説明

画像形成装置

【課題】定着部4の通紙領域外の表面温度Tに基づき、段階的に定着部4の温度を低下させる制御を行うことで、ユーザにストレスを感じさせないようにしながら、定着器の通紙領域外が過昇温状態に陥ることを防止できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着部4に加熱部材31および加圧部材32と、加熱部材31を加熱する熱源37と、加熱部材31の通紙領域外の温度を検知する第2温度センサ49を設ける。制御部54は、第2温度センサ49で検知された温度Tが予め設定された閾温度Txを超えた場合には、定着部4の定着温度を第1定着温度から、第1定着温度より低温に設定された第2定着温度に変更して、記録用紙の定着処理をする。定着温度が第2定着温度に変更されたのち、第2温度センサ49で検知された温度Tが、予め設定された閾温度Txを再度超えた場合には、単位時間当たりの搬送枚数を減少させて記録用紙の定着処理をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙にトナー画像を定着するための定着部を備えている画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な画像形成装置においては、用紙幅の異なる各種サイズの記録用紙に画像を形成することができるが、多くの場合、用紙搬送路に配置された各種処理ローラの軸方向中央部を基準位置にしてプリントを行う。そのため、定着部の加熱ローラを加熱するヒータの温度制御は、加熱ローラの軸方向中央部の周面温度(以下、単に中央部温度という。)を基準にして行うことが多い。このように、加熱ローラの中央部温度を基準にしてヒータの温度制御を行う場合には、葉書などの小サイズの記録用紙に対して定着処理を行うとき、記録用紙に熱が奪われる加熱ローラの中央部温度のみが降下し、軸方向端部の周面温度(以下、単に端部温度と言う。)が上昇しやすい。とくに小サイズの記録用紙の定着処理を連続して行う場合には、加熱ローラの軸方向両端が過昇温状態に陥りやすく、場合によっては、加熱ローラを支持する軸受が熱で破損し、あるいは加圧ローラが劣化するおそれがある。
【0003】
上記のような不具合を解決するために、加熱ローラの端部温度検知用の温度センサを設け、該温度センサの検知温度に基づいて記録用紙の搬送状態を制御し、加熱ローラの端部温度の上昇を抑えるようにすることが従来から行われている。例えば、特許文献1の画像形成装置では、最小サイズの記録材が通過する通過領域外の定着手段の温度を検知する温度検知素子が設けられている。温度検知素子により検知された温度が、所定の搬送中断温度に達した際に、次の記録材の搬送を一時中断して定着手段の温度を降下させる。こののち、温度検知素子による検知温度が搬送再開温度まで降下したことを確認して、単位時間当たりの搬送枚数を減少させた状態で搬送を再開するようになっている。搬送を一時中断することにより、定着手段の通紙部と非通紙部の温度ムラを均して、搬送再開後の非通紙部の温度上昇を遅らせることができるので、定着手段の軸方向両端が過昇温状態に陥ることを防止できる。
【0004】
特許文献2の画像加熱装置においては、記録材の通過範囲を外れた回転部材の長手方向端部に温度センサが設けられている。温度センサにより検知された温度が、設定された判断温度以上になった場合には、以降に給送される記録材の給送間隔を広げて、スループット(単位時間当たりの搬送枚数)を低下させた状態で記録材を搬送し、回転部材の長手方向端部の過剰な昇温を回避する。スループットを低下させた後は、前記判断温度を高温側に再設定して、その後所定期間内に、温度センサの検知温度が再設定された判断温度以上になった場合には、さらにスループットを低下させて以降の記録材を搬送する。このように、判断温度を高温側に再設定することにより、必要以上にスループットを低下させることなくプリントを行うことができるようにしながら、回転部材の長手方向端部が過昇温状態に陥ることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−250374号公報(段落番号0045、0046、図4)
【特許文献2】特開2010−190967号公報(段落番号0102〜0108、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の画像形成装置では、温度検知素子により検知された温度が、所定の搬送中断温度に達した際に、次の記録材の搬送が一時中断され、検知温度が搬送再開温度に降下するまで記録材の搬送が行われない。そのため、設定枚数のプリントが終了していないにも拘らずプリントが停止されるので、とくに時間を争うユーザにとって不満の原因となりやすい。さらに、搬送再開後も単位時間当たりの搬送枚数を減少させた状態でプリントを行うので、プリント処理に時間が掛かる。また、少数枚しかプリントを行わない場合、あるいはプリント枚数が残り数枚である場合であっても、検知温度が搬送中断温度以上になった場合にはプリントが中断されるので、ユーザにストレスを与えやすい。
【0007】
特許文献2の画像加熱装置の場合も、検知温度が設定された判断温度以上になると、次に搬送される記録材からスループットを低下させるので、プリント処理に時間が掛かる。したがって、プリントが終わるまでの時間が長くなり、ユーザにストレスを与えることになる。
【0008】
本発明の目的は、定着部の通紙領域外の表面温度に基づき、段階的に定着器の温度を降下させる制御を行うことで、ユーザにストレスを感じさせないようにしながら、定着器の通紙領域外が過昇温状態に陥ることを確実に防止できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像形成装置は、用紙搬送路6に記録用紙を供給する用紙供給部16と、トナー画像を形成する画像形成部3と、トナー画像が形成された記録用紙を定着処理する定着部4を備えている。加えて、用紙供給部16、画像形成部3、および定着部4の作動状態を制御する制御部54を備えている。定着部4は、記録用紙を加熱し加圧する加熱部材31および加圧部材32と、加熱部材31を加熱する熱源37と、加熱部材31の通紙領域の表面温度を検知する第1温度センサ48と、加熱部材31の通紙領域外の表面温度を検知する第2温度センサ49とを備えている。制御部54は、第1温度センサ48で検知された温度に基づいて、予め設定された第1定着温度で定着処理をするように、熱源37の発熱状態を制御するようになっている。制御部54は、第2温度センサ49で検知された温度Tが予め設定された閾温度Txを超えた場合には、定着部4の定着温度を前記第1定着温度から、該第1定着温度より低温に設定された第2定着温度に変更して、記録用紙の定着処理をするようになっている。制御部54は、定着温度が前記第2定着温度に変更されたのち、第2温度センサ49で検知された温度Tが予め設定された閾温度Txを再度超えた場合には、単位時間当たりの搬送枚数を減少させて記録用紙の定着処理をすることを特徴とする。
【0010】
制御部54は、用紙供給部16から用紙搬送路6に供給する記録用紙の供給間隔を広げることにより、単位時間当たりの搬送枚数を減少させるようになっている。
【0011】
制御部54は、第2温度センサ49で検知された温度が予め設定された閾温度Txを再度超えた場合には、用紙搬送路6を搬送される記録用紙の搬送速度を低下させて記録用紙の定着処理をする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る画像形成装置の制御部54は、加熱部材31の通紙領域外の表面温度を検知する第2温度センサ49で検知された温度Tに基づいて、定着部4の温度を降下させる制御を行うようにした。詳しくは、第2温度センサ49で検知した温度が予め設定された閾温度Txを超えた場合には、第1段階の温度を降下させる制御として、定着部4の定着温度を第1定着温度から第1定着温度より低温に設定された第2定着温度に変更して、以降の記録用紙を定着処理するようにした。
【0013】
上記のように、定着温度を第1定着温度より低温の第2定着温度に設定して定着処理を行うと、熱源37から加熱部材31への供給熱量を減じて、定着部4全体の温度を降下させることができる。これによれば、単位時間当たりの搬送枚数、および搬送速度は変更しないので、プリント作業の生産性が低下することなく、定着部4の通紙領域外の温度を降下させることができる。したがって、プリントが終わるまでの時間が長くなることを防止しながら、プリント作業を継続することができる。とくに残りプリント枚数が数枚の場合には、プリント作業を速やかに完了することができるので、ユーザにストレスを感じさせない画像形成装置を提供することができる。このとき、高温となった加熱部材31の通紙領域外の熱が、通紙領域へと移動しながら定着処理が行われるので、定着温度を低温側に設定しても、問題なく定着処理を行うことができる。
【0014】
加えて、本発明においては、定着温度が第2定着温度に変更されたのち、第2温度センサ49で検知した温度Tが、予め設定された閾温度Txを再度超えた場合には、第2段階の温度を降下させる制御を行うようにした。詳しくは、用紙搬送路6を搬送される単位時間当たりの搬送枚数を減少させるようにした。これによれば、定着処理を行っている間、換言すれば、記録用紙が定着部4を通過している間は、加熱部材31の熱が記録用紙に奪われ、通紙領域の温度を降下させることができる。このとき、熱源37は温度が降下した通紙領域を定着温度に上昇させるために発熱するので、熱源37から供給される熱量は、記録用紙が定着部4を通過する長さとほぼ比例する。したがって、単位時間当たりの搬送枚数を減少させることにより、記録用紙が定着部4を通過する長さを減じること、すなわち熱源37から加熱部材31に供給される熱量を減少させることができるので、定着部4の通紙領域外が過昇温状態に陥ることを防止できる。このように、まず、単位時間当たりの搬送枚数の低下が伴わない制御を行い、それでも加熱部材31の通紙領域外の温度が上昇する場合には、単位時間当たりの搬送枚数を低下させるようにしたので、ユーザにストレスを感じさせないようにしながら、過昇温状態に陥ることを防止することができる。
【0015】
単位時間当たりの搬送枚数を、用紙搬送路6に供給する記録用紙の供給間隔を広げることで減少させるようにしたので、記録用紙の定着処理の間隔を広くすることができる。これによれば、記録用紙が定着部4を通過していない間に、加熱部材31の通紙領域外の熱を、記録用紙に熱が奪われることで低温になった通紙領域へと移動させることができる。したがって、加熱部材31の温度ムラが解消され、加熱部材31全体を設定された定着温度に近づけることができ、定着部4の通紙領域外が過昇温状態に陥ることを防止できる。また、排紙部5に排出される記録用紙の間隔は広くなるが、記録用紙が排出される速度は変わらないので、ユーザにプリント速度が遅くなったと感じさせることはなく、ストレスを与えることもない。
【0016】
記録用紙の供給間隔を広げて単位時間当たりの搬送枚数を減少させたのち、第2温度センサ49で検知した温度Tが、予め設定された閾温度Txを再度超えた場合には、第3段階の温度を降下させる制御を行うようにした。詳しくは、用紙搬送路6を搬送される記録用紙の搬送速度を低下させるようにした。このように、記録用紙の搬送速度を低下させると、単位時間当たりに定着器4を通過する記録用紙の長さが短くなるので、加熱部材31から記録用紙へ奪われる熱量を減少させることができる。これにて、加熱部材31の通紙領域の温度が降下しにくくなり、熱源37からの熱量の供給を減少させることができる。また、加熱部材31の温度ムラが生じにくくなる。したがって、定着部4の通紙領域外が過昇温状態に陥ることを防止でき、加熱部材31を支持する軸受40が熱で破損し、あるいは加圧部材32が劣化するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る画像形成装置の定着部の概略構成図である。
【図2】画像形成装置の概略構成図である。
【図3】画像形成装置の制御系のブロック図である。
【図4】画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態) 図1から図7に、本発明に係る画像形成装置を、コピー機能とファクシミリ機能とを備えた複合機に適用した実施形態を示す。図2において複合機1は、記録用紙を収容する給紙カセット2と、給紙カセット2から送られた記録用紙上にトナー画像を形成する画像形成部3と、トナー画像が形成された記録用紙を加熱し加圧して定着処理する定着部4とを備えている。複合機1の内部には、給紙カセット2から画像形成部3および定着部4を経て排紙部5に至る用紙搬送路6が形成されている。排紙部5の上方には画像読取部7が配置されており、画像読取部7の前面には操作ボタンを備えた操作パネル8が設けてある。画像読取部7の上面には自動原稿搬送装置(ADF)9が設けてある。なお、本発明における前後、左右、上下とは、図1および図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0019】
給紙カセット2は、記録用紙を用紙搬送路6に繰り出すための給紙ローラ13と、給紙ローラ13に圧接して記録用紙の重送を防止する摩擦パッド14とを備えている。用紙搬送路6における給紙ローラ13と画像形成部3との間には、画像形成部3へ記録用紙を送給するレジストローラ対15が設けられている。給紙カセット2と、給紙ローラ13と、摩擦パッド14とで用紙供給部16が構成されており、給紙クラッチ17(図3参照)を断続することにより給紙ローラ13への動力を断続して、用紙搬送路6への記録用紙の給紙タイミングを調整することができる。
【0020】
画像形成部3は感光体ドラム21を中心にして構成してあり、画像形成時の感光体ドラム21は、図2において反時計回転方向へ回転する。感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿ってコロナ帯電式の帯電器22と、LEDヘッド23と、現像器24と、転写ローラ25と、クリーニング部26とが順に設けられている。LEDヘッド23は、帯電器22によって帯電された感光体ドラム21の表面を露光して静電潜像を形成する。現像器24は、キャリアとトナーとを主成分とする2成分現像剤を収容するハウジング27と、ハウジング27の開口部に配置される現像ローラ28とを備えており、現像ローラ28を介して感光体ドラム21の表面にトナーを供給する。転写ローラ25は、感光体ドラム21の表面に形成されたトナー画像を記録用紙に転写する。クリーニング部26は、感光体ドラム21の表面の電荷および残留トナーを除去する。感光体ドラム21および転写ローラ25の回転により、トナー画像が形成された記録用紙は下流側の定着部4へ搬送される。
【0021】
定着部4は、加熱ローラ(加熱部材)31と加圧ローラ(加圧部材)32とを備えており、両ローラ31・32が接触する部分に、記録用紙を加熱し加圧するニップ部33が形成してある(図1参照)。画像形成時の加熱ローラ31および加圧ローラ32は、ニップ部33に達した記録用紙を用紙搬送路6の下流側へ送り出す方向へ回転する。用紙搬送路6の終端には、記録用紙を排紙部5へ排出する排紙ローラ対34が設けられている。
【0022】
図1に示すように加熱ローラ31は、熱伝導率が高いアルミニウム等の金属を素材にして、前後に長い円筒状に形成したものであり、加熱ローラ31を加熱するためのヒータ(熱源)37を内蔵している。ヒータ37は、フィラメントが封入された管体38と、管体38の前後端に設けた端子39とを一体に備えたハロゲンランプで構成されており、全体が加熱ローラ31を軸方向(前後方向)に縦通する状態で配置してある。加熱ローラ31の前後端は軸受40で支持されており、ヒータ37の前後端は、図示していない金属製のブラケットで支持してある。加熱ローラ31の外周面には、トナーの剥離性を向上するために、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)がコーティングしてある。
【0023】
加圧ローラ32は、前後に長い回転軸42の外周面にシリコンゴム等からなる弾性体層43を形成し、さらにその外周面に、加熱ローラ31と同様のPTFEがコーティングしてある。回転軸42の前後端部は弾性体層43の前後面から突出しており、これら両端部を圧縮ばね44で押付け付勢することにより、弾性体層43が加熱ローラ31に圧接して、両ローラ31・32の当接部分に、ローラ軸方向に長いニップ部33が形成されている。
【0024】
加熱ローラ31の外周面には、サーミスタからなる第1、第2の温度センサ48・49が、ローラ表面に密着する状態で配置してあり、これらの温度センサ48・49で加熱ローラ31の表面温度を検知している(図1参照)。詳しくは、第1温度センサ48は、加熱ローラ31の軸方向中央部に配置されて、加熱ローラ31の通紙領域の中央部温度を検知する。第2温度センサ49は、加熱ローラ31の後端部(軸方向端部)の通紙領域外に配置されて、加熱ローラ31の端部温度を検知する。
【0025】
ニップ部33の幅寸法(前後寸法)は、トナー画像を形成可能な最大サイズの記録用紙の幅寸法(短辺部の寸法)Wより大きく設定されている。加圧ローラ32の弾性体層43の前後寸法は、加熱ローラ31の前後寸法よりも小さく設定されており、ニップ部33の前後寸法は弾性体層43の前後寸法に等しい。また、弾性体層43の前後寸法は、ヒータ37の管体38の前後寸法よりも小さく設定されている。
【0026】
図3に示すように、給紙ローラ13、レジストローラ対15、感光体ドラム21、加熱ローラ31および排紙ローラ対34は、メインモータ51の駆動力を受けて回転駆動される。メインモータ51と給紙ローラ13を繋ぐ動力伝達経路には、メインモータ51から給紙ローラ13への動力を断続する給紙クラッチ17が設けられている。
【0027】
用紙供給部16、画像形成部3、定着部4、メインモータ51、および給紙クラッチ17の作動状態は、CPU(制御部)54で制御される。CPU54はシステムバス53に接続されている。システムバス53には、ROM55、RAM56、スキャナ57、操作パネル8、ファクシミリ通信部58、ローカルエリアネットワークインターフェース(LAN I/F)59、画像メモリ60、およびプリント画像処理部61などが接続されている。CPU54は、ROM55に記憶されたプログラムに基づいて、各種の演算処理を行う。ROM55には、プログラムの他に、用紙搬送路6内を搬送される記録用紙の搬送速度、記録用紙の画像形成部3への給紙間隔、定着部4での定着温度、閾温度Tx、等の情報が格納されている。搬送速度に関する情報には、プリント作業の開始時の初期値となる第1搬送速度と、それよりも低速の第2搬送速度とが含まれる。給紙間隔に関する情報には、プリント作業の開始時の初期値となる第1給紙間隔と、それよりも長い第2給紙間隔とが含まれる。定着温度に関する情報には、プリント作業の開始時の初期値となる第1定着温度と、それよりも低温の第2定着温度が含まれる。
【0028】
ファクシミリ通信部58は公衆交換電話網(PSTN)62と接続されて、PSTN62との接続および切断を行う。LAN I/F59はローカルエリアネットワーク(LAN)63に接続されて、LAN63との送受信を行う。画像メモリ60には、画像読取部7を構成するスキャナ57で読み取られた画像データ、およびファクシミリ通信で受信した画像データなどが一時的に格納される。プリント画像処理部61は画像メモリ60に格納された画像データを基に、CPU54からの指令を受けてLEDヘッド23を駆動し、感光体ドラム21上に静電潜像を記録する。
【0029】
次に、図4から図7のフローチャートを用いて、プリント作業の開始から終了までの一連の流れを説明する。本発明では、生産性の低下に影響を与えない制御から実施し、制御を段階的に追加していくことでユーザにストレスを感じさせないようにしながら、定着部4の通紙領域外の温度が過昇温状態に陥ることを防止する。図4に示すように、プリント作業の開始指令を受けたCPU54は、今回のプリント作業における総プリント枚数N1を残り印字枚数Nにセットする(S1)。搬送速度、給紙間隔、および定着温度をそれぞれ初期値の第1搬送速度、第1給紙間隔、および第1定着温度に設定し(S2〜S4)、メインモータ51を駆動させて、定着部4のヒータ37に通電して発熱させる。
【0030】
第2温度センサ49で検知される温度(加熱ローラ31の通紙領域外の周面温度)Tが閾温度Txを超えているかどうかを確認する(S5)。閾温度Txを超えていなければ(S5でNO)、CPU54は第1定着温度および第1給紙間隔で定着処理を行うよう給紙クラッチ17を接続して、画像形成部3への給紙を開始し(S6)、残り印字枚数Nを1だけ減らす(S7)。残り印字枚数Nが0になるまで(S8でNO)、第1搬送速度、第1定着温度、および第1給紙間隔でステップS5〜S8を繰り返す。残り印字枚数Nが0(S8でYES)になったらプリント作業を終了する。
【0031】
プリント作業中に第2温度センサ49で検知される温度Tが閾温度Txを超えた場合には(S5でYES)、定着温度を第2定着温度に再設定し(S9)、プリント作業を継続する(図4参照)。図5に示すように、CPU54は第2定着温度および第1給紙間隔で定着処理を行うよう給紙クラッチ17を接続して、画像形成部3への給紙を開始し(S11)、残り印字枚数Nを1だけ減らす(S12)。残り印字枚数Nが0でない場合には(S13でNO)、温度Tが閾温度Txを超えているかどうかを確認する(S14)。温度Tが閾温度Txを超えていない場合には(S14でNO)、第1搬送速度、第2定着温度、および第1給紙間隔でステップS11〜S14を繰り返す。残り印字枚数Nが0(S13でYES)になったらプリント作業を終了する。
【0032】
上記のように、定着温度を第1定着温度より低温の第2定着温度に設定して定着処理を行うと、ヒータ37から加熱ローラ31への供給熱量を減じて、定着部4全体の温度を降下させることができる。これによれば、単位時間当たりの搬送枚数、および搬送速度は変更しないので、プリント作業の生産性が低下することなく、定着部4の通紙領域外の温度を降下させることができる。したがって、プリントが終わるまでの時間が長くなることを防止しながら、プリント作業を継続することができる。とくに残りプリント枚数が数枚の場合には、プリント作業を速やかに完了することができるので、ユーザにストレスを感じさせない画像形成装置を提供することができる。
【0033】
第1段階の温度を降下させる制御、すなわち定着温度を第2定着温度に再設定したのちのプリント作業中に、第2温度センサ49で検知される温度Tが、閾温度Txを再度超えた場合には(S14でYES)、給紙間隔を第2給紙間隔に再設定し(S15)、プリント作業を継続する(図5参照)。図6に示すように、CPU54は第2定着温度および第2給紙間隔で定着処理を行うよう給紙クラッチ17を接続して、画像形成部3への給紙を開始し(S21)、残り印字枚数Nを1だけ減らす(S22)。残り印字枚数Nが0でない場合には(S23でNO)、温度Tが閾温度Txを超えているかどうかを確認する(S24)。温度Tが閾温度Txを超えていない場合には(S24でNO)、第1搬送速度、第2定着温度、および第2給紙間隔でステップS21〜S24を繰り返す。残り印字枚数Nが0(S23でYES)になったらプリント作業を終了する。
【0034】
上記のように、定着温度が第2定着温度に変更されたのち、第2温度センサ49で検知した温度Tが、予め設定された閾温度Txを再度超えた場合には、用紙搬送路6を搬送される単位時間当たりの搬送枚数を減少させるようにした。これによれば、定着処理を行っている間、換言すれば、記録用紙が定着部4を通過している間は、加熱ローラ31の熱が記録用紙に奪われ、通紙領域の温度を降下させることができる。このとき、ヒータ37は温度が降下した通紙領域を定着温度に上昇させるために発熱するので、ヒータ37から供給される熱量は、記録用紙が定着部4を通過する長さとほぼ比例する。したがって、単位時間当たりの搬送枚数を減少させることにより、記録用紙が定着部4を通過する長さを減じること、すなわちヒータ37から加熱ローラ31に供給される熱量を減少させることができるので、定着部4の通紙領域外が過昇温状態に陥ることを防止できる。このように、まず、単位時間当たりの搬送枚数の低下が伴わない制御を行い、それでも加熱ローラ31の通紙領域外の温度が上昇する場合には、単位時間当たりの搬送枚数を低下させるようにしたので、ユーザにストレスを感じさせないようにしながら、過昇温状態に陥ることを防止することができる。
【0035】
詳しくは、単位時間当たりの搬送枚数を、用紙搬送路6に供給する記録用紙の供給間隔を広げることで減少させるようにしたので、記録用紙の定着処理の間隔を広くすることができる。これによれば、記録用紙が定着部4を通過していない間に、加熱ローラ31の通紙領域外の熱を、記録用紙に熱が奪われることで低温になった通紙領域へと移動させることができる。したがって、加熱ローラ31の温度ムラが解消され、加熱ローラ31全体を設定された定着温度に近づけることができ、定着部4の通紙領域外が過昇温状態に陥ることを防止できる。また、排紙部5に排出される記録用紙の間隔は広くなるが、記録用紙が排出される速度は変わらないので、ユーザにプリント速度が遅くなったと感じさせることはなく、ストレスを与えることもない。
【0036】
第2段階の温度を降下させる制御、すなわち搬送間隔を第2搬送間隔に再設定したのちのプリント作業中に、第2温度センサ49で検知される温度Tが、閾温度Txを再度超えた場合には(S24でYES)、用紙搬送速度を第2搬送速度に再設定し(S25)、プリント作業を継続する(図6参照)。図7に示すように、CPU54は第2定着温度および第2給紙間隔で定着処理を行うよう給紙クラッチ17を接続して、画像形成部3への給紙を開始し(S31)、残り印字枚数Nを1だけ減らす(S32)。残り印字枚数Nが0でない場合には(S33でNO)、温度Tが閾温度Txを超えているかどうかを確認する(S34)。温度Tが閾温度Txを超えていない場合には(S34でNO)、第2搬送速度、第2定着温度、および第2給紙間隔でステップS31〜S34を繰り返す。残り印字枚数Nが0(S33でYES)になったらプリント作業を終了する。
【0037】
上記のように、記録用紙の供給間隔を広げて単位時間当たりの搬送枚数を減少させたのち、第2温度センサ49で検知した温度Tが、予め設定された閾温度Txを再度超えた場合には、用紙搬送路6を搬送される記録用紙の搬送速度を低下させるようにした。このように、記録用紙の搬送速度を低下させると、単位時間当たりに定着器4を通過する記録用紙の長さが短くなるので、加熱ローラ31から記録用紙へ奪われる熱量を減少させることができる。これにて、加熱ローラ31の通紙領域の温度が降下しにくくなり、ヒータ37からの熱量の供給を減少させることができる。また、加熱ローラ31の温度ムラが生じにくくなる。したがって、定着部4の通紙領域外が過昇温状態に陥ることを防止でき、加熱ローラ31を支持する軸受40が熱で破損し、あるいは加圧ローラ32が劣化するのを防止できる。
【0038】
第3段階の温度を降下させる制御、すなわち搬送間隔を第2搬送間隔に再設定したのちのプリント作業中に、第2温度センサ49で検知される温度Tが、閾温度Txを再度超えた場合には(S34でYES)、給紙を一旦停止して(S35)、温度Tが十分降下するのを待ってからS2に戻って、プリント作業を再開する。このように、温度を降下させる制御を段階的に追加した場合でも、加熱ローラ31の通紙領域外の温度が上昇し続けるときには、故障等の要因で温度が上昇している可能性がある。したがって、このような場合には、プリント作業を継続せずエラー表示等を操作パネル8上に表示して、プリント作業を中断することもできる。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置によれば、加熱ローラ31の通紙領域外の表面温度を検知する第2温度センサ49で検知された温度Tに基づいて、段階的に温度を降下させる制御を行うようにした。したがって、ユーザにストレスを感じさせないようにしながら、プリント作業を継続することができ、同時に、定着器の通紙領域外が過昇温状態に陥ることを防止することができる。
【0040】
上記の実施形態では、定着温度、搬送間隔、および搬送速度は、各段階で再設定した条件の状態でプリントを継続したがその必要はない。例えば、第2温度センサ49で検知された温度Tが降下し、温度が安定したと判断した場合には、全てを初期値に再設定してプリントを継続してもよい。閾温度Txは同一の温度である必要はなく、各段階においてそれぞれ異なる温度に設定してもよい。加熱部材31と加圧部材32はローラである必要は無く、例えばローラ等に巻き掛けたベルトを適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
3 画像形成部
4 定着部
6 用紙搬送路
16 用紙供給部
31 加熱部材(加熱ローラ)
32 加圧部材(加圧ローラ)
37 熱源(ヒータ)
48 第1温度センサ
49 第2温度センサ
54 制御部(CPU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙搬送路に記録用紙を供給する用紙供給部と、トナー画像を形成する画像形成部と、トナー画像が形成された記録用紙を定着処理する定着部と、前記用紙供給部、前記画像形成部、および前記定着部の作動状態を制御する制御部とを備えた画像形成装置であって、
前記定着部は、前記記録用紙を加熱し加圧する加熱部材および加圧部材と、前記加熱部材を加熱する熱源と、前記加熱部材の通紙領域の表面温度を検知する第1温度センサと、前記加熱部材の通紙領域外の表面温度を検知する第2温度センサとを備えており、
前記制御部は、前記第1温度センサで検知された温度に基づいて、予め設定された第1定着温度で定着処理をするように、前記熱源の発熱状態を制御するようになっており、前記第2温度センサで検知された温度が予め設定された閾温度を超えた場合には、前記定着部の定着温度を前記第1定着温度から、該第1定着温度より低温に設定された第2定着温度に変更して、前記記録用紙の定着処理をするようになっており、
前記制御部は、前記定着温度が前記第2定着温度に変更されたのち、前記第2温度センサで検知された温度が予め設定された閾温度を再度超えた場合には、単位時間当たりの搬送枚数を減少させて前記記録用紙の定着処理をすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記用紙供給部から前記用紙搬送路に供給する前記記録用紙の供給間隔を広げることにより、単位時間当たりの搬送枚数を減少させる請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2温度センサで検知された温度が予め設定された閾温度を再度超えた場合には、前記用紙搬送路を搬送される前記記録用紙の搬送速度を低下させて前記記録用紙の定着処理をする請求項2記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−234107(P2012−234107A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104027(P2011−104027)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】