説明

画像形成装置

【課題】速度検出用スケールを設けた無端ベルトの移動方向速度の検知を、高精度に維持できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】表面速度検出装置110のセンサ保持部材120のベルト対向面121に、2つセンサ窓123と、複数の横溝と、センサ窓123の長辺側に縦溝を設ける。この保持部材120に、2つの速度検知用センサ131が固定されたセンサ基板130を取り付けて、さらに、2つのブラケット開口112を有した支持取り付け用のセンサブラケット111を取り付ける。このセンサブラケット111に吸気手段140である吸気ファン141とダクト142を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速度検出用スケールを設けたベルト体の移動方向速度を検出する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、市場からの要求にともない、カラー複写機やカラープリンタなどカラー画像を出力する様々な画像形成装置が普及している。例えば、カラー電子写真装置の代表的な方式としては、次のような方式が知られている。潜像担持体や現像装置等からなる複数の作像部を備え、各作像部の潜像担持体上に形成した単色トナー像を像担持体である中間転写ベルト上に順次転写して、中間転写ベルト上に合成カラー像を形成する。そして、中間転写ベルト上に形成した合成カラー画像をシート等の記録媒体上に、2次転写ローラや2次転写ベルト等により、一括転写するタンデム中間転写型が知られている。また、同様な作像部を複数備え、各作像部の潜像担持体上で形成した単色トナー像を、搬送体である転写搬送ベルトで搬送されるシート等の記録媒体上に直接転写するタンデム直接転写型も知られている。
【0003】
いずれの方式も、無端状のベルト体(以下、無端ベルトという)を使用しており、像担持体としての無端ベルト上、あるいは搬送体としての無端ベルトで搬送する転写材上にて各色トナー像を重ね合わせるため、このベルトの走行安定性が非常に重要となってくる。いずれの方式でも、各色の画像を色ズレなく重ねて転写する機能が大きな課題であり、一定の速度で駆動するために様々な工夫がなされている。
【0004】
図18にタンデム中間転写型の画像形成部の一例を示す。このようなタンデム中間転写型の場合には、1次転写位置が複数箇所あるため、中間転写ベルト10のベルト体一周周期の速度ムラも色ずれとして発生してしまう。また、中間転写ベルト10のベルト厚み変動やカールグセ等によっても速度が変動し色ずれが発生する。そして、従来のこのような画像形成部では、例えば図19に示すように、中間転写ベルトの速度変動によるトナー像の位置決め誤差は、複数の周波数成分を有する波形になってしまう。中間転写ベルトの速度変動中に各トナー像を重ね合わせて形成された画像は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)各色の位置が合わない画像となるため、中間転写ベルトの速度変動は色ずれや色変わりなどの画質劣化の原因になる。このような不具合の対策の一つとしてリニアエンコーダ等を用いた表面速度検出装置による表面速度の計測に基づいたベルト駆動源の制御がある。この計測した値の出力より、ベルト駆動源にフィードバック制御をかけて中間転写ベルト10を等速度で移動させることが可能になる。また、書き込みタイミングへの補正等へも利用でき、位置合わせ技術の源となりえる手段でもある。
【0005】
例えば、特許文献1には、次のような表面速度検出装置を備え、ベルト駆動源にフィードバック制御を行う画像形成装置が記載されている。中間転写ベルトの幅方向の一端部の内周面側に速度検出用スケールを設け、速度検知用センサ位置で、中間転写ベルトを外周面側から押さえるベルト押さえ部材(位置固定用部材)と、内周面側から押さえるセンサ保持部材(加圧部材)とで挟み込んでいる。このように挟みこむことで、中間転写ベルトのばたつきによるセンサ面との距離変動を抑制するものである。しかし、一般的に、画像形成装置などの用途に使われるベルトは、柔軟性、温湿度変化および変形性を有している。このように変形性を有するため、この文献に記載の発明のように1個の速度検知用センサで速度を検出する構成では、中間転写ベルトに伸縮等が生じた際に、スケールのマークパターン周期が変動し、マークを高精度に計測したとしても正確な位置情報が得られない。正確なマーク位置情報が得られないと、正確な表面速度を算出することができないといった問題があった。
【0006】
このような無端ベルトの伸縮に起因した、マークパターン周期変動の影響を抑制するため、図20(a)〜(d)に示すように、表面速度検出装置110に速度検知用センサ131を2つ設けた画像形成装置も知られている。この表面速度検出装置110では、図20(a)の概要図に示すように、中間転写ベルト10は、その内周面に一定間隔のマークパターン(破線で図示)を有したスケール101を設けている。また、中間転写ベルト10のばたつきによるセンサ面132との距離変動を抑制するため、ベルト押さえ部材160とセンサ保持部材120とで挟み込んでいる。図20(b)に示すように、ベルト押さえ部材160には中間転写ベルト10に対して圧力をかけるために、ベルト接触部分に摩擦力を低減するため植毛した基層がスポンジのベルト接触部材162を、フレーム161に接着している。また、図20(c)に示すセンサ保持部材120の中間転写ベルト10に接触するベルト対向面121にも、摩擦力を低減するために植毛している。センサ保持部材120のベルト対向面121には、2つのセンサ窓123が設けられ、図20(d)に示す速度検知用センサ131を2つ保持するセンサ基板130が嵌め込まれており、センサ窓123からセンサ面132が露出している。そして、2つの速度検知用センサ131で、スケール101上の同一のマークが通過する時間差(Δt)を計測し、2つの速度検知用センサ131の間隔(D)から、V=D/tの演算を行い、ベルト表面速度(V)を求める。このような演算を複数回行いベルト表面速度の平均値(Vave=(V1+V2+V3+・・・・・+VN)/N)を求める。そして、求めた平均値と個々のマークが2つの速度検知用センサを通過する際に順次演算して得るベルト表面速度とに基づいて、無端ベルトの表面速度を検知するというものである。このように、同一のマークを通過する際の速度を演算するのでマークパターン間隔の誤差の影響を抑制することができるというものである。
【0007】
2つの速度検知用センサを設ける、より具体的な例としては、特許文献2に、次のような表面速度検出装置を備えたベルト搬送装置が記載されている。スケールのベルトマーク(タイミングマーク)間隔に誤差が生じても精度よく無端ベルトの表面速度を検知するため、ベルトマークを検知する速度検知用センサ(センサ)を2つ設けている。そして、同一のマークを検出する時間差Δtを、駆動ローラ(駆動ロール)の回転周期の整数倍の期間行い、通過時間の平均値(tave=(Δt1+Δt2+Δt3+・・・・・+ΔtN)/N)を求める。この通過時間の平均値と個々のマークが2つの速度検知用センサを通過する際に計測する時間差Δtとを比較し、無端ベルトの表面速度を検知するというものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1、2、及び図20を用いて説明した表面速度検出装置の構成では、いずれも無端ベルトのばたつきを抑制するために、無端ベルトのベルト押さえ部材を設ける必要がある。ベルト押さえ部材を設ける必要から、無端ベルトを介してベルト押さえ部材に対向する速度検知用センサも、無端ベルトの幅方向の一端部に設けることとなる。そして、無端ベルトの幅方向端部はトナーや潤滑剤等が入り込みやすく、無端ベルトを伝ってトナーや潤滑剤等が速度検知用センサのセンサ面に付着して汚れ、スケールのベルトマークを検知できなくなる不具合が発生する可能性が高い。さらに、センサ面をセンサ保持部材等か露出させるセンサ窓には隙間が無いことが多く、トナー等が溜まってセンサ面を塞いでベルトマークを検知できなくなることも多かった。しかし、上述したいずれの表面速度検出装置にも、無端ベルトの幅方向端部に設けることに起因したセンサ面汚れを防止する構成はなく、経時によりセンサ面汚れて無端ベルトの移動方向速度の検知を高精度に維持できくなる問題がある。
【0009】
また、そして、特許文献2や図20を用いて説明した速度検知用センサを2つ設ける表面速度検出装置の構成では、2つ設ける速度検知用センサの間隔(D)の経時精度の維持が重要となる。しかし、画像形成装置内には各種駆動モータや定着装置、高圧基板等が配置されており、速度検知用センサのセンサ設置位置によっては通電とともに表面速度検出装置の温度が上昇する場合がある。このように温度が上昇すると、速度検知用センサを2つ設ける表面速度検出装置の構成では、速度検知用センサを固定したセンサ基板やセンサ保持部材等も熱膨張してセンサ設置位置がばらつくため、検知精度が落ちるという問題がある。例えば、特許文献2に記載の構成では、2つ設ける速度検知用センサの間隔が変わると、個々のマークが2つの速度検知用センサを通過する際に計測される時間差Δtが変化してしまう。その結果、速度検知用センサの間隔の誤差分だけ、無端ベルトの表面速度を検知結果に誤差が生じてしまう。そして、特許文献2に記載の構成には、温度上昇に起因した速度検知用センサの間隔の変化を抑制する手段を何ら備えていなかった。なお、速度検知用センサが1つの場合でも、例えば、速度検知用センサの支持部の構成によっては、熱膨張の影響を受け、速度検知用センサの配置位置がばらつきが生じていてしまう。
【0010】
また、駆動ローラの回転周期の整数倍の期間分の同一のマークを検出する時間差Δtの平均値を速度検知のための基準としている。つまり、速度検知を行なうために基準とする基準速度(所定速度)を、無端ベルトが駆動ローラの整数回転分の時間、回転した場合の平均速度(D/tave)としている。この根拠として、特許文献2の記載には、次の2点が挙げられている。駆動ローラの整数回転分の時間に渡る無端ベルトの平均速度が、駆動ローラの表面速度(駆動源の回転速度)にほぼ等しい点。そして、駆動ローラの表面速度が基準速度(所定速度)のコンマ数パーセントの誤差しか含まない点である。しかし、タンデム型のカラー画像形成装置における、コンマ数パーセントとは、非常に大きな数字である。例えば、各感光体ローラのピッチが150mmである場合の0.1パーセントは、0.15mmのずれに相当するため、色ずれがはっきりと認識されるレベルになってしまう。そして、2つの速度検知用センサの間隔が温度変化によって変化する場合についても同様のことがいえるため、温度変化によるセンサ間隔変化は大きな誤差を生じさせることがわかる。
【0011】
なお、無端ベルトの幅方向端部における、トナーや潤滑剤等の付着による汚れに関して、特許文献3には、次のような吸引手段を備えた画像形成装置が記載されている。スケールのトナーの汚れを、速度検知用センサの検出値の乱れで検知した場合に、通常動作時にスケール上のトナー等を吸引する吸引手段を停止させることで、スケール清掃部材(払拭体)をスケールに接触させてスケールの汚れをクリーニングする構成としている。ここで、トナー等を吸引する手段は、スケール清掃部材の中間転写ベルトの幅方向外部側に設けられており、通常動作時には、中間転写ベルトの幅方向に動作可能なブラシ等のスケール清掃部材を吸引し、スケール位置から退避させている。また、速度検知用センサは、タンデム中間転写型の画像形成部の無端ベルト搬送方向上流側であって、中間転写ベルトクリーニング手段の下流側に設けられている。そして、スケール清掃部材は、2次転写装置の無端ベルト搬送方向下流側であって、中間転写ベルトクリーニング手段の上流側に設けられている。この速度検知用センサとスケール清掃部材の配置の関係からも明らかなように、この文献に記載の発明の目的はスケール表面の汚れに関するものである。したがって、本発明の課題の1つであるセンサ面の汚れに起因して、速度検出用スケールを設けた無端ベルトの移動方向速度の検知を高精度に維持できなくなることに関するものではない。
【0012】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、スケール検出手段のセンサ面汚れ、及び温度上昇によるスケール検出手段の配置位置ばらつきに起因した、無端ベルトの移動方向速度の検知精度の低下を抑えることで、検知速度検出用スケールを設けた無端ベルトの移動方向速度の検知を、高精度に維持できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の画像形成装置は、画像形成装置に用いられる無端状のベルト体と、該ベルト体を駆動するベルト駆動手段と、該ベルト体の移動方向速度を検出するために該ベルト体に設けられた速度検出用スケールと、該速度検出用スケールを検出するスケール検出手段とを備える画像形成装置において、上記速度検出用スケールの検出位置側より上記ベルト体を押さえ、かつ該速度検出用スケール検出手段を保持するセンサ保持部材と、上記速度検出用スケールの検出位置で、上記センサ保持部材の上記スケール検出手段で検出する側の面に上記ベルト体を吸着するための吸気ファンと、を備えていることを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の画像形成装置は、請求項1に記載の画像形成装置において、スケール検出手段の近傍の温度を検知する温度検知手段を備え、上記温度検知手段の検知結果により、吸気ファンのオン/オフを切り替える制御を行うことを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の画像形成装置は、請求項1又は2に記載の画像形成装置において、複数の潜像持体と、上記複数の潜像持体上にそれぞれ形成されたトナー像を、中間転写体又は被転写体に転写するための複数の転写ローラと、スケール検出手段及び吸気ファンを、同時に画像形成時のベルト体の位置に対して接離する接離機構と、を備えていることを特徴とするものである。
また、請求項4に記載の画像形成装置は、請求項1乃至3のいずれか一に記載の画像形成装置において、速度検出用スケールが絶縁体からなることを特徴とするものである。
また、請求項5に記載の画像形成装置は、請求項1乃至4のいずれか一に記載の画像形成装置において、速度検出用スケール及びスケール検出手段を、ベルト体の移動方向に垂直な方向の中央に設けることを特徴とするものである。
また、請求項6に記載の画像形成装置は、請求項1乃至5のいずれか一に記載の画像形成装置において、スケール検出手段のセンサ面とセンサ保持部材との間に挟み込むセンサ面突き当て板を設け、センサ面突き当て板の線膨張係数が、スケール検出手段を取り付ける基板の線膨張係数以下であることを特徴とするものである。
本発明は、速度検出用スケール検出手段を保持し、速度検出用スケールの検出位置側より無端状のベルト体を押さえているセンサ保持部材の、スケール検出位置側の面に、吸気ファンでベルト体を吸着できる。このように吸着することで、ベルト押さえ部材を設けなくてもベルト体のばたつきを抑制できるので、スケール検出手段を保持するセンサ保持部材と速度検出用スケールの設置位置は、ベルト体の幅方向の一端部に限定されない。設置位置が限定されないので、速度検出用スケールと、スケール検出手段を保持するセンサ保持部材とを、トナーや潤滑剤等が付着しにくい位置に設置可能である。さらに、速度検出用スケールの検出位置でベルト体を吸着するために、吸気ファンで気流を発生させるので、トナーや潤滑剤等を速度検出用スケールの検出位置から、この気流で吸い出すこともできる。速度検出用スケール及びスケール検出手段をトナーや潤滑剤等が付着しにくい位置に設置したり、トナーや潤滑剤等を検出位置から吸い出したりすることで、スケール検出手段のセンサ面にトナーや潤滑剤等が付着することを防げる。したがって、経時によりスケール検出手段のセンサ面が汚れることに起因した、ベルト体の移動方向速度の検知精度の低下を抑制できる。
また、吸気ファンで発生させる気流により、センサ保持部材及びスケール検出手段の温度上昇を抑制することができ、熱膨張によるスケール検出手段の設置位置のばらつきを低減できる。したがって、スケール検出手段の温度上昇による設置位置のばらつきに起因した、ベルト体の移動方向速度の検知精度の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、経時によるスケール検出手段のセンサ面の汚れ、及び温度上昇によるスケール検出手段の設置位置のばらつきに起因した、無端ベルトの移動方向速度の検知精度の低下を抑制できる。よって、速度検知用スケールを設けた無端ベルトの移動方向速度の検知を、高精度に維持できる画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る複写機の概略図。
【図2】実施例1に係る表面速度検出装置の概略図。
【図3】センサ保持部材のベルト対向面、及び速度検知用センサの説明図。
【図4】センサ保持部材の説明図。
【図5】センサ保持部材にセンサブラケットを取り付けた状態の斜視図。
【図6】センサブラケットにダクトを取り付けた状態の斜視図。
【図7】ダクトに吸引ファンを取り付けた状態の斜視図。
【図8】中間転写ベルト端部に設けたスケールの説明図。
【図9】実施例2に係る速度検知用センサが取り付けられたセンサ保持部材の斜視図。
【図10】速度検知用センサが取り付けられたセンサ保持部材の断面図。
【図11】センサ面突き当て板を設けない場合の、速度検知用センサ間隔の説明図。
【図12】センサ面突き当て板を設けた場合の、速度検知用センサ間隔の説明図。
【図13】センサ基板へ取り付けるセンサ面突き当て板の説明図。
【図14】実施例3に係る中間転写ユニットの側面図。
【図15】実施例3に係る中間転写ユニットの平面図。
【図16】従来の表面速度検出装置を画像形成時の中間転写ベルトから離間させる際の説明図。
【図17】実施例3の表面速度検出装置を画像形成時の中間転写ベルトから離間させる際の説明図。
【図18】従来のタンデム中間転写型の画像形成部の一例の概要図。
【図19】従来の中間転写ベルトの速度変動による位置決め誤差の経時変化例のグラフ。
【図20】従来の速度検知用センサを2つ設けた表面速度検出装置例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、複数の感光体が並行配設されたタンデム型で中間転写(間接転写)方式を採用するカラーレーザー複写機(以下、単に「複写機」という)の一実施形態について、実施例を挙げ図を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る複写機の概略図である。まず、各実施例に共通する本実施形態の画像形成装置の概要から説明する。
【0017】
図1における、符号100は複写機本体であり、符号200はそれを載せる給紙テーブルであり、符号300は複写機本体100上に取り付けるスキャナであり、符号400はさらにその上に取り付ける原稿自動搬送装置(ADF)である。
【0018】
図1に示すように、複写機本体100には、その中央に、無端状のベルト体である中間転写ベルト10有した中間転写ユニットを設けている。中間転写ベルト10が本実施形態におけるベルト体に相当する。図1に示すとおり、本実施形態の複写機では3つの支持ローラ14、15、16に掛け回して図中時計回りに回転搬送可能としている。また、3つの支持ローラのうち第2の支持ローラ15の左に、画像転写後に中間転写ベルト10上に残留する残留トナーを除去する中間転写体クリーニング装置17を設けている。
【0019】
また、3つの支持ローラのうちの第1の支持ローラ14と第2の支持ローラ15間に張り渡した中間転写ベルト10上にはその搬送方向に沿って、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4つの画像形成手段18を横に並べて配置してタンデム画像形成部20を構成する。また、このタンデム画像形成部20の上には、さらに露光装置21を設ける。
【0020】
一方、中間転写ベルト10をはさんでタンデム画像形成部20と反対の側には、2次転写装置22を備える。この2次転写装置22は、2つのローラ23間に、無端ベルトである2次転写ベルト24を掛け渡して構成し、中間転写ベルト10を介して第3の支持ローラ16に押し当てて配置し、中間転写ベルト10上のトナー画像をシート上に転写する。2次転写装置22の図中左には、シート上に転写されたトナー画像を定着する定着装置25を設けている。定着装置25は、無端ベルトである定着ローラと加熱ローラに架け渡された定着ベルト26に、加圧ローラ27を押し当てて構成する。
【0021】
上述した2次転写装置22には、トナー画像転写後のシートをこの定着装置25へと搬送するシート搬送機能も備えている。もちろん、2次転写装置22として、非接触のチャージャを配置してもよく、そのような場合は、このシート搬送機能をあわせて備えることは難しくなる。なお、本実施形態では、このような2次転写装置22及び定着装置25の下に、上述したタンデム画像形成部20と略平行な、シートの両面に画像を記録するためにシートを反転するシート反転装置28を備えている。
【0022】
次に、このカラー複写機を用いてコピーをとるときの動作について説明する。まず、原稿自動搬送装置400の原稿台30上に原稿をセットする。又は、原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じて押さえる。
【0023】
そして、スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットしたときは、原稿を搬送してコンタクトガラス32上へと移動させた後、他方、コンタクトガラス32上に原稿をセットしたときは、直ちにスキャナ300を駆動し、第1走行体33および第2走行体34を走行する。そして、第1走行体33で光源から光を発射するとともに原稿面からの反射光をさらに反射して第2走行体34に向け、第2走行体34のミラーで反射して結像レンズ35を通して読み取りセンサ36に入れ、原稿内容を読み取る。
【0024】
また、スタートスイッチを押すと、不図示の駆動モータで支持ローラ14、15、16のうち1つを回転駆動して他の2つの支持ローラを従動回転させ、中間転写ベルト10を回転搬送する。同時に、個々の画像形成手段18で感光体40を回転して、各感光体40上にそれぞれ、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の単色画像を形成する。そして、中間転写ベルト10の搬送とともに、それらの単色画像を、1次転写ローラ62の位置で順次、1次転写して中間転写ベルト10上に合成カラー画像を形成する。
【0025】
一方、スタートスイッチを押すと、給紙テーブル200の給紙ローラ42の1つを選択回転し、ペーパーバンク43に多段に備える給紙カセット44の1つからシートを繰り出し、分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路46に入れ、搬送ローラ47で搬送して複写機本体100内の給紙路48に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。又は、給紙ローラ50を回転して手差しトレイ51上のシートを繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。
【0026】
そして、中間転写ベルト10上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転し、中間転写ベルト10と2次転写装置22との間にシートを送り込み、2次転写装置22でシート上にカラー画像を転写して記録する。
【0027】
画像転写後のシートは、2次転写装置22で搬送して定着装置25へと送り込み、定着装置25で熱と圧力とを加えて転写画像を定着して後、切換爪55で切り換えて排出ローラ56で排出し、排紙トレイ57上にスタックする。又は、切換爪55で切り換えてシート反転装置28に搬送し、そこで反転して再び転写装置へと導き、裏面にも画像を記録して後、排出ローラ56で排紙トレイ57上に排出する。
【0028】
一方、画像転写後の中間転写ベルト10は中間転写体クリーニング装置17で、画像転写後に中間転写ベルト10上に残留する残留トナーを除去し、タンデム画像形成部20による再度の画像形成に備える。
【0029】
次に、本実施形態の特徴部である、中間転写ベルト10の表面速度検出装置110について実施例を挙げて説明する。
【0030】
(実施例1)
まず、本実施形態の第1の実施例である実施例1について、図を用いて説明する。図2は、本実施例に係る表面速度検出装置の概略図、図3は、センサ保持部材のベルト対向面(a)、及び速度検知用センサ(b)の説明図である。図4は、センサ保持部材の説明図であり、上方からの斜視図(a)と下方からの斜視図(b)を示している。図5は、センサ保持部材にセンサブラケットを取り付けた状態の斜視図、図6は、センサブラケットにダクトを取り付けた状態の斜視図、図7は、ダクトに吸引ファンを取り付けた状態の斜視図である。そして、図8は、中間転写ベルト端部に設けたスケールの説明図である。
【0031】
背景技術で説明したように、従来の無端ベルトの表面移動速度検知する表面速度検出装置では、経時によりセンサ面汚れや温度上昇に起因して無端ベルトの移動方向速度の検知を高精度に維持できくなる問題があった。従来は、センサ面汚れに関して、無端ベルトのはたつきを抑制するために設けるベルト押さえ部材を設ける必要性から、無端ベルトの幅方向端部に設けざるを得ない場合が多く、かつ、センサ面の汚れを防止する構成を備えていなかった。このため、経時によりセンサ面汚れて無端ベルトの移動方向速度の検知を高精度に維持できくなるという不具合が発生していた。また、温度上昇に関して、速度検知用センサの間隔の変化を抑制する手段を何ら備えていなかった。このため、スケール検出手段である速度検知用センサを固定したセンサ基板やセンサ保持部材等も熱膨張してセンサ設置位置がばらつくため、検知精度が落ちるという不具合が発生していた。
【0032】
そこで、本実施例の中間転写ベルト10の表面移動速度を検知する表面速度検出装置110では、次のように構成することとした。表面速度検出装置110に、中間転写ベルト10の内周面の一端部に設けた速度検出用スケールであるスケール101(図8参照)を検知する、スケール検出手段である速度検知用センサ131を2つ設けた。そして、図2に示すように、ベルト押さえ部材160を設けなくても中間転写ベルト10のばたつきを抑制するために、センサ保持部材120のベルト対向面121に中間転写ベルト10を吸着する吸着手段140を設けた。さらに、吸着手段140により形成される気流を用いて、図3(a)、(b)に示す速度検知用センサ131のセンサ面132を露出させるセンサ窓123に、トナー等が溜まることを防止してセンサ面132の汚れ自体を抑制することとした。また、この気流により、センサ保持部材120や速度検知用センサ131、及びセンサ基板130の速度検知用センサ131を設けた部分を冷却し、温度上昇に起因した速度検知用センサ131の間隔の変動を抑制することとした。
【0033】
ここで、各部材の構成について、より詳細に説明する。図3(a)に示すように、センサ保持部材120のベルト対向面121には、中間転写ベルト10の搬送方向の幅が、露出させるセンサ面132の幅より僅かに狭い略矩形状のセンサ窓123をそれぞれ設けている。また、ベルト対向面121には、それぞれのセンサ窓123の各辺の中央に垂直に接する、気体流路である横溝122が形成されている。そして、中間転写ベルト10の搬送方向に平行に形成な横溝122が2つのセンサ窓123に接する4箇所には、ベルト対向面121を貫通する縦溝124が形成されており、各横溝122から吸引した気体を図中下方へ搬送する流路を形成している。このようにセンサ保持部材120を構成することで、ベルト対向面121に設けた横溝122から、図3(b)に示す速度検知用センサ131の両サイドに位置する縦溝124へ気体を吸引し、中間転写ベルト10をベルト対向面121に吸着できる。
【0034】
なお、センサ保持部材120におけるベルト対向面121の、各溝を形成していない部分には、背景技術で、図20を用いて説明した構成と同様に、中間転写ベルト10との摩擦を低減するために植毛している。センサ保持部材120は、図4(a)、(b)に示すように、その上面であるベルト対向面121には、2つのセンサ窓123が設けられ、詳しくは後述するセンサブラケット111を取り付ける下方の面は開放されている。また、4つの側面のうち1つには、詳しくは後述するセンサ基板130を嵌め込むために切り欠くように形成されている。このセンサ保持部材120に、詳しくは後述するセンサ基板130とセンサブラケット111を接合することで、縦溝124から、図5に示すセンサブラケット111の2つの矩形状のブラケット開口112への気体の流路が形成される。なお、センサ保持部材120は樹脂であるポリカーボネートにより形成している。
【0035】
センサ基板130は、図3(b)に示すようにセンサ保持部材120のセンサ窓123に合わせて2つの速度検知用センサ131が取り付けられた、ガラスエポキシ樹脂からなる。そして、図中ハッチィングを施したセンサ面132側に、図中破線で示すセンサ窓123の矩形部分が収まるように、かつ、上述した4つの縦溝124により形成される開口が、速度検知用センサ131の各側面よりも外側まで延びるように配置する。そして、センサ基板130を、基板側面及び速度検知用センサ131を設けた先端側とセンサ保持部材120の内壁面とが離間するように、センサ保持部材120のベルト対向面121裏側に形成した2つの受け部125にネジ止めする。このように構成したセンサ基板130をセンサ保持部材120に取り付けることで、センサ保持部材120の横溝122からセンサ保持部材120のセンサ基板130を格納する部分への気体の流路が形成される。また、センサ保持部材120のセンサ基板130を取り付けた側には、略L字状に折り曲げ加工されたセンサブラケット111が取り付けられる。
【0036】
このセンサブラケット111は、センサ保持部材120を中間転写ユニット、中間転写ユニットのサブフレーム、又は、装置本体に取り付けるとともに、吸着手段140の固定用の機能も備えている。そして、図5に示すように、センサ保持部材120のセンサ基板130を取り付けた側と、吸着手段140を取り付ける側とを連通し、気体の流路を形成するため、矩形状のブラケット開口112が2つの形成されている。
【0037】
吸着手段140は、図2に示すように、吸気ファン141とダクト142とからなる。図6に示すようにダクト142は、センサブラケット111の2つのブラケット開口112を囲い込む矩形状部分144と、吸気ファン141のファン部分に接続する円筒状部分143と、吸気ファン141を取り付ける矩形状のツバ部からなる。そして、吸気ファン141は、図6に示すように、ダクト142のツバ部に取り付ける。このように、吸着手段140を構成することで、効率よく、気体を、センサブラケット111のブラケット開口112を介して、センサ保持部材120側から吸気することができる。
【0038】
また、中間転写ベルト10の内周面に、図8に示すような一定間隔のマークパターンを有したスケール101を設けている。スケール101は直接中間転写ベルト10にインクジェットプリンタ等で転写してもよいし、例えばレーザー加工機でベルトに加工することもできる。また、テープにスケール101をレーザーにて加工し、それを貼り付けても良い。その際にスケール101が導電性であると各1次転写ローラ62で印加する転写バイアスでリークしてしまうため導電性である場合には中間転写ベルト10の一端部にスケール101を設置する。つまり、中間転写ベルト10の転写領域よりも外側に設置する。
【0039】
このように表面速度検出装置110を構成することで、吸気ファン141で気体を吸気して、中間転写ベルト10をセンサ保持部材120のベルト対向面121側に吸着することができる。したがって、従来の構成のようにベルト押さえ部材160を設けなくても中間転写ベルト10のばたつきを抑制可能である。さらに、スケール101の検出位置で中間転写ベルト10を吸着するために、吸気ファン141で気流を発生させるので、トナーや潤滑剤等をスケール101の検出位置から、この気流で吸い出すことができる。このように吸い出すことで、経時により速度検知用センサ131のセンサ面132が汚れることに起因した、中間転写ベルト10の移動方向速度の検知精度の低下を抑制できる。
【0040】
また、吸気ファン141で発生させる気流により、センサ保持部材120及び速度検知用センサ131の温度上昇を抑制することができ、熱膨張による速度検知用センサ131のセンサ面132の設置位置のばらつきを低減できる。つまり、速度検知用センサ131の設置間隔のばらつきを低減できる。このようにばらつきを低減することで、速度検知用センサ131のセンサ面132設置位置のばらつきに起因した、中間転写ベルト10の移動方向速度の検知精度の低下を抑制できる。
【0041】
また、上述した構成では、速度検知用センサ131を保持するセンサ保持部材120及びスケール101を、中間転写ベルト10の幅方向一端部に設けている。つまり、表面速度検出装置110を中間転写ベルト10の幅方向一端部に設けている。しかし、中間転写ベルト10の端部はトナー等が最も入り込みやすく中間転写ベルト10を伝って速度検知用センサが汚れてしまう可能性が残る。ここで、図20(a)を用いて説明した従来例では上から押さえる部材が必要であったが、本実施例の表面速度検出装置110のように吸気ファン141で吸着する場合には上押さえは必要ない。また、スケール101が絶縁体であれば、1次転写バイアスのリークを防止できる。
【0042】
そこで、スケール101が絶縁体であれば、ベルト押さえ部材160を省略できるので、速度検知用センサ131を保持するセンサ保持部材120及びスケール101を、中間転写ベルト10の略中央に設置することができる。このように略中央に設けることで、端部に設けるよりもトナーや潤滑剤等が、より付着しにくいように構成することもでき、トナー等の付着をさらに低減できる。
【0043】
また、あえて、図20(a)を用いて説明した従来例のように、ベルト押さえ部材160を設けることも可能である。そして、中間転写ベルト10のばたつきをベルト押さえ部材160で押さえる場合には、次のように構成してもよい。速度検知用センサ131の近傍の温度を検知するサーミスタ等の温度検知手段(不図示)を設けて、この温度検知手段の検知結果により、吸気ファン141のオン/オフを切り替える。具体的には、速度検知用センサ131の近傍の温度が上昇した場合のみ、吸気ファン141を動作させるようにする。このように吸気ファン141を制御することで、常時吸気ファン141を動作させる構成に比べ、消費電力を抑制できる。
【0044】
(実施例2)
次に、本実施形態の第2の実施例である実施例2について、図を用いて説明する。本実施例と実施例1とでは、本実施例が、速度検知用センサ131のセンサ面132とセンサ保持部材120とをセンサ面突き当て板133を介して突き当てることを規定している点のみが異なる。したがって、他の共通する構成、作用・効果については、適宜省略して説明する。ここで、図9は、本実施例に係る速度検知用センサが取り付けられたセンサ保持部材の斜視図、図10は、速度検知用センサが取り付けられたセンサ保持部材の断面図である。また、図11は、センサ面突き当て板を設けない場合の、速度検知用センサ間隔の説明図、図12は、センサ面突き当て板を設けた場合の、速度検知用センサ間隔の説明図である。そして、図13は、センサ基板へ取り付けるセンサ面突き当て板の説明図である。
【0045】
本実施例の表面速度検出装置110では、図9、10に示すように、速度検知用センサ131のセンサ面132とセンサ保持部材120のベルト対向面121の裏側とをセンサ面突き当て板133を介して突き当てることとした。以下に、その理由と、詳しい構成について説明する。
【0046】
実施例1でも説明したように、センサ保持部材120及び速度検知用センサ131の温度が上昇すると、熱膨張により速度検知用センサ131のセンサ面132の設置位置、つまりセンサ保持部材120の設置間隔にばらつきが生じる。設置間隔にばらつきが生じると、中間転写ベルト10の移動方向速度の検知精度が低下してしまう。また、高精度な中間転写ベルト10の移動方向速度制御を行なうためには、センサ面132からスケール101までの距離にも精度が必要(±0.1mm程度)である。
【0047】
センサ面132からスケール101までの距離は、速度検知用センサ131のセンサ面132を、センサ保持部材120に突き当てなければ、速度検知用センサ131の間隔はセンサ基板130の取り付けのみで決まる。しかし、センサ基板130とセンサ保持部材120の取り付け部の精度を高精度に、加工及び取り付け作業を行うのは困難である。このため、一般には、図11(a)に示すように、樹脂部材等で形成されたセンサ保持部材120に、ベルト対向面121の裏側からセンサ面132を突き当てる(接触させる)ことで、精度を出すことが多い。
【0048】
しかし、図11(b)に示すように、センサ保持部材120にセンサ面132を突き当てる構成では、温度変化(主に温度上昇)が生じた際に、センサ面132側が開くように変形してしまうことが多い。これは、センサ基板130を形成している材料と、センサ保持部材120を形成している材料との線膨張係数の違いにより生じる。本実施例では、センサ基板130を形成するガラスエポキシ樹脂(線膨張係数:20×10−6/℃)と、センサ保持部材120を形成するポリカーボネート(線膨張係数:30×10−6/℃)との線膨張係数の違いにより生じる。例えば、温度上昇前の速度検知用センサ131の間隔が、センサ保持部材120側、センサ基板130側ともにL0で、上昇温度も同じだと仮定する。すると、温度上昇が生じた場合のセンサ基板130側の速度検知用センサ131の間隔がL0+dL1だとすると、線膨張係数が1.5倍のセンサ保持部材120側の間隔は、L0+1.5×dL1となる。実際には、各部材に曲げ等も生じるため上記式どうりには成らないが、センサ保持部材120側が開くように変形する。
【0049】
このような変形を抑制するためには、センサ保持部材を、例えばポリフェニレンサルファイド樹脂(線膨張係数:13×10−6/℃)や、アルミ(線膨張係数:20×10−6/℃)にすれば解決する。しかし、製造コストが上昇してしまうこととなる。また、ポリフェニレンサルファイド樹脂は脆性が悪くなるため組み立て時に破損などする可能性も高い。
【0050】
そこで、本実施例では、図12に示すように、速度検知用センサ131のセンサ面132とセンサ保持部材120との間に、センサ面突き当て板133を設けることとした。そして、このセンサ面突き当て板133の線膨張係数を、センサ保持部材120の線膨張係数以下とすることとした。具体的には、ステンレス製(線膨張係数:10×10−6/℃)のセンサ面突き当て板133を介して、速度検知用センサ131のセンサ面132ととセンサ保持部材120とを突き当てることとした。このようにすることで、速度検知用センサ131の間隔が、センサ面突き当て板133で決まるようでき、速度検知用センサ131の間隔変動を低く抑えるとともに、省スペース、かつ、製造コストを抑制することができる。
【0051】
具体的な構成は、図13(a)に示すように、略H型のステンレス製のセンサ面突き当て板133の、平行な2つの部分を、速度検知用センサ131のセンサ面132を覆うとともに、センサ面132よりも僅かに広く形成する。そして、センサ保持部材120に設けたセンサ窓123に対応する部分には、センサ窓123よりも縦横とも、少し狭い略矩形状の開口である突き当て板窓134を設けている。また、2つの平行な部分を、それぞれの略中央から繋ぐ部分には、センサ保持部材120の隣り合うセンサ窓123の間にそれぞれ設けた縦溝124に対応する2つの開口である突き当て板開口135を設けている。この突き当て板開口135は、縦溝124のセンサ窓123側を除く3辺と、速度検知用センサ131の側面から外側に僅かにとではみ出すよう辺とで形成される開口であり、吸気ファン141で吸気する気体の流路を形成する。
【0052】
このセンサ面突き当て板133を、図13(b)に示すように、センサ基板130に固定された2つの速度検知用センサ131のセンサ面132に被せた状態で、センサ保持部材120のベルト対向面121の裏側に当接させる。そして、図4(b)で示したセンサ保持部材120の2つの受け部125に、センサ基板130とともにねじ固定する。
【0053】
また、図10の断面図に示すように、センサ保持部材120の対称に設けられた2つのセンサ窓の外側に延びるように形成された2つの縦溝124と、センサ面突き当て板133の略H型を形成する部分の外側の辺とで2つ開口が形成される。この2つの開口も、上記突き当て板開口135と同様に、吸気ファン141で吸気する気体の流路を形成する。
【0054】
(実施例3)
次に、本実施形態の第3の実施例である実施例3について、図を用いて説明する。本実施例と実施例1、2とでは、本実施例の表面速度検出装置110が、速度検知用センサ131及び吸気ファン141を同時に、画像形成時の中間転写ベルト10の位置に対して接離する接離機構を備えている点のみが異なる。したがって、他の共通する構成、作用・効果については、適宜省略して説明する。ここで、図14は、本実施例に係る中間転写ユニットの側面図、図15は、本実施例に係る中間転写ユニットの平面図である。図16は、従来の表面速度検出装置を画像形成時の中間転写ベルトから離間させる際の説明図であり、離間させる前の状態(a)と、離間させた後の状態(b)を示している。図17は、本実施例の表面速度検出装置を画像形成時の中間転写ベルトから離間させる際の説明図であり、離間させる前の状態(a)と、離間させた後の状態(b)を示している。なお、図16及び図17は、図15の平面図における、表面速度検出装置110を中間転写ベルト10の幅方向中央よりの図中Aで示す切断面から見た断面図であり、図14の側面図とは左右が反転している。
【0055】
実施例1、2と同様に、本実施例の表面速度検出装置110は、センサ基板130をねじ固定したセンサ保持部材120と、吸気ファン141とダクト142が接続された吸着手段140と、センサブラケット111から構成されている。このように構成されているので、コンパクトであるとともに、他の部材への固定は、センサブラケット111を介して行なうので、画像形成時の中間転写ベルト10の位置に対して、接離する離間機構を設けることが容易である。例えば、図14の側面図及び図15の平面図に示す、中間転写ユニットの感光体40Kに対して1次転写ローラ62Kを接離さえる接離機構150の接離ブラケット151に取り付けることができる。接離ブラケット151に取り付けることで、画像形成時の中間転写ベルト10に対して接離させることができる。
【0056】
従来の接離機構150は、図16(a)に示すように、主に1次転写ローラ62Kと、1次転写ローラ62Kの中間転写ベルト搬送方向上流側の従動ローラ153と、下流側の従動ローラ154とを備えている。そして、これらのローラを回転可能に両側から支持する接離ブラケット151と、接離ブラケット151を回動自在に支持する回転軸152と、この回転軸152を中心に接離ブラケット151を回動させるカム部材155とを備えている。また、図16(b)に示すように、1次転写ローラ62Kを感光体40から離間させた場合に、接離ブラケット151の回動を規制するストッパ156も備えている。そして、1次転写ローラ62Kと上流側の従動ローラ153の間の中間転写ベルト10の端部に、吸着手段140を設けていない表面速度検出装置110を設けている。
【0057】
このような接離機構150において、離間動作の際の回動速度が速かったりすると、空気抵抗により緩やかにたわもうとする中間転写ベルト10の一端部を、表面速度検出装置110のベルト押さえ部材160が回動方向に押さえる場合がある。このように押さえられると、中間転写ベルト10の幅方向とベルト面に略垂直な負荷が加わってしまう。このような負荷が長期に亘り中間転写ベルト10に加わると、中間転写ベルト10が変形したり、破損したりする可能性が高まってしまう。
【0058】
一方、図17(a)に示すように、本実施例の表面速度検出装置110を適用した接離機構150は、表面速度検出装置110がコンパクトであるとともに、他の部材への固定は、センサブラケット111を介して行なえる。したがって、従来の接離機構150にも、容易に取り付けることができる。よって、感光体40Kと1次転写ローラとを離間させることができ、これらの寿命を延ばすことができる。
【0059】
また、画像形成時の中間転写ベルト10のばたつきを、吸着手段140により抑制でき、ベルト押さえ部材160を省略可能である。したがって、図17(b)に示すように、離間させる際の回動速度が速かったりしても、空気抵抗により緩やかにたわもうとする中間転写ベルト10の一端部を、押さえるベルト押さえ部材160を無くすことができる。ベルト押さえ部材160を無くすことで、中間転写ベルト10の一端部に幅方向とベルト面に略垂直な負荷が加えられることを無くせる。このように長期に亘り中間転写ベルト10の一端部に幅方向に垂直な負荷が加わることを無くすことで、中間転写ベルト10が変形したり、破損したりする可能性を従来の構成よりも低くできる。よって、中間転写ベルト10の寿命を延ばすことができる。
【0060】
このように、ベルト押さえ部材160を省略した表面速度検出装置110を接離機構150に適用することで、中間転写ベルト10に対する接離が可能となるとともに、感光体40Kと1次転写ローラ62Kとの接離を行なうことができる。また、接離を行なう際の中間転写ベルト10への負荷を、従来よりも低減することができ、長期に亘り、安定した画像形成を行なうこともできる。
【0061】
また、上述した本実施形態では、本発明を中間転写ベルト10に設ける表面速度検出装置110に適用した場合について説明してきたが、本発明は、中間転写ベルトに設ける表面速度検出装置110に限定されるものではない。例えば、各種搬送ベルトや、感光体ベルト等に設ける表面速度検出装置にも適用可能である。
【0062】
以上、本実施形態の画像形成装置である複写機では、吸気ファン141で気体を吸気して、中間転写ベルト10をセンサ保持部材120のベルト対向面121側に吸着することができる。したがって、従来の構成のようにベルト押さえ部材160を設けなくても中間転写ベルト10のばたつきを抑制可能である。さらに、スケール101の検出位置で中間転写ベルト10を吸着するために、吸気ファン141で気流を発生させるので、トナーや潤滑剤等をスケール101の検出位置から、この気流で吸い出すことができる。このように吸い出すことで、経時により速度検知用センサ131のセンサ面132が汚れることに起因した、中間転写ベルト10の移動方向速度の検知精度の低下を抑制できる。
また、吸気ファン141で発生させる気流により、センサ保持部材120及び速度検知用センサ131の温度上昇を抑制することができ、熱膨張による速度検知用センサ131のセンサ面132の設置位置のばらつきを低減できる。つまり、速度検知用センサ131の設置間隔のばらつきを低減できる。このようにばらつきを低減することで、速度検知用センサ131のセンサ面132設置位置のばらつきに起因した、中間転写ベルト10の移動方向速度の検知精度の低下を抑制できる。
よって、スケール101を設けた中間転写ベルト10の移動方向速度の検知を、高精度に維持できる複写機を提供できる。
また、本実施形態の画像形成装置である複写機では、中間転写ベルト10のばたつきをベルト押さえ部材160で押さえる場合には、速度検知用センサ131の近傍の温度を検知するサーミスタ等の温度検知手段を設けて、この温度検知手段の検知結果により、吸気ファン141のオン/オフを切り替える。具体的には、速度検知用センサ131の近傍の温度が上昇した場合のみ、吸気ファン141を動作させるようにする。このように吸気ファン141を制御することで、常時吸気ファン141を動作させる構成に比べ、消費電力を抑制できる。
また、本実施形態の画像形成装置である複写機では、表面速度検出装置110がコンパクトであるとともに、他の部材への固定は、センサブラケット111を介して行なえる。したがって、従来の接離機構150にも、容易に取り付けることができる。よって、感光体40Kと1次転写ローラとを離間させることができ、これらの寿命を延ばすことができる。また、ベルト押さえ部材160を無くすことで、中間転写ベルト10の一端部に幅方向とベルト面に略垂直な負荷が加えられることを無くせる。このように長期に亘り中間転写ベルト10の一端部に幅方向に垂直な負荷が加わることを無くすことで、中間転写ベルト10が変形したり、破損したりする可能性を従来の構成よりも低くできる。よって、中間転写ベルト10の寿命を延ばすことができる。
また、本実施形態の画像形成装置である複写機では、スケール101が絶縁体であれば、1次転写バイアスのリークを防止できる。
また、本実施形態の画像形成装置である複写機では、スケール101が絶縁体であれば、ベルト押さえ部材160を省略できるので、速度検知用センサ131を保持するセンサ保持部材120及びスケール101を、中間転写ベルト10の略中央に設置することができる。このように略中央に設けることで、端部に設けるよりもトナーや潤滑剤等が、より付着しにくいように構成することもでき、トナー等の付着をさらに低減できる。
また、本実施形態の画像形成装置である複写機では、速度検知用センサ131のセンサ面132とセンサ保持部材120とをステンレス製(線膨張係数:10×10−6/℃)のセンサ面突き当て板133を介して突き当てることとした。このようにすることで、速度検知用センサ131の間隔が、センサ面突き当て板133で決まるようでき、速度検知用センサ131の間隔変動を低く抑えるとともに、省スペース、かつ、製造コストを抑制することができる。
【符号の説明】
【0063】
10 中間転写ベルト
18 画像形成手段
20 タンデム画像形成部
22 2次転写装置
40 感光体
62 1次転写ローラ
100 複写機本体
101 スケール
110 表面速度検出装置
111 センサブラケット
112 ブラケット開口
120 センサ保持部材
121 ベルト対向面
122 横溝
123 センサ窓
124 縦溝
125 受け部
130 センサ基板
131 速度検知用センサ
132 センサ面
133 センサ面突き当て板
134 突き当て板窓
135 突き当て板開口
140 吸着手段
141 吸気ファン
142 ダクト
143 円筒状部分
144 矩形状部分
150 接離機構
151 接離ブラケット
155 カム部材
160 ベルト押さえ部材
161 フレーム
162 ベルト接触部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】特開2005−148302号公報
【特許文献2】特許3344614号公報
【特許文献3】特開2009−294589号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に用いられる無端状のベルト体と、該ベルト体を駆動するベルト駆動手段と、該ベルト体の移動方向速度を検出するために該ベルト体に設けられた速度検出用スケールと、該速度検出用スケールを検出するスケール検出手段とを備える画像形成装置において、
上記速度検出用スケールの検出位置側より上記ベルト体を押さえ、かつ該速度検出用スケール検出手段を保持するセンサ保持部材と、
上記速度検出用スケールの検出位置で、上記センサ保持部材の上記スケール検出手段で検出する側の面に上記ベルト体を吸着するための吸気ファンと、
を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
スケール検出手段の近傍の温度を検知する温度検知手段を備え、
上記温度検知手段の検知結果により、吸気ファンのオン/オフを切り替える制御を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
複数の潜像持体と、
上記複数の潜像持体上にそれぞれ形成されたトナー像を、中間転写体又は被転写体に転写するための複数の転写ローラと、
スケール検出手段及び吸気ファンを、同時に画像形成時のベルト体の位置に対して接離する接離機構と、
を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一に記載の画像形成装置において、
速度検出用スケールが絶縁体からなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一に記載の画像形成装置において、
速度検出用スケール及びスケール検出手段を、ベルト体の移動方向に垂直な方向の中央に設けることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一に記載の画像形成装置において、
スケール検出手段のセンサ面とセンサ保持部材との間に挟み込むセンサ面突き当て板を設け、
センサ面突き当て板の線膨張係数が、スケール検出手段を取り付ける基板の線膨張係数以下であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−198331(P2012−198331A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61408(P2011−61408)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】