説明

画像形成装置

【課題】 低コストな構成で放射ノイズの発生を抑える。
【解決手段】 記録材に画像を形成する画像形成部と、原稿の画像を読み取る画像読取部と、それぞれが前記画像読取部と前記画像形成部との間を繋ぐ2つのケーブルとを有し、画像読取部が第1の位置と第1の位置よりも画像形成部から離れた第2の位置との間を移動可能である画像形成装置において、2つのケーブルの位置を規制する規制部材を有し、規制部材は、画像読取部が第1の位置にある時に、2つのケーブルのそれぞれを、互いに離れる方向に屈曲した状態で維持することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成部に対して移動可能な画像読取部を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取部を有する画像形成装置では、画像読取部で読み取った画像信号を画像形成部へ伝える信号ケーブルや、画像読取部を駆動するための電力を供給する電源ケーブル等の複数のケーブルが画像形成部と画像読取部とを繋いでいる。画像読取部が画像形成部に対して移動可能な構成である場合、これのケーブルは画像読取部の移動に追従して自由に変形できるよう、ある程度の弛みが形成された状態で画像形成部と画像読取部とを繋いでいる。
【0003】
このような構成を図9(a)に示す。図9(a)は画像形成装置を横からみた断面図である。画像形成部100´の上方に画像読取部200´が回転軸34´回りに回動自在に設けられている。画像形成部100´と画像読取部200´とを信号ケーブル205´と駆動制御ケーブル206´が繋いでいる。信号ケーブル205´は画像読取部200´から画像形成部100´へ画像信号を送る。駆動制御ケーブル206´は画像形成部100´から画像読取部200´へ画像読取部200´を駆動する電力や制御信号を送る。これら2つのケーブルは、画像読取部200´を回動して画像形成部100´から離した状態でも画像形成部100´と画像読取部200´とを繋ぐのに十分な長さを有している。このため、画像形成部100´に対して画像読取部200´を回動させていない状態では、これら2つのケーブルにはそれぞれ弛みが形成されている。また、なるべく無駄な弛みを形成しなくてもいいよう、2つのケーブルは回動軸34´の近くを通るように設けられている。
【0004】
このように2つのケーブルには弛みが形成されるため、2つのケーブル同士が近づく又は接触した箇所が形成される可能性がある。
【0005】
ここで、ケーブル同士が近づく又は接触すると、互いのケーブルを流れる信号が電磁気的に干渉し、ケーブルを流れる信号にノイズがのることで、ケーブルから発生される放射ノイズが大きくなる現象が発生する場合がある。
【0006】
特に、近年は読取精度の高精細化、高速化に伴い信号ケーブル205´を伝わるデータ量が増え、信号ケーブル205´を流れる信号の周波数が高い。このため放射ノイズのパワーが大きく、駆動制御ケーブル206´に電磁的に干渉し、駆動制御ケーブル206´にノイズが流れやすい。そして、駆動制御ケーブル206´にノイズが流れると、そのノイズが装置本体内で共振しこれによってレベルの高い放射ノイズが発生する虞がある。
【0007】
このような放射ノイズ対策として、特許文献1には、フラットフレキシブルケーブル(FFC)において、ケーブル内に平行に並んで設けられた複数の束線のうち1つおきにアース線を配置し、放射ノイズを抑える構成が記載されている。
また、フェライトコアでケーブルを覆うことで、放射ノイズを抑えることも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−344703
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1のように束線の間にアース線を入れると、通信に使用しないアース線を複数設ける必要があり、その分のコストがかかる。また、フェライトコアは高価であるため、フェライトコアを多用してノイズ対策を行うとコストが高くなってしまう。
【0010】
そこで本発明は、上記課題に鑑みて、低コストな構成で放射ノイズの発生を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、記録材に画像を形成する画像形成部と、原稿の画像を読み取る画像読取部と, それぞれが前記画像読取部と前記画像形成部との間を繋ぐ2つのケーブルとを有し、前記画像読取部が第1の位置と前記第1の位置よりも前記画像形成部から離れた第2の位置との間を移動可能である画像形成装置において、前記2つのケーブルの位置を規制する規制部材を有し、前記規制部材は、前記画像読取部が前記第1の位置にある時に、前記2つのケーブルのそれぞれを、互いに離れる方向に屈曲した状態で維持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によれば、低コストな構成で放射ノイズの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】画像形成装置の外観斜視図。
【図2】画像形成装置を左からみた断面図。
【図3】(a)ADFユニットを閉じた状態の画像読取部と、画像形成部の一部分の斜視図。(b)ADFユニットを開いた状態の画像読取部と、画像形成部の一部分の斜視図。
【図4】画像形成装置を左からみた断面図。
【図5】画像読取部を開いた状態の画像形成装置の軸34付近を左からみた断面図。
【図6】(a)画像読取部を閉じた状態の画像形成装置の軸34付近を左からみた断面図。(b)画像形成装置において放射ノイズのレベルと国際規格によって定められた該周波数における放射ノイズの上限レベルを示す表。
【図7】画像読取部を閉じた状態の変形例の画像形成装置の軸34付近を左からみた断面図。
【図8】(a)画像読取部を開いた状態の画像形成装置の軸34付近を左からみた断面図。(b)画像読取部を閉じた状態の画像形成装置の軸34付近を左からみた断面図。
【図9】(a)比較例の画像形成装置の軸34付近を左からみた断面図。(b)比較例の画像形成装置において放射ノイズの発生した周波数とそのレベルと国際規格によって定められた該周波数における放射ノイズの上限レベルを示す表。(c)比較例の画像形成装置の放射ノイズのノイズレベルのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
〔第1実施形態〕
(画像形成装置)
まず、画像形成装置について説明する。
図1は、画像形成装置1の外観斜視図である。図2は画像形成装置1を左からみた断面図である。なお、以下の説明において、画像形成装置1に関して、前側(正面側)とは、記録媒体のカセット4を挿脱する側である。後側とはそれとは反対側である。前後方向とは、装置の後側から前側に向う方向(前方向)、及び又は、その逆の方向(後方向)である。左右は装置を正面から見て左、右である。左右方向とは右から左に向う方向(左方向)、及び又は、その逆の方向(右方向)を示す。また、感光ドラム8の長手方向(軸線方向)の一端側が駆動側であり、他端側が非駆動側である。
【0016】
画像形成装置1は、電子写真プロセスを用いて記録媒体(記録材)に画像を形成する画像形成部100を有している。画像形成部100は、記録媒体にフルカラー画像を形成することのできるカラーレーザープリンタである。また、記録媒体とは、画像形成部100によって画像を形成されるものであって、例えば、用紙、OHPシート、ラベル等が挙げられる。また、画像形成部1は、例えば、パソコン・イメージリーダ・ファクシミリ等の外部ホスト装置あるいは画像読取部200から制御回路部(制御手段:CPU 図示無し)に入力する電気的画像信号に基づいて、シート状の記録媒体Pに画像形成を行う。制御回路部は、ホスト装置や装置上面の前側に配設された操作部7との間で各種の電気的な情報の授受をすると共に、画像形成部100の画像形成動作を所定の制御プログラムや参照テーブルに従って統括的に制御する。
【0017】
以下、画像形成部100の構成、及びその画像形成方法について説明する。軸線方向が装置の左右方向に一致する電子写真感光ドラム(以下、感光ドラムと記す)8が回転可能に配設されている。また、感光ドラム8の周囲に、帯電手段9、露光手段10、現像手段11、転写手段12、ドラムクリーニング手段13が配設されている。
【0018】
帯電手段9は帯電ローラであり、感光ドラム8の表面を所定の極性・電位に一様に帯電する。露光手段10はスキャナユニットであり、画像情報に対応して変調したレーザ光を感光ドラム8に照射し、感光ドラム8面上で走査を行い、感光ドラム8面に静電潜像を形成する。現像手段11は、感光ドラム8に形成された静電潜像にトナーを付着させトナー像として可視化する。
【0019】
現像手段11は、ロータリ式の現像装置であり、ロータリ(回転支持体)15と、ロータリ15に着脱可能に装着された4つの現像カートリッジ16B・16Y・16M・16Cと、ロータリ15を回転させるロータリ駆動機構と、を有する。この現像装置11は、左右のフレーム間に回転可能に支持させた中央軸14を中心にして回転可能なロータリ15を有する。各現像カートリッジ16は、ロータリ15の回転方向において、互いに90°の間隔でロータリ15に装着されている。各カートリッジ16は、それぞれ、現像ローラ17と、現像ローラ17に現像剤(トナー)を供給する現像剤供給ローラ、及び、現像剤を収納している現像剤収納部を有する。現像カートリッジ16Bには、ブラック(B)色の現像剤が現像剤収納部に収納されている。同様に現像カートリッジ16Yには、イエロー(Y)が、現像カートリッジ16Mには、マゼンタ(M)色の現像剤が、現像カートリッジ16Cには、シアン(C)色の現像剤が収納されている。
【0020】
転写手段は、ドラム8の表面に形成された現像剤像を誘電体製で可撓性を有するエンドレスベルト形状の中間転写ベルト19上に転写するための、一次転写ローラ20である。中間転写ベルトユニット12(以下転写ユニット)は、中間転写ベルト19とこの中間転写ベルト19を懸回張設している、一次転写ローラ20、ベルト駆動ローラ21、テンションローラ22を有する。転写ローラ20と感光ドラム8は中間転写ベルト19を挟んで対向し一次転写ニップ部を形成している。転写ローラ20に一次転写バイアスをかけることで、この一次転写ニップ部において、感光ドラム8上のトナー像を、静電的に中間転写ベルト上に引き寄せ、中間転写ベルト19上に転写する。
【0021】
カラー画像形成が開始されると、感光ドラム8は図2の反時計周りに回転しながら、帯電手段9によって表面を帯電させられ、露光手段によって静電潜像を形成される。そして、現像手段11に対向する位置で現像ローラ17によってトナーを付着させられ潜像をトナー像として可視化される。このトナー像は一次転写ニップで一次転写ローラ20により中間転写ベルト19上に転写される。
【0022】
引き続き感光ドラム8は回転し、クリーニングブレード13によって感光ドラム8表面に残ったトナーを清掃され、再び、帯電、露光、現像が行われる。ここで、ロータリ15は4つの現像カートリッジ16を感光ドラム8に形成された静電潜像を現像するための作像位置に順次移動させ、順次感光ドラム8上の静電潜像を現像する。なお、図2には現像カートリッジ16bが作像位置にある状態を記載している。感光ドラム8上のトナー像は、一次転写ニップにおいて、既に中間転写ベルト19上に転写されているトナー像上に重ねて転写される。このようなサイクルを各現像カートリッジについて行うことで、4色のトナー像が重畳されたトナー像を中間転写ベルト上に得ることができる。
【0023】
ベルト駆動ローラ21には二次転写ローラ24が対向して設けられ、中間転写ベルト19を挟んで二次転写ニップが形成されている。
【0024】
二次転写ニップの、記録媒体Pの搬送方向上流には、搬送ローラ26および搬送対向ローラ27により形成される搬送部、および給紙ローラ28と対向パッド29により形成される給紙部が配置される。また、記録媒体Pを積載するカセット4が本体に対し着脱自在に配置されている。給紙ローラ28は記録媒体Pを給紙部で対向パッド29に押し付けながら送ることで、一枚ずつに分離し搬送部に記録媒体Pを送り込む。また、搬送部は記録媒体Pがベルト19上の画像と同時に二次転写ニップに進入するようにタイミングを合わせ、搬送ローラ26を回転させ記録媒体Pを二次転写ニップに送り込む。
【0025】
二次転写ローラ24は中間転写ベルト19に対し当接、離間可能に配置されていて、通常は離間状態にあり、二次転写ニップに記録媒体Pが送り込まれて二次転写を行う際に当接状態になる。そして、中間転写ベルト19上のトナー像に、タイミングを合わせて記録媒体Pが二次転写ニップに進入する。この際二次転写ローラ24には、トナー像の極性と逆の極性が付与され、トナー像を二次転写ローラ24側に引き寄せることで、中間転写ベルト19と二次転写ローラ24の間に挟持されている記録媒体P上にトナー像を転写する。
【0026】
また、中間転写ベルト19上において、中間転写ベルト19搬送方向の、二次転写ローラ24より下流で且つ感光ドラム8より上流にはベルトクリーニング部材25が配置される。二次転写ニップにて記録媒体Pに転写しきらなかったトナーを回収する。クリーニング部材25は通常時は作用しない位置に退避しており、二次転写動作を行う際に作用する位置に移動する。
【0027】
二次転写ニップの、記録媒体Pの搬送方向下流側には、定着部30が配置される。定着部30では、二次転写ニップから送り出された記録媒体Pに熱と圧力をかけることで、記録媒体上のトナー像を記録媒体Pに定着させる。
【0028】
定着部30の記録媒体P搬送方向下流には、排紙部31が配置される。排紙部31は定着部より送り込まれた紙を排出し、排紙トレイ3に積載する。以上のような構成で、画像形成部100は記録媒体Pに画像を形成する。
【0029】
なお、本実施形態の画像形成部100は、ロータリ現像方式でカラーの電子写真画像形成を行うものとして説明した。しかし、画像形成部100は、それ以外にも複数の感光ドラムを備えたインライン方式の電子写真画像形成やモノクロ画像形成、その他インクジェット方式等の他の方式で画像形成を行うものであっても良い。
【0030】
(画像読取部)
本実施形態の画像形成装置1では、排紙トレイ3上の記録媒体Pが積載される空間を挟んで、上述した画像形成部100の上方には画像読取部200が設けられている。次に、この画像読取部200について説明する。図3は、画像読取部200と、画像形成部100の一部分の斜視図であり、図3(a)はADFユニット201を閉じた状態、図3(b)はADFユニット201を開いた状態を示す。
【0031】
画像読取部200は、ADFユニット201とプラテンガラスを備える原稿台202からなり、ADFユニット201は原稿台202に対し回動して開閉可能である。原稿台202の内側には原稿の画像を読み取る読取手段としての不図示の読取センサが設けられており、原稿台におかれた原稿、又は後述するADFユニットから送られてきた原稿の画像を読み取り、電気信号に変換する。この電気信号を画像信号として信号ケーブル205を通じて画像形成部100の制御基盤207に送る。画像形成装置1は、画像形成部100でこの画像信号に基づいて画像形成を行ったり、この画像信号に基づいた信号をPC等の外部ホスト装置へ送ったりすることができる。なお、本実施形態では信号ケーブル205は、複数の束線(電線)が平行に並んで平面状に形成された、フレキシブルフラットケーブル(FFC)である。
【0032】
画像の読取は、ADFユニットを開いて原稿台202に原稿を一枚ずつ乗せる方法、又は、ADFユニット201に配置される原稿トレイ203に原稿を載置し、原稿を自動で一枚ずつ原稿台202に送り、読み取ることで複数枚を一度に読み取ることも可能である。原稿台202上の原稿を読み取る場合、読取センサが設けられたキャリッジを原稿の面に沿って移動させることで原稿画像を読み取る。原稿トレイ203に載置された原稿を読み取る場合、原稿トレイ203上の原稿を不図示のADFローラによって一枚ずつADFユニット201内に搬送し、搬送しながら読取センサに対向する位置で画像を読み取ってADF排紙部204へと排出する。
【0033】
上述したキャリッジやADFローラは、不図示のモータにより駆動されるが、その駆動力は該モータに画像形成部100の制御基盤207から駆動制御ケーブル206を通じ電力や制御信号が供給されることで得られる。なお、本実施形態では駆動制御ケーブル206は、複数の束線(電線)が平行に並んで平面状に形成された、フレキシブルフラットケーブル(FFC)である。
【0034】
図4は、画像形成装置1を左からみた断面図である。画像読取部200は画像形成部100(装置本体)に対して軸34回りに回動可能に配置され、画像形成部100を閉じた閉位置(第1の位置)及び開いた開位置(第2の位置)との間を移動可能である。画像読取部200を画像形成部100に対して開くことで、排紙トレイ3から記録媒体Pを取り易くしたり、画像形成部100へ現像カートリッジ16を着脱したりすることができる。つまり、図4に示すように画像読取部200と画像形成部100の上カバー2を上方に回動させることで、現像カートリッジ16を図の矢印の方向に挿抜し現像カートリッジ16の交換を行うことが可能である。
【0035】
(画像形成部100と画像読取部200を繋ぐケーブル)
上述のように画像読取部200は画像形成部100に対して移動可能である。このため、画像読取部200と画像形成部100とを繋ぐケーブルである信号ケーブル205と駆動制御ケーブル206は、長さにある程度の余裕を持って設けられている。即ち、信号ケーブル205と駆動制御ケーブル206は、画像読取部200を画像形成部100に対して開いて両者の距離が離れた状態においても、両者を繋ぐことができるような長さとなっている。また、信号ケーブル205と駆動制御ケーブル206は、画像読取部200を開いた状態と閉じた状態とで画像形成部100と画像読取部200とを繋ぐ距離の変化が少ない、軸34の近くに配置されている。このようにケーブルを配置することで各ケーブルの長さを抑えることや、画像読取部200を開いた際にケーブルが邪魔になることを防ぐことができる。
【0036】
ここで、信号ケーブル205と駆動制御ケーブル206は、上述したように画像読取部200を画像形成部100に対して開いて両者の距離が離れた状態においても、両ケーブルが張りつめることなく両者を繋ぐことができるような長さとなっている。従って、画像読取部200を画像形成部100に対して閉じた状態では、両者を繋ぐ為に最低限必要な長さ以上の長さがあるので、信号ケーブル205と駆動制御ケーブル206に弛みが形成されている。また、信号ケーブル205と駆動制御ケーブル206とは画像形成部100の共通の制御基板207に接続されているので、両ケーブルは近接配置されている。このため、画像読取部200を画像形成部100に対して閉じた状態では、信号ケーブル205と駆動制御ケーブル206とが非常に近づいた、又は、接触した状態になる。
【0037】
ここで、信号ケーブル205には高周波の信号が流れている。放射ノイズは高周波であるほど大きくなるため、一般的に信号ケーブル205上にはフェライトコアなどのノイズ除去手段を設け、画像読取部200と画像形成部100間での信号ケーブル205上のノイズの伝播を防ぎ、放射ノイズの発生を防止する。しかし、本構成では駆動制御ケーブル206が信号ケーブル205と近接しているため、近接部で信号ケーブル205のノイズが駆動制御ケーブル206に伝わり、放射ノイズを発生させる可能性もある。これを防ぐためには、両ケーブルの近接部に対し信号ケーブル205の画像形成部100側・画像読取部200側の両側にフェライトコアを配置し、画像形成部100からのノイズと画像読取部200からのノイズ双方を遮断する必要がある。しかし、フェライトコアは高価であるため、本実施形態では前述のとおり画像読取部200内にのみフェライトコアを配置している。このため、このままでは信号ケーブル205についてのノイズ対策は不十分であり、駆動制御ケーブルと近接した場合にレベルの高い放射ノイズが発生する虞がある。
【0038】
また、上述した特許文献1のように束線の間にアース線を入れると、通信に使用しないアース線を複数設ける必要があり、その分のコストがかかる。
【0039】
そこで本実施形態では、信号ケーブル205と駆動制御ケーブル206と弛み状態を制御して、両ケーブル間に所定距離以上が保つように工夫している。以下は、その工夫について説明する。
【0040】
(ケーブルの弛み状態の制御)
図5は画像読取部200を開いた状態の画像形成装置1の軸34付近を左からみた断面図、図6(a)は画像読取部200を閉じた状態の画像形成装置1の軸34付近を左からみた断面図である。
【0041】
本実施形態では図5に示すように、信号ケーブル205を画像形成部100側でA方向に折り曲げることで、信号ケーブル205が画像形成部100から駆動制御ケーブル206から離れる方向であるA方向に向かって突出する(延び出る)ようにしている。同様に駆動制御ケーブル206を画像形成部100側でA方向とは異なるB方向に折り曲げることで、駆動制御ケーブル206が画像形成部100から信号ケーブル205から離れる方向であるB方向に向かって突出する(延び出る)ようにしている。つまり、信号ケーブル205と駆動制御ケーブル206が画像形成部100から突出する(延び出る)方向を、画像形成部100から画像読取部200に向かうに連れて両ケーブルが離れていくような方向としている。このため、画像読取部200を閉じた状態において、信号ケーブル205はA方向、駆動制御ケーブル206はB方向に弛むので、信号ケーブル205と駆動制御ケーブル206は互いに離れる方向に弛むことになる。このため、両ケーブルが近づいて電磁的に干渉し大きな放射ノイズが発生する虞を低減することができる。
【0042】
更に、本実施形態では、信号ケーブル205と駆動制御ケーブル206をガイドし、各ケーブルが弛んだ状態の形状を規制するガイド手段としてのガイド部材33a、b、cを画像形成部に設けている。ガイド部材33a、b、cはプラスチック製の突起形状を有する部材である。ガイド部材33aは、画像読取部200を閉じた状態において、信号ケーブル205を引っ掛けて駆動制御ケーブル206から離すように設けられている。同様に、ガイド部材33cは、画像読取部200を閉じた状態において、駆動制御ケーブル206を引っ掛けて信号ケーブル205から離すように設けられている。ガイド部材33bは、ガイド部材33a、cの間の位置に設けられている。ガイド部材33bは、画像読取部200を閉じて信号ケーブル205が弛んだ際に、信号ケーブル205の駆動制御ケーブル206に近づこうとする部分が駆動制御ケーブル206に近づき過ぎないように信号ケーブル205の位置を規制する。同様に、ガイド部材33bは、画像読取部200を閉じて駆動制御ケーブル206が弛んだ際に、駆動制御ケーブル206の信号ケーブル205に近づこうとする部分が信号ケーブル205に近づき過ぎないよう駆動制御ケーブル206の位置を規制する。つまり、ガイド部材33a、b、cによって信号ケーブル205、駆動制御ケーブル206の位置を規制することで、画像読取部200が閉じた状態で、信号ケーブル205、駆動制御ケーブル206を互いに離れる方向で屈曲した状態で維持する。このため、信号ケーブル205、駆動制御ケーブル206のうちの少なくとも一方が他方に近づく方向に屈曲してしまうことがない。
【0043】
これらガイド部材33a、b、cにより、画像読取部200を閉じた状態において、より確実に信号ケーブル205と駆動制御ケーブル206とが互いに離れる方向に弛むようにガイドすることができる。このため、両ケーブルが近づいて電磁的に干渉し大きな放射ノイズが発生する虞を低減することができる。
【0044】
また、ガイド部材33a、33cは、画像読取部200が開いた状態においても、信号ケーブル205、駆動制御ケーブル206が互いに離れる方向に弛むように、信号ケーブル205、駆動制御ケーブル206の位置を規制する。このように、開いた状態において、信号ケーブル205、駆動制御ケーブル206が互いに離れる方向に弛むようにしておくことで、画像読取部200が閉じた時に、信号ケーブル205及び駆動制御ケーブル206をスムーズに弛ませることができる。
【0045】
次に、本実施形態の効果について比較例を用いて説明する。図9(a)は比較例の画像形成装置1´の軸34´付近を左からみた断面図である。比較例の画像形成装置1´は、信号ケーブル205´、駆動制御ケーブル206´の弛み状態の制御以外については本実施形態の画像形成装置1と同等の構成となっている。信号ケーブル205´、駆動制御ケーブル206´は共に画像形成部100´からA方向に向かって突出し(延び出)ており、本実施形態のようにガイド部材33のように両ケーブルをガイドする部材は無い。その他の条件は本実施形態と同じで、信号ケーブル205´は画像読取部200´内でフェライトコアに覆われている。
【0046】
このような、比較例の画像形成装置1´において、画像読取部200´を閉じた状態で、信号ケーブル205´と駆動制御ケーブル206´とが接触している場合について説明する。図9(b)は、比較例の画像形成装置1´において発生した放射ノイズのうち、国際規格によって定められた放射ノイズの上限レベルを超えた周波数とそのレベルとを示す表である。比較例の画像形成装置1´では、180Hzと650Hzの二つの周波数帯で国際規格を超えるレベルの放射ノイズが発生していた。180Hzにおける放射ノイズ国際規格と比較例の画像形成装置1´の放射ノイズを示すグラフを図9(c)に示している。
【0047】
次に、本実施形態の画像形成装置1における放射ノイズについて説明する。図6(b)は、比較例の画像形成装置1´で国際規格を超えるレベルの放射ノイズが発生した180Hzと650Hzにおける、本実施形態の画像形成装置1での放射ノイズのレベルを示す表である。なお、画像読取部200を閉じた状態で測定したものである。
【0048】
このように、本実施形態では、画像読取部200を閉じた状態で、2つのケーブル205、206は互いに離れるように弛むように、2つのケーブル205、206が画像形成部100から突出する(延び出る)向きを工夫したり、ガイド部材を設けたりした。このため、フェライトコアを多用しなくとも、2つのケーブルの距離を離れさせることで、前述の周波数帯のどちらにおいても放射ノイズの発生量を国際規格よりも減らすことができているのがわかる。
【0049】
なお、このガイド部材33及び2つのケーブル205、206の接続位置は、画像読取部200の開き動作に伴ったケーブル205、206の変形が妨げられないように構成されている。
【0050】
また本実施形態では、ガイド部材33a、b、cを、ケーブル205を引っ掛けるガイド部材33aと、ケーブル206を引っ掛けるガイド部材33cと、ケーブル205、206の間に配置されたガイド部材33bに分けて設けている。このため、画像読取部200の開閉に伴って追従するケーブル205、206の変形を必要以上に規制することが無く、開閉をスムーズに行うことができる。また、このようにガイド部材33a、b、cは互いにある程度の距離を隔てて設けられているので、ガイド部材33a、b、cによってケーブル205、206が挟まれてしまうこともない。
【0051】
なお、画像読取部200を閉じた状態で、ケーブル205、206の画像形成部100からの突出方向(延出方向)とガイド部材33aと33cのみで2つのケーブル205、206とを十分に離すことができる構成となっていればガイド部材33bは設けなくてもよい。
【0052】
(変形例)
次に本発明の変形例について説明する。図7は画像読取部200を閉じた状態の変形例の画像形成装置の軸34付近を左からみた断面図である。本変形例では、信号ケーブル205が画像読取部200からA方向に向かって突出する(延び出る)ようにしている。同様に駆動制御ケーブル206が画像読取部200からB方向に向かって突出する(延び出る)ようにしている。つまり、信号ケーブル205と駆動制御ケーブル206が夫々画像読取部200から突出する(延び出る)方向を、画像形成部100から画像読取部200に向かうに連れて他方のケーブルから離れていくような方向としている。
【0053】
このように構成しているので、画像読取部200を閉じた状態において、信号ケーブル205と駆動制御ケーブル206が互いに離れる方向に弛む(屈曲する)ため、両ケーブルが近づいて電磁的に干渉し大きな放射ノイズが発生する虞を低減することができる。
【0054】
この変形例では、2つのケーブル205、206の双方が他方のケーブルから離れる方向に画像読取部200及び画像形成部100から突出(延び出)させている。このため、ガイド部材33を設けなくとも、2つのケーブル205、206の双方が他方のケーブルから離れる方向に弛むようにすることができる。
【0055】
即ち本発明は、ガイド部材33を設けず、ケーブル205が画像読取部200又は画像形成部100から突出している箇所のうち、少なくとも一箇所で他方のケーブルから離れる方向へ突出していて、且つ、ケーブル206が画像読取部200又は画像形成部100から突出(延び出)している箇所のうち、少なくとも一箇所で他方のケーブルから離れる方向へ突出(延び出)していてればよい。
【0056】
また、画像読取部200を閉じた状態で2つのケーブル205、206が互いに離れる方向に弛むようガイド部材33を設けていれば、2つのケーブル205、206が画像読取部200、画像形成部100から突出する(延び出る)方向を互いに離れる方向としなくともよい。
【0057】
また、本発明は画像形成部と、画像形成部に対して移動可能な画像読取部とを接続する2つのケーブルについて説明したが、これに本発明はこれに限られない。つまり、相対的な位置を変えることができる2つの装置間を繋ぐ2つのケーブルであれば本発明を適用することができる。
【0058】
このように本発明によれば、画像読取部200及び又は画像形成部100からケーブル205、206が突出する(延び出る)方向を工夫することで、画像読取部200を閉じた状態で2つのケーブル205、206が互いに離れる方向に弛ませることができた。また、ガイド部材33を設けたことで、画像読取部200を閉じた状態で2つのケーブル205、206が互いに離れる方向に弛ませる(屈曲させる)ことができた。その結果、低コストに放射ノイズの発生を抑えることができる。
【0059】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は第1実施形態と同様の画像形成装置に適用されるものである。このため、第1実施形態と同様のものについては同一の符号を付してその説明は省略する。
【0060】
第1実施形態において2つのケーブル205、206をガイドするガイド部材33は画像形成装置に固定されて動かないものであった。これに対し、本実施形態のガイド部材233は、画像読取部200の画像形成部100に対する開閉に連動して移動する構成となっている。
【0061】
図8(a)画像読取部200を開いた状態の画像形成装置1の軸34付近を左からみた断面図、(b)は画像読取部200を閉じた状態の画像形成装置1の軸34付近を左からみた断面図である。
【0062】
ガイド部材233(233a、233b)は、画像読取部200を開いた状態で、図8(a)に示すような第1の位置にある。この状態では、次に示す第2の状態と比べて、ガイド部材233はケーブル205、206から退避した位置にあり、ケーブルが画像読取部200と画像形成部100との間を繋ぐことをなるべく妨げない構成となっている。
【0063】
この状態から、画像読取部200を閉じていくと、不図示のリンク機構により画像読取部200の移動に連動してガイド部材233a、233bは図中の矢印で示すように、互いに離れる方向に移動していく。このように、ガイド部材233a、233bが互いに離れる方向に移動する際、ガイド部材233aはケーブル206を押圧し、ガイド部材233bはケーブル205を押圧し、それぞれのケーブルを互いに離れる方向に屈曲させていく。そして、図8(b)に示すように、2つのケーブルを互いに離れる方向に屈曲させる。
【0064】
このように、本実施形態では、画像読取部200の画像形成部100に対する移動に連動して、ガイド部材233a、233bが移動して、2つのケーブルを互いに離れる方向に屈曲させる構成とした。このように構成しても第1実施形態と同様に、低コストに放射ノイズの発生を抑えることができる。
【0065】
また、画像読取部200が開いた状態で、ケーブルが画像読取部200と画像形成部100との間を繋ぐことをなるべく妨げないよう、画像読取部200を閉じた状態と比べ、ガイド部材233は2つのケーブルのから退避する。そして、画像読取部200を閉じていくと、ガイド部材233が動くことにより2つのケーブル205、206を屈曲させる。このため、画像読取部200が開いた状態における2つのケーブル205、206の長さを、第1実施形態と比べ、短く構成することが可能です。
【符号の説明】
【0066】
200 画像読取部
100 画像形成部
205 信号ケーブル
206 駆動制御ケーブル
33a、33b、33c、233a、233b ガイド部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に画像を形成する画像形成部と、原稿の画像を読み取る画像読取部と、それぞれが前記画像読取部と前記画像形成部との間を繋ぐ2つのケーブルとを有し、前記画像読取部が第1の位置と前記第1の位置よりも前記画像形成部から離れた第2の位置との間を移動可能である画像形成装置において、
前記2つのケーブルの位置を規制する規制部材を有し、前記規制部材は、前記画像読取部が前記第1の位置にある時に、前記2つのケーブルのそれぞれを、互いに離れる方向に屈曲した状態で維持することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記規制部材は、前記画像読取部が前記第1の位置にある時に、前記2つのケーブルのうちの一方のケーブルを他方のケーブルから離れるように屈曲した状態で維持する第1規制部と、前記他方のケーブルを前記一方のケーブルから離れるように屈曲した状態で維持する第2規制部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1規制部と前記第2規制部は、前記画像読取部の前記第2の位置から前記第1の位置への移動に連動して移動することで、前記2つのケーブルのそれぞれを押圧し、互いに離れる方向に屈曲させることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記2つのケーブルの各々は、前記画像読取部及び前記画像形成部から延び出て前記画像読取部と前記画像形成部との間を繋いでおり、
前記2つのケーブルのうちの一方のケーブルは、前記画像読取部、及び又は、前記画像形成部から他方のケーブルから離れる方向に延び出し、他方のケーブルは、前記画像読取部、及び又は、前記画像形成部から一方のケーブルから離れる方向に延び出ていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
記録材に画像を形成する画像形成部と、原稿の画像を読み取る画像読取部と、それぞれが前記画像読取部と前記画像形成部との間を繋ぐ2つのケーブルとを有し、前記画像読取部が第1の位置と前記第1の位置よりも前記画像形成部から離れた第2の位置との間を移動可能である画像形成装置において、
前記2つのケーブルの位置を規制する規制部材を有し、前記規制部材は、前記画像読取部が前記第2の位置にある時に、前記2つのケーブルのそれぞれを、互いに離れる方向に屈曲するよう規制することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記規制部材は、前記画像読取部が前記第2の位置にある時に、前記2つのケーブルのうちの一方のケーブルを他方のケーブルから離れるように屈曲した状態で規制する第1規制部と、前記他方のケーブルを前記一方のケーブルから離れるように屈曲した状態で規制する第2規制部と、を備えることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
記録材に画像を形成する画像形成部と、原稿の画像を読み取る画像読取部と、それぞれが前記画像読取部と前記画像形成部との間を繋ぐ2つのケーブルとを有し、前記画像読取部が第1の位置と前記第1の位置よりも前記画像形成部から離れた第2の位置との間を移動可能である画像形成装置において、
前記2つのケーブルのうちの一方のケーブルは、他方のケーブルから離れる方向で、前記画像読取部、及び又は、前記画像形成部から延び出し、他方のケーブルは、一方のケーブルから離れる方向で、前記画像読取部、及び又は、前記画像形成部から延び出ていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記2つのケーブルのうちの少なくとも1つのケーブルは、他方のケーブルから離れる方向に折り曲げられることで他方のケーブルから離れる方向で前記画像読取部及び/又は前記画像形成部から延び出ていることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置.
【請求項9】
前記2つのケーブルはそれぞれ、複数の電線が平行に並んで平面状に形成されたフレキシブルフラットケーブルであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記2つのケーブルのうちの一方のケーブルは、前記画像読取部から前記画像形成部へ画像信号を送るケーブルであり、他方のケーブルは、前記画像形成部から前記画像読取部へ前記画像読取部を制御するための信号を送るケーブルであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−212130(P2012−212130A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−56053(P2012−56053)
【出願日】平成24年3月13日(2012.3.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】