説明

画像形成装置

【課題】転写巻きつきJAMを容易に解消できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】回転駆動によってトナー像が形成される像担持体(12)と、転写位置にて記録材の裏面側を像担持体に押圧してトナー像を記録材の表面に転写させる一方、像担持体から離間可能に構成される転写ローラ(31)と、転写ローラが記録材を保持する際にはこの記録材を保持できる位置に配置されており、その正回転によって待機位置の記録材を転写位置に向けて送出する一方、逆回転可能に構成される搬送ローラ(14)と、記録材の搬送方向で見て搬送ローラよりも上流側に配置され、待機位置における記録材の有無を検知する上流側センサ(62)と、記録材による像担持体への巻きつきを検知した場合に、転写ローラを像担持体から離間させ、記録材が待機位置に無い旨を上流側センサで検知したときには、搬送ローラを逆転させて記録材を待機位置まで戻す巻きつき調整手段(60,92)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上のトナー像を待機位置から送出した記録材に転写して定着させる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置では電子写真方式が用いられており、帯電器が像担持体、感光体ドラムを予め帯電し、露光部が感光体ドラムの表面に光を照射すると、この表面には静電潜像が形成される。また、現像器はトナーを担持しており、トナーが静電潜像に付着してトナー像を形成する。そして、記録材が待機位置から送出され、転写ローラが記録材の裏面側から押圧力すると、このトナー像を記録材の表面に直接的に転写、或いは、中間転写ベルトを介して記録材の表面に間接的に転写して定着させる。
【0003】
ここで、トナー像を転写した記録材が感光体ドラムの感光面、或いは、中間転写ベルトの転写面に張り付いて分離されず、画像形成装置の停止に至ることがある(転写巻きつきJAM)。そして、この状態の記録材は、JAM処理困難な位置や、搬送路上のセンサが検知できない位置に留まる場合があり、仮にユーザが当該状態の記録材を排除しないで装置を復旧させても、記録材が装置内に残ったままになる。
【0004】
そのため、当該状態の記録材をユーザに知らせることが可能な構造がある(例えば、特許文献1,2参照)。文献1には、逆回転可能な搬送ローラが開示されており、この搬送ローラによって記録材をJAM処理可能な位置まで戻し得るからである。また、文献2では巻きつき検知専用のセンサが転写ローラの直ぐ近傍に設けられているからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−157134号公報
【特許文献2】特開2000−118794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術では、当該張り付いた状態の記録材の破損や、この記録材の表面に接している感光体ドラムの感光面、或いは、中間転写ベルトの転写面の損傷を招くという問題がある。
なぜならば、仮に文献1の逆回転可能な搬送ローラの技術を、同じく搬送機能を有した文献1,2のレジストローラに適用可能であったとしても、記録材がこれら転写ローラ及びレジストローラの双方に噛まれている場合には、レジストローラは、転写ローラが記録材を噛む負荷以上の力で記録材を引っ張らなければならないからである。
【0007】
また、仮に文献1の構成と文献2の構成とを組み合わせてみても、装置の製造コストの低廉化を図れないとの問題もある。転写ローラの直ぐ近傍に設けるためには小型のセンサが必要であり、巻きついた状態の記録材を検知する機能を備えたセンサは非常に高価になるためである。
このように、上記従来の技術では、転写巻きつきJAMを容易に解消するための課題が依然として残されている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、転写巻きつきJAMを容易に解消することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための第1の発明は、回転駆動によってトナー像が形成される像担持体と、転写位置にて記録材の裏面側を像担持体に向けて押圧してトナー像を記録材の表面に転写させる一方、像担持体から離間可能に構成される転写ローラと、転写ローラが記録材を保持する際にはこの記録材を保持できる位置に配置されており、その正回転によって待機位置の記録材を転写位置に向けて送出する一方、逆回転可能に構成される搬送ローラと、記録材の搬送方向で見て搬送ローラよりも上流側に配置され、待機位置における記録材の有無を検知する上流側センサと、記録材による像担持体への巻きつきを検知した場合に、転写ローラを像担持体から離間させ、記録材が待機位置に無い旨を上流側センサで検知したときには、搬送ローラを逆転させて記録材を待機位置まで戻す巻きつき調整手段とを具備する。
【0010】
第1の発明によれば、記録材は、上流側センサで検出された後、搬送ローラによって待機位置から転写位置に向けて送出される。
一方、トナー像は像担持体に形成されており、転写ローラが転写位置に到達した記録材の裏面側を像担持体に向けて押圧すると、この記録材の表面にはトナー像が転写される。続いて、この未定着のトナー像は記録材に定着される。
【0011】
ここで、本発明の転写ローラ及び搬送ローラは、同じ記録材を同時に保持できる位置にそれぞれ配置されており、また、前者の転写ローラは、像担持体から離間可能に構成され、その変形を防止できる。さらに、後者の搬送ローラは、正回転して記録材を転写位置に送出するのみならず、逆回転して記録材を上流側センサに向けて搬送可能である。
【0012】
そして、本発明では、巻きつき調整手段が、記録材による像担持体への巻きつきを検知した場合には、転写ローラを像担持体から離間させている。よって、記録材が転写ローラ及び搬送ローラの双方に保持される場合であっても、搬送ローラが転写ローラによる負荷以上の力で記録材を上流側センサに向けて引っ張らなくて済むため、記録材の破損や、この記録材の表面に接している像担持体の損傷を防止できる。
【0013】
しかも、例えば小サイズの記録材の如く、当該記録材が転写ローラ及び搬送ローラの双方に保持可能な長さであるが、上流側センサが検知できる程は長くないときには、巻きつき調整手段はこの記録材を待機位置まで戻している。したがって、当該サイズの記録材による像担持体への巻きつきが生じた場合にも、記録材が画像形成装置内に存在する旨をユーザに了知させることができるし、また、JAM処理可能な位置まで戻すことが可能になるので、当該記録材を速やかに排除できる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明の構成において、記録材の搬送方向で見て転写ローラよりも下流側に配置され、転写位置からトナー像の定着位置に向かう記録材の有無を検知する下流側センサをさらに具備することを特徴とする。
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、下流側センサは、従来のような巻きつき検知専用のセンサではなく、転写位置から定着位置に向かう記録材の有無を検知する既存のタイミングセンサで済むため、画像形成装置の製造コストの低廉化に寄与する。
【0015】
第3の発明は、第1や第2の発明の構成において、巻きつき調整手段は、搬送ローラを逆転させる場合には、記録材に転写されたトナー像が搬送ローラと転写ローラとの間の搬送路に触れない位置まで、記録材を待機位置まで戻していることを特徴とする。
第3の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、搬送ローラを逆転させて記録材を待機位置まで戻す場合にも、未定着のトナー像を搬送路に触れさせない。よって、この搬送路の汚れを防止でき、良好な画像品質を維持できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、像担持体への巻きつきを検知した場合には、転写ローラが像担持体から離間し、さらに、当該巻きつきがJAM処理困難な位置や搬送路上のセンサが検知できない位置で生じても、ユーザがJAM処理可能な位置まで戻すことが可能になる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例のプリンタの概略構成図である。
【図2】コントローラを含めた図1のプリンタの構成図である。
【図3】図1の転写位置周辺の拡大図である。
【図4】図3のレジストローラ及び2次転写ローラの動作説明図である。
【図5】図3のレジストローラ及び2次転写ローラの動作説明図である。
【図6】図3のレジストローラ及び2次転写ローラの動作説明図である。
【図7】図3のレジストローラ及び2次転写ローラの動作説明図である。
【図8】図3のレジストローラ及び2次転写ローラの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、画像形成装置の一例であるカラー印刷可能なプリンタ1の構造が概略的に示されている。図1に示された断面はプリンタ1の左側面からみたものである。このため、プリンタ1の前面は図1の右側に、背面は左側にそれぞれ位置する。
【0019】
図1に示されるように、プリンタ1の装置本体2の上方には排紙トレイ36が設けられ、この排紙トレイ36の近傍には、使用者の各種操作に供される複数の操作キーや、各種情報を表示する画面を配置したフロントカバー5が設けられている。
また、この装置本体2の下方には給紙カセット4が配置され、その収容部40には、枚葉の用紙が積層された状態で収納されている。
【0020】
この図1でみて収容部40の右上方には給紙ローラ46が設けられており、用紙は、給紙カセット4の右上方に向けて送出され、この送出された用紙は、装置本体2の内部でプリンタ1の前面に沿って上方に向けて搬送される。
また、給紙カセット4は、プリンタ1の前面側、つまり、図1において右方向に向けて引き出し可能に構成されており、この引き出した状態にて、収容部40に新たな用紙を補充したり、用紙を別の種類の用紙に入れ替え可能となる。
【0021】
装置本体2の内部には、給紙カセット4からの用紙搬送方向でみて下流側に搬送ローラ10、レジストローラ(搬送ローラ)14、画像形成部16及び2次転写部30が順番に配置されている。
画像形成部16には4個の画像形成ユニット17が並設され、各画像形成ユニット17には感光体ドラム18がそれぞれ設けられている。この感光体ドラム18は回転自在に設置され、ドラムモータによって図1の時計回りにそれぞれ駆動する。
【0022】
感光体ドラム18と給紙カセット4との間には露光部15が備えられており、この露光部15からは、レーザ光が各感光体ドラム18に向けてそれぞれ照射される。そして、図1に示されるように、各感光体ドラム18の周囲の適宜位置には、帯電器20、現像器24、1次転写ローラ13やクリーニング部50がそれぞれ設けられている。
【0023】
本実施例の帯電器20は、画像形成ユニット17の下部に位置し、感光体ドラム18に接する帯電ローラや、この帯電ローラの表面を研磨摺擦する摺擦ローラを有し、感光体ドラム18の表面を帯電させる。
また、現像器24は画像形成ユニット17の左方に配置され、感光体ドラム18に対峙する現像ローラを有する。この現像ローラは現像モータによって図1の反時計回りに駆動する。
【0024】
画像形成部16は中間転写ベルト(像担持体)12を有し、当該転写ベルト12は各感光体ドラム18の上方に配置され、ベルトモータによってプリンタ1の前面と背面との間を図1でみて反時計回りに走行する。
また、この中間転写ベルト12と排紙トレイ36との間には4個のトナーコンテナ23が配設されている。これら各トナーコンテナ23は、プリンタ1の背面側から前面側に向けて、マゼンタ用、シアン用、イエロー用、そして、ブラック用の順に配設され、このブラック用のトナーコンテナの容量が最も大きく構成される。
【0025】
各1次転写ローラ13に、感光体ドラム18の静電潜像に付着するトナーと逆極性の電圧を印加すると、各トナー像は中間転写ベルト12に移動する。
2次転写部30には2次転写ローラ(転写ローラ)31が備えられ、この2次転写ローラ31は中間転写ベルト12に対して斜め下方から圧接可能に構成されている。これら転写ベルト12と2次転写ローラ31とは、トナー像を用紙に転写するためのニップ部を形成する。2次転写ローラ31に、上記中間転写ベルト12に付着するトナーと逆極性の電圧を印加すると、トナー像は用紙に移動する。
【0026】
また、用紙搬送方向でみて2次転写部30の下流側には、定着部32、排出分岐部34及び排出ローラ35が順番に配置されている。
本実施例では、2次転写部30と手差しトレイ3との間に両面印刷搬送路38が形成されている。この両面印刷搬送路38は、排出分岐部34から装置本体2の前面側で分岐して下方に向けて延び、レジストローラ14の上流側に連結している。
【0027】
一方、上述の中間転写ベルト12はクリーニング部70で清掃される。
本実施例のクリーニング部70は、中間転写ベルト12と2次転写ローラ31との圧接位置とは反対側に設けられている。
より具体的には、このクリーニング部70は、中間転写ベルト12の走行方向でみてプリンタ1の背面側に配置されたマゼンタ用の画像形成ユニット17の上流側に設けられ、クリーニングローラや回収ローラ等を有する。
【0028】
当該クリーニングローラはブラシで形成されており、駆動モータによって回転し、中間転写ベルト12の転写面に接触する。これにより、このクリーニングローラは、中間転写ベルト12の転写面に付着した外添剤を含む残留トナーや用紙から出た紙粉などを除去し、この中間転写ベルト12の転写面を清掃する。
上記回収ローラはクリーニングローラに接触して外添剤を含む残留トナーや紙粉などを回収する。
【0029】
また、この回収ローラにはクリーニングブレードが接触しており、回収ローラから掻き取られた外添剤を含む残留トナーや紙粉などは、例えば回収スクリューを用いて回収容器に集められる。
ここで、上述したレジストローラ14は逆回転可能に構成されている。
具体的には、図2のコントローラ90からの指示信号によってレジストローラ14が正回転すると、図3に示された待機位置の用紙Pは搬送路25に沿って2次転写位置に向けて送出されるのに対し、コントローラ90からの指示信号によって逆回転した場合には搬送路25内の用紙Pを待機位置まで戻すことができる。
【0030】
この待機位置における用紙Pの有無は、用紙Pの搬送方向でみてレジストローラ14の上流側に配置されたレジストセンサ(上流側センサ)62で検出できる。レジストセンサ62の検知範囲に用紙Pが存在すると、このセンサ62の接触子が傾倒してオン作動する、或いは、このセンサ62の発光部から光が遮られてオン作動するからである。このレジストセンサ62の検知結果はコントローラ90に向けて出力される。
【0031】
さらに、上述した2次転写ローラ31は、中間転写ベルト12から離間可能に構成されている。
詳しくは、まず、中間転写ベルト12は、図3に示される如く、駆動ローラ52やテンションローラ53(図1では図示を省略している)等に掛け回されており、駆動ローラ52の駆動に伴って反時計回りに走行する。2次転写ローラ31は、バネの付勢力によって用紙Pの裏面側を中間転写ベルト12に向けて押圧し、中間転写ベルト12に1次転写されたトナー像を用紙Pの表面に2次転写させる。
【0032】
一方、駆動ローラ52と対をなす2次転写ローラ31の変形を防止するため、2次転写位置に用紙Pが存在していない場合には、2次転写ローラ31は当該バネの付勢力に抗して中間転写ベルト12から離間しているのである。
また、用紙Pの搬送方向でみて2次転写ローラ31の下流側には、タイミングセンサ(下流側センサ)64が配置されており、2次転写位置から定着部32に向かう用紙Pの有無を検知している。タイミングセンサ64の検知範囲に用紙Pが存在すると、このセンサ64の接触子が傾倒してオン作動する、或いは、このセンサ64の発光部から光が遮られてオン作動するからである。このタイミングセンサ64の検知結果もコントローラ90に向けて出力される。
【0033】
つまり、図3の待機位置の用紙Pは、レジストローラ14が正回転すると、搬送路25に沿って上方に進み、仮に小サイズの用紙Pの如く、その後端がレジストローラ14付近に到達すると、レジストセンサ62は当該用紙Pの無い旨を検知する。
続いて、用紙Pの後端がレジストローラ14に保持されるとともに、用紙Pが2次転写位置に到達すると、用紙Pの前端が上記バネの付勢力によって2次転写ローラ31と中間転写ベルト12に保持され、用紙Pの表面にはトナー像が2次転写される。
【0034】
次いで、図4に示されるように、この用紙Pが駆動ローラ52及び2次転写ローラ31の回転に伴って中間転写ベルト12の転写面から分離され、用紙Pがさらに上方に進むと、タイミングセンサ64が用紙Pの有る旨を検知し、この用紙Pは定着部32に向かう。
この図4のような正常運転に対し、図5に示される如く、トナー像が用紙Pに2次転写されても、用紙Pの表面が中間転写ベルト12の転写面に張り付いて分離されない場合(転写巻きつきJAM)には、図2の巻きつきJAM処理調整部(巻きつき調整手段)92がローラ駆動部(巻きつき調整手段)60に信号を出力する。
【0035】
より具体的には、一例として小サイズの用紙Pを用いた場合について説明すると、巻きつきJAM処理調整部92は、用紙Pによる中間転写ベルト12への巻きつきが発生したか否かを判別しており、図5のような巻きつきが発生した場合、つまり、レジストローラ14が用紙Pを送出し、レジストセンサ62が、小サイズの用紙Pが待機位置に無い旨を検知したにも拘わらず、タイミングセンサ64が、2次転写位置から定着部32に向かう用紙Pが無い旨を検知したときには、巻きつき検知と判定し、ローラ駆動部60に対し、まず、2次転写ローラ31を中間転写ベルト12から離間させる信号を出力する。
【0036】
ローラ駆動部60が2次転写ローラ31の例えば両端を把持して駆動ローラ52から遠ざけると、図6の矢印で示されるように、2次転写ローラ31は上記バネの付勢力に抗して中間転写ベルト12から離間する。これにより、用紙Pは、レジストローラ14には保持されるが、2次転写ローラ31による保持は解消される。
【0037】
ここで、この図6に示される如く、レジストセンサ62は、小サイズの用紙Pが待機位置に無い旨を検知しているため、巻きつきJAM処理調整部92は、ローラ駆動部60に対し、2次転写ローラ31を中間転写ベルト12から離間させたまま、レジストローラ14を逆回転させる信号を出力する(図7)。
これにより、図8に示されるように、用紙Pの後端はレジストセンサ62まで後退し、レジストセンサ62は用紙Pが待機位置に有る旨を検知する。
【0038】
ただし、このレジストローラ14の逆回転量は、図7の2次転写位置に到達した用紙Pの一部が搬送路25には到達しないように制限されている。用紙Pの表面に転写された未定着状態のトナー像が搬送路25に触れないようにするためである。
これらの結果、コントローラ90は中間転写ベルト12に巻きついた用紙Pがプリンタ1内に残されている旨をフロントカバー5の画面に表示、さらに、ランプの点灯やブザーの鳴動などによってユーザに知らせることができる。
【0039】
よって、ユーザは、例えばフロントカバー5を開放し、レジストローラ14のみに保持された用紙Pの後端を下方に引き出せば、用紙Pを取り除くことができる。
ところで、上記用紙Pが大きなサイズであり、レジストセンサ62が、この大サイズの用紙Pが待機位置に有る旨を依然として検知していた場合には、レジストローラ14の逆回転は不要である。コントローラ90は中間転写ベルト12に巻きついた用紙Pの存在を認識できるからである。
【0040】
すなわち、この場合の巻きつきJAM処理調整部92は、レジストローラ14が用紙Pを送出したにも拘わらず、タイミングセンサ64が、2次転写位置からトナー像の定着部32に向かう用紙Pが無い旨を検知したときには、巻きつき検知と判定し、ローラ駆動部60に対し、2次転写ローラ31を中間転写ベルト12から離間させる信号だけを出力する。
【0041】
再び図1に戻り、上記プリンタ1が印刷を行う際は、給紙ローラ46によって給紙カセット4から用紙が1枚ずつ分離して送出される。送出された用紙は搬送ローラ10からレジストローラ14に到達し、図3のレジストセンサ62で検出される。このレジストローラ14は、用紙の斜め送りを矯正しつつ、画像形成部16で形成されるトナー像との画像転写タイミングを計りながら、用紙を所定の給紙タイミングにて2次転写部30へと送出する。
【0042】
一方、図2の入力ポート91は、印刷の元になる画像データが外部から受信可能に構成されている。この画像データは、文字や符号、図形、記号、線図、模様等の各種の画像がデータ化されたものである。そして、このデータに基づき、コントローラ90ではレーザ光の照射などを制御する。
詳しくは、各感光体ドラム18の表面を除電した後、帯電器20が感光体ドラム18の表面をそれぞれ帯電する。
【0043】
次いで、露光部15が感光体ドラム18の表面にレーザ光をそれぞれ照射すると、各感光体ドラム18の表面には静電潜像が作られ、この静電潜像から各色のトナー像が形成される。
各トナー像は中間転写ベルト12に重ね合わされ(1次転写)、2次転写部30にて用紙に2次転写される。なお、感光体ドラム18の表面に残留したトナー等はクリーニング部50で除去され、また、中間転写ベルト12の転写面に残留したトナー等はクリーニング部70で除去される。
【0044】
続いて、用紙はタイミングセンサ64で検出された後、未定着トナー像を担持した状態で定着部32に向けて送られ、この定着部32にて加熱及び加圧され、トナー像が定着される。その後、定着部32から送出された用紙は排出ローラ35を介して排紙トレイ36に排出され、高さ方向に積層される。
この片面印刷に対し、両面印刷を行う場合には、定着部32から排出された用紙は、排出分岐部34でその搬送方向が切り替えられる。
【0045】
つまり、片面に印刷された用紙は後端が排出分岐部34に到達すると後端側から装置本体2内に引き戻され、両面印刷搬送路38に搬送される。続いて、この用紙はレジストローラ14の上流側に向けて送出され、2次転写部30に向けて再び送られる。これにより、用紙の未だ印刷がされていない面にトナー像が転写される。
【0046】
以上のように、本実施例によれば、2次転写ローラ31及びレジストローラ14は、同じ用紙を同時に保持できる位置にそれぞれ配置されており、また、2次転写ローラ31は、中間転写ベルト12から離間可能に構成され、その変形を防止できる。さらに、レジストローラ14は、正回転して用紙を2次転写位置に送出するのみならず、逆回転して用紙をレジストセンサ62に向けて搬送可能である。
【0047】
そして、本実施例では、巻きつきJAM処理調整部92が用紙による中間転写ベルト12への巻きつきを検知した場合には、ローラ駆動部60が2次転写ローラ31を中間転写ベルト12から離間させている。よって、用紙が2次転写ローラ31及びレジストローラ14の双方に保持される場合であっても、レジストローラ14が2次転写ローラ31による負荷以上の力で用紙をレジストセンサ62に向けて引っ張らなくて済むため、用紙の破損や、この用紙の表面に接している中間転写ベルト12の転写面の損傷を防止できる。
【0048】
しかも、レジストセンサ62が巻きついた用紙を検知できていた場合には戻す必要はないが、例えば小サイズの用紙の如く、当該用紙が2次転写ローラ31及びレジストローラ14の双方に保持可能な長さであるものの、レジストセンサ62が検知できる程は長くないときには、ローラ駆動部60はこの用紙の後端を待機位置まで戻している。
【0049】
したがって、当該サイズの用紙による中間転写ベルト12への巻きつきが生じた場合にも、レジストセンサ62及びタイミングセンサ64の双方が用紙の無い旨を検知してしまうことは回避される。よって、用紙がプリンタ1内に存在する旨をユーザに了知させることができるし、また、JAM処理可能な位置まで戻すことが可能になるので、当該用紙を速やかに排除できる。
【0050】
また、タイミングセンサ64は、従来のような巻きつき検知専用のセンサではなく、2次転写位置から定着位置に向かう用紙の有無を検知する既存のタイミングセンサで済むため、プリンタ1の製造コストの低廉化に寄与する。
さらに、レジストローラ14を逆回転させて用紙の後端を待機位置まで戻す場合にも、未定着のトナー像を搬送路25に触れさせない。よって、この搬送路25の汚れを防止でき、良好な画像品質を維持できる。
【0051】
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
例えば、上記実施例では、中間転写ベルト12を用いて説明しているが、用紙の巻きつきはモノクロ印刷用の感光体ドラムと転写ローラとでニップ部を形成する場合にも発生する。すなわち、本発明の像担持体には、中間転写ベルト12の他、感光体ドラムも当然に含まれる。
【0052】
また、この実施例では画像形成装置としてプリンタに具現化した例を示しているが、本発明の画像形成装置は、複合機、複写機やファクシミリ等にも当然に適用可能である。
そして、これらいずれの場合にも上記と同様に、転写巻きつきJAMを容易に解消できるとの効果を奏する。
【符号の説明】
【0053】
1 プリンタ(画像形成装置)
12 中間転写ベルト(像担持体)
14 レジストローラ(搬送ローラ)
25 搬送路
31 2次転写ローラ(転写ローラ)
60 ローラ駆動部(巻きつき調整手段)
62 レジストセンサ(上流側センサ)
64 タイミングセンサ(下流側センサ)
90 コントローラ
92 巻きつきJAM処理調整部(巻きつき調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動によってトナー像が形成される像担持体と、
転写位置にて記録材の裏面側を前記像担持体に向けて押圧して前記トナー像を前記記録材の表面に転写させる一方、前記像担持体から離間可能に構成される転写ローラと、
前記転写ローラが前記記録材を保持する際にはこの記録材を保持できる位置に配置されており、その正回転によって待機位置の前記記録材を前記転写位置に向けて送出する一方、逆回転可能に構成される搬送ローラと、
前記記録材の搬送方向で見て前記搬送ローラよりも上流側に配置され、前記待機位置における前記記録材の有無を検知する上流側センサと、
前記記録材による前記像担持体への巻きつきを検知した場合に、前記転写ローラを前記像担持体から離間させ、前記記録材が待機位置に無い旨を前記上流側センサで検知したときには、前記搬送ローラを逆転させて前記記録材を前記待機位置まで戻す巻きつき調整手段と
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記記録材の搬送方向で見て前記転写ローラよりも下流側に配置され、前記転写位置から前記トナー像の定着位置に向かう前記記録材の有無を検知する下流側センサをさらに具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置であって、
前記巻きつき調整手段は、前記搬送ローラを逆転させる場合には、前記記録材に転写された前記トナー像が前記搬送ローラと前記転写ローラとの間の搬送路に触れない位置まで、前記記録材を前記待機位置まで戻していることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−53104(P2012−53104A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193327(P2010−193327)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】