説明

画像形成装置

【課題】 装置の異常によって生じたベタ画像を安定的に検知することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】 搬送用紙10における印刷可能範囲内にインクを吐出して印刷処理を行うヘッドと、ヘッドへ搬送用紙10を搬送する搬送ベルト27と、搬送ベルト27を回転駆動させる搬送ローラ33と、搬送ベルト27を隔て搬送ローラ33と対向して設置され、かつ、搬送ベルト27上を搬送される搬送用紙10の印刷可能範囲外の位置に設置されたローラ400と、搬送ローラ33とローラ400との間を搬送用紙10が通過する際に、搬送ローラ33とローラ400との間の電圧を測定する電圧測定手段420と、電圧測定手段420により測定された電圧が所定の閾値より大きい場合に、搬送用紙10にベタ画像が印刷されていると判定するベタ画像検知手段430と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体に対して液滴を吐出して画像を形成する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像形成装置として、用紙等の印刷媒体に対して記録ヘッドから液滴を吐出して画像を形成するものがある。
【0003】
この画像形成装置には、記録ヘッドを搭載したキャリッジに、このキャリッジの動作線上での印刷媒体の有無を検知するための反射型フォトセンサ(光学センサ)からなる状態検知手段を備え、キャリッジを主走査して印刷するとき、状態検知手段で記録媒体無しを検知したとき以後の印刷動作をキャンセルするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、搬送ローラと用紙押えローラとの間を印刷媒体が通過する際、搬送ローラと用紙押えローラとの間の電圧を測定する電圧測定手段と、電圧測定手段により測定された電圧が所定の閾値より大きい場合、印刷媒体に金属片が付着していると判定する金属片検知手段と、を有するものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような画像形成装置において、印刷された画像に意図しないベタ状の画像(以下ベタ画像)が現れることがある。このベタ画像の発生要因としては様々なものがあるが、例えば、キャリッジと本体操作部を結ぶ配線に断線異常が生じた場合にベタ画像が生じる。
【0006】
このような印刷異常を検知する方法として、特許文献1に記載の装置に設けられた反射型の光学センサを用い、ベタ画像の光反射率が低いことを利用してベタ画像を検知する方法が考えられる。しかし、反射型の光学センサを用いる場合、装置周囲の照明の明暗の影響を受けやすく、また、ベタ画像が装置の異常によるものかまたはユーザが意図して印刷しようとした画像であるのかの判別が困難であった。
【0007】
また、特許文献2に記載のように、搬送ローラと用紙押えローラとの間の電圧を測定する電圧測定手段を設け、この電圧測定手段により測定された電圧に基づいてベタ画像を検知することも考えられるが、やはり、この場合も、ベタ画像が装置の異常によるものかまたはユーザが意図して印刷しようとした画像であるのかの判別が困難であった。
【0008】
そこで本発明は、装置の異常によって生じたベタ画像を安定的に検知することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、請求項1に記載の画像形成装置は、前記印刷媒体における印刷可能範囲内に液滴を吐出して印刷処理を行う印刷処理部と、
該印刷処理部へ前記印刷媒体を搬送する搬送ベルトと、
該搬送ベルトを回転駆動させる搬送ローラと、
前記搬送ベルトを隔て前記搬送ローラと対向して設置され、かつ、前記搬送ベルト上を搬送される前記印刷媒体の前記印刷可能範囲外の位置に設置されたローラと、
前記搬送ローラと前記ローラとの間を前記印刷媒体が通過する際に、前記搬送ローラと前記ローラとの間の電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電圧測定手段により測定された前記電圧が所定の閾値より大きい場合に、前記印刷媒体にベタ画像が印刷されていると判定するベタ画像検知手段と、を有するものである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、前記ローラは、前記印刷媒体を前記搬送ベルトへ押え付ける用紙押えコロとして機能するものである。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において、前記ローラは、前記搬送ベルトによって搬送される前記印刷媒体の両側部における前記印刷可能範囲外にそれぞれ設けられているものである。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置において、前記ベタ画像検知手段が前記印刷媒体のベタ画像を検知した際に、その旨をユーザへ通知する通知手段を備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印刷媒体を介して電圧を測定し、ベタ画像の有無によって電圧の大きさが変化することを利用して、印刷媒体にユーザが意図しないベタ画像が印刷されていることを検知する。したがって、光学センサを用いてベタ画像を検知する場合と比較して、装置周囲の照明の明暗の影響を受けることなく確実にベタ画像を検知することができる。しかも、印刷媒体の印刷可能範囲外で電圧を測定してベタ画像の有無を判定するので、ユーザが意図しないベタ画像のみを安定的に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係る画像形成装置の概略を説明するための構成図である。
【図2】本実施の形態に係る画像形成装置の制御部全体のブロック図である。
【図3】マルチファンクション機能を持つ本実施の形態に係る画像形成装置を説明するブロック図である。
【図4】本実施の形態に係る搬送ベルトの構成を示す図である。
【図5】本実施の形態に係るヘッドを搭載するキャリッジの走査方向とベルトとの位置関係を説明するための図である。
【図6】本実施の形態に係る搬送ベルトを上側から視た図である。
【図7】本実施の形態に係る搬送ベルトを下側から視た図である。
【図8】搬送用紙への印刷状態等を示す図であって、(a)は正常画像が印刷された搬送用紙の平面図、(b)は意図しないベタ画像が印刷された搬送用紙の平面図、(c)は印刷可能範囲を示す搬送用紙の平面図である。
【図9】本実施の形態に係るベタ画像の検知処理について説明するための図である。
【図10】本実施の形態に係るベタ画像の検知処理(ベタ画像が印刷されていない搬送用紙を搬送する場合)について説明するための図である。
【図11】本実施の形態に係るベタ画像の検知処理(ベタ画像が印刷されている用紙を搬送する場合)について説明するための図である。
【図12】本実施の形態に係る電圧測定手段の一例を説明するための図である。
【図13】一般的な搬送機構に電圧測定手段を設けた場合について説明する図である。
【図14】本実施の形態に係る電圧測定手段の一例を説明するための図である。
【図15】本実施の形態に係るベタ画像の検知処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
(本実施の形態に係る画像形成装置の概略)
図1を用いて、本実施の形態に係る画像形成装置1の概略を説明する。ここで図1は、本実施の形態に係る画像形成装置1の概略を説明するための構成図である。
【0016】
画像形成装置1は、印刷媒体である搬送用紙10を給紙する給紙コロ21と一枚ずつ分離する分離パッド23を有しており、搬送用紙10は用紙積載部25に図1に示す様に積載保持されている。搬送用紙10を搬送する際は、搬送ベルト27上に帯電ローラ29によって電荷が形成され、搬送ベルト27に対し静電吸着力によって搬送ベルト27に貼り付いた状態で行われる。電荷の形成は、高電圧電源31からの電圧を帯電ローラ29に印加することにより行う。
【0017】
搬送ベルト27は搬送ローラ33とテンションローラ35によって保持されており、搬送ローラ33を回転させて搬送ベルト27を図示した用紙搬送方向に回転させる。搬送用紙10は搬送ガイド37にガイドされながら搬送ベルト27に接触し、先端コロ39(以下、用紙押えコロという)にて押さえ付けられながら搬送される。
【0018】
両面印刷のために搬送用紙10の裏面も印刷を行いたい場合は、搬送用紙10の所望の位置に印刷終了しても排紙トレー41に搬送用紙10を排出せず、静電吸着力で吸着したまま搬送ベルト27を図示した用紙搬送方向とは逆に回転させる。逆方向に回転させて搬送用紙10を両面印刷用用紙反転ユニット43に挿入し、搬送用紙10を反転させ、表面と同様に印刷を行う。印刷は図示したヘッド(印刷処理部)45からインク(液滴)を吐出して行い、そのインクはインク供給管47より供給する。
【0019】
画像形成装置1は、その後方側に、手差しユニット49が設けられており、この手差しユニット49に搬送用紙10が積載保持される。この手差しユニット49には、給紙コロ51が設けられており、この給紙コロ51によって、手差しユニット49に積載保持された搬送用紙10が繰り出される。そして、この繰り出された搬送用紙10も、搬送ベルト27で搬送され、ヘッド45によって印刷される。ヘッド45は、図示しないキャリッジ駆動モータによって主走査方向へ往復移動されるキャリッジ53に支持されており、このキャリッジ53とともに移動する。
【0020】
(本実施の形態に係る画像形成装置の制御部の概略)
図2を用いて、本実施の形態に係る画像形成装置1の制御部600の概要を説明する。ここで図2は、画像形成装置1の制御部600全体のブロック図である。以下の説明は、ホストPCから印刷ジョブを受け入れて印刷を実行する場合の説明であるが、印刷ジョブはホストPCからではなく、ADF(Auto Document Feeder)やARDF(Auto Reverse Document Feeder)で読み取った複写画像でも良いし、FAX装置から受信したFAX画像でも良い。
【0021】
この制御部600は、この画像形成装置1全体の制御を司る、本発明に係る電圧測定手段、ベタ画像検知手段及び通知手段を制御する手段などを兼ねたマイクロコンピュータで構成した制御用マイコン601及び印刷制御を司るマイクロコンピュータで構成した印刷制御用マイコン608を備えている。
【0022】
アプリケーション98を通してユーザより印刷命令があった場合、OS99(GDI:Graphic Device Interface)は画像形成装置1で出力する画像データをプリンタドライバ100に伝達する。
【0023】
プリンタドライバ100は、アプリケーション98から伝達された画像データを、画像形成装置1本体が処理できる形式の印写画像データに変換して、通信回路101を経由して画像形成装置1に入力する。
【0024】
制御用マイコン601は、通信回路101から入力される印写画像データに基づいて搬送用紙10に画像を形成するために、キャリッジ駆動モータ駆動回路603及び搬送モータ駆動回路605を介して、図示しないキャリッジ駆動モータや搬送モータを駆動制御する。それとともに、制御用マイコン601は、印刷制御用マイコン608に対して印刷用データを送出するなどの制御を行なう。
【0025】
制御用マイコン601には、キャリッジ53の位置を検出するキャリッジ位置検出回路602からの検出信号が入力され、制御用マイコン601はこの検出信号に基づいてキャリッジ53の移動位置及び移動速度を制御する。キャリッジ位置検出回路602は、例えば、キャリッジ53の主走査方向に配置されたエンコーダシートのスリット数を、キャリッジ53に搭載されたフォトセンサで読み取って計数することで、キャリッジ53の位置を検出する。
【0026】
キャリッジ駆動モータ駆動回路603は、制御用マイコン601から入力されるキャリッジ移動量に応じてキャリッジ駆動モータを回転駆動させて、キャリッジ53を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0027】
制御用マイコン601には搬送ベルト27の移動量を検出する搬送量検出回路604からの検出信号が入力され、制御用マイコン601はこの検出信号に基づいて搬送ベルト27の移動量及び移動速度を制御する。例えば、搬送量検出回路604は、搬送ローラ33の回転軸に取り付けられた回転エンコーダシートのスリット数を、フォトセンサで読み取って計数することで搬送量を検出する。
【0028】
搬送モータ駆動回路605は、制御用マイコン601から入力される搬送量に応じて搬送モータを回転駆動させて、搬送ローラ33を回転駆動して搬送ベルト27を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0029】
制御用マイコン601は、給紙コロ駆動回路610に給紙コロ駆動指令を与えることによって給紙コロ21を一回転させる。制御用マイコン601は、維持回復機構駆動用モータ駆動回路611を介してモータを回転駆動することにより、ヘッド45のメンテナンス機構を構成するキャップやワイパーブレードの昇降を行わせる。
【0030】
制御用マイコン601は、インク供給モータ駆動回路612を介してインク供給ユニットのポンプを駆動するためのインク供給モータを駆動制御し、カートリッジ装填部に装填されたインクカートリッジからサブタンクに対してインクを補充供給する。
【0031】
制御用マイコン601には、サブタンクが満タン状態にあることを検知するサブタンク満タンセンサ613からの検知信号、カートリッジ装填部の前カバーの開閉を検知するカートリッジカバーセンサ614からの検知信号などが入力される。
【0032】
また、制御用マイコン601は、カートリッジ通信回路615を通じて、カートリッジ装填部に装着された各インクカートリッジに設けられる記憶手段である不揮発性メモリに記憶されている情報を取り込んで、所要の処理を行なって、本体記憶手段である不揮発性メモリ616(例えば、EEPROM:Erasable Programmable ROM)に格納保持する。
【0033】
印刷制御用マイコン608は、制御用マイコン601からの信号とキャリッジ位置検出回路602及び搬送量検出回路604などからのキャリッジ位置や搬送量に基づいて、ヘッド45の液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成して、ヘッド駆動回路609に与える。
【0034】
ヘッド駆動回路609は、印刷制御用マイコン608からの印刷データに基づいてヘッド45の圧力発生手段(ピエゾ型ヘッドであれば圧電素子)を駆動して、所要のノズルから液滴を吐出させる。
【0035】
制御用マイコン601は、紙サイズセンサ606から通紙中の搬送用紙10の大きさを検出し、入力された画像データが搬送用紙10上に配置可能かどうか、また搬送用紙10外に画像データがある場合に、画像データをトリミングして描画するように印刷制御用マイコン608に設定することが出来る。紙サイズを検出する方法としては、キャリッジ53の側部に反射型センサを配置し、キャリッジ53が走査する際に搬送用紙10と搬送路の反射率の違いを検出することで用紙幅を検出することが出来る。そのほかには、搬送路上に搬送方向と直交してラインセンサを配置することで、用紙幅を検出することも出来る。また搬送方向の用紙長さについては、搬送路上に同じく反射型のセンサを配置し、搬送用紙10を検出してからの搬送量を計数することで用紙長を検出することが出来る。
【0036】
制御用マイコン601は、搬送路上に複数個配置された紙位置センサ607から、搬送用紙10が機内のどの位置にあるかを検出することができ、印刷中に意図しない位置に搬送用紙10がある場合には用紙ジャムを検出し、ユーザに異常を知らせることが出来る。またその異常が発生している箇所も示すことが出来る。
【0037】
図3は、マルチファンクション機能を持つ画像形成装置1を説明するブロック図である。前述した搬送ベルト27やヘッド45は図中のプリンタエンジンに含まれる。ADFやERDFにて積載した搬送用紙10を一枚ずつ搬送/読み取りを行う。スキャンした画像は、プリンタエンジン部で印刷される。
【0038】
(本実施の形態に係る搬送ベルト)
図4及び図5を用いて、本実施の形態に係る搬送ベルト27について詳細に説明する。ここで図4は、搬送ベルト27の構成を示す図である。図4で示すように、搬送ベルト27の表層27aは抵抗制御を行っていない純粋な樹脂材で構成されており、その膜厚は40μmである。また搬送ベルト27の裏層27bには、表層27aと同材質にカーボンによる抵抗制御を行った中抵抗層(アース層)を配する。帯電ローラ29は、この表層に接触する様に配置され、軸の両端に加圧力が各2.5Nずつ掛けられる。搬送ローラ33はアースローラの役目を担っており搬送ベルト27の中抵抗層である裏層27bと接触配置される。
【0039】
ここで、図5は、ヘッド45を搭載するキャリッジ53の主走査方向と搬送ベルト27との位置関係を示す。この図5は図1を右側より視た図に相当する。図5に示すように、キャリッジ53は、キャリッジガイドロッド55に支持され、搬送ベルト27の搬送方向、すなわち搬送用紙10の搬送方向と直交する向きに走査される。
【0040】
(本実施の形態に係る帯電ベルトと高電圧電源)
図6及び図7を用いて、本実施の形態に係る搬送ベルト27からなる帯電ベルトと高電圧電源31について説明する。ここで図6は、搬送ベルト27上に形成される帯電幅について、搬送ベルト27を上側から視た図である。
図6で示すように、搬送ベルト27上にはプラスとマイナスの電荷が、ある幅(帯電幅)で形成される。そして、図7で示すように、帯電ローラ29は搬送ベルト27に接触配置されている(図7は図1の搬送ベルト27を下から視た図に相当する)。
帯電ローラ29には高電圧電源31によって作られた矩形波高電圧波形が印加される。最終的には図6に示すような、幅を持った帯電が搬送ベルト27上に形成される。
【0041】
(本実施の形態に係るベタ画像の検知)
ヘッド45からインクを吐出する画像形成装置1において、印刷された画像に、装置の異常等による意図しないベタ状の画像(以下ベタ画像)が現れることがある。このベタ画像の発生要因としては様々なものがあるが、例えば、キャリッジ53と本体操作部を結ぶ配線に断線異常が生じた場合にベタ画像が生じる。
【0042】
具体的には、図8(a)に示すような正常画像に対して、インクの吐出異常によって図8(b)に示すようなユーザの意図しないベタ画像Aが生じることがある。正常画像は、図8(c)に示すように、印刷可能範囲B(図中点線で示す範囲)内に印刷が行われる。したがって、ベタ画像Aは、印刷可能範囲B外にも印刷される。つまり、このベタ画像Aは、ユーザが意図して印刷したものであれば、印刷可能範囲B外に印刷されることはない。
【0043】
図9から図15を用いて、本実施の形態に係るベタ画像の検知処理について説明する。図9で示すように、搬送用紙10にベタ画像Aが印刷されている場合、装置異常として速やかに処理する必要がある。このため、下記の処理によって搬送用紙10にベタ画像Aが印刷されていることを検知し、この検知後に所定の動作を行う。
【0044】
図9及び図10で示すように、搬送用紙10の印刷可能範囲B外が通過する位置にローラ400を設け、このローラ400に電源405によって交流電圧を印加し、同時に、搬送ローラ33はベタ画像検知用の抵抗410(以下、検知用抵抗という。)を介して接地する。すると、図10で示すように、正常印刷時の搬送(ベタ画像Aが印刷されていない搬送用紙10の搬送)時は、搬送用紙10が絶縁体の役割を果たすので、搬送用紙10から先に電流は流れず、検知用抵抗410に電圧は現れない。搬送用紙10が数10μm程度に薄い場合は、搬送用紙10がコンデンサの役割を果たして検知用抵抗410に電圧が現れるが、それは図11で示すように、ベタ画像Aが印刷されている場合と比して十分に小さい電圧となる。
【0045】
図11で示すように、ベタ画像Aが印刷された搬送用紙10が搬送され、ベタ画像A部分がローラ400の下を通過する場合、搬送用紙10に浸透した導電性のインクによって絶縁体としての搬送用紙10は100kΩ〜1MΩ程度の抵抗値を有するものとなる。その結果、検知用抵抗410にはベタ画像Aが印刷されていない場合と比して大きな電圧が現れる。この電圧の差異を利用して、搬送用紙10におけるベタ画像Aの有り/無しを検知する。つまり、ローラ400と搬送ローラ33との間の電圧は、制御部600へフィードバックされて測定され、制御部600では、この測定された電圧が所定の閾値より大きい場合、搬送用紙10にベタ画像Aが印刷されていると判定する。このように、制御部600は、電圧測定手段420及びベタ画像検知手段430の機能を有している。なお、図10及び図11のいずれの場合においても、搬送ベルト27の表層27aは充分に薄い(40μm)ため、コンデンサの役割を果たす。
【0046】
図12で示すように、複数の用紙押えコロ39を搬送方向に直交する方向へ並べて配置させる場合、ベタ画像検知用のローラ400として、これらの用紙押えコロ39の一部を用いる形態としても良い。このようにすると、ベタ画像検知用のローラ400と用紙押えコロ39とを共通化することで、装置の簡略化を図ることができ、簡便な装置構成となりコスト低減を図ることができる。この場合、ベタ画像検知用のローラ400として用いる用紙押えコロ39は、搬送用紙10における印刷可能範囲B外で搬送用紙10を押える箇所に配置させる。
【0047】
ここで、用紙押えコロ39は、搬送用紙10を押えるという性質上、広範囲で搬送用紙10を押える方が有利である。したがって、図13で示すように、搬送方向に直交する方向へ複数の用紙押えコロ39が配列された構成とした場合、一般に、その両側に配置された用紙押えコロ39は、印刷可能範囲Bの範囲内と範囲外とにまたがって配置される。このような構成の場合、一側の用紙押えコロ39をベタ画像検知用のローラ400として電圧を印加しても、搬送用紙10の印刷可能範囲B外のみへ電圧を印加させることができず、したがって、搬送用紙10に、ユーザが意図して印刷したベタ状の画像Cが印刷されている場合、そのベタ状の画像Cを検知してしまう。つまり、単に用紙押えコロ39をベタ検知用のローラ400としても、検知したベタ画像が装置の異常によるベタ画像Aであるかまたはユーザが意図して印刷しようとしたベタ状の画像Cであるのかの判別ができない。
【0048】
これに対して、図12で示すように、搬送用紙10における印刷可能範囲B外で搬送用紙10を押える用紙押えコロ39を配置させ、この用紙押えコロ39をベタ画像検知用のローラ400として用いれば、装置の異常等によるユーザの意図しないベタ画像Aのみを確実に検知することができる。
【0049】
図14で示すように、複数の用紙押えコロ39を搬送方向に直交する方向へ並べて配置させる場合、搬送用紙10における印刷可能範囲B外で搬送用紙10を押える二つの用紙押えコロ39を両側に配置させ、これらの用紙押えコロ39をベタ画像検知用のローラ400として用いても良い。このようにすると、ベタ画像検知用のローラ400と用紙押えコロ39との共通化による装置の簡略化を図りつつ、搬送用紙10の両側部の複数箇所でベタ画像Aを検知することができ、ベタ画像Aの検知精度を高めて確実に検知することができる。
【0050】
上記のように、搬送用紙10にベタ画像Aが印刷されていることを検知した場合、装置が異常状態であるおそれがあるので、修理・点検等の処置をとらせるべく、速やかにユーザに通知する必要がある。
【0051】
図15に示すものは、ユーザへの通知手段を備えた場合の制御を示すものである。図15で示すように、S10で画像形成装置1が用紙積載部25または手差しユニット49から給紙された搬送用紙10の搬送を開始し、S20で電圧測定手段420によって測定された電圧が所定の閾値より大きい場合(S20でYesの場合)、S30でベタ画像検知手段430が搬送用紙10にベタ画像Aが印刷されていると判定する。そして、S30で印刷を停止し、搬送用紙10をそのまま排紙トレー41へ排紙し、S40で制御部600に設けられた通知手段440が、装置が搬送用紙10にベタ画像Aを印刷してしまう異常状態にあることを、アラームやディスプレイでの表示等によってユーザに通知する。
【0052】
一方、S20で電圧測定手段420によって測定された電圧が所定の閾値より小さい場合(S20でNoの場合)、S50で画像形成装置1が通常の印刷処理動作を行う。
【0053】
(総括)
以上、詳細に説明したように、実施形態に係る画像形成装置1によれば、印刷媒体である搬送用紙10を介して電圧を測定し、ベタ画像Aの有無によって電圧の大きさが変化することを利用して、搬送用紙10にユーザが意図しないベタ画像Aが印刷されていることを検知する。したがって、光学センサを用いてベタ画像を検知する場合と比較して、装置周囲の照明の明暗の影響を受けることなく確実にベタ画像Aを検知することができる。しかも、搬送用紙10の印刷可能範囲B外で電圧を測定してベタ画像Aの有無を判定するので、ユーザが意図しないベタ画像Aのみを安定的に検知することができる。
【0054】
したがって、ユーザは、装置が異常状態となって搬送用紙10にベタ画像Aが印刷されていることを確実かつ迅速に把握し、速やかに装置に対する修理・点検等の処置を行うことができる。
【0055】
以上説明した画像形成装置は、その制御を、プログラム(画像形成プログラム)で実行することもできる。当該画像形成プログラムは、例えば、プリンタドライバで実行する構成とすることが好ましい。また、例えばインターネット上からのダウンロードによって提供し、情報処理装置から画像形成装置にインストールすることも好ましい。また、画像形成プログラムを画像形成装置で実行可能に記録した記録媒体(画像形成プログラムを記録した記録媒体)の態様にも適用される。
【0056】
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 画像形成装置
10 搬送用紙(印刷媒体)
27 搬送ベルト
33 搬送ローラ
39 用紙押えコロ(ローラ)
45 ヘッド(印刷処理部)
400 ローラ
420 電圧測定手段
430 ベタ画像検知手段
440 通知手段
600 制御部
A ベタ画像
B 印刷可能範囲
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特開2005−66960号公報
【特許文献2】特開2010−143666号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記印刷媒体における印刷可能範囲内に液滴を吐出して印刷処理を行う印刷処理部と、
該印刷処理部へ前記印刷媒体を搬送する搬送ベルトと、
該搬送ベルトを回転駆動させる搬送ローラと、
前記搬送ベルトを隔て前記搬送ローラと対向して設置され、かつ、前記搬送ベルト上を搬送される前記印刷媒体の前記印刷可能範囲外の位置に設置されたローラと、
前記搬送ローラと前記ローラとの間を前記印刷媒体が通過する際に、前記搬送ローラと前記ローラとの間の電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電圧測定手段により測定された前記電圧が所定の閾値より大きい場合に、前記印刷媒体にベタ画像が印刷されていると判定するベタ画像検知手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記ローラは、前記印刷媒体を前記搬送ベルトへ押え付ける用紙押えコロとして機能することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において、
前記ローラは、前記搬送ベルトによって搬送される前記印刷媒体の両側部における前記印刷可能範囲外にそれぞれ設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記ベタ画像検知手段が前記印刷媒体のベタ画像を検知した際に、その旨をユーザへ通知する通知手段を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−148440(P2012−148440A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7642(P2011−7642)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】