説明

画像形成装置

【課題】機構の負荷を低減しつつ、タンク内の液体の攪拌を比較的短い時間で行なう。
【解決手段】インク残量割合Qが第1の割合Q1(例えば、30%)未満の場合には、比較的高い目標加速度αを設定し、インク残量割合Qが第1の割合Q1以上で第2の割合Q2(例えば、50%)未満の場合には、中程度の目標加速度αを設定し、インク残量割合Qが第2の割合Q2以上の場合には、比較的低い目標加速度αを設定し(S110〜S150)、設定した目標加速度αをもってキャリッジの加速と減速とを繰り返して同方向に移動させる(S160〜S240)。これにより、キャリッジモーターなどに頻繁に大きな負荷が作用するのを防止しながら、インク残量に拘わらず略均一な衝撃によりインクカートリッジ内のインクを攪拌することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内に貯留されている液体を吐出ヘッドから吐出することにより媒体に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置としては、キャリッジを主走査方向に往復動させることにより、キャリッジに搭載される吐出ヘッド内やタンク内のインクを攪拌するものや(例えば、特許文献1参照)、キャリッジの加速,減速,停止を複数回に亘って繰り返すことによりタンク内のインクを攪拌するものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。顔料インクは顔料粒子を溶液中に分散させたものであるため、長期間に亘って放置されると、顔料粒子が沈降し、顔料濃度がタンクの上部と下部とで不均一となる。このため、キャリッジを記録ヘッドのインクの吐出を伴わずに移動(空スキャン)させることにより、インク濃度を均一化することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−1411号公報
【特許文献2】特開2009−73091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した画像形成装置では、インク残量などのパラメーターにより攪拌回数が設定されるが、攪拌回数を多くした方が攪拌の効果が得られるものの、ユーザーに長時間の待ち時間を課すことになる。一方、キャリッジの移動加速度をキャリッジモーターが駆動可能な最大加速度とすることによりインクの攪拌を短時間で終わらせることができるが、キャリッジベルトやキャリッジガイドなどの機構の負荷が増大するため、部材の耐久性の面で不利となる。
【0005】
本発明の画像形成装置は、機構の負荷を低減しつつ、タンク内の液体の攪拌を比較的短い時間で行なうことを主目的とする。
【0006】
本発明の画像形成装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像形成装置は、
タンクに貯留されている液体を吐出ヘッドから吐出することにより媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
前記タンクと前記吐出ヘッドとを搭載して往復動するキャリッジと、
該キャリッジを移動させる移動手段と、
前記タンク内の液体の残量を取得する残量取得手段と、
前記タンク内の液体の攪拌が要求された場合、前記取得された液体の残量に基づいて前記キャリッジの目標加速度を設定し、該設定した目標加速度により前記キャリッジの加速と減速とを繰り返すことにより該キャリッジが同一方向に移動するよう前記移動手段を制御する攪拌制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の画像形成装置では、タンク内の液体の攪拌が要求された場合、タンク内の液体の残量に基づいてキャリッジの目標加速度を設定し、設定した目標加速度によりキャリッジの加速と減速とを繰り返すことによりキャリッジが同一方向に移動するよう移動手段を制御する。これにより、キャリッジ機構の負荷を低減することができると共にタンク内の液体の残量に拘わらずタンク内の液体の攪拌を適切に行なうことができる。また、キャリッジを走査方向の一端と他端との間で往復動させるものに比して、短時間でタンク内の液体を攪拌することができる。
【0009】
こうした本発明の画像形成装置において、前記攪拌制御手段は、前記取得された液体の残量が多いほど加速度が小さくなる傾向に前記目標加速度を設定して前記移動手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、タンク内の液体の残量が多いときには、タンク内の液体の攪拌の効果は維持しつつキャリッジ機構の負荷をさらに低減させることができる。
【0010】
また、本発明の画像形成装置において、前記攪拌制御手段は、前記キャリッジの加速後の減速により前記タンク内の液体に作用する衝撃の度合いが前記タンク内の液体の残量に拘わらず略一定となるよう前記目標加速度を設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、タンク内の液体の残量に拘わらず、液体の攪拌の効果を均一にすることができる。この態様の本発明の画像形成装置において、前記攪拌制御手段は、前記タンク内に残存する液体を含む前記キャリッジの総重量と該キャリッジの加速度との積が液体の残量に拘わらず略一定となるよう前記目標加速度を設定する手段である。
【0011】
さらに、本発明の画像形成装置において、前記攪拌制御手段は、加速と減速とを繰り返しながら前記キャリッジが走査方向の一端から他端まで往路移動するよう前記移動手段を制御し、前記キャリッジが前記他端に達した後には該キャリッジが該他端から前記一端まで復路移動するよう前記移動手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、効率良くタンク内の液体を攪拌させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のインクジェットプリンター20の構成の概略を示す構成図。
【図2】プリンターカバー52を開けた状態の外観を示す外観図。
【図3】本実施形態のインク攪拌処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図4】インク残量とキャリッジの加速度係数kとの関係を示す説明図。
【図5】インク攪拌の様子を示す説明図。
【図6】インク残量とキャリッジの加速度係数kとの関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態としてのインクジェットプリンター20の構成の概略を示す構成図であり、図2はプリンターカバー52を開けた状態のインクジェットプリンター20の外観を示す外観図である。
【0014】
本実施形態のインクジェットプリンター20は、図1に示すように、用紙Pを副走査方向(図中奥から手前の方向)に搬送する紙送り機構41と、紙送り機構41によりプラテン46上に搬送された用紙Pに対して主走査方向(図中左右の方向)の移動を伴って印刷ヘッド24に形成されたノズルからインク滴を吐出して印刷を行なうプリンター機構21と、装置全体をコントロールするコントローラー60と、を備える。プラテン46の主走査方向一端(図1中の右端)には、印刷ヘッド24のノズル面を封止するキャッピング装置50が設置されており、プラテン46の主走査方向他端(図1中の左端)には、ノズルの目詰まりを防止するために定期的に印刷ヘッド24のノズルからインク滴を吐出するフラッシングを行なうためのフラッシングエリア48が設けられている。
【0015】
プリンター機構21は、図1に示すように、キャリッジガイド28によりガイドされながら主走査方向に往復動可能なキャリッジ22と、キャリッジガイド28の一端側と他端側にそれぞれ設置されたキャリッジモーター34および従動ローラー35と、キャリッジモーター34と従動ローラー35とに掛け渡されると共にキャリッジ22に取り付けられたキャリッジベルト32と、キャリッジ22に搭載され溶媒としての水に顔料粒子を分散させたシアン(C),ライトシアン(LC),マゼンタ(M),ライドマゼンタ(LM),イエロー(Y),ブラック(K)の各色のインクを貯留し各色毎に独立して交換が可能なインクカートリッジ26と、インクカートリッジ26からそれぞれ供給された各インクに加圧してインク滴を吐出する複数のノズルが形成された印刷ヘッド24と、を備える。キャリッジ22は、キャリッジモーター34によりキャリッジベルト32を駆動することにより、主走査方向に往復動されるようになっている。なお、キャリッジ22の背面側には、キャリッジ22の主走査方向における位置を検出するキャリッジポジションセンサー36が取り付けられている。このキャリッジポジションセンサー36は、フレーム58にキャリッジガイド28に沿って配置されたリニア式の光学スケール36aと、光学スケール36aに対向するようキャリッジ22の背面に取り付けられ光学スケール36aを光学的に読み取る光学センサー36bとにより構成されている。また、インクカートリッジ26には、図示しないが、コントローラー60によりデータの読み込みと書き込みとが可能なチップICが取り付けられている。このチップICには、インクカートリッジ26の製造情報や出荷時の初期インク量、インク残量などのデータが記憶されている。ここで、インク残量は、コントローラー60により実行される図示しないインク残量演算処理により演算されたものが書き込まれる。インク残量の演算は、例えば、印刷処理やフラッシング処理でノズルからインク滴を吐出した回数であるショット数と1ショット毎に吐出されるインク滴の量とを乗じて計算されるインク吐出量にキャッピング装置50で実行されるクリーニングで消費されるクリーニング所要量を加えた値を前回書き込んだインク残量から減じることにより行なわれる。
【0016】
紙送り機構41は、図1に示すように、用紙Pをプラテン46上に搬送させる搬送ローラー42と、搬送ローラー42を回転駆動する搬送モーター44と、を備える。搬送モーター44は、その回転軸に回転量を検出するロータリーエンコーダー49が取り付けられており、ロータリーエンコーダー49からの回転量に基づいて駆動制御されている。なお、ロータリーエンコーダー49は、図示しないが、所定回転角間隔で目盛りが付されたロータリースケールと、ロータリースケールの目盛りを読み取るためのロータリースケールセンサーとにより構成されている。
【0017】
キャッピング装置50は、印刷ヘッド24をキャッピング装置50に対向する位置(いわゆるホームポジション)に移動させた状態でノズル面を封止することによりノズル内のインクの乾燥を防止したり、ノズル面を封止した状態でノズル内のインクを吸引することにより印刷ヘッド24をクリーニングしたりする。キャッピング装置50は、印刷ヘッド24のノズル面を密閉するために上方が開口された略直方体のキャップ51の他に、キャップ51の底部に接続されたチューブ(図示せず)や、チューブに取り付けられた吸引ポンプ(図示せず)などを備えている。このキャッピング装置50は、印刷ヘッド24をクリーニングする場合には、キャップ51により印刷ヘッド24のノズル面を封止した状態で吸引ポンプを駆動することにより、印刷ヘッド24のノズル面とキャップ51とにより形成される内部空間を負圧とし、ノズル内のインクを強制的に吸引する。
【0018】
コントローラー60は、CPU61を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、処理プログラムを記憶したROM62と、一時的にデータを記憶するRAM63と、書き換え可能で電源を切ってもデータは保持されるフラッシュメモリー64と、インターフェース(I/F)65と、を備える。このコントローラー60には、キャリッジポジションセンサー36からのキャリッジ22の位置や、ロータリーエンコーダー49からの搬送ローラー42の回転量,電源ボタン68からの電源オン信号などがI/F65を介して入力されており、コントローラー60からは印刷ヘッド24への駆動信号や搬送モーター44への駆動信号,キャリッジモーター34への駆動信号,吸引ポンプへの駆動信号などがI/F65を介して出力されている。また、コントローラー60は、ユーザーPC10からの印刷指示や印刷データをI/F65を介して受け付けたりする。なお、RAM63には、印刷バッファー領域が設けられており、ユーザーPC10から印刷データが受け付けられると、受け付けた印刷データは印刷バッファー領域に記憶される。
【0019】
本実施形態のインクジェットプリンター20は、図2に示すように、プリンターカバー52を開けた状態の上面には、インクカートリッジ26の取り付けや交換をこの位置で行なうためのカートリッジ交換用の開口部54と、ユーザーからのボタン操作によって交換が必要なインクカートリッジ26がマーク55の位置まで移動する様子を確認するための交換カートリッジ確認用の開口部56とが形成されている。本実施形態では、交換カートリッジ確認用の開口部56は、幅広に形成されており、カートリッジ交換用の開口部54や交換カートリッジ確認用の開口部56から印刷ヘッド24(キャリッジ22)が一端側(ホームポジション)から他端側(フラッシングエリア48)まで往復動する様子も確認することができるようになっている。
【0020】
本実施形態では、インクとして顔料インクを用いており、溶媒中の顔料が沈降し易いため、インクカートリッジ26を搭載するキャリッジ22を印刷ヘッド24からインクを吐出させずに移動させることにより、インクカートリッジ26内の顔料を攪拌し、その濃度を均一化させている。
【0021】
次に、こうして構成された本実施形態のインクジェットプリンター20の動作、特に、インクカートリッジ26内のインクを攪拌してインク濃度を均一にするための動作について説明する。図3は、コントローラー60のCPU61により実行されるインク攪拌処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、インクの攪拌が要求されたときに実行される。インクの攪拌の要求は、本実施形態では、電源オンされた直後や,電源オンされてからの経過時間が所定時間以上のとき、インクカートリッジ26が新規に取り付けられたとき、インクカートリッジ26が交換されたときなどになされるものとした。
【0022】
インク攪拌処理ルーチンが実行されると、コントローラー60のCPU61は、まず、インク残量割合Qを入力する(ステップS100)。ここで、インク残量割合Qは、インクカートリッジ26の容量に対する現在のインク残量の割合として演算されたものを入力するものとした。なお、インク残量は、前述したように、インクカートリッジ26に取り付けられたICチップに記録されたインク残量を読み取ることにより取得することができる。
【0023】
こうしてインク残量割合Qを入力すると、入力したインク残量割合Qと第1の割合Q1(例えば、30%など)および第2の割合Q2(例えば、50%など)とを比較する(ステップS110)。インク残量割合Qが第1の割合Q1未満の場合には、加速度係数kに値khiを設定し(ステップS120)、インク残量割合Qが第1の割合Q1以上で第2の割合Q2未満の場合には、加速度係数kに値kmidを設定し(ステップS130)、インク残量割合Qが第2の割合Q2以上の場合には、加速度係数kに値kloを設定し(ステップS140)、設定した加速度係数kにキャリッジ22を移動可能な最大加速度Aを乗じたものをインクの攪拌のためのキャリッジ22の目標加速度αとして設定する(ステップS150)。ここで、インク残量割合Qと加速度係数kとの関係の一例を図4に示す。加速度係数kは、図示するように、インク残量割合Qが0%〜30%(第1の割合Q1)の場合には100%とし、インク残量割合Qが30%〜50%(第2の割合Q2)の場合には90%とし、インク残量割合Qが50%〜100%の場合には80%とした。
【0024】
こうして目標加速度αを設定すると、カウンタCを値0に初期化し(ステップS160)、攪拌回数Crefを設定する(ステップS170)。ここで、攪拌回数Crefは、インクカートリッジ26が新規に取り付けられたときやインクカートリッジ26が交換されたときなどインクカートリッジ26が長期間に亘って放置されている可能性が高いときには比較的多い回数(例えば、250回や270回,300回など)を設定し、電源オンされた直後や電源オンされてからの経過時間が所定時間以上のときなどインクカートリッジ26が長期間に亘って放置されている可能性が低いときには比較的少ない回数(例えば、60回や70回,80回など)を設定するものとした。なお、インクカートリッジ26が放置される期間が長いほどインクの沈降の程度は進んでいると考えられることから、例えば、インクカートリッジ26に取り付けられたICチップから製造年月を読み取って放置時間を算出することにより、算出した放置時間に基づいて設定するものとしてもよい。また、インク色によって顔料の沈降の進み具合が異なる場合があるため、交換されたインクカートリッジの色毎に異なる攪拌回数Crefを設定するものとしてもよい。
【0025】
そして、設定した目標加速度αをもってキャリッジ22の加速駆動と減速駆動とが行われるようキャリッジモーター34を駆動制御する(ステップS180,S190)。なお、キャリッジ22の減速駆動は、完全に停止するまで減速するものとしてもよいし、完全に停止させない程度に減速させるものとしてもよい。キャリッジ22の加速駆動と減速駆動とを行なうと、カウンタCを値1だけカウントアップし(ステップS200)、カウンタCの値が攪拌回数Crefに至ったか否かを判定する(ステップS210)。カウンタCの値が攪拌回数Crefに至っていない場合には、キャリッジポジションセンサー36からのキャリッジ位置を入力し(ステップS220)、入力したキャリッジ位置に基づいてキャリッジ22が移動端(ホームポジション或いはフラッシングエリア48)に達しているか否かを判定する(ステップS230)。キャリッジ22が移動端に達していない場合にはステップS180に戻ってステップS180〜S230の処理を繰り返す。キャリッジ22が移動端に達している場合にはキャリッジ22の移動方向を逆方向に転換して(ステップS240)、ステップS180に戻ってステップS180〜S230の処理を繰り返す。このように、加速駆動と減速駆動とを繰り返しながらホームポジションからフラッシングエリア48まで同方向にキャリッジ22を移動させ、キャリッジ22がフラッシングエリア48に達すると、方向転換して再び加速と減速とを繰り返しながらフラッシングエリア48からホームポジションまで同方向にキャリッジ22を移動させることにより、キャリッジ22に搭載しているインクカートリッジ26内のインクの攪拌を行なうのである。ステップS210でカウンタCの値が攪拌回数Crefに至ると、これで本ルーチンを終了する。
【0026】
図5は、インクの攪拌の様子を示す説明図である。図示するように、キャリッジ22の加速時には、インクカートリッジ26内のインクが慣性によりその移動方向とは反対側に引っ張られ、キャリッジ22の定速時には、インクカートリッジ26内のインクは加速時の状態が維持される。そして、キャリッジ22の減速時には、インクカートリッジ26内のインクは移動方向に押し出され、このときの衝撃によりインクカートリッジ26内のインクは攪拌される。したがって、キャリッジ22の加速度が高いほど衝撃度は大きくなり、インクの攪拌は促進されるため、目標加速度αをできる限り高く設定した方がよい。しかしながら、高い加速度によるキャリッジ22の移動を頻繁に繰り返すと、キャリッジモーター34やキャリッジガイド28,キャリッジベルト32の負荷が過大となり、破損などの不具合を招くおそれがある。インクカートリッジ26内のインクに作用する衝撃度はインクカートリッジ26内のインクの残量が多いほど大きくなることから、実施例では、インク残量割合Qが多いほど低くなるよう目標加速度αを設定してキャリッジ22の加速と減速と繰り返すことにより、キャリッジモーター34などに頻繁に大きな負荷が作用するのを防止しながら、インク残量に拘わらず略均一な衝撃によりインクカートリッジ26内のインクを攪拌しているのである。
【0027】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のキャリッジ22が本発明の「キャリッジ」に相当し、キャリッジモーター34やキャリッジベルト32が「移動手段」に相当し、インク残量を演算するコントローラー60が「液体残量取得手段」に相当し、図3のインク攪拌処理ルーチンを実行するコントローラー60が「攪拌制御手段」に相当する。
【0028】
以上説明した本実施形態のインクジェットプリンター20によれば、インク残量割合Qが多いほど低くなるよう目標加速度αを設定してキャリッジ22の加速と減速とを繰り返して同方向に移動させるから、キャリッジモーター34などに頻繁に大きな負荷が作用するのを防止しながら、インク残量に拘わらず略均一な衝撃によりインクカートリッジ26内のインクを攪拌することができる。しかも、加速駆動と減速駆動とを繰り返しながらキャリッジ22がその移動端に達するまで同一方向に移動させ、移動端に達したときには方向転換して再び加速駆動と減速駆動とを繰り返しながら同一方向に移動させるから、インクカートリッジ26内のインクを効率良く攪拌させることができる。
【0029】
上述した実施形態では、インク残量割合Qに応じて目標加速度αを高低3段階に設定するものとしたが、これに限定されるものではなく、2段階以上であれば、その段数は幾つであっても構わない。図6に、10%刻みで0%から100%までの各インク残量割合Qにおけるキャリッジ22の総重量(インクカートリッジ26内に残存するインクを含む),加速度(加速度係数k),その加速度でキャリッジ22の加速と減速を行なったときの衝撃度の関係の一例を示す。この例では、図示するように、インク残量割合Qに拘わらず衝撃度が均一となるように、キャリッジ22の総重量と加速度(加速度係数k)との積が略一定の衝撃度となるように加速度係数kを設定するものとした。
【0030】
上述した実施形態では、インクカートリッジ26をキャリッジ22に搭載したいわゆるオンキャリッジ方式のインクジェットプリンター20に適用するものとしたが、インクカートリッジをフレーム58に固定すると共に印刷ヘッド24にサブタンクを搭載しインクカートリッジとサブタンクとをチューブにより接続してインクを供給するいわゆるオフキャリッジ方式のインクジェットプリンターに適用するものとしてもよい。この場合でも、印刷ヘッドのサブタンク内のインクの攪拌は可能である。
【0031】
上述した実施形態では、印刷ヘッド24として、圧電素子に電圧を印加することによりこの圧電素子を変形させてインクを加圧する方式を採用するものとしたが、発熱抵抗体(例えばヒーターなど)に電圧を印加することによりインクを加熱して発生した気泡によりインクを加圧する方式を採用するものとしてもよい。
【0032】
上述した実施形態では、本発明の画像形成装置をインクジェットプリンター20に適用して説明したが、原稿の読み取りが可能なスキャナーを備えるマルチファンクションプリンターに適用するものとしたり、FAX機能を備えるFAX装置に適用するものとしてもよい。
【0033】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0034】
20 インクジェットプリンター、21 プリンター機構、22 キャリッジ、24 印刷ヘッド、26 インクカートリッジ、28 キャリッジガイド、32 キャリッジベルト、34 キャリッジモーター、36 キャリッジポジションセンサー、36a 光学スケール、36b 光学センサー、41 紙送り機構、42 搬送ローラー、46 プラテン、48 フラッシングエリア、49 ロータリーエンコーダー、50 キャッピング装置、51 キャップ、52 プリンターカバー、54 カートリッジ交換用の開口部、55 マーク、56 交換カートリッジ確認用の開口部、60 コントローラー、61 CPU、62 ROM、63 RAM、64 フラッシュメモリー、65 インターフェース(I/F)、68 電源ボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクに貯留されている液体を吐出ヘッドから吐出することにより媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
前記タンクと前記吐出ヘッドとを搭載して往復動するキャリッジと、
該キャリッジを移動させる移動手段と、
前記タンク内の液体の残量を取得する残量取得手段と、
前記タンク内の液体の攪拌が要求された場合、前記取得された液体の残量に基づいて前記キャリッジの目標加速度を設定し、該設定した目標加速度により前記キャリッジの加速と減速とを繰り返すことにより該キャリッジが同一方向に移動するよう前記移動手段を制御する攪拌制御手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置であって、
前記攪拌制御手段は、前記取得された液体の残量が多いほど加速度が小さくなる傾向に前記目標加速度を設定して前記移動手段を制御する手段である
画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像形成装置であって、
前記攪拌制御手段は、前記キャリッジの加速後の減速により前記タンク内の液体に作用する衝撃の度合いが前記タンク内の液体の残量に拘わらず略一定となるよう前記目標加速度を設定する手段である
画像形成装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像形成装置であって、
前記攪拌制御手段は、前記タンク内に残存する液体を含む前記キャリッジの総重量と該キャリッジの加速度との積が液体の残量に拘わらず略一定となるよう前記目標加速度を設定する手段である
画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前記攪拌制御手段は、加速と減速とを繰り返しながら前記キャリッジが走査方向の一端から他端まで往路移動するよう前記移動手段を制御し、前記キャリッジが前記他端に達した後には該キャリッジが該他端から前記一端まで復路移動するよう前記移動手段を制御する手段である
画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−192635(P2012−192635A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58758(P2011−58758)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】