説明

画像形成装置

【課題】駆動源と用紙搬送ローラとの回転伝達機構の応答時間の遅れを抑制して、画像形成の高速化を図る。
【解決手段】駆動源からの回転駆動力をクラッチ40を介して用紙搬送ローラ30に伝達する。そして、制御部82によってクラッチ40への駆動パルス信号をPWM制御する。制御部82は、用紙搬送ローラ30を回転可能な第1トルクP4よりも小さく、且つ、駆動源から用紙搬送ローラ30までの駆動伝達機構の遊びを解消可能な第2トルクP2よりも大きい第3トルクP3が得られる駆動パルス信号を、用紙搬送ローラ30の回転開始時Sよりも、駆動伝達機構の遊びによる応答時間の遅れ時間T3以上前から出力するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリやプリンタ、複写機などの画像形成装置に関し、より詳細には用紙などの転写材をローラで搬送する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリやプリンタ、複写機などの画像形成装置では、収納カセットから用紙を引き出して、画像形成部で形成した画像を用紙に転写する。したがって所定経路に所定タイミングで用紙を搬送する必要があり、一般に、搬送経路には複数のローラが設けられている。そして、複数のローラを1個のモータで駆動することによって、モータの必要個数を少なくする工夫も行われている。複数のローラを1個のモータで駆動させる場合、それぞれのローラを必要なタイミングで個別に回転及び停止させる必要があるので、モータとローラとの間にクラッチを介在させて、それぞれのローラを所望のタイミングで回転させるようにしている。
【0003】
例えば、大きさの異なる用紙が別々の給紙カセットに収容され、給紙カセットごとに紙を引き出す用紙搬送ローラの1つである給紙ローラが設けられ、これらの給紙ローラは共通のモータで駆動される画像形成装置では、所望の大きさの用紙に画像形成を行う場合には、当該用紙が収納された給紙カセットの給紙ローラのみが回転するように、クラッチの連結又は解除が行われる。
【0004】
同様に、用紙搬送経路において用紙を搬送する場合にも、共通の駆動源であるモータと各搬送ローラとの間に設けられたクラッチの連結及び解除によって、所定の搬送ローラを所定のタイミングで回転及び停止させている。
【0005】
ところで、近年、画像形成装置の高速化に伴い、所定のタイミングで用紙をより高速に搬送することが求められるようになり、駆動源であるモータの高速化だけでなく、クラッチを含む回転伝達機構全体の応答速度の高速化も求められている。例えば、駆動源からローラまでの間に減速ギアを用いる場合、減速ギアには円滑に回転させるためにバックラッシュという遊びが設けられている。また、シャフトと軸孔とを係合させる場合、例えばシャフトの係合部分の断面形状が「D」字状である場合に、シャフトの係合部の外周面と「D」字状の軸孔の内周面との間に隙間があると、当該隙間分が回転伝達時に遊びとなる。このような回転伝達機構の遊びは、駆動側が回転をスタートしてから最終の出力軸が回転を始めるまでの応答時間に遅れが生じる原因となる。そして、これらの機械系部品の遊びは、使用期間が長くなって部品の摩耗が進むに従って大きくなる傾向にある。
【0006】
電磁クラッチ自体も、コイルへ通電してからアーマチャーと呼ばれる可動鉄心が機械的に移動して摩擦板が接触し、回転が伝わる状態になるまでに所定の時間を要し、応答時間の遅れが生じる。
【0007】
電磁力によって連結と解除とを行う電磁クラッチの制御方法については各種の提案がなされているが(例えば、特許文献1〜3を参照)、これまでの提案技術は、クラッチの連結動作を円滑に行うものであって、駆動源とローラとの回転伝達機構の応答時間の遅れを抑制して画像形成の高速化を図るものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4-191225号公報
【特許文献2】特開2003-178916号公報
【特許文献3】特開2004-238157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、駆動源とローラとの回転伝達機構の応答時間の遅れを抑制して、画像形成の高速化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成する本発明に係る画像形成装置は、駆動源からの回転駆動力をクラッチを介して用紙搬送ローラに伝達すると共に、前記クラッチへの駆動パルス信号をPWM制御する制御部を有する画像形成装置であって、前記制御部は、前記用紙搬送ローラを回転可能な第1トルクよりも小さく、且つ、前記駆動源から前記用紙搬送ローラまでの駆動伝達機構の遊びを解消可能な第2トルクよりも大きい第3トルクが得られる駆動パルス信号を、前記用紙搬送ローラの回転開始時よりも、前記の駆動伝達機構の遊びによる応答時間の遅れ時間以上前から出力することを特徴とする。
【0011】
ここで、前記用紙搬送ローラの回転速度が遅いほど、前記用紙搬送ローラの回転開始前に、第3トルクが得られる駆動パルス信号を前記制御部が出力する時間を長くするのが好ましい。
【0012】
また、前記駆動伝達機構の累積使用時間が長くなるほど、前記用紙搬送ローラの回転開始前に、第3トルクが得られる駆動パルス信号を前記制御部が出力する時間を長くするのが好ましい。
【0013】
前記用紙搬送ローラの回転開始前に、第3トルクが得られる駆動パルス信号を前記制御部が出力する時間を、前記回転伝達機構の遊びが解消される時間と、前記クラッチにおけるアーマチャーの吸引時間と、アーマチャー吸引後前記クラッチが第2トルクに達するまでの時間の合計時間以上とするのが好ましい。
【0014】
前記駆動伝達機構の遊びとしては、前記駆動源から前記クラッチまでの駆動伝達機構のバックラッシュと、前記クラッチの内部のギアとアーマチャーの隙間と、シャフトと軸孔と隙間の集積としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像形成装置によれば、駆動源とローラとの回転伝達機構の応答時間の遅れを抑制することができ、画像形成の高速化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が実施された画像形成装置の一例を示す概説図。
【図2】本発明の実施例における搬送制御に係るブロック構成図。
【図3】本発明の実施例における回転伝達機構の構成図。
【図4】クラッチの出力軸回転速度と応答遅れ時間の関係の一例を示す関係図。
【図5】クラッチの駆動パルスのオンオフduty比と伝達トルクの関係図。
【図6】本発明の実施例におけるクラッチ伝達トルクの動作図。
【図7】本発明で用紙一枚を印刷する場合の実施例を示す制御フロー図。
【図8】本発明の実施例で用紙を断続搬送する場合のクラッチ伝達トルクの動作図。
【図9】本発明の実施例で搬送途中の用紙の位置とローラ駆動パルスの一例を示す説明図。
【図10】本発明で用紙を連続印刷する場合の実施例を示す制御フロー図。
【図11】本発明及び従来の画像形成装置におけるローラの回転開始状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0018】
図1に、本発明に係る画像形成装置の概説図を示す。図1の画像形成装置1はプリンター機能のみを有するものであるが、本発明の画像形成装置には、プリンター機能の他、ファクシミリ機能や複写機機能又はそれらの機能を複合的に備えた複合機などの電子写真方式の画像形成装置が含まれる。また、画像形成方式としてはフルカラー画像形成方式及びモノカラー画像形成方式のいずれであっても構わない。
【0019】
図1において、装置の中央部にはベルト状の中間転写体21がローラ22,23に掛架されて、図において反時計回りに回転する。中間転写体21の下面水平部には、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色に対応している4つの作像部24Y、24M、24C、24K(以下、総称して「作像部24」と記すことがある)が配列されている。ローラ22は不図示の駆動源によって回転駆動され、その外側には中間転写体21を介して2次転写ローラ25が当接している。また、ローラ23には、中間転写体21を介してクリーニングブレード26が圧接されていて、中間転写体21の表面に残る未転写トナーを中間転写体21の表面から掻き取り除去する。
【0020】
作像部24は各色とも同じ構成で、中央に円筒状の感光体が配置され、図において時計回り回転する。感光体の外周には、帯電装置、露光装置、現像装置が配置され、感光体と中間転写体21を挟む位置には1次転写ローラが設けられている。そして、1次転写ローラとのニップ部よりも感光体の回転方向下流側には未転写トナーを除去・回収するクリーニング装置が配置されている。
【0021】
装置下方には3つの給紙カセット101,102,103が装置本体に対して出入自在に設けられている。給紙カセット101,102,103には用紙10が収納され、給紙ローラ31,32,33によって最上の用紙から順に1枚ずつ引き出されて搬送路Aへ送られる。搬送路Aには、搬送ローラ34,35が設けられている。さらに、搬送ローラ35と2次転写ローラ25の間の搬送路Aにはタイミングローラ36が設けられている。タイミングローラ36に至る直前位置で用紙10の先端が検知されると、タイミングローラ36は中間転写体21と同期をとって中間転写体21と2次転写ローラ25とのニップ部に用紙10を搬送する。用紙がニップ部を通過する際に、中間転写体21表面に形成されたトナー画像が用紙10に2次転写される。
【0022】
その後、トナー画像が転写された用紙10は定着ローラ71を通過し、この時、トナー画像が加熱・加圧されてトナー画像が用紙10に溶融定着する。そして、用紙10は排出ローラ37によって外部に排出される。
【0023】
トナーは色別にトナー容器に収納され、トナー容器は交換できるように、それぞれ着脱自在に装着されている。又、プリンタ機能、イメージリーダ機能、操作表示機能などの諸機能の実行や画像データを記憶収納するために制御部80が設けられており、各種センサの情報や使用者の指示に応じて装置全体の動作を設計された仕様で駆動制御している。
【0024】
このような画像形成装置1において、画像信号が入力されると、制御部80から色別に変換したデジタル画像信号が発信されてそれぞれの色の露光装置が駆動され、帯電装置で均一に帯電した感光体の表面が露光され、各色別の静電潜像がそれぞれの感光体の表面に形成される。形成された静電潜像は現像装置によって現像され、現像されたトナー画像は、1次転写ローラによって中間転写体21に1次転写される。この動作が各色で行われ、中間転写体21には各色トナー画像が重ね合わされてフルカラートナー画像が形成される。
【0025】
次いで、中間転写体21に形成されたフルカラートナー画像は中間転写体21の回転によって2次転写ローラ25の位置に搬送され、用紙10に一括して2次転写される。
【0026】
用紙10の両面に画像形成する場合には、定着ローラ71を通過した用紙10は、排出ローラ37が正転及び反転することによってスイッチバックして両面印刷搬送路Bに搬送され、用紙10の表裏が入れ替わって再度タイミングローラ36の位置へ搬送される。以下、本明細書中では、両面印刷搬送路Bに設けれた搬送ローラ38を含めて、前述の給紙ローラ31,32,33と搬送ローラ34,35及びタイミングローラ36、排出ローラ37を総称して「ローラ30」と記すことがある。
【0027】
これらのローラ30は機能に応じて共通の駆動源で回転駆動される。具体的には、給紙ローラ31,32,33は1つのブラシレスDCモータ61で駆動される。給紙ローラ31とブラシレスDCモータ61との間には給紙クラッチ41が、給紙ローラ32とブラシレスDCモータ61との間には給紙クラッチ42が、給紙ローラ33とブラシレスDCモータ61との間には給紙クラッチ43がそれぞれ設けられている。同様に、搬送ローラ34,35とタイミングローラ36は、別のブラスレスDCモータ62で駆動される。搬送ローラ34とブラスレスDCモータ62との間には搬送クラッチ44が、搬送ローラ35とブラスレスDCモータ62との間には搬送クラッチ45が、タイミングローラ36とブラスレスDCモータ62との間にはタイミングクラッチ46がそれぞれ設けられている。以下、本明細書中では、給紙クラッチ41,42,43と搬送クラッチ44,45とタイミングクラッチ46を総称して「クラッチ40」と記すことがある。
【0028】
また、排出ローラ37はステッピングモータ63で駆動される。さらに、両面印刷搬送路Bに設けられた複数の搬送ローラ38は、ステッピングモータ64で回転駆動される。なお、これらのローラにおいて回転と停止とを個別に行う必要がない場合には、クラッチ40を使用する必要はない。以下、本明細書中では、ブラスレスDCモータ61,62とステッピングモータ63,64を総称して「駆動源60」と記すことがある。
【0029】
用紙10の有無やその端面の位置を検知するためのセンサ51、52、53、54、55、56、57、58、72(以下、総称して「センサ50」と記することがある)が搬送路Aや両面印刷搬送路Bの必要箇所に配置されている。これらのセンサ50からの信号は駆動源60の回転及び停止、クラッチ40の連結及び解除の制御に使用される。例えば、センサ56によって用紙10の先端が検知されると、中間転写体21の回転に同期するようにタイミングローラ36が回転し、中間転写体21と2次転写ローラ25とのニップ部に用紙10が送り出される。
【0030】
図2に制御部80の構成を示す。使用者による画像形成条件の入力機能や、装置の稼働状況や使用者の入力結果を表示する操作表示機能を有する操作部90が、画像形成装置に設けられている。操作部90からの入力信号は制御部80に送られ、予め定められた動作が本体制御部81によって開始される。用紙10の搬送を制御する搬送制御部82は、ブラシレスモータ61,62などの駆動源60に回転数制御クロック信号を送信して回転速度を制御し、駆動源60からは回転状態信号が搬送制御部82に返信される。また、クラッチ40の駆動電源となるドライバーIC83は、連結又は解除の信号をクラッチ40に送信すると同時に、クラッチ40を連結させるときはパルス駆動信号のオンとオフのduty比信号を送信する。パルス駆動信号は、それぞれのクラッチ40に対してその時点で最適なduty比となるように搬送制御部82によって個別に制御される。
【0031】
図3に、駆動源60からローラ30までの回転伝達機構65の一例を示す。駆動源60からの回転駆動は、複数の歯車群651によって減速されて伝達される。一般に、歯車群651には、円滑に回転するためにバックラッシュと呼ばれる遊びが設けられている。この遊びによって、駆動軸であるシャフト653aが回転を始めてから、従動軸であるシャフト653bが回転するまでに時間の遅れが生じる。加えて、端部断面がDの字状のシャフト653bでは、シャフト653bの端部と、端部を挿入した軸孔652との間に隙間があるため、歯車651が回転してからシャフト653bが回転するまでに時間の遅れが生じる。
【0032】
一方、電磁力で連結と解除を行うクラッチ40に駆動電圧が印加されると、コイルに流れる電流は所定の時定数で増加しはじめ、所定電流以上になるとアーマチャーと呼ばれる可動鉄心が、スプリングなどの付勢力に抗して摩擦板に接触し、摩擦トルクが発生し始める。この電流を通じてから回転トルクが発生するまでの時間をアーマチャー吸引時間と一般に呼ばれ、応答時間の遅れの一つの原因となっている。
【0033】
図4に、応答遅れ時間と出力軸回転速度との関係例を示す。なお、応答遅れ時間を、さらに発生原因別に表している。Taはクラッチ40のアーマチャーの吸引時間、TbはDの字状のシャフト653bと軸孔652との隙間による応答遅れ、Tcはクラッチ40の内部メカニズムに起因する応答遅れ、Tdは歯車群651のバックラッシュによる応答遅れである。この図から理解されるように、出力軸の回転速度が遅いほど応答遅れ時間は大きくなる。
【0034】
図5に示すように、電磁クラッチにおいて、PWM制御のduty比を大きくするほど駆動電流は増加し、電磁クラッチの回転伝達トルクは大きくなる。
【0035】
本発明の画像形成装置では、以上説明してきたローラ30への回転伝達遅れを解消するために、クラッチ40の伝達トルクを制御する。図6にその動作例を示す。本発明では、図5に示したように、PWM制御のduty比を変化させることでクラッチの伝達トルクを制御する。図6において、ローラ30を回転開始するタイミングをS点で示すとすると、S点よりT3時間前のS1点において、PWM制御によって低duty比のパルス駆動信号をクラッチ40に送る。すると、クラッチ40のアーマチャーがT1時間の間に吸引され伝達トルクが発生し始める、そして回転伝達トルクが、回転伝達機構65の遊びを解消するために必要な第2トルクP2よりも高くなると、歯車群651が遊びを解消する方向に回転して、遊びのない状態で停止する。この第2トルクP2よりも高く、ローラ30を回転させるに必要な第1トルクP4よりも低い第3トルクP3となるduty比のパルス駆動信号はT2時間維持する。
【0036】
時間T3の内、T1時間はアーマチャー吸引とクラッチ内のガタを吸収するための時間であり、T2時間は歯車群651のバックラッシュやシャフトと軸孔の隙間によるガタなどを解消するための時間である。なお、T1時間経過してT2時間が始まるまでの間は、伝達トルクが第2トルクP2になるまでの時間である。また、クラッチ40の構造によっては、パルス駆動信号が流れていない解除状態でも駆動側から被駆動側にわずかながらトルクが伝達されることがある。一般にドラグトルクと称されるもので、図6ではP1で示している。これは、空転状態でも駆動側と被駆動側との間に介在する潤滑油などの粘性に起因するもので、湿式クラッチでは乾式クラッチよりも高い値を示す。
【0037】
次ぎに、ローラ30を回転開始するタイミングSになると、パルス駆動信号を高duty比にする。これにより、図5に示したように伝達トルクは急増して、第1トルクP4を超え、ローラ30は回転を始める。クラッチ40の被駆動側は滑りながら駆動側との間に動摩擦が作用して次第に伝達トルクを増大し回転速度も加速する。そして駆動側との速度差も少なくなって、やがて駆動側と同期して滑りゼロの状態となりクラッチ40の連結は完了する。
【0038】
このように、ローラ30の回転開始タイミングS点よりも前からクラッチ40に通電して第3トルクP3を発生させ、回転伝達機構65の応答時間の遅れの要因となる遊びを予め解消しておくことで、機械系の応答時間の遅れを減少させることができる。
【0039】
以上の制御動作を図7の制御フロー図で説明する。画像形成を1枚する場合について、先ず、ステップS11で画像形成指示がなされると、ステップS12で使用者が設定した用紙10を搬送するローラ30の回転数からバックラッシュなどの遊びによる応答時間の遅れを解消するのに必要な時間を求める。例えば、高精細度の画像形成を行う場合と低精度の画像形成を行う場合とでは用紙搬送速度が異なり、図4で示したように、最終軸の回転数が遅い場合ほど応答時間の遅れが大きく、応答時間の遅れの解消に要する時間も長くなる。なお、図7でバックラッシュと表現した内容には、歯車群651のバックラッシュによる遅れ時間だけでなく、シャフト653bと軸孔652との隙間による遅れ時間や、クラッチ40のアーマチャー吸引時間とクラッチ内のガタを吸収するための時間も含んでおり、図6におけるT3時間を意味する。
【0040】
ローラ30の回転開始タイミングは、設定された用紙搬送速度と、用紙搬送路に設けられたセンサ50などの信号によって予測される。そして、ステップS13で、ステップS12で求めた解消時間だけローラ回転開始タイミングより早く低duty比のパルス駆動信号をクラッチに送信する。これにより、回転伝達機構65の応答時間の遅れの要因となる遊びが解消される。ステップS14でバックラッシュ解消時間が経過し、ローラ30の回転開始タイミングになると、ステップS15でパルス駆動信号のduty比を高めて伝達トルクを増加させ、ローラ30を回転させる。次に、ステップS16でローラ30の下流位置のセンサで用紙10が通過したことが検知されると、ステップS17でクラッチ40へのパルス駆動信号をオフして解除状態とする。
【0041】
なお、ローラ30の回転数によって駆動源60からの減速比が変化するので、予め実験などで応答時間の遅れの解消に要する時間を求めおき、搬送制御部82のプログラムに組み込んでおくことが望ましい。通常、回転伝達機構65の累積使用時間が長くなると、摩耗等によって各種の遊びが増える傾向にあるので、応答時間の遅れ解消時間も長くするのが好ましい。例えば、画像形成装置1の累積使用時間を制御部80の中にあるデータ記憶部84から抽出し、累積使用時間に応じて定めた係数を、初期に設定した遅れ解消時間に乗じて算出するようにしてもよい。
【0042】
次ぎに、複数枚の画像形成を連続して行う場合について説明する。図8に、複数枚を連続的に画像形成する場合のローラ30の伝達トルクの動作図を示す。1枚目の用紙を搬送する区間は、図1に示した動作と同様である。1枚目が搬送し終わると、パルス駆動信号のduty比を低くして、伝達トルクを第3トルクP3まで下げる。この状態では、ローラ30は回転せず、回転伝達機構65の応答時間の遅れ要素となる遊びを解消する方向に力が加えられた状態である。そして、2枚目の用紙を搬送するときにはパルス駆動信号のduty比を再び高くしてローラ30を回転させる。一連の用紙を搬送し終わるまでこの動作を繰り返しを行う。
【0043】
図9に、複数枚の用紙を連続搬送する場合の搬送ローラの動作図を示す。1枚目の用紙101が搬送ローラ35を通過している状態では、搬送ローラ35へのパルス駆動信号のduty比は高い状態にある。一方、1枚目の用紙101が通過して2枚目の用紙102の到着待ちの状態では、搬送ローラ34へのパルス駆動信号のduty比は低いの状態にある。この時、タイミングローラ36にはまだ通電されていないが、センサ55が1枚目の用紙101の先端部を検知すると、用紙101のタイミングローラ36への到達時間が予測されるので、遅れ解消時間分だけ早く低duty比のパルス駆動信号をタイミングローラ36に送信して第3トルクを発生させる。
【0044】
図10に、複数枚の用紙を連続搬送する場合の制御を示す。なお、ステップS21からステップS26までは工程は、図7のフロー図と同様なのでここでは説明を省略し、ステップS27から説明する。ステップS27において、用紙が、一連の画像形成の最後の用紙でない場合は、ステップS23に戻って、パルス駆動信号のduty比を、遊びを解消をする第3トルクP3が得られるレベルまで低くする。この間は図8におけるT4時間に該当する部分であり、回転伝達機構65において遊びのない状態が維持される。一方、ステップS27において、用紙が最後の用紙である場合は、ステップS28でクラッチ40への通電を完全にオフして画像形成動作を完了する。
【0045】
以上説明したように本発明に係る画像形成装置では、回転伝達機構65の遊びを解消するのに必要なトルクをクラッチに予め付与するので、応答時間の遅れを生じさせることなくローラが回転する。具体的には、図11(b)に示すように、従来の画像形成装置では、バックラッシュやシャフトと軸孔の隙間などによって、通電開始後、ローラ30が実際に回転し始めるまでに時間Taや時間Tbの遅れがあったのに対し、図11(a)に示すように、本発明に係る画像形成装置では、ローラ30の回転開始タイミングS点よりも前に低duty比の駆動パルス信号を出力して回転伝達機構65の遊び解消しておくので、ローラ30はS点から迅速に回転し始める。
【符号の説明】
【0046】
10 用紙
30 ローラ
60 駆動源
40 クラッチ
82 搬送制御部
651 回転伝達機構
653 シャフト
652 軸孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの回転駆動力をクラッチを介して用紙搬送ローラに伝達すると共に、前記クラッチへの駆動パルス信号をPWM制御する制御部を有する画像形成装置であって、
前記制御部は、前記用紙搬送ローラを回転可能な第1トルクよりも小さく、且つ、前記駆動源から前記用紙搬送ローラまでの駆動伝達機構の遊びを解消可能な第2トルクよりも大きい第3トルクが得られる駆動パルス信号を、前記用紙搬送ローラの回転開始時よりも、前記の駆動伝達機構の遊びによる応答時間の遅れ時間以上前から出力することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記用紙搬送ローラの回転速度が遅いほど、前記用紙搬送ローラの回転開始前に、第3トルクが得られる駆動パルス信号を前記制御部が出力する時間を長くする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記駆動伝達機構の累積使用時間が長くなるほど、前記用紙搬送ローラの回転開始前に、第3トルクが得られる駆動パルス信号を前記制御部が出力する時間を長くする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記用紙搬送ローラの回転開始前に、第3トルクが得られる駆動パルス信号を前記制御部が出力する時間を、前記回転伝達機構の遊びが解消される時間と、前記クラッチにおけるアーマチャーの吸引時間と、アーマチャー吸引後前記クラッチが第2トルクに達するまでの時間の合計時間以上とする請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記駆動伝達機構の遊びは、前記駆動源から前記クラッチまでの駆動伝達機構のバックラッシュと、前記クラッチの内部のギアとアーマチャーの隙間と、シャフトと軸孔と隙間との集積である請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−121678(P2012−121678A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273707(P2010−273707)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】