説明

画像形成装置

【課題】 ブロッチ(スリーブへのトナーの固着による画像不良)の発生を防止しつつ、トナーに対し十分な帯電付与を行なうことにより高品質な画像形成可能な現像装置を提供する。
【解決手段】 トナー担持部材とは独立したトナー帯電部材を備え、前記トナー担持部材の現像剤帯電能力を実質的に0とした。
トナー担持部材でのトナーの帯電を行わずに、上流工程で十分な現像剤帯電を行うので、ブロッチの発生を防止しつつ、高品位の画像が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粉体トナーによって静電潜像等を顕像化する現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
潜像担持部材に対向するトナー担持部材におけるよりも前にトナー帯電を行う技術として、特許文献1(図4)では、潜像担持部材4と対向した現像領域にトナーとキャリアから成る2成分現像剤を搬送する現像剤担持部材3aに内蔵された磁石3bの搬送用磁極N2・S2の磁束密度を、現像極N1のそれに対して所定の比率に抑え、かつ筐体9a内に、現像剤担持部材3a上の現像剤量を規制するドクターブレード3cとは別の、トナー帯電補助手段18を設置した現像装置が開示されている。
【0003】
磁性トナーは、トナー濃度制御が不要、キャリア付着しない、現像剤交換不要の理由で、黒色画像の形成に最適であるのに対し、背景技術は、2成分現像剤を使用することを前提としているので、磁性トナーに対して最適とはいえない。具体的には、低湿環境下等でトナー帯電量が過剰となった場合、図4においてトナーtが鏡像力Fiによりトナー担持部材3a上に拘束されてブロッチという現象が発生しやすい。
【0004】
鏡像力とは、導体等3a(比誘電率εr2)の外部(比誘電率εr1)であって前記導体3a等の表面から距離Dに位置する電荷−Qを有するトナーtに対して、前記導体3a等の内部であって前記導体3a等の表面から距離Dに位置する電荷+Qを有する仮想電荷vcが存在すると仮定した場合の電気力である。
【0005】
ブロッチとは、トナー担持部材上のトナーの一部がトナー担持部材に拘束されて潜像担持部材に飛翔できなくなってムラ画像(図7b)になる現象である(正常な場合は図7aのような画像になる)。磁性トナーは、磁気力が作用する分、同じ帯電量を有する非磁性トナーよりもトナー担持部材上への拘束力が大きく不利である。
【0006】
トナー担持部材がトナー帯電と現像電極の機能を兼用する従来の技術で高画質を得るためには、トナー担持部材との摩擦によってトナー帯電量を高める必要があるが、そのためにはトナーtとトナー担持部材3a間の鏡像力Fi(一般的には式1で与えられる)が増すような材料(具体的には金属(比誘電率εr2を∞と考え、鏡像力Fiは式2で与えられる))をトナー担持部材表面に使わざるを得ない(図6)。
【0007】
【数1】

【0008】
理由は、トナー担持部材に対向するドクターブレード3cの上流に滞留する現像剤からトナー担持部材が受ける圧力が大きいため、金属以外の材料(樹脂等)だと、耐久性が著しく劣るからである。さらに、トナー担持部材に鏡像力により強固に付着したトナーは、ブロッチ画像として現れてしまう。スリーブに強固に付着したトナーを電気力Fd(式3で与えられる)で剥離するためには強力な現像バイアスが必要となるため現像バイアスのリークの可能性も増す。(Fi/Fd<0.35が必要) 逆に、トナー帯電をブロッチが生じない程度に抑制すると画質が低下する。
【0009】
Fd=Q×Ed Ed:現像バイアスによる現像電界強度 式3
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平06−332320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、磁性トナーでのブロッチを防止しつつ、高画質を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的は本発明に係る現像装置にて達成される。
【0013】
すなわち、負帯電性磁性トナーを担持して潜像担持部材と対向した現像領域に搬送する回転可能な中空円筒状のトナー担持部材、前記トナー担持部材に内蔵されて固定配置された第1の磁界発生手段、前記トナー担持部材に対向して固定配置されたトナー量規制部材、前記トナー担持部材に対して前記潜像担持部材とは略反対の位置に配設されたトナー再配置部材、前記トナー再配置部材に対して前記トナー担持部材とは略反対の位置に配設された回転可能な中空円筒状のトナー帯電部材、及び前記トナー帯電部材に内蔵されて固定配置された第2の磁界発生手段、を備え、前記トナー帯電部材表面の仕事関数Wtcmが前記トナーの仕事関数Wtより小であり、前記トナー再配置部材表面の仕事関数Wram及び前記トナー担持部材表面の仕事関数Wthmが前記トナーの仕事関数Wtと略同等であり、前記トナー再配置部材は、前記トナー担持部材及び前記トナー帯電部材と接触する回転体であり、トナー担持部材の最外層の比誘電率εr2が5以下であることを特徴とする現像装置である。
【0014】
あるいは、正帯電性磁性トナーを担持して潜像担持部材と対向した現像領域に搬送する回転可能な中空円筒状のトナー担持部材、前記トナー担持部材に内蔵されて固定配置された第1の磁界発生手段、前記トナー担持部材に対向して固定配置されたトナー量規制部材、前記トナー担持部材に対して前記潜像担持部材とは略反対の位置に配設されたトナー再配置部材、前記トナー再配置部材に対して前記トナー担持部材とは略反対の位置に配設された回転可能な中空円筒状のトナー帯電部材、及び前記トナー帯電部材に内蔵されて固定配置された第2の磁界発生手段を備え、前記トナー帯電部材表面の仕事関数Wtcmが前記トナーの仕事関数Wtより大であり、前記トナー再配置部材表面の仕事関数Wram及び前記トナー担持部材表面の仕事関数Wthmが前記トナーの仕事関数Wtと略同等であり、前記トナー再配置部材は、前記トナー担持部材及び前記トナー帯電部材と接触する回転体であり、トナー担持部材の最外層の比誘電率εr2が5以下であることを特徴とする現像装置である。
【発明の効果】
【0015】
トナー帯電をトナー担持部材ではなく専用のトナー帯電部材で行うことにより、トナー帯電部材表面でブロッチが発生したとしても、接触して回転するなトナー再配置部材の機械力により剥離させて、かつクラウド化することによって、トナー担持部材表面においてトナー層の均一化が可能である。トナーとトナー帯電部材の仕事関数の差を大きくすることにより、摩擦によるトナー帯電量が高まってトナーの現像・潜像電界への反応が忠実となり、高品位な現像が実現される。トナー担持部材の表面の誘電率を5以下とすることにより、高帯電トナーでも鏡映力Fiを低減し(式1・図6)、さらにトナー担持部材の表面の仕事関数をトナーと同じにすることにより、トナー担持部材でのトナー帯電量が過剰に高くなることを防止し、通常の電界強度の現像バイアスでも飛翔が可能となるトナー担持部材にトナー量規制部材を対向させても、トナー量規制部材上流の滞留トナーの量が非常に少ないので、トナー担持部材へ及ぼす圧力も小さいため、トナー担持部材表面として硬度の低い材料が適用可能である。
【0016】
トナー再配置部材を、トナー帯電部材及びトナー担持部材のどちらとも最近接部で接触させて回転させることにより、前記二の部材からのトナー剥離性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係る現像装置の断面図
【図2】本発明の実施例に係るトナー再配置部材近傍の断面図
【図3】本発明の実施例に係るトナー再配置部材近傍の断面図
【図4】背景技術(従来例)に係る現像装置の断面図
【図5】鏡像力を説明する図
【図6】誘電率と鏡像力の関係を示す図
【図7】ブロッチを説明する図
【図8】従来例に係る現像装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施例1]
図1は、本実施例に係る現像装置9の断面図であり、これを参照しながら、現像装置9の画像形成動作を説明する。
【0019】
不図示かつ公知の一次帯電手段によって、略均一の電位(約−700V)に帯電された潜像担持部材としての不図示かつ公知の感光ドラム4に、不図示かつ公知の露光手段によって、最低画像濃度部で約−150Vの電位にされた非画像部が形成される。
【0020】
感光ドラム4は、100mm/sの速度でD4方向に回転する。感光ドラム4と非接触(間隙約200μm)に対向配置されたトナー担持部材としての現像スリーブ23a等を備えた現像装置9から供給された磁性トナーにより感光ドラム4の画像部に黒色トナー像が形成される。
【0021】
トナーとしては、公知のものでよく、結着樹脂としては、架橋されたスチレン系共重合体もしくは架橋されたポリエスエルが使用される。架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられる。磁性トナーは帯電制御剤を添加して用いることが好ましく、正帯電トナー用としては、ニグロシン系、四級アンモニウム塩のごとき荷電制御剤が、特に好ましく用いることができる。磁性トナーは黒の着色剤の役割を兼ねても良いが、磁性材料を含有している。
【0022】
磁性トナー中に含有させる磁性材料としては、マグネタイト、γ−酸化鉄、フェライト、鉄過剰型フェライト等の酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属、あるいはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金、およびその混合物等が挙げられる。前記材料をボールミルその他の混合機により、充分混合してから熱混練機を用いて溶融混練し、次いで粗粉砕および微粉砕を行う等の公知の方法によって得られる体積平均径7.6μm、仕事関数4のものである。
【0023】
体積平均径は、装置としてコールター社製のマルチサイザ(商標)、電解液としてコールターサイエンティフィックジャパン社製のISOTON R−II(商標)を使用し、電解液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液を超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行いアパーチャとして100μm品を用いて測定・算出した。
【0024】
仕事関数は、フェルミ準位にある金属内電子を固体外部の真空へ移すのに必要な仕事と定義され、通常、電子ボルト(eV)単位で表される。その測定は、光電効果を利用した理研計器社製の表面分析装置AC−1S(商標)を用いて行った。尚、トナーの仕事関数は、トナーをアルミニウム板の上に板状に融解したものを測定用試料とした。
【0025】
感光ドラム4と現像スリーブ3aの間には、不図示かつ公知の現像バイアス電源によって電界が形成され、前記現像の原動力となる。
【0026】
現像装置の基本形状は筐体9aで決定される。トナー流入口9bより不図示かつ公知のトナー供給手段より供給されたトナーが、D11・D12方向に回転する公知の攪拌部材11・12によって攪拌されながらトナー帯電部材としての帯電スリーブ18a方向に搬送される。攪拌部材11・12は、梯子形状(孔の開いた平板)を呈する樹脂製部材であり、回転数はともに8回転/分であり、攪拌領域の直径はそれぞれ24mm、16mmである。
【0027】
帯電スリーブ18aは、直径16mmの中空の円筒状部材であって、200mm/sの速度でD18a方向に回転する。基層は、A5056製(厚さ0.6mm)でガラス粒子吹き付けによって粗面化処理がなされている。その上に、公知の電気Cuメッキ(厚さ10μm)がほどこされ、表面の表面粗さは0.6μmRa、仕事関数Wtは、5.4である。
【0028】
攪拌部材12の回転による力、帯電スリーブ18aに内蔵・固定された永久磁石18bの磁気力及び帯電スリーブ18aの回転による力によって、帯電スリーブ18aに付着し、帯電スリーブ18aと150μmの間隙をもって近接配置されたトナー量規制部材としてのドクターブレード18c(厚さ1mm・SPCC製)の作用等により、所定の質量(約0.5〜0.7mg/cm^2)に規制された正帯電(+15〜+18μC/g)のトナー層が形成される。ドクターブレード18cは、帯電スリーブ18aとともに電気的に接地されている。
【0029】
トナー再配置部材を構成するトナー再配置部材としてのブラシローラ23bとの最近接部近傍を通過する際に剥ぎ取られたトナーは、弾き部材23cによってクラウド化され、トナー担持部材としての現像スリーブ3aが内蔵する永久磁石3bの磁気力によって現像スリーブ3aに均一に担持される。
【0030】
ブラシローラ23bは、A5056製のφ4の軸23baに長さ4mm、繊維密度500本/cm^2,繊度10dtex,仕事関数4のナイロン繊維23bbを埋め込んだものであり、500回転/分の回転数でD23b方向に回転する。
【0031】
ブラシローラ23bとトナー帯電部材18aの当接ニップは2mm、ブラシローラ23bと現像スリーブ3aの当接ニップはともに1mmであった。ちなみに、ナイロン繊維23bbに導電性を保持させるために導電性カーボンを充填している。
【0032】
ブラシローラ23bと現像スリーブ3a間には電源23aによって直流バイアスが印加され、ブラシローラ23bに付着したトナーが現像スリーブ3a方向に移動する方向の電気力が作用する。
【0033】
現像スリーブ3aに担持されたトナーは、ドクターブレード3cによってもう一度均一化され、感光ドラム4との再近接部において現像に供されるが、この時点でも帯電量は+15〜+18μC/gに維持されている。
【0034】
現像に供されなかった現像スリーブ3a上のトナーは、再度トナー再配置部材及び非画像形成期間に印加される回収バイアスによってかきとられるので、同一のトナーが現像スリーブ3a上に付着しつづけることはない。非画像形成期間に印加される回収バイアスも、前記電源23aが発生させる直流バイアスであって、現像スリーブ3aに付着したトナーがブラシローラ23b方向に移動する方向の電気力を作用させる。
【0035】
現像スリーブ3aは、直径30mmの中空の円筒状部材であって、200mm/sの速度でD3a方向に回転する。ポリカーボネート製(厚1mm)でガラス粒子吹き付けによって粗面化処理がなされており表面粗さは1.1μmRa、仕事関数Wthmは、4、比誘電率εr2は3である。
【0036】
ここで、比誘電率εrの測定は次とおり行った。測定装置として、ヒューレット・パッカード社製のHP4284AプレシジョンLCRメータ(商標)及び電極HP16451B(商標)を用い印加電圧は1VPP、周波数は100Hzとする。被測定物は、直径56mmの円板状に成形し、Pt−Pd蒸着膜により直径50mmの主電極と内径51mmのガード電極とを設ける。Pt−Pd蒸着膜は、日立製作所社製のマイルドスパッタE1030(商標)によって蒸着操作を2分間行うことにより得られたものを温度22〜23℃、湿度50〜60%の雰囲気中に24時間以上放置したものであり、式4で算出する。
【0037】
εr=T×C/(1.738×10^(‐14)) 式4
ここで、Tは、被測定物の厚さ(単位m)。Cは、前記測定装置で測定された静電容量(単位F)である。
【0038】
表1に、本実施例に係る現像装置の条件を示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表2に、15℃10%RHの環境下で、画像比率6%の画像出力をA4サイズ横の転写材に1万ページ連続して実施した際の本実施例に係る現像装置及び該現像装置を備えた画像形成装置の性能を示す。従来例に比較して、優位であることが理解できる。
【0041】
ここで、ブロッチは、べた中間調出力画像の目視による主観評価によった。
【0042】
尾引き、飛び散りは、横線出力画像の目視による主観評価によった。べた部画像反射濃度とは、紙上のいわゆる「べた黒」部分の画像反射濃度であり、X−Rite社の504型分光濃度計(商標)により測定した。かぶりは、東京電色社製のTC−6DS(商標)を用いて測定した、べた白出力画像の反射率と、未使用紙の反射率の差(単位%)である。
【0043】
【表2】

【0044】
[実施例2]
本実施例は、トナーの帯電極性が負、トナー再配置部材がゴムローラである点等が実施例1において異なるので、この点を中心に説明し、実施例1と同じである部分は割愛する。
【0045】
本実施例のトナーとしても、公知のものでよく、負帯電制御剤としては、たとえば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、例示すれば、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、3,5−ジターシャリーブチルサリチル酸クロム等がある。特にアセチルアセトン金属錯体、サリチル酸系金属錯体またはサリチル酸系金属塩が好ましく、中でもサリチル酸系金属錯体または金属塩が好ましい。体積平均径は5.9μm、仕事関数Wtは5.4である。
【0046】
帯電スリーブ18aは、表層として公知の電気Crメッキ(厚さ1.5μm)がほどこされ、仕事関数Wtcmは5.4である。帯電スリーブ18a上のトナー層は、帯電量(−18〜−22μC/g)、質量0.7〜0.9mg/cmである。
【0047】
トナー再配置部材を構成するトナー再配置部材としてのゴムローラ23bは、SPCC製のφ3の軸23baに厚さ4.5mm、仕事関数Wram=5.4のシリコーンゴム層23bbを巻きつけたものであり、500回転/分の回転数でD23b方向に回転する。
【0048】
ゴムローラ23bとトナー帯電部材18aの当接ニップは2mm、ゴムローラ23bと現像スリーブ3aの当接ニップはともに1mmであった。
【0049】
現像スリーブ3aに担持されたトナーは、ドクターブレード3cによってもう一度均一化され、感光ドラム4との再近接部において現像に供されるが、この時点でも帯電量は−18〜−22μC/gに維持されている。
【0050】
表2を参照すれば。比較例2・従来例2に比較して、優位であることが理解できる。
【0051】
[比較例1]
本比較例は、トナー帯電部材表面の仕事関数が実施例1と異なるので、この点を中心に説明し、実施例1と同じ部分は割愛する。
【0052】
トナー帯電部材表面は電気Crメッキであって、仕事関数WtcmがトナーのそれWtと同じ(4)である(表1)のでトナー帯電性能が低く、トナー担持部材上でのトナー帯電量は+2〜+3μC/gであり、尾引きが非常に良くない(表2)。
【0053】
[比較例2]
本比較例は、トナー担持部材表面の仕事関数Wthmが実施例2と異なるので、この点を中心に説明し、実施例2と同じ部分は割愛する。
【0054】
トナー担持部材表面はCrメッキであって、仕事関数WthmがトナーのそれWt=5.4と大きく異なる(4)(表1)のでトナー帯電性能が高く、トナー担持部材上でのトナー帯電量は−17〜−21μC/gである。かつ、誘電率εr2が大きい(∞)ので帯電量の大きなトナーに働く鏡像力が大きいためブロッチが発生する(表2)。
【0055】
[従来例1]
本従来例は、トナー帯電部材、トナー再配置部材を備えない(図8)等の点が実施例1と異なるので、この点を中心に説明し、実施例1と同じ部分は割愛する。
【0056】
トナー担持材表面はCrメッキであって、仕事関数WthmがトナーのそれWt=5.4と大きく異なる(4)(表1)のでトナー帯電性能が高く、トナー担持部材上でのトナー帯電量は+15〜+18μC/gである。かつ、誘電率εr2が大きい(∞)ので帯電量の大きなトナーに働く鏡像力が大きいためブロッチが発生する(表2)。
【0057】
[従来例2]
本従来例も、トナー帯電部材、トナー再配置部材を備えない(図8)等の点が実施例2と異なるので、この点を中心に説明し、実施例2と同じ部分は割愛する。
【0058】
トナー担持材表面はCuメッキであって、仕事関数WthmがトナーのそれWt=4と大きく異なる(5.4)(表1)ので、トナー帯電性能が高く、トナー担持部材上でのトナー帯電量は−14〜−19μC/gである。かつ、誘電率εr2が大きい(∞)ので帯電量の大きなトナーに働く鏡像力が大きいためブロッチが発生する(表2)。
【0059】
[従来例3]
本従来例は、非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤を用いる点等で実施例2と異なる。図4に示すとおり、現像剤溜りd’を形成する返し部材9d等を有している。現像容器9a内の略下半部は、紙面に垂直方向に延在する隔壁9wによって現像室9bと攪拌室9cとに区画されている。隔壁9wは上方が開放されおり、現像室9bで余分となった現像剤が攪拌室9c側に回収される。
【0060】
前記現像室9b及び攪拌室9cには、搬送スクリュー11・12が配設されている。搬送スクリュー11は現像室9b内の現像剤を撹拌しながら搬送し、又搬送スクリュー12は現像剤濃度制御装置の制御の下で、不図示かつ公知のトナー補給手段から攪拌室9c内にそのスクリュー12の上流側に供給されるトナーと、攪拌室9c内に既にある現像剤とを撹拌しながら搬送し、現像剤のトナー濃度を均一化する。
【0061】
隔壁9wの両端部には、現像室9bと撹拌室9cとを相互に連通させる現像剤通路(図示せず)が形成されており、現像によってトナーが消費されてトナー濃度が低下した現像室9b内の現像剤を、前記スクリュー11・12の搬送力により現像剤通路の一方を通って攪拌室9c内へ移動する。
【0062】
前記現像剤溜り部t’には,トナー帯電部材としてA5056にCrメッキを施したスクリュー18が配設されており、現像剤溜りd’における現像剤を撹拌することにより、ドクターブレード3cを経て現像領域に搬送されるトナーの帯電不足を補う。
【0063】
前記ドクターブレード3cはA5056等の非磁性材料で形成され、感光ドラム4よりも外径20mmの現像スリーブ3aの回転方向上流側に配設されている。前記スクリュー11は、現像室9b内の底部に現像スリーブ3aの軸線方向に沿ってほぼ平行に配置されており、本実施例では、回転軸の回りに羽根部材をスパイラル形状に設けたものであり、回転しながら現像室9b内の現像剤を現像スリーブ3aの軸線方向に沿って一方向に搬送する。又スクリュー12も搬送スクリュー11と同じ形状をしており、攪拌室9c内の底部にスクリュー11とほぼ平行に配置され、スクリュー11と同方向に回転して攪拌室9c内の下現像剤をスクリュー11と反対方向に搬送する。かくして、スクリュー11・12の回転による搬送により、現像剤が隔壁9wの両端部の開口部を通って現像室9bと攪拌室9cとの間で循環される。
【0064】
本実施例で用いた非磁性トナーは、ポリエステル樹脂に着色用顔料、更に負電荷制御剤としてアルキル置換サリチル酸の金属錯体を分散させたものであり、これに酸化チタンを外添して使用した。
【0065】
磁性キャリアはコア材としてZn系フェライトを用い、アクリル系樹脂をコートした、キャリアを用いた。
【0066】
現像スリーブ38a上のトナーの帯電量は−30〜−36μC/gと高いため、ブロッチや、出力画像のべた白部に黒いポチ、べた黒部に白いポチが発生することがある(表2)。ポチはいずれも、キャリア粒子が、感光ドラムに付着したことが原因である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、粉体トナーを用いる電子写真法等によるプリンタ・複写機等の画像形成装置の現像装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
3a トナー担持部材
3b 磁界発生手段
3c トナー量規制部材
4 潜像担持部材
9 現像装置
18a トナー帯電部材
18b 磁界発生手段
23 トナー再配置部材
Wt トナーの仕事関数
Wtcm トナー帯電部材表面の仕事関数
Wthm トナー担持部材表面の仕事関数
Wram トナー再配置部材表面の仕事関数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負帯電性磁性トナーを担持して潜像担持部材(4)と対向した現像領域に搬送する回転可能な中空円筒状のトナー担持部材(3a)、
前記トナー担持部材に内蔵されて固定配置された第1の磁界発生手段(3b)、
前記トナー担持部材に対向して固定配置されたトナー量規制部材(3c)、
前記トナー担持部材に対して前記潜像担持部材とは反対の位置に配設されたトナー再配置部材(23)、
前記トナー再配置部材に対して前記トナー担持部材とは反対の位置に配設された回転可能な中空円筒状のトナー帯電部材(18a)、及び前記トナー帯電部材に内蔵されて固定配置された第2の磁界発生手段(18b)、
を備え、
前記トナー帯電部材表面の仕事関数Wtcmが前記トナーの仕事関数Wtより小であり、
前記トナー再配置部材表面の仕事関数Wram及び前記トナー担持部材表面の仕事関数Wthmが前記トナーの仕事関数Wtと同等であり、
前記トナー再配置部材は、前記トナー担持部材及び前記トナー帯電部材と接触する回転体であり、
トナー担持部材の最外層の比誘電率εr2が5以下であることを特徴とする現像装置(9)。
【請求項2】
正帯電性磁性トナーを担持して潜像担持部材(4)と対向した現像領域に搬送する回転可能な中空円筒状のトナー担持部材(3a)、
前記トナー担持部材に内蔵されて固定配置された第1の磁界発生手段(3b)、
前記トナー担持部材に対向して固定配置されたトナー量規制部材(3c)、
前記トナー担持部材に対して前記潜像担持部材とは反対の位置に配設されたトナー再配置部材(23)、
前記トナー再配置部材に対して前記トナー担持部材とは反対の位置に配設された回転可能な中空円筒状のトナー帯電部材(18a)、及び前記トナー帯電部材に内蔵されて固定配置された第2の磁界発生手段(18b)、
を備え、
前記トナー帯電部材表面の仕事関数Wtcmが前記トナーの仕事関数Wtより大であり、
前記トナー再配置部材表面の仕事関数Wram及び前記トナー担持部材表面の仕事関数Wthmが前記トナーの仕事関数Wt同等であり、
前記トナー再配置部材は、前記トナー担持部材及び前記トナー帯電部材と接触する回転体であり、
トナー担持部材の最外層の比誘電率εr2が5以下であることを特徴とする現像装置(9)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−43688(P2011−43688A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192056(P2009−192056)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】