説明

画像形成装置

【課題】吸湿吸着を起こし易いシートを画像形成に使用したい場合に、防湿部材が未載置のままとなってしまう等の不都合を防止することが可能な構成を備える画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、支持板103に積載された収納シート束S1の最上位シートS2を接触状態で覆う被覆位置にセットすることが可能な防湿シート6と、防湿シート6が被覆位置にあるか否かを検知する電極対7とを備えている。さらに、画像形成装置10は、電極対7の検知に基づき被覆位置での防湿シート6の有無を報知する報知部(入力部,表示部)とを備えている。これにより、防湿シート6が被覆位置にない場合にその旨を報知部が報知するので、吸着容易シート種を画像形成に使用したい際に、防湿シート6が未載置のままとなるような不都合を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを送り出すシート給送部を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、プリンタ等の画像形成装置では、チラシやポスターに用いられるアート紙やコート紙といった、平滑性が高いシートに複写またはプリントしたいという要望が高まっている。しかし、これら平滑性が高いシートは、上質紙や普通紙と違い、吸湿により重なり合うシート同士が吸着し合ってしまう。従って、高湿環境下での画像形成装置の使用では、給紙カセット内のシート束が周囲の空気中水分によって吸湿して吸着を起こすため、分離パッド方式やリタード分離方式などの摩擦分離方式では、確実にシートを1枚ずつ分離することが難しいという問題がある。
【0003】
そこで、給紙カセット内の収納シート束上面にシート状の防湿部材を設置して、シートの吸湿を少なくして吸着を防止するように構成したものがある。例えば、横幅がシートの横幅とほぼ等しく横幅規制板の内側面に当接して横方向位置が規制された防湿シートを、給紙カセット内やトレイ上に積載されたシートの最上面に密接状態に配置するように構成した防湿装置を備えるものがある(特許文献1参照)。
【0004】
また、一度吸湿して吸着してしまったシート束を1枚ずつ分離給送可能に構成したシート給送装置が提案されている。このシート給送装置では、合成樹脂板である2枚のOHTシートと、これらOHTシートの間に設けられた発熱体としてのSUS板とからなるシート状のヒータとから構成される除湿部が、給紙カセット内のシート束の最上面に載置される(特許文献2参照)。このヒータによるシートの加熱により吸湿してしまったシートの除湿を行ってシートを分離可能な状態にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−8637号公報
【特許文献2】特開2004−161456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし上記のようなシート状の防湿部材での防湿効果やヒートを備えたシート状の吸湿部が夫々の効果を最大限に得るためには、収納シート束周囲にあるシート位置規制板や給送ローラ等を避けながら、シート表面のできるだけ多くの面積を覆わなければならない。そのため、シートサイズごとに異なるサイズの防湿部材を設置することが必要となる。しかしながら、防湿部材の交換設置作業や、給紙カセット内へのシート補給作業の際に、ユーザが誤って防湿部材上にシート束を載せてセットしたり、防湿部材の設置を忘れたりする問題が発生し得る。その結果、防湿部材による防湿効果が果たせずに無駄なシートの給送動作が行われることになる。
【0007】
そこで本発明は、吸湿吸着を起こし易いシートを画像形成に使用する場合に、防湿部材が未載置のままとなってしまう等の不都合を防止することを可能に構成した画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シートを積載するシート積載部から最上位のシートを送り出すシート給送部を備えた画像形成装置において、前記シート積載部に積載されたシートの最上位シートを接触状態で覆う被覆位置にセットされる防湿部材と、前記防湿部材が前記被覆位置にあるか否かを検知する防湿部材検知部と、前記防湿部材検知部の検知に基づき前記被覆位置での前記防湿部材の有無を報知する報知部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、防湿部材が被覆位置にない場合にその旨を報知部が報知するので、吸湿吸着を起こし易いアート紙やコート紙等のシートを画像形成に使用したい際に、防湿部材が未載置のままとなる等の不都合を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るシート給送装置を備えた画像形成装置を示す概略斜視図。
【図2】本発明に係るシート給送装置を備えた画像形成装置を示す概略断面図。
【図3】本発明に係る第1の実施形態におけるシート給送装置を示す概略断面図。
【図4】第1の実施形態における給紙カセットの内部を示す概略斜視図。
【図5】第1の実施形態における防湿シートに関するフローチャート図。
【図6】本発明に係る第2の実施形態における防湿シートに関するフローチャート図。
【図7】本発明に係る第3の実施形態における給紙カセットの内部を示す概略斜視図。
【図8】第3の実施形態における給紙カセット内部での防湿シート検知を示す概略図。
【図9】本発明に係る第4の実施形態における防湿シートを示す概略斜視図。
【図10】第4の実施形態における防湿シートを示す平面展開図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明に係る実施の形態について詳細に説明する。ただし、本実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置等は、発明を適用する装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0012】
<第1の実施形態>
まず、図1を用いて画像形成装置の概略構成について説明する。図1に示すように、画像形成装置10は、シートを支持して画像形成部2にシートを給送するためのシート給送装置1と、給送されたシートに画像を形成する画像形成部2と、画像形成部2に接続されて原稿の記載情報を読み取る画像読取部3とを備えている。さらに、画像形成装置10は、画像形成部2から排出される画像形成されたシートを積載保持するための排紙積載部4と、ユーザと各種情報をやり取りするためのユーザ通信部5とを備えている。ユーザ通信部5には、入力部51と表示部52が配設されている。
【0013】
図2に示すように、画像形成部2は、シート給送装置1から給送されるシートSを、搬送ガイド201によって画像形成プロセスユニット202に搬送する。画像形成プロセスユニット202は、電子写真方式によって画像(トナー像)を形成するものである。具体的には、画像形成部2は、画像形成プロセスユニット202内に設けられた像担持体である感光体ドラム203を帯電させ、レーザスキャナ204が光照射して画像を形成し、トナーを用いて前記画像を現像し、このトナー像をシートに転写する。感光体ドラム203からトナー像が転写されたシートは、定着器205に搬送されて熱及び圧力を印加されることで画像を定着される。
【0014】
画像定着されたシートは、搬送路切替え部材206の切替えにより、フェイスアップ搬送路207と、シートの上下を反転するスイッチバック搬送路208のいずれかに送られる。スイッチバック搬送路208に送られたシートは、スイッチバック搬送ローラ209によってシートSの後端が反転切替え部材210を抜けるまで搬送される。
【0015】
その後、シートSはスイッチバック搬送ローラ209の反転により、これまでの後端側を先端側として上下反転した状態で搬送される。このとき、反転切替え部材210が切り替わることによって、反転されたシートSはフェイスダウン搬送路211に送られる。フェイスアップ搬送路207とフェイスダウン搬送路211とは、排出ローラ212の手前で合流している。フェイスアップ搬送路207に案内されたシートと、スイッチバック搬送路208からフェイスダウン搬送路211に案内されたシートとは、どちらも排出ローラ212によって画像形成部2から排紙積載部4上に排出されて積載される。
【0016】
画像読取部3は、スキャナ部301と、自動原稿給送部(以下、ADFという)302とから構成されている。ADF302は、装置後方の不図示のヒンジを支点として開閉可能に構成され、原稿台ガラス303上に原稿をセットする場合に開閉される。スキャナ部301は、移動可能な突起キャリッジ304を備え、原稿の記載情報を読み取るように構成されている。
【0017】
スキャナ部301では、原稿台ガラス303上にセットされた原稿の記載情報を突起キャリッジ304が水平方向に走査しながら読み取り、CCD305で光電変換する。ADF302は、原稿積載トレイ306上に積載される複数枚の原稿を原稿給送ローラ307によって1枚ずつ分離給送し、スキャナ部301内で停止している突起キャリッジ304の原稿読取位置308を通過させる。この通過の際に、突起キャリッジ304は搬送中の原稿の記載情報を読み取る。
【0018】
また、画像形成装置10には、シート給送装置1、画像形成部2及び画像読取部3等を統括的に制御する制御部9が設けられている。この制御部9の配設位置は、画像形成装置10におけるいずれの位置でも良い。
【0019】
図1に示すように、ユーザ通信部5は、ユーザが各種入力を行う入力部51と、ユーザの入力結果やユーザに所定の操作を促すメッセージを表示するための表示部52とを有している。ユーザは、入力部51からプリント枚数などの数字を設定したり、片面/両面印刷の設定、シート種(シートの種類)等を予め用意された選択肢の中から選択入力したりすることができる。
【0020】
シート種の選択肢としては、普通紙/色紙/アート紙/コート紙等/厚紙/ラベル紙などが用意されている。選択されたシート種に応じて、トナー濃度や定着器205の温調、シート搬送速度などが適宜最適な条件に変更される。なお、アート紙やコート紙などのように、空気中水分によって吸湿吸着を起こし易く給送不良を起こす可能性のあるシート種を、以下、総称して吸着容易シート種と呼ぶこととする。
【0021】
次に、図3を用いて、シート給送装置1の構成について説明する。図3は、本実施形態における、画像形成装置10に備えたシート給送装置1を示す概略断面図である。
【0022】
図3に示すように、シート給送装置1は、給送装置本体に対して着脱可能に装着される給紙カセット101を備えている。給紙カセット101の内部には、収納シート束S1を支持する支持板103と、サイド規制板104(手前側のものは図示省略)とが配設されている。支持板103は、軸102を支点として回動して昇降動作するもので、シートを積載するシート積載部を構成している。シート給送装置1は、収納シート束S1の最上位のシートS2から1枚ずつ分離給送するための、ピックアップローラ107及びリタードローラ対108a,108bを備え、支持板103から最上位のシートS2を送り出すシート給送部を構成している。
【0023】
サイド規制板104は、収納シート束S1の側面に当接して収納シート束S1の給送方向(図3の右方向)と直交する方向(図3の手前−奥方向)の位置を規制する。さらに、給紙カセット101の内部には、給送方向と逆方向への収納シート束S1の位置を規制する後端規制板105と、不図示の駆動源により支持板103を回動昇降させるためのリフタ機構106とが配設されている。
【0024】
リフタ機構106により支持板103が回動し、収納シート束S1の最上位のシートS2が所定位置まで上昇すると、ピックアップローラ107がシートS2の上面に当接する。そして、ピックアップローラ107、リタードローラ対108a,108bによって最上位のシートS2が分離給送される。なお、給紙カセット101をシート給送装置1から引き出すと、リフタ機構106は駆動源との連結が外れ、支持板103及びリフタ機構106はその自重により下降する。それに伴い、収納シート束S1も下降し、給送可能な位置から離間する。
【0025】
シートS2が所定位置まで上昇したとき、シートS2は、シートセンサ109に当接して検知される。支持板103は、所定位置まで昇降してもシートS2が載置されていない場合にはシートセンサ109と当接しないように開口等が形成されている。そのため、シートが載置されていない支持板103が上昇したときには、シートセンサ109はオンすることがないため「シート無し」を検知する。なお、シートセンサ109には、フォトセンサ等の非接触式センサや、機械的構造の接触式センサを用いることができる。
【0026】
防湿シート6は、最上位のシートS2上面に接して設置(載置)され、支持板103が回動上昇したときに電極対7に接して、電極対7により検知される。防湿シート6は、支持板103に積載された収納シート束S1の最上位シートS2に接触(接触状態)して覆う被覆位置(図3と図4に示す位置)にセットすることが可能な防湿部材を構成している。また、電極対7は、防湿部材である防湿シート6が上記被覆位置にあるか否かを検知する防湿部材検知部を構成している。
【0027】
続いて、防湿部材である防湿シート6及び防湿シート6を検知する防湿部材検知部である電極対7について、図3及び図4を参照して詳細に説明する。図4は、本第1の実施形態における給紙カセット101内部を示す概略斜視図である。
【0028】
防湿シート6は、例えばPET(Polyethylene terephthalate)フィルムなどの、水分や水蒸気を通さない薄い平板材質から構成されている。また、防湿シート6は、収納シート束S1の波うちや、前述の支持板103の上昇に伴う収納シート束S1の上面の変形に追従するように、可撓性を有している。また、この平板材質は、シートとの摩擦により静電気が発生することを防ぐため、表面に金属膜が成膜されるなどにより導電性を有するものである。このように、防湿シート(防湿部材)6は導電性部材からなり、電極対(防湿部材検知部)7は、防湿シート6に接触可能な一対の電極7a,7bを有し、これら電極間の導通の有無に基づいて防湿シート6の有無を検知する。
【0029】
入力部51と表示部52は、電極対(防湿部材検知部)7の検知に基づいて上記被覆位置での防湿シート(防湿部材)6の有無を報知する報知部を構成している。つまり、報知部は、最上位シートS2のシート種を入力するための入力部51と、所定の操作を促す表示を行うための表示部52とからなり、電極対7による検知結果と、入力部51から入力されたシート種との組み合わせに応じた表示を表示部52に行う。報知部は、入力部51から入力されたシート種が、空気中の水分により吸着を起こし易い吸着容易シート種である場合に、電極対7により防湿シート6が被覆位置に無いことが検知された際には、防湿シート6のセットを促すための表示を表示部52に行う。報知部によるこれらの処理は、以下に説明する第3及び第4の実施形態においても、同様に実施することができる。
【0030】
防湿シート6を収納シート束S1の表面(即ち、最上位シートS2の表面)に載せることで、収納シート束S1がシート表面から吸湿することを防ぐことができる。この際、シート端部からは吸湿されるが、その面積はシート表面積に比べて極めて小さなものであるため、シート表面からの吸湿を防ぐだけで、シート同士の吸着とそれに伴う給送不良は十分に低減する。
【0031】
防湿シート6には、ピックアップローラ107、シートセンサ109など給送搬送に関わる部品と接することのないように、切欠き部61が形成されている。また、防湿シート6における切欠き部61と反対側の部分には、切欠き部62が形成されている。この切欠き部62は、収納シート束S1の表面上への載置時に、後端規制板105に進入されて後端規制板105と係合する。この係合により、最上位のシートS2が給送された場合であっても、防湿シート6が連れられて給送されることを防止することができる。
【0032】
防湿シート6における切欠き部62の近傍には、突起部63が取り付けられている。突起部63は、ユーザ等の取扱い者の指を掛けることができる把手形状にされて、防湿シート6の把手を兼用するように構成されている。この突起部63があることにより、防湿シート6上(防湿部材上)に、平坦にシートを載置することはできない。これにより、ユーザが給紙カセット101内にシートを収納しようとする際に、防湿シート6の上に誤ってシートを載置することを防ぐことができる。このように、防湿シート(防湿部材)6は、上記被覆位置にセットされた状態で上方に突出する突起部63を備え、防湿シート6上にシートが載置されたことを突起部63によって認識可能に構成されている。
【0033】
電極対7は、制御部9に電気的に接続される2つの電極7a,7bを備えている。防湿シート6が、支持板103の回動動作に伴って所定位置まで上昇すると、防湿シート6の表面に電極7a,7bが当接することになる。その際、防湿シート6は導電性を有しているため、電極7aと電極7bとが導通することになる。逆に防湿シート6の表面に電極7a,7bが当接しない場合、電極7a,7b間は絶縁されたままの状態である。これら電極7a,7b間の導通の有無により、制御部9が防湿シート6の有無を判断する。本実施形態では、電極対7を前述の通りに用いたことにより、防湿シート6の有無検知に特別なセンサを設ける必要が無く、構成が簡略化されている。なお、以下で「防湿シートの有無を検知する」とは、電極対7の導通の有無をみることをいう。
【0034】
制御部9は、給紙カセット101に収納シート束S1をセットした際に、ユーザが入力部51から選択入力した選択シート種と、防湿シート6の有無の検知結果とに応じて、表示部52に所定の表示を行う指令を出力する。
【0035】
以下、それぞれの場合に応じた処理フローについて、図5のフローチャート図を参照して詳細に説明する。なお、以下で「表示する」とは、表示部52に所定のメッセージを表示することをいう。
【0036】
まず、ステップS1で、ユーザが給紙カセット101をシート給送装置1から離間させて再度装着したこと(給紙カセット101の開閉)を検知すると、制御部9は、支持板103を回動上昇させる。そして、ステップS2で、制御部9は、シートセンサ109がシートの有無を検知したか否かを判断する(判断(a))。その結果、ステップS2においてシートが無いと検知した場合には、ステップS6に進んで、「シートなし」の旨を表示部52に表示して(処理A)、処理を終了する。一方、ステップS2においてシートがあると検知した場合には、ステップS3に進んで、セットしたシート束のシート種の選択入力を要求する表示を行う(処理B)。
【0037】
続いて、ステップS4において、ユーザが入力部51から選択入力したシート種が吸着容易シート種か否かを判断し(判断(b))する。その結果、シート種が吸着容易シート種であると判断した場合(Yes)にはステップS5に進み、吸着容易シート種以外のシート種であると判断した場合(No)にはそのまま処理を終了する。
【0038】
そして、ステップS5で防湿シート6が被覆位置に載置されているか否かを判断する(判断(c))。その結果、防湿シート6が載置されていないと判断した場合には、その載置を促す(要求する)メッセージを表示部52に表示する(処理C)。
【0039】
このように、報知部は、入力部51から入力されたシート種が、吸着容易シート種である場合に、電極対7によって防湿シート6材が被覆位置に無いことが検知された際には、防湿シート6のセットを促すための表示を表示部52に行う。それに対し、ステップS5において防湿シート6があると判断された時点で、処理は終了に至る。
【0040】
以上のように、上記一連の処理を、ユーザが給紙カセット101を開閉したときに設けることで、吸着容易シート種を使用しようとする場合に、防湿シート6のセット忘れを防ぐことができる。つまり、防湿シート6が被覆位置にない場合にその旨が、報知部の表示部52に報知されるので、吸湿吸着を起こし易いアート紙やコート紙等のシートを画像形成に使用したい場合に、防湿シート6が未設置(未載置)のままとなるような不都合を防止できる。たとえば、防湿シート6が未装着の状態でシートを送り出そうとしても分離が十分にできないためシートが重送した状態で送り出されたり、シートが分離部で詰まってジャムを発生したりするが、これらの問題を起こすことを防止することができる。
【0041】
なお、上述では、ユーザに対して報知する報知部として、表示部52に所定のメッセージを表示する構成を挙げたが、これに限らず、発光体を点灯させるものやアラーム音を発するもの、またそれらのいくつかを適宜組み合わせたものであっても良い。
【0042】
<第2の実施形態>
次に、図6を用いて、本発明に係る第2の実施形態について説明する。図6は、本第2の実施形態における画像形成装置10においてプリント実行要求がなされた時の、防湿シート6に関わる処理フローを示すフローチャート図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態に比して処理が異なるだけで、図1〜図4における構成部分はほぼ同一なので、同図を参照して説明すると共に、第1の実施形態と同様の処理及び構成については説明を省略する。
【0043】
まず、ステップS11において、ユーザが入力部51でシート種を選択入力した上でプリント実行を要求すると、ステップS12で、制御部9は、シートセンサ109がシートの有無を検知したか否かを判断する(判断(a))。その結果、ステップS12で、シートが無いと判断すれば(No)、ステップS16で、シート無しに応じてシート補充を要求する旨のメッセージを表示部52に表示する(処理D)。一方、シートが有ると判断した場合は(Yes)、ステップS13で、ユーザが選択したシート種が吸着容易シート種であるか否かを判断する(判断(b))。
【0044】
ステップS13において、シート種は吸着容易シート種でないと判断した場合には、ステップS17に進み、ユーザが選択したシート種モードでそのまま給送及び画像形成を開始実行(処理E)した後、処理を終了する。
【0045】
また、ステップS13で、入力部51から入力されたシート種が吸着容易シート種以外のシート種であると判断した場合、さらに、電極対7によって防湿シート6が被覆位置にあることが検知されたか否かを判断するように構成することができる。その場合、報知部が、入力部51から入力されたシート種に誤りがないか否かの確認を促すためのメッセージを表示部52に行う。このようにすると、ユーザがシート種の設定を吸着容易シート種以外のシート種として間違って設定した場合に、シート種に誤りがないかどうかをユーザに確認させることができる。
【0046】
一方、ステップS13で、シート種は吸着容易シート種であると判断した場合は(Yes)、ステップS14に進み、防湿シート6が被覆位置に載置されているか否かを判断する(判断(c))。その結果、防湿シート6が被覆位置に載置されていると判断した場合は(Yes)、ステップS15で、吸着容易シート種モードで給送及び画像形成を開始実行する(処理F)。
【0047】
ここで、防湿シート6が無いと判断した場合、1つ目には、吸着容易シート種の上に防湿シート6がセットし忘れられたままである可能性と、2つ目には、収納シート束S1が吸着容易シート種ではない可能性とが考えられる。まず1つ目の場合、もし給紙カセット101内に吸着容易シート種がセットされてからプリント実行要求までに、シート同士が吸湿吸着を起こすのに十分な時間が経過していたとしたら、既にそのままでは給送不良が発生する可能性が高い。また2つ目の場合においても、収納シート束S1を入れ替えなければならない。
【0048】
そこで、ステップS14で防湿シート無しと判断して進んだステップS18において、処理Gとして、プリント実行不可能である旨を表示部52に表示する。つまり、吸着を起こして給送不可能状態になっているか、収納シート束S1のシート種が誤っている可能性を伝えるメッセージを表示部52に表示する。これにより、収納シート束S1の状態確認を要求し、もし吸着を起こしている場合には、収納シート束S1を新しいものと交換するか、手で1枚ずつ吸着がない状態に捌いてもらうことを示唆する。そして、再度シートのセットを行う際には、防湿シート6を忘れずに載置してもらうことを合わせて表示部52に表示する。
【0049】
このように本実施形態では、報知部が、入力部51から入力されたシート種が吸着容易シート種である場合に、電極対7によって防湿シート6が被覆位置に無いことが検知された際には、シートの給送動作を禁止するための表示を表示部52に行う。このような処理フローを設けることで、吸着容易シート種のシート上への防湿シート6のセットし忘れや、吸着容易シート種のシート自体のセットし忘れが生じていたとしても、プリント実行要求の際にそれら誤りをユーザに気づかせることができる。これにより、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0050】
なお、本第2の実施形態では、報知部を、画像形成装置10のユーザ通信部5の入力部51及び表示部52で構成したが、画像形成装置10に接続したパーソナルコンピュータ(以下、PC)等の情報機器の入力部及び表示部で構成することもできる。特に、1つの画像形成装置に複数のユーザがネットワークを介してPCからプリント実行要求を行うような環境においては、シート補充作業者とプリント実行要求者が異なることが多々あり、前述のような誤りが生じる可能性が高い。それに対して、本第2の実施形態は有効である。
【0051】
<第3の実施形態>
次に、図7及び図8を用いて、本発明に係る第3の実施形態について説明する。図7は、本実施形態における給紙カセット101内部の概略斜視図である。図8は、本実施形態における給紙カセット101内部での防湿シート6の検知状態を示す概略図である。なお、前述の第1及び第2の実施形態と同様の構成については同符号を用い、説明を省略する。
【0052】
本第3の実施形態では、第1の実施形態における電極対7が配置されていた位置の近傍に、電極対7に代わる防湿部材検知部として突起検知センサ8が配置されている。突起検知センサ(防湿部材検知部)8は、赤外光等を発光する発光素子とこの発光を受光する受光素子との間で赤外光が突起部63’によって遮光されるか否かを検知するように構成されている。つまり、突起部63’は、平板状に形成された状態で切欠き部61の近傍に取り付けられており、突起検知センサ8は、この平板状の突起部’63の進退によって電気的に切替わることで防湿シート6の有無を検知する。また、突起部63’は、防湿シート6の把手を兼用するように、手で摘みやすい形状に構成されている。
【0053】
図8中の破線で示すように、防湿シート6が支持板103の上昇に伴って所定位置まで上昇して、突起部63’が突起検知センサ8の赤外光点8aに達して遮光したとき、制御部9は、その信号を受信することで防湿シート6があると判断する。突起部63’は、第1及び第2の実施形態の突起部63と同様に、防湿シート6上に平坦にシートを載置できないようにすることで、給紙カセット101内にシートを収納しようとする際に防湿シート上に誤ってシートを載置することを防ぐように機能する。なお、突起検知センサ8は、突起部63’により押圧されることで防湿シート6の有無を検知するスイッチ式のセンサによって構成することもできる。
【0054】
本実施形態では、第1、第2の実施形態とほぼ同様の効果が得られると共に、突起部63’を機械的センサで検知することで、防湿シート6の導電性性能に影響されることなく、より正確に防湿シート6の有無を検知できるという効果も得ることができる。
【0055】
<第4の実施形態>
次に、図9及び図10を用いて、本発明に係る第4の実施形態について説明する。図9は、本実施形態における防湿シート6の概略斜視図、図10は、本実施形態における防湿シート6の平面展開図である。なお、前述の実施形態と同様の構成については同符号を用い、説明を省略する。
【0056】
図9及び図10に示すように、防湿シート(防湿部材)6がシート状に形成されており、本実施形態における突起部63”は、平らなシート状の防湿シート6の一部を折り曲げることによって形成されている。つまり、突起部63”は、2本の谷折り線64aと1本の山折り線64bとをそれぞれ折り曲げ、接着面64cを罫書き線64dに合わせて両面テープなどで固定することにより、図9のように形成される。その折り曲げた後には、切欠き部61が形成される。本実施形態における突起部63”も、防湿シート6の把手を兼用するように構成されている。
【0057】
上記の手法による突起部63”形成前の防湿シート6は、複数枚を平らに重ねることができるので、画像形成装置10のアフターサービスとして防湿シート6のみを供給する場合などにおいて、輸送性に優れたものとすることができる。なお、本実施形態における突起部63”を有する防湿シート6の被覆位置における有無は、前述した第1〜第3の実施形態の場合と同様の手法によって検知することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…シート給送部(シート給送装置)、6…防湿部材(防湿シート)、7,8…防湿部材検知部(電極対,突起検知センサ)、7a,7b…一対の電極、10…画像形成装置、51,52…報知部(入力部,表示部)、63,63’,63”…突起部、103…シート積載部(支持板)、S,S1,S2…シート(シート,収納シート束,最上位のシート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを積載するシート積載部から最上位のシートを送り出すシート給送部を備えた画像形成装置において、
前記シート積載部に積載されたシートの最上位シートを接触状態で覆う被覆位置にセットされる防湿部材と、
前記防湿部材が前記被覆位置にあるか否かを検知する防湿部材検知部と、
前記防湿部材検知部の検知に基づき前記被覆位置での前記防湿部材の有無を報知する報知部と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記防湿部材は、前記被覆位置にセットされた状態で上方に突出する突起部を備え、
前記防湿部材上にシートが載置されたことを前記突起部によって認識可能に構成した、ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記防湿部材は、導電性部材からなり、
前記防湿部材検知部は、前記防湿部材に接触可能な一対の電極を有し、前記一対の電極間の導通の有無に基づいて前記防湿部材の有無を検知する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記突起部が平板状に形成され、
前記防湿部材検知部は、前記平板状の突起部の進退によって電気的に切替わることで前記防湿部材の有無を検知する、ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記防湿部材がシート状に形成され、
前記突起部は、前記シート状の防湿部材の一部を折り曲げることにより形成される、ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記突起部が前記防湿部材の把手を兼用するように構成される、ことを特徴とする請求項2、4及び5の内のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記報知部は、
前記最上位シートのシート種を入力するための入力部と、所定の操作を促す表示を行うための表示部と、を有し、前記防湿部材検知部による検知結果と、前記入力部から入力されたシート種との組み合わせに応じた表示を前記表示部に行う、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記報知部は、
前記入力部から入力されたシート種が、空気中の水分により吸着を起こしやすい吸着容易シート種である場合に、前記防湿部材検知部によって前記防湿部材が前記被覆位置に無いことが検知された際には、前記防湿部材のセットを促すための表示を前記表示部に行う、ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記報知部は、
前記入力部から入力されたシート種が、空気中の水分により吸着を起こしやすい吸着容易シート種である場合に、前記防湿部材検知部によって前記防湿部材が前記被覆位置に無いことが検知された際には、シートの給送動作を禁止するための表示を前記表示部に行う、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記報知部は、
前記入力部から入力されたシート種が、空気中の水分により吸着を起こしやすい吸着容易シート種以外のシート種である場合に、前記防湿部材検知部によって前記防湿部材が前記被覆位置にあることが検知された際には、前記入力部から入力されたシート種に誤りがないか否かの確認を促すための表示を前記表示部に行う、ことを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−227125(P2011−227125A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93920(P2010−93920)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】