説明

画像形成装置

【課題】中間転写体に対して転写材が巻き付いた場合に、レイアウトの制約を受けることなく転写材を強制分離することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】像担持体102と、現像手段104と、トナー像が1次転写される走行自在な中間転写ベルト201と、中間転写ベルト201上に形成されたトナー像を記録媒体に2次転写する2次転写手段309と、2次転写手段309よりも中間転写ベルト201の走行方向下流側に配置され中間転写ベルト201をクリーニングするベルトクリーニング手段409とを有し、2次転写手段309としてバックアップローラ304と2次転写部材308とを有する画像形成装置1において、バックアップローラ304とベルトクリーニング手段409との間に、中間転写ベルト201に対して張力を付与する懸架ローラ204を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写体を用いて画像形成を行う複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の感光体上に形成したそれぞれ異なる色のトナー像をベルト状の中間転写体上に重畳転写(1次転写)させ、続いて中間転写ベルト上の各色トナー像を転写紙に一括転写(2次転写)させた後、定着手段により転写紙上に一括転写されたカラートナー像を定着する画像形成装置が知られている。このような画像形成装置の2次転写部には、中間転写ベルトの懸架ローラとしても機能するバックアップローラと、中間転写ベルトを介してバックアップローラに圧接するローラ状の2次転写部材とが設けられており、これ等が2次転写手段として機能している。そしてこのような2次転写手段は、2次転写後における転写紙の分離が容易かつ自動的になされるようにバックアップローラの外径や硬度、中間転写ベルトの張り方、抵抗等が設定されている。
【0003】
しかしながらこれ等の設定には自ずと限界があり、また装置内の環境や転写紙の状態変化等に応じて常に安定した分離性能を得ることは難しく、特に最近オフセット印刷等において使用される、腰が弱く薄いコート紙等においては安定した分離性能を得ることが困難であり、分離不十分により中間転写ベルトに対して転写紙が巻き付いてしまうという不具合が発生する虞がある。このような状態となると、巻き付いた転写紙が中間転写ベルト上のトナークリーニング手段へと進入し、ユーザが巻き付いた転写紙を取り除くことができなかったり、取り除けたとしても転写紙上に付着している未定着のトナーによって手や衣服が汚れたりしてしまうという問題点があった。
【0004】
このような不具合を軽減するため、バックアップローラに分離爪を設け、分離爪の位置よりも下流側の近傍位置に中間転写ベルトを吸引する手段を設ける技術が、例えば「特許文献1」に開示されている。また、2次転写後に搬送経路を走行する転写紙を検知する記録材検知センサ、及び分離後の中間転写ベルト上で転写紙を検知する記録材検知センサをベルトクリーニング手段の前に配置し、転写紙がクリーニング手段へ進入する前に中間転写ベルトの駆動を停止させる技術が、例えば「特許文献2」に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし「特許文献1」に開示された技術では、中間転写ベルトのばたつきを規制することで分離爪によるベルト表面の損傷を僅かに抑えることができるが、中間転写ベルトと分離爪とは常時接触しているためにいずれは中間転写ベルトに傷が発生してしまう。また「特許文献2」に開示された技術では、2次転写部において分離できなかった転写紙がベルトクリーニング手段へと進入することを防止することができるが、2次転写位置からベルトクリーニング手段までの距離が短い場合には記録材検知センサを配置することができず、レイアウト上の制約が生じてしまうという問題点がある。
【0006】
本発明は上述の問題点を解決し、中間転写体に対して転写材が巻き付いた場合に、レイアウトの制約を受けることなく転写材を強制分離することが可能な画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、静電潜像が形成される像担持体と、前記静電潜像を顕像化する現像手段と、前記現像手段により顕像化されたトナー像が1次転写される走行自在な中間転写ベルトと、前記中間転写ベルト上に形成されたトナー像を記録媒体に2次転写する2次転写手段と、前記2次転写手段よりも前記中間転写ベルトの走行方向下流側に配置され前記中間転写ベルトをクリーニングするベルトクリーニング手段とを有し、前記2次転写手段として前記中間転写ベルトを張架するバックアップローラと前記中間転写ベルトを介してこれと対向配置された2次転写部材とを有する画像形成装置において、前記バックアップローラと前記ベルトクリーニング手段との間に配設され、前記中間転写ベルトに対して張力を付与する懸架ローラを有することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置において、さらに前記懸架ローラと前記ベルトクリーニング手段との間に配設され前記中間転写ベルトから前記記録媒体を分離させる分離部材を有し、該分離部材は前記中間転写ベルトに対して非接触であり、かつその先端が前記バックアップローラと前記懸架ローラとに張架された前記中間転写ベルトの直線部を延長した領域の内側に位置することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の画像形成装置において、さらに前記分離部材は前記ベルトクリーニング手段の筐体であることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の画像形成装置において、さらに前記懸架ローラはその表面に凹部を有することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の画像形成装置において、さらに前記凹部は前記記録媒体における最小幅サイズの内側の位置に1箇所以上設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の画像形成装置において、さらに前記懸架ローラはその表面に凸部を有することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の画像形成装置において、さらに前記凸部は前記記録媒体における最小幅サイズの内側の位置に1箇所以上設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7の何れか1つに記載の画像形成装置において、さらに前記中間転写ベルトは樹脂ベルトであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、2次転写部において中間転写ベルトに対して記録媒体が巻き付いたとしても、2次転写部を構成するバックアップローラとベルトクリーニング手段との間に配設され中間転写ベルトに対して張力を付与する懸架ローラによって中間転写ベルトの曲率を大きくすることができ、記録媒体の腰によって記録媒体を中間転写ベルトから分離することができるので、記録媒体が中間転写ベルトに巻き付いたままベルトクリーニング手段に運ばれることを防止でき、良好な画像形成動作を継続的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態を採用した画像形成装置の概略正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に用いられる画像形成部の概略図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に用いられる2次転写部及びベルトクリーニング手段を説明する概略図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に用いられる懸架ローラの概略図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における2次転写部近傍の概略図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に用いられる懸架ローラの概略図である。
【図7】本発明の第3の実施形態における2次転写部近傍の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態を適用可能な画像形成装置を示している。同図において画像形成装置1は、複数の画像形成部101Y,101M,101C,101Bkを中間転写ベルト201に沿って並設したタンデム型間接転写方式を採用している。画像形成装置1の中央部には無端ベルト状の中間転写ベルト201を備えた転写装置が設けられており、支持ローラ202,203、バックアップローラ304、テンションローラ206に掛け渡された中間転写ベルト201は図1において時計回り方向に走行駆動される。
【0018】
上述した中間転写ベルト201において、バックアップローラ304による支持位置とテンションローラ206による支持位置との間の位置には中間転写ベルト201をクリーニングするベルトクリーニング手段409が配設されており、各支持ローラ202,203による支持位置間にはその走行方向に沿ってイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色用の画像形成部101Y,101M,101C,101Bkが並設されている。各画像形成部101はそれぞれ同様に構成されており、例えば図2に示す構成である。
【0019】
図2は、ブラック(Bk)用の画像形成部101Bkを示している。この画像形成部101Bkには、像担持体であるドラム状の感光体102Bk、感光体102Bkにトナー像を形成するための帯電装置103Bk、露光装置110Bk、現像手段としての現像装置104Bk等が設けられている。帯電装置103Bkは、例えば直流電圧が印加された帯電ブラシを用いて感光体102Bkを均一に帯電するものであり、帯電ブラシに代えて帯電ローラや帯電チャージャ等を用いてもよい。
【0020】
露光装置110Bkは、感光体102Bkの軸方向である主走査方向に配置された発光ダイオード(LED)アレイとレンズアレイとからなるLED書き込み方式の露光装置であり、画像信号に応じてLEDを発光させ感光体102Bk上に静電潜像を形成する。露光装置としては、これに代えてレーザ光源と光偏光器(ポリゴンミラー等)と結像走査光学系とからなるレーザ走査方式のものを用いてもよい。
【0021】
現像装置104Bkは、現像剤を担持して回転する現像ローラ(または現像スリーブ)と、現像剤を攪拌及び搬送して現像ローラに供給する攪拌搬送部材等を有しており、感光体102Bk上に形成された静電潜像を現像剤のトナーによって現像し可視像化する。現像剤としては、トナーのみからなる1成分現像剤、あるいはトナーと磁性キャリアとからなる2成分現像剤が用いられる。図2に示す画像形成部101Bkではブラックのトナーが用いられ、画像形成部101Yではイエロのトナーが、画像形成部101Mではマゼンタのトナーが、画像形成部101Cではシアンのトナーがそれぞれ用いられる。
【0022】
上述した帯電、露光、現像により感光体102Bk上に形成されたトナー像は、1次転写部において中間転写ベルト201に1次転写される。この1次転写部において、中間転写ベルト201を介して感光体102Bkと対向する位置には、1次転写手段であり直流電源から転写バイアスが印加される転写ブラシ105Bkが配設されている。また、感光体102Bkを介して現像装置104Bkと対向する位置には、感光体102Bk上の残留トナーを除去する感光体クリーニング装置106Bkが配設されている。
【0023】
以上、ブラック(Bk)用の画像形成部101Bkを説明したが、他のイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色画像形成部101Y,101M,101Cも同様に構成されている。図1において、同じ構成部材には同じ番号を付し、書く番号の後にY,M,C,Bkの記号を付して各色の区別を行っている。この画像形成装置1では、カラー画像形成時にはイエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの各色画像形成部101Y,101M,101C,101Bkにおいて各感光体102Y,102M,102C,102Bk上に各色のトナー像を形成した後に中間転写ベルト201に重畳転写してカラー画像を形成する。また、モノクロ画像形成時には画像形成部101Bkのみで画像形成動作を行い、形成されたモノクロトナー像を中間転写ベルト201に1次転写する。
【0024】
一方、転写装置を介して各画像形成部101と対向する位置には、2次転写部材としての2次転写ローラ308、クリーニングブレード305、除電針307等を有する2次転写手段としての2次転写部309が配設されている。2次転写ローラ308は、中間転写ベルト201を介してバックアップローラ304に圧接配置されており、中間転写ベルト201上のトナー像を用紙等の記録媒体に2次転写させる。
【0025】
画像形成装置1の下方には、給紙カセット151及び給紙ローラ152を有する給紙部と、搬送ローラ対153を有する給紙路155、及びレジストローラ対154等が配設されている。また2次転写部309の転写紙搬送方向下流側には、画像が転写された記録媒体を搬送する搬送ユニット156、記録媒体上の未定着トナー像を定着させる定着装置107、及び定着後の記録媒体を排紙トレイに排出する排紙ローラ108等が配設されている。
【0026】
次に、上述した画像形成装置1の動作について説明する。図示しない操作部のスタートスイッチが押下されると、図示しない駆動手段により各支持ローラ202,203、バックアップローラ304のうちの1つが回転駆動されると共に、他の2つのローラが従動回転して中間転写ベルト201が図1において時計回り方向に走行駆動される。また、これと同時に各画像形成部101において各感光体102が回転を開始し、各感光体102上にそれぞれイエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの単色トナー像が形成される。そして、中間転写ベルト201の走行移動と共に各単色トナー像が1次転写部において中間転写ベルト201上に重畳転写され、中間転写ベルト201に合成カラートナー像が形成される。
【0027】
また、スタートスイッチが押下されると給紙ローラ152が回転し、給紙カセット151から用紙等のシート状記録媒体が繰り出されて給紙路155に導かれた後、レジストローラ対154に突き当てられて一時停止される。その後、中間転写ベルト201上の合成カラートナー像にタイミングを合わせてレジストローラ対154が回転され、2次転写部309における中間転写ベルト201と2次転写ローラ308との間に記録媒体が送り込まれる。そして、2次転写部309における転写により、記録媒体上にカラー画像が転写される。
【0028】
ここで、本実施形態では図3に示すように、バックアップローラ304に対して直流電源からトナーと同極性のバイアスを印加(本形態ではトナーがマイナス帯電であるためマイナスのバイアスを印加)させ、中間転写ベルト201からトナーを弾き出すようにすることでトナーを記録媒体に転写させ、低抵抗の記録媒体における転写余裕度が上がるように構成されている。また、2次転写ローラ308は接地されている。
【0029】
画像転写後の記録媒体は、搬送ユニット156で搬送されて定着装置107へと送り込まれ、定着装置107において熱と圧力とが加えられて転写画像が定着された後、排紙ローラ108によって排出されて図示しない排紙トレイ上にスタックされる。一方、画像転写後の中間転写ベルト201は、中間転写ベルト201に当接するクリーニングブレード410とこれを収納し中間転写ベルト201から除去された異物を収納する筐体411とを有するベルトクリーニング手段409によって残留トナーを除去され、次の画像形成動作に備えられる。中間転写ベルト201を介してクリーニングブレード410と対向する位置には、ベルトクリーニング手段409を構成するクリーニングローラ205が配設されている。
【0030】
なお、中間転写ベルト201の抵抗は、残留電位による残像問題がなく安定した転写画像が得られるように、体積抵抗率の対数(LogR)を10.0以下としている。また、2次転写ローラ308は中間転写ベルト201に接触しているため、転写紙等の記録媒体が載らない部分や紙間では、中間転写ベルト201上の地肌汚れのトナーやプロセス制御用のパターン等が転写して2次転写ローラ308を汚していることから、クリーニングブレード305によって2次転写ローラ308上のトナー等の異物を除去している。ここで、2次転写ローラ308は2層構造であり、ゴム層308a上に離型性の良好なフッ素系樹脂等からなる表層308bをコーティングしており、クリーニングブレード305によるクリーニング性が向上されている。
【0031】
さらに本実施形態では、2次転写部309の記録媒体搬送方向下流側に除電針307を設けている。2次転写後の記録媒体は中間転写ベルト201に密着して剥離しにくくなっているが、記録媒体の裏面側より除電針307には図示しない高圧電源からピーク間電圧が10kVで1kHzの正弦波のAC電圧が印加されており、記録媒体の蓄積電荷を中和(除電)させることにより2次転写後の記録媒体が中間転写ベルト201に巻き付かないように構成している。
【0032】
このように、通常の画像形成装置では中間転写ベルト201における記録媒体の巻き付きが発生しにくくなるように構成されているが、近年、電子写真方式の複写機やプリンタのカラー化、高速化、及び高画質化が進んでおり、特にオンデマンド出版物の分野ではより手軽に、また少部数の複写への対応が可能であることから、これまでは印刷により得ていた出版物をカラー複写機やカラープリンタで作成する動きが顕著になっており、記録媒体として表面平滑性がよく薄くて腰の弱いオフセット印刷用塗工紙をこのような画像形成装置に使用した場合には、記録媒体が中間転写ベルト201に密着して巻き付が発生し、記録媒体がベルトクリーニング手段409に進入してしまう虞がある。
【0033】
上述の不具合は、2次転写部309とベルトクリーニング手段409との間に用紙検知センサを配置し、このセンサによって記録媒体が検知された際に中間転写ベルト201の走行を停止させることにより防止することが可能であるが、この画像形成装置1では2次転写部309からベルトクリーニング手段409までの距離が近く、2次転写部309とベルトクリーニング手段409との間に用紙検知センサを配置してもセンサがオンしてから記録媒体がベルトクリーニング手段409に到達するまでの時間が短く、不具合を防止することが困難である。そこで本発明では、図1、図3、図4に示すように、バックアップローラ304とクリーニングローラ205との間の位置に、中間転写ベルト201に対して張力を付与する懸架ローラ204を設けている。
【0034】
懸架ローラ204は、中間転写ベルト201に対して巻き付いた記録媒体がベルトクリーニング手段409に進入する前に中間転写ベルト201から強制分離させるべく、小径のローラで構成され中間転写ベルト201の曲率が大きくなるように配置されている。本実施形態では直径12mmの金属ローラにより構成した。懸架ローラ204としては、その直径を小さくするほど曲率を大きくでき、記録媒体の腰によって分離することが可能となるが、直径を小さくしすぎると中間転写ベルト201が長期間停止した際に懸架ローラ204との接触部においてカール癖と呼ばれる中間転写ベルト201の変形が発生し、この変形箇所において横帯画像等が発生するため、懸架ローラ204としては直径10〜16mm程度のものが望ましい。
【0035】
この構成により、2次転写部309において中間転写ベルト201に対して記録媒体が巻き付いたとしても、2次転写部309を構成するバックアップローラ304とベルトクリーニング手段409との間に配設され中間転写ベルト201に対して張力を付与する懸架ローラ204によって中間転写ベルト201の曲率を大きくすることができ、記録媒体の腰によって記録媒体を中間転写ベルト201から分離することができるので、記録媒体が中間転写ベルト201に巻き付いたままベルトクリーニング手段409に運ばれることを防止でき、良好な画像形成動作を継続的に行うことができる。
【0036】
しかし、上述したように表面平滑性が高いコート紙においては、中間転写ベルト201に対して微少間隙がない状態で記録媒体が接触しているために密着力が高く、分離が困難である。そこで、本発明の第2の実施形態では、図4に示すように懸架ローラ204の表面に凹部204aを形成している。凹部204aは使用される記録媒体の最小幅サイズの内側の位置に少なくとも1つ配設されており、この凹部204aとの接触部において、中間転写ベルト201には図5に示すように内側方向に微少な凹みが形成され、中間転写ベルト201とこれに巻き付いた記録媒体との間に隙間が形成されて密着力を弱める機能が発揮され、記録媒体の先端が懸架ローラ204へと進入すると強制的に分離を行うことができる。
【0037】
懸架ローラ204に形成する凹部204aにおいて、深さaは深いほど中間転写ベルト201の内側方向への微小凹みが大きくなり、幅bは狭すぎると中間転写ベルト201の腰により凹みが発生せず、広すぎると傾きが緩やかな変形となるために記録媒体が中間転写ベルト201に倣い記録媒体と中間転写ベルト201との間に隙間ができずに機能を果たすことができない。凹部204aの深さa及び幅bの最適値に関しては、中間転写ベルト201の材質(ヤング率、硬度等)や厚み、ベルト張力によっても変化することとなる。中間転写ベルト201が弾性ベルトの場合には、凹部204aに追従するために凹みが形成しにくいことから深さaを深く設定する必要があるが、中間転写ベルト201が樹脂ベルトの場合には、深さaを浅くしても微小な凹みを形成することができる。この実施形態では、中間転写ベルト201として厚み50μmのポリイミドを使用しており、ベルト張力を1.5N/cmとしたときに凹部204aの深さaを0.1mm以上、幅bを3〜20mmに設定することにより中間転写ベルト201に微小な凹みが形成され、中間転写ベルト201に巻き付いた記録媒体を確実に分離することができる。
【0038】
上述した実施形態では、凹部204aを3箇所形成する構成としたが、複数箇所に凹部204aを設けることにより分離性能が向上する。さらに本実施形態では懸架ローラ204の位置で記録媒体の先端が中間転写ベルト201から離間しても中間転写ベルト201との静電吸着力によって再び記録媒体が中間転写ベルト201に吸着されることを防止するため、図3に示すように、懸架ローラ204によって中間転写ベルト201に対して張力を付与した際に、バックアップローラ304と懸架ローラ204とによって張架された中間転写ベルト201の直線部を延長した領域A内に筐体411の先端部を配置することにより、自身の腰によって中間転写ベルト201より分離した記録媒体を筐体411の先端部によって確実に中間転写ベルト201から分離することができる。このとき、筐体411は分離部材として機能する。なお、筐体411の先端は中間転写ベルト201に対して非接触状体で配置されているので、中間転写ベルト201を傷付けることがない。
【0039】
図6は、本発明の第3の実施形態に用いられる懸架ローラ204を示しており、この第3の実施形態では懸架ローラ204の表面に凸部204bを形成している。凸部204bは使用される記録媒体の最小幅サイズの内側の位置に少なくとも1つ配設されており、この凸部204bとの接触部において、中間転写ベルト201には図7に示すように外側方向に微少な凸部が形成され、中間転写ベルト201とこれに巻き付いた記録媒体との間に隙間が形成されて密着力を弱める機能が発揮され、記録媒体の先端が懸架ローラ204へと進入すると強制的に分離を行うことができる。この第3の実施形態においても、複数箇所に凸部204bを設けることにより分離性能を向上させることができる。
【0040】
上記実施形態では画像形成装置1として複数の感光体102を有するカラー複写機を用いた例を示したが、本発明が適用可能な画像形成装置はこれに限定されず、プリンタ、プロッタ、ファクシミリ、これらの複合機、感光体102を1つのみ有するモノクロ複写機等の他の画像形成装置にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 画像形成装置(複写機)
102 像担持体(感光体)
104 現像手段(現像装置)
201 中間転写ベルト
204 懸架ローラ
204a 凹部
204b 凸部
304 バックアップローラ
308 2次転写部材(2次転写ローラ)
309 2次転写手段(2次転写部)
409 ベルトクリーニング手段
411 分離部材(筐体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【特許文献1】特開2003−241531号公報
【特許文献2】特許第4122780号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される像担持体と、前記静電潜像を顕像化する現像手段と、前記現像手段により顕像化されたトナー像が1次転写される走行自在な中間転写ベルトと、前記中間転写ベルト上に形成されたトナー像を記録媒体に2次転写する2次転写手段と、前記2次転写手段よりも前記中間転写ベルトの走行方向下流側に配置され前記中間転写ベルトをクリーニングするベルトクリーニング手段とを有し、前記2次転写手段として前記中間転写ベルトを張架するバックアップローラと前記中間転写ベルトを介してこれと対向配置された2次転写部材とを有する画像形成装置において、
前記バックアップローラと前記ベルトクリーニング手段との間に配設され、前記中間転写ベルトに対して張力を付与する懸架ローラを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記懸架ローラと前記ベルトクリーニング手段との間に配設され前記中間転写ベルトから前記記録媒体を分離させる分離部材を有し、該分離部材は前記中間転写ベルトに対して非接触であり、かつその先端が前記バックアップローラと前記懸架ローラとに張架された前記中間転写ベルトの直線部を延長した領域の内側に位置することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像形成装置において、
前記分離部材は前記ベルトクリーニング手段の筐体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記懸架ローラはその表面に凹部を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像形成装置において、
前記凹部は前記記録媒体における最小幅サイズの内側の位置に1箇所以上設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記懸架ローラはその表面に凸部を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6記載の画像形成装置において、
前記凸部は前記記録媒体における最小幅サイズの内側の位置に1箇所以上設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記中間転写ベルトは樹脂ベルトであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−211931(P2012−211931A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76161(P2011−76161)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】