説明

画像形成装置

【課題】転写部材が無端ベルトに当接する際に発生する寄り力を低減させつつ、低コストで転写部材が無端ベルトに当接する際の当接音を低減できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】第1の感光ドラムからトナー像を中間転写ベルトに向って転写するための1次転写ローラ8aと、第2の感光ドラムからトナー像を中間転写ベルトに向って転写するための1次転写ローラ8bと、1次転写ローラ8aと1次転写ローラ8b夫々を中間転写ベルトに当接する当接位置と中間転写ベルトから離間した離間位置とに移動させるスライド部材とを有し、スライド部材は、中間転写ベルトの回転方向と直交する1次転写ローラ8の軸方向において、1次転写ローラ8aの一端側を中間転写ベルトに当接させると同時に、1次転写ローラ8bの一端側の反対側の他端側を中間転写ベルトに当接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式を用いたカラー複写機やカラープリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、像担持体に形成された各色のトナー像を1次転写ローラ(転写部材)によって中間転写ベルト(無端ベルト)へ1次転写した後、シートに2次転写させる画像形成装置がある。このような画像形成装置において、1次転写ローラを移動させることで中間転写ベルトと像担持体を接離させる構成のものがある。この構成によれば、中間転写ベルトと像担持体を離接させることで、中間転写ベルトとそれに接する像担持体の寿命を延ばすことができる。
【0003】
しかしながら、上記画像形成装置では、画像形成をする為に画像形成をする1次転写ローラが中間転写ベルトに当接するため、中間転写ベルトと像担持体が当接する際に発生する当接音が発生する。この当接音を低減するため、特許文献1(特開平05−158356)に示すに示すように、当接する物体(ローラ)に対してバネなどで負荷をかけ、低速で当接させる構成が提案されている。また、他の方法として、1次転写ローラの当接タイミングをローラの軸方向両端でずらし、片側から順次当接させることで当接時の衝撃を抑えるものが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−158356号公報
【特許文献2】特開2009−20151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の1次転写ローラを持つ中間転写ユニットにおいて、上記特許文献1と同構成の機構をすべての1次転写ローラに導入する場合、部品点数の増加によってコストがかかる。また新たな機構を設けることで装置の大型化につながる可能性がある。
【0006】
一方、当接する1次転写ローラの当接タイミングを軸方向両端でずらし、片側から順次当接させる場合、回転する中間転写ベルトに対し1次転写ローラの軸方向片側のみに負荷をかけることになる。このため、特許文献2(特開2009−20151)にて開示されているような寄り力の発生が懸念される。
【0007】
1次転写部には像担持体上のトナーを中間転写ベルトとの速度差で掻き取るようにして1次転写を行うため、中間転写ベルトの搬送速度を像担持体の搬送速度よりも早い構成としているものも多い。そのため、中間転写ベルトの片側のみ1次転写ローラと像担持体に接することで片側のみに負荷がかかり、中間転写ベルトの搬送方向に対し両端側で負荷バランスが不均一となる。
【0008】
負荷のバランスが不均一になると、中間転写ベルトの軸方向両端で速度差が発生し、ベルトを速度の速い側に寄せる寄り力が発生してしまう。この寄り力が発生すると、リブなどの寄り規制部材に対しダメージを与え中間転写ユニットの寿命を縮めることにつながる。また、寄り規制部材がない中間転写ユニットでは、画像不良等が発生してしまう。
【0009】
そこで本発明は、転写部材が無端ベルトに当接する際に発生する寄り力を低減させつつ、低コストで転写部材が無端ベルトに当接する際の当接音を低減できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明にかかる代表的な画像形成装置の構成は、トナー像を担持する第1の像担持体と、トナー像を担持する第2の像担持体と、回転可能な無端ベルトと、前記第1の像担持体に対して前記無端ベルトを介して対向しており、前記第1の像担持体からトナー像を前記無端ベルトに向って転写するための第1の転写部材と、前記第2の像担持体に対して前記無端ベルトを介して対向しており、前記第2の像担持体からトナー像を前記無端ベルトに向って転写するための第2の転写部材と、前記第1の転写部材と前記第2の転写部材夫々を、前記無端ベルトに当接する当接位置と前記無端ベルトから離間した離間位置とに移動させる当接離間手段と、を有する画像形成装置において、前記当接離間手段は、前記無端ベルトの回転方向と直交する前記転写部材の軸方向において、前記第1の転写部材の一端側を前記無端ベルトに当接させると同時に、前記第2の転写部材の前記一端側の反対側の他端側を前記無端ベルトに当接させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、転写部材が無端ベルトに当接する際に発生する寄り力を低減させつつ、低コストで転写部材が無端ベルトに当接する際の当接音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る画像形成装置の構成図である。
【図2】(a)第1実施形態に係る転写装置の斜視図である。(b)当接離間手段とスライドカムの斜視図である。
【図3】(a)離間位置における転写装置の部分斜視図である。(b)当接位置における転写装置の部分斜視図である。(c)転写装置の当接離間機構を説明するための断面図である。
【図4】(a)離間位置における転写装置の一端側の部分断面図である。(b)当接位置における転写装置の一端側の部分断面図である。
【図5】(a)離間位置における転写装置の他端側の部分断面図である。(b)当接位置における転写装置の他端側の部分断面図である。
【図6】ベルト寄りを説明するため中間転写ベルトの平面図である。
【図7】(a)(b)ベルト寄りを説明するため転写装置の斜視図である。(c)第1実施形態における寄り量を比較実験した結果の表である。(d)第1実施形態における寄り量を比較実験した結果のグラフである。
【図8】第2実施形態に係る転写装置の斜視図である。
【図9】(a)第2実施形態における寄り量を比較実験した結果の表である。(b)第2実施形態における寄り量を比較実験した結果のグラフである。
【図10】他の実施形態に係る画像形成装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
本発明に係る画像形成装置の第1実施形態について、図を用いて説明する。図1は本実施形態に係る画像形成装置1の構成図である。図1に示すように、本実施形態の画像形成装置1は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色に各々対応した4つのプロセスカートリッジ3(3a、3b、3c、3d)を有している。各プロセスカートリッジ3は、現像ユニット9、クリーナユニット10を有している。現像ユニット9は、現像ローラ11、現像剤塗布ローラ12、トナー容器を有している。クリーナユニット10は、複数の感光ドラム(第1〜第4の像担持体)13、帯電ローラ14、クリーニングブレード15、廃トナー容器を有している。
【0014】
各プロセスカートリッジ3において、帯電ローラ14によって帯電した感光ドラム13の表面へ、画像情報に基づいて露光装置2により露光して、静電潜像が形成される。静電潜像は、現像ユニット9によって各色のトナーを用いて現像され、トナー像とされる。トナー像は複数の1次転写ローラ(転写部材)8(8a、8b、8c、8d)により、回転可能な中間転写ベルト(無端ベルト)17上に1次転写される。トナー像転写後に、感光ドラム13表面に残ったトナーは、クリーニングブレード15によって除去される。1次転写ローラ8a〜8dは、中間転写ベルト17の回転方向において、上流側から順に一列に配列されている。
【0015】
一方、給送トレイ30に積載されたシートSは、給送ローラ31により、2次転写ローラ5と中間転写ベルト17とのニップ部(2次転写部)に搬送される。2次転写部へ搬送されたシートは、中間転写ベルト17上に形成されたトナー像を転写され、定着装置6へと搬送される。そして、定着装置6により加熱、加圧されてトナー像を定着された後、装置本体外へ排出される。シートに転写されず中間転写ベルト17上に残った転写残トナーは、トナー回収装置7によって回収される。
【0016】
(中間転写ユニット4)
中間転写ユニット(転写装置)4は、1次転写ローラ8(8a、8b、8c、8d)、中間転写ベルト17を有している。中間転写ベルト17は、駆動ローラ18、対向ローラ19、テンションローラ20によって張架されている。1次転写ローラ8は、中間転写ベルト17の内側に各感光ドラム13の夫々に対向して配設され、中間転写ベルト17を感光ドラム13と挟持している。中間転写ベルト17は、テンションローラ20の軸方向両端に設けられたテンションバネ26(図2(a)参照)によって図1の矢印T方向に張力をかけられている。
【0017】
図2(a)は本実施形態における中間転写ユニット4を下方(プロセスカートリッジ3側)から見た斜視図である。図2(a)に示すように、1次転写ローラ8の軸方向両端にはスライド部材(当接離間手段)21が設置されている。スライド部材21は、中間転写ユニット4のケーシング16に移動可能に支持されている。1次転写ローラ8の軸方向とは、中間転写ベルト17の回転方向と直交する方向である。
【0018】
図2(b)はスライド部材21とスライドカム23を下方(プロセスカートリッジ3側)から見た斜視図である。図2(b)に示すように、スライドカム軸24が中間転写ユニット4が装置本体から駆動力を伝達されて回転と、スライドカム23がスライドカム軸24を中心に回転し位相を変えることで、スライド部材21が連動してスライドする。
【0019】
図2(a)に示すように、ケーシング16には、軸受部材27が揺動自在に支持されている。図3(c)に示すように、軸受部材27は1次転写ローラ8を回転自在に軸支している。軸受部材27の端部はボス形状27aとなっている。図4、図5に示すように、ボス形状27aがスライド部材21内をスライド可能となっている。軸受部材27には1次転写バネ22が取り付けられており、1次転写バネ22の弾性力により、軸受部材27及び1次転写ローラ8が感光ドラム13側に付勢されている。
【0020】
上記構成において、スライド部材21が当接位置、離間位置へと移動することによって、1次転写ローラ8を当接状態、離間状態へと位置規制する。図3は各1次転写ローラ8が当接状態、離間状態になった時のスライド部材21と1次転写ローラ8との関係を下方(プロセスカートリッジ3側)から見た斜視図である。
【0021】
図3(a)、図3(c)、図4(a)、図5(a)に示すように、非画像形成時には、スライド部材21が離間位置に移動する。これにより、軸受部材27が1次転写バネ22の付勢力に抗して傾斜した切り込み形状21aに沿って移動し、中間転写ベルト17から離間する方向に押し上げられる。これにより、1次転写ローラ8は中間転写ベルト17から離れた離間位置に移動する。
【0022】
一方、図3(b)、図4(b)、図5(b)に示すように、画像形成時には、スライド部材21が当接位置に移動する。これにより、軸受部材27が1次転写バネ22の付勢力により傾斜した切り込み形状21aに沿って移動し、中間転写ベルト17に当接する方向に押し下げられる。これにより、1次転写ローラ8は中間転写ベルト17に当接した当接位置に移動する。この際、ボス形状27aはスライド部材21から離れ、スライド部材21による位置規制から解放される。
【0023】
(1次転写ローラの中間転写ベルト17への当接離間のタイミング)
上述のごとく、1次転写ローラ8(軸受部材27)が位置規制から解放されると、1次転写バネ22の弾性力により1次転写ローラ8を中間転写ベルト17に当接する側に押圧する。この時、1次転写バネ22の弾性力が急激に解放され、1次転写ローラ8が中間転写ベルト17に衝突する。この衝突する際の衝撃が大きいと中間転写ベルト17へのダメージが懸念されるだけでなく、ユーザにとって不快な当接音となってしまう。
【0024】
そこで、本実施形態では、スライド部材21の切り込み形状21aの位置を1次転写ローラ8の両端で変えている。これにより、1次転写ローラ8が中間転写ベルト17に当接する当接タイミングを各1次転写ローラ8の軸方向両端でずらしている。これにより、1次転写ローラ8は、軸方向の一端が中間転写ベルト17に当接した後、他端(先行して当接した端部と逆側の端部)が中間転写ベルト17に当接する。これにより、衝撃力が分散され、一度の発生する当接音を低減できる。
【0025】
具体的には、図4(b)に示すように、1次転写ローラ8(軸受部材27)の軸方向の一端は、スライド部材21内を距離Laだけ移動することで、離間位置から当接位置に移動する。一方、図5(b)に示すように、1次転写ローラ8(軸受部材27)の軸方向の他端は、スライド部材21内を距離Lbだけ移動することで、離間位置から当接位置に移動する。距離La、Lbは、La<Lbとなっている。
【0026】
これにより、図4(a)、図5(a)の離間状態からスライド部材21が距離Laだけ移動した状態で、図4(b)に示すように、軸受部材27の一端が1次転写バネ22の付勢力により切り込み形状21aに沿って移動する。そして、中間転写ベルト17に当接する方向に押し下げられる。これにより、1次転写ローラ8の一端は中間転写ベルト17に当接した当接位置に移動する。この状態で、図5(b)に示すように、1次転写ローラ8(軸受部材27)の他端は、切り込み形状21aに到達しておらず、離間状態となっている。
【0027】
そして、さらにスライド部材21を移動し、距離Lb移動した状態で、図5(b)に示すように、軸受部材27の他端が1次転写バネ22の付勢力により切り込み形状21aに沿って移動し、中間転写ベルト17に当接する方向に押し下げられる。これにより、1次転写ローラ8の他端も中間転写ベルト17に当接した当接位置に移動し、1次転写ローラ8の全体が中間転写ベルト17に当接した状態となる。
【0028】
上記構成により、1次転写ローラ8が中間転写ベルト17に当接する際に1次転写バネ22から一度に受ける力が半分になるため、当接音を低減させることができる。また、1次転写ローラ8の一端が中間転写ベルト17に当接した状態で、他端側の1次転写バネ22の弾性力を解放すると、瞬間的には1次転写ローラ8はすでに当接している側から弾性変形しながら順次当接していくため、衝撃力が分散され当接音はさらに低減する。
【0029】
上記当接タイミングにおいて、図7(a)に示すように、すべての1次転写ローラ8(8a、8b、8c、8d)の同じ側の一端を一度に中間転写ベルト17に当接させると、中間転写ベルト17の寄りが発生してしまう。そこで、本実施形態では、図7(b)に示すように、各1次転写ローラ8の先行して当接する端部を交互にずらして配置している。
【0030】
(中間転写ベルト17の寄り)
中間転写ベルト17は駆動ローラ18によって回転しており、中間転写ベルト17は搬送方向(回転方向)において軸方向両端で等しい搬送力を受けている。
【0031】
図6(a)は中間転写ベルト17の軸方向片端(端部A)のみに、搬送方向と逆方向に負荷がかかり、反対側の端部Bには負荷がかかっていない状態を示す中間転写ベルト17の平面図である。図6(a)に示すように、端部A側にのみ負荷がかかると、中間転写ベルト17は張った状態になり、端部B側は負荷なく搬送を続けようとする。
【0032】
その結果、中間転写ベルト17の軸方向両端で搬送状態が変わり、図6(b)に示すように、中間転写ベルト17のベルト上でねじれが発生し、中間転写ベルト17は駆動ローラ18に対し進入角θを持った状態で進入していく。中間転写ベルト17が駆動ローラ18に対し進入角θを持った状態で回転を続けると、進入角θの大きさにより中間転写ベルト17は端部B側に順次寄っていく。この時に発生する力が寄り力であり、その大きさは進入角の大きさに比例する。すなわち中間転写ベルト17の軸方向両端にかかる負荷の差が大きいほど発生する寄り力は大きくなる。
【0033】
ここで、1次転写ローラ8の一端が中間転写ベルト17の端部Aに当接すると、中間転写ベルト17は搬送方向に対し垂直の向きに力を受け、中間転写ベルト17は1次転写ローラ8によって押圧された状態となる。なお、本実施形態において各1次転写バネ22のバネ定数を一定とし、各1次転写ローラ8の端部の押圧力は等しい設定としている。
【0034】
またこの際、中間転写ベルト17の端部Aは、感光ドラム13に接触する。本実施形態の画像形成装置1では、転写性能向上のため、中間転写ベルト17の搬送速度の方が、感光ドラム13の回転速度よりも早くなっている。
【0035】
従って、中間転写ベルト17は、1次転写ローラ8と中間転写ベルト17間での摩擦力と、中間転写ベルト17と感光ドラム13間での摩擦力によって、搬送方向と逆向きに摩擦力F=μ1+μを受ける。N:1次転写バネによる押圧力[N]、μ:1次転写ローラ8と中間転写ベルト17間の摩擦係数、N:感光ドラム上のNに対する垂直抗力=N[N]、μ:中間転写ベルト17と感光ドラム13間での摩擦係数である。
【0036】
なお、本実施形態では、1次転写ローラ8と中間転写ベルト17が当接すると、1次転写ローラ8は中間転写ベルト17の搬送方向に連れ回りする構成となっている。従って、1次転写ローラ8と中間転写ベルト17間に発生する摩擦力F=μは、1次転写ローラ8と中間転写ベルト17との摺動抵抗をボールベアリング等で小さくすることで、ほぼ0にできる。摩擦力F≒中間転写ベルト17と感光ドラム13間で発生する摩擦力F=μと近似できる。
【0037】
以上より、図7(a)に示すように、すべての1次転写ローラ8(8a、8b、8c、8d)の同じ側の一端を一度に中間転写ベルト17に当接させると、中間転写ベルト17の同じ側のみ垂直抗力Nを受け、摩擦力Fが発生する。これにより、中間転写ベルト17の寄りが発生してしまう。
【0038】
そこで、本実施形態では、図7(b)に示すように、各1次転写ローラ8の先行して当接する端部を交互にずらしている。すなわち、まず、中間転写ベルト17の一端に1次転写ローラ8a(図7(b)の構成において、第1の転写部材)、8c(図7(b)の構成において、第3の転写部材)の一端が当接する。これと同時に、中間転写ベルト17の他端に1次転写ローラ8b(図7(b)の構成において、第2の転写部材)、8d(図7(b)の構成において、第4の転写部材)の他端が当接する。この際、中間転写ベルト17の一端が垂直抗力N×2を受け、中間転写ベルト17の他端が垂直抗力N×2を受ける。よって、中間転写ベルト17が受ける摩擦力Fは、一端側がF×2、他端側がF×2となり、釣り合ため、中間転写ベルト17の寄りの発生を抑制できる。これにより、一度に発生する当接音を半減できるとともに、中間転写ベルト17の寄りも抑制できる。
【0039】
なお、第1〜第4の転写部材は、対応する感光ドラム13(第1の像担持体、第2の像担持体、第3の像担持体、第4の像担持体)に対して中間転写ベルト17を介して対向している。また、1次転写ローラ8aの一端側を中間転写ベルト17に当接させるタイミングと、1次転写ローラ8cの一端側を中間転写ベルト17に当接させるタイミングは同時となっている。
【0040】
(実験)
図7(c)、図7(d)は。図7(a)のユニットAと、図7(b)のユニットBとを比較検討した実験データである。図7(a)のユニットAは、同じ軸方向端部から当接させている。図7(b)のユニットBは1次転写ローラ8a、8cと1次転写ローラ8b、8dにおいて先行して当接する軸方向端部を逆にして当接している。当実験データは、1次転写ローラ8の先行して当接する端部のみを中間転写ベルト17に当接させた状態で、中間転写ベルト17を搬送させ、経過時間ごとで寄り量を比較したものである。寄り量の値は、中間転写ベルト17の端部から中間転写ユニット4の端部までの距離と初期状態の距離との差を表す。
【0041】
なお、当実験のユニット条件として、駆動ローラ18の径=30[mm]、駆動ローラ18の回転数=120[rpm]、中間転写ベルト17の搬送速度180[mm/s]とした。また、各1次転写ローラ8が当接した際に1次転写バネ22一か所あたりで中間転写ベルト17にかけられる搬送方向逆向きの摩擦力F=3.7[N]とした。また、製品において実際に当接動作を行う際は1次転写ローラ8が片側のみ当接している時間は短いが、本検討ではより効果の差を分かりやすく示すため、120[sec]とした。
【0042】
上記実験を行った結果、ユニットAで長時間搬送させた場合は、120[sec]時点で6.0[mm]という寄りを発生しているのに対し、ユニットBでは同時間で寄り量はほぼ0[mm]であった。
【0043】
以上のことから、各1次転写ローラ8の先行して当接する端部を交互にずらす構成の場合、すべての1次転写ローラ8において軸方向片側から中間転写ベルト17に当接する場合に比べて、中間転写ベルト17の軸方向両端にかかる負荷の差を小さくすることができる。このため、寄り力の緩和に効果がある。
【0044】
上記構成により、本実施形態では、新たな部品等を設けることを必要とせず、コストや製品サイズを増加させることなく、1次転写ローラ8と中間転写ベルト17の当接時に、寄り力の発生を抑えつつ当接音を低減させることができる。
【0045】
[第2実施形態]
次に本発明に係る画像形成装置の第2実施形態について図を用いて説明する。上記第1実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。図8は本実施形態に係る中間転写ユニット4(ユニットC、D、E)の斜視図である。
【0046】
図8に示すように、本実施形態の中間転写ユニット4は、各1次転写ローラ8の先行して当接する端部を変えたものである。具体的には、図8(a)のユニットCでは、1次転写ローラ8a(図8(a)の構成において、第1の転写部材)、8d(図8(a)の構成において、第3の転写部材)の一端と、1次転写ローラ8b(図8(a)の構成において、第2の転写部材)、8c(図8(a)の構成において、第4の転写部材)の他端を先行して中間転写ベルト17に当接する。図8(b)のユニットDでは、1次転写ローラ8a(図8(b)の構成において、第1の転写部材)、8b(図8(b)の構成において、第3の転写部材)の一端と、1次転写ローラ8c(図8(b)の構成において、第2の転写部材)、8d(図8(b)の構成において、第4の転写部材)の他端を先行して中間転写ベルト17に当接する。
【0047】
ユニットC、Dの構成では、上記第1実施形態と同様に、一度に発生する当接音を半減できる。また、上記第1実施形態と同様に、中間転写ベルト17の両端が受ける摩擦力を等しくすることができ、寄りの発生を抑制できる。
【0048】
また、図8(c)のユニットEでは、1次転写ローラ8dの一端と、1次転写ローラ8aの他端を先行して中間転写ベルト17に当接する。1次転写ローラ8b、8cに関しては、1次転写ローラ8a、8dの他端が中間転写ベルト17に当接するタイミングで軸方向全域が中間転写ベルト17に当接する。
【0049】
ユニットEの構成では、一度に発生する当接音を最初のタイミングでは1/4にでき、次のタイミングでは3/4にできる。また、上記第1実施形態と同様に、中間転写ベルト17の両端が受ける摩擦力を等しくすることができ、寄りの発生を抑制できる。
【0050】
図9(a)、図9(b)は各ユニットC〜Eについて、上記第1実施形態と同様の実験を行った結果を示す図である。図9(a)、図9(b)に示すように、ユニットC〜Eで120[sec]の搬送動作を行った場合、寄り量を1.0[mm]以下におさえることができた。この結果から、ユニットC〜Eの構成においても、ユニットAの場合(120[sec]時点で寄り量6.0[mm])に比べて、寄り力を低減できる。
【0051】
なお、上記第1、第2実施形態では、中間転写ユニット4を用いた画像形成装置について説明したが、本発明は係る画像形成装置に限定されるものではない。例えば、図10に示すように、中間転写ベルト17に替えてシート搬送ベルト(無端ベルト)28を設け、シート搬送ベルト28で搬送されるシートSにトナー像を直接転写する構成であってもよい。
【0052】
また、上記第1、第2実施形態では、所定の数(1つ又は2つ)の1次転写ローラ8の軸方向の一端を中間転写ベルト17の一端に当接させると同時に、所定の数と同じ数(1つ又は2つ)の1次転写ローラ8の軸方向の他端を中間転写ベルト17の他端に当接させた。しかし、本発明は、この所定の数を限定するものではない。
【符号の説明】
【0053】
La、Lb …距離
S …シート
1 …画像形成装置
3 …プロセスカートリッジ
4 …中間転写ユニット
5 …2次転写ローラ
8 …1次転写ローラ(転写部材)
9 …現像ユニット
13 …感光ドラム(像担持体)
17 …中間転写ベルト(無端ベルト)
18 …駆動ローラ
19 …対向ローラ
20 …テンションローラ
21 …スライド部材(当接離間手段)
21a …切り込み形状
22 …1次転写バネ
26 …テンションバネ
27 …軸受部材
27a …ボス形状
28 …シート搬送ベルト(無端ベルト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する第1の像担持体と、
トナー像を担持する第2の像担持体と、
回転可能な無端ベルトと、
前記第1の像担持体に対して前記無端ベルトを介して対向しており、前記第1の像担持体からトナー像を前記無端ベルトに向って転写するための第1の転写部材と、
前記第2の像担持体に対して前記無端ベルトを介して対向しており、前記第2の像担持体からトナー像を前記無端ベルトに向って転写するための第2の転写部材と、
前記第1の転写部材と前記第2の転写部材の夫々を、前記無端ベルトに当接する当接位置と前記無端ベルトから離間した離間位置とに移動させる当接離間手段と、を有する画像形成装置において、
前記当接離間手段は、前記無端ベルトの回転方向と直交する前記転写部材の軸方向において、前記第1の転写部材の一端側を前記無端ベルトに当接させると同時に、前記第2の転写部材の前記一端側の反対側の他端側を前記無端ベルトに当接させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
トナー像を担持する第3の像担持体と、
トナー像を担持する第4の像担持体と、
前記第3の像担持体に対して前記無端ベルトを介して対向しており、前記第3の像担持体からトナー像を前記無端ベルトに向って転写するための第3の転写部材と、
前記第4の像担持体に対して前記無端ベルトを介して対向しており、前記第4の像担持体からトナー像を前記無端ベルトに向って転写するための第4の転写部材と、を有し、
前記当接離間手段は、前記無端ベルトの回転方向と直交する前記転写部材の軸方向において、前記第3の転写部材の一端側を前記無端ベルトに当接させると同時に、前記第4の転写部材の前記一端側の反対側の他端側を前記無端ベルトに当接させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の転写部材から前記第4の転写部材は、前記無端ベルトの回転方向において、上流側から順に一列に配列されていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の転写部材の一端側を前記無端ベルトに当接させるタイミングと前記第3の転写部材の一端側を前記無端ベルトに当接させるタイミングは同時であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記無端ベルトは、前記像担持体のトナー像を転写される中間転写ベルトであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記無端ベルトは、トナー像を転写されるシートを搬送するシート搬送ベルトであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−177746(P2012−177746A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39548(P2011−39548)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】