説明

画像形成装置

【課題】温度検知手段と検知結果から最適な印刷速度を設定可能で、印刷が終了して温度が上昇していても、すぐに次の印刷を開始することができる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】画像形成装置は、温度検知装置の検出結果と印刷枚数とから印刷モードとそれに対応した印刷枚数を決定する印刷モード決定装置と、該決定された印刷モードにしたがって印刷速度を印刷枚数に応じて可変制御できるプリンタコントローラとを有し、印刷モード決定装置は入力される検知温度と要求される印刷枚数から、予めメモリに格納された印刷モードテーブルを参照して、それぞれの印刷モードの印刷枚数を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の温度と印刷速度を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
連続印刷を実施すると機内の温度が上昇し、安全性や画像品質を確保するために、印刷を休止させたり、印刷速度を落とし温度上昇を低減させたり、Fanを使って強制冷却する技術が既に知られている。
【0003】
特許文献1においては、インクジェット記録ヘッド内の温度上昇により発生するインクリフィル特性の低下に伴う画像劣化を回避し、かつ記録速度の低下を最小限にするインクジェット記録方法及び装置を提供することを目的として、インクジェット記録ヘッドの温度を検出して温度情報を出力する温度検出手段と、前記温度検出手段で検出された温度情報を取得する取得手段と、前記取得手段で取得した前記温度情報と所定温度との比較結果に応じて、前記画像情報が連続しない単位で前記インクジェット記録ヘッドの駆動周波数を切り替えるように制御し、更に記録ヘッドの走査速度を変更する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2においては、機内温度が高温となるのを防ぎ、当該装置の動作や性能に関する品質を維持することを目的として、温度検知手段と機内温度推定手段と許容印刷枚数を変更する許容印刷枚数変更手段を有し、機内が高温になる場合に低速印刷に変更もしくはい印刷を一時停止して冷却する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、今までの印刷を休止させる方法では、印刷速度が著しく低下するという問題があった。
【0006】
印刷途中で印刷速度を落とす方法は、上限温度よりも低い温度にスレッシュ温度を設定し、その温度に到達したら印刷速度を低下させるものであるが、スレッシュ温度の設定のやり方が不明確であり、速度を低下させて印刷を終了しても、その直後に次の印刷を実施しようとするとさらに温度が上昇し上限温度を超えてしまうので、次の印刷を開始するためには温度が低下するまで時間がかかるという問題があった。
【0007】
あるいは、印刷Jobで枚数が比較的少ない場合は上限温度までに余裕があるにも関わらず、印刷速度を速くすることができない、という問題があった。
【0008】
また、Fanを使う場合は設置するための空間が必要となりマシンサイズが大きくなったり、コストが高くなるという問題があった。
【0009】
特許文献1においては、印刷終了直後に次の印刷を実施しようとすると温度が低下するまで時間がかかるという問題は解消できていない。
【0010】
特許文献2においては、印刷制御(一次停止、速度低減)は印刷枚数が許容印刷枚数に達したとき、すなわち機内の温度が許容温度に達した後に実施されるので、実際には一次停止させて冷却時間が必要である。また、印刷Jobの枚数が比較的少ない場合は許容温度までに余裕があるにも関わらず、印刷速度を速くすることができない。したがって印刷Jobで枚数が比較的少ない場合は印刷速度を速くすることができないという問題は解消できていない。
【0011】
本発明は、温度検知手段と検知結果から最適な印刷速度を設定することができ、印刷が終了して温度が上昇していても、すぐに次の印刷を開始することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、温度検知装置と、該温度検知装置の検出結果と印刷枚数とから印刷モードとそれに対応した印刷枚数を決定する印刷モード決定装置と、該決定された印刷モードにしたがって印刷速度を印刷枚数に応じて可変制御できるプリンタコントローラとを有する画像形成装置であって、印刷モード決定装置は入力される検知温度と要求される印刷枚数から、予めメモリに格納された印刷モードテーブルを参照して、それぞれの印刷モードの印刷枚数を決定することを特徴とする画像形成装置である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置において、インクジェットヘッドを有し、プリンタコントローラは主走査モータまたは副走査モータを可変制御することを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の画像形成装置において、温度検知装置は、機内温度分布の高いところを検出するように設置されることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項2記載の画像形成装置において、温度検知装置はキャリッジ内のヘッドもしくはインクチューブまたはインクタンクの近傍に設置されることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、温度検知装置は複数個所に設置され、印刷モードテーブルはそれぞれの設置箇所の上限温度と設置箇所に対応した各印刷モードの温度上昇−印刷枚数の特性値と飽和温度を格納し、印刷モード決定手段は複数の検出結果と検出箇所に対応した上限温度から温度上昇の許容度が最も小さい検出箇所を求め、印刷モードテーブルを参照して各印刷モードの印刷枚数を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、温度検知手段と検知結果から最適な印刷速度を設定することができ、印刷が終了して温度が上昇していても、すぐに次の印刷を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の機構部の全体構成を説明する側面概略構成図である。
【図2】インクジェット記録装置の要部平面説明図である。
【図3】インクジェット記録装置の制御部の全体ブロック図である。
【図4】インクジェット記録装置のヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図である。
【図5】インクジェット記録装置のヘッドの液室短手方向に沿う断面説明図である。
【図6】インクジェット記録装置のヘッドの要部平面説明図である。
【図7】ヘッド駆動制御装置に係わる部分を表した図である。
【図8】駆動波形の一例を示す図である。
【図9】印刷枚数と時間を示したグラフである。
【図10】印刷モード(印刷スピード)に対応した機内の温度上昇の特性を示す図である。
【図11】印刷モード決定手段のブロック図である。
【図12】本発明のフロー図である。
【図13】本発明のフロー図である。
【図14】温度と印刷枚数の関係を示す図である。
【図15】温度と印刷枚数の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は、機内の温度上昇と印刷モード(印刷速度)の切り替えタイミングの制御に際して、以下の特徴を有する。
すなわち、印刷モード決定装置から決定される印刷モードによって主走査/副走査速度を可変制御するインクジェット記録装置であって、印刷モード決定装置は入力される検知温度と印刷枚数から、到達温度を算出する。複数の印刷モードの温度上昇とその飽和温度と設定された検出部の上限温度から、それぞれの印刷モードにおける印刷枚数を決定する。
そして決定された印刷モードに応じて、主走査/副走査速度を可変制御する。
要するに、機内の検知温度と印刷モード(印刷速度)の温度上昇と印刷枚数から、到達温度を算出し、算出結果が上限温度を超える場合は他の印刷モードによる温度上昇の飽和温度と検知箇所の上限温度から途中で印刷モードを切り替えるタイミングを算出するので、印刷終了直後に次の印刷が開始されても、その後の温度上昇は飽和し、上限温度を超えないことが特徴になっている。
また、印刷枚数が少ない場合や低温環境時は、上限温度と印刷開始前の検知温度の差(許容できる温度上昇)が大きいことを算出するので、印刷速度の速い印刷モードで印刷を実施し、印刷時間を短縮できることが特徴になっている。
上記記載の本発明の特徴について、以下、図面を用いて詳細に解説する。
【0020】
図1は、このインクジェット記録装置の機構部の全体構成を説明する側面概略構成図、図2は、同要部平面説明図である。
図1、図2を参照して、本実施の形態のインクジェット記録装置の内部構成の概要及び機構部について説明する。
【0021】
図1、図2を参照すると、フレーム21を構成する左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材であるガイドロッド31とステー32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによって同じく図示しないタイミングベルトを介して図2で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0022】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド34を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0023】
記録ヘッド34を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0024】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34に各色のインクを供給するための各色のサブタンク35を搭載している。この各色のサブタンク35には各色のインク供給チューブ36を介して、前述したように、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填4にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための供給ポンプユニットが設けられ、また、インク供給チューブ36は這い回しの途中でフレーム21を構成する後板21Cに係止部材25にて保持されている。
【0025】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び該給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0026】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0027】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。この搬送ベルト51は、例えば、抵抗制御を行っていない純粋な厚さ40μm程度の樹脂材、例えば、ETFEピュア材で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。
【0028】
そして、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に所定の押圧力をかけている。なお、搬送ローラ52はアースローラの役目も担っており、搬送ベルト51の中抵抗層(裏層)と接触配置され接地している。
【0029】
また、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド34による印写領域に対応してガイド部材57を配置している。このガイド部材57は、上面が搬送ベルト51を支持する2つのローラ(搬送ローラ52とテンションローラ53)の接線よりも記録ヘッド34側に突出させることで搬送ベルト51の高精度な平面性を維持するようにしている。
【0030】
この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによって搬送ローラ52が回転駆動されることによって搬送ベルト51が図2のベルト搬送方向(副走査方向)に周回移動する。
【0031】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロ63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。ここで、排紙ローラ62と排紙コロ63との間から排紙トレイ3までの高さは排紙トレイ3にストックできる量を多くするためにある程度高くしている。
【0032】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0033】
さらに、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という)82a〜82d(区別しないときは「キャップ82」という)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84などを備えている。ここでは、キャップ82aを吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ82b〜82dは保湿用キャップとしている。
【0034】
そして、この維持回復機構81による維持回復動作で生じる記録液の廃液、キャップ82に排出されたインク、あるいはワイパーブレード83に付着してワイパークリーナで除去されたインク、空吐出受け84に空吐出されたインクは図示しない廃液タンクに排出されて収容される。
【0035】
また、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口89などを備えている。
【0036】
さらに、装置本体1の内部後方側にはホストとの間でデータを送受するためのUSBなどの通信回路部(インターフェース)が設けられるとともに、この画像形成装置全体の制御を司る制御部を構成する制御回路基板が設けられている。
【0037】
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド47で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0038】
このとき、図示しない制御回路によってACバイアス供給部から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0039】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0040】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ33は維持回復機構81側に移動されて、キャップ82で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ82で記録ヘッド34をキャッピングした状態で図示しない吸引ポンプによってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
【0041】
図3は、インクジェット記録装置の制御部の全体ブロック図である。
この制御部は、プリンタコントローラと主走査モータおよび副走査モータを駆動するためのモータドライバと給紙ローラに副走査の回転を伝達するための給紙クラッチを駆動するためのドライバと、記録ヘッド(インクジェットヘッド)を駆動するためのヘッドドライバ(ヘッド駆動回路、ドライバICで構成)等を備えている。
【0042】
プリンタコントローラはパーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなのでの撮像装置などのホスト側からの印刷データ等をケーブルあるいはネットを介して受信するインターフェース(以下「I/F」という)と、CPU等からなる主制御部と、各種データの記録等を行うRAMと各種データ処理のためのルーチン等を記憶したROMと記録ヘッドへの駆動波形を発生させる駆動信号発生回路と、ドットパターンデータ(ビットマップデータ)に展開された印字データ及び駆動波形等をヘッドドライバに送信するためのI/F、モータ駆動データをモータドライバに送信し、クラッチオン信号をドライバに送信するためのI/F等を備えている。
【0043】
RAMは各種バッファ及びワークメモリ等として用いる。ROMは主制御部によって実行する各種制御ルーチンとフォントデータ及びグラフィック関数、各種手続き等を記憶している。
【0044】
主制御部は用紙検出センサからの検出信号に基づいて給紙制御を行う。また、主制御部はエンコーダの出力信号に基づいてキャリッジの主走査方向の位置を検出してキャリッジの停止位置制御を行い、用紙センサの検知信号に基づいて用紙の先端位置検知及び搬送ベルト上での用紙の有無の検出を行う。
【0045】
この主制御部はI/Fに含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、この解析結果(中間コードデータ)をRAMの所定のエリアに記憶し、記憶した解析結果からROMに格納したフォントデータを用いて画像出力するためのドットパターンデータを生成し、RAMの異なる所定のエリアに再び記憶する。なお、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開してこの記録装置に転送する場合には、単にRAMに受信したビットマップの画像データを格納する。
【0046】
そして、主制御部は、記録ヘッドの1行分に相当するドットパターンデータが得られると、この1行分のドットパターンデータを、発信回路からのクロック信号に同期してI/Fを介してヘッドドライバにシリアルデータで送出し、また所定のタイミングでラッチ信号をヘッドドライバに送出する。
【0047】
本発明では全インク吐出口を同時に駆動させる以外に、時間的に分割して駆動させることができる。全インク吐出口を同時に駆動させると、各全インク吐出口間のクロストークの影響による記録品位の低下や、一時的に大電流が必要になることにより電源の大容量化などの不利益が生じる場合があるが、時分割駆動することでこれらの不利益を避けることができる。
【0048】
この記録ヘッド34にはドライバICを搭載し、図示しない制御部との間でハーネス(フレキシブルプリントケーブル)22を介して接続している。
【0049】
このインクジェット記録装置の記録ヘッドを構成するインクジェットヘッドについて図4乃至図6を参照して説明する。なお、図4は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図、図5は同ヘッドの液室短手方向に沿う断面説明図、図6は同ヘッドの要部平面説明図である。
【0050】
このインクジェットヘッドは、単結晶シリコン基板で形成した流路板41と、この流路板41の下面に接合した振動板42と、流路板41の上面に接合したノズル板43とを有し、これらによって液滴であるインク滴を吐出するノズル45がノズル連通路45aを介して連通するインク流路である加圧室46、加圧室46にインクを供給するための共通液室48にインク供給口49を介して連通する流体抵抗部となるインク供給路47を形成している。
【0051】
そして、振動板42の外面側(液室と反対面側)に各加圧室46に対応して加圧室46内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての積層型圧電素子52を接合し、この圧電素子52をベース基板53に接合している。また、圧電素子52の間には加圧室46、46間の隔壁部41aに対応して支柱部54を設けている。ここでは、圧電素子部材にハーフカットのダイシングによるスリット加工を施すことで櫛歯状に分割して、1つ毎に圧電素子52と支柱部54して形成している。支柱部54も構成は圧電素子51と同じであるが、駆動電圧を印加しないので単なる支柱となる。
【0052】
さらに、振動板42の外周部はフレーム部材44にギャップ材を含む接着剤50にて接合している。このフレーム部材44には、共通液室48となる凹部、この共通液室48に外部からインクを供給するための図示しないインク供給穴を形成している。このフレーム部材44は、例えばエポキシ系樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成している。
【0053】
ここで、流路板41は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路45a、加圧室46、インク供給路47となる凹部や穴部を形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。
【0054】
振動板42は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他の金属板や樹脂板或いは金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。この振動板42は加圧室46に対応する部分に変形を容易にするための薄肉部(ダイアフラム部)55及び圧電素子52と接合するための厚肉部(島状凸部)56を形成するとともに、支柱部54に対応する部分及びフレーム部材44との接合部にも厚肉部57を形成し、平坦面側を流路板41に接着剤接合し、島状凸部56を圧電素子52に接着剤接合し、更に厚肉部57を支柱部54及びフレーム部材44に接着剤50で接合している。なお、ここでは、振動板42を2層構造のニッケル電鋳で形成している。この場合、ダイアフラム部55の厚みは3μm、幅は35μm(片側)としている。
【0055】
ノズル板43は各加圧室46に対応して直径10〜35μmのノズル45を形成し、流路板41に接着剤接合している。このノズル板43としては、ステンレス、ニッケルなどの金属、金属とポリイミド樹脂フィルムなどの樹脂との組み合わせ、シリコン、及びそれらの組み合わせからなるものを用いることができる。ここでは、電鋳工法によるNiメッキ膜等で形成している。また、ノズル43の内部形状(内側形状)は、ホーン形状(略円柱形状又は略円錘台形状でもよい。)に形成し、このノズル45の穴径はインク滴出口側の直径で約20〜35μmとしている。さらに、各列のノズルピッチは150dpiとした。
【0056】
また、ノズル板43のノズル面(吐出方向の表面:吐出面)には、図示しない撥水性の表面処理を施した撥水処理層を設けている。撥水処理層としては、例えば、PTFE−Ni共析メッキやフッ素樹脂の電着塗装、蒸発性のあるフッ素樹脂(例えばフッ化ピッチなど)を蒸着コートしたもの、シリコン系樹脂・フッ素系樹脂の溶剤塗布後の焼き付け等、インク物性に応じて選定した撥水処理膜を設けて、インクの滴形状、飛翔特性を安定化し、高品位の画像品質を得られるようにしている。
【0057】
圧電素子52は、厚さ10〜50μm/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電層61と、厚さ数μm/1層の銀・パラジューム(AgPd)からなる内部電極層62とを交互に積層したものであり、内部電極62を交互に端面の端面電極(外部電極)である個別電極63、共通電極64に電気的に接続したものである。この圧電常数がd33である圧電素子52の伸縮により加圧室46を収縮、膨張させるようになっている。圧電素子52に駆動信号が印加され充電が行われると伸長し、また圧電素子52に充電された電荷が放電すると反対方向に収縮するようになっている。
【0058】
なお、圧電素子部材の一端面の端面電極はハーフカットによるダイシング加工で分割されて個別電極63となり、他端面の端面電極は切り欠き等の加工による制限で分割されずにすべての圧電素子52で導通した共通電極64となる。
【0059】
そして、圧電素子52の個別電極63には駆動信号を与えるために半田接合又はACF(異方導電性膜)接合若しくはワイヤボンディングでFPCケーブル65を接続し、このFPCケーブル65には各圧電素子52に選択的に駆動波形を印加するための駆動回路(ドライバIC)を接続している。また、共通電極64は、圧電素子の端部に電極層を設けて回し込んでFPCケーブル65のグラウンド(GND)電極に接続している。
【0060】
このように構成したインクジェットヘッドにおいては、例えば、記録信号に応じて圧電素子52に駆動波形(10〜50Vのパルス電圧)を印加することによって、圧電素子52に積層方向の変位が生起し、振動板42を介して加圧室46内のインクが加圧されて圧 力が上昇し、ノズル45からインク滴が吐出される。
【0061】
その後、インク滴吐出の終了に伴い、加圧室46内のインク圧力が低減し、インクの流れの慣性と駆動パルスの放電過程によって加圧室46内に負圧が発生してインク充填行程へ移行する。このとき、図示しないインクタンクから供給されたインクは共通液室48に流入し、共通液室47からインク供給口49を経て流体抵抗部47を通り、加圧室46内に充填される。
【0062】
なお、流体抵抗部47は、吐出後の残留圧力振動の減衰に効果が有る反面、表面張力による最充填(リフィル)に対して抵抗になる。流体抵抗部47の流体抵抗値を適宜に選択することで、残留圧力の減衰とリフィル時間のバランスが取れ、次のインク滴吐出動作に移行するまでの時間(駆動周期)を短くできる。
【0063】
ヘッド駆動制御装置に係わる部分について図7を参照して説明する。なお、同図では、本発明の1つのヘッドの1つの駆動ユニットの駆動制御に係る部分のみを図示している。
【0064】
ヘッド駆動回路88は、主制御部から印字制御部おとびI/Fを介して与えられる各種データ及び信号に基づいて、記録ヘッドを構成する各インクジェットヘッドの圧電素子52に対して選択的に駆動波形を印加してインク滴を吐出させる。
【0065】
ここで、記録ヘッドを構成する4個(Y,M,C,K)のインクジェットヘッドHは、上述したように複数(ここでは128個とする。)のノズル45に対応する128個の圧力発生手段である圧電素子52を有し、各圧電素子52の一方の電極は共通化して共通電極Com(上記の共通電極64である。)としてグランドに接続し、他方の電極は圧電素子52毎に個別化して選択電極SEL(上記の個別電極63である。)としている。なお、実際にはノズル45は2列設けているので、256個のノズル45を有することになる。
【0066】
主制御部から印字制御部おとびI/Fを介してパーソナルコンピュータなどの情報処理端末、デジタルカメラ、スキャナなどの画像処理端装置等のホスト側から与えられる画像情報を入力して、ヘッド駆動部88Aに対してヘッドを駆動するタイミングに合わせて、8bitの電圧データを順次、波形生成部であるD/A変換回路(DAC)103に出力する。
【0067】
DAC103は、与えられた電圧データを例えば0V〜2Vの出力範囲を8bitの分解能で出力する。8bitのデータ入力ステップが250nsの場合、駆動波形(駆動信号)の立ち上がり時定数tr=5μs、駆動電圧Vp=30V(フルスケール)のとき、DAC103の出力は20ステップの時間刻みで、約0.1V/ステップで0〜2Vまで上昇する。
【0068】
また、駆動波形の立下り時も同様に、立下り時定数tf=10μsであれば40ステップで5〜3Vまで下降する。さらに、駆動波形に要する時間(立ち上がり開始から、立下り終了までの時間)が50μsとすると、200ステップでフルスケール5Vの駆動波形が形成され、ヘッドの駆動タイミングに合わせて繰り返し出力される。
【0069】
このDAC103から出力される駆動波形はアンプ104を介して3〜30V(フルスケール時)の範囲でDAC出力レベルに応じて電圧増幅される。電圧増幅された駆動波形は、SEPP回路(NPNトランジスタQ1及びPNPトランジスタQ2)等で構成される低インピーダンス回路からなる電流増幅部105を介して、選択回路であるPZT選択回路106へ与えられる。
【0070】
一方、主制御部は、インク滴を噴射させるノズル45を指定するためのシリアルデータSD(ノズルデータ)とシフトクロックSCLK、ラッチ信号/LATをPZT選択回路106へ入力する。
【0071】
PZT選択回路106は、シフトクロックSCLK、およびノズルデータSDを入力とするシフトレジスタ回路(256bit)と、シフトレジスタ回路の各レジスト値をラッチ信号/LATによってラッチするためのラッチ回路(256bit)と、256ビットのレベルシフタ回路と、レベルシフタ回路でオン/オフが制御されるアナログスイッチ群とからなる。
【0072】
アナログスイッチ群は、各圧電素子52の選択電極63に接続され、駆動波形が入力されている。そしてシフトレジスタ回路にシフトクロックSCLK、ノズルデータSDを取りこみ、ラッチ信号/LATによって取りこんだシリアルデータをラッチ回路でラッチしてレベルシフタ回路に入力する。このレベルシフタ回路は、データの内容に応じて各圧電素子52に接続されるアナログスイッチをオンすることで、駆動波形が選択された圧電素子52に印加される。
【0073】
ここで、駆動波形の一例を図8に示している。本実施形態におけるヘッドの駆動方式においては、駆動波形の立下り波形要素(a→b)の時間に圧電素子52はヘッド基板(ベース基板)53方向に収縮変位するので、加圧液室46内の容積は拡大し、加圧液室46は減圧される。そして、上記拡大された加圧液室46は駆動波形のホールド波形要素(b→c)時間の間、保持された後、立ち上がり波形要素(c→d)の時間に圧電素子52がノズル板43方向に拡大変位するので、加圧液室46は縮小し、発生される加圧圧力でノズル45からインク滴が噴射される。
【0074】
以下、本発明の実施例を説明する。
図9は、印刷枚数と時間を示したグラフであり、グラフの傾きが急峻なほど印刷スピードが速い。
【0075】
印刷モードは所定の主走査の速度(キャリッジの走査スピード)と副走査の速度(紙搬送速度)を制御するための主走査モータと副走査モータの回転速度を維持する。
【0076】
また図10に印刷モード(印刷スピード)に対応した機内の温度上昇の特性を示す。
通常の印刷モードsでは時間とともに機内の温度は上昇するが、やがて飽和状態に達する。このときの温度をΔTmax_sとする。一般的には、連続印刷を機内の温度が飽和するまで繰り返し実施し、マシンの設置環境温度をTo、安全性や画像品質を確保するための機内上限温度をTlimitとすると、
【0077】
To + ΔTmax_s ≦ Tlimit
【0078】
が成り立つように、印刷スピードが設定されている。
【0079】
しかし、このような設定方法では印刷枚数が比較的少なく、機内の温度上昇も小さい場合は、温度上昇に余裕があり、印刷速度を上げられるにも関わらず、多数枚の印刷を想定した印刷スピードに抑えられてしまう。
【0080】
このような問題を解決するために本発明では印刷枚数が少ないときは印刷スピードを速く、印刷枚数が多いときは、印刷途中から印刷スピードを遅くする手段を提供する。
【0081】
図9において通常の印刷スピード(印刷モードs)より速い印刷モードaと通常の印刷スピードより遅い印刷モードbを設定する。このときの温度上昇は図10に示すようになり、温度上昇の飽和温度はそれぞれΔTmax_s、ΔTmax_a、ΔTmax_bとすると、
【0082】
ΔTmax_a > ΔTmax_s > ΔTmax_b の順になる。
【0083】
本発明では上記の各印刷モードa,bの温度上昇特性値(温度-印刷枚数データ)と温度上昇飽和温度
【0084】
ΔTmax_a、ΔTmax_bを参照テーブルとしてメモリに格納しておく。
【0085】
また、温度管理が必要な対象となる箇所、例えば機内温度を検知するための温度検知手段(サーミスタなど)と上記メモリに格納された参照テーブル(印字モードテーブル)から、印刷モードaの印刷枚数と印刷モードbの印刷枚数を算出する印刷モード決定手段を有する。
【0086】
図11に印刷モード決定手段のブロック図を示す。
印刷モード決定手段には、印刷を開始する前に検知対象となる箇所で温度を検出した検出温度Tsと印刷を実施する枚数nが入力され、メモリに格納された印刷モードテーブルで参照したデータから、印刷モードaの印刷枚数mと印刷モードbの印刷枚数(n-m)を出力する。
【0087】
本発明では、上記の印刷モード決定手段で出力された印刷枚数で各印刷モードにおける主走査/副走査のスピードが設定され、所定の印刷枚数を実施する。
【0088】
(実施例1)
次に具体的な実施例を図12、図13のフローチャートに基づいて説明する。
プリンタがPCからホストI/Fを介してn枚の印刷jobを受信した(S1201)ときを想定する。
【0089】
このとき、予めプリンタ本体内部に設置されている温度検知装置(サーミスタ)から、温度を読み取り、このときの温度をTsとする(S1202)。
【0090】
プリンタコントローラは、図11に示す印刷モード決定手段を有し、印刷モードテーブルから最も印刷速度の速い印刷モードaの温度上昇テーブルを参照して(S1203)、n枚印刷したときの温度上昇度ΔT_a(n)を算出する(S1204)。
【0091】
次に、上記で検知したTsとΔT_a(n)から、温度検知装置がn枚の印刷が終了した直後に到達する温度Te_a(n)を(式1)から求める(S1205)。
【0092】
Te_a(n) = Ts + ΔT_a(n) ・・・ 式1
【0093】
ここで、予め設定されている上限温度TLmtと上記(式1)で求めたTe_a(n)を比較し(S1206)、図14に示すように
【0094】
Tlmit ≧Te_a(n) ・・・ 式2
【0095】
が成り立つ場合は、印刷モード決定手段は印刷モードaを決定する(S1207)。
【0096】
印刷モードaが決定されると、プリンタコントローラは主走査モータ、副走査モータを駆動させるためのドライバに所望の速度を設定し、印刷動作を開始し、n枚の印刷が終了するまで印刷動作を継続する(S1208〜S1212)。
【0097】
一方、下記の(式3)の場合を説明する。
【0098】
Tlmit < Te_a(n) ・・・式3
【0099】
図15に示すように、印刷開始時の検出温度Tsが図14の場合より高く
【0100】
Ts < Tlmit < Te_a(n) の関係が成り立っているので、
【0101】
印刷モードaでn枚を印刷するとプリンタ本体内部の温度は途中で上限温度Tlmitを超えてしまう。そこで、印刷モードを途中でaからbに切り替える必要がある。
【0102】
このときの切り替えタイミングは、できるだけ印刷速度の速い印刷モードaで印刷する枚数を多くすることと、途中印刷モードbに切り替えて最終枚まで印刷終了し、その直後に次の印刷jobを受信しても印刷が可能になることが求められる。
【0103】
まず、印刷動作による温度上昇の許容度ΔTkを下記の(式4)から求める(S1213)。
【0104】
ΔTk = Tlmit - Ts ・・・ 式4
【0105】
いま、印刷モードaで印刷する枚数をm枚(n>m)とすると、印刷モード決定手段は印刷モードテーブルに保存されている印刷モードa/bそれぞれのm枚印刷したときの温度上昇ΔTa(m)、ΔTb(m)と印刷モードbで印刷し続けたときの温度上昇の飽和温度ΔTmax_bのデータを参照し、下記の式(5)が成り立つようなmの値を算出する(S1214)。ただし、mはできるだけ大きな数値(整数)とする。
【0106】
ΔTk ≧ ΔTa(m) + (ΔTmax_b-ΔTb(m)) ・・・ 式5
【0107】
このように印刷モード決定手段で算出されたmの値について図15で説明する。
【0108】
1枚目からm枚目までは印刷モードaで印刷されるので、m枚印刷した時点での温度上昇はΔTa(m)である。
【0109】
また、印刷モードbで印刷し続けたときの温度上昇はΔTmax_bであるが、実際には、m+1枚目から印刷モードbによる印刷が実施され、m枚印刷終了までの温度上昇は発生しない。したがって印刷モードbで発生する温度上昇は(ΔTmax_b-ΔTb(m)となる。
【0110】
したがって、印刷モードa、b両者による温度上昇はΔTa(m) + (ΔTmax_b-ΔTb(m))となり、この値が(式4)で求めた温度上昇の許容度ΔTkを超えなければよい。
【0111】
このとき、印刷モード(b)による温度上昇の飽和点がTlimit以下になるようなタイミングで印刷モードをaからbに切り替えるため、印刷モードbでTlimitを超えてしまうことはない。
【0112】
このように、m枚までは印刷モードaで印刷が実施されm+1枚目からは、プリンタコントローラが主走査モータ、副走査モータを駆動させるためのドライバに所望の速度を設定し、印刷動作が開始され、n-m枚の印刷を実施して終了する(S1215〜S1222)。
【0113】
なお、このとき、印刷モードbの温度上昇は飽和するまで考慮されているので、n枚印刷終了直後に次のjobによる印刷が開始されても(S1223〜S1225)、そのまま継続して印刷することができ、このときTlmitを超えることはない。
【0114】
本実施例では印刷ページ単位で、印刷モードの切り替えを実施しているが、必ずしも印刷ページ単位で実施する必要はなく、ページ内の途中で実施してもよい。その場合、印刷モードテーブルは温度-印刷時間の温度上昇特性値データを保有し、印刷時間を管理して印刷モードの切り替えを実施する。
【0115】
また、本発明はインクジェット記録装置に限らず、電子写真方式(レーザープリンタなど)にも容易に適用させることができる。
【0116】
(実施例2)
プリンタ本体内部では、場所によって温度上昇にバラツキがあるが、とくに発熱の大きい主走査モータもしくは副走査モータの近傍に温度検知装置(サーミスタ)を設置し、主走査モータもしくは副走査モータの使用範囲におけるそれぞれのモータ温度が上限に達するときの検知温度を上限温度Tlmitとする。
【0117】
こうすることで、モータの温度上昇を最大限にするまで、印刷速度を速くできる。
【0118】
(実施例3)
インクジェット記録装置の画像品質は、ヘッドの噴射特性(噴射速度、噴射方向、噴射量)とインクの物性(粘度など)に依存するところが大きく、それぞれの特性は温度によって変動する。とくに高温側はインク粘度が低くなり噴射の安定性を損なう結果となる。したがって、キャリッジ内のヘッドもしくはヘッドドライバICまたはインクチューブもしくはインクタンクの近傍に温度検知装置(サーミスタ)を設置し、画像品質が確保できるヘッドもしくはインクの温度が上限に達するときの検知温度を上限温度Tlmitとすれば、ヘッドもしくはインクの温度上昇を最大限にするまで、印刷速度を速くできる。
【0119】
(実施例4)
プリンタ本体内部の主走査モータ近傍と副走査モータ近傍とキャリッジ内のヘッド近傍、インクタンク近傍にそれぞれ温度検知装置(サーミスタ)を設置する。
【0120】
印刷モード決定手段には、印刷を開始する前に検知対象となる上記の4箇所で温度を検出した検出温度Ts1、Ts2,Ts3,Ts4が入力される。またそれぞれの検知箇所の上限温度Tlmit1、Tlmit2、Tlmit3、Tlmit4と検知箇所に対応した各印刷モードの温度上昇-印刷枚数の特性値と飽和温度が印刷モードテーブルに格納されている。
【0121】
次に、(式4)によって各温度検知装置の設置箇所のΔTkを求める。
【0122】
ΔTk1 = Tlmit1 - Ts1、
ΔTk2、ΔTk3、ΔTk4も上記と同様に求める。
【0123】
ここで、ΔTk1〜ΔTk4の中でもっとも小さい値(もっとも温度上昇の許容度が小さい)を1つ選定し、例えば、ΔTk4(インクタンク近傍)が最小である場合は、ΔTk4=ΔTkとし、インクタンク近傍における各印刷モードの温度上昇-印刷枚数の特性値と飽和温度に基づいて、各印刷モードの印刷枚数を(実施例1)と同様に算出する。
【0124】
また、インクジェット方式におけるラインヘッドや電子写真方式におけるLEDプリンタのLEDアレイなどの場合は、ラインヘッドやLEDアレイに複数個の温度検知装置(サーミスタ)を設置し、上記と同様な算出結果に基づいて副走査モータを制御することで、紙搬送速度を最適にすることができる。
【0125】
以下、各請求項ごとの作用効果を記載する。
【0126】
請求項1によれば、温度検知手段と検知結果から最適な印刷速度を設定することができ、印刷が終了して温度が上昇していても、すぐに次の印刷を開始することができる。また、印刷Jobで枚数が比較的少ない場合でも、枚数が多い場合に比べて高速に印刷することができる。また、FANなどの冷却装置を設置する必要がなく、マシンサイズを小さく、低コストで実現させることができる。
【0127】
請求項2によれば、主走査モータを制御して、キャリッジ速度を低減させることができるので、インクの繰り返し噴射周波数を低くすることができる。したがって、機内温度が高温になってインク粘度が低下しても、所望のインク噴射速度と噴射量が確保できるので、高画像品質を確保することができる。また、主走査モータの回転速度と副走査モータの駆動dutyを低くすることができるので、それぞれのモータが消費する電力が低減され発熱量も抑制される。
【0128】
請求項3によれば、プリンタ本体内部の最も温度が高くなる箇所の上限温度を越えない範囲で印刷速度を速くでき、製品の安全性を確保することができる。
【0129】
請求項4によれば、インクジェット記録装置の画像品質は、ヘッドの噴射特性(噴射速度、噴射方向、噴射量)とインクの物性(粘度など)に依存するところが大きいので、印刷速度を速くしても高画像を確保することができる。
【0130】
請求項5によれば、プリンタ本体内部の温度上昇箇所は複数あり、上限温度が低い箇所が必ずしも温度上昇が小さいとは限らないので、温度上昇の許容度が最も小さい設置箇所の各印刷モードの印刷枚数を算出し、その結果にもとずいて印刷速度を制御することで、安全性と画像品質の両方を満足させることができる。
【0131】
なお、上述する各実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更実施が可能である。例えば、インクジェット記録装置の機能を実現するためのプログラムを装置に読込ませて実行することにより装置の機能を実現する処理を行ってもよい。さらに、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であるCD−ROMまたは光磁気ディスクなどを介して、または伝送媒体であるインターネット、電話回線などを介して伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。
【符号の説明】
【0132】
1 装置本体
2 給紙トレイ
3 排紙トレイ
4 カートリッジ装填部
10 インクカートリッジ
21 フレーム
25 係止部材
31 ガイドロッド
32 ステー
33 キャリッジ
34 記録ヘッド
35 サブタンク
36 インク供給チューブ
41 用紙積載部(圧板)
42 用紙
43 半月コロ(給紙コロ)
44 分離パッド
45 ガイド部材
46 カウンタローラ
47 搬送ガイド部材
48 押さえ部材
49 先端加圧コロ
51 搬送ベルト
52 搬送ローラ
53 テンションローラ
56 帯電ローラ
57 ガイド部材
61 分離爪
62 排紙ローラ
63 排紙コロ
71 両面ユニット
72 手差しトレイ
81 維持回復機構
82 各キャップ部材
83 ワイパーブレード
84 空吐出受け
88 空吐出受け
89 開口
【先行技術文献】
【特許文献】
【0133】
【特許文献1】特開2002−036514号公報
【特許文献2】特開2009−031580号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度検知装置と、該温度検知装置の検出結果と印刷枚数とから印刷モードとそれに対応した印刷枚数を決定する印刷モード決定装置と、該決定された印刷モードにしたがって印刷速度を印刷枚数に応じて可変制御できるプリンタコントローラとを有する画像形成装置であって、
前記印刷モード決定装置は入力される検知温度と要求される印刷枚数から、予めメモリに格納された印刷モードテーブルを参照して、それぞれの印刷モードの印刷枚数を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
インクジェットヘッドを有し、前記プリンタコントローラは主走査モータまたは副走査モータを可変制御することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記温度検知装置は、機内温度分布の高いところを検出するように設置されることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記温度検知装置はキャリッジ内のヘッドもしくはインクチューブまたはインクタンクの近傍に設置されることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記温度検知装置は複数個所に設置され、前記印刷モードテーブルはそれぞれの設置箇所の上限温度と設置箇所に対応した各印刷モードの温度上昇−印刷枚数の特性値と飽和温度を格納し、印刷モード決定手段は複数の検出結果と検出箇所に対応した上限温度から温度上昇の許容度が最も小さい検出箇所を求め、前記印刷モードテーブルを参照して各印刷モードの印刷枚数を算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−91417(P2012−91417A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241216(P2010−241216)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】