説明

画像形成装置

【課題】複数の感光体から中間転写体に順番に一次転写された後に被記録材に二次転写される前のトナー像におけるトナー帯電量のばらつきを抑制し、その二次転写を安定して行える画像形成装置を提供する。
【解決手段】複数の感光体と、各感光体に形成される静電潜像をトナー像として形成する複数の現像装置と、各感光体を通過して回転するよう配置される中間転写体と、各感光体に形成される各トナー像を中間転写体に重ね合わせるよう転写させる複数の一次転写装置と、中間転写体に転写されたトナー像を被記録材に転写する二次転写装置と、各一次転写装置に一次転写バイアスをそれぞれ印加するバイアス印加手段と、バイアス印加手段から各一次転写装置にそれぞれ印加する各一次転写バイアスを、各感光体から中間転写体に転写されて二次転写される前の各トナー像におけるトナー帯電量が予め設定される範囲に収まるよう補正する制御手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式等を利用して現像剤としてのトナー(着色等がなされた微粉体)で構成される画像を形成する画像形成装置としては、例えば、間隔をあけて配置される複数の作像装置における各感光体にトナーで現像されるトナー像を形成し、その各感光体を通過して回転するよう配置されるベルト形態等の中間転写体に重ね合わせるよう順番に一次転写した後、その中間転写体に転写された多重のトナー像を記録用紙等の被記録材に二次転写する形式の画像形成装置がある。このときの一次転写や二次転写は、一次転写装置と感光体との間や二次転写装置と中間転写体との間に、一次転写バイアス又は二次転写バイアスをそれぞれ印加した状態で行わる。
【0003】
このような形式の画像形成装置では、その画像形成動作のときに、中間転写体の回転方向の上流側に配置される作像装置の感光体から中間転写体に一次転写されるトナー像が、その回転方向の下流側に配置される他の作像装置における感光体と一次転写装置の間(一次転写位置)を通過することになる。また、複数の作像装置における各現像装置のトナーの消費量は互いに異なることが多い。
【0004】
この際、中間転写体に一次転写されたトナー像は、その中間転写体の回転方向下流側に存在する各一次転写位置において印加される一次転写バイアスで形成された転写電界のなかをそれぞれ通過することにより、(当該各一次転写位置でのトナー像の一次転写の有無にかかわらず)電荷が付与されてトナー帯電量が変動する。一方、中間転写体の回転方向の最も下流側に配置される作像装置の感光体から一次転写されるトナー像は、他の一次転写位置を通過しないため、一次転写位置を通過することに伴う電荷の付与によるトナー帯電量の変動が小さい。これ以外にも、一次転写される前のトナー像の帯電量については、そのトナーの消費量の多少によって変動することがある。
【0005】
従来においても、この種の画像形成装置として例えば、以下の画像形成装置が知られている。すなわち、像担持体と、像担持体上に画像を形成するための露光手段と現像手段と、像担持体上に形成された基準トナーパターン像の付着量を検出するトナー付着量検出手段と、帯電量を検出するトナー帯電量検出手段と、トナー付着量検出手段及びトナー帯電量検出手段の両方の検出結果に基づいて転写電界強度を制御する制御手段を備えた画像形成装置である(特許文献1)。上記トナー付着量検出手段とトナー帯電量検出手段については、トナーの中間転写体上への転写によって、その中間転写体上に付着したトナーパターン像の付着量と帯電量をそれぞれ検出する場合も含まれるとされている。
特許文献1には、この画像形成装置によれば、画像の乱れを生じない最適な転写電界強度での転写が行えることが示されている。
【0006】
この他にも、以下の画像形成装置が知られている。すなわち、単色の現像剤を収容する現像器を各色ごとに備え、その各色の現像器が供給する現像剤を用いて、周方向に移動する感光体上に形成した潜像を可視像化し、その可視像である各色の現像剤像を感光体から被転写体上に順次電気的に転写して重ね合わせることにより、被転写体上に多色カラーの現像剤像を形成する画像形成装置において、転写されるべき複数色の現像剤像のうちの一部の色の現像剤像が転写されている状態の被転写体について、他の色の現像剤像が転写される際における被転写体上の現像剤像の表面電位が、その被転写体に転写されている現像剤の感光体上への逆転写が抑制される逆転写抑制範囲内となるよう構成された画像形成装置である(特許文献2)。
特許文献2には、この画像形成装置によれば、被転写体上から感光体上への逆転写を抑制できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−70251号公報
【特許文献2】特開2005−1078385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、複数の感光体から中間転写体に順番に一次転写された後に被記録材に二次転写される前のトナー像におけるトナー帯電量のばらつきを抑制し、その二次転写を安定して行うことができる画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明(A1)の画像形成装置は、
間隔をあけて配置される複数の感光体と、
前記各感光体との間に現像バイアスが印加された状態で、当該各感光体に帯電後に形成される静電潜像を異なるトナーによりそれぞれ現像して個別のトナー像として形成する複数の現像装置と、
前記各感光体を通過して回転するよう配置される中間転写体と、
前記各感光体との間に一次転写バイアスが印加された状態で、当該各感光体に形成される各トナー像を前記中間転写体に重ね合わせるよう転写させる複数の一次転写装置と、
前記中間転写体との間に二次転写バイアスが印加された状態で、当該中間転写体に転写されたトナー像を被記録材に転写する二次転写装置と、
前記各一次転写装置に一次転写バイアスをそれぞれ印加するバイアス印加手段と、
前記バイアス印加手段から前記各一次転写装置にそれぞれ印加する各一次転写バイアスを、前記各感光体から前記中間転写体に転写されて二次転写される前の各トナー像におけるトナー帯電量が予め設定される範囲に収まるよう補正する制御手段と
を有するものである。
【0010】
この発明(A2)の画像形成装置は、上記発明A1の画像形成装置において、前記制御手段が、前記各感光体に形成される各トナー像の一次転写前のトナー帯電量と前記中間転写体に転写されて二次転写される前における各トナー像の一次転写後のトナー帯電量をそれぞれ算出し、その一次転写前のトナー帯電量及び一次転写後のトナー帯電量の情報に基づいて前記各一次転写バイアスの補正量を選定するものである。
【0011】
この発明(A3)の画像形成装置は、上記発明A2の画像形成装置において、
前記各感光体から前記中間転写体に転写される検出用の各トナー像のトナー付着量をそれぞれ検出する付着量検出手段と、
前記各感光体から前記中間転写体に転写される検出用の各トナー像の表面電位をそれぞれ検出する表面電位検出手段を備え、
前記制御手段が、
前記一次転写前のトナー帯電量として、前記各感光体の感光層の厚さ、前記各静電潜像の電位及び前記各現像バイアスの電位の情報と前記付着量検出手段の検出情報を利用して第一の比電荷量を算出し、
前記一次転写後の帯電量として、前記付着量検出手段の検出情報と前記表面電位検出手段の検出情報を利用して第二の比電荷量を算出し、
前記第一の比電荷量と前記第二の比電荷量を予め設定する各閾値と比べて分類した結果の組み合わせから得られる前記各一次転写バイアスの共通する補正量を決定し、その共通する補正量を前記各一次転写装置の位置の違い及び当該各一次転写バイアスの基準範囲に収まることを考慮して調整した前記各一次転写バイアスの最終補正量をそれぞれ求めるものである。
【発明の効果】
【0012】
上記発明A1の画像形成装置によれば、その発明の構成を有しない場合に比べて、複数の感光体から中間転写体に順番に一次転写された後に被記録材に二次転写される前のトナー像におけるトナー帯電量のばらつきを抑制し、その二次転写を安定して行うことができる。
【0013】
上記発明A2の画像形成装置では、その発明の構成を有しない場合に比べて、複数の現像装置における各トナー消費量の一部又は全部が異なることがあっても、複数の感光体から中間転写体に順番に一次転写された後に被記録材に二次転写される前のトナー像におけるトナー帯電量のばらつきを抑制し、その二次転写を安定して行うことができる。
【0014】
上記発明A3の画像形成装置では、その発明の構成を有しない場合に比べて、複数の感光体から中間転写体に順番に一次転写された後に被記録材に二次転写される前のトナー像におけるトナー帯電量のばらつきを確実に抑制し、その二次転写をより安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図2】図1の画像形成装置の要部(1つの作像装置とその周辺部分)を示す説明図である。
【図3】図1の画像形成装置の主な制御部の構成を示す説明図である。
【図4】第一の比電荷量(Q1)を算出する際に用いる要素を概念的に示し、(a)は感光ドラムに形成された検出用トナー像と一部の要素を示す断面説明図であり、(b)は感光ドラム上の電位関係と一部の要素を示す概念図である。
【図5】第二の比電荷量(Q2)を算出する際に用いる要素を主に示す断面説明図である。
【図6】第一の比電荷量及び第二の比電荷量と一次転写バイアスの共通の補正量との関係を示す図表である。
【図7】第一の比電荷量及び第二の比電荷量に応じた一次転写バイアスの共通の補正量を決定するときのフローチャートである。
【図8】各作像装置(一次転写位置)の位置の違い及び各一次転写バイアスの基準範囲に収まることを考慮して、各一次転写バイアスの最終補正量を決定するときのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」という)について添付の図面を参照しながら説明する。
【0017】
[実施の形態1]
図1は実施の形態1に係る画像形成装置の概要を示し、図2はその画像形成装置の要部(1つの作像装置とその周辺部分)を示し、図3はその画像形成装置の主な制御部の構成を示している。
【0018】
実施の形態1に係る画像形成装置1は、例えば、カラープリンタとして構成されたものである。この画像形成装置1は、支持部材、外装カバー等で形成される不図示の筐体の内部空間に、公知の電子写真方式、静電記録方式等の画像記録方式を利用して入力画像情報に基づいて現像剤としてのトナーで現像されるトナー像を形成する複数の作像装置2と、作像装置2で形成されたトナー像を保持して最終的に被記録材としての記録用紙9に転写する中間転写装置3と、中間転写装置3に供給すべき所要の記録用紙9を収容して搬送する給紙装置4と、中間転写装置3でトナー像が転写された記録用紙9を通過させてトナー像の定着を行う定着装置5等が設置されている。図中の矢付き一点鎖線は記録用紙9の主な搬送経路を示す。
【0019】
作像装置2は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(黒:K)の4色のトナー像を専用に形成することができる4つの作像装置(2Y,2M,2C,2K)で構成されている。4つの作像装置2(Y,M,C,K)は、直列に並べた状態となるよう配置されている。また、各作像装置2(Y,M,C,K)は、以下に示すようにほぼ共通した構成のものである。
【0020】
各作像装置2(Y,M,C,K)は、図1や図2に示すように、回転する感光ドラム21を備えており、この感光ドラム21の周囲に、次のような各装置が主に配置されている。主な装置とは、感光ドラム21の像保持面(トナー像を保持する表面部分)を所要の電位に帯電させる帯電装置22と、感光ドラム21の帯電された像保持面に画像情報(信号)に基づく光を照射して電位差のある(各色用の)静電潜像を形成する露光装置23と、その静電潜像を対応する色(Y,M,C,K)のトナーで現像して可視像であるトナー像とする現像装置24(Y,M,C,K)と、そのトナー像を中間転写装置3(の中間転写ベルト)に転写する一次転写装置25と、転写後の感光ドラム12の像保持面に残留して付着するトナー等の付着物をかき取って除去するドラム清掃装置26とである。
【0021】
感光ドラム21は、図2に示すように、接地処理される円筒又は円柱状の基材21aの周面に、感光材料からなる感光層(光導電性層)21bを有する像保持面を形成したものであり、図示しない回転駆動装置から動力を受けて矢印Aで示す方向に回転するようになっている。帯電装置22としては、コロナ放電器を用いた非接触型の帯電装置や帯電ロール等の接触部材を備えた接触型の帯電装置である。帯電バイアスとしては、現像装置24が反転現像を行うものである場合、その現像装置から供給されるトナーの帯電極性と同じ極性の電圧(又は電流)が印加される。
【0022】
露光装置23は、画像形成装置1に入力される画像情報に応じて構成される光Bmを、帯電された後の感光ドラム21の像保持面に対して照射して静電潜像を形成するものである。露光装置23としては、半導体レーザとポリゴンミラー等の光学部品を用いて構成される走査型のものや、発光ダイオードと光学部品等を用いて構成される非走査型の露光装置が使用される。また、露光装置23は、この実施の形態では4つの作像装置2に対して個別に独立した構造のものを使用しているが、これ以外にも、例えば複数の作像装置2に対して1つに筐体に集約して必要な数の光を出光させるように構成したものなどを使用することもできる。
【0023】
現像装置24は、図2に示すように、現像剤(例えば非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤など)を収容する現像剤収容器を有し、その現像剤収容器に収容されている現像剤を回転しながら保持して感光ドラム21と接近して対向する現像領域に搬送する現像ロール24aや、その収容されている現像剤を回転して攪拌しながら現像ロール24aに搬送する攪拌搬送部材24bや、現像ロール24aに保持される現像剤の量(層厚)を規制する層厚規制部材24cを有している。また、現像装置24は、その現像ロール24aと感光ドラム21の間に現像バイアス電源装置11(図3)から現像バイアスが印加されるとともに、その現像ロール24a及び攪拌搬送部材24bが所要の方向に回転させられる。現像剤のトナーは、現像剤収容器内において攪拌搬送部材24bにより攪拌されることでキャリアと擦れ合って所要の極性(実施の形態1ではマイナス極性)に摩擦帯電される。現像ロール24aは、回転する非磁性の円筒体と、円筒体の内部空間に固定した状態で設置され、所要の磁極が配置されたマグネットロールとで構成されている。現像バイアスとしては、交流が重畳された直流の電圧(又は電流)が印加される。
【0024】
一次転写装置25は、感光ドラム21の像保持面に後記の中間転写ベルト(31)を介して接触して回転するとともに一次転写バイアスが印加される一次転写ロールを備えた接触型の転写装置である。一次転写バイアスは、一次転写バイアス電源装置12(図3)から一次転写ロールと感光ドラム21の間にそれぞれ印加され、例えばトナーの帯電極性と逆極性の直流の電流(又は電圧)が一次転写バイアスとして印加される。ドラム清掃装置26は、例えば、感光ドラム21の像保持面に所要の角度で接触するように配置される清掃ブレード26aや、感光ドラム21の像保持面に接触しながら回転するよう配置される清掃回転ブラシ26bを備えている。
【0025】
中間転写装置3は、図1に示すように、直列に並べた状態の各作像装置2(Y,M,C,K)の下方の位置に存在するように配置されている。この中間転写装置3は、感光ドラム21と一次転写装置25(一次転写ロール)の間となる一次転写位置を通過しながら矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト31と、中間転写ベルト31をその内面から所望の状態に保持して回転自在に支持する複数の支持ロール32a〜32fと、支持ロール32eに支持されている中間転写ベルト31に所定の圧力で接触して回転する二次転写ロール34と、二次転写ロール34を通過した後に中間転写ベルト31に残留して付着するトナー等を除去するベルト清掃装置36とで主に構成されている。
【0026】
中間転写ベルト31としては、例えばポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂からなる無端状のベルト基材に表面抵抗層等を形成したものが使用される。支持ロール32aは駆動ロールとして、支持ロール32cは張力付与ロールとして、支持ロール32eは二次転写対向ロールとしてそれぞれ構成されている。
【0027】
二次転写装置35は、二次転写対向ロールとしての支持ロール32eと二次転写ロール35とで構成されている。二次転写装置35では、二次転写バイアス電源装置13(図3)から給電ロール7を介して支持ロール32eと中間転写ベルト31の間に二次転写バイアスが印加される。二次転写バイアスとしては、トナーの帯電極性とは同極性の直流の電圧又は電流が所要の時期に印加される。二次転写バイアスについては、二次転写ロール35と中間転写ベルト31の間に、トナーの帯電極性とは逆極性の直流の電圧又は電流を印加するようにしても構わない。
【0028】
ベルト清掃装置36は、中間転写ベルト31の支持ロール32aに支持されている外周面部分に所要の角度で接触するように配置される清掃ブレード36aや、中間転写ベルト31の像保持面に接触しながら回転するよう配置される清掃回転ブラシ36bを備えている。
【0029】
給紙装置4は、中間転写装置3の下方側の位置に存在するように配置される。給紙装置4は、筐体の正面(使用者が操作時に向き合う側面)側に引き出すことができるように取り付けられ、所望のサイズ、種類等の記録用紙9を積載した状態で収容する用紙収容体41と、用紙収容体41から記録用紙9を1枚ずつ送り出す送出装置42とで主に構成されている。実施の形態1では、用紙収容体41として上面が開口した箱状のものを使用しており、その各用紙収容体41に異なるサイズ、種類等の記録用紙9を配分して収容するとともに所要の記録用紙9を収容された用紙収容体41から選択して送り出すことができるようになっている。
【0030】
給紙装置4の各用紙収容体41における送出装置42と中間転写装置3の二次転写位置との間には、複数の搬送ロール対45a,45b,45c,…と、搬送ガイド材等で構成される給紙用の用紙搬送路45が設けられている。搬送ロール対45c、記録用紙9の搬送時期や搬送状態を調整する等の機能を有する送り込みロール対として構成されている。給紙装置4の各用紙収容体41から送り出された記録用紙9は、給紙用の用紙搬送路45を経由して、中間転写装置3の中間転写ベルト31と二次転写ロール35の間となる二次転写位置まで搬送される。
【0031】
定着装置5は、中間転写装置3の下方の片側(ベルト清掃装置36の配置側)に配置されている。定着装置5は、筐体51の内部に、矢印で示す方向に回転するとともに表面温度が所定の温度に保持されるように加熱手段によって加熱される加熱ロール52と、この加熱ロール52の軸方向にほぼ沿う状態で所定の圧力で接触して従動回転するロール形式、ベルト形式等の加圧用回転体53とを設置したものである。二次転写位置と定着装置5との間には、例えば、二次転写後に記録用紙9を定着装置5まで搬送するベルト形式の用紙搬送装置(不図示)が配置されている。
【0032】
また、画像形成装置1は、前記4つの作像装置2(Y,M,C,K)のすべてを使用して形成する4色(Y,M,C,K)のトナー像で構成されるフルカラー画像を形成する作像パターン(フルカラーモード)と、4つの作像装置2(Y,M,C,K)の1つを使用して形成する1色のトナー像で構成される単色画像を形成する作像パターン(単色モード)を有している。実施の形態1における単色モードは、ブラック色(K)のトナー像で構成される白黒画像を形成する白黒モードとして設定されている。
【0033】
次に、この画像形成装置1による基本的な画像形成動作について説明する。
【0034】
はじめに、フルカラーモードのときの画像形成動作では、まず、4つの作像装置2(Y,M,C,K)において、各感光ドラム21が矢印Aの方向に回転し、各帯電装置22がその各感光ドラム21の像保持面を所要の極性(実施の形態1ではマイナス極性)及び電位にそれぞれ帯電させる。次いで、露光装置23は、帯電後の感光ドラム21の像保持面に対し、各色成分(Y,M,C,K)に分解された画像信号に基づく光Bmを照射して露光を行い、所要の電位差で構成される各色成分の静電潜像をそれぞれ形成する。
【0035】
次いで、各現像装置24は、感光ドラム21に形成された各色成分の静電潜像に対し、所要の極性(マイナス極性)に帯電された対応する色(Y,M,C,K)のトナーを、各現像ロール24aで搬送して供給するとともに、各現像ロール24aと感光ドラム21の間に印加した現像バイアスで形成される現像電界により移行させて静電的に付着させる。これにより、感光ドラム21上の各色成分の静電潜像が、その色成分に対応する色のトナーでそれぞれ現像されてト4色のナー像として顕像化される。
【0036】
続いて、各作像装置2(Y,M,C,K)の一次転写位置において、感光ドラム21上に形成された各色のトナー像が、各一次転写装置25(Y,M,C,K)と各感光ドラム21(Y,M,C,K)との間にそれぞれ印加した一次転写バイアスで形成される一次転写電界により、中間転写装置3の中間転写ベルト31に対して順番に一次転写されて重ね合わされる。これにより、中間転写ベルト31には、ベルト回転方向Bの上流側から下流側にむけて配置される位置に応じて、イエロー(Y)のトナー像、マゼンタ(M)のトナー像、シアン(C)のトナー像及びブラック(K)のトナー像がこの順で重ね合わせられる状態に転写されて保持される。
【0037】
次いで、中間転写装置3は、中間転写ベルト31に一次転写されたトナー像を保持し、そのベルト31の矢印B方向への回転により二次転写位置まで搬送する。そして、その中間転写ベルト31上のトナー像を、二次転写位置において支持ロール32eと中間転写ベルト31の間に印加した二次転写バイアスで形成される二次転写電界により、給紙装置4から給紙用の搬送路45を経由して搬送される記録用紙9に対し一括して移行させて二次転写させる。
【0038】
二次転写が終了した記録用紙9は、中間転写ベルト31から剥離された後に図示しない搬送装置により搬送されて定着装置5に導入される。定着装置5は、未定着のトナー像が転写された記録用紙9を加熱ロール52と加圧用回転体53の接触部を通過させて加熱及び加圧させることで、そのトナー像を形成するトナーを溶融させて用紙9に定着させる。定着が終了した後の記録用紙9は、その片面への画像形成を行うだけの場合には、例えば筐体の外部に排出されて図示しない排出収容部に収容される。
【0039】
以上により、1枚の記録用紙9の片面には、4色のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像が形成される。
【0040】
一方、単色(白黒)モードのときの画像形成動作では、最初に4つの作像装置2(Y,M,C,K)のうちブラック色の作像装置2Kにおいて感光ドラム21に黒色のトナー像が形成される。このとき、作像に関与しない作像装置2(Y,M,C)は、例えば、動作しない状態になり、またその各作像装置2(Y,M,C)の感光ドラム21Y,21M,21Cに接触する位置にある中間転写ベルト31部分が(一次転写装置25も一体で)退避移動して各感光ドラム21Y,21M,21Cと接触しない状態になるよう構成されている。続いて、フルカラーモードのときの画像形成動作と同様に、感光ドラム21K上のトナー像は、中間転写装置3の中間転写ベルト31に一次転写された後に記録用紙9に二次転写され、最後に定着装置5において用紙9に定着される。定着後の記録用紙9は、排出収容部に排出されて収容される。
【0041】
ところで、この画像形成装置1では、画像形成動作を実行するときに、以下の現象が起こる。
【0042】
すなわち、フルカラーモードのように複数の作像装置2から中間転写ベルト31に一次転写が行われる画像形成動作を実行するときには、図1や図3に示すように、中間転写ベルト31の回転方向Bの上流側に配置される作像装置2(Y,M,C)の感光ドラム21から中間転写ベルト31に一次転写されるトナー像が、その回転方向Bの下流側に配置される他の作像装置2(M,C,K)における感光ドラム21(M,C,K)と一次転写装置25(M,C,K)の間(一次転写位置)を通過することになる。
【0043】
この際、中間転写ベルト31に一次転写されたトナー像は、その中間転写ベルト31の回転方向Bの下流側に存在する作像装置2(M,C,K)の各一次転写装置25(M,C,K)において印加される一次転写バイアスで形成された一次転写電界のなかをそれぞれ通過することにより、一次転写バイアスによる電荷が付与されてトナー帯電量が変動する。これに対し、中間転写ベルト31の回転方向Bの最も下流側に配置される作像装置2Kの感光ドラム21Kから一次転写されるトナー像は、他の作像装置2(Y,M,C)の一次転写装置位置を通過しないため、一次転写位置を通過することに伴う電荷の付与によるトナー帯電量の変動が小さくなる。
【0044】
このため、画像形成装置1では、二次転写装置35の二次転写対向ロール32eに同じ二次転写バイアスを印加した状態で二次転写を行った場合、中間転写ベルト31上のトナー像が記録用紙9に安定して転写されない、転写不良が発生することがある。特にフルカラー画像を形成するときには、そのカラー画像の再現性が低下してしまう(例えば色調が安定しない)ことがある。
【0045】
そこで、この画像形成装置1においては、一次転写バイアス電源装置12から各一次転写装置25(Y,M,C,K)にそれぞれ印加する各一次転写バイアスを、各作像装置22(Y,M,C,K)における感光体21(Y,M,C,K)から中間転写ベルト31に転写されて二次転写される前における各トナー像のトナー帯電量が予め設定される範囲に収まるよう補正する制御手段15を設けている。
【0046】
上記トナー像のトナー帯電量の予め設定される範囲とは、画像形成装置1において想定される範囲の二次転写バイアスを印加したときに良好な二次転写を行うことが保証される範囲のものである。このトナー帯電量の好ましい設定範囲は、例えば、15〜80μC/gであり、より好ましくは20〜60μC/gである。二次転写バイアスは、例えば、二次転写位置のシステム抵抗(二次転写対向ロール32e、中間転写ベルト31及び二次転写ロール34によって構成される合成抵抗)と、画像形成装置1内の温度および湿度の条件等から決定される。ちなみに、中間転写ベルト31に一次転写されたトナー像の二次転写がされる前におけるトナー帯電量については、例えば、そのトナー像の表面電位を測定しただけでは正確に得ることが難しい。
【0047】
制御手段15は、中間転写ベルト31に一次転写された後に他の作像装置2における一次転写位置を通過するトナー像を含むトナー像が一次転写される場合に、その中間転写ベルト31に一次転写された各トナー像におけるトナー帯電量のばらつきが所要の範囲に収められるように、一次転写バイアスを補正する。この補正後の一次転写バイアスが印加されて中間転写ベルト31に一次転写された各トナー像は、他の一次転写位置の通過により電荷が付与されることがあっても、そのトナー帯電量が所要の範囲に収まっているものとなる。このため、その一次転写された各トナー像は、二次転写装置35では予め決定された二次転写バイアスの印加により形成される二次転写電界を受けることで、ほぼ同じ転写効率で記録用紙9に安定して二次転写されるようになる。
【0048】
制御手段15は、演算処理装置、記憶素子及び装置、制御装置、入出力装置等で構成されるものであり、その記憶装置に格納される制御プログラム及びデータに基づいて所要の制御動作(主に一次転写バイアスの補正動作)を実行するようになっている。この制御手段15は、少なくとも、現像バイアス電源装置11、一次転写バイアス電源装置12、二次転写バイアス電源装置13等に接続されており、その各電源装置の制御部に印加すべきバイアス電圧(又は電流)に関する制御信号を送信するように接続されている。このような制御手段15は、画像形成装置1の全体の動作を総括して制御する中央制御装置の一部(制御部)として構成するか、あるいは、その中央制御装置とは独立した専用の制御装置として構成される。後者の場合は、専用の制御装置が中央制御装置と情報信号や制御信号のやり取りができるよう接続される。
【0049】
制御装置15による一次転写バイアスの補正動作は、各作像装置2(Y,M,C,K)における感光ドラム21(Y,M,C,K)に形成される各トナー像の一次転写前のトナー帯電量と、中間転写ベルト31に転写されて二次転写される前における各トナー像の一次転写後のトナー帯電量をそれぞれ算出し、その一次転写前のトナー帯電と一次転写後のトナー帯電量の情報に基づいて各一次転写バイアスの補正量を選定するように構成されている。
【0050】
ここで、一次転写前のトナー帯電量を考慮するのは、以下の理由によるものである。つまり、複数の作像装置2(Y,M,C,K)における各現像装置24では、そのトナーの消費量が互いに異なることが多く、これにより、トナー像の帯電量が(同じ画像条件である場合に)一次転写前の段階から異なっていることとなる。しかも、その一次転写前の帯電量が異なったトナー像がそのまま中間転写ベルト31に一次転写されて、その一次転写後における帯電量のばらつきの一要因になっていることもある。このことから、その事情を配慮して一次転写バイアスの補正量を適切に選定するようにするためである。
【0051】
そして、この画像形成装置1は、上記した制御装置15による一次転写バイアスの補正動作を行うために以下のように構成されている。
【0052】
まず、画像形成装置1では、図3等に示すように、各作像装置2(Y,M,C,K)における感光ドラム21(Y,M,C,K)から中間転写ベルト31に一次転写される検出用の各トナー像のトナー付着量をそれぞれ検出する付着量検出手段6と、各感光ドラム21(Y,M,C,K)から中間転写ベルト31に一次転写される検出用の各トナー像の表面電位をそれぞれ検出する表面電位検出手段7を設けている。付着量検出手段6と表面電位検出手段7は、その各検出情報を制御装置15に送信することができるよう接続されている(図3)。
【0053】
また、この画像形成装置1では、制御装置15が、一次転写前のトナー帯電量として、各感光ドラム21(Y,M,C,K)の感光層21bの厚さ(d)、各感光ドラム21(Y,M,C,K)に形成される各静電潜像の電位及び各現像装置24(Y,M,C,K)に印加される各現像バイアスの電位の情報と付着量検出手段6の検出情報を利用して第一の比電荷量(Q1)を算出し、また、一次転写後の帯電量として、付着量検出手段6の検出情報と表面電位検出手段7の検出情報を利用して第二の比電荷量(Q2)を算出するように構成されている。さらに、制御装置15は、第一の比電荷量(Q1)と第二の比電荷量(Q2)を予め設定する各閾値と比べて分類した結果の組み合わせから得られる各一次転写バイアスの共通する補正量Aを決定した後、その共通する補正量Aを各一次転写装置25(Y,M,C,K)の位置の違い及び当該各一次転写バイアスの基準範囲に収まることを考慮して調整した各一次転写バイアスの最終補正量Bをそれぞれ求めるように構成されている。
【0054】
ここで、上記付着量検出手段6は、検出用のトナー像の濃度を検出する濃度検出器61で構成されている。濃度検出器61は、図3等に示すように、4つの作像装置2(Y,M,C,K)のうち中間転写ベルト31の回転方向Bの最も下流側に配置されたブラック色の作像装置2Kから二次転写装置35(二次転写位置)に至るまでの範囲において、例えば、その中間転写ベルト31の支持ロール32bに支持されている部分の外周面に所定の間隔をあけた状態で配置されている。濃度検出器61としては、中間転写ベルト31上のトナー像にむけて光を照射するLED等の発光素子と、その中間転写ベルト31やトナー像からの反射光を受光するフォトダイオード等の受光素子等で構成される反射型の濃度センサが使用される。
【0055】
この濃度検出器61は、4つの作像装置2(Y,M,C,K)において同じ条件の検出用トナー像(一定の濃度:画像面積率からなる像)10aをそれぞれ形成して中間転写ベルト31に孤立させた状態で一次転写し、その中間転写ベルト31上にある各色の検出用トナー像10bの濃度を検出するものである(図5)。この検出動作は、例えば、予め定めた時期に実行される画像形成装置1のプロセス制御における検出動作のときに併せて行われる。また、このときの検出情報は、制御装置15に送信され、所望の濃度になっているか否かの判断に使用される。そして、制御装置15では、その検出した濃度が所望の濃度になるよう現像装置24に印加する現像バイアスの値を補正するようになっている。また、このときの検出用トナー像に要求される濃度を、中間転写ベルト31における検出用トナー像の単位面積当たりのトナー付着量とみなすようにしている。
【0056】
また、上記表面電位検出手段7は、図3等に示すように、中間転写ベルト31の付着量検出手段6よりもベルト回転方向Bの下流側であって二次転写位置の手前となる範囲において、例えば中間転写ベルト31の支持ロール32bと支持ロール32cの間に存在する部分の外周面に対して所要の間隔をあけた状態で配置されている。
【0057】
この表面電位測定手段7としては、例えば、非接触型の表面電位計71が使用される。表面電位計71は、中間転写ベルト31の外周面に測定素子であるプローブを接近させた状態で配置して表面電位を測定する。図3における符号72は、プローブと向き合う中間転写ベルト31の内周面側の位置に配置される、接地処理された板状の背面電極を示す。背面電極72は、ロール形態のものであってもよい。
【0058】
表面電位計71は、中間転写ベルト31に一次転写された各色の検出用トナー像10bの表面電位(Vt)を検出する(図5)。この画像形成装置1では、濃度検出器61を通過した後に到来する検出用トナー像10bの表面電位を測定することになる。
【0059】
さらに、上記一次転写前のトナー帯電量としての第一の比電荷量(Q1)は、トナーの単位重量当たり帯電量であり、次の式(1)に基づいて算出される。
Q1=q/m=Q/M …(1)
【0060】
式(1)中の各記号は、以下の通りである。
Q=CV=C(Vt1−Vt2
M:トナー層の単位面積当たりの付着量[g/m2
・Vt1:トナー層の表面電位(≒現像バイアス)[V]
・Vt2:感光体の残留電位(潜像電位)[V]
・C:感光体の単位面積当たりの静電容量[F]
C=(εrε0S)/d
・εr:感光体の比誘電率
・ε0:真空の誘電率[F/m]
・d:感光体(感光層)の厚み[m]
・S:単位面積[m2
【0061】
この第一の比電荷量(Q1)を算出する際に用いる要素を図4に概念的に示した。同図(a)は感光ドラム21に検出用トナー像10aが形成されている状態を示し、同図(b)は感光ドラム上の電位関係を示している。トナー層の単位面積当たりの付着量Mについては、検出用トナー像10aの濃度値(例えば、1.5〜5.0g/m2程度)を適用している。トナー層の表面電位(Vt1)は、同図(b)に示すように、感光ドラム21上に形成する静電潜像の電位(VL)と現像バイアス(VD)の間に理想的にトナーが付着した場合、そのトナーの表面電位(Vt1)が現像バイアス(VD)とほぼ同じ値になるため、その現像バイアス(VD)を表面電位(Vt1)にみなしている。また、現像バイアスは、前述したように所要の濃度(換言すれば付着量)の検出用トナー像10aが形成されるように調整される値であるため、トナー層の表面電位(Vt1)にほぼ相当するものとみなすことができる。このときのトナー層とは、感光ドラム21上に形成される検出用トナー像10aである。
【0062】
また、上記一次転写後のトナー帯電量としての第二の比電荷量(Q2)は、トナーの単位重量当たり帯電量であり、次の式(2)に基づいて算出される。
Q2=q/m=(2ε1/dtM)Vt …(2)
【0063】
・ε1:トナー層(トナーと空隙)のみかけの誘電率[F/m]
・dt:トナー層の厚さ[m]
・M:トナー層の単位面積当たりの付着量[g/m2
・Vt :トナー層の表面電位[V]
【0064】
この第二の比電荷量(Q2)を算出する際に用いる要素を図5に概念的に示した。トナー層の厚さdtについては、濃度検出器61で検出した検出用トナー像10bの濃度値から得られる値(例えば2〜9μm)を適用している。トナー層の単位面積当たりの付着量Mについては、濃度検出器61で検出した検出用トナー像10bの濃度値から得られる値(例えば1.5〜5.0μm)を適用している。トナー層の表面電位(Vt1)は、図5に示すように、中間転写ベルト31に一次転写された検出用トナー像10bの表面電位を表面電位計71で測定した値を適用している。このときのトナー層とは、感光ドラム21に形成された検出用トナー像10aが中間転写ベルト31に転写された後の検出用トナー像10bである。
【0065】
そして、制御装置15では、プロセス制御の検出動作等の時期において、一次転写バイアスの補正動作を実行する。
【0066】
はじめに、4つの作像装置2(Y,M,C,K)でそれぞれ形成する各検出用トナー像10aに関する第一の比電荷量(Q1)と、その各検出用トナー像10aを中間転写ベルト31にそれぞれ一次転写した後の各検出用トナー像10bに関する第二の比電荷量(Q2)とを算出する。この2つの比電荷量の結果により、実際の一次転写前のトナーの帯電状態と一次転写後のトナーの帯電状態が判明する。つまり、第一の比電荷量(Q1)の結果により、各作像装置2でのトナー消費量の多少による帯電状態の変動の様子がわかる。また、第二の比電荷量(Q2)の結果により、中間転写ベルト31に一次転写されてから二次転写前において一次転写位置を単に通過すること(空転写を受けること)による帯電状態の変動の様子がわかる。
【0067】
第一の比電荷量(Q1)は、前記した式(1)に基づいて算出されるが、その際、各作像装置2(Y,M,C,K)における感光体ドラム21の感光層21bの厚さ、現像バイアス及び静電潜像の電位の情報や、濃度測定器61における検出情報(濃度値に基づくトナー付着量)が利用される。また、第二の比電荷量(Q2)は、前記した式(2)に基づいて算出されるが、その際、表面電位計71の検出情報や、濃度測定器61における検出情報(濃度値に基づくトナー付着量及び層厚)が利用される。なお、感光ドラム21の感光層21bに関する比誘電率、みかけの誘電率の情報や、真空の誘電率の情報は、予めデータとして記憶装置などに格納されている。
【0068】
このとき得られた各検出用トナー像10a(Y,M,C,K)に関する第一の比電荷量(Q1)と各検出用トナー像10b(Y,M,C,K)に関する第二の比電荷量(Q2)については、図6に示すように、予め設定する各比電荷量の閾値Q1x,Q2xと対比して、例えば「適正」、「高い」及び「低い」の3つに分類する。「適正」とは、閾値Q1x,Q2xの範囲に収まる場合を示す。また、「高い」及び「低い」は、閾値Q1x,Q2xの範囲に比べて高い結果である場合と低い結果である場合を示す。第一の比電荷量の閾値Q1xとしては、例えば15〜40μC/gである。第二の比電荷量の閾値Q2xとして、例えば20〜40μC/gである。
【0069】
続いて、この各比電荷量(Q1,Q2)の分類結果に対する一次転写バイアスの共通する補正量Aについて決定する。この決定は、例えば図6に示すような組み合わせにおける補正量Aとして予め用意しておくデータを利用して行うことができる。このときの補正量Aは、図6に示すような相対値として作成したもの以外にも、実際のバイアス値で作成したものであっても構わない。
【0070】
図6に示す補正量Aは、一次転写前及び一次転写後のトナー帯電状態(比電荷量Q1,Q2)から作像装置2(Y,M,C,K)毎に一次転写位置通過により受ける電荷量を調整するための量になっている。
【0071】
例えば、一次転写前の比電荷量Q1が「低い」という結果で、一次転写後の電荷量Q2も「低い」という結果になる場合には、一次転写位置を通過するときの電荷の付与量を増大させて電荷量Q2を「適正」の状態に近づける必要があるため、一次転写バイアスを多めに増大させる補正量(+3)に設定している。また、一次転写後の電荷量Q2が「適正」の状態にある場合は、一次転写前の比電荷量Q1の結果如何にかかわらず、その現状を維持する観点から補正量をゼロに設定している。
【0072】
さらに、一次転写後の電荷量Q2が「高い」状態にある場合は、一次転写位置を通過するときの電荷の付与量が多いとみなし、下げる方向の補正量(−1,−2,−3)に設定している。このときの下げる方向の補正量は、一次転写前の比電荷量Q1の結果に応じて大きさを調整している。すなわち、一次転写前の比電荷量Q1が高いときには、一次転写位置通過による電荷の付与量が相対的に少ないとみなし、相対的に少なめの補正量(−1)としている。また、その比電荷量Q1が低いときには、一次転写位置通過による電荷の付与量が相対的に多いとみなし、相対的に多めの補正量(−3)に設定している。
【0073】
制御装置45では、図7に示すように、第一の比電荷量(Q1)と第二の比電荷量(Q2)の結果(組み合わせ)に応じて、前記決定した一次転写バイアスに関する共通の補正量Aのいずれかを選定する。図7等における括弧書きの数値「(1)、(1,2,3,4)など」は作像装置2(Y,M,C,K)の配置位置を示している。括弧書きの「(1)」は中間転写ベルト31の回転方向Bの最も上流側の位置に配置された作像装置を示し、その括弧書きの数値が「(2)→(3)→(4)」のように大きくなるにつれて、ベルト回転方向Bの下流側に次第にずれた位置に配置された作像装置を示すことになる(図1参照)。
【0074】
具体的には、最初に一次転写後のトナー帯電状態(比電荷量Q2の結果)を判断材料として優先し、次いで一次転写前のトナー帯電状態(比電荷量Q1の結果)を考慮したうえで補正量Aを最終的に選定している。この補正量Aは、第一の比電荷量Q1の結果に応じて、各色(特にY,M,C)のトナーが一次転写位置の通過で受ける電荷量が適切に調整される値になっている。これにより選定された補正量Aが、各作像装置2(Y,M,C,K)における一次転写装置25(Y,M,C,K)に印加する一次転写バアイスの共通の補正量として適用される。
【0075】
また、この制御装置15においては、図8に示すように、先に選定される共通の補正量Aについて4つの作像装置2(Y,M,C,K)の配置位置の違いや各一次転写装置25(Y,M,C,K)における一次転写バイアスの基準範囲に収めることを考慮して必要な調整をして、一次転写バイアスの最終補正値Bを求めるよう構成されている。
【0076】
この場合、まず、各作像装置2(Y,M,C,K)における各一次転写バイアスの最終の補正量B(1,2,3,4)として、共通の補正量Aを代入して初期設定する(ステップ:S101)。
【0077】
続いて、この初期設定した補正量B(=補正量A)が、中間転写ベルト31の回転方向Bの最も下流の位置に配置される第4(この例ではブラック色K)の作像装置2K(4)における一次転写バイアスの基準範囲に含まれるか(超えないか)否かを判断する(S102)。補正量Aが基準範囲に含まれる場合は、作像装置2Kにおける一次転写バイアスの補正値については「補正量A」をそのまま採用することになる。一方、補正量Aが基準範囲に含まれない場合は、補正量Aを基準範囲に収まる値に調整する(S103)。
【0078】
ここで、最も下流の位置に配置される作像装置2Kの補正量について最初に調整しているのは、次の理由による。すなわち、最も上流の位置に配置されている第1の作像装置2Y(1)で形成されるトナー像は、中間転写ベルト31に一次転写された後に、そのベルト回転方向Bの下流にある3つの作像装置2M(2),2C(3),2K(4)における各一次転写位置を通過する(空転写を受ける)ことになるため、最も電荷の影響を受ける。同じく、その下流側に配置されている第2の作像装置2M(2)で形成されるトナー像は2つの別の一次転写位置を通過し、さらにその下流側に配置されている第3の作像装置2C(3)で形成されるトナー像は1つの別の一次転写位置を通過することになる。しかし、最も下流の位置に配置されている第4の作像装置2K(4)で形成されるトナー像は、その下流側に他の作像装置2が存在しないため、他の一次転写位置を通過することがない。このため、中間転写ベルト31に一次転写された後のトナー像が他の一次転写位置を通過せずに電荷の影響を受けない第4の作像装置2K(4)における一次転写バイアスの補正量を最初に確定させたうえで、その上流側の作像装置における一次転写バイアスの補正量(調整分を含む)を考慮して下流側の作像装置の一次転写バイアスの補正値に順次反映させながら設定することが有効だからである。
【0079】
各作像装置2(Y,M,C,K)における各一次転写バイアスの基準範囲とは、良好な一次転写を行うために予め設定される許容範囲であり、例えば相対値として「+2〜+4」のように設定されるようになっている。その下限値は一次転写の効率が低下しない最小限の設定値であり、その上限値は過剰な一次転写電界の放電現象によりトナーが感光ドラム21に逆戻りして付着する、いわゆるリトランスファー現象が発生しない最大限の設定値である。このため、例えば、作像装置2Kにおける一次転写バイアスの基準値が「+3」に設定されていて補正量Aが「−2」になったときには、その補正量Aを反映させた後の基準範囲が「+1」という値になってしまうので、その場合は基準範囲に含まれないことになる。
【0080】
補正量B(=補正量A)が基準範囲に収まらないときは、その範囲に収まるように初期の補正量Aを減少させた値に変更する(丸める)。具体的には、前記した例の場合においては、基準値の「+3」になるように補正量Aの「−2」を「−1」に調整した値:補正量B´(4)にする。
【0081】
この調整をした場合は、作像装置2Kよりもベルト回転方向Bの上流側にある他の作像装置2Y(1),2M(2),2C(3)の最終補正量B(1,2,3)からも調整後の補正量B´(4)を差し引く処理を行う(S104)。
【0082】
続いて、第3の作像装置2C(3)における一次転写バイアスの最終補正量B(3)が基準範囲に含まれるか否かを判断する(S105)。このときの補正量B(3)は、第4の作像装置2K(4)における最終補正量B(4)が基準範囲に含まれるときには初期設定の補正量Aとなるのに対し、その最終補正量B(4)が基準範囲に含まれないときには初期設定の補正量A(4)から前記した調整後の補正量B´(4)を差し引いた値となる。
【0083】
このときも、最終補正量B(3)が基準範囲に含まれない場合は、その補正量B(3)が基準範囲に収まるように調整し(S106)、その調整した後の補正量B´(3)の値を作像装置2Cよりも上流側にある他の作像装置2Y(1),2M(2)の最終補正量B(1,2)からも調整後の補正量B´(3)を差し引く処理を行う(S107)。
【0084】
これ以降も同様にして第2の作像装置2M(2)における最終補正量B(2)や第1の作像装置2K(1)における最終補正量B(1)が各基準範囲に含まれるか否かを判定し(S108,S111)、また、その各補正量Bが含まれない場合は、その補正量に関する前記したような調整処理を行う(S109〜S111,S112)。
【0085】
以上により、4つの作像装置2(Y,M,C,K)における各一次転写バイアスの最終補正量Bが正式に決定される。この各補正量Bは、制御データとして記憶装置に記憶される。また、各補正量Bに基づいて作像装置2(Y,M,C,K)における各一次転写バイアスが補正される。
【0086】
画像形成装置1は、この補正後の一次転写バイアスを印加した状態でその後のフルカラーモードによる画像形成動作を行うことになる。この場合、各作像装置22(Y,M,C,K)における感光体21(Y,M,C,K)から中間転写ベルト31に転写されて二次転写される前における各トナー像のトナー帯電量が一次転写位置において適正に調整されることで予め設定される範囲に収まる。これにより、フルカラー画像を形成したときには、二次転写装置35に所要の二次転写バイアスを印加した状態で、中間転写ベルト31に一次転写された4色のトナー像が記録用紙9に効率よく安定して二次転写される。この結果、フルカラー画像であっても、その再現性(特に色調などの画質要素)が低下せずに良好に形成される。
【0087】
[他の実施の形態]
実施の形態1においては、中間転写装置3としてベルト形態の中間転写体31を使用する場合を例示したが、ドラム形態の中間転写体を用いる中間転写装置3を適用してもよい。また、作像装置2の数は、4以外の複数であってもよい。さらに、作像装置2における感光体は、ベルト形態の感光体であっても構わない。
【符号の説明】
【0088】
1 …画像形成装置
6 …付着量検出手段
7 …表面電位検出手段
9 …記録用紙(被記録材)
10…検出用のトナー像
12…一次転写バイアス電源装置(バイアス印加手段)
15…制御装置(制御手段)
21Y,21M,21C,21K…感光ドラム(複数の感光体)
25…一次転写装置
31…中間転写ベルト(中間転写体)
35…二次転写装置
36…ベルト清掃装置(清掃装置)
38…清掃回転ブラシ(清掃ブラシ)
61〜63…複数の表面電位測定器
71…コロナ放電器(電荷付与手段)
Q1…第一の比電荷量
Q2…第二の比電荷量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけて配置される複数の感光体と、
前記各感光体との間に現像バイアスが印加された状態で、当該各感光体に帯電後に形成される静電潜像を異なるトナーによりそれぞれ現像して個別のトナー像として形成する複数の現像装置と、
前記各感光体を通過して回転するよう配置される中間転写体と、
前記各感光体との間に一次転写バイアスが印加された状態で、当該各感光体に形成される各トナー像を前記中間転写体に重ね合わせるよう転写させる複数の一次転写装置と、
前記中間転写体との間に二次転写バイアスが印加された状態で、当該中間転写体に転写されたトナー像を被記録材に転写する二次転写装置と、
前記各一次転写装置に一次転写バイアスをそれぞれ印加するバイアス印加手段と、
前記バイアス印加手段から前記各一次転写装置にそれぞれ印加する各一次転写バイアスを、前記各感光体から前記中間転写体に転写されて二次転写される前の各トナー像におけるトナー帯電量が予め設定される範囲に収まるよう補正する制御手段と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記各感光体に形成される各トナー像の一次転写前のトナー帯電量と前記中間転写体に転写されて二次転写される前における各トナー像の一次転写後のトナー帯電量をそれぞれ算出し、その一次転写前のトナー帯電量及び一次転写後のトナー帯電量の情報に基づいて前記各一次転写バイアスの補正量を選定する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記各感光体から前記中間転写体に転写される検出用の各トナー像のトナー付着量をそれぞれ検出する付着量検出手段と、
前記各感光体から前記中間転写体に転写される検出用の各トナー像の表面電位をそれぞれ検出する表面電位検出手段を備え、
前記制御手段は、
前記一次転写前のトナー帯電量として、前記各感光体の感光層の厚さ、前記各静電潜像の電位及び前記各現像バイアスの電位の情報と前記付着量検出手段の検出情報を利用して第一の比電荷量を算出し、
前記一次転写後の帯電量として、前記付着量検出手段の検出情報と前記表面電位検出手段の検出情報を利用して第二の比電荷量を算出し、
前記第一の比電荷量と前記第二の比電荷量を予め設定する各閾値と比べて分類した結果の組み合わせから得られる前記各一次転写バイアスの共通する補正量を決定し、その共通する補正量を前記各一次転写装置の位置の違い及び当該各一次転写バイアスの基準範囲に収まることを考慮して調整した前記各一次転写バイアスの最終補正量をそれぞれ求める請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−103596(P2012−103596A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253862(P2010−253862)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】