昇させた後、前記可逆型送液手段で前記サブタンクから前記メインタンクに前記液体を送液して前記サブタンク内の圧力を低下させる制御を行なう制御手段を有する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記記録ヘッドから吐出された液体の消費量を測定する消費量測定手段と、サブタンク内のインクの最大使用可能インク量を算出する手段と、前記算出結果に基づいて前記制御を行なうか否かを判定する手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記メインタンクがエンド状態のまま前記サブタンク内の残量液体を使用した画像形成動作を行う旨の指示を受けたときに、前記制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記サブタンクから前記メインタンクに送液した前記液体を前記サブタンクに供給する制御を行なうことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記サブタンクから前記メインタンクに送液するとき、前記サブタンクの液体残量に応じて前記送液ポンプの送液速度を変更することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−183729(P2011−183729A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52970(P2010−52970)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】