説明

画像形成装置

【課題】記録ヘッドを搭載して移動するキャリッジの移動経路上におけるインクによる汚れを、簡易かつ確実に除去する。
【解決手段】画像形成装置1は、インクにより記録媒体に画像を形成する記録ヘッド3と、記録ヘッド3を搭載して移動するキャリッジ4とを備え、キャリッジ4とともに移動する記録ヘッド3により記録媒体に画像を形成する。画像形成装置1は、汚れ検知手段により、キャリッジ4の移動経路上の部材に付着したインクによる汚れを検知し、紫外線照射手段により、汚れ検知手段が検知した汚れに、インクを分解する紫外線を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドをキャリッジにより移動させて、インクにより記録媒体に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインクの液滴を用紙等の記録媒体に吐出して、記録媒体に画像を形成する。その際、画像形成装置は、主走査方向と副走査方向に配置したエンコーダスケールを、それぞれエンコーダ検知センサにより検知して、記録ヘッドと記録媒体の各方向の移動速度と位置を制御する。ところが、記録ヘッドから液滴を吐出するときに、液滴よりもはるかに微細なインクミスト(噴霧)が同時に発生し、インクミストが装置内の各部や、エンコーダスケールに付着することがある。インクミストがエンコーダスケールに付着すると、そのエンコーダ検知センサによる検知にミスが生じて、画像形成装置が誤動作する虞がある。
【0003】
この問題に対処するため、従来、筒状のエンコーダ部材でエンコーダスケールを囲むようにして、インクミストがエンコーダスケールに付着するのを抑制した画像形成装置が知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、この従来の画像形成装置では、不規則に浮遊するインクミストを完全に遮断するのは難しく、エンコーダスケールへのインクミストの付着を完全に防ぐのは困難である。また、エンコーダスケールにインクによる汚れが付着したときには、分解等してクリーニングしなければならず、汚れの除去に多大な手間や時間を要する。
【0004】
これに対し、インク滴検出用の電磁波を集光する集光面に紫外線を含む光をあてて、集光面に付着したインクミストを分解するインクジェット記録装置も知られている(特許文献2参照)。
ところが、この従来のインクジェット記録装置は、インクミストがエンコーダスケールに付着するのを防止できず、かつ、エンコーダスケールに汚れが付着したときに、汚れを除去できない、という問題がある。
【0005】
更に、従来、エンコーダスケールに光機能触媒をコーティングし、紫外線を含む光をエンコーダスケールに照射して、エンコーダスケールに付着した汚れを除去する記録装置も知られている(特許文献3参照)。
しかしながら、この従来の記録装置では、汚れの有無や位置に関わらず、エンコーダスケールに光を照射するため、汚れを確実には除去できない、という問題がある。また、常に紫外線を発生させるため、周囲に対する安全性の観点から、改良の余地がある。
【0006】
以上の他に、装置を分解して、エンコーダスケールの汚れを物理的な接触により除去することも考えられる。ただし、このようにすると、エンコーダスケールを傷つける虞があるとともに、汚れを除去するために、手間や時間を要して、汚れを除去するための効率が低くなる。
【0007】
また、インクミストは、エンコーダスケールだけでなく、記録媒体を搬送する搬送ベルトにも付着することがある。搬送ベルトに汚れが付着すると、記録媒体や、その幅を検知するセンサが汚れを検知して、記録媒体や幅を誤検知する虞がある。このように、インクによる汚れは、エンコーダスケールに加えて、搬送ベルト等の装置内の他の部材に付着することがある。その際、記録ヘッドは、キャリッジに搭載されて移動するため、インクによる汚れは、キャリッジの移動経路上において付着し易い傾向があり、キャリッジの移動経路上の汚れを効率よく除去することが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、これら従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、記録ヘッドを搭載して移動するキャリッジの移動経路上におけるインクによる汚れを、汚れの付着した部材を傷つけることなく簡易かつ確実に除去し、汚れの除去効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、インクにより記録媒体に画像を形成する記録ヘッドと、記録ヘッドを搭載して移動するキャリッジとを備え、キャリッジとともに移動する記録ヘッドにより記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、キャリッジの移動経路上のインクによる汚れを検知する汚れ検知手段と、汚れ検知手段が検知した汚れに、インクを分解する紫外線を照射する紫外線照射手段と、を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記録ヘッドを搭載して移動するキャリッジの移動経路上におけるインクによる汚れを、汚れの付着した部材を傷つけることなく簡易かつ確実に除去でき、汚れの除去効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の画像形成装置の要部を示す平面図である。
【図2】キャリッジの一部を拡大して示す図1の下方から見た底面図である。
【図3】本実施形態の画像形成装置の機能ブロック図である。
【図4】有機物の結合エネルギーに対応する光波長の例を示す図である。
【図5】キャリッジに設けたエンコーダ読み取り部を示す斜視図である。
【図6】エンコーダスケール上の汚れを検知する手法を説明するための図である。
【図7】画像形成装置による汚れの除去手順を示すフローチャートである。
【図8】キャリッジを図1の下方から見た底面図である。
【図9】搬送ベルト上の汚れを検知する手法を説明するための図である。
【図10】画像形成装置による汚れの除去手順を示すフローチャートである。
【図11】紫外線の遮断部材を設けたキャリッジを示す断面図である。
【図12】輪状のエンコーダ部材を備えた画像形成装置を示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の画像形成装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の画像形成装置は、用紙等の記録媒体にインクにより画像を形成する、例えば、インクジェット方式の画像形成装置である。
【0013】
図1は、本実施形態の画像形成装置の要部を示す平面図である。
画像形成装置1は、図示のように、記録媒体(図示せず)の搬送手段である搬送ベルト2と、インクにより記録媒体に画像を形成する記録ヘッド3と、記録ヘッド3が搭載され、主走査方向Sに移動するキャリッジ4とを備えている。また、画像形成装置1は、キャリッジ4の移動を案内するガイドロッド5と、キャリッジ4の移動経路に沿って配置されたエンコーダ部材6とを備えている。
【0014】
搬送ベルト2は、無端状部材からなり、記録ヘッド3により画像を形成する記録媒体を、キャリッジ4の移動方向と交差する方向(副走査方向F)に搬送する。また、搬送ベルト2は、駆動ローラ7と従動ローラ8に架け渡されて、副走査方向Fに沿って配置され、帯電手段である帯電ローラ(図示せず)が外表面に接触して設けられている。搬送ベルト2は、帯電ローラにより帯電して、記録媒体を静電気力で静電吸着して保持し、記録媒体の搬送性と記録媒体に形成する画像の品質(記録品質)を高めている。
【0015】
画像形成装置1は、伝動ベルト9を介して、副走査モータ10により駆動ローラ7を回転させて、搬送ベルト2を副走査方向Fに循環駆動させ、副走査モータ10を停止させて、搬送ベルト2を任意の位置で停止させる。これに伴い、搬送ベルト2は、表面に保持した記録媒体を副走査方向Fに所定速度で搬送して所定位置で停止させる。また、画像形成装置1は、記録媒体の先端を検知する先端検知センサ11を備え、先端検知センサ11により、搬送ベルト2が搬送する記録媒体の先端を検知して、記録媒体の副走査方向Fの位置を正確に判別し、記録媒体の副走査方向Fの位置精度を高めている。
【0016】
ガイドロッド5は、主走査方向Sに平行に、かつ、搬送ベルト2の表面に沿って配置され、キャリッジ4に形成された案内孔内に挿入されて、キャリッジ4を長手方向に摺動させる。キャリッジ4は、タイミングプーリ12、13に架け渡された無端状のタイミングベルト14に連結されている。画像形成装置1は、主走査モータ15により駆動タイミングプーリ12を回転させて、タイミングベルト14を循環駆動させ、キャリッジ4を、主走査方向Sの両方向に所定速度で移動させる。これにより、キャリッジ4は、記録ヘッド3を搭載して所定方向(ここでは、主走査方向S)に移動し、記録ヘッド3を、搬送ベルト2の表面に沿って主走査方向Sに往復移動させて搬送ベルト2を横断させる。
【0017】
このキャリッジ4の側部には、搬送ベルト2が搬送する記録媒体を検知する記録媒体検知センサ17が設けられている。画像形成装置1は、キャリッジ4の移動中に、記録媒体検知センサ17により、記録媒体、記録媒体の副走査方向Fに沿った両端部、及び、両端部間の距離(記録媒体の主走査方向Sの幅)を検知する。これにより、記録ヘッド3により画像を形成するときに、記録媒体の幅や、記録媒体の主走査方向Sの位置等を精度よく判別する。
【0018】
記録ヘッド3は、主走査方向Sに移動して記録媒体に画像を印刷する印刷手段であり、インク滴を吐出するインク吐出ノズル16が複数配列して設けられている。ここでは、キャリッジ4には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する4種の記録ヘッド3(記録ヘッドY、C、M、K)が搭載され、各記録ヘッド3がインク吐出ノズル16から各色のインク滴を吐出する。画像形成装置1は、キャリッジ4を主走査方向Sに移動させながら、形成する画像に応じて、必要な位置で記録ヘッド3から記録媒体にインク滴を吐出して、記録媒体に画像を形成する。
【0019】
図2は、キャリッジ4の一部と、その周囲の構成を拡大して示す、図1の下方から見た底面図である。
エンコーダ部材6は、図示のように、長尺な矩形板状をなし、キャリッジ4の移動範囲内で主走査方向Sに平行に配置されて、画像形成装置1の筐体(図示せず)に固定されている。また、エンコーダ部材6には、主走査方向Sに沿って等間隔に形成されたスケール状のパターン(目盛)からなり、移動するキャリッジ4の位置検出用のエンコーダスケール6Aが設けられている。画像形成装置1は、キャリッジ4の移動時に、キャリッジ4に搭載したエンコーダ読み取り部18をエンコーダ部材6に沿って移動させ、エンコーダ読み取り部18に設けたエンコーダ検知センサ(図示せず)によりエンコーダスケール6Aを検知して読み取る。このように、画像形成装置1は、キャリッジ4を移動させながら、エンコーダ検知センサでエンコーダスケール6Aを読み取り、その目盛をカウントして順次加算又は減算することで、キャリッジ4の主走査方向Sの位置を検出し、キャリッジ4の位置情報を取得する。
【0020】
画像形成装置1(図1参照)は、記録媒体を供給する供給手段(図示せず)により、記録媒体を搬送ベルト2に向かって所定のタイミングで供給して、記録媒体を搬送ベルト2上の設定位置に配置する。続いて、副走査モータ10を駆動して、搬送ベルト2により、記録媒体を副走査方向Fに搬送して記録ヘッド3による画像形成位置で停止させる。この記録媒体に向けて、キャリッジ4を主走査方向Sに移動させつつ、記録ヘッド3のインク吐出ノズル16からインク滴を吐出させて、インク吐出ノズル16の配列長さと同じ幅のバンドに対して画像を形成する。1バンド分の画像形成が終了してから、搬送ベルト2により、記録媒体を副走査方向Fに移動させて、再度1バンド分の画像形成動作を実行させる。
【0021】
画像形成装置1は、これら記録媒体の移動と画像形成を繰り返して、記録媒体の任意の部分に画像を形成する。このように、画像形成装置1は、キャリッジ4とともに主走査方向Sに移動する記録ヘッド3により、搬送ベルト2が副走査方向Fに搬送する記録媒体に画像を形成する。その後、画像形成装置1は、排出手段(図示せず)により、画像を形成した記録媒体を、搬送ベルト2から外して排出する。
【0022】
次に、画像形成装置1を制御するための構成について説明する。
図3は、画像形成装置1の機能ブロック図である。
画像形成装置1は、図示のように、各構成を互いに接続するバス20と、装置全体を制御する制御手段であるCPU(中央演算処理装置)21と、プログラム等を格納するROM(Read Only Memory)22と、CPU21が直接アクセスするデータを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)23とを備えている。また、画像形成装置1は、ホストPC(パーソナルコンピュータ)24と接続するためのインターフェースであるホストI/F25を備えている。
【0023】
ROM22は、画像形成装置1のハードウェア制御を行うファームウェアと、記録ヘッド3の駆動波形データを格納する。CPU21は、ホストPC24から印刷ジョブ(画像データ)を受信したときに、画像データをRAM23に格納し、装置各部を制御して記録媒体への画像形成動作を実行させる。また、CPU21は、後述するように、エンコーダスケール6Aの汚れを検知する処理や、汚れを分解して除去する処理を実行するようになっており、画像形成装置1の各種の機能実現手段を構成する。
【0024】
本実施形態の画像形成装置1は、記録ヘッド3を制御する記録ヘッド制御部26と、キャリッジ4の主走査方向Sの移動を制御する主走査制御部27と、搬送ベルト2及び記録媒体の副走査方向Fの移動を制御する副走査制御部28とを備えている。記録ヘッド制御部26は、記録ヘッド3(記録ヘッドY、C、M、K)をそれぞれ駆動する記録ヘッド駆動部30〜33を制御して、上記したインク滴の吐出による画像形成を実行させる。
【0025】
主走査制御部27は、キャリッジ4に設けられたエンコーダ読み取り部18等から構成される主走査エンコーダ34が接続され、主走査エンコーダ34から出力されたエンコーダスケール6Aの検知(読み取り)信号や、キャリッジ4の位置情報を受信する。主走査制御部27は、キャリッジ4及び記録ヘッド3の主走査方向Sの移動速度と位置を制御するとともに、受信した情報に基づいて、主走査モータ15を制御して駆動させてキャリッジ4を移動させる。副走査制御部28は、副走査方向Fに配置した副走査エンコーダスケールを検知する副走査エンコーダ検知センサ等からなる副走査エンコーダ35が接続され、副走査エンコーダ35からの受信情報に基づいて、副走査モータ10を制御して駆動させる。これにより、副走査制御部28は、搬送ベルト2により記録媒体を搬送させるとともに、記録媒体の副走査方向Fの移動速度と位置を制御する。
【0026】
画像形成時には、画像形成装置1は、主走査制御部27により、記録ヘッド3が搭載されたキャリッジ4を記録媒体上の所定位置に移動させる。記録ヘッド制御部26は、主走査制御部27を介して主走査エンコーダ34から得られるキャリッジ4の位置情報に連動して、RAM23に格納された画像データ、及び、ROM22に格納された記録ヘッド3の駆動波形データを取得し、それら各データと制御信号を記録ヘッド駆動部30〜33へ出力する。記録ヘッド駆動部30〜33は、記録ヘッド制御部26から受信したデータに基づいて各記録ヘッド3を駆動し、インク滴を吐出させて画像を形成させる。
【0027】
このインク滴の吐出に伴い、インクミストが発生してキャリッジ4の移動経路上の部材に付き、それらにインクからなる汚れが付着することがある。画像形成装置1は、移動経路上の部材にインクによる汚れが付着して固着等したときに、各汚れを検知して紫外線により分解して除去する。まず、エンコーダ部材6(図2参照)にインクミストが付いて、エンコーダスケール6Aに汚れが付着したときに、エンコーダスケール6Aの汚れを紫外線により分解する例を説明する。
【0028】
図4は、有機物を構成する結合種の結合エネルギーに対応する光波長の例を示す図であり、有機物の結合種と、その結合種の結合エネルギーに対応する波長(nm)とを横に並べて示している。
有機物の結合種の結合エネルギーは、(E=hc/λ)(E:エネルギー、h:プランク定数、c:光速度、λ:波長)の関係式より光波長に換算すると、図示のように、紫外線領域の光波長に対応する。そのため、これらの光波長の紫外線を有機物に照射すると、光子により、それぞれの結合種の結合を担う共有電子が励起されて、結合の切断反応や分解反応が起こる。
【0029】
インクジェット式の画像形成装置1に使用されるインクは、主に有機物であるため、この画像形成装置1では、インクによる汚れに紫外線を照射して、結合種の結合を切断してインクを分解する。その際、特に、インク成分の分子の結合を切断する波長の光を照射することで、インクを効果的に分解できるため、各インクに応じて、紫外線の波長を選択する。また、ここでは、画像形成装置1で使用するインクの分解を活性化させるエネルギーを判別し、判別したエネルギーに対応する光周波数にピークをもつ紫外線を発生させて汚れに照射する。画像形成装置1は、このような紫外線を発生させてインクによる汚れを分解する汚れ分解手段を、キャリッジ4(ここでは、エンコーダ読み取り部18)に備えている。
【0030】
図5は、キャリッジ4に設けたエンコーダ読み取り部18を示す斜視図であり、エンコーダ部材6の一部も点線で示している。
エンコーダ読み取り部18は、図示のように、キャリッジ4に固定された枠体18Aを有する。枠体18Aは、側面視コ字状をなし、エンコーダ部材6が内部に配置された状態で、エンコーダ部材6のエンコーダスケール6Aが形成された面(図5では紙面奥側の面)に沿って主走査方向Sに移動する。画像形成装置1は、枠体18Aに、エンコーダ部材6(エンコーダスケール6A)に紫外線を照射する紫外線照射手段(エンコーダスケール用紫外線照射手段)36と、エンコーダスケール6Aを検知する上記したエンコーダ検知センサ37とを備えている。
【0031】
紫外線照射手段36とエンコーダ検知センサ37は、枠体18Aのエンコーダスケール6Aに対向する面に並べて取り付けられて、それぞれエンコーダスケール6Aに向けて配置されている。紫外線照射手段36は、紫外線ランプや紫外線発光ダイオード等の紫外線照射装置からなり、エンコーダスケール6Aに向かって、インクを分解するための紫外線を照射する。画像形成装置1は、エンコーダ検知センサ37を使用して、エンコーダスケール6Aの汚れを検知し、汚れを検知したときに、各汚れに対して紫外線を照射して、エンコーダスケール6Aに付着したインクによる汚れを分解して除去する。
【0032】
エンコーダ検知センサ37は、光学式検知センサであり、ここでは、エンコーダスケール6Aに検知用の光を照射する発光部(発光素子)と、照射した光の反射光を受光する受光部(受光素子)とを有する反射型フォトセンサからなる。エンコーダ検知センサ37は、エンコーダスケール6Aからの反射光を受光してエンコーダスケール6Aの目盛を検知し、エンコーダスケール6Aを読み取る。また、エンコーダ検知センサ37は、エンコーダスケール6Aに汚れが付着したときには、エンコーダスケール6Aの目盛とともに汚れも検知する。
【0033】
図6は、エンコーダスケール6A上の汚れYを検知する手法を説明するための図であり、図6Aは、エンコーダスケール6Aの平面図である。また、図6Bは、図6Aのエンコーダスケール6Aをエンコーダ検知センサ37で検知したときのエンコーダ検知センサ37の出力(センサ出力という)を示す図であり、センサ出力を、図6Aのエンコーダスケール6Aと主走査方向Sの位置を対応させて示している。
【0034】
エンコーダ検知センサ37は、図示のように、エンコーダスケール6Aに汚れYが付着すると、エンコーダスケール6Aと汚れYを検知して、それらが合わさった検知信号を出力する。その結果、センサ出力は、汚れYのない部分では、エンコーダスケール6Aに対応した正常な周期になるが、汚れYのある部分では、周期が正常な周期よりも短くなる等して異常な周期になる。
【0035】
画像形成装置1は、このエンコーダ検知センサ37のセンサ出力(検知結果)に基づいて、エンコーダスケール6Aの汚れYを検知する。具体的には、画像形成装置1は、上記した主走査制御部27(図3参照)により、センサ出力から、エンコーダスケール6Aを読み取り、その周期からキャリッジ4の位置情報を取得してキャリッジ4の位置を検出する。その際、CPU21が、制御回路内の一定のクロックを使用して、センサ出力の周期毎の時間を算出する。また、CPU21は、周期の算出時間と、予め設定された周期の上下限時間からなる基準時間を比較し、周期の算出時間が上限時間以下、かつ、下限時間以上のときには汚れYがないと判定し、周期の算出時間が上限時間を超えたとき、又は、下限時間未満のときに、汚れYがあると判定する。或いは、CPU21は、センサ出力の周期が急激に変化して、周期の算出時間の前の算出時間に対する変化量が、予め設定された許容量以上になったときに、汚れYがあると判定する。従って、CPU21は、汚れYの有無を判定して、エンコーダスケール6Aの汚れYを検知する汚れ検知手段を構成し、検知した汚れYの位置をRAM23に記憶させる。
【0036】
このように、画像形成装置1は、キャリッジ4の移動経路上に位置するインクによる汚れYを検知する汚れ検知手段を備えている。汚れ検知手段は、キャリッジ4に設けられた検知センサ(エンコーダ検知センサ37)により、キャリッジ4の移動経路上に設けられた部材(被検知物)に付着した汚れYを検知する。ここでは、汚れ検知手段は、キャリッジ4とともに移動するエンコーダ検知センサ37により、被検知物であるエンコーダスケール6Aに付着した汚れYを検知する。画像形成装置1は、CPU21により制御して、紫外線照射手段36(図5参照)により、汚れ検知手段が検知した汚れYにインクを分解する紫外線を照射して、エンコーダスケール6Aから汚れYを除去する。
【0037】
また、本実施形態の汚れ検知手段は、キャリッジ4に設けられた、汚れYを検知する検知センサ(エンコーダ検知センサ37)を有するが、インクミストの発生時には、エンコーダ検知センサ37にもインクミストが付着して、エンコーダ検知センサ37が汚れることがある。これに対し、この画像形成装置1では、紫外線照射手段36をエンコーダ検知センサ37に隣接させて配置し、紫外線を照射して汚れYを分解するときに、紫外線照射手段36が発生させた紫外線が、エンコーダ検知センサ37にも照射されるようにしている。これにより、紫外線照射手段36は、汚れYの検知センサでもあるエンコーダ検知センサ37(発光部、受光部)に紫外線を照射して、エンコーダ検知センサ37に付着したインクによる汚れYを分解して、エンコーダ検知センサ37の汚れYを除去する。
【0038】
次に、汚れYを除去するときの画像形成装置1の処理や動作、及び、画像形成装置1の制御方法について説明する。
図7は、画像形成装置1による汚れYの除去手順を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、画像形成装置1に汚れ除去モードを設けて、ユーザが汚れ除去モードを選択したときに実行する。或いは、画像形成の都度、又は、画像形成の所定のタイミングで、画像形成中に実行される。
【0039】
画像形成装置1は、図示のように、キャリッジ4を主走査方向Sに移動させて、エンコーダ検知センサ37によりエンコーダスケール6Aを検出走査させつつ(S101)、汚れ検知手段により汚れYを検知する。その際、キャリッジ4が終点に達するまで(S102、NO)、上記のように、センサ出力の周期が異常か否かを順次判別し(S103、NO)、周期異常が現れて汚れYが検知されたときに(S103、YES)、汚れYの位置をメモリ(RAM23)に記憶する(S104)。キャリッジ4が終点まで達して(S102、YES)、エンコーダスケール6Aを終点まで走査した後に、周期異常があったか否かを判断し(S105)、周期異常がないときは(S105、NO)、処理を終了する。
【0040】
センサ出力に周期異常があったときには(S105、YES)、メモリに記憶された位置にキャリッジ4を移動させ、その位置でキャリッジ4を停止させて、紫外線照射手段36により紫外線を照射して(S106)、汚れYを分解する。画像形成装置1は、キャリッジ4を各汚れYの位置に順に移動させて、紫外線照射手段36により、任意に設定される所定時間、所定強度の紫外線を各位置の汚れYに照射した後、再びキャリッジ4を移動させて走査する(S101)。これにより、汚れYが除去されていることが確認できたときには(S105、NO)、処理を終了する。
【0041】
一方、汚れYを除去できていなければ(S105、YES)、再び、汚れYに紫外線を照射して(S106)、汚れYが除去されるまで紫外線の照射を繰り返す。画像形成装置1は、汚れYの除去度合いによって、紫外線を再度照射するか否かを判断するとともに、紫外線照射の繰り返し回数により、設定された基準に基づいて、自動で紫外線の照射時間と強度を判断して、紫外線の照射時間と強度を変更させる。また、画像形成装置1は、汚れYの程度に応じて、又は、画像形成装置1の使用頻度に応じて、照射する紫外線の強度も調整する。
【0042】
以上説明したように、この画像形成装置1は、キャリッジ4の移動経路上に位置するエンコーダスケール6Aの汚れYを検知して、検知した汚れYに紫外線を照射する。そのため、エンコーダスケール6Aに付着した汚れYの位置を正確に把握して、汚れYに紫外線を精度よく照射することができ、インクによる汚れYを確実に分解して除去することができる。また、画像形成装置1を分解等せずに、かつ、エンコーダスケール6Aに接触せずに汚れYを除去できるため、汚れYの除去に必要な手間や時間を削減して、汚れYを簡易に除去できる。同時に、エンコーダスケール6Aを傷つけることなく、キャリッジ4の移動経路上の汚れYを効率よく除去できる。更に、汚れYの位置だけで紫外線を発生させるため、周囲に対する安全性も向上できる。
【0043】
従って、本実施形態によれば、記録ヘッド3を搭載して移動するキャリッジ4の移動経路上におけるインクによる汚れYを、汚れYの付着した部材を傷つけることなく簡易かつ確実に除去でき、汚れYを除去する効率を向上させることができる。また、エンコーダスケール6Aの汚れYを除去するため、エンコーダ検知センサ37によるエンコーダスケール6Aの検知や読み取りのミスを防止して、画像形成時の誤動作の発生を抑制できる。紫外線照射手段36により、エンコーダ検知センサ37に紫外線を照射することで、エンコーダ検知センサ37に付着した汚れYも分解して除去できる。これにより、エンコーダ検知センサ37による検知精度が低下するのを抑制して、高い検知精度を長期間に亘り確保できる。また、エンコーダスケール6Aに紙粉による汚れが付着したときにも、その大きさや形態によっては、紫外線により分解することができる。
【0044】
ここで、エンコーダスケール6Aとエンコーダ検知センサ37(発光部、受光部)は、それぞれの紫外線が照射される表面に、光機能触媒を塗布やコーティングする等して、光機能触媒を配するようにしてもよい。例えば、光機能触媒として酸化チタンを用いると、紫外線が照射されたときに、酸化チタンの内部で正孔と電子の分離(励起状態)が生じる。この正孔と電子は、それぞれ酸化力と還元力を持ち、酸化チタンの表面に接触する物質と化学反応(酸化還元反応)を起こす。一般に、正孔と電子が大気中の水や酸素と反応を起こすと、さらに強力な分解力を持つヒドロキシイオンやオゾンが、酸化チタンの表面に生成する。この酸化還元反応、及び、ヒドロキシイオンとオゾンにより、エンコーダスケール6Aとエンコーダ検知センサ37に付着した汚れYを、より効率的に分解して除去することができる。その際、紫外線照射手段36から、光機能触媒を活性化させるエネルギーに対応する光周波数にピークをもつ紫外線を発生させて、汚れYに照射することで、より一層効率的かつ確実に汚れYを分解できる。
【0045】
以上、エンコーダスケール6Aの汚れYを除去する例を説明したが、キャリッジ4の移動経路上に設けられた搬送ベルト2(図1参照)や、その他の部材も、同様にして、付着したインクによる汚れYを除去できる。次に、搬送ベルト2に付着した汚れYを除去する画像形成装置1について説明する。
【0046】
図8は、キャリッジ4を図1の下方から見た底面図である。
画像形成装置1は、図示のように、上記した記録媒体検知センサ17と、記録媒体検知センサ17が取り付けられた記録媒体検知部38と、搬送ベルト2に紫外線を照射する紫外線照射手段(搬送ベルト用紫外線照射手段)39とを備えている。この紫外線照射手段39は、上記したエンコーダスケール用紫外線照射手段36と同様に構成されている。また、記録媒体検知センサ17は、エンコーダ検知センサ37と同様に構成されている。
【0047】
記録媒体検知部38は、箱状をなし、キャリッジ4の側面に固定されている。記録媒体検知センサ17と紫外線照射手段39は、記録媒体検知部38の搬送ベルト2に対向する面に並べて取り付けられて、それぞれ搬送ベルト2に向けて配置されている。画像形成装置1は、記録媒体検知センサ17を使用して、搬送ベルト2の汚れYを検知し、汚れYを検知したときに、各汚れYに対して紫外線を照射して、搬送ベルト2に付着したインクによる汚れYを分解して除去する。記録媒体検知センサ17は、搬送ベルト2が停止した状態で、キャリッジ4とともに移動して、搬送ベルト2に配置された記録媒体を検知しつつ、搬送ベルト2に付着した汚れYを検知する。
【0048】
図9は、搬送ベルト2上の汚れYを検知する手法を説明するための図であり、図9Aは、キャリッジ4の移動中におけるエンコーダ検知センサ37のセンサ出力を示す図である。また、図9Bは、搬送ベルト2と記録媒体を検知する記録媒体検知センサ17のセンサ出力を示す図であり、センサ出力を、図9Aのエンコーダ検知センサ37のセンサ出力と位置を対応させて示している。
【0049】
記録媒体検知センサ17は、図9Bに示すように、記録媒体の有無によりセンサ出力が変化して、記録媒体を検知したときにセンサ出力が大きくなる。画像形成装置1は、このセンサ出力に基づいて、センサ出力が大きい(アクティブ)な期間は記録媒体を検知した期間であるとして、記録媒体や記録媒体の幅を検知する。ただし、搬送ベルト2に汚れYが付着すると、記録媒体検知センサ17が汚れYを検知して、汚れYの部分でも、センサ出力が変化して大きくなる。その結果、記録媒体の端部付近に汚れYがあると、センサ出力がアクティブな部分が汚れYがないときよりも長くなり、記録媒体の幅も、正常幅よりも長い異常幅が検知される。
【0050】
これに対し、画像形成装置1は、記録媒体検知センサ17のセンサ出力(検知結果)に基づいて、搬送ベルト2の汚れYを検知する。具体的には、画像形成装置1は、CPU21により、エンコーダ検知センサ37のセンサ出力(図9A参照)から、記録媒体検知センサ17のセンサ出力がアクティブな期間のエンコーダスケール6A(目盛)をカウントする。CPU21は、このエンコーダスケール6Aのカウント値(エンコーダカウントという)の取得値をエンコーダカウントの基準値と比較し、その比較結果に基づいて、搬送ベルト2上の汚れYの有無を判定する。エンコーダカウントの基準値は、予め、記録媒体の幅に対応した値が設定されて、ROM22等のメモリに記憶される。
【0051】
汚れYの判定処理時には、CPU21は、例えば、エンコーダカウントの実際の取得値と基準値の差を算出し、取得値が、基準値よりも、カウント誤差等に応じて予め設定される所定量以上大きいときに、記録媒体を検知した境界に汚れYがあると判定する。これにより、CPU21は、記録媒体の副走査方向Fに沿った端部付近で、搬送ベルト2に付着した汚れYを検知する。また、CPU21は、エンコーダカウントの取得値が基準値よりも所定量以上小さく、検知された記録媒体の幅が狭いときには、記録媒体ではなく汚れYを検知したと判定する。これにより、CPU21は、記録媒体の配置されていない部分で、搬送ベルト2に付着した汚れYを検知する。一方、CPU21は、エンコーダカウントの基準値と取得値の差が所定量未満であるときには、正常幅の記録媒体であると判定する。従って、CPU21は、汚れYの有無を判定して、搬送ベルト2の汚れYを検知する汚れ検知手段を構成し、検知した汚れYの位置をRAM23に記憶させる。
【0052】
このように、画像形成装置1は、キャリッジ4の移動経路上に位置する部材(被検知物)である搬送ベルト2に付着した汚れYを検知する汚れ検知手段を備えている。ここでは、汚れ検知手段は、キャリッジ4に設けられた検知センサ(記録媒体検知センサ17)により、搬送ベルト2の記録媒体が配置される面において、記録媒体検知センサ17が検知する範囲の汚れYを検知する。画像形成装置1は、CPU21により制御して、紫外線照射手段39(図8参照)により、汚れ検知手段が検知した汚れYにインクを分解する紫外線を照射して、搬送ベルト2からインクによる汚れYを除去する。
【0053】
なお、予め設定される副走査方向Fの所定距離以上、エンコーダカウントの基準値と取得値に同程度の差があるときには、汚れYではなく、エンコーダカウントの基準値がずれたと判断して、エンコーダカウントの基準値を取得値に変更し、次回の比較時に新たな基準値を比較対象にするようにしてもよい。これと同時に、エンコーダカウントの基準値のずれや変更を、ユーザに通知するようにしてもよい。また、記録媒体が搬送ベルト2に配置されていない状態で、停止した搬送ベルト2に沿ってキャリッジ4を移動させて、記録媒体検知センサ17により、搬送ベルト2上の汚れYを検知するようにしてもよい。その際には、記録媒体検知センサ17のセンサ出力がアクティブになった部分が汚れYであり、これにより、搬送ベルト2上の汚れYと汚れYの位置を検知する。
【0054】
次に、搬送ベルト2のインクによる汚れYを除去するときの画像形成装置1の処理や動作、及び、画像形成装置1の制御方法について説明する。
図10は、画像形成装置1による汚れYの除去手順を示すフローチャートであり、記録媒体が搬送ベルト2に配置されていない状態で、汚れYを除去する手順を示している。
画像形成装置1は、内部に設けられた記録媒体の有無を検知する有無検知センサ等により、搬送ベルト2に記録媒体が配置されていないことを確認する。また、搬送ベルト2の汚れYを除去する部分を、キャリッジ4の移動経路上に位置させて、搬送ベルト2を停止させる。
【0055】
続いて、図示のように、キャリッジ4を主走査方向Sに移動させて、記録媒体検知センサ17により搬送ベルト2の表面を走査し(S201)、汚れ検知手段により汚れYを検知する。その際、キャリッジ4とともに移動する記録媒体検知センサ17により、搬送ベルト2の微小区間を走査して、汚れYが検知されたときに(S202、YES)、検知された汚れYに対して、紫外線照射手段39により紫外線を照射する(S203)。画像形成装置1は、紫外線照射手段39により、任意に設定される所定時間、所定強度の紫外線を汚れYに照射して、汚れYを分解する。また、紫外線の照射を停止した後、汚れYが検知された区間で汚れYを再び検知して、汚れYの除去が完了するまで紫外線の照射を繰り返す(S204、NO)(S203)。
【0056】
次に、画像形成装置1は、記録媒体検知センサ17のセンサ出力がアクティブでなくなったときに、汚れYの除去が完了したと判断し(S204、YES)、次の微小区間にキャリッジ4を移動させて、その区間を走査する(S201)。画像形成装置1は、キャリッジ4が終点に達するまで(S205、NO)、キャリッジ4の移動と汚れYの除去とを繰り返し、汚れYが検知される都度、各微小区間の汚れYを除去する。これにより、画像形成装置1は、記録媒体検知センサ17による検知位置を含む所定範囲の搬送ベルト2からインクによる汚れYを除去し、キャリッジ4が終点に達したときに(S205、YES)、処理を終了する。
【0057】
このように、画像形成装置1は、汚れYの除去度合いによって、紫外線を再度照射するか否かを判断するとともに、紫外線照射の繰り返し回数により、紫外線の照射時間と強度を判断して、紫外線の照射時間と強度を変更させる。また、画像形成装置1は、汚れYの程度に応じて、又は、画像形成装置1の使用頻度に応じて、照射する紫外線の強度も調整する。画像形成装置1は、汚れYの除去範囲に応じた距離だけ、搬送ベルト2を順次循環させて停止させ、停止毎に搬送ベルト2の汚れYを除去することで、搬送ベルト2の全体の汚れYを除去する。これに対し、記録媒体が搬送ベルト2に配置されているときには、搬送ベルト2上の汚れYを予め検知した後、各位置の汚れYに紫外線を照射して、インクによる汚れYを分解して除去する。
【0058】
ここでは、キャリッジ4の移動経路上に位置する搬送ベルト2の汚れYを検知して、検知した汚れYに紫外線を照射し、搬送ベルト2に付着した汚れYを除去する。そのため、搬送ベルト2に関連して、上記したエンコーダスケール6Aの汚れYを除去するときと同様の効果が得られる。また、搬送ベルト2に付着したインクによる汚れYを確実に除去できるため、記録媒体検知センサ17により、記録媒体、記録媒体の両端部、及び、記録媒体の幅や位置を精度よく検知できる。これにより、画像形成時における画像形成装置1の誤動作を防止して、記録媒体に画像を正確に形成できるため、高い画像品質を確保できる。
【0059】
なお、インクミストの発生時には、記録媒体検知センサ17にもインクミストが付着することがある。そのため、上記したエンコーダ検知センサ37と同様に、記録媒体検知センサ17と紫外線照射手段39を隣接させる等して、紫外線照射手段39が発生させた紫外線を、記録媒体検知センサ17に照射させるようにしてもよい。この場合には、紫外線照射手段39は、汚れYの検知センサでもある記録媒体検知センサ17(発光部、受光部)に紫外線を照射して、記録媒体検知センサ17に付着したインクによる汚れYを分解し、記録媒体検知センサ17の汚れYを除去する。これにより、記録媒体検知センサ17による検知精度が低下するのを抑制して、高い検知精度を長期間に亘り確保できる。
【0060】
また、搬送ベルト2と記録媒体検知センサ17(発光部、受光部)は、それぞれの紫外線が照射される表面に、光機能触媒を塗布やコーティングする等して、光機能触媒を配するようにしてもよい。このようにすることで、搬送ベルト2と記録媒体検知センサ17に付着したインクによる汚れYを、より効率的に分解して除去することができる。その際、紫外線照射手段39から、光機能触媒を活性化させるエネルギーに対応する光周波数にピークをもつ紫外線を発生させて、汚れYに照射することで、より一層効率的かつ確実に汚れYを分解できる。
【0061】
ここで、紫外線は、強度によっては、生物や電子機器等に悪影響を及ぼす虞がある。そのため、画像形成装置1には、以下説明する紫外線の影響を低減させる手段を設けるのが望ましい。
【0062】
図11は、紫外線の遮断部材を設けたキャリッジ4を示す断面図である。
ここでは、図示のように、キャリッジ4に遮断部材40を設けている。遮断部材40は、紫外線照射手段36が照射する紫外線を遮断して、外部への漏出を防止するカバーであり、紫外線照射手段36とエンコーダ読み取り部18を囲んで、紫外線照射手段36を遮蔽する。また、遮断部材40は、紫外線照射手段36とともにエンコーダ部材6(エンコーダスケール6A)を内部に配置した状態で、キャリッジ4に取り付けられ、紫外線照射手段36を遮蔽しつつ、キャリッジ4と一体に移動する。
【0063】
遮断部材40を設けることで、装置内外の機器や装置外の生物に紫外線が照射されるのを防止して、画像形成装置1の安全性を一層向上できる。特に、遮断部材40に使用する材料としては、石英ガラス等の紫外線を透過しない物質が有効である。また、この遮断部材40と同様の遮断部材を、記憶媒体検知部38(図8参照)を囲むように、記録媒体検知部38から搬送ベルト2に向かって配置し、記憶媒体検知部38の紫外線照射手段39が照射する紫外線を遮断して、外部への漏出を防止するようにしてもよい。
【0064】
これに対し、画像形成装置1のカバー自体で紫外線を遮断し、前カバーや上カバー等が開かないように施錠する施錠手段を設けるようにしてもよい。この場合には、紫外線の照射中は、各カバーが開かないように施錠手段を制御する。また、画像形成装置1のカバーに開閉を検知する開閉検知センサを設けて、紫外線の照射中にカバーが開いたことを検知したときに、強制的に、紫外線の照射を中断するように制御して、紫外線の外部への漏れを防止することもできる。
【0065】
次に、エンコーダ部材6の形状を替えた画像形成装置について説明する。
図12は、輪状のエンコーダ部材51を備えた画像形成装置50を示す要部平面図である。
この画像形成装置50は、図示のように、エンコーダ部材51と紫外線照射手段52以外は、上記した画像形成装置1と同様に構成されている。エンコーダ部材51は、輪状に形成されて、駆動プーリ53と従動プーリ54に架け渡されている。画像形成装置50は、駆動モータ(図示せず)により駆動プーリ53を回転させて、エンコーダ部材51を主走査方向Sに循環駆動させ、駆動モータを停止させて、エンコーダ部材51を任意の位置で停止させる。紫外線照射手段52は、エンコーダ検知センサ37が検知しない側で、エンコーダ部材51を囲んで配置され、内部のエンコーダスケール51Aに向かって紫外線を照射する。
【0066】
画像形成装置50は、エンコーダスケール51A上に汚れYを検知したときには、エンコーダ部材51を循環させて、汚れYが付着した位置のエンコーダスケール51Aを紫外線照射手段52の内部まで移動させ、エンコーダ部材51を停止させる。続いて、紫外線照射手段52により、検知したエンコーダスケール51Aの汚れYに紫外線を照射して、インクによる汚れYを分解して除去する。その間、汚れYのない範囲のエンコーダスケール51Aを、キャリッジ4の移動の制御に使用する。これにより、汚れYの除去中においても画像を形成できるため、画像形成装置50が停止している時間(ダウンタイム)を低減できる。
【0067】
以上、各実施形態の画像形成装置1、50について説明したが、本発明は、これら画像形成装置1、50の制御方法や、画像形成装置1、50による汚れYの除去方法としても実現できる。また、本発明は、画像形成装置1、50の上記した各方法の工程を、コンピュータで実行させるためのプログラムであり、画像形成装置1、50に適用可能なプログラムとして実現することもできる。更に、このプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、又はMO等、任意のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録することもできる。
【符号の説明】
【0068】
1・・・画像形成装置、2・・・搬送ベルト、3・・・記録ヘッド、4・・・キャリッジ、5・・・ガイドロッド、6・・・エンコーダ部材、6A・・・エンコーダスケール、7・・・駆動ローラ、8・・・従動ローラ、9・・・伝動ベルト、10・・・副走査モータ、11・・・先端検知センサ、12、13・・・タイミングプーリ、14・・・タイミングベルト、15・・・主走査モータ、16・・・インク吐出ノズル、17・・・記録媒体検知センサ、18・・・エンコーダ読み取り部、18A・・・枠体、20・・・バス、21・・・CPU、22・・・ROM、23・・・RAM、24・・・ホストPC、25・・・ホストI/F、26・・・記録ヘッド制御部、27・・・主走査制御部、28・・・副走査制御部、30〜33・・・記録ヘッド駆動部、34・・・主走査エンコーダ、35・・・副走査エンコーダ、36・・・紫外線照射手段、37・・・エンコーダ検知センサ、38・・・記録媒体検知部、39・・・紫外線照射手段、40・・・遮断部材、50・・・画像形成装置、51・・・エンコーダ部材、51A・・・エンコーダスケール、52・・・紫外線照射手段、53・・・駆動プーリ、54・・・従動プーリ、F・・・副走査方向、S・・・主走査方向、Y・・・汚れ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開2010−756号公報
【特許文献2】特開2004−42283号公報
【特許文献3】特開2007−327813号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクにより記録媒体に画像を形成する記録ヘッドと、記録ヘッドを搭載して移動するキャリッジとを備え、キャリッジとともに移動する記録ヘッドにより記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
キャリッジの移動経路上のインクによる汚れを検知する汚れ検知手段と、
汚れ検知手段が検知した汚れに、インクを分解する紫外線を照射する紫外線照射手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載された画像形成装置において、
移動するキャリッジの位置検出用のエンコーダスケールを備え、
汚れ検知手段が、エンコーダスケールに付着した汚れを検知する画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載された画像形成装置において、
記録媒体を搬送する搬送ベルトを備え、
汚れ検知手段が、搬送ベルトに付着した汚れを検知する画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された画像形成装置において、
汚れ検知手段が、キャリッジに設けられた汚れの検知センサを有し、
紫外線照射手段が、検知センサに紫外線を照射して、検知センサに付着した汚れを分解する画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載された画像形成装置において、
紫外線照射手段が照射する紫外線を遮断して外部への漏出を防止する遮断部材を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−56255(P2012−56255A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203662(P2010−203662)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】