説明

画像形成装置

【課題】 ファンの大型化を抑えながら吸引力を有効に増やすことができ、画像モードや記録媒体の種類に応じた適正な吸引力を得ることができ、騒音の低減も図る。
【解決手段】 記録媒体101の搬送面に吸引力を付与する複数の吸引孔115が形成されたプラテン113と、複数の吸引孔に接続された吸気口を有し少なくとも回転数を可変制御される第1のファン112と、第1のファンの排気口に接続された吸気口を有し少なくともオンオフを制御される第2のファン107と、第1のファンおよび第2のファンの回転数およびオンオフを制御可能な制御手段50と、を備え、複数の吸引孔で同じ吸引力を得る場合でも、画像モードによって第1のファンの回転数および第2のファンのオンオフの組み合わせを変えるように制御可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドにより記録媒体に画像を記録する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドから記録媒体へインクを吐出して画像を形成する画像形成装置(インクジェット記録装置)では、プラテンの下からファン等で記録媒体を吸引して保持、搬送することにより、記録媒体の搬送精度を維持し、高画質の画像形成を可能にしている。その場合、記録媒体が大型化すると吸引力を増す必要が生じ、ファンが大型化し、大きな騒音や振動を引き起す傾向が生じる。そのため、記録媒体の吸引搬送を安定化させるとともにファンの騒音を軽減することが要請されている。そこで、特許文献1には、環境条件によって記録媒体に波打ちが発生した場合に、その状態に対応した回転数でファンを駆動することが開示されている。これによれば、記録媒体を適正な吸引力で吸着させ、記録媒体の搬送の安定化を図ることができる。また、記録媒体の状態が良好に維持できる程度の環境条件の場合には、ファンの回転数を低くすることにより騒音の低減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−179313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例では、プラテンの吸引力を増やすためにはファン自身の大型化が避けられず、一定以上の吸引力を確保しようとするとコストが大幅に高くなってしまうという課題があった。また、記録媒体をプラテン上に適正に保持できる環境条件の範囲では、回転速度を低下しても騒音を有効に低減できないという課題もあった。
【0005】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものである。ファンの大型化を抑えながら吸引力を有効に増やすことができ、画像モードや記録媒体の種類に応じた適正な吸引力を得ることができ、騒音の低減も図ることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、記録ヘッドにより記録媒体に画像を記録する画像形成装置において、前記記録ヘッドと対向して配され、搬送面に吸引力を発生させるための複数の吸引孔が形成されたプラテンと、前記複数の吸引孔に接続された吸気口を有し、少なくとも回転数が可変制御される第1のファンと、前記第1のファンの排気口に接続された吸気口を有し、少なくともオンオフが制御される第2のファンと、画像モードによって前記第1のファンの回転数および第2のファンのオンオフの組み合わせを変えて、前記複数の吸引孔で同じ吸引力を得るように制御可能である制御手段と、を備えたことを特徴とする。


に係る画像形成装置は、記録ヘッドにより記録媒体に画像を記録する画像形成装置において、前記記録ヘッドと対向して配され、搬送面に吸引力を発生させるための複数の吸引孔が形成されたプラテンと、前記複数の吸引孔に接続された吸気口を有し、少なくとも回転数を可変制御される第1のファンと、前記第1のファンの排気口に接続された吸気口を有し、少なくともオンオフを制御される第2のファンと、前記第1のファンおよび前記第2のファンの回転数およびオンオフを制御可能な制御手段と、を備え、前記複数の吸引孔で同じ吸引力を得る場合でも、画像モードによって前記第1のファンの回転数および第2のファンのオンオフを変えるように制御可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ファンの大型化を抑えながら吸引力を有効に増やすことができ、画像モードや記録媒体の種類に応じた適正な吸引力を得ることができ、騒音の低減も図ることができる画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】画像形成装置の平面図(a)および正面図(b)
【図2】直列に接続された2つの吸引ファンの斜視図
【図3】画像形成装置の制御手段のブロック図
【図4】記録媒体に吸引力が作用する直前(a)、画像形成を開始する直前(b)および画像形成を終了した記録媒体を切断する直前(c)の各状態を示す平面図
【図5】ファンの回転数と吸引力との関係を示すグラフ
【図6】画像形成装置の動作のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一または対応部分を示すものである。図1の(a)は画像形成装置の平面図であり、図1の(b)は画像形成装置の正面図である。103は画像形成装置の装置本体を支える筐体であり、装置本体を構成する機構は筐体103に取り付けられている。101は普通紙やプラスチックシート等のシート状の記録媒体であり、本実施形態ではロール状に巻回されたロール紙が使用されている。画像形成装置は、記録ヘッドにより記録媒体に画像を記録(形成)する装置である。本実施形態では、画像形成装置が、画像情報に基づいて記録ヘッドから記録媒体へインクを吐出して画像を記録するインクジェット方式である場合を例に挙げて説明する。また、記録媒体がロール紙である場合を例示するが、以下の説明は定寸に裁断されたカットシートの場合も同様である。
【0010】
図1において、110は記録媒体の搬送を駆動するLF(ラインフィード)モータであり、109は記録媒体を搬送するLFローラである。100、102はロール紙101の両端を保持するロールホルダのストッパであり、117はロールホルダの回転軸である。100、102、117の3部品は、巻回された記録媒体101を支持するロールホルダを構成しており、このロールホルダの両端は筐体103に支持されている。LFモータ110により駆動されるLFローラ109の回転により、記録媒体101を両矢印10の方向に巻き出したり、巻き戻したりする。129はLFエンコーダホイールであり、128はLFエンコーダセンサである。LFエンコーダホイール129のスリットをLFエンコーダセンサ128で読み取ることにより、記録媒体101の巻き出し巻き戻しの量を検知することができ、その検知結果により記録媒体101の先端の位置を検出することができる。図1の(a)では、記録媒体101の先端がプラテン113上の位置118まで引き出されている。
【0011】
114はインクを吐出して記録(画像形成)を行う記録ヘッドである。記録ヘッド114のフェイス面には、1列に配列された複数の吐出口からなる吐出口列が配されている。複数のインクを用いる場合は、複数の吐出口列が記録ヘッドの移動方向に並列配置される。記録ヘッド114は、通常、記録媒体101に沿って往復移動するキャリッジ(不図示)に搭載されており、キャリッジは不図示のガイドシャフトに沿って移動可能に案内支持されている。CR(キャリッジ)モータ104の回転をCRベルト106を介してキャリッジに伝達することにより、記録ヘッド114は両矢印11方向へ往復移動する。CRベルト106は、CRモータ104のモータプーリとアイドラプーリ111との間で張力をもって巻き掛けられており、CRモータの回転速度を記録ヘッド114の移動速度に変換している。これら、CRモータ、CRベルト、キャリッジ、ガイドシャフト等は記録ヘッド114を記録媒体101に対して相対的に移動させる移動機構を構成している。
【0012】
記録ヘッド114の移動(主走査)に同期して、画像情報に基づいて所定の吐出口から所定のタイミングでインク吐出することにより画像を形成していく。記録ヘッド114の主走査による1ライン分の画像形成と、LFローラ109による記録媒体101のピッチ搬送とを交互に繰り返すことにより、所望範囲の画像記録(例えば1頁分)が行われる。画像形成装置には、CPU、メモリおよびI/O回路等を有するコントローラからなる制御手段50が設けられている。この制御手段50は、内部メモリに予め格納された制御プログラムに従い、駆動モータや各種装置の動作を制御する。これにより、記録媒体の給送および搬送の動作を制御するとともに、画像情報に基づいて記録ヘッド114を制御することにより、記録媒体に画像を形成していく。制御手段50は、さらに装置全体の動作やそのタイミングを制御している。
【0013】
記録ヘッド114の移動方向と平行にCRエンコーダフィルム105が張設されている。CRエンコーダフィルム105は、例えば150(lpi)等の解像度でスリットが連続的に形成された細長いフィルムである。記録ヘッド114(またはキャリッジ)には、CRエンコーダフィルム105を光学的に読みと取るためのCRエンコーダセンサが配されており、CRエンコーダフィルムのスリットの数をカウントすることにより記録ヘッド114の位置および移動速度を検出する。記録ヘッド114と対向する位置には、記録領域(記録ヘッド114の移動する領域と記録媒体が移動する領域が重なった部分)で記録媒体101を支持するためのプラテン113が配されている。
【0014】
記録媒体101を支持するプラテン113の搬送面には、記録媒体を搬送面に吸着する吸引力を発生させるための複数の吸引孔115が形成されている。プラテン113の真下には第1のファン112が装着されており、筐体103の内部の背面部近傍には第2のファンが装着されている。これらのファン112、107は、例えばシロッコファン等の吸引ファンで構成されている。図2は第1のファン112および第2のファン107が直列に接続された状態を示す斜視図である。図1および図2において、プラテン113の下側には複数の吸引孔115と第1のファン112の吸気口140とを接続する吸気ダクト116が設けられている。第2のファン107は、ダクト108により第1のファン112の排気口141に接続された吸気口142を有する。第2のファン107は、吸気口142から導入される空気を装置本体の背面へ排出する排気口143を有する。
【0015】
第1のファン112および第2のファン107の少なくとも一方が回転すると、吸引孔115に吸引力が作用し、記録媒体101をプラテン113の搬送面に吸着することができる。第1のファン112および第2のファン107の回転数およびオンオフを含む各種の動作の制御は制御手段50によって制御可能である。そこで、第1のファン112は、少なくとも回転数の可変制御が行われるファンであり、第2のファン107は、少なくともオンオフの制御が行われるファンである。つまり、直列に接続された2つのファン112、107の動作は制御手段50に制御可能であるが、第1のファン112では少なくとも回転数の可変制御が行われ、第2のファン107では少なくとも作動のオンオフの制御が行われる。
【0016】
プラテン113の搬送下流側にはレール122が設置されており、記録媒体101を切断するためのカッタ124がレール122に沿って移動可能に配されている。カッタ124は一対の丸刃(切断刃)125、126を有する。フォトインタラプタ型のセンサ121、123によりカッタ124の通過を検知することができる。カッタ124には、カッタモータ120のプーリとアイドラプーリ127との間に掛け回されたカッタベルトが結合されている。このカッタベルトの走行移動がカッタ124の移動に変換される。丸刃125、126の間に記録媒体101を挟み、カッタモータ120でカッタ124を移動させると、丸刃125、126が回転しながら移動することで記録媒体101を切断する。
【0017】
図3は本実施形態に係る画像形成装置の制御手段50の電気回路のブロック図である。画像形成装置の動作はCPU200によって制御される。201はLAN、IEEE1394、USBなどによる通信を制御する通信i/Fのユニットであり、このユニット201は画像形成装置とホストコンピュータとの間の画像データの通信制御を司る。202は、ROMなどの不揮発性メモリやRAMなどの揮発性メモリで構成されるメモリユニットである。このメモリユニット202は、CPU200の動作に必要なプログラムを記憶しておく領域、通信制御ユニット201を通して送られてくる画像データ等を一時的に蓄えておく画像バッファ領域、各種の制御動作を実行するワーク領域などを有する。
【0018】
203はヘッド制御回路であり、記録ヘッド114およびCRエンコーダセンサ119に接続されている。ヘッド制御回路203は次のように動作する。まず、CPU200がメモリ202に格納された画像形成開始のアドレスを主走査前に付与し、CRエンコーダセンサ119はCRエンコーダフィルム105のスリットを読み込む。そこで、記録ヘッド114の移動および位置を検知し、各吐出口列に対応する画像データをCPU200の介在無しにメモリ202から読み出す。これに基づいて、記録ヘッド114に画像データを送り込むとともに、各吐出口列のインク吐出のタイミングを与える。
【0019】
204は各センサの検知結果に基づいてモータ類を制御するメカトロニクス制御回路であり、次のような制御を行う。すなわち、記録ヘッド114の走査を司るCRモータ104の回転方向および回転速度の制御、並びに、記録媒体101の紙送りを司るLFモータ110の回転方向および回転速度の制御を行う。また、カッタ124の移動を司るカッタモータ120の回転方向および回転速度の制御を行う。メカトロニクス制御回路204は、フォトインタラプタセンサ121、123を監視し、カッタ124の通過によるセンサ出力の変化をCPU200に通知する。また、LFローラ109の回転量を検知するLFエンコーダセンサ128の検知信号に基づいて、メカトロニクス制御回路204のカウンタをインクリメントまたはデクリメントすることにより、記録媒体101の先端の位置を検知している。さらに、メカトロニクス制御回路204では、記録媒体101をプラテン113の搬送面に吸着させるためのファン112、107、すなわち図1および図2に示すように直列接続された第1のファン112および第2のファン107のオン、オフ制御を行っている。
【0020】
CRエンコーダセンサ119が読み取ったスリット情報は、信号線221を通してヘッド制御回路203へ送られる。222は記録ヘッド114とヘッド制御回路203とを接続する信号線である。この信号線222から、記録ヘッドの走査位置に対応する画像データを吐出口列のイメージに変換した信号が供給される。223、224、225はモータ104、110、120とメカトロニクス制御回路204とを接続する信号線であり、それぞれモータの相に合った駆動信号、回転および停止の信号を供給している。226、227、228はセンサ121、123、128の出力信号であり、フォトインタラプタを遮っているときはHigh、遮っていない時にはLowとなる信号である。229、230はファン107、112のオン、オフおよび回転数(回転速度)を制御する信号線であり、回転数はPWM信号などにより複数段階に設定可能である。
【0021】
図4の(a)、(b)、(c)は記録媒体が搬送されるときの各位置の状態を示す平面図である。(a)は記録媒体101の先端が吸引力作用領域の直前250に位置する状態を示す。(b)は記録媒体101の先端が画像形成開始位置251に位置する状態を示す。(c)は記録媒体の画像形成領域253の後端252がカッタ124の移動レール122に位置する状態を示す。
【0022】
図5は直列に接続された第1および第2のファン112、107の回転数とプラテン113上での吸引力との関係を示すグラフである。図5において、一点差線301は、第2のファン107を100%で回転させ、第1のファン112だけの回転数を上げていったときの吸引力を示す。点線302は第1のファン112と第2のファン107を同じ回転数で上げていったときの吸引力を示す。実線303は、第2のファン107を停止し、第1のファン112だけの回転数を上げていったときの吸引力を示す。
【0023】
回転数310は、第2のファン107を100%で回転させたときに、プラテン113上の吸引力が400paになるように第1のファン112を回転させたときの回転数を示す。回転数312は、第2のファン107の回転を停止したときに、プラテン113上の吸引力が400paになるように第1のファン112を回転させたときの回転数を示す。回転数311は、第2のファン107を100%で回転させたときに、プラテン113上の吸引力が600paになるように第1のファン112を回転させたときの回転数を示す。回転数313は、第2のファン107の回転を止めたときに、プラテン113上の吸引力が600paになるように第1のファン112を回転させたときの回転数を示す。回転数314は、第2のファン107の回転数を100%にしたときに、プラテン113上の吸引力が900paになるように第1のファン112を回転させたときの回転数を示す。
【0024】
ポイント320は、第2のファン107の回転数を100%とし、第2のファン112の回転数を310にしたときに、プラテン113上の吸引力が400paになるポイントである。ポイント320における騒音レベルは48dBであった。ポイント321は、第2のファン107の回転数を100%とし、第1のファン112の回転数を311にしたときに、プラテン113上の吸引力が600paになるポイントである。ポイント321における騒音レベルは52dBであった。ポイント322は、第2のファン107の回転を停止し(オフにし)、第1のファン112の回転数を312にしたときに、プラテン113上の吸引力が400paになるポイントである。ポイント322における騒音レベルは41dBであった。ポイント323は、第2のファン107をオフにし(回転を停止し)、第1のファン112の回転数を313にしたときに、プラテン113上の吸引力が600paになるポイントである。ポイント323における騒音レベルは45dBであった。ポイント324は、第2のファン107の回転数を100%とし、第1のファン112の回転数を314にしたときに、プラテン113上の吸引力が900paになるポイントである。ポイント324における騒音レベルは57dBであった。
【0025】
ポイント320およびポイント322に見られるように、プラテン113上の吸引力が同じ強さの場合でも、後流側の第2のファン107をオフにして(停止させて)上流側の第1のファン112の回転数を上げるポイント322の方が騒音を低くすることができる。これは、同じ条件であれば、プラテン113の吸引孔115に近い第1のファン112の方がより効率よく吸引力を発生できるからである。また、プラテン113上の吸引力が同じポイント320およびポイント322で画像形成を行った場合でも、ポイント322の方が、プラテン113の真下の第1のファン112の振動の影響を強く受けることになる。このため、ポイント322の方が、インクドットの着弾精度が低下しやすくなり、高精細な画像記録が困難になる。
【0026】
そこで、高画質で記録する通常の画像モードでは第2のファン107をオンしたまま第1のファン112の回転数を310まで落とし、画像形成に適した吸引力(例えば400pa)を発生させるポイント320で画像形成するように制御される。一方、記録画質を問わずに高速で画像形成を行うドラフト画像モードでは、第2のファン107をオフにして第1のファン112回転数を312にし、画像形成に適した吸引力を発生させるポイント322で画像形成するように制御される。また、低騒音モードで画像形成を行う場合も、第2のファン107をオフにして第1のファン112回転数を312にし、騒音レベル41dBで画像形成に適した吸引力(例えば400pa)を発生させるポイント322で画像形成するように制御される。なお、この画像形成に適した吸引力は、記録媒体101の種類や剛性等によって異なる。
【0027】
以上のように、直列に接続された第1のファン112および第2のファン107を使用する。そして、複数の吸引孔115で同じ吸引力(図5中の600paもしくは400pa)を得る場合でも、画像モードによって第1のファンの回転数および第2のファンのオンオフの組み合わせを変えるように制御可能である。換言すれば、制御手段50は、画像モードによって、第1のファン112の回転数および第2のファン107のオンオフの組み合わせを変えて、複数の吸引孔115で同じ吸引力(図5中の600paもしくは400pa)を得るように制御可能に構成されている。つまり、画像モードに応じて第1のファン112だけで所望の吸引力が発生する場合は、図5中のポイント322、323に示すように、第2のファンを動作させないよう(オフにしたまま)に制御している。このように第1のファンのみの回転数の可変制御で記録媒体101の種類に応じた吸引力を発生させることにより、ドラフト画像モードや低騒音モードによる画像形成を行うことができる。また、通常の高画質モードのように第1のファンおよび第2のファンの両方で吸引力を発生させる場合は、図5中のポイント320、321に示すように、第2のファンをオンにして作動させるように制御している。このように、画像モードに応じて第1のファン112の回転数および第2のファン107のオンオフの組み合わせを変えるように制御可能とすることで、記録媒体の種類に適した吸引力を発生させながら、効率のよい画像形成を行うことができる。
【0028】
図6は本実施形態における画像形成シーケンスを示すフローチャートである。ステップS101で、ロールホルダストッパ101、102およびロールホルダの軸117に記録媒体であるロール紙101をセットし、これを筐体103に装着する。そして、記録媒体101の先端がLFローラ109とピンチローラ(不図示)のローラ対により挟持されたか否かを判断する。記録媒体101が挟持された後、ステップS102でユーザはセットされた紙種(記録媒体の種類)を入力する。プラテン113上の適正吸引力は記録媒体の種類(以下、紙種と略称する)によって異なることから、メモリ202には紙種ごとに決められた適正吸引力が記憶されている。紙種が入力されると、ステップS103で、あらかじめ決められている吸引力をメモリ202から読み込む。ここでは、紙種が普通紙の場合の吸引力は、記録媒体が画像形成動作に入るまでは600pa、画像形成中では400pa、記録終了後の切断時には900paであるとする。この各動作における吸引力は紙種によって異なる。
【0029】
ステップS104で、通信線231に接続されているホストコンピュータから画像形成のための画像データが送られてきたか否かを判断する。送られてきた場合はステップS105へ進んで、低騒音モードであるか否かを判断する。この低騒音モードは、図5中のポイント322のように、着弾精度が低いインクドットによる画質は許容できるが、騒音の低い画像形成装置で画像形成したい場合にユーザが設定する画像形成モードである。低騒音モードの場合はステップS130に進む。低騒音モードでない場合はステップS106に進む。ステップS106では、形成すべき画像の属性がドラフト画像であるか、それ以外の画像モードであるかを判断する。例えば、ドラフト画像を形成するドラフト画像モードであるか、通常の画像モード(例えば通常の高精度画像で記録するモード)であるかを判断する。ドラフト画像モードである場合はステップS130に進み、ドラフト画像モードでない場合はステップS110に進む。
【0030】
ステップS110で、LFモータ110の駆動でLFローラ109を回転させ、記録媒体101をロードする。ステップS111では、LFローラ109を回転させながら記録媒体101の先端が吸引孔115による吸引力領域の直前の位置250(図4の(a))に到達したか否かを判断する。位置250に到達するとステップS112に進み、第2のファン107をオンにして100%で回転させ、第1のファン112を回転数311で回転させることにより600paの吸引力で吸引を開始する。次いで、ステップS113で、LFローラ109を回転させながら記録媒体101の先端が画像形成開始位置(図4の(b)の位置251)に到達したか否かを判断する。記録媒体の先端がこの位置251に到達したところで、ステップS114に進み、第1のファン112の回転数を図5の回転数310に低下させ、吸引力を紙種に適した400paに低下させる。
【0031】
そして、ステップS115において、LFローラ109の回転を一時的に停止して記録ヘッド114を移動させながら記録媒体101に画像を形成する1ライン分の記録を行う。また、LFローラ109の回転により記録媒体を所定ピッチだけ搬送する。この記録ヘッドによる1ライン分の画像形成と、記録媒体の所定ピッチの紙送りとを交互に繰り返すことにより、記録媒体の所定領域にわたって画像を記録する。ステップS116で、所定領域の記録が終了し、記録媒体101の画像の後端が切断位置、すなわち図4の(c)の位置252に到達したか否かを判断する。後端が位置252に到達したところで、ステップS117へ進んで第1のファン112の回転数を図5の回転数314に上げる。つまり、画像モードがドラフト画像モードでない場合は、記録媒体101を切断するとき、第2のファン107をオンの状態にしたまま回転数を上げることにより、吸引力を切断に適した900paまで高める。ステップS118で、カッタモータ120の駆動によりカッタ124をセンサ123の位置からセンサ121の位置まで移動させ、記録媒体101を切断する。そして、ステップS119へ進み、直列に接続された第1のファン112および第2のファン107の両方をオフ(回転停止)にして前述のステップS104へ進む。
【0032】
画像モードが、ドラフト画像モードあるいは低騒音モードである場合の動作を説明する。ステップS104で、通信線231に接続されているホストコンピュータから画像データが送られてきたか否かを判断する。送られてきた場合はステップS105へ進んで、低騒音モードであるか否かを判断する。低騒音モードの場合はステップS130に進む。低騒音モードでない場合はステップS106に進んで、画像モードがドラフト画像モードであるか、通常の高精度画像のようなドラフト画像以外の画像を形成する画像モードであるかを判断する。ドラフト画像モードである場合はステップS130に進む。つまり、ステップS104で送られてきた入力画像のモードが低騒音モードである場合、およびドラフト画像モードである場合は、ステップS130へ進む。
【0033】
ステップS130で、LFローラ109を回転させ、記録媒体101をロードする。ステップS131で、LFローラ109を回転させながら記録媒体101の先端が吸引孔115による吸引力領域の直前の位置250に到達したか否かを判断する。位置250に到達するとステップS132に進み、第2のファン107をオフにし、第1のファン112を図5の回転数313で回転させ、記録媒体に適した吸引力600paで吸引を開始する。このときの騒音は、第2のファン107がオフであることから、比較的低い45dBのレベルである。ステップS133で、LFローラ109を回転させながら記録媒体101の先端が画像形成開始位置(図4の(b)の位置251)に到達したか否かを判断する。記録媒体の先端が位置251に到達したところで、ステップS134に進み、第1のファン112の回転数を図5の回転数312に低下させ、吸引力を紙種に適した400paに低下させる。
【0034】
そして、ステップS135において、記録ヘッド114による1ライン分の記録と、記録媒体101のピッチ搬送とを交互に繰り返すことで記録媒体の所定領域にわたって画像を記録する。ステップS136で、所定領域の記録が終了し、記録媒体101の画像の後端が切断位置252(図4)に到達したか否かを判断する。画像の後端が切断位置252に到達したところで、ステップS137へ進んで第2のファン107をオンにして100%の回転数の回転を開始する。次いで、ステップS138に進み、第1のファン112の回転数を図5の回転数314に上げる。つまり、画像モードがドラフト画像モードもしくは低騒音モードのときは、記録媒体101を切断するとき、第2のファン107をオンにするとともに、第1のファン112の回転数を上げることにより、吸引力を切断に適した900paまで高める。ステップS139で、カッタモータ120の駆動によりカッタ124をセンサ123の位置からセンサ121の位置まで移動させ、記録媒体101を切断する。そして、ステップS140へ進み、直列に接続された第1のファン112および第2のファン107の両方をオフ(回転停止)にして前述のステップS104へ進む。以上のような制御動作を適宜繰り返すことにより、記録媒体の種類に適した吸引力を得ながら、画像モードに応じて、また、低騒音モードにおいて、騒音を抑えながら画像を形成することができる。
【0035】
以上の実施形態では、プラテン113の搬送面に形成された複数の吸引孔115で同じ吸引力を得る場合でも、画像モードによって第1のファンの回転数および第2のファンのオンオフの組み合わせを変えるように制御可能である。その場合の画像モードは、通常の高画質の画像を形成するモードの他に、画質を問わずに高速で画像形成を行うドラフト画像モードや、騒音レベルを低下させて画像を形成する低騒音モードなどを含む。
【0036】
そこで、以上の実施形態では、制御手段50により、直列に接続された第1のファン112および第2のファン107を次のような態様で制御している。すなわち、画像モードに応じて第1のファン112だけで必要な吸引力が発生する場合は、図5中のポイント322、323に示すように、第2のファンを動作させないよう(オフにしたまま)に制御している。そして、画像モードがドラフト画像モードである場合は、図4および図6に示すように、記録媒体101の先端が記録位置に到達するまでは第2のファン107をオフにして第1のファン112の回転で吸引する。同時に、図6のステップS134のように、記録媒体に画像を形成する間、第2のファンをオフにしたまま第1のファンの回転数を落として吸引力を下げるように制御している。
【0037】
また、画像モードが低騒音モードの場合も、第1のファン112だけで必要な吸引力が発生する場合は、図5中のポイント322、323に示すように、第2のファン107を動作させないように制御している。同時に、図6のステップS134のように、記録媒体に画像を形成する間、第2のファンをオフにしたまま第1のファンの回転数を落として吸引力を下げるように制御している。ドラフト画像モード、低騒音モードのいずれも、画像形成を終了した記録媒体を切断するときは、それまでオフであった第2のファン107をオン(例えば100%回転状態)に変えるとともに、第1のファン112の回転数を上げる(例えば回転数314)。これにより、吸引力を高めることができる。本実施形態では、図5の900paまで高めている。なお、通常の画像モードなど、他の画像モードの場合は、図6に示すように、第2のファン107をオンの状態にしたまま第1のファン112の回転数を上げて吸引力を高めるように制御している。
【0038】
以上の実施形態によれば、直列に接続された複数(2個)のファンでプラテン113上の記録媒体101に対する吸引動作を制御することにより、記録媒体101の種類に適した吸引力を得ながら、画像モードに応じて効率的な画像形成を行うことができる。本実施形態においては、複数の吸引孔115で同じ吸引力(図5における400pa、600paまたは900pa)を得る場合でも、画像モードによって第1のファン112の回転数を変える(可変する)ように制御可能な構成になっている。また、この第1のファン112の回転数制御と第2のファン107のオンオフ制御とを組み合わせて制御可能な構成となっている。すなわち、以上の実施形態においては、記録媒体を2つの吸引ファンを直列に接続して使用することで、吸引力を増やし、形成する画像の種類によって2つのファンの回転数およびオンオフを制御することで、記録媒体の種類に適した吸引力を得ることができる。これと共に、適正な吸引力を保持しながら低騒音で画像を形成する低騒音モードを有効かつ容易に実行することができる。
【0039】
なお、以上説明した実施形態では、記録ヘッドを記録媒体に沿って移動させながら画像形成を行うシリアルタイプの画像形成装置を例に挙げた。本発明は、記録媒体の搬送方向の副走査のみで記録するラインタイプなど、他の走査方式の記録装置にも同様に適用可能である。また、本発明は、プリンタ、複写機やファクシミリなどの他、読取機能等の他の機能を併用する機器や、通信システムを有する機器や、各種処理装置と複合した機器など、画像形成の機能を有する装置であれば、広く適用可能である。さらに、画像形成機能を備えた捺染装置やエッチングなどの加工装置にも適用可能である。また、以上の実施形態では、記録媒体がロール紙である場合を例示したが、本発明は、一定寸法にカットされたカット紙など、他の形態の記録媒体に記録する場合にも同様に適用可能である。また、記録媒体の材質は、紙、プラスチックシート、印画紙、布など、画像形成が可能であれば、種々の材質のものを使用できる。
【符号の説明】
【0040】
50 制御手段
101 記録媒体
107 第2のファン
108 ダクト
112 第1のファン
113 プラテン
114 記録ヘッド
115 吸引孔
116 吸気ダクト
124 カッタ
140 第1のファンの吸気口
141 第1のファンの排気口
142 第2のファンの吸気口
143 第2のファンの排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドにより記録媒体に画像を記録する画像形成装置において、
前記記録ヘッドと対向して配され、搬送面に吸引力を発生させるための複数の吸引孔が形成されたプラテンと、
前記複数の吸引孔に接続された吸気口を有し、少なくとも回転数が可変制御される第1のファンと、
前記第1のファンの排気口に接続された吸気口を有し、少なくともオンオフが制御される第2のファンと、
画像モードによって前記第1のファンの回転数および第2のファンのオンオフの組み合わせを変えて、前記複数の吸引孔で同じ吸引力を得るように制御可能である制御手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、画像モードに応じて前記第1のファンだけで必要な吸引力が発生する場合は、前記第2のファンを動作させないように制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、画像モードがドラフト画像モードである場合は、記録媒体の先端が記録位置に到達するまでは前記第2のファンをオフにして前記第1のファンの回転で吸引し、記録媒体に記録するときに前記第2のファンをオフにしたまま前記第1のファンの回転数を落として吸引力を下げるように制御することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、低騒音モードでは、前記第1のファンだけで必要な吸引力が発生する場合は、前記第2のファンを動作させないように制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、低騒音モードのときは、記録媒体の先端が記録位置に到達するまでは前記第2のファンをオフにして前記第1のファンの回転で吸引し、記録媒体に記録するときに前記第2のファンをオフにしたまま前記第1のファンの回転数を落として吸引力を下げるように制御することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
記録媒体を切断するときは前記第2のファンをオンにして吸引力を高めることを特徴とする請求項3または5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドは、記録媒体へインクを吐出して画像を記録するインクジェット方式であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−5644(P2011−5644A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148294(P2009−148294)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】