説明

画像形成装置

【課題】専用の部材を追加することなく,裏面の情報を読めなくすることができ,裏紙として使用しても情報の流出を防止できる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明のカラープリンタ1は,給紙部20からトナー像形成部10に供給される用紙が裏紙であると判断された場合に,定着部30を通過した用紙を裏返して再びトナー像形成部10へと供給し,定着部30の温度を通常の画像形成時の定着温度よりも高い温度に調整した状態で用紙の印刷済みの面を定着部30に通すことにより,印刷済みの画像を攪乱する画像攪乱処理を行うものである。なお,裏紙であると判断された場合には,当該用紙の表面へのトナー像形成部10によるトナー像形成および定着部30によるそのトナー像の定着の前または後に,当該用紙の裏面に画像攪乱処理を行い,裏紙でないと判断された場合には,画像攪乱処理を行わないものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真方式の画像形成装置に関する。さらに詳細には,印刷用紙として,片面に印刷済みのいわゆる裏紙を使用する場合を想定した画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,資源の節約や経費削減等を目的に,片面に印刷済みのいわゆる裏紙を使用して印刷することがある。しかし,裏紙の裏面,すなわち1回目の印刷面に機密性の高い情報が印刷されている場合,不用意に裏紙として使用するとその情報が流出するおそれがある。そこで,機密性の高い情報の裏紙でも安全に使用するために,その既印刷面の情報を読み取りにくくする技術が考案されている。
【0003】
例えば,特許文献1には,通常のトナーを有するトナーカートリッジと消去可能なトナーを有するトナーカートリッジとを併用する画像形成装置が提案されている。そして,後に不要となることが予想される印刷物には後者のトナーを使用して印刷し,不要となったら溶剤によって消去するとされている。また,特許文献2には,給紙部と画像形成部との間に画像消去手段を設け,裏面の画像の一部を消去する装置が提案されている。例えば,サンドペーパーを巻き付けたローラと消去後の平滑化のためのカレンダローラ対を有するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−179452号公報
【特許文献2】特開2006−154055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の装置ではいずれも,専用の部材が必要となっている。そのため,装置の大型化やコスト高を招くおそれがある。
【0006】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,専用の部材を追加することなく,裏面の情報を読めなくすることができ,裏紙として使用しても情報の流出を防止できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置は,用紙を供給する用紙供給部と,用紙供給部によって供給された用紙にトナー像を形成するトナー像形成部と,トナー像形成部によって形成されたトナー像を加熱しつつ圧接することにより用紙に定着させる定着部とを有する画像形成装置であって,用紙供給部からトナー像形成部に供給される用紙が裏紙であるか否かを判断する裏紙判断部と,定着部を通過した用紙を裏返して再びトナー像形成部へと供給する裏供給部と,定着部の温度を制御する温度制御部と,温度制御部により定着部の温度を通常の画像形成時の定着温度よりも高い温度に調整した状態で用紙の印刷済みの面を定着部に通すことにより,印刷済みの画像を攪乱する画像攪乱処理を行う裏攪乱部とを有し,裏攪乱部は,裏紙判断部によって裏紙であると判断された場合には,当該用紙の表面へのトナー像形成部によるトナー像形成および定着部によるそのトナー像の定着の前または後に,当該用紙の裏面に画像攪乱処理を行い,裏紙判断部によって裏紙でないと判断された場合には,画像攪乱処理を行わないものである。
【0008】
本発明の画像形成装置によれば,裏攪乱部を有しているので,裏紙であると判断された場合にはその裏面の画像を攪乱するための画像攪乱処理を行うことができる。裏紙であるかどうかの判断は,例えばユーザの指示を受けるとしてもよいし,裏紙専用の給紙箇所を設定しておいてもよい。そして,裏紙であると判断された場合には,裏面の画像が攪乱されるので,その内容は読みとれないものとなる。画像攪乱処理としては,定着部の定着温度を高くして,その高温の箇所に攪乱しようとする面である印刷済みの面を向けて用紙を通せばよい。これにより,その面の画像はオフセットまたは溶融により攪乱される。従って,専用の部材を追加することなく,裏面の情報を読めなくすることができ,裏紙として使用しても情報の流出を防止できる画像形成装置となっている。
【0009】
さらに本発明では,定着部の定着の程度として,通常の第1定着程度とそれより弱い第2定着程度との2段階のうちからいずれかを選択する定着程度選択部と,形成する画像データに機密情報が含まれているか否かを判定するデータ判定部とを有し,定着程度選択部は,データ判定部によって機密情報が含まれていると判断された画像データを新品の用紙の片面に形成する場合に第2定着程度を選択し,それ以外の場合に第1定着程度を選択することが望ましい。
このようなものであれば,これから形成しようとする画像が機密情報を含むものであって,それを新品の用紙の片面に形成する場合には,通常より弱い定着が行われる。弱く定着された画像は,その後に画像攪乱処理を行うことによって,容易に攪乱される。従って,この用紙を裏紙として使用しても,裏面に画像攪乱処理を行うことによって情報の流出が効果的に防止される。
【0010】
さらに本発明では,第2定着程度は,第1定着程度に比較して低圧接力または低温での定着であることが望ましい。
通常の定着より低圧接力または低温での定着を行った場合には,トナー像の定着される程度がやや弱いものとなるからである。
【0011】
さらに本発明では,定着程度選択部によって第2定着程度が選択されているときに形成される画像に,その画像が第2定着程度で形成されたことを示すマークを付加するマーク付加部と,裏紙判断部によって裏紙であると判断された用紙の裏面の画像にマークが含まれているか否かを検出するセンサと,裏紙判断部によって裏紙であると判断された用紙の裏面の画像に機密情報が含まれているか否かを判別する機密判別部と,用紙供給部から供給される用紙のうち,機密判別部によって裏面の画像に機密情報が含まれると判別され,かつ,センサによってマークが検出されなかった用紙を,トナー像形成に供することなく排出させ,それ以外の用紙についてはトナー像形成を許容するトナー像形成拒否部とを有し,裏攪乱部は,裏紙判断部によって裏紙であると判断された用紙のうち,センサによってマークが検出された用紙のみについて画像攪乱処理を行うことが望ましい。
【0012】
このようなものであれば,用紙が裏紙であると判断された場合,自身または同機種によって第2定着程度で定着されて画像が形成された用紙であるか否かが,マークの有無によって判断される。第2定着程度で定着された画像は,画像攪乱処理によって,確実に読めなくできるので,情報が流出するおそれはない。従って,裏面に画像攪乱処理を行うとともに表面に新たな画像を形成して,裏紙として使用することが許容される。しかし,裏紙であり,機密情報が含まれていると判別されたにもかかわらずマークが検出されなかった用紙については,画像が確実に攪乱されないおそれがあるため,裏紙として使用することが拒否される。従って,機密情報をその裏面に残したまま裏紙として使用されるおそれはない。
【0013】
さらに本発明では,裏紙判断部によって裏紙であると判断された用紙の裏面の画像に機密情報が含まれているか否かを判別する機密判別部を有し,裏攪乱部は,当該用紙の表面へのトナー像形成部によるトナー像形成および定着部によるそのトナー像の定着後に,裏供給部によって当該用紙の裏面を定着部へ供給させて,画像攪乱処理を行わせるものであるとともに,機密判別部によって機密情報が含まれていると判別された場合に限り,画像攪乱処理を行わせることが望ましい。
このようなものであれば,機密判別部によって,用紙が,裏面に機密情報が含まれている裏紙であるかどうかが判別される。そして,裏攪乱部は,裏面に機密情報が含まれている裏紙であると判別された場合に限り画像攪乱処理を行うようにしているので,必要な場合にだけ画像攪乱処理が行われる。機密情報が含まれていない裏紙の場合は,表面の画像形成のみが行われ,迅速に処理される。
【0014】
さらに本発明では,用紙供給部は複数箇所からの供給が可能なものであり,複数箇所のうちの一部の箇所を,機密情報が含まれている裏紙を裏向きにしてセットされる箇所である機密裏紙専用カセットとして設定する機密カセット設定部を有し,裏攪乱部は,機密裏紙専用カセットから供給された用紙について,まず当該用紙の裏面に画像攪乱処理を行い,その後に裏供給部によって当該用紙の表面をトナー像形成部へ供給させて,当該用紙の表面へのトナー像形成部によるトナー像形成および定着部によるそのトナー像の定着を行わせるものであることが望ましい。
表面に機密情報が印刷されている裏紙を供給する箇所として,専用のカセット(機密裏紙専用カセット)があらかじめ設定されていれば,そこから供給される用紙については必ず,その裏面の画像を攪乱することになる。その場合には,あらかじめ裏向きにセットしておいて,表面の画像形成より先に裏面の攪乱処理をするようにすることができる。このようにすれば,表面の画像形成への影響を最小限に抑えつつ,裏面の画像を効果的に攪乱することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像形成装置によれば,専用の部材を追加することなく,裏面の情報を読めなくすることができ,裏紙として使用しても情報の流出を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本形態に係るカラープリンタの概略構成図である。
【図2】センサの配置を示す説明図である。
【図3】センサによってマークを検出する例を示す説明図である。
【図4】カラープリンタの定着部を示す説明図である。
【図5】操作パネルを示す説明図である。
【図6】定着制御を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本発明を具体化した形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,電子写真方式のカラープリンタに本発明を適用したものである。
【0018】
本形態のカラープリンタ1は,図1に示すように,トナー像形成部10を中心に図中下方に給紙部20,図中上方に定着部30と排出部40とを有するものである。図示のカラープリンタ1では,そのトナー像形成部10は,いわゆるタンデム方式のものである。すなわち,中間転写ベルト11を有し,それに沿って4つの感光体12と1次転写部13,1つの2次転写部15等が設けられているものである。
【0019】
本形態のカラープリンタ1は,画像形成時には,画像情報に基づいて,各色のトナー像をそれぞれの感光体12上に形成する。そして,それを1次転写部13によって,中間転写ベルト11上に重ね合わせる。さらに,2次転写部15によって,用紙等にまとめて転写する。なお,トナー像形成部としては,図示のタンデム方式のものに限らず,トナー像を形成するための既知の他の方式のものを採用することもできる。なお,本形態では,使用するトナーは通常のものである。
【0020】
給紙部20は,図1に示すように,2つの給紙カセット21,22と,1つの手差しトレイ23とを有するものである。給紙カセット21,22は,このカラープリンタ1に対して着脱可能であり,その中に画像形成を行うための用紙Pを収納するものである。手差しトレイ23は,開閉可能な挿入口であり,トレイ上に用紙をセットして使用するものである。これら複数の給紙カセット21,22または手差しトレイ23のうち,どの箇所に収納されている用紙を使用するかについては,通常,印刷の開始前にユーザの指示を受けるようになっている。
【0021】
本形態の給紙カセット21は,裏紙専用のカセットとして使用することが推奨されるカセットである。そのために,本形態のカラープリンタ1は,図2に示すように,給紙カセット21から給紙された用紙の裏面の画像を,部分的に検出するためのセンサ25を有している。センサ25は,図3に示すように,通紙範囲の幅方向の両端近くに,それぞれ反射型光学センサ26が配置されたものである。反射型光学センサ26は,受光部27と発光部28とのセットで構成されている。なお,給紙カセット21へセットされる用紙の大きさに合わせて,2つの反射型光学センサ26の配置が変更できるものであることが望ましい。
【0022】
このセンサ25は,給紙カセット21から給紙された用紙の裏面(裏紙であれば既印刷面)の画像中に,例えば図3に示すようなマークQがあるか否かを検出するためのものである。本形態のカラープリンタ1は,後述するように,定着の程度を少なくとも2段階に選択できるものである。例えば,新しい用紙の片面に機密情報を含む画像を印刷する場合には,通常より弱い程度の定着を選択することができる。この通常より弱い程度の定着が選択された場合には,画像にこのマークQを添付して印刷する。すなわち,マークQが添付されている画像は,このカラープリンタ1(あるいは同種のもの)によって,弱い定着程度で形成された画像なのである。
【0023】
本形態のカラープリンタ1によって印字されたマークQは,図示のように,画像情報の印字範囲Rより外側にはみ出した位置にある。そこで,各反射型光学センサ26は,通紙中の用紙Pについて画像情報の印字範囲Rより,通紙方向に対して幅方向に外側の画像を読み取るように配置されている。両側に配置しているのは,印字されるマークQは1箇所のみであっても,用紙Pの置き方により,いずれの側にマークがあるかはわからないからである。
【0024】
従って,給紙カセット21から給紙された用紙は,図2中矢印方向へ給紙される途上で,センサ25によってその裏面の画像の一部が読み取られる。そして,マークQの有無が検出される。本形態では,このセンサ25の結果に基づいて,その裏面が弱定着された画像であるか否か,すなわち機密情報を含むものであるか否かを判定することができる。弱定着された画像は,後述する画像攪乱処理によって,容易に読み取りにくくすることができる。
【0025】
いずれの給紙箇所から給紙された場合でも,用紙は給紙部20から図1中で上向きに運ばれ,トナー像形成部10に至る。ここで,中間転写ベルト11と2次転写部15との間を通過しつつ,トナー像が転写される。トナー像は,用紙のうち中間転写ベルト11に接する側の面(図中で左側の面)に転写される。トナー像が転写された用紙はさらに上向きに運ばれ,定着部30に至る。
【0026】
定着部30は,図4に示すように,加熱ローラ31と加圧ローラ32とを有しているものである。加熱ローラ31は,その内部に発熱体33を有しているものであり,その回転軸の位置はハウジング等に固定されている。加圧ローラ32は,加熱ローラ31と平行に配置されるとともに,その回転軸が加熱ローラ31へ向けて圧接されているものである。加圧ローラ32の外周面は,例えば,発泡弾性体で形成されている。そして,加熱ローラ31と加圧ローラ32とが圧接されることにより,2つのローラの間に定着ニップが形成されるようになっている。
【0027】
定着部30は,図1に示すように,これらのローラ31,32の間のニップにトナー像を載置している用紙を通過させ,その通過中に,用紙を加熱するとともに加圧するものである。それによって,トナー像を形成しているトナーを溶融させて用紙に定着させる。本形態では,加熱は加熱ローラ31のみにて行い,加圧ローラ32では行わない。そのため,加熱ローラ31は,用紙のうちトナー像が載置される側の面,すなわち図中で左側の面に接するように配置されている。また,本形態の加熱ローラ31の発熱体33の温度は,画像形成の条件等に応じて調整可能なものである。
【0028】
さらに本形態の定着部30は,加圧ローラ32の加熱ローラ31へ対する圧接力を調節できるものである。そのために,図4に示すように,圧接力を調節するための構成が設けられている。つまり,加圧ローラ32の両端部にそれぞれ,カム35,バネ36,軸受け37が設けられている。カム35は,駆動軸35aを有し,回転駆動を受けるようになっている。また,軸受け37は,回転軸37aを有し,ハウジングの一部等に,回転可能に取り付けられている。
【0029】
バネ36は,図4に示すように,カム35の外周の一箇所と,軸受け37の外周の一箇所との間に取り付けられている。このバネ36は,引っ張りバネである。従って,加圧ローラ32は,軸受け37を介して図中左向きに付勢されている。この付勢力の大きさは,カム35の回転位置によって調整できる。これにより,定着処理中には加圧ローラ32は加熱ローラ31へ向かって圧接されているとともに,その圧接力は,カム35の回転位置によって調整することが出来る。
【0030】
定着部30によってトナー像が定着された用紙は,図1中で定着部30の上方に配置されている排出部40に向かって搬送される。排出部40は,排出ローラ対41と排出トレイ42とを有している。この排出ローラ対41は,正逆いずれの向きにも回転させることができるものである。従って,排出ローラ対41に挟まれた用紙は,図中左向きに運ばれて排出トレイ42へ排出されるか,あるいは逆に,図中右向きに運ばれて内部へ引き込まれる。この逆向きの搬送は,機密情報が印刷された用紙を裏紙として使用した場合に利用される。また,両面印刷の場合に,その用紙の裏面にさらに印刷を行うためにも使用される。
【0031】
さらに本形態のカラープリンタ1は,各部を制御するための制御部50を有している。制御部50は,通常の画像形成のための各部の制御に加え,特に機密情報を含む画像を取り扱う場合に適した各種の制御を行うものである。そのような制御として,本形態の制御部50は,(a)弱定着による画像形成処理と,(b)画像攪乱処理とを行うことができるものである。
【0032】
(a)弱定着による画像形成処理
この処理は,新品の用紙(白紙)の片面に機密情報を含む画像を印刷する場合に選択されるものである。この処理が選択されると,画像中にマークQ(図3参照)を付加するとともに,定着程度が通常より弱い弱定着設定での定着を行う。弱定着設定での定着を行うには,例えば,低圧接力での定着または低温での定着とすることにより実現可能である。定着圧接力は,カム35の回転角度によって調整できる。定着温度は,発熱体33の温度設定により調整できる。
【0033】
このように弱い定着程度での画像形成を行った画像は,通常のものよりやや剥がれやすい状態となっている。そのため,この画像に対して(b)画像攪乱処理を行えば,ほとんど読みとれない状態まで攪乱することができる。それでも,例えば手で擦った程度ではとれない程度に定着される。なお,マークQの付加方法としては,トナー像を形成するときに画像に付加しておくか,または,スタンプ装置等を用いて後処理として付加するものであってもよい。
【0034】
(b)画像攪乱処理
この処理は,裏紙への印刷であって,その裏面の画像に機密情報が含まれている用紙への印刷の場合に選択されるものである。この処理が選択されると,定着部30の温度設定を通常よりも高温にするとともに,既に印刷済みの面を加熱ローラ31側へ向けて定着部30に通す。例えば,表面への今回の画像形成が終了した後,その用紙を再び引き込み,裏返して定着部30に通す。これにより,裏面の画像を溶融あるいはオフセットさせるので,裏面の画像を読み取りにくくすることができる。特に,(a)の弱定着がなされた画像では,ほとんど読みとれない状態とすることができる。なお,先に裏面の攪乱処理を行ってから,表面の印刷を行うようにしてもよい。
【0035】
さらに,本形態のカラープリンタ1は,ユーザによる指示入力を受けるための操作パネル60を有している。操作パネル60は,図5に示すように,キー入力部61とタッチパネル62とを有している。タッチパネル62は,印刷用紙を供給させる箇所の選択や,印刷のための各種の詳細な設定を行うためのものである。本形態ではさらに,裏紙を使用するための各種の指示入力ができるようになっている。例えば,使用する用紙が裏紙である場合の指示,裏画像が機密情報を含むものである場合の指示,これから印刷する画像に機密情報が含まれている場合の指示等を行うことができる。また,カラープリンタ1の給紙部20のうち特定の箇所を裏紙専用として使用するための設定や,後述する機密裏紙専用カセットの設定等を行うことができる。
【0036】
なお,これから印刷する画像に機密情報が含まれているか否かの判断方法としては,操作パネル60によってユーザが直接指示したか否かによる以外の方法もある。例えば,コンピュータ等からデータを送信し,カラープリンタ1を出力装置として使用する場合には,機密であることを示す情報を付加したデータを送信させるようにしてもよい。あるいは,カラープリンタ1に対して,あらかじめ機密であることを示すキーワードまたは符号等を登録できるものとしてもよい。そのようなものであれば,画像データ中にそのキーワードまたは符号等が含まれている場合には,その画像には機密情報が含まれていると判断することができる。
【0037】
次に,制御部50による定着制御について,図6のフローチャート図を参照して説明する。ここでは,給紙カセット21を裏紙専用のカセットとして使用するものとする。すなわち,給紙カセット21から給紙される用紙は裏紙であり,初めに給紙される面は,その白紙側の面である。また,この給紙カセット21に載置される用紙としては,本形態のカラープリンタ1で機密情報を含む画像が形成された用紙の裏紙を想定している。
【0038】
本形態のカラープリンタ1は,図6に示すように,ユーザから印刷指示を受けると,まず,用紙の供給元として給紙カセット21が選択されているかどうかを判断する(S101)。そして,給紙カセット21以外の箇所からの給紙が選択されている場合は(S101:No),S102へ進む。この場合には裏面についての特段の処理は行わない。あるいは,給紙カセット21からの給紙が選択されていれば(S101:Yes),S103へ進む。
【0039】
S102では,これから印刷する画像データに機密情報が含まれているかどうかの情報を受け,画像形成の条件を設定する。機密情報が含まれていると判断される場合には(S102:Yes),(a)弱定着による画像形成処理を行う設定とする。ここでは,低定着圧による定着を行う(S104)。すなわち,カム35を回転させ,バネ36による付勢力をより小さくなるようにする。これにより,定着ニップでの定着圧は通常より小さい状態となるので,定着の程度は弱いものとなる。なおこの場合には,カラープリンタ1は,図3に示したマークQを自動的に添付して印刷する。
【0040】
S102において,機密情報が含まれていないと判断される場合には(S102:No),通常の設定による画像形成を行う(S105)。この場合には,確実な定着が行われ,より高画質な画像が得られる。マークQの付加も行わない。
【0041】
一方,給紙カセット21からの給紙が選択されている場合には(S101:Yes),給紙カセット21から1枚の用紙を引き出しつつ,その裏面にマークQがあるかどうかをセンサ25によって検出する(S103)。そして,マークQが検出された場合は(S103:Yes),その用紙はこのカラープリンタ1または同種のものによって弱定着設定で印刷されたものである。すなわち,上記のS104の工程によって画像形成されたものであり,機密情報が含まれていると考えられる。
【0042】
そこで,裏面の画像を読みとれないものとするために,裏面の画像に対して(b)画像攪乱処理を行う裏攪乱設定とする(S106)。この設定での画像形成を行う場合には,本形態のカラープリンタ1は,以下の手順で印刷を行う。まず今回印刷しようとする画像を表面(白紙面)に通常通りに印刷する。
【0043】
その用紙が,排紙部40へ到達したら,排出ローラ対41を逆回転させて両面印刷用の経路へと引き込む。そして,裏面にはトナー像を形成することなく,そのまま定着部30まで搬送する。この状態では,裏面(初回の印刷面であり,マークQが付加されている)が,加熱ローラ31に面する側に配置されている。制御部50は,加熱ローラ31の発熱体33の温度を通常より高温に設定して,用紙Pを定着ニップに通す。この高温処理により,裏面の印刷画像が溶融するとともに,加熱ローラ31へとオフセットされる。従って,裏面の画像は攪乱され,読み取れないものとなる。なお,この画像攪乱処理の後では,定着ローラ31をクリーニングするようにするとよい。
【0044】
通常印刷された用紙や他のプリンタによって印刷された用紙等が給紙カセット21中に紛れ込んでいた場合には,その裏面にマークQが検出されないので,S103でNoとなる。この用紙の画像は,本形態の弱定着程度での定着が行われたものではない。そのため,本形態の裏攪乱設定によっても,確実に読めなくできるとは言い切れない。もしこの用紙が,その裏面の画像に機密情報を含むものであると,その情報の流出のおそれがなくはない。そこで,本形態では,マークQを含まない用紙が給紙カセット21から搬送された場合には,画像形成を行わずに排出する(S107)。なおこの場合には,操作パネル60に警告メッセージを表示するとよい。これで,本形態の定着処理についての説明を終了する。
【0045】
なお,裏面の画像に機密情報を含まない裏紙を使用する場合には,例えば手差しトレイ23から挿入するようにすればよい。この場合には,印刷する画像の内容にかかわらず,通常の画像形成を行えばよい。また,マークの有無にかかわらず,操作パネル60からの指示によって,個々の用紙に対して画像攪乱処理を選択できるようにしてもよい。そのようにすれば,例えば機密情報を含む裏紙を手差しトレイ23等から供給させ,その裏面の画像を攪乱させて使用することができる。
【0046】
また,給紙部20の一部の箇所を機密裏紙専用のカセットとして設定できるようにしてもよい。このカセットからの給紙が選択された場合は,裏紙であると判断するとともに,裏面の画像が機密情報を含むものであると判断する。すなわち,必ず裏面の画像攪乱処理を行うものとする。この場合には,先に画像攪乱処理を行うようにすることもできる。そのために,このカセットへは裏紙を裏向きにしてセットしておくものとし,このカセットからは,まずその裏面が給紙されるようにしておく。そして,先に画像攪乱処理を行ってから,用紙を裏向きにして,トナー像の形成を行うのである。このようにしても,裏面の画像を攪乱させて,機密情報の漏洩を防止できる。
【0047】
次に,本形態のカラープリンタ1によって,新用紙または裏紙への印刷を行い,その読みやすさを比較する実験を行った。この実験では,トナーの種類をA,B,Cの3種類に変えて,3通りの実験を行った。それぞれの実験では,新しい用紙に機密情報を印刷する場合(図6のフローチャートでS104に相当),新しい用紙に機密情報ではないものを印刷する場合(同S105に相当),機密情報を含む用紙を裏紙として使用する場合(同S106に相当)の3種類の印刷を行った。
【0048】
そして,それぞれの印刷における定着条件として,「定着温度」と「定着圧接力」を以下の表1〜3のように設定した。なお,「新用紙・非機密」の欄に示した数値が,そのトナーに最適の定着条件であり,通常用いられている条件である。そして,各印刷結果を目視で観察し,読みやすいと判断できるものは○,読みやすいとは言えないものは×とした。
【0049】
この実験の結果を以下の表1〜3に示す。各表はそれぞれトナーの種類ごとにまとめたものである。なお,「裏紙・機密」の用紙としては,表中の「新用紙・機密」の条件で印刷した用紙の裏面を使用した。そして,この場合には,その表面(新たに印刷する面)への印刷と,裏面(既に印刷されている面)の画像とのそれぞれについて,読みやすさを検証した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
この結果から,本形態の画像攪乱処理によって,裏面の裏側に印刷されていた機密情報を,適切に読めなくできることが確認できた。なお,本形態による画像攪乱処理では,画像が完全に消えるものではない。しかしそれでも,読み取ることができない程度に,画像を乱すことができるので,機密情報の流出は,安全に防止できる。
【0054】
以上詳細に説明したように,本形態のカラープリンタ1によれば,新しい用紙に機密情報を印刷するときには,低定着程度での定着を行う。そして,機密情報が印刷された用紙を裏紙として使用する場合には,裏面に対し,定着温度を通常より高く設定した定着処理である画像攪乱処理を実行する。これにより,既印刷情報がオフセットあるいは溶融するので,読み取ることができない程度に画像を乱すことができる。従って,専用の部材を追加することなく,裏面の情報を読めなくすることができ,裏紙として使用しても情報の流出を防止できる。
【0055】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,給紙部としてさらに多くの給紙カセット等を有するものであっても構わない。また,圧接力を調節するための機構は,上記のものに限らない。また,マークQの有無にかかわらず,給紙カセット21から給紙される用紙の裏面はすべて,画像攪乱処理を行うものとしてもよい。低定着程度での印字でなくても,定着部30での高温処理を行うことにより,かなりの程度まで読みにくくすることができるからである。また,裏面の画像を検出するセンサとして,より広範囲をより高精度に読み取ることのできるものを用いれば,裏面の画像そのものから機密情報の有無を判断することもできる。例えば,機密であることを示すキーワードまたは符号等が画像中に含まれていたら,その裏面の画像を攪乱するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 カラープリンタ
10 トナー像形成部
20 給紙部
21,22 給紙カセット
25 センサ
30 定着部
31 加熱ローラ
33 発熱体
35 カム
36 バネ
40 排出部
41 排出ローラ対
50 制御部
60 操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を供給する用紙供給部と,前記用紙供給部によって供給された用紙にトナー像を形成するトナー像形成部と,前記トナー像形成部によって形成されたトナー像を加熱しつつ圧接することにより用紙に定着させる定着部とを有する画像形成装置において,
前記用紙供給部から前記トナー像形成部に供給される用紙が裏紙であるか否かを判断する裏紙判断部と,
前記定着部を通過した用紙を裏返して再び前記トナー像形成部へと供給する裏供給部と,
前記定着部の温度を制御する温度制御部と,
前記温度制御部により前記定着部の温度を通常の画像形成時の定着温度よりも高い温度に調整した状態で用紙の印刷済みの面を前記定着部に通すことにより,印刷済みの画像を攪乱する画像攪乱処理を行う裏攪乱部とを有し,
前記裏攪乱部は,
前記裏紙判断部によって裏紙であると判断された場合には,当該用紙の表面への前記トナー像形成部によるトナー像形成および前記定着部によるそのトナー像の定着の前または後に,当該用紙の裏面に前記画像攪乱処理を行い,
前記裏紙判断部によって裏紙でないと判断された場合には,前記画像攪乱処理を行わないことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記定着部の定着の程度として,通常の第1定着程度とそれより弱い第2定着程度との2段階のうちからいずれかを選択する定着程度選択部と,
形成する画像データに機密情報が含まれているか否かを判定するデータ判定部とを有し,
前記定着程度選択部は,
前記データ判定部によって機密情報が含まれていると判断された画像データを新品の用紙の片面に形成する場合に第2定着程度を選択し,それ以外の場合に第1定着程度を選択することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において,
前記第2定着程度は,前記第1定着程度に比較して低圧接力または低温での定着であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の画像形成装置において,
前記定着程度選択部によって第2定着程度が選択されているときに形成される画像に,その画像が第2定着程度で形成されたことを示すマークを付加するマーク付加部と,
前記裏紙判断部によって裏紙であると判断された用紙の裏面の画像に前記マークが含まれているか否かを検出するセンサと,
前記裏紙判断部によって裏紙であると判断された用紙の裏面の画像に機密情報が含まれているか否かを判別する機密判別部と,
前記用紙供給部から供給される用紙のうち,前記機密判別部によって裏面の画像に機密情報が含まれると判別され,かつ,前記センサによって前記マークが検出されなかった用紙を,トナー像形成に供することなく排出させ,それ以外の用紙についてはトナー像形成を許容するトナー像形成拒否部とを有し,
前記裏攪乱部は,前記裏紙判断部によって裏紙であると判断された用紙のうち,前記センサによって前記マークが検出された用紙のみについて前記画像攪乱処理を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
前記裏紙判断部によって裏紙であると判断された用紙の裏面の画像に機密情報が含まれているか否かを判別する機密判別部を有し,
前記裏攪乱部は,
当該用紙の表面への前記トナー像形成部によるトナー像形成および前記定着部によるそのトナー像の定着後に,前記裏供給部によって当該用紙の裏面を前記定着部へ供給させて,前記画像攪乱処理を行わせるものであるとともに,
前記機密判別部によって機密情報が含まれていると判別された場合に限り,前記画像攪乱処理を行わせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
前記用紙供給部は複数箇所からの供給が可能なものであり,
前記複数箇所のうちの一部の箇所を,機密情報が含まれている裏紙を裏向きにしてセットされる箇所である機密裏紙専用カセットとして設定する機密カセット設定部を有し,
前記裏攪乱部は,
前記機密裏紙専用カセットから供給された用紙について,まず当該用紙の裏面に前記画像攪乱処理を行い,その後に前記裏供給部によって当該用紙の表面を前記トナー像形成部へ供給させて,当該用紙の表面への前記トナー像形成部によるトナー像形成および前記定着部によるそのトナー像の定着を行わせるものであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−7898(P2011−7898A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149385(P2009−149385)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】