説明

画像形成装置

【課題】像担持体に対向する対向部材に付着しているトナーを除去できる画像形成装置を提供することである。
【解決手段】中間転写ベルト11は、帯電したトナー画像を担持する。2次転写ローラ14は、中間転写ベルト11に対向するように設けられている。電圧印加部32は、2次転写ローラ14にバイアス電圧を印加する。制御部30は、2次転写ローラ14に付着したトナーを除去する際に、2次転写ローラ14に対してバイアス電圧V1を印加させた後にバイアス電圧V2を印加させるように、電圧印加部32を制御する。バイアス電圧V1は、2次転写ローラ14から空気中に放電が発生する電圧の絶対値よりも大きな絶対値を有している。バイアス電圧V2は、2次転写ローラ14から空気中に放電が発生する電圧の絶対値よりも小さな絶対値を有し、かつ、バイアス電圧V1の逆の極性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に、トナーにより画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置としては、例えば、特許文献1に記載の画像形成装置が知られている。以下に、特許文献1に記載の画像形成装置について図面を参照しながら説明する。図8は、特許文献1に記載の画像形成装置500の構成図である。
【0003】
画像形成装置500は、像担持体502、転写部材504及びバイアス印加手段506を備えている。像担持体502は、トナー像を静電的に担持する。転写部材504は、像担持体502に当接して、転写バイアスを印加する。バイアス印加手段506は、転写位置に転写材が存在しない時に極性の異なるバイアス電流を転写部材504に順次印加する。そして、バイアス印加手段506は、トナー像を構成するトナーと同極性の同極性電流を印加してから、トナーと逆極性でありかつ同極性電流の絶対値以上の電流値を有する逆極性電流を印加する。これにより、転写部材504に付着しているトナーを像担持体502上に逆転写してクリーニングすることができ、記録紙の裏汚れを防止できる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置500では、転写部材504に付着しているトナーを十分に除去できない。より詳細には、バイアス印加手段506は、トナー像を構成するトナーと同極性の同極性電流を印加してから、トナーと逆極性でありかつ同極性電流の絶対値以上の電流値を有する逆極性電流を印加する。よって、同極性電流の大きさが小さい場合には、同極性電流の印加後に転写部材504にトナーが残留してしまう。この状態で、同極性電流よりも大きな絶対値を有する逆極性電流が印加されると、トナーが転写部材504に引き付けられて、大量のトナーが転写部材504に残留してしまう。
【0005】
一方、同極性電流の大きさが大きい場合には、同極性電流によって、放電が発生する。放電により転写部材504近傍の空気が分解されると、トナーと同極性の同極性イオンとトナーと逆極性の逆極性イオンが発生する。そして、同極性電流によって、逆極性イオンが転写部材504に引き付けられ、逆極性イオンによりトナーの極性が反転する。この後、同極性電流よりも大きな絶対値を有する逆極性電流が印加されると、極性が反転したトナーの極性が放電によって再び反転する。その結果、トナーは、逆極性電流により転写部材504に引き付けられて残留してしまう。以上のように、特許文献1に記載の画像形成装置500では、転写部材504に付着しているトナーを十分に除去することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−272235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、像担持体に対向する対向部材に付着しているトナーを除去できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る画像形成装置は、トナー画像を担持する像担持体と、前記像担持体に対向するように設けられている対向部材と、前記対向部材にバイアスを印加する印加手段と、前記対向部材に付着したトナーを除去する際に、該対向部材に対して第1のバイアスを印加させた後に第2のバイアスを印加させるように、前記印加手段を制御する制御手段と、を備えており、前記第1のバイアスは、前記像担持体から空気中に放電が発生するバイアスの絶対値よりも大きな絶対値を有し、前記第2のバイアスは、前記像担持体から空気中に放電が発生するバイアスの絶対値よりも小さな絶対値を有し、かつ、前記第1のバイアスの逆の極性を有していること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、像担持体に対向する対向部材に付着しているトナーを除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示した図である。
【図2】2次転写ローラに印加されるバイアス電圧の波形を示したグラフである。
【図3】2次転写ローラのクリーニングが行われる際に、制御部が行う動作を示したフローチャートである。
【図4】2次転写ローラに付着しているトナーの帯電量とトナーの出現頻度との関係を示したグラフである。
【図5】変形例に係るバイアス電圧の波形を示したグラフである。
【図6】第1の変形例に係る動作時に、制御部が行う動作を示したフローチャートである。
【図7】第2の変形例に係る動作時に、制御部が行う動作を示したフローチャートである。
【図8】特許文献1に記載の画像形成装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(画像形成装置の構成)
以下に、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を示した図である。
【0012】
画像形成装置1は、電子写真方式によるカラープリンタであって、いわゆるタンデム式で4色(Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:ブラック)の画像を合成するように構成したものである。該画像形成装置1は、スキャナにより読み取った画像データに基づいて、用紙(印刷媒体)に画像を形成する機能を有し、図1ないし図3に示すように、印刷部2、給紙部15、タイミングローラ対19、定着装置20、排紙トレイ21、制御部30、電圧印加部32及びセンサ(検知手段)34を備えている。
【0013】
制御部30は、画像形成装置1全体の動作を制御し、CPUにより実現される。給紙部15は、用紙Pを1枚ずつ供給する役割を果たし、用紙トレイ16及び給紙ローラ17を含む。用紙トレイ16には、印刷前の状態の用紙Pが複数枚重ねて載置される。給紙ローラ17は、用紙トレイ16に載置された紙を1枚ずつ取り出す。タイミングローラ対19は、印刷部2においてトナー画像が用紙Pに2次転写されるように、タイミングを調整しながら用紙Pを搬送する。
【0014】
印刷部2は、給紙部15から供給されてくる用紙Pにトナー画像を形成し、作像部22(22Y,22M,22C,22K)、転写部8(8Y,8M,8C,8K)、中間転写ベルト(像担持体)11、駆動ローラ12、従動ローラ13、2次転写ローラ(対向部材・転写部材)14及びクリーニング装置18を含んでいる。また、作像部22(22Y,22M,22C,22K)は、感光体ドラム4(4Y,4M,4C,4K)、帯電器5(5Y,5M,5C,5K)、露光装置6(6Y,6M,6C,6K)、現像装置7(7Y,7M,7C,7K)、クリーナー9(9Y,9M,9C,9K)及びイレーサ10(10Y,10M,10C,10K)を含んでいる。
【0015】
帯電器5は、感光体ドラム4の周面を帯電させる。露光装置6は、制御部30の制御により、レーザを照射する。これにより、感光体ドラム4の周面には静電潜像が形成される。すなわち、帯電器5及び露光装置6は、感光体ドラム4の周面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段としての役割を果たしている。
【0016】
現像装置7(7Y,7M,7C,7K)は、図1に示すように、現像ローラ72(72Y,72M,72C,72K)、供給ローラ74(74Y,74M,74C,74K)、撹拌ローラ76(76Y,76M,76C,76K)及び収容部78(78Y,78M,78C,78K)を備えている。図1では、図面が煩雑になることを防止するために、現像装置7Yの現像ローラ72Y、供給ローラ74Y、撹拌ローラ76Y及び収容部78Yのみ参照符号を付してある。
【0017】
収容部78は、現像装置7の本体を構成しており、トナーを収容していると共に、現像ローラ72、供給ローラ74及び撹拌ローラ76を格納している。撹拌ローラ76は、収容部78内のトナーを撹拌して負に帯電させる。供給ローラ74は、負に帯電しているトナーを現像ローラ72に供給する。現像ローラ72は、感光体ドラム4にトナーを付与する。具体的には、感光体ドラム4と現像ローラ72との間に現像電界を形成するための負の現像バイアス電圧が現像ローラ72に対して印加されている。トナーは、負に帯電しているので、現像電界による影響を受けて、現像ローラ72から感光体ドラム4へと移動する。そして、感光体ドラム4には、静電潜像が形成されているので、静電潜像に基づいてトナーが感光体ドラム4に付着する。これにより、静電潜像に基づいたトナー画像が感光体ドラム4に現像される。
【0018】
中間転写ベルト11は、駆動ローラ12と従動ローラ13との間に張り渡されており、感光体ドラム4に現像されたトナー画像が1次転写される。転写部8は、中間転写ベルト11の内周面に対向するように配置されており、1次転写電圧を印加されることにより、感光体ドラム4に形成されたトナー画像を中間転写ベルト11に1次転写する役割を果たす。クリーナー9は、1次転写後に感光体ドラム4の周面に残存しているトナーを回収する役割を果たす。イレーサ10は、感光体ドラム4の周面の電荷を除去する。駆動ローラ12は、中間転写ベルト駆動部(図1には記載せず)により回転させられることにより、中間転写ベルト11を矢印αの方向に駆動させる。これにより、中間転写ベルト11は、トナー画像を2次転写ローラ14まで搬送する。よって、中間転写ベルト11は、負に帯電しているトナー画像を担持しながら搬送する像担持体として機能している。
【0019】
2次転写ローラ14は、中間転写ベルト11と対向(接触)し、ドラム形状をなしている。そして、2次転写ローラ14は、転写電圧が印加されることにより、中間転写ベルト11との間を通過する用紙Pに対して、中間転写ベルト11が担持しているトナー画像を2次転写する。より詳細には、駆動ローラ12は接地電位に保たれている。また、中間転写ベルト11は、駆動ローラ12に接触しているので、接地電位に近い正の電位に保たれている。そして、電圧印加部32は、2次転写ローラ14の電位が駆動ローラ12及び中間転写ベルト11の電位よりも高くなるように、2次転写ローラ14に対して正の転写電圧を印加している。トナー画像は、負に帯電しているので、駆動ローラ12と2次転写ローラ14との間に発生している電界によって、中間転写ベルト11から用紙Pに対して転写される。
【0020】
センサ34は、2次転写ローラ14の周面に対向するように設けられ、2次転写ローラ14に付着しているトナーの量(トナー濃度)を検知する。
【0021】
クリーニング装置18は、用紙Pへのトナー画像の2次転写後に、中間転写ベルト11に残存しているトナーを除去する。
【0022】
トナー画像が2次転写された用紙Pは、定着装置20に搬送される。定着装置20は、用紙Pに対して加熱処理及び加圧処理を施すことにより、トナー画像を用紙Pに定着させる。排紙トレイ21には、印刷済みの用紙Pが載置される。
【0023】
(2次転写ローラのクリーニング)
画像形成装置1では、中間転写ベルト11に付着しているトナーが2次転写ローラ14に付着することがある。2次転写ローラ14に対するトナーの付着は、用紙Pの裏面が汚れる原因となる。そのため、2次転写ローラ14を定期的にクリーニングする必要がある。以下に、2次転写ローラ14のクリーニングについて図面を参照しながら説明する。図2は、2次転写ローラ14に印加されるバイアス電圧の波形を示したグラフである。縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示している。なお、図2に示すバイアス電圧をパターン1と称す。
【0024】
2次転写ローラ14のクリーニング時(すなわち、2次転写ローラ14に付着したトナーを除去する際)には、制御部30は、2次転写ローラ14に対して、図2に示すバイアス電圧V1を印加させるように、電圧印加部32を制御する。バイアス電圧V1は、中間転写ベルト11の電位よりも2次転写ローラ14の電位の方が低くなる負の電圧である。すなわち、バイアス電圧V1は、トナーの電荷と同じ極性を有している。更に、バイアス電圧V1は、2次転写ローラ14から空気中に放電が発生する電圧の絶対値よりも大きな絶対値を有する電圧である。2次転写ローラ14から空気中に放電が発生する電圧は、400V〜500Vである。そこで、本実施形態では、バイアス電圧V1は、−2kVに設定されている。なお、制御部30は、2次転写ローラ14が一回転する期間にわたって、電圧印加部32にバイアス電圧V1を印加させる。
【0025】
2次転写ローラ14上の大半のトナーは、負に帯電している。そのため、負のバイアス電圧V1が印加されると、中間転写ベルト11から2次転写ローラ14へと電界が発生し、負に帯電しているトナーは、電界により2次転写ローラ14から中間転写ベルト11へと移動する。
【0026】
更に、バイアス電圧V1が印加されると、2次転写ローラ14から空気中へと放電が発生する。放電により、空気が正イオンと負イオンとに分離する。そして、正イオンは、中間転写ベルト11から2次転写ローラ14へと発生している電界により、2次転写ローラ14へと引き付けられる。この正イオンにより、トナーは、正に帯電するようになる。よって、正に帯電しているトナーは、バイアス電圧V1が印加されても、2次転写ローラ14上に残留する。
【0027】
そこで、制御部30は、図2に示すように、2次転写ローラ14に対して、バイアス電圧V1を印加させた後にバイアス電圧V2を印加させるように、電圧印加部32を制御する。バイアス電圧V2は、中間転写ベルト11の電位よりも2次転写ローラ14の電位の方が高くなる正の電圧である。すなわち、バイアス電圧V2は、バイアス電圧V1と異なる極性を有していると共に、トナーの電荷と逆の極性を有している。更に、バイアス電圧V2は、2次転写ローラ14から空気中に放電が発生する電圧の絶対値よりも小さな絶対値を有する電圧である。そこで、本実施形態では、バイアス電圧V2は、+400Vに設定されている。なお、制御部30は、2次転写ローラ14が一回転する期間にわたって、電圧印加部32にバイアス電圧V2を印加させる。
【0028】
バイアス電圧V1の印加後に2次転写ローラ14上に残留しているトナーは、正に帯電している。そのため、正のバイアス電圧V2が印加されると、2次転写ローラ14から中間転写ベルト11へと電界が発生し、正に帯電しているトナーは、電界により2次転写ローラ14から中間転写ベルト11へと移動する。
【0029】
更に、バイアス電圧V2が印加されても、2次転写ローラ14から空気中へと放電が発生しないので、正に帯電しているトナーが、放電により負に帯電することがない。よって、バイアス電圧V2の印加後には、2次転写ローラ14上には、トナーが殆ど残留しない。以上で、2次転写ローラ14のクリーニングについての説明を終了する。
【0030】
(画像形成装置の動作)
次に、画像形成装置1の動作について説明する。図3は、2次転写ローラ14のクリーニングが行われる際に、制御部30が行う動作を示したフローチャートである。
【0031】
本処理は、所定枚数の用紙に印刷が完了した後、ジャムが発生した後、又は、安定化動作を実行した後に行われる。まず、制御部30は、センサ34により2次転写ローラ14のトナー濃度を検知する(ステップS1)。
【0032】
次に、制御部30は、ステップS1にて検知したトナー濃度が所定のトナー濃度よりも大きいか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2では、制御部30は、センサ34の検知結果に基づいて、2次転写ローラ14のクリーニングの要否を判定している。よって、所定のトナー濃度とは、用紙Pの裏面に視認できる程度の汚れが付着するトナー濃度である。トナー濃度が大きい場合には、本処理はステップS3に進む。トナー濃度が大きくない場合には、本処理は終了する。
【0033】
トナー濃度が大きい場合には、制御部30は、2次転写ローラ14のクリーニングを行う。2次転写ローラ14のクリーニングの詳細については、既に説明を行ったので、これ以上の説明を省略する。この後、本処理は終了する。
【0034】
(効果)
以上のように構成された画像形成装置1によれば、2次転写ローラ14に付着しているトナーを除去できる。図4は、2次転写ローラ14に付着しているトナーの帯電量とトナーの出現頻度との関係を示したグラフである。縦軸は出現頻度を示し、横軸は帯電量を示している。なお、図4のグラフは、ホソカワミクロン社のE−spartアナライザを用いて得た。
【0035】
図4に示すように、2次転写ローラ14に付着している大半のトナーは、負に帯電している。ただし、2次転写ローラ14に付着しているトナーには、正に帯電しているトナー、及び、図4の斜線に示すようにわずかにしか帯電していないトナーも存在している。特に、図4の斜線に示すようにわずかにしか帯電していないトナーは、2次転写ローラ14に小さな負のバイアス電圧を印加しても、弱いクーロン力しか受けないために、中間転写ベルト11に殆ど移動しない。
【0036】
そこで、画像形成装置1では、2次転写ローラ14に対して、2次転写ローラ14から空気中に放電が発生する電圧の絶対値よりも大きな絶対値を有している負のバイアス電圧V1を印加している。このように、非常に大きなバイアス電圧V1が2次転写ローラ14に印加されることにより、負に帯電しているトナーに加えて、わずかにしか帯電していないトナーも、2次転写ローラ14から中間転写ベルト11へと移動するようになる。
【0037】
更に、バイアス電圧V1が2次転写ローラ14に印加されると、放電により、負に帯電しているトナーが正に帯電するようになる。これにより、2次転写ローラ14上には、正に帯電しているトナーが残留するようになる。そこで、画像形成装置1では、2次転写ローラ14から空気中に放電が発生する電圧の絶対値よりも小さな絶対値を有している正のバイアス電圧V2を印加している。これにより、2次転写ローラ14上に残留している正に帯電しているトナーが中間転写ベルト11へと移動するようになる。以上のように、バイアス電圧V1の印加により、負に帯電しているトナー及びわずかにしか帯電していないトナーを2次転写ローラ14から除去し、バイアス電圧V2の印加により、バイアス電圧V1により発生した正に帯電しているトナーを2次転写ローラ14から除去している。これにより、画像形成装置1では、2次転写ローラ14に付着しているトナーを除去することが可能である。
【0038】
また、画像形成装置1では、バイアス電圧V1,V2が印加される期間はそれぞれ、2次転写ローラ14が一回転する期間と等しい。これにより、画像形成装置1は、2次転写ローラ14の周面全体から負に帯電しているトナー及びわずかにしか帯電していないトナーが除去された後に、2次転写ローラ14の周面全体から正に帯電しているトナーが除去されるようになる。その結果、2次転写ローラ14の周面全体がクリーニングされるようになる。
【0039】
また、画像形成装置1では、制御部30は、センサ34の検知結果に基づいて、バイアス電圧V1,V2を印加させるように、電圧印加部32を制御している。これにより、画像形成装置1において、不要なクリーニングが行われなくなり、消費電力が低減される。
【0040】
(バイアス電圧の変形例)
以下に、2次転写ローラ14に印加されるバイアス電圧の変形例について図面を参照しながら説明する。図5は、変形例に係るバイアス電圧の波形を示したグラフである。縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示している。なお、図5(a)ないし図5(c)に示すバイアス電圧をそれぞれパターン2ないしパターン4と称す。
【0041】
図5(a)に示すパターン2のバイアス電圧では、−2kVのバイアス電圧が印加された後、+2kVのバイアス電圧が印加され、最後に、−400Vのバイアス電圧が印加されている。この場合、+2kVのバイアス電圧がバイアス電圧V1に相当し、−400kVのバイアス電圧がバイアス電圧V2に相当する。このように、画像形成装置1は、バイアス電圧V1,V2を印加する前に、バイアス電圧を更に印加してもよい。また、バイアス電圧V1とバイアス電圧V2とは異なる極性を有していればよく、いずれか一方が正の電圧であり、いずれか他方が負の電圧であればよい。以上のように、極性を変化させて交互にバイアス電圧を印加する回数を増加させることにより、2次転写ローラ14上のトナーをより確実に除去することが可能となる。
【0042】
図5(b)に示すパターン3のバイアス電圧では、−2kVのバイアス電圧と+2kVのバイアス電圧とが2回ずつ交互に印加された後に、−400Vのバイアス電圧と+400Vのバイアス電圧とが交互に1回ずつ印加されている。この場合、2回目に印加されている+2kVのバイアス電圧がバイアス電圧V1に相当し、1回目に印加されている−400Vのバイアス電圧がバイアス電圧V2に相当する。また、バイアス電圧V1,V2の印加前に印加されている+2kVのバイアス電圧をバイアス電圧V3とし、バイアス電圧V1,V2の印加前に印加されている−2kVのバイアス電圧をバイアス電圧V4とする。このように、制御部30は、バイアス電圧V1を印加させる前に、2次転写ローラ14に対して異なる極性を有するバイアス電圧V3,V4を交互に印加させるように、電圧印加部32を制御してもよい。このとき、制御部30は、2次転写ローラ14が一回転する期間にわたって、電圧印加部32にバイアス電圧V3,V4を印加させる。以上のように、極性を変化させて交互にバイアス電圧を印加する回数を増加させることにより、2次転写ローラ14上のトナーをより確実に除去することが可能となる。
【0043】
図5(c)に示すパターン4のバイアス電圧では、−2kVのバイアス電圧と+2kVのバイアス電圧とが1回ずつ交互に印加された後に、−1.5kVのバイアス電圧と+1.5kVのバイアス電圧とが1回ずつ交互に印加され、−400Vのバイアス電圧と+400Vのバイアス電圧とが交互に1回ずつ印加されている。この場合、+1.5kVのバイアス電圧がバイアス電圧V1に相当し、−400Vのバイアス電圧がバイアス電圧V2に相当する。また、バイアス電圧V1,V2の印加前に印加されている+2kVのバイアス電圧をバイアス電圧V3とし、バイアス電圧V1,V2の印加前に印加されている−2kVのバイアス電圧及び−1.5kVのバイアス電圧をバイアス電圧V4とする。このように、バイアス電圧は、時間の経過に伴ってその絶対値が小さくなるように設定されてもよい。
【0044】
ここで、パターン1ないしパターン4のバイアス電圧が印加されたときにおける2次転写ローラ14のクリーニングの効果について説明する。本願発明者は、図2及び図5に示すパターン1ないしパターン4のバイアス電圧を用いて、2次転写ローラ14のクリーニングを行って、クリーニング効果を評価した。表1は、パターン1ないしパターン4のバイアス電圧を用いて2次転写ローラ14のクリーニングを行った際のクリーニング効果を示した表である。
【0045】
【表1】

【0046】
表1において、×は、視認できる程度のトナーが2次転写ローラ14に付着していることを示し、△は、トナーが2次転写ローラ14にわずかに付着しているが、使用上問題ない程度であることを示し、○は、トナーが2次転写ローラ14に殆ど付着していないことを示し、◎は、トナーが2次転写ローラ14に全く付着していないことを示している。
【0047】
表1に示すように、パターン3のバイアス電圧及びパターン4のバイアス電圧の方が、パターン1のバイアス電圧及びパターン2のバイアス電圧よりも良好なクリーニング効果を得ることができた。以上の結果より、極性を変化させて交互にバイアス電圧を印加する回数を増加させることが望ましいことが分かる。
【0048】
(バイアス電圧V1について)
前記実施形態において、バイアス電圧V1は、2次転写ローラ14から空気中に放電が発生する電圧の絶対値よりも大きな絶対値を有する電圧であるとした。そこで、本願発明者は、バイアス電圧V1として好ましい範囲を求めるために実験を行った。
【0049】
より詳細には、パターン1ないしパターン4のバイアス電圧を用いて、クリーニングを行って、クリーニング効果を評価した。この際、バイアス電圧V1の絶対値を1.0kV、1.5kV、2.0kVに変化させた。表2は、実験結果を示した表である。
【0050】
【表2】

【0051】
表2に示すように、バイアス電圧V1の絶対値が1.0kVである場合には、好ましいクリーニング効果を得ることができなかった。一方、バイアス電圧V1の絶対値が1.5kV、2.0kVである場合には、好ましいクリーニング効果を得ることができた。よって、バイアス電圧V1の絶対値は、1.5kV以上2.0kV以下であることが好ましい。
【0052】
(画像形成装置の動作の変形例)
次に、画像形成装置1の動作の第1の変形例について説明する。図6は、第1の変形例に係る動作時に、制御部30が行う動作を示したフローチャートである。
【0053】
図6に示すように、制御部30は、ステップS3を実行した後に、ステップS1に戻ってもよい。これにより、2次転写ローラ14のトナーが除去されるまでクリーニングが繰り返されるようになる。
【0054】
次に、画像形成装置1の動作の第2の変形例について説明する。図7は、第2の変形例に係る動作時に、制御部30が行う動作を示したフローチャートである。
【0055】
図7に示すように、制御部30は、ステップS2を実行した後に、センサ34が検知したトナー濃度に基づいて、表3に示すテーブルを用いて、バイアス電圧V1を決定する(ステップS4)。表3は、トナー濃度とバイアス電圧V1との関係を示したテーブルであり、図示しない記憶部に記憶されている。
【0056】
【表3】

【0057】
表3に示すように、トナー濃度が大きくなれば、バイアス電圧V1の絶対値が大きくなっている。これにより、2次転写ローラ14に付着しているトナーの量が多くなれば、大きな絶対値を有するバイアス電圧V1により、クリーニングが行われるようになる。これにより、2次転写ローラ14に付着しているトナーの量が少ない場合に、不必要に絶対値の大きなバイアス電圧V1が用いられなくなる。その結果、画像形成装置1において、消費電力が低減される。
【0058】
なお、画像形成装置1において、バイアス電圧が印加されるのは、2次転写ローラ14に限らない。バイアス電圧は、中間転写ベルト11に対向(接触)し、トナーが付着する部材であればよい。よって、中間転写ベルト11のクリーニング装置18であってもよい。
【0059】
更に、像担持体は、中間転写ベルト11に限らない。画像形成装置1が感光体ドラム4から用紙Pに対して直接にトナー画像を転写する場合には、像担持体は感光体ドラム4である。像担持体が感光体ドラム4である場合には、バイアス電圧は、例えば、感光体ドラム4を帯電させる帯電器5であってもよい。
【0060】
なお、制御部30は、バイアス電圧V1,V2の代わりに、バイアス電流I1,I2を電圧印加部に印加させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、画像形成装置に有用であり、特に、像担持体に対向する対向部材に付着しているトナーを除去できる点において優れている。
【符号の説明】
【0062】
1 画像形成装置
2 印刷部
4Y,4M,4C,4K 感光体ドラム
5Y,5M,5C,5K 帯電器
11 中間転写ベルト
14 2次転写ローラ
18 クリーニング装置
30 制御部
32 電圧印加部
34 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー画像を担持する像担持体と、
前記像担持体に対向するように設けられている対向部材と、
前記対向部材にバイアスを印加する印加手段と、
前記対向部材に付着したトナーを除去する際に、該対向部材に対して第1のバイアスを印加させた後に第2のバイアスを印加させるように、前記印加手段を制御する制御手段と、
を備えており、
前記第1のバイアスは、前記像担持体から空気中に放電が発生するバイアスの絶対値よりも大きな絶対値を有し、
前記第2のバイアスは、前記像担持体から空気中に放電が発生するバイアスの絶対値よりも小さな絶対値を有し、かつ、前記第1のバイアスの逆の極性を有していること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記対向部材は、ドラム形状をなしており、
前記制御手段は、前記第1のバイアス及び前記第2のバイアスのそれぞれを、前記対向部材が一回転する期間にわたって印加させるように、前記印加手段を制御すること、
を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1のバイアスを印加させる前に、前記対向部材に対して異なる極性を有する第3のバイアスと第4のバイアスとを交互に印加させるように、前記印加手段を制御すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第3のバイアス及び前記第4のバイアスを、前記対向部材が一回転する期間にわたって印加させるように、前記印加手段を制御すること、
を特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成装置は、
前記対向部材に付着しているトナーの量を検知する検知手段を、
更に備え、
前記制御手段は、前記検知手段の検知結果に基づいて、前記第1のバイアス及び前記第2のバイアスを印加させるように、前記印加手段を制御すること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記対向部材は、前記像担持体が担持しているトナー画像を印刷媒体に転写する転写部材であること、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記対向部材は、前記像担持体を帯電させる帯電部材であること、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記対向部材は、前記像担持体をクリーニングするクリーニング部材であること、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−197420(P2011−197420A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64308(P2010−64308)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】