説明

画像形成装置

【課題】突発的な停電、ユーザによる急な電源スイッチオフ及び本体カバーの開放による定着部材のオーバーシュートを発生させず、定着部材の劣化あるいは破損などのダメージを与えない画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、内部に定着熱源を有する定着部材と、定着部材を押圧する加圧部材と、定着部材の温度検出手段とを備え、定着部材と加圧部材との定着ニップに搬送された記録媒体上の未定着トナー像を記録媒体上に熱定着する定着装置と、主電源装置と、主電源装置により充電される補助電源装置と、主電源装置による給電が遮断されたとき、定着熱源以外の定着装置への給電を補助電源装置による給電に切り替える停電検出切替部と、停電検出切替部により主電源装置による給電から補助電源装置による給電に切り替えられたとき、定着部材を回転する定着部材回転制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着部材の温度上昇を回避するための手段を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、印刷時に用紙に転写されたトナーは定着ローラの熱と圧力によって用紙に定着される。近年、定着可能状態へ移行するまでの昇温時間(ウォームアップ時間)の短縮化や消費電力の低減化の観点から、定着ローラなどの定着部材には薄肉ローラや定着ベルトといった熱容量の小さい媒体が使用されることが多くなってきている。このような熱容量の小さい媒体が定着部材に使用される場合、熱し易く冷め易い特性から温度が変動し易く、定着部材温度の異常昇温すなわちオーバーシュート(以下、単にオーバーシュートという。)が発生する。そこで、熱源(ヒータ)への電源供給をストップした状態のまま定着ローラを回転させることにより、温度上昇を回避する技術が既に知られている。
【0003】
特許文献1には、定着部材に発生するオーバーシュートを、熱源への電源供給をストップした状態のまま定着ローラを回転させることにより回避し、定着部材を適切な温度に制御する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、今までの画像形成装置においては、定着ヒータへの電源供給の際、突発的な停電、ユーザによる急な電源スイッチオフ及び本体カバーの開放により、定着装置やアクチュエータへの電源供給が停止するという不具合が発生していた。その場合、定着部材の熱が外へ逃げずにオーバーシュートが発生するため定着部材に劣化あるいは破損などのダメージを与えるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、突発的な停電、ユーザによる急な電源スイッチオフ及び本体カバーの開放による定着部材のオーバーシュートを発生させず、定着部材の劣化あるいは破損などのダメージを与えない画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、内部に定着熱源を有する定着部材と、定着部材を押圧する加圧部材と、定着部材の温度検出手段とを備え、定着部材と加圧部材との定着ニップに搬送された記録媒体上の未定着トナー像を記録媒体上に熱定着する定着装置と、主電源装置と、主電源装置により充電される補助電源装置と、主電源装置による給電が遮断されたとき、定着熱源以外の定着装置への給電を補助電源装置による給電に切り替える停電検出切替部と、停電検出切替部により主電源装置による給電から補助電源装置による給電に切り替えられたとき、定着部材を回転する定着部材回転制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、突発的な停電、ユーザによる急な電源スイッチオフや本体カバーの開放などによる定着部材やアクチュエータへの電源供給がストップした場合には補助電源から給電し、定着ローラを回転させることで、定着部材の熱を他へ逃がして冷やすので、オーバーシュートを回避し、定着部材の劣化や破損などのダメージを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態の画像形成装置を概説する図である。
【図2】本発明の実施形態の定着装置の構成について概説する図である。
【図3】本発明の実施形態の定着装置の電源構成について説明するブロック図である。
【図4】本発明の実施形態の定着装置の動作状態の遷移および定着ローラの温度について説明する図である。
【図5】本発明の実施形態の画像形成装置に係る定着装置の動作フロー図である。
【図6】図5の説明におけるオーバーシュートの可能性ありか又は回避されたかについて説明する図である。
【図7】図5の動作フロー図においてステップS101の停電検出切替回路における電源供給切替制御フロー図である。
【図8】本発明の実施形態の定着装置の動作に関し、補助電源に切り替えられた直後のオーバーシュート判定および定着ローラ回転制御フロー図である。
【図9】本発明の実施形態の定着装置の動作に関し、オーバーシュート回避のための定着ローラ回転後のオーバーシュート回避判定および定着ローラ停止制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態を説明する。電子写真方式の画像形成装置において、商用電源からの電源供給がストップした際、蓄電池などの補助電源から電源供給を行ない所定の制御を継続する技術がある。本発明は、この技術をとりいれた定着部材のオーバーシュート回避処理に際して以下の特徴を有する。概括的にいえば、定着ヒータへ電源供給されている時に、突発的な停電、ユーザによる急な電源スイッチオフや本体カバーの開放などにより定着部材やアクチュエータの電源供給が即断されると、定着部材やアクチュエータの電源を補助電源に切り換え、定着部材を回転させて熱を逃がし冷やすことにより、オーバーシュートを回避し、定着部材の劣化や破損などのダメージを防止することが特徴になっている。上記記載の本発明の特徴について、以下の図面を用いて詳細に解説する。
【0010】
まず、本発明の実施形態の電子写真方式の複写機やプリンタ等の画像形成装置100について図1を用いて以下概説する。図1に示す画像形成装置100は、装置本体に対して着脱可能に構成された4つのプロセスユニット1Y・1C・1M・1Bkを備えている。各プロセスユニット1Y・1C・1M・1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、シアン、マゼンダ、ブラックの異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成となっている。
【0011】
具体的には、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkは、感光体(潜像担持体)としての感光体ドラム2と、感光体ドラム2の表面を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ3と、感光体ドラム2の表面にトナー(現像剤)を供給する現像手段としての現像装置4と感光体ドラム2の表面をクリーニングするクリーニング手段としてのクリーニングブレード5を備えている。
【0012】
図1において、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの上方には、感光体ドラム2の表面を露光する露光手段(静電潜像形成手段)としての露光装置6が配置されている。一方、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの下方には転写装置7が配設されている。転写装置7は転写体としての無端状ベルトから構成される中間転写ベルト8を有する。中間転写ベルト8は、駆動ローラ9及び従動ローラ10に張架され、図の矢印Aの方向に回転(周回走行)可能に構成されている。
【0013】
4つの感光体ドラム2に対向した位置に、一次転写手段として4つの一次転写ローラ11が配置されている。各一次転写ローラ11が配置されたそれぞれの位置で中間転写ベルト8の内周面が押圧されており、中間転写ベルト8の押圧された部分と各感光体ドラム2とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。また、駆動ローラ9に対向した位置に、二次転写手段としての二次転写ローラ12が配置されている。この二次転写ローラ12により中間転写ベルト8の外周面が押圧されており、二次転写ローラ12と中間転写ベルト8とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。また、図の右端側に示す中間転写ベルト8の外周面には、中間転写ベルト8の表面をクリーニングするベルトクリーニング装置13が配置されている。このベルトクリーニング装置13から伸びた図示しない廃トナー移送ホースは、転写装置7の下方に配置された廃トナー収容器14の入り口部に接続されている。
【0014】
画像形成装置100の下部には、記録媒体としての記録用紙Pを収容するための用紙トレイ15や用紙トレイ15から記録用紙Pを搬出するための給紙ローラ16等が設けられる。一方、画像形成装置100の上部には、記録用紙Pを外部に排出するための一対の排紙ローラ17と排出された記録用紙Pをストックするための排紙トレイ18とが配置されている。また、画像形成装置100内には、下部の用紙トレイ15から上部の排紙トレイ18へ記録用紙Pを案内するための搬送経路Rが形成されている。この搬送経路Rにおいて給紙ローラ16から二次転写ローラ12に至る途中には、一対のレジストローラ19が配設され、二次転写ローラ12から排紙ローラ17に至る途中に、記録用紙上の画像を定着させるための定着装置20が配設されている。
【0015】
定着装置20は、定着熱源によって加熱される定着部材としての定着ローラ21と、その定着ローラ21に接触して定着ニップを形成する対向部材としての加圧ローラ22と、定着ローラ21から記録用紙Pを分離させる分離部材23等を有する。本実施形態では、定着ローラ21と加圧ローラ22が図示しない加圧手段によって互いに圧接されることにより、圧接箇所において定着ニップが形成されているが、この構成に限定されるものではない。例えば、定着部材と対向部材の少なくとも一方を無端状ベルトとし、そのベルトをローラ又はパッド等によって相手側に圧接させる構成としてもよい。また、定着部材と対向部材は、互いに圧接する場合に限らず、加圧を行わず単に接触させるだけの構成とすることも可能である。
【0016】
以下、図1を参照して画像形成装置100の基本動作について説明する。作像動作が開始されると、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの感光体ドラム2が図示しない駆動装置によって時計回り(図の矢印方向)に回転駆動され、各感光体ドラム2の表面が帯電ローラ3によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された感光体ドラム2の表面には露光装置6からレーザー光がそれぞれ照射されて、それぞれの感光体ドラム2の表面には静電潜像が形成される。このとき、各感光体ドラム2に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンダ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体ドラム2上に形成された静電潜像に、各現像装置4によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー像(現像剤像)として可視像化される。
【0017】
駆動ローラ9が図の反時計回りに回転駆動されることにより、中間転写ベルト8が図の矢印Aで示す方向に走行駆動される。また、各一次転写ローラ11に、トナーの帯電極性と逆特性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、各一次転写ローラ11と各感光体ドラム2との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの感光体ドラム2に形成された各色のトナー像Tが、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト8はその表面にフルカラーのトナー像Tを担持する。
【0018】
また、上記トナー画像が転写された後の各感光体ドラム2の表面に付着する残留トナーは、クリーニングブレード5によって除去され、次いで、その表面が図示していない徐電装置によって徐電作用を受け、その表面電位が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0019】
また、作像動作が開始されると、画像形成装置100の下部では、給紙ローラ16が回転駆動することによって、用紙トレイ15に収容された記録用紙Pが搬送経路Rに送り出される。搬送経路Rに送り出された記録用紙Pは、レジストローラ19によってタイミングを計られて、二次転写ローラ12とそれに対向する駆動ローラ9との間の二次転写ニップに送られる。このとき二次転写ローラ12に、中間転写ベルト8上のトナー像Tのトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって中間転写ベルト8上のトナー像Tが記録用紙P上に一括して転写される。トナー像Tが転写された記録用紙Pは定着装置20へと搬送され、定着ローラ21と加圧ローラ22によって記録用紙Pが加熱及び加圧されてトナー画像が定着される。トナー像Tが定着された記録用紙Pは、分離部材23によって定着ローラ21から分離され、排出ローラ17によって排紙トレイ18へと排出される。また、転写後の中間転写ベルト8上に残留するトナーは、ベルトクリーニング装置13によって除去され、除去されたトナーは廃トナー収容器14へ搬送され回収される。
【0020】
以上の説明は、記録用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つの各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0021】
次に、本発明の実施形態の定着装置20の構成について、図2を用いて以下概説する。 図2に示す定着装置20は、互いに接触して定着ニップNを形成する定着ローラ21と加圧ローラ22を有する。定着ローラ21の内部には、定着ローラ21を加熱する定着熱源24が配設されており、この定着熱源24で定着ローラが過熱されるようになっている。また、定着ローラ21は図の矢印Lの方向に、加圧ローラ22は図の矢印Fの方向にそれぞれ回転可能に構成されている。
【0022】
定着ローラ21は熱伝導性基体の周囲に弾性層が形成され、さらに被覆層で被覆された円筒状部材である。熱伝導性基体として、所要の機械的強度を有し熱伝導性の良好な炭素鋼材やアルミニウム材が主として用いられる。また、弾性層は、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴムで形成される。さらに弾性層の外側(外周面)の被覆層は、トナーとの離型性を良好とすると共に弾性層の耐久性を高めるためのもので、熱伝導率が高く耐久性に富む材料で形成される。例えば、フッ素樹脂(PFA)チューブで被覆したものやフッ素樹脂(PFA又はPTFE)塗料を塗布したもの、あるいはシリコーンゴム層やフッ素ゴム層を形成したもの等が被覆層として用いられる。
【0023】
加圧ローラ22は、芯金、その芯金の外側(外周)に形成された弾性層及び弾性層を被覆する被覆層からなる円筒状部材である。例えば、芯金としてSTKM等が用いられ、弾性層としてシリコーンゴム若しくはフッ素ゴム又はこれらの発泡体が用いられる。被覆層は、例えば離型性に富むPFA・PTFA等の耐熱性フッ素樹脂のチューブで形成される。
【0024】
なお、本実施形態では、定着熱源24としてハロゲンヒータやカーボンヒータなどの加熱ヒータを使用するが、これに限らず電磁誘導を利用して発熱する熱源を用いるようにしてもよい。また、本実施形態では、定着ローラ21に温度検知手段として定着ローラ21の温度を検知する温度検出装置25を近接して備え、この温度検出装置25により定着ローラ21の温度を検知する。予め指定された目標制御温度と、温度検出装置25により検知された定着ローラ21の温度との間の温度偏差の情報を基に図示しない制御コントローラが定着熱源24への印加電力とを制御する。定着熱源24により定着ローラ21が加熱され、この定着ローラ21は、これと加圧ローラ22との間の定着ニップNを通過する記録用紙Pの画像面に接触する。その画像面のトナー像Tが定着ローラ21からの熱によって溶融されることにより記録用紙Pに定着される。
【0025】
本発明の実施形態の定着装置20の電源構成について、図3を用いて以下説明する。商用電源30(主電源装置)からメインスイッチ31がオンの状態でかつインターロックスイッチ32がオフの(例えば本体カバーが閉の)状態のときは、定着熱源制御部33を介して定着熱源24に商用電源30から電力が供給される。さらに停電検出切替回路35で商用電源30からの電源供給が有りと判断され商用電源30からの電源供給に切り替えられ、装置本体制御部36を介して定着ローラなどを作動させる装置本体駆動部37と温度検出装置25に商用電源30から電源が供給される。
【0026】
商用電源30からの電源供給が遮断された場合(停電やユーザによるコンセントからの電源コードが抜かれた場合など)、ユーザによりメインスイッチ31がオフにされた場合又は本体カバーが開けられてインターロックスイッチ32がオンされた場合は、定着熱源制御部33と定着熱源24への商用電源30からの電源供給がストップされる。さらに停電検出切替回路35により商用電源30からの電源供給が無いと判断され補助電源34からの電源供給に切り替えられ、定着部材回転制御部としての機能を備える装置本体制御部36を介して定着ローラ21などを動作させる装置本体駆動部37と温度検出装置25に補助電源34から電源が供給される。これにより、予想外のタイミング(停電やユーザによるコンセントからの電源コードが抜かれた場合など)によって定着装置20への電源供給が遮断された場合であっても、定着ローラ21を回転させることができる。
【0027】
本発明に係る定着装置20の動作状態の遷移および定着ローラ21の温度について図4を用いて以下説明する。本図は、一般的な使用方法において遷移する定着装置20の動作状態の遷移の様子を、定着ローラ21の温度の遷移とともに示すタイミングチャートである。立ち上げ状態では、定着ローラ21及び加圧ローラ22を回転させた状態で温度を上昇させ、印刷可能状態とする。この時点でユーザからの印刷要求が無い場合は、待機状態として定着ローラ21及び加圧ローラ22の回転を停止させる。この待機状態は、印刷要求がきた場合に即座に印刷動作へ移れるように定着ローラ21の温度が一定温度に保たれる状態である。ユーザから印刷要求があった場合、定着ローラ21及び加圧ローラ22の回転をスタートさせて印刷動作を行ない、印刷終了後に定着ローラ21及び加圧ローラ22の回転を停止し再び待機状態へ移行する。また、図4中の矢印Sは、商用電源30からの電源供給が遮断された場合にオーバーシュートするタイミングを示す。
【0028】
本発明の実施形態の画像形成装置100に係る定着装置20の動作について図5を用いて以下説明する。停電検出切替回路35により停電またはメインスイッチ31がオフ若しくはインターロックスイッチ32がオン(本体カバー開放)を検出したか判定する(ステップS101)。検出しない場合(ステップS101、No)は、本制御は終了する(ステップS101→END)。検出した場合(ステップS101、Yes)は、停電検出切替回路35により、装置本体制御部36などへの電源供給を補助電源34に切り替える(ステップS101→ステップS102)。次に、温度検出装置25により定着ローラ温度と温度遷移からオーバーシュートが発生する可能性があるかどうか判定する(ステップS103)。オーバーシュート発生の可能性無しの場合(ステップS103、No)は、本制御は終了する(ステップS103→END)。オーバーシュート発生の可能性がある場合(ステップS103、Yes)は、装置本体制御部36を介して装置本体駆動部37により定着ローラ21を回転させる(ステップS104)。これにより、オーバーシュートの可能性があると判定された場合に定着部材を冷却するため定着部材を回転させるので、定着部材へのダメージを回避することができる。
【0029】
次に、温度検出装置25により定着ローラ温度と温度遷移からオーバーシュートが回避されたかどうか判定する(ステップS105)。オーバーシュートが回避されていない場合(ステップS105、No)は、回避されるまで定着ローラ21を回転延長(ステップS105→ステップS105)し、回避された場合(ステップS105、Yes)は、装置本体制御部36を介して装置本体駆動部37により定着ローラ21の回転を停止する(ステップS106)。これにより、オーバーシュートの確実な回避処理を図ることができる。
【0030】
上述した定着装置20の動作においてオーバーシュートの可能性ありか又は回避されたかの判断について図6を用いて以下説明する。温度検出装置25により、前回検出した温度から現時点で検出した温度への温度遷移(N点)から導出した温度上昇率(グラフの角度b1、b2)から最高到達温度(a1、a2)を算出し、最高到達温度(a1、a2)が定着部材ダメージ温度(破線)に到達する場合は、オーバーシュートの可能性ありか又はオーバーシュートが回避されていないと判断する。最高到達温度(a1、a2)が定着部材ダメージ温度に到達しない場合は、オーバーシュートの可能性が無いか又はオーバーシュートが回避されたと判断する。これにより、温度上昇カーブを算出しオーバーシュート発生の可能性の有無を適切に判断することができる。
【0031】
上述した定着装置20の動作フローのうち、ステップS101の停電検出切替回路35における電源供給切替制御について図7を用いて以下説明する。まず、停電発生又はユーザにより電源コードが抜かれたかについて判定する(ステップS201)。停電発生又は電源コードが抜かれた場合(ステップS201、Yes)は、停電検出切替回路35により定着熱源以外の定着装置への電源供給を補助電源34から受ける(ステップS205)。停電発生又は電源コードが抜かれていない場合(ステップS201、No)は、ユーザによりメインスイッチ31がオフされたか判定する(ステップS202)。メインスイッチ31がオフされた場合(ステップS202、Yes)は、停電検出切替回路35により定着熱源以外の定着装置への電源供給を補助電源34から受ける(ステップS205)。メインスイッチ31がオフされていない場合(ステップS202、No)は、ユーザにより本体カバーが開放されインターロックスイッチ32がオンされたか判定する(ステップS203)。インターロックスイッチ32がオンされた場合(ステップS203、Yes)は、停電検出切替回路35により定着熱源以外の定着装置への電源供給を補助電源34から受ける(ステップS205)。インターロックスイッチ32がオンされていない場合(ステップS203、No)は、停電検出切替回路35が動作することなく、そのまま商用電源30から電源供給を受ける(ステップS204)。これにより、定着装置は、停電発生等による停電を検出した場合に確実に補助電源からの電源供給を受けることができる。
【0032】
本発明の実施形態の定着装置20の動作に関し、補助電源34に切り替えられた直後の装置本体制御部36によるオーバーシュート判定と定着ローラ回転制御について図8を用いて以下説明する。まず、補助電源切替前の温度と補助電源切替後の温度を数点取得する(ステップS301)。次に、取得した各温度間の遷移(N点)から温度の上昇率および予測される最高到達温度を算出する(ステップS302)(図6参照)。ステップS302において算出した予測される最高到達温度からオーバーシュートの可能性があるか(定着部材にダメージを与える温度まで上昇する可能性があるか)判定する(ステップS303)。オーバーシュートの可能性が無いと判断した場合(ステップS303、No)は、補助電源34からの電源供給を停止し、本制御を終了する(ステップS306)。オーバーシュートの可能性があると判断した場合(ステップS303、Yes)は、温度上昇率・最高到達温度・使用環境(温度、湿度)・使用状態(定着寿命)などの条件により回転時間および回転速度を決定する(ステップS304)(定着部材回転制御部)。次に、ステップS304において決定した回転時間および回転速度により定着ローラ21の回転をスタートする(ステップS305)。
【0033】
上記から、温度上昇率および最高到達温度から導出される定着部材の温度上昇傾向により定着部材の適切な回転時間および回転速度を決定することができる。また、温度・湿度などの使用環境により定着部材の回転時間および回転速度を補正することで、定着部材の適切な回転時間および回転速度を決定することができる。さらに、定着部材の使用状況による定着部材の寿命(定着寿命)から定着部材の回転時間および回転速度を補正し、定着部材の適切な回転時間および回転速度を決定することができる。
【0034】
本発明の実施形態の定着装置20の動作に関し、装置本体制御部36によるオーバーシュート回避のための定着ローラ回転後のオーバーシュート回避判定および定着ローラ停止制御について図9を用いて以下説明する。前回検出した温度と現時点で検出した温度を数点取得する(ステップS401)。次に、取得した各温度間の遷移(N点)温度から温度上昇率および予測される最高到達温度を算出する(ステップS402)(図6参照)。ステップS402において算出した温度上昇率および最高到達温度から現時点でオーバーシュートを回避したかどうか判定する(ステップS403)。オーバーシュートを回避したと判断した場合(ステップS403、Yes)は、定着ローラ21の回転を停止する(ステップS405)。オーバーシュートを回避できていないと判断した場合(ステップS403、No)は、現時点で定着ローラ21の回転を停止してもオーバーシュートを回避できるか予測する(ステップS404)。オーバーシュート回避できないと予測した場合(ステップS404、No)は、本制御を再試行する(ステップS404→ステップS401)。オーバーシュートを回避できると予測した場合(ステップS404、Yes)は、定着ローラ21の回転を停止する(ステップS405)。その後、補助電源34からの電源供給を停止し(ステップS406)、本制御を終了する(ステップS406→END)。これにより、オーバーシュートの可能性がない場合は、補助電源からの電源供給を停止させるため、無駄な補助電源の消費を防ぐことができる。また、定着ローラの回転を停止した後、補助電源からの電源供給を停止するため、補助電源を適切に使用することができる。
【0035】
上記のように、定着部材におけるオーバーシュートを回避するための装置本体制御部36による定着部材回転制御は、定着部材のオーバーシュートが回避された若しくは回避されると予測できた場合に定着部材の回転を停止することにより行われるため、定着部材を適切に回転停止制御することができる。
【0036】
また、定着部材におけるオーバーシュートを回避するための装置本体制御部36による定着部材回転制御は、定着部材の温度が下降している場合にオーバーシュートを回避できたと判断することにより行われることで、オーバーシュートの回避を適切に判断することができる。
【0037】
さらに、定着部材におけるオーバーシュートを回避するための装置本体制御部36による定着部材回転制御は、定着部材の温度上昇率により最高到達温度を算出して、算出した最高到達温度が定着部材ダメージ温度より低い場合に回避できたと判断することにより行われることで、定着部材の温度の上がり具合(角度)を確認し、これ以上定着部材を回転させなくてもオーバーシュートを回避できると判断した時点で定着部材の回転を停止制御するため回転時間の延長を少なくすることができる。
【0038】
なお、上述する各実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0039】
20 定着装置
21 定着ローラ
22 加圧ローラ
23 分離部材
24 定着熱源
25 温度検出装置
30 商用電源
31 メインスイッチ
32 インターロックスイッチ
33 定着熱源制御部
34 補助電源
35 停電検出切替回路
36 装置本体制御部
37 装置本体駆動部
100 画像形成装置
N 定着ニップ
P 記録用紙
T トナー像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】特開2009−048074号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に定着熱源を有する定着部材と、
該定着部材を押圧する加圧部材と、
前記定着部材の温度検出手段とを備え、
前記定着部材と前記加圧部材との定着ニップに搬送された記録媒体上の未定着トナー像を前記記録媒体上に熱定着する定着装置と、
主電源装置と、
前記主電源装置により充電される補助電源装置と、
前記主電源装置による給電が遮断されたとき、前記定着熱源以外の定着装置への給電を前記補助電源装置による給電に切り替える停電検出切替部と、
前記停電検出切替部により前記主電源装置による給電から前記補助電源装置による給電に切り替えられたとき、前記定着部材を回転する定着部材回転制御部とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記停電検出切替部は、停電またはユーザによるメインスイッチオフ若しくはインターロックスイッチオンがあった場合に前記主電源装置による給電が遮断されたことを検出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記定着部材回転制御部は、前記停電検出切替部により前記主電源装置による給電から前記補助電源装置による給電に切り替えられた直後に前記定着部材がオーバーシュートする可能性が有るかどうかを判定する判定手段を更に備え、前記判定手段によりオーバーシュートの可能性が有ると判定した場合は、前記定着部材を回転制御することを特徴とする請求項1又2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記定着部材回転制御部は、前記判定手段によりオーバーシュートの可能性が無いと判定した場合は、前記補助電源装置からの電源供給を遮断制御することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記定着部材の温度上昇率により最高到達温度を算出し、前記最高到達温度が前記定着部材のダメージ温度到達の有無を判断することによりオーバーシュートの可能性の有無を判定することを特徴とする請求項3又は4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記定着部材回転制御部は、前記判定手段によりオーバーシュートの可能性が有ると判定した場合は、前記定着部材の温度上昇率および前記最高到達温度により前記定着部材の回転時間および回転速度を決定することを特徴とする請求項3から5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記定着部材回転制御部は、前記判定手段によりオーバーシュートの可能性が有ると判定した場合は、前記定着部材の使用環境により前記定着部材の回転時間および回転速度を補正することを特徴とする請求項3から6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記定着部材回転制御部は、前記判定手段によりオーバーシュートの可能性が有ると判定した場合は、前記定着部材の使用状況により前記定着部材の回転時間および回転速度を補正することを特徴とする請求項3から7の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記判定手段は、前記定着部材の温度が下降している場合にオーバーシュートが回避されたと判定することを特徴とする請求項3から8の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記判定手段は、前記定着部材の温度上昇率により前記最高到達温度を算出し、前記最高到達温度が定着部材ダメージ温度より低い場合にオーバーシュートが回避されたと判定することを特徴とする請求項3から9の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記定着部材回転制御部は、オーバーシュートが回避された又は回避されると予測できた場合に、前記定着部材の回転を停止制御することを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記定着部材回転制御部は、前記定着部材の回転を停止した後、前記補助電源装置からの電源供給を遮断制御することを特徴とする請求項1から11の何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−109020(P2013−109020A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251585(P2011−251585)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】