説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置が備える搬送ベルトの汚れ等の影響を受けずに、搬送ベルト上の用紙を、より精度よく検出する。
【解決手段】画像形成装置1は、用紙30に画像を形成するプリントヘッドと、プリントヘッドを搭載して用紙30の主走査方向Sに移動するキャリッジ3と、用紙30を副走査方向Fに搬送する搬送ベルト5とを備え、キャリッジ3とともに移動するプリントヘッドにより搬送ベルト5が搬送する用紙30に画像を形成する。用紙30の検出時には、画像形成装置1は、搬送ベルト5に形成された開口20に、搬送する用紙30の副走査方向Fに沿った両縁部31をそれぞれ配置する。キャリッジ3とともに移動する検出センサ8により、両縁部31から露出する開口20と、開口20に挟まれた搬送ベルト5上の用紙30を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリントヘッドを主走査方向に移動させて、搬送ベルトが副走査方向に搬送する用紙に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送ベルトが搬送する用紙にプリントヘッドにより画像を形成するときには、用紙に対する画像の位置や大きさを調整して、用紙に合わせて画像を形成するため、搬送ベルト上の用紙を検出して、用紙の位置やサイズ等を判別する必要がある。この用紙の検出は、例えば、プリントヘッドを移動させるキャリッジに検出センサを設け、キャリッジと一体に移動する検出センサにより用紙の有無を検出することで行われる。ところが、画像形成中に用紙詰まりや他の異常が発生すると、搬送ベルトに現像材やインク等の汚れが付着することがあり、検出センサにより、搬送ベルトの汚れを用紙として誤検出する虞が生じる。
【0003】
これに対し、従来、予め検出センサにより搬送ベルトを検出走査して搬送ベルト上の汚れの状態を判定し、汚れがないときに、搬送ベルトによる用紙の搬送と検出センサによる用紙の検出を開始して、用紙の誤検出を抑制した画像形成装置が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、この従来の画像形成装置では、用紙に画像を形成(印刷)する度に、予め搬送ベルトの汚れの状態を判定するため、用紙の搬送開始までに時間を要して、画像形成の待ち時間が長くなる傾向がある。また、汚れの判定に伴う検出センサの移動と検出処理に応じて、画像形成時の消費電力が増加する、という問題もある。従って、この従来の画像形成装置は、予め汚れの状態を判定することなく、かつ、搬送ベルトの汚れ等の影響を受けずに、搬送ベルト上の用紙を、より精度よく検出することが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これら従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、予め汚れの状態を判定することなく、かつ、搬送ベルトの汚れ等の影響を受けずに、搬送ベルト上の用紙を、より精度よく検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、用紙に画像を形成するプリントヘッドと、プリントヘッドを搭載して用紙の主走査方向に移動するキャリッジと、用紙を副走査方向に搬送する搬送ベルトとを備え、キャリッジとともに移動するプリントヘッドにより搬送ベルトが搬送する用紙に画像を形成する画像形成装置であって、搬送ベルトに形成され、搬送する用紙の副走査方向に沿った両縁部から露出する位置に配置された開口と、キャリッジとともに移動して、開口と用紙を検出する検出センサと、を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、予め汚れの状態を判定することなく、かつ、搬送ベルトの汚れ等の影響を受けずに、搬送ベルト上の用紙を、より精度よく検出することができる。従って、画像形成装置による画像形成の待ち時間を短縮しつつ画像形成時の消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の画像形成装置の要部を示す斜視図である。
【図2】本実施形態の画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図3】搬送ベルト上の用紙の検出について説明するための図である。
【図4】汚れがある搬送ベルト上の用紙の検出について説明するための図である。
【図5】開口を使用した搬送ベルト上の用紙の検出について説明するための図である。
【図6】複数の開口と標識を設けた搬送ベルト上の用紙の検出について説明するための図である。
【図7】複数サイズの用紙の検出について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の画像形成装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の画像形成装置は、用紙に画像を形成する、例えば印刷装置、コピー機、ファクシミリ、又は、それらの機能を併せ持つ複合機であり、用紙を搬送しつつ印刷して用紙に画像を形成する。
【0010】
図1は、本実施形態の画像形成装置の要部を示す斜視図である。
画像形成装置1は、図示のように、用紙(図示せず)に画像を形成するプリントヘッド2と、プリントヘッド2が搭載されたキャリッジ3と、キャリッジ3の移動を案内するガイドシャフト4と、用紙の搬送手段である搬送ベルト5とを備えている。
【0011】
ガイドシャフト4は、主走査方向Sに平行に、かつ、搬送ベルト5の表面(図1では上面)に沿って配置され、キャリッジ3に形成された案内孔内に挿入されて、キャリッジ3を長手方向に摺動させる。キャリッジ3は、タイミングプーリに架け渡されてモータにより循環駆動されるタイミングベルト(それぞれ図示せず)に連結され、ガイドシャフト4に案内されて、タイミングベルトの循環駆動により、主走査方向Sの両方向に所定速度で移動する。これにより、キャリッジ3は、プリントヘッド2を搭載して用紙の主走査方向Sに移動し、プリントヘッド2を、搬送ベルト5の表面に沿って主走査方向Sに往復移動させて、搬送ベルト5と用紙を横断させる。
【0012】
プリントヘッド2は、主走査方向Sに移動して用紙に画像を印刷する印刷手段であり、例えば、インクジェット方式の画像形成装置1のときには、1色又は複数色のインクカートリッジが設けられ、用紙にインク滴を吐出して画像を順次印刷して、用紙に画像を形成する。
【0013】
搬送ベルト5は、無端状ベルトであり、駆動ローラ6と従動ローラ7に架け渡されて、副走査方向Fに沿って配置されている。また、搬送ベルト5は、帯電手段である帯電ローラ(図示せず)が外表面に接触して配置され、帯電ローラにより帯電して、用紙を静電吸着して保持する。画像形成装置1は、モータ等からなる駆動手段(図示せず)により駆動ローラ6を回転させ、搬送ベルト5を副走査方向Fに循環(回転)させて任意の位置で停止させる。これに伴い、搬送ベルト5は、表面に保持した用紙を副走査方向Fに所定速度で搬送して所定位置で停止させる。
【0014】
画像形成装置1は、用紙を給紙する給紙手段(図示せず)により、用紙を搬送ベルト5に向かって所定のタイミングで供給して、用紙を搬送ベルト5上の設定位置に配置する。ここでは、用紙の主走査方向Sの中央線と搬送ベルト5の中央線5Aとを一致させて、用紙を搬送ベルト5に配置する設定になっており、搬送ベルト5の中央線5Aを挟んで用紙を対称に配置する。その際、給紙手段は、用紙ガイドに沿って用紙を搬送ベルト5に供給するため、用紙は、配置位置が大きくずれることなく搬送ベルト5に配置されて、副走査方向Fに沿って搬送される。
【0015】
画像形成装置1は、用紙の副走査方向Fの搬送に合わせて、プリントヘッド2を主走査方向Sに移動させて用紙に印刷し、用紙の搬送とプリントヘッド2の移動を繰り返して、用紙に画像を次第に形成する。このように、画像形成装置1は、キャリッジ3とともに主走査方向Sに移動するプリントヘッド2により、搬送ベルト5が副走査方向Fに搬送する用紙に画像を形成する。その後、画像形成装置1は、排紙手段(図示せず)により、画像を形成した用紙を、搬送ベルト5から外して排紙部に排紙する。
【0016】
次に、画像形成装置1を制御するための構成について説明する。
図2は、画像形成装置1の概略構成を示す図であり、画像形成装置1を平面図で示すとともに、制御に関する構成をブロックで示している。
画像形成装置1は、図示のように、プリントヘッド2を駆動制御するヘッド駆動部11と、キャリッジ3を駆動制御するキャリッジ駆動部12と、駆動ローラ6を駆動制御するローラ駆動部13と、それらを含む装置全体を制御する制御手段であるCPU(中央演算処理装置)14とを備えている。また、画像形成装置1は、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)と、CPU14が直接アクセスするデータを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)(それぞれ図示せず)とを備えている。
【0017】
画像形成装置1は、CPU14で所定のプログラムを実行し、CPU14により制御して、予め設定された条件やタイミングに基づき、各駆動部11、12、13や装置各部を作動させる。このように、CPU14は、画像形成装置1の制御処理を実行するとともに、後述する搬送ベルト5上の用紙を判別する処理や他の各種処理を実行するようになっており、用紙の判別手段等、画像形成装置1の機能実現手段を構成する。
【0018】
また、画像形成装置1は、搬送ベルト5の中央線5Aの両側に形成された開口20と、搬送ベルト5に配置する用紙の基準位置を示す標識21と、キャリッジ3に設けられた検出センサ8とを備えている。開口20は、搬送ベルト5に形成された貫通孔であり、後述するように、搬送する用紙の副走査方向Fに沿った両縁部がそれぞれ配置される。
【0019】
検出センサ8は、ここでは反射型フォトセンサであり、搬送ベルト5に向かって検出用の光を照射する発光素子8Aと、照射した光の反射光を受光する受光素子8Bとを有する。検出センサ8は、光の反射物(検出物)に応じて変化する反射光を受光素子8Bで受光することで各検出物を検出する。この検出センサ8は、キャリッジ3の移動方向の一端部に搭載され、キャリッジ3とともに主走査方向Sに移動して、搬送ベルト5、開口20、及び、搬送ベルト5が搬送する用紙を検出し、受光素子8Bによる検出信号をCPU14に向かって出力する。
【0020】
本実施形態では、搬送ベルト5は、用紙の配置面である表面の全体が黒色系の色で彩色されて光を反射する面になっており、この反射面が検出センサ8により検出される。検出センサ8は、汚れ等のない状態の搬送ベルト5と用紙を検出したときの出力が互いに異なる所定ボルトの電圧になり、かつ、用紙を検出したときの出力電圧が搬送ベルト5を検出したときの出力電圧よりも高くなるように設定されている。ここでは、検出センサ8は、汚れ等のない状態の搬送ベルト5を検出したときには、出力電圧が2.5ボルトとなり、用紙を検出したときには、出力電圧が5ボルトとなる。また、検出センサ8は、開口20の部分では、光が開口20を通過して反射しないため、出力電圧が0ボルトに近い電圧(≒0ボルト)になり、開口20を検出したときには、搬送ベルト5を検出したときよりも低い電圧を出力する。
【0021】
検出センサ8は、各電圧からなる検出信号をアナログ信号で順次出力する。この検出センサ8から出力された検出信号は、アナログ信号/デジタル信号(A/D)コンバータ(図示せず)によりデジタル信号に変換された後、CPU14に出力される。その際、例えば、CPU14がASIC(Application Specific Integrated Circuit)に設けられているときには、検出センサ8の検出信号は、ASICが備えるA/Dコンバータに入力される。また、CPU14は、検出センサ8が出力する電圧値(センサ出力という)と、予め設定された電圧の閾値(基準値)とを比較し、センサ出力が閾値以上のときに用紙有り、センサ出力が閾値未満のときに用紙無しと判定する。この閾値は、検出センサ8が用紙を検出したときの出力電圧よりも低く、かつ、検出センサ8が搬送ベルト5を検出したときの出力電圧よりも高い電圧値であり、両出力電圧間の値が適宜設定される。
【0022】
次に、画像形成装置1により用紙を検出する手順や、画像形成装置1の制御方法について説明する。
図3は、搬送ベルト5上の用紙30の検出について説明するための図であり、開口20が形成されていない範囲の搬送ベルト5で用紙30を搬送するときの画像形成装置1の参考例を示している。また、図3Aは、画像形成装置1の要部を示す図2に対応する平面図であり、図3Bは、検出センサ8のセンサ出力を示す図である。この図3(以下の図4〜図7でも同様)では、図3Aと図3Bの主走査方向Sの位置を一致させ、図3Bに、図3Aの主走査方向Sの各位置におけるセンサ出力を、位置同士を対応させて示している。即ち、図3Bは、横軸が、図3Aに示す検出センサ8の検出位置であり、縦軸が、検出センサ8による検出結果(センサ出力)である。また、図3Bに示すセンサ出力は、0ボルトから上にいくほど高くなる。
【0023】
画像形成装置1は、図3Aに示すように、プリントヘッド2で用紙30に画像を印刷して画像を形成するときには、搬送ベルト5により用紙30を搬送して、用紙30をキャリッジ3の移動経路上に位置させる。続いて、キャリッジ3を、搬送ベルト5の一方の外側から他方の外側まで移動させて、プリントヘッド2を、搬送ベルト5の表面に沿って用紙30の主走査方向Sに移動させる。この移動時に、画像形成装置1は、キャリッジ3に設けた検出センサ8を作動させて、搬送ベルト5や用紙30を検出する。
【0024】
検出センサ8のセンサ出力は、図3Bに示すように、検出センサ8が検出する検出物に合わせて変化する。ここでは、センサ出力は、搬送ベルト5の外側の0ボルトに近い値に対し、搬送ベルト5を検出すると高くなり、搬送ベルト5の中央に配置された用紙30の部分で更に高くなる。CPU14は、センサ出力と用紙30を検出したと判定される閾値(用紙検出閾値)とを比較し、センサ出力が閾値未満では用紙30ではない(用紙非検出)と判定し、センサ出力が閾値以上のときに用紙30を検出した(用紙検出)と判定する。このように、CPU14は、検出センサ8の検出結果に基づき、搬送ベルト5上の用紙30を判別する。ただし、搬送ベルト5上に汚れがあると、センサ出力が変動して用紙30の判定精度が低下し、用紙30の誤検出が生じることがある。
【0025】
図4は、汚れQがある搬送ベルト5上の用紙30の検出について説明するための図であり、図4Aと図4Bを、それぞれ図3Aと図3Bに対応させて示す。
図4Aに示すように、搬送ベルト5上に、用紙30の縁部31から外側まで広がる汚れQがあり、汚れQのある範囲を検出センサ8で検出すると、汚れQの程度や状態に応じて、その部分における検出センサ8のセンサ出力が変動する。
【0026】
例えば、汚れQが光を反射させるインクであり、付着したインクが多い(濃い)ときには、検出センサ8が照射した光の反射光が強くなるため、センサ出力が高くなる。逆にインクが少ない(薄い)ときには、検出センサ8が照射した光の吸収量がより多くなり、反射光が弱くなるため、センサ出力が低くなる。その結果、図4Bに示すように、検出センサ8のセンサ出力は、汚れQの部分で汚れQに応じて変動する。汚れQを検出したときのセンサ出力が閾値以上になると、汚れQを用紙30であると判定して用紙30を誤検出し、用紙30からはみ出して汚れQ上まで印刷する虞がある。また、用紙30の印刷開始位置を間違えたり、或いは、用紙30のサイズを間違えて印刷サイズを誤認識したりする虞もある。これに対し、本実施形態では、上記した開口20により、搬送ベルト5の汚れQの影響を受けずに用紙30を精度よく検出する。
【0027】
図5は、開口20を使用した搬送ベルト5上の用紙30の検出について説明するための図であり、図5Aは、画像形成装置1の要部平面図、図5Bは、検出センサ8のセンサ出力を示す図である。
開口20は、図5Aに示すように、搬送ベルト5の所定範囲を切り抜いて、搬送ベルト5の中央線5Aの両側に一対形成される。これら開口20は、搬送ベルト5上に用紙30が配置されたときに、搬送する用紙30の副走査方向Fに沿った両縁部31から露出する位置に配置されている。つまり、開口20は、用紙30の両縁部31がそれぞれ配置されて、その少なくとも一部が、用紙30の縁部31から用紙30外(用紙30の主走査方向Sの外側)に露出する。これにより、一対の開口20は、搬送ベルト5上で用紙30を挟んで配置される。ここでは、搬送ベルト5は、両縁部31の全体に沿って配置された連続した開口20を有し、一対の開口20の内側に、それぞれ両縁部31の全体が配置される。また、一対の開口20は、それぞれ用紙30の縁部31に沿って延びる比較的細長い矩形状に形成されたスリットからなる。
【0028】
具体的には、開口20は、例えば用紙30がA4サイズ(幅210mm)であるときには、搬送ベルト5の中央線5Aから主走査方向Sの両側に用紙30の半分(105mm)の距離だけ離れた位置に形成される。また、開口20は、用紙30の縁部31の内側と外側に位置するように所定幅に形成され、中央線5A側の一部が用紙30に覆われるとともに、その外側の一部が用紙30の縁部31よりも外側に位置して露出する。ただし、開口20は、用紙30により全体が隠されない程度の幅に、かつ、搬送ベルト5にばたつきが起きないように、できるだけ狭い幅(例えば2〜3cm程度)に形成される。更に、開口20は、副走査方向Fの長さが長すぎると、搬送ベルト5のばたつきが大きくなる虞があるため、用紙30の長さに応じた長さに形成される。その際、開口20は、用紙30の配置位置が多少変動しても、用紙30の縁部31の全体が配置されるように、用紙30の長さよりも所定長さ(例えば1〜2cm程度)だけ長く形成される。
【0029】
この開口20の位置に合わせて、上記した標識21が搬送ベルト5の側部に取り付けられる。標識21は、搬送ベルト5に設けられて、搬送ベルト5に配置する用紙30の基準位置を示す目印であり、搬送ベルト5に配置する用紙30の配置位置や用紙30の搬送開始位置を表す。この標識21は、例えば、反射材質部材(紙等)を1cm×1cm程度の大きさの矩形状に形成したパッチからなり、搬送ベルト5の一方の側部に取り付けられて、用紙搬送開始パッチや用紙配置位置パッチとして機能する。その際、標識21は、移動開始前のキャリッジ3が待機する待機位置側(図5では右側)に取り付けられ、待機中の、又は、同位置に移動したキャリッジ3の検出センサ8と対向する位置に配置される。
【0030】
また、標識21は、搬送ベルト5の開口20が形成された範囲において、搬送ベルト5による用紙30の搬送方向の最前方(図5では下方)に位置するように配置される。ここでは、標識21は、開口20の先端20Sの位置に合わせて配置され、搬送ベルト5上における副走査方向Fの位置が先端20Sと同じ位置に、かつ、用紙30の搬送方向前方側の辺が先端20Sの辺と平行になっている。
【0031】
画像形成装置1は、キャリッジ3を待機位置に配置して、検出センサ8により標識21を検出することで、搬送ベルト5の基準位置を判別する。また、搬送する用紙30の先端と標識21の位置が一致するように、標識21の検出位置と搬送ベルト5の回転速度に基づいて、用紙30を供給するタイミングを算出し、標識21の位置に合わせて用紙30を供給する。即ち、標識21が用紙30の供給位置(搬送開始位置)を通過するタイミングで、用紙30を搬送ベルト5に供給して、用紙30を搬送ベルト5上に配置する。これにより、用紙30の両縁部31を、それぞれ開口20内に配置し、その状態で用紙30を搬送ベルト5により搬送する。このように、本実施形態では、検出センサ8が、標識21を検出する標識検出手段になっている。また、画像形成装置1は、CPU14により制御して、検出センサ8が検出した標識21に合わせて、上記した用紙30の給紙手段により、用紙30を搬送ベルト5に配置する。従って、CPU14と給紙手段が、用紙30を搬送ベルト5に配置する配置手段を構成する。
【0032】
続いて、画像形成装置1は、上記のように、キャリッジ3を主走査方向Sに移動させて、検出センサ8による検出を行う。検出センサ8は、キャリッジ3とともに移動して、少なくとも一対の開口20と、開口20に挟まれた用紙30を検出する。ここでは、検出センサ8により、搬送ベルト5、開口20、及び、用紙30を検出するとともに、搬送ベルト5に付着した汚れQも検出する。検出センサ8のセンサ出力は、図5Bに示すように、搬送ベルト5、用紙30、及び、汚れQを検出することで、上記(図4参照)と同様に変化する。これに対し、センサ出力は、用紙30と搬送ベルト5(又は、汚れQ)の間の開口20の部分で、0ボルトに近い値まで急激に低下して、他の部分よりも低い値(以下、最低値という)を示す。検出センサ8は、用紙30の両側で、それぞれ縁部31から露出する開口20を検出したときに、センサ出力が最低値となり、それらの間で、用紙30を検出したときに、センサ出力が閾値以上となる。
【0033】
画像形成装置1は、この検出センサ8の検出結果に基づいて、開口20に挟まれた搬送ベルト5上の用紙30を判別する。その際、画像形成装置1は、CPU14により、センサ出力と閾値とを比較して用紙30か否かを判定するが、用紙30の両側では、開口20によりセンサ出力が必ず最低値になる。そのため、搬送ベルト5の汚れQの有無によらず、最低値の間の範囲で、用紙30の縁部31に対応して、センサ出力が最低値から閾値以上となり、縁部31の位置が明確に判別される。これにより、CPU14は、汚れQの影響を受けずに、センサ出力が閾値以上となる用紙30を正確に判別して、搬送ベルト5上の用紙30の有無、搬送ベルト5上における用紙30の位置、又は、用紙30のサイズを判別する。
【0034】
ここで、汚れQの程度や状態によっては、汚れQを検出したときのセンサ出力が閾値以上となり、汚れQを用紙30であると判定して、用紙30を誤検出する虞がある。これに対し、本実施形態では、検出センサ8による用紙30の検出時間を取得して、検出時間の取得値と予め設定された基準値とを比較し、検出時間の比較結果に基づいて、用紙30の誤検出を判定する。この誤検出を判定する処理は、用紙30の判別手段であるCPU14により実行しており、従って、CPU14は、検出時間を取得する取得手段と、検出時間を比較する比較手段と、誤検出を判定する判定手段とを有する。また、検出時間の基準値は、用紙30のサイズと検出センサ8(キャリッジ3)の移動速度に応じて予め設定され、検出時間の比較時に、CPU14により読み出されて使用される。
【0035】
CPU14は、例えば、判別された用紙30のサイズとキャリッジ3の移動速度から用紙30の検出時間を算出し、或いは、センサ出力が閾値以上になったときの両時間の差から用紙30の検出時間を算出して、用紙30の検出時間を取得する。また、CPU14は、検出時間の取得値が基準値以上のときに、用紙30であると判定し、検出時間の取得値が基準値未満のときに、用紙30ではないと判定する。これにより、CPU14は、検出センサ8による用紙30の検出が正しいか否か、即ち、検出センサ8の検出結果が用紙30であるのか否かを判別して、用紙30の誤検出を判定する。
【0036】
以上説明したように、この画像形成装置1では、搬送ベルト5の開口20に用紙30の両縁部31を配置し、両縁部31から露出する開口20と用紙30を検出する。そのため、汚れQ等により搬送ベルト5の表面状態が変動しても、その影響を受けずに、開口20間に挟まれた用紙30を精度よく検出して、搬送ベルト5上の用紙30を正確に判別できる。これに伴い、搬送する用紙30の有無、位置、又は、サイズも正確に把握できる。また、用紙30の検出(判別)精度を、長期間に渡り高く維持できるとともに、汚れQを用紙30であると判定する等して、用紙30の誤検出が生じるのも抑制できる。
【0037】
更に、画像形成装置1は、従来のように、用紙30の搬送前に、キャリッジ3を移動させる等して、予め搬送ベルト5の汚れQの状態を判定する必要がなく、用紙30を搬送しつつ用紙30を精度よく検出できる。そのため、用紙30の搬送と画像形成を早期に開始でき、用紙30の搬送開始までの時間と、画像形成の待ち時間を短縮できる。また、用紙30に画像を印刷(形成)するときに、用紙30を検出して搬送ベルト5上の用紙30を判別すればよいため、画像形成装置1による画像形成時の動作や工程を削減して、画像形成の効率を向上できる。同時に、用紙30の搬送開始前の動作や処理が不要となるため、画像形成装置1が画像形成時に消費する電力を低減することもできる。
【0038】
このように、本実施形態によれば、予め汚れQの状態を判定することなく、かつ、搬送ベルト5の汚れQ等の影響を受けずに、搬送ベルト5上の用紙30を、より精度よく検出することができる。従って、画像形成装置1による画像形成の待ち時間を短縮しつつ画像形成時の消費電力を低減することができる。また、用紙30の印刷開始位置や印刷サイズを誤認識せずに、それらを各用紙30に対して正確に設定できるため、用紙30に画像を精度よく印刷及び形成して、高い画像品質を確保できる。
【0039】
上記したように、検出センサ8による用紙30の検出時間を取得して、検出時間の取得値と基準値の比較結果に基づき、用紙30の誤検出を判定するときには、汚れQ等を用紙30であると判定するのをより確実に防止して、用紙30の誤検出を一層抑制できる。搬送ベルト5に標識21を設け、検出した標識21に合わせて、用紙30を搬送ベルト5に配置することで、用紙30の縁部31と開口20の位置を正確に合わせて、縁部31を開口20内に確実に配置できる。これにより、搬送ベルト5上の用紙30を、より精度よく検出できる。
【0040】
なお、一対の開口20と1つの標識21を搬送ベルト5に設けたときには、検出センサ8が標識21を検出する位置と用紙30の供給位置との距離によっては、標識21の検出から用紙30を搬送ベルト5へ配置するまでの時間が長くなる虞がある。そのため、一対の開口20と1つの標識21は、搬送ベルト5の周方向に、互いに対応させて複数対及び複数個設けるようにしてもよい。
【0041】
図6は、複数の開口20’と標識21’を設けた搬送ベルト5上の用紙30の検出について説明するための図であり、図6Aは、画像形成装置1の要部平面図、図6Bは、検出センサ8のセンサ出力を示す図である。
ここでは、搬送ベルト5は、図6Aに示すように、用紙30の両縁部31の全体に沿って列状に配置された複数の開口20’と、各開口20’に対応して設けられた複数の標識21’とを有する。開口20’は、副走査方向Fの長さが比較的に短い矩形状に形成された角孔からなり、副走査方向Fに所定間隔を開けて搬送ベルト5の全体に亘り配置されている。また、一対の開口20’は、搬送ベルト5の副走査方向Fに沿って等間隔に形成され、搬送ベルト5に複数対設けられる。開口20’は、サイズと数、及び、用紙30の配置態様以外は、上記した開口20と同様に構成されている。
【0042】
標識21’は、上記した標識21と同様に構成され、例えば、1cm×1cm程度の大きさの矩形状に形成されている。ただし、この標識21’は、複数対の開口20’の各位置に合わせて、搬送ベルト5の一方の側部に等間隔で複数取り付けられる。画像形成装置1は、CPU14により制御して、検出センサ8が検出した標識21’に合わせて用紙30を搬送ベルト5に配置し、用紙30の先端の両縁部31を、それぞれ開口20’内に配置する。その際、複数の標識21’を検出センサ8で順次検出して、各標識21’の位置を把握しておくことで、いずれの標識21’に対しても位置を合わせて用紙30を配置できる。これにより、搬送ベルト5への用紙30の配置と用紙30の搬送、及び、用紙30への画像形成をより早期に開始でき、用紙30の搬送開始までの時間と、画像形成の待ち時間を一層短縮できる。
【0043】
この搬送ベルト5では、複数の開口20’が用紙30の縁部31に沿って等間隔に配置される。開口20’のある部分で検出センサ8による検出を実行すると、図6Bに示すように、上記(図5B参照)と同様にセンサ出力が変化するため、開口20’に対応する最低値の間の範囲で、搬送ベルト5上の用紙30が判別される。一方、副走査方向Fの開口20’間の搬送ベルト5に汚れQが付着すると、その部分を検出センサ8で検出したときに、汚れQを用紙30と判定して、用紙30の誤検出が生じる虞がある。
【0044】
これに対し、検出センサ8が標識21’を検出したときだけ、検出センサ8による用紙30や開口20’の検出を実行させることで、用紙30の誤検出や検出精度の低下を防止できる。この場合には、検出センサ8が標識21’を検出しない間は、前回の標識21’を検出したときの用紙30の判別結果に基づいて、用紙30に画像を印刷する。このようにしても、例えば標識21’を1cm間隔で設置したとして、標識21’間の用紙30の位置が急激に変化することはないため、充分な印刷精度を確保できる。また、用紙30の検出や判別処理の回数が減少するため、印刷速度や印刷効率を向上させることもできる。更に、複数の標識21’及び開口20’を設けることで、副走査方向Fの長さが長い長尺紙等の不定形の用紙30にも対応でき、各用紙30を精度よく検出できる。
【0045】
次に、複数サイズの用紙30(以下、用紙30のサイズを用紙サイズという)を検出できるようにした画像形成装置1について説明する。
図7は、複数サイズの用紙30の検出について説明するための図であり、図7Aは、画像形成装置1の要部平面図、図7Bは、検出センサ8のセンサ出力を示す図である。
ここでは、図7Aに示すように、搬送ベルト5の主走査方向Sに離間させて、複数の開口20を、用紙サイズの数及び各用紙30の縁部31の位置に対応させて設け、複数の用紙サイズの用紙30を搬送して画像を形成する。
【0046】
例えば、A4サイズの用紙30(A4用紙30Aという)とハガキサイズの用紙30(ハガキ用紙30Bという)(図7Aでは、ハガキ用紙30Bのみ示す)を搬送するときには、A4用紙30A用の開口20(A4用開口20Aという)と、ハガキ用紙30B用の開口20(ハガキ用開口20Bという)とからなる、4つの開口20A、20Bを搬送ベルト5に形成する。これら開口20A、20Bは、上記した開口20と同様に構成され、一方のA4用開口20Aは、A4用紙30Aの縁部31(図示せず)が配置される。これに対し、他方のハガキ用開口20Bは、A4用開口20Aの内側に形成されて、ハガキ用紙30Bの縁部31Bが配置される。搬送ベルト5によりA4用紙30Aを搬送するときには、ハガキ用開口20BはA4用紙30Aに覆われるため、センサ出力は上記(図5B参照)と同様になる。
【0047】
搬送ベルト5によりハガキ用紙30Bを搬送するときには、ハガキ用紙30Bは、搬送ベルト5の中央部の中央領域R2(一対のハガキ用開口20B間の領域)のみに配置される。そのため、搬送ベルト5の両外側の外側領域R1、R3(ハガキ用開口20BとA4用開口20A間の領域)は、搬送ベルト5が露出し、A4用開口20Aは、全体が露出する。また、ハガキ用開口20Bは、一部がハガキ用紙30Bの縁部31Bから露出する。その状態で検出センサ8による検出を実行すると、図7Bに示すように、ハガキ用開口20Bに対応する最低値の間の範囲で、ハガキ用紙30Bに対応してセンサ出力が閾値以上となる。これにより、搬送ベルト5上のハガキ用紙30Bを検出及び判別できる。
【0048】
その際、センサ出力は、ハガキ用紙30Bが配置された中央領域R2だけで高くなるが、外側領域R1、R3に汚れQがあると、汚れQの程度や状態によっては、外側領域R1、R3でも高くなる。そのため、外側領域R1、R3でも用紙30が誤検出される虞がある。これに対しては、上記したように、検出センサ8による用紙30の検出時間を取得して、検出時間の取得値と基準値を比較し、検出時間の比較結果に基づいて、用紙30の誤検出を判定することで、用紙30の誤検出を回避できる。
【0049】
このように、搬送ベルト5に、搬送する用紙サイズに応じた複数の開口20A、20Bを設けることで、複数サイズの用紙30を精度よく検出して、各用紙30の位置やサイズ等を正確に判別できる。その結果、各用紙サイズの用紙30に、画像を精度よく形成できるため、複数サイズの用紙に画像を形成する画像形成装置1でも、高い画像品質を確保できる。
【0050】
なお、ここでは、搬送ベルト5に、用紙30の縁部31の全体が配置されるスリット状の開口20A、20Bを形成し、それらに共通する1つの標識21を、搬送ベルト5の一方の側部に設けている。これに対し、開口20A、20Bは、上記した開口20’(図6参照)と同様に、用紙30の縁部31に沿って複数配置される比較的短い開口から構成してもよい。このようにするときには、開口に合わせて複数の標識21’を搬送ベルト5に設ける。
【0051】
以上、各実施形態の画像形成装置1について説明したが、本発明は、この画像形成装置1の制御方法、画像形成装置1による画像形成方法、又は、画像形成装置1による用紙30の検出方法や判別方法としても実現できる。また、本発明は、画像形成装置1の上記した各方法の工程を、コンピュータで実行させるためのプログラムであり、画像形成装置1に適用可能なプログラムとして実現することもできる。更に、このプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、又はMO等、任意のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・画像形成装置、2・・・プリントヘッド、3・・・キャリッジ、4・・・ガイドシャフト、5・・・搬送ベルト、5A・・・中央線、6・・・駆動ローラ、7・・・従動ローラ、8・・・検出センサ、11・・・ヘッド駆動部、12・・・キャリッジ駆動部、13・・・ローラ駆動部、14・・・CPU、20、20’・・・開口、21、21’・・・標識、30・・・用紙、31・・・縁部、F・・・副走査方向、S・・・主走査方向。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】特開2006−248719号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に画像を形成するプリントヘッドと、プリントヘッドを搭載して用紙の主走査方向に移動するキャリッジと、用紙を副走査方向に搬送する搬送ベルトとを備え、キャリッジとともに移動するプリントヘッドにより搬送ベルトが搬送する用紙に画像を形成する画像形成装置であって、
搬送ベルトに形成され、搬送する用紙の副走査方向に沿った両縁部から露出する位置に配置された開口と、
キャリッジとともに移動して、開口と用紙を検出する検出センサと、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載された画像形成装置において、
検出センサによる用紙の検出時間を取得する手段と、検出時間の取得値と基準値とを比較する手段と、検出時間の比較結果に基づいて、用紙の誤検出を判定する手段とを有する画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された画像形成装置において、
搬送ベルトに設けられて、搬送ベルトに配置する用紙の基準位置を示す標識と、
標識を検出する標識検出手段と、
標識検出手段が検出した標識に合わせて、用紙を搬送ベルトに配置する手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された画像形成装置において、
搬送ベルトが、用紙の副走査方向に沿った両縁部の全体に沿って配置された連続した開口を有する画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載された画像形成装置において、
搬送ベルトが、用紙の副走査方向に沿った両縁部の全体に沿って列状に配置された複数の開口を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−56736(P2012−56736A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202928(P2010−202928)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】