説明

画像形成装置

【課題】セットアップ直後におけるクリーニングブレードのめくれや像担持体表面の筋状のノイズの発生を抑制することにより、セットアップ直後から良好な画像が得られる画像形成装置を提供する。
【解決手段】カラープリンター100は、セットアップ時に、現像装置3a〜3d内の現像ローラー29上にトナー母粒子は極力残したまま、シリカ等の外添剤を優先的に感光体ドラム1a〜1d側に移動させてクリーニングブレード31のエッジ部分に付着させる外添剤付着工程と、現像ローラー29上に残存したトナーを感光体ドラム1a〜1d側に移動させるトナー吐出工程とを順次実行可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体ドラム等の像担持体の表面をクリーニングするクリーニングブレードを用いた画像形成装置に関し、特に画像形成装置のセットアップ時におけるクリーニングブレードと像担持体表面との摩擦を低減する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プロセスを用いた画像形成装置においては、主に粉末の現像剤が使用され、現像装置を用いて感光体ドラム等の像担持体上に形成された静電潜像を可視化し、その可視像(トナー像)を記録媒体上に転写した後、定着処理を行うプロセスが一般的である。感光体ドラム表面に残存するトナーは像担持体に圧接されるクリーニングブレードを備えたクリーニング装置により除去され、新たなトナー像の形成が行われる。
【0003】
ここで、クリーニングブレードは硬質ゴム等で形成されているため、画像形成装置の使用開始時においては像担持体表面との摩擦抵抗が高く、感光体の駆動トルクの上昇、クリーニングブレードのスティックスリップ運動振幅の増加によるブレード振動音の発生やクリーニングブレードのめくれ(巻き上がり)、ジッター等の不具合が発生するおそれがあった。
【0004】
また、画像形成装置のセットアップ時からの累積印字枚数が増加していくにつれて、クリーニングブレードのエッジ部分に徐々に外添剤が付着していくが、クリーニングブレードのエッジ部分には外添剤が均一に付着せず、外添剤が付着している部分と付着していない部分とが生じる。その結果、外添剤の付着していない部分は像担持体表面との摩擦抵抗が高く、像担持体表面に残存したトナーを掻き落とせないため、像担持体表面に筋状のノイズが発生し、ノイズが顕著な場合はスジ画像となって現れることもあった。
【0005】
そこで、特許文献1に開示されているように、トナーを付着させた感光体ドラム表面にクリーニングブレードを当接させてクリーニングブレードにトナーをまぶすことで、感光体ドラムとクリーニングブレードとの摩擦抵抗を低下させる方法が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−244389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、クリーニングブレードや感光体ドラムの材質によっては、上記のようにクリーニングブレードにトナーをまぶすだけでは不十分な場合があり、感光体ドラム上に筋状のノイズが発生したり、クリーニングブレードのめくれが発生したりするおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、セットアップ直後におけるクリーニングブレードのめくれや像担持体表面の筋状のノイズの発生を抑制することにより、セットアップ直後から良好な画像が得られる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、表面に感光層が形成される像担持体と、該像担持体の表面を一様に帯電させる帯電手段と、該帯電手段により帯電された前記像担持体の表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記像担持体に非接触で対向配置されるとともにトナー母粒子と外添剤とを含むトナーを担持するトナー担持体を有する現像装置と、前記像担持体表面に所定の圧力で圧接されるクリーニングブレードと、前記トナー担持体に直流成分と交流成分から成るバイアスを印加することで前記像担持体上の静電潜像にトナーを付着させる電圧印加手段と、を備えた画像形成装置において、画像形成装置のセットアップ時に、前記帯電手段を用いて前記像担持体の表面を一様に帯電させるとともに、前記電圧印加手段を用いて像担持体上に外添剤が優先的に移動するバイアスを前記トナー担持体に印加することにより、前記クリーニングブレードのエッジ部分へ外添剤を付着させる外添剤付着工程と、該外添剤付着工程に続いて前記トナー担持体上に残存したトナーを前記像担持体側へ強制的に吐出するトナー吐出工程と、を実行することを特徴としている。
【0010】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記外添剤付着工程の実行時に前記トナー担持体に印加するバイアスの直流成分を、画像形成時に印加するバイアスの直流成分よりも小さくすることを特徴としている。
【0011】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記外添剤付着工程の実行時に前記トナー担持体に印加するバイアスの交流成分のピークツーピーク値を、画像形成時に印加するバイアスの交流成分のピークツーピーク値よりも大きくすることを特徴としている。
【0012】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記現像装置は、前記トナー担持体に対向配置され、表面に形成された磁気ブラシを用いて前記トナー担持体にトナーを供給する現像剤担持体を備え、前記電圧印加手段は、前記現像剤担持体に直流成分と交流成分から成るバイアスを印加可能であり、前記外添剤付着工程の実行時に前記現像剤担持体に印加するバイアスの直流成分を、画像形成時に印加するバイアスの直流成分と同電圧とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の構成によれば、トナー担持体上にトナー母粒子を極力残したまま、外添剤を選択的に像担持体表面に移動させてクリーニングブレードのエッジ部分に付着させることができる。その結果、クリーニングブレードのエッジ部分に均一な外添剤の層が形成されるため、画像形成装置のセットアップ直後における像担持体表面のクリーニング性能を向上させるとともに、像担持体表面とクリーニングブレードとの摩擦抵抗を低減することができる。従って、像担持体の駆動トルクの上昇、クリーニングブレードの振動音やめくれ、像担持体の振動によるジッター等の不具合も効果的に抑制することができる。さらに、トナー担持体上に残存した外添剤の少ない劣化トナーが強制消費されるため、画像濃度ムラの発生も抑制可能となる。
【0014】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の画像形成装置において、外添剤付着工程の実行時にトナー担持体に印加するバイアスの直流成分を、画像形成時に印加するバイアスの直流成分よりも小さくすることにより、像担持体とトナー担持体との電位差が大きくなるため、外添剤のみを像担持体側に効率良く移動させることができる。
【0015】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第2の構成の画像形成装置において、外添剤付着工程の実行時にトナー担持体に印加するバイアスの交流成分のピークツーピーク値を、画像形成時に印加する現像バイアスの交流成分のピークツーピーク値よりも大きくすることにより、トナー担持体表面の電界強度が高くなり、トナー母粒子から遊離している外添剤だけでなく、トナー母粒子の表面に付着している外添剤も引き剥がして像担持体側に飛翔させることができる。
【0016】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第2又は第3の構成の画像形成装置において、トナー担持体に対向配置され、表面に形成された磁気ブラシを用いてトナー担持体にトナーを供給する現像剤担持体を備えた現像装置の場合、外添剤付着工程の実行時に現像剤担持体に印加するバイアスの直流成分を、画像形成時に印加するバイアスの直流成分と同電圧とすることにより、現像剤担持体とトナー担持体との電位差が大きくなる。従って、現像剤担持体からトナー担持体により多くのトナーを供給することができ、像担持体側に飛翔させる外添剤量も増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略断面図
【図2】図1における画像形成部Pa周辺の部分拡大図
【図3】第1実施形態の画像形成装置に搭載される現像装置の構成を示す側面断面図
【図4】現像ローラー及び磁気ローラーに印加されるバイアス波形の一例を示す図
【図5】第1実施形態の画像形成装置の制御経路を示すブロック図
【図6】画像形成部Paが外添剤付着工程にある状態を示す概略図
【図7】画像形成部Paがトナー吐出工程にある状態を示す概略図
【図8】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略断面図
【図9】第2実施形態の画像形成装置に搭載される現像装置の構成を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の概略断面図であり、ここではタンデム方式のカラープリンターについて示している。カラープリンター100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、Pc及びPdが、搬送方向上流側(図1では右側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa〜Pdは、異なる4色(マゼンタ、シアン、イエロー及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程によりマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックの画像を順次形成する。
【0019】
これらの画像形成部Pa〜Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1c及び1dが配設されており、さらに駆動手段(図示せず)により図1において時計回りに回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa〜Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a〜1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次一次転写されて重畳された後、二次転写ローラー9の作用によって記録媒体の一例としての転写紙S上に二次転写され、さらに、定着部7において転写紙S上に定着された後、装置本体より排出される。感光体ドラム1a〜1dを図1において反時計回りに回転させながら、各感光体ドラム1a〜1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0020】
トナー像が転写される転写紙Sは、装置下部の用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラー12a及びレジストローラー対12bを介して二次転写ローラー9と後述する中間転写ベルト8の駆動ローラー11とのニップ部へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが主に用いられる。また、中間転写ベルト8の回転方向において二次転写ローラー9の下流側には、中間転写ベルト8表面に残存するトナー等を除去するためのブレード状のベルトクリーナー19が配置されている。
【0021】
次に、画像形成部Pa〜Pdについて説明する。回転自在に配設された感光体ドラム1a〜1dの周囲及び下方には、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる帯電器2a、2b、2c及び2dと、各感光体ドラム1a〜1dに画像情報を露光する露光装置4と、感光体ドラム1a〜1d上にトナー像を形成する現像装置3a、3b、3c及び3dと、感光体ドラム1a〜1d上に残留した現像剤(トナー)等を除去するクリーニング装置5a、5b、5c及び5dが設けられている。
【0022】
パソコン等の上位装置から画像データが入力されると、先ず、帯電器2a〜2dによって感光体ドラム1a〜1dの表面を一様に帯電させ、次いで露光装置4によって画像データに応じて光照射し、各感光体ドラム1a〜1d上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置3a〜3dには、それぞれマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックの各色のトナーを含む二成分現像剤が所定量充填されている。なお、後述のトナー像の形成によって各現像装置3a〜3d内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合には各色のトナーが充填された4つのトナーコンテナ(図示せず)から各現像装置3a〜3dにトナーが補給される。この現像剤中のトナーは、現像装置3a〜3dにより感光体ドラム1a〜1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光装置4からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0023】
そして、一次転写ローラー6a〜6dにより一次転写ローラー6a〜6dと感光体ドラム1a〜1dとの間に所定の転写電圧で電界が付与され、感光体ドラム1a〜1d上のマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、感光体ドラム1a〜1dの表面に残留したトナー等がクリーニング装置5a〜5dにより除去される。
【0024】
中間転写ベルト8は、上流側の搬送ローラー10と、下流側の駆動ローラー11とに掛け渡されており、駆動モーター(図示せず)による駆動ローラー11の回転に伴い中間転写ベルト8が時計回りに回転を開始すると、転写紙Sがレジストローラー対12bから所定のタイミングで駆動ローラー11とこれに隣接して設けられた二次転写ローラー9とのニップ部(二次転写ニップ部)へ搬送され、中間転写ベルト8上のフルカラー画像が転写紙S上に転写される。トナー像が転写された転写紙Sは定着部7へと搬送される。
【0025】
定着部7に搬送された転写紙Sは、定着ローラー対13により加熱及び加圧されてトナー像が転写紙Sの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された転写紙Sは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられる。転写紙Sの片面のみに画像を形成する場合は、そのまま排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
【0026】
一方、転写紙Sの両面に画像を形成する場合は、定着部7を通過した転写紙Sの一部を一旦排出ローラー対15から装置外部にまで突出させる。その後、転写紙Sは排出ローラー対15を逆回転させることにより分岐部14で反転搬送路18に振り分けられ、画像面を反転させた状態で二次転写ニップ部に再搬送される。そして、中間転写ベルト8上に形成された次の画像が二次転写ローラー9により転写紙Sの画像が形成されていない面に転写され、定着部7に搬送されてトナー像が定着された後、排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
【0027】
図2は、図1における画像形成部Pa付近の拡大図である。なお、画像形成部Pb〜Pdについても基本的に同様の構成であるため説明を省略する。感光体ドラム1aの周囲には、ドラム回転方向(図2の反時計回り方向)に沿って帯電器2a、現像装置3a、クリーニング装置5a、及び除電ランプ20が配設され、中間転写ベルト8を挟んで一次転写ローラー6aが配置されている。
【0028】
帯電器2aは、感光体ドラム1aに接触してドラム表面に帯電バイアスを印加する帯電ローラー21と、帯電ローラー21をクリーニングするための帯電クリーニングローラー23とを有している。
【0029】
現像装置3aは、2本の攪拌スクリュー25a、25bと、磁気ローラー27と、現像ローラー29とを有する二成分現像式であり、磁気ローラー27表面に起立する磁気ブラシを用いて現像ローラー29にトナー薄層を形成し、現像ローラー29にトナーと同極性(正)の現像バイアスを印加してドラム表面にトナーを飛翔させる。
【0030】
また、現像装置3aは、現像ローラー29上のトナーを感光体ドラム1a側に供給(吐出)するトナー吐出工程を実行可能である。これにより、現像ローラー29上の劣化トナー(過帯電トナー)を感光体ドラム1a側へ排出してカブリ等の画像不良を防止するとともに、感光体ドラム1a側へ供給されたトナーに感光体ドラム1a表面の水分や紙粉、トナー外添剤凝集物等の異物を吸着させてトナーと共に除去することができる。
【0031】
このトナー吐出工程は、例えば所定枚数の印字後、所定の駆動時間経過後、連続印字動作の終了時など、所定のタイミングで定期的に実行される他、後述するように画像形成装置のセットアップ時に外添剤付着工程に引き続いて実行される。感光体ドラム1a側へ供給されたトナーは、クリーニング装置5aのクリーニングブレード31によって掻き取られる。
【0032】
クリーニング装置5aは、クリーニングブレード31、及び回収スクリュー32を有している。クリーニングブレード31は、感光体ドラム1a表面に所定の圧力で当接した状態で固定されている。クリーニングブレード31としては、例えばJIS硬度が78°のポリウレタンゴム製のブレードが用いられ、その当接点において感光体接線方向に対し所定の角度で取り付けられている。なお、クリーニングブレード31の材質及び硬度、寸法、感光体ドラム1aへの食い込み量及び圧接力等は、感光体ドラム1aの仕様に応じて適宜設定される。クリーニングブレード31によって感光体ドラム1a表面から除去された残留トナーは、回収スクリュー32の回転に伴ってクリーニング装置5aの外部に排出される。
【0033】
クリーニング装置5aと帯電器2aの間には除電ランプ20が配置されている。除電ランプ20は、感光体ドラム1a表面に光照射することによりドラム表面の残留電荷を除去する。
【0034】
図3は、本実施形態のカラープリンター100に搭載される現像装置の一構成例を示す側面断面図である。なお、ここでは図1及び図2の画像形成部Paに配置される現像装置3aについて説明するが、画像形成部Pb〜Pdに配置される現像装置3b〜3dの構成についても基本的に同様であるため説明を省略する。
【0035】
図3に示すように、現像装置3aは、二成分現像剤(以下、単に現像剤ともいう)が収納される現像容器33を備えており、現像容器33は仕切壁33aによって第1及び第2攪拌室33b、33cに区画され、第1及び第2攪拌室33b、33cにはトナーコンテナ(図示せず)から供給されるトナー(正帯電トナー)をキャリアと混合して撹拌し、帯電させるための第1攪拌スクリュー25a及び第2攪拌スクリュー25bが回転可能に配設されている。
【0036】
そして、第1攪拌スクリュー25a及び第2攪拌スクリュー25bによって現像剤が攪拌されつつ軸方向に搬送され、仕切壁33aに形成された現像剤通過路(図示せず)を介して第1及び第2攪拌室33b、33c間を循環する。図示の例では、現像容器33は左斜め上方に延在しており、現像容器33内において第2攪拌スクリュー25bの上方には磁気ローラー27が配置され、磁気ローラー27の左斜め上方には現像ローラー29が対向配置されている。そして、現像ローラー29は現像容器33の開口側(図3の左側)において感光体ドラム1aに対向しており、磁気ローラー27及び現像ローラー29は図中時計回りに回転する。
【0037】
なお、現像容器33内には、第1攪拌スクリュー25aと対面してトナー濃度センサー(図示せず)が配置されており、トナー濃度センサーで検知されるトナー濃度に応じてトナーコンテナからトナー補給口33dを介して現像容器33内にトナーが補給される。
【0038】
磁気ローラー27は、非磁性の回転スリーブ27aと、回転スリーブに内包される複数の磁極を有する固定マグネット体27bで構成されている。本実施形態では、固定マグネット体27bの磁極は、主極35、規制極(穂切り用磁極)36、搬送極37、剥離極38、及び汲上極39の5極構成である。
【0039】
また、現像容器33には規制ブレード34が磁気ローラー27の長手方向(図3の紙面表裏方向)に沿って取り付けられており、規制ブレード34は、磁気ローラー27の回転方向(図3の時計回り方向)において、現像ローラー29と磁気ローラー27との対向位置よりも上流側に位置付けられている。そして、規制ブレード34の先端部と磁気ローラー27表面との間には僅かな隙間(ギャップ)が形成されている。
【0040】
現像ローラー29は、円筒状の現像スリーブ29aと、現像スリーブ29a内に固定された磁石部材29bで構成されており、磁気ローラー27と現像ローラー29とはその対面位置(対向位置)において所定のギャップをもって対向している。磁石部材29bは、固定マグネット体27bの対向する磁極(主極)35と異極性である。
【0041】
磁気ローラー27及び現像ローラー29には、バイアス制御回路41を介して現像バイアス電源43(いずれも図5参照)が接続されており、現像ローラー29には直流電圧(以下、Vslv(DC)という)及び交流電圧(以下、Vslv(AC)という)が印加され、磁気ローラー27には、直流電圧(以下、Vmag(DC)という)及び交流電圧(以下、Vmag(AC)という)が印加される。
【0042】
前述のように、第1攪拌スクリュー25a及び第2攪拌スクリュー25bによって、現像剤が攪拌されつつ現像容器33内を循環してトナーを帯電させ、第2攪拌スクリュー25bによって現像剤が磁気ローラー27に搬送される。規制ブレード34には固定マグネット体27bの規制極36が対向するため、規制ブレード34として非磁性体或いは磁性体を用いることにより、規制ブレード34の先端と回転スリーブ27aとの隙間に引き合う方向の磁界が発生する。
【0043】
この磁界により、規制ブレード34と回転スリーブ27aとの間に磁気ブラシが形成される。そして、磁気ローラー27上の磁気ブラシは規制ブレード34によって層厚規制された後、現像ローラー29に対向する位置に移動すると、固定マグネット体27bの主極35及び現像ローラー側磁極23bにより引き合う磁界が付与されるため、磁気ブラシは現像ローラー29表面に接触する。そして、磁気ローラー27に印加されるVmag(DC)と現像ローラー29に印加されるVslv(DC)との電位差ΔV、及び磁界によって現像ローラー29上にトナー薄層を形成する。
【0044】
現像ローラー29上のトナー層厚は現像剤の抵抗や磁気ローラー27と現像ローラー29との回転速度差等によっても変化するが、ΔVによって制御することができる。ΔVを大きくすると現像ローラー29上のトナー層は厚くなり、ΔVを小さくすると薄くなる。現像時におけるΔVの範囲は一般的に100V〜350V程度が適切である。
【0045】
図4は、現像ローラー29及び磁気ローラー27に印加されるバイアス波形の一例を示す図である。図4(a)に示すように、現像ローラー29には、Vslv(DC)にピークツーピーク値がVpp1である矩形波のVslv(AC)を重畳した合成波形Vslv(実線)が現像バイアス電源43からバイアス制御回路41を介して印加される。また、磁気ローラー27には、Vmag(DC)にピークツーピーク値がVpp2であり、且つVslv(AC)と位相が異なる矩形波のVmag(AC)を重畳した合成波形Vmag(破線)が現像バイアス電源43からバイアス制御回路41を介して印加される。
【0046】
従って、磁気ローラー27と現像ローラー29との間(以下、MS間という)に印加される電圧は、図4(b)に示すようなVpp(max)とVpp(min)を有する合成波形Vmag−Vslvとなる。なお、Vmag(AC)はVslv(AC)よりもDuty比が大きくなるように設定される。実際には図4で示すような完全な矩形波ではなく、一部が歪んだ形状の交流電圧が印加される。
【0047】
磁気ブラシによって現像ローラー29上に形成されたトナー薄層は、現像スリーブ29aの回転によって感光体ドラム1aと現像ローラー29との対向部分に搬送される。現像ローラー29にはVslv(DC)及びVslv(AC)が印加されているため、現像ローラー29と感光体ドラム1aとの間(以下、SD間という)の電位差によってトナーが飛翔し、感光体ドラム1a上の静電潜像が現像される。
【0048】
さらに回転スリーブ27aが時計回り方向に回転すると、今度は主極35に隣接する異極性の剥離極38により発生する水平方向(ローラー周方向)の磁界により磁気ブラシは現像ローラー29表面から引き離され、現像に用いられずに残ったトナーが現像ローラー29から回転スリーブ27a上に回収される。さらに回転スリーブ27aが回転すると、固定マグネット体27bの剥離極38及びこれと同極性の汲上極39により反発する磁界が付与されるため、トナーは現像容器33内で回転スリーブ27aから離脱する。そして、第2攪拌スクリュー25bにより攪拌、搬送された後、再び適正なトナー濃度で均一に帯電された二成分現像剤として汲上極39により再び回転スリーブ27a上に磁気ブラシを形成し、規制ブレード34へ搬送される。
【0049】
次に、本実施形態のカラープリンター100の制御経路について説明する。図5は、第1実施形態の画像形成装置に用いられる制御経路の一例を示すブロック図である。なお、カラープリンター100を使用する上で装置各部の様々な制御がなされるため、カラープリンター100全体の制御経路は複雑なものとなる。そこで、ここでは制御経路のうち、本発明の実施に必要となる部分を重点的に説明する。
【0050】
制御部90は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)91、読み出し専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)92、読み書き自在の記憶部であるRAM(Random Access Memory)93、一時的に画像データ等を記憶する一時記憶部94、カウンター95、カラープリンター100内の各装置に制御信号を送信したり操作部50からの入力信号を受信したりする複数(ここでは2つ)のI/F(インターフェイス)96を少なくとも備えている。また、制御部90は、装置本体内部の任意の場所に配置可能である。
【0051】
ROM92には、カラープリンター100の制御用プログラムや、制御上の必要な数値等、カラープリンター100の使用中に変更されることがないようなデータ等が収められている。RAM93には、カラープリンター100の制御途中で発生した必要なデータや、カラープリンター100の制御に一時的に必要となるデータ等が記憶される。また、ROM92(或いはRAM93)には、後述する外添剤付着工程やトナー吐出工程の実行時間や、実行時の現像バイアス値、バイアス印加時間等が格納されている。カウンター95は、印字枚数を積算してカウントする。なお、カウンター95を別途設けなくても、例えばRAM93でその回数を記憶するようにしてもよい。
【0052】
また、制御部90は、カラープリンター100における各部分、装置に対し、CPU91からI/F96を通じて制御信号を送信する。また、各部分、装置からその状態を示す信号や入力信号がI/F96を通じてCPU91に送信される。制御部90が制御する各部分、装置としては、例えば、画像形成部Pa〜Pd、露光装置4、定着部7、用紙カセット16、画像入力部40、バイアス制御回路41、操作部50等が挙げられる。
【0053】
画像入力部40は、カラープリンター100にパーソナルコンピューター等から送信される画像データを受信する受信部である。画像入力部40より入力された画像信号はデジタル信号に変換された後、一時記憶部94に送出される。
【0054】
バイアス制御回路41は、帯電バイアス電源42、現像バイアス電源43、転写バイアス電源44と接続され、制御部90からの出力信号によりこれらの各電源を作動させるものであり、これらの各電源はバイアス制御回路41からの制御信号によって、帯電バイアス電源42は帯電器2a〜2d内の帯電ローラー21に、現像バイアス電源43は現像装置3a〜3d内の磁気ローラー27、現像ローラー29に、転写バイアス電源44は一次転写ローラー6a〜6d、及び二次転写ローラー9に、それぞれ所定のバイアスを印加する。
【0055】
操作部50には、液晶表示部51、LED52が設けられており、液晶表示部51及びLED52は、カラープリンター100の状態を示したり、画像形成状況や印刷部数を表示したりするようになっている。カラープリンター100の各種設定はパーソナルコンピューターのプリンタードライバーから行われる。
【0056】
その他、操作部50には、画像形成を開始するようにユーザーが指示するスタートボタン、画像形成を中止する際等に使用するストップ/クリアボタン、カラープリンター100の各種設定をデフォルト状態にする際に使用するリセットボタン等が設けられている。
【0057】
次に、本実施形態のカラープリンター100に用いられる二成分現像剤について説明する。二成分現像剤は、トナーとキャリアとを含有するものである。二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの重量比(T/C)は、キャリア100重量部に対してトナー5〜20重量部が好ましく、8〜15重量部がより好ましい。
【0058】
トナーはトナー母粒子に外添剤を添加したものである。トナー母粒子は、結着樹脂および着色剤を含有するものである。トナー母粒子には、必要に応じて離型剤、電荷制御剤、磁性粉等を含有させてもよい。トナー母粒子の重量平均粒子径は、5〜12μmが好ましく、6〜10μmがより好ましい。トナー母粒子の重量平均粒子径は、粒度分布測定装置(例えば、コールター社製、マルチサイザーII型)によって測定する。トナー母粒子は、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法、重合法等の公知の方法で製造される。
【0059】
外添剤としては、シリカや酸化チタンが用いられるが、本発明ではクリーニングブレード31のエッジ部分に溜まり外添剤層が形成され易いシリカが好適に用いられ、トナー母粒子表面に物理的或いは静電的に付着させて用いられる。外添剤の添加量は、トナー母粒子100重量部に対して、通常0.1〜5重量部である。
【0060】
キャリアとしては、磁性体の粒子、または結着樹脂中に磁性体を分散させた樹脂粒子が用いられる。磁性体としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性体金属、これらの合金、あるいは希土類を含有する合金類、ヘマタイト、マグネタイト、マンガン−亜鉛系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、リチウム系フェライトなどのソフトフェライト、銅−亜鉛系フェライト等の鉄系酸化物、これらの混合物が挙げられる。
【0061】
結着樹脂としては、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、これらの混合物等が挙げられる。磁性体の粒子は、焼結法、アトマイズ法等の公知の方法によって製造される。キャリアは、その表面に、コート樹脂からなる被覆層を有していてもよい。
【0062】
本実施形態のカラープリンター100は、使用場所への着荷時(画像形成装置のセットアップ時)に、現像装置3a〜3d内の現像ローラー29上にトナー母粒子は極力残したまま、シリカ等の外添剤を優先的に感光体ドラム1a〜1d側に移動させてクリーニングブレード31のエッジ部分に付着させる工程(以下、外添剤付着工程という)と、現像ローラー29上に残存したトナーを感光体ドラム1a〜1d側に移動させるトナー吐出工程とを順次実行可能に構成されている。
【0063】
外添剤を感光体ドラム1a〜1d側に優先的に移動させる方法としては、トナー母粒子と外添剤の帯電性を逆極性とする方法が挙げられる。画像形成時と同条件で帯電バイアス及び現像バイアスを印加すると、感光体ドラム1a〜1dはトナー母粒子と同極性(外添剤と逆極性)に帯電されるため、外添剤を感光体ドラム1a〜1d側に選択的に移動させることができる。
【0064】
また、トナー母粒子と帯電性が同極性の外添剤を用いる場合は、トナー母粒子と比較して帯電性(単位重量当たりの帯電量)が小さい外添剤を用い、画像形成時の現像バイアスよりも小さいバイアスを現像ローラー29に印加する。これにより、画像形成時と同条件でトナー母粒子及び外添剤と同極性に帯電された感光体ドラム1a〜1d側に、トナー母粒子は極力移動させずに外添剤を優先的に移動させることができる。
【0065】
トナー母粒子の帯電性は電荷制御剤(CCA)の種類や添加量によって調整することができる。即ち、正極性のトナー母粒子とする場合は正帯電用のCCAを使用し、負極性のトナー母粒子とする場合は負帯電用のCCAを使用すれば良い。また、帯電性の大きさはCCAの添加量を増減させて調整すれば良い。
【0066】
また、トナー母粒子と帯電性が逆極性の外添剤を用いる場合は、現像ローラー29に通常の現像バイアスと逆極性(外添剤と同極性)のバイアスを印加して外添剤を感光体ドラム1a〜1d側に移動させることもできる。
【0067】
なお、本明細書中において「帯電性が逆極性」とは、帯電特性が正帯電と負帯電のように電気的極性が異なることを指し、「帯電性が同極性」とは、帯電特性が正帯電同士、或いは負帯電同士のように電気的極性が同じことを指すものとする。
【0068】
図6は、画像形成部Paが外添剤付着工程にある状態を模式的に示す概略図である。なお、ここでは正帯電のトナー母粒子Tと、負帯電のシリカから成る外添剤Gとを用いる場合について説明しており、実際には外添剤Gはトナー母粒子Tの表面に付着しているが、説明の便宜のためトナー母粒子Tを黒丸、外添剤Gを白丸で示している。また、画像形成部Paは感光体ドラム1a、一次転写ローラー6a、中間転写ベルト8、現像ローラー29、及びクリーニングブレード31のみを図示しており、他の画像形成部Pb〜Pdについても全く同様であるため説明を省略する。
【0069】
図6(a)は、現像ローラー29から感光体ドラム1a上に外添剤Gが供給されている状態を示している。この工程では、画像形成時と同様に感光体ドラム1aに帯電バイアスを印加し、現像ローラー29に現像バイアスを印加することにより、感光体ドラム1aの表面電位(正電位)は現像ローラー29に比べて高くなる。これにより、現像ローラー29上に正帯電のトナー母粒子Tを残した状態で、感光体ドラム1a表面に負帯電の外添剤Gを選択的に移動(飛翔)させる。
【0070】
図6(b)は、感光体ドラム1a表面に供給された外添剤Gがクリーニングブレード31に到達した状態を示している。この工程では、クリーニングブレード31のエッジ部分に外添剤Gを付着させて外添剤Gの層を形成する。なお、クリーニングブレード31に外添剤Gを供給する間は、中間転写ベルト8上へ外添剤Gが付着しないように、一次転写ローラー6aには外添剤Gと同極性(負)のバイアスが印加されている。
【0071】
図6(c)は、現像ローラー29へのバイアス印加をOFFとして、外添剤Gの供給を停止した状態を示している。現像ローラー29からの外添剤Gの供給が停止した後も感光体ドラム1aはしばらく予備回転を続ける。
【0072】
図6に示した外添剤付着工程を予め設定された時間だけ実行することにより、感光体ドラム1a〜1d表面に外添剤を選択的に供給可能となるため、クリーニングブレード31のエッジ部分の裏側に外添剤が回り込み、エッジ部分全域に外添剤の層が形成される。この外添剤層により、感光体ドラム1a〜1dの表面とクリーニングブレード31のエッジ部分との密着性が向上するとともに、摩擦力が低減される。
【0073】
その結果、画像形成装置のセットアップ直後における感光体ドラム1a〜1d表面のクリーニングむらが解消され、スジ画像の発生を抑制することができる。また、感光体ドラム1a〜1dの表面との摩擦抵抗が低減されるため、感光体ドラム1a〜1dの駆動トルクの上昇、クリーニングブレード31の振動音やめくれ(巻き上がり)、感光体ドラム1a〜1dの振動によるジッター等の不具合も効果的に抑制される。なお、外添剤付着工程の実行時間は、使用する感光層の構成やクリーニングブレード31の材質等に応じて適宜設定される。
【0074】
なお、現像ローラー29に印加する現像バイアスの直流成分(Vslv(DC))を、画像形成時に印加するVslv(DC)よりも小さく設定することにより、感光体ドラム1a〜1dと現像ローラー29との電位差を大きくすることができる。これにより、トナー母粒子と逆極性、またはトナー母粒子と同極性で帯電性が小さい外添剤は、より感光体ドラム1a〜1d表面に飛翔し易くなり、逆にトナー母粒子は感光体ドラム1a〜1d表面に飛翔し難くなるため、外添剤のみを感光体ドラム1a〜1d側に効率良く移動させることができる。
【0075】
さらに、現像ローラー29に印加する現像バイアスの交流成分(Vslv(AC))のピークツーピーク値は、画像形成時に印加するVslv(AC)よりも大きく設定することが好ましい。これにより、現像ローラー29表面の電界強度が高くなり、トナー母粒子から遊離している外添剤だけでなく、トナー母粒子の表面に付着している外添剤も引き剥がすことができる。従って、感光体ドラム1a〜1d側に外添剤を一層効率良く飛翔させることができる。
【0076】
また、現像ローラー29に印加するVslv(DC)を、画像形成時に印加するVslv(DC)よりも小さく設定する場合、磁気ローラー27に印加するバイアスの直流成分(Vmag(DC))は、画像形成時に印加するVmag(DC)と同電圧に設定することが好ましい。通常、磁気ローラー27にはVslv(DC)よりも高いVmag(DC)を印加することで磁気ローラー27から現像ローラー29にトナーを供給しているが、外添剤付着工程においてVmag(DC)を画像形成時の電位から変化させずにVslv(DC)のみを小さくすることで、磁気ローラー27と現像ローラー29との電位差が大きくなる。従って、現像ローラー29により多くのトナーを供給することができ、感光体ドラム1a〜1d側に飛翔させる外添剤量も増加させることができる。
【0077】
ところで、通常、トナーは表面に付着した外添剤を介して現像ローラー29やキャリアと接触しているため、トナー母粒子と現像ローラー29、或いはトナー母粒子とキャリアとの接触面積が小さくなり、現像ローラー29やキャリアから脱離し易くなっている。しかし、外添剤付着工程を実行すると、現像ローラー29上に外添剤が減少した(トナー母粒子の割合が高い)トナーが残存する。
【0078】
トナー表面に付着する外添剤が減少すると、トナー母粒子と現像ローラー29、或いはキャリアとの接触面積が大きくなるためにトナーの付着力が増大し、感光体ドラム1a〜1dへの飛翔性が低下する。また、付着力が増大したトナーは現像バイアスが印加された現像ローラー29上に長時間保持されるため、トナーが過帯電(チャージアップ)により劣化する。そして、劣化したトナーを画像形成に使用すると画像濃度の低下やピッチムラ等の画像不良が発生する。
【0079】
そこで、外添剤付着工程に続いてトナー吐出工程を実行することにより、外添剤が減少した劣化トナーを感光体ドラム1a〜1d側へ強制的に排出して消費する。これにより、画像濃度の低下やピッチムラ等の画像不良の発生を防止することができる。現像ローラー29上のトナーを完全に消費するためには、現像ローラー29の外周面積以上、つまり現像ローラー29の外周長以上の印字長さのトナー吐出パターンを感光体ドラム1a〜1d上に形成すれば良い。
【0080】
図7は、画像形成部Paがトナー吐出工程にある状態を示す概略図である。なお、ここでは図6と同様に画像形成部Paについてのみ説明し、他の画像形成部Pb〜Pdについても全く同様であるため説明を省略する。
【0081】
図7(a)は、現像ローラー29から感光体ドラム1a上へのトナーの吐出が開始された状態を示している。露光装置4(図1参照)により感光体ドラム1aの所定の領域が露光されると、表面電位の低下した感光体ドラム1aの露光領域にトナー(トナー母粒子T及び外添剤G)が選択的に移動(飛翔)する。
【0082】
図7(b)は、感光体ドラム1a表面に吐出されたトナーがクリーニングブレード31に到達した状態を示している。この工程では、感光体ドラム1a表面のトナーがクリーニングブレード31によって除去される。なお、感光体ドラム1a表面にトナーを吐出する間は、中間転写ベルト8上へトナーが付着しないように、一次転写ローラー6aにはトナーと同極性(正)のバイアス電圧が印加されている。
【0083】
図7(c)は、現像ローラー29へのバイアス印加をOFFとして、トナーの吐出を停止した状態を示している。現像ローラー29からのトナーの吐出が停止した後も、感光体ドラム1a上のトナーが完全に回収されるまで感光体ドラム1aはしばらく予備回転を続ける。
【0084】
図8は、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略構成図であり、右側を画像形成装置の前方側として図示している。図1と共通する部分には同一の符号を付している。図8に示すように、モノクロプリンター101の本体下部には、積載された転写紙を収容する用紙カセット16が配置されている。この用紙カセット16の上方には、本体前方から本体後方へ略水平に延び、更に上方へ延びて本体上面に形成された排出トレイ17に至る用紙搬送路が形成されており、この用紙搬送路に沿って上流側から順に、給紙ローラー12a、レジストローラー対12b、画像形成部P、定着部7及び排出ローラー対15が配置されている。
【0085】
画像形成部Pは、図8において時計回り方向に回転可能に軸支された感光体ドラム1と、この感光体ドラム1の周囲に配置されるスコロトロン式の帯電器2、現像装置3、クリーニング装置5、用紙搬送路を挟んで感光体ドラム1に対向するように配置される転写ローラー6及び感光体ドラム1の上方に配置される露光装置4から構成されており、現像装置3の上方には、現像装置3へトナーを補給するトナーコンテナ30が配置されている。
【0086】
帯電器2に所定の電圧を印加することにより、感光体ドラム1の表面が一様に帯電させられる。次いで、露光装置4からの光照射により感光体ドラム1上に入力された画像データに基づく静電潜像が形成され、現像装置3により静電潜像にトナーが付着されて感光体ドラム1の表面にトナー像が形成される。そして、レジストローラー対12bから感光体ドラム1と転写ローラー6とのニップ部(転写位置)に転写紙が所定のタイミングで供給され、転写ローラー6により転写紙上に感光体ドラム1の表面のトナー像が転写される。
【0087】
トナー像が転写された転写紙は、感光体ドラム1から分離されて定着部7に向けて搬送される。画像形成部Pにおいてトナー像が転写された転写紙は、定着部7に備えられた加熱ローラー及び加熱ローラーに圧接される加圧ローラーから成る定着ローラー対13aによって加熱、加圧され、転写紙に転写されたトナー像が定着される。
【0088】
そして、画像形成部P及び定着部7において画像形成がなされた転写紙は、排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。一方、転写後に感光体ドラム1の表面に残留しているトナーはクリーニング装置5により除去される。そして、感光体ドラム1は帯電器2によって再び帯電され、以下同様にして画像形成が行われる。モノクロプリンター101の制御経路は、図5に示したカラープリンター100の制御経路と基本的に同様であるため説明を省略する。
【0089】
図9は、第2実施形態の画像形成装置に搭載される現像装置の一例を示す側面断面図である。第1実施形態の図2と共通する部分には同一の符号を付している。図9に示すように、現像装置3は、二成分現像剤が収容される現像容器33内に、第1攪拌スクリュー25a、第2攪拌スクリュー25b、現像ローラー29、規制ブレード34が備えられている。
【0090】
現像容器33の内部は、長手方向(図9の紙面表裏方向)に延在する仕切壁33aによって第1攪拌室33bと第2攪拌室33cとに区画されており、第1攪拌室33bには第1攪拌スクリュー25aが、第2攪拌室33cには第2攪拌スクリュー25bがそれぞれ配設されている。また、仕切壁33aは現像容器33の長手方向両端部には設けられておらず、この部分が第1攪拌室33bと第2攪拌室33cの間をトナーが移動する通路(現像剤受け渡し部)となっている。
【0091】
現像ローラー29は、金属製の現像スリーブ29aと、現像スリーブ29aの内部に固定された複数の磁極(ここでは3極)を有する磁石部材29bで構成されており、第1攪拌スクリュー25a及び第2攪拌スクリュー25bと略平行となるように第1攪拌室33b内に回転可能に軸支されている。現像ローラー29には、Vslv(DC)及びVslv(AC)を印加する現像バイアス電源43(図5参照)がバイアス制御回路41(図5参照)を介して接続されている。
【0092】
感光体ドラム1の回転に応じて現像スリーブ29aが回転すると、磁石部材29bの磁力により現像スリーブ29aの表面にキャリア粒子とトナーとが連なる磁気ブラシが形成される。そして、現像スリーブ29aに形成された磁気ブラシは、現像ローラー29と感光体ドラム1とが対峙する現像ニップ部において感光体ドラム1の表面に接触し、感光体ドラム1の表面電位と現像ローラー29に印加される現像バイアスとの電位差によりトナー粒子のみが感光体ドラム1へと移動して感光層に付着し、感光体ドラム1表面にトナー像が形成される。
【0093】
規制ブレード34は、感光体ドラム1に供給するトナー量、すなわち現像ローラー29へのトナー付着量を規制するものであり、例えばSUS(ステンレス)等の磁性体が用いられる。そして、規制ブレード34は、その先端と現像ローラー29との間に所定の隙間(0.2〜0.3mm)が形成されるように配設されており、この規制ブレード34と現像ローラー29との間隔及び隙間に発生する磁界によって現像ローラー29へのトナー付着量が規制され、現像ローラー29の表面には数十ミクロンのトナー薄層が形成される。他の部分の構成は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0094】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に外添剤及びトナー母粒子の極性(帯電性)、並びに現像ローラー29に印加するバイアスをコントロールすることで、モノクロプリンター101のセットアップ時に外添剤付着工程とトナー吐出工程とを順次実行することができる。その結果、モノクロプリンター101のセットアップ直後における感光体ドラム1表面のクリーニング性能を向上させることができる。また、感光体ドラム1の駆動トルクの上昇、クリーニングブレード31の振動音やめくれ(巻き上がり)、感光体ドラム1の振動によるジッター等の不具合も効果的に抑制される。
【0095】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、第2実施形態では二成分現像剤を用いた例について説明したが、図9に示した第2実施形態の現像装置に磁性トナーのみからなる一成分現像剤を使用することもできる。この場合、現像スリーブ29a上に磁性トナーが付着(担持)されてトナー層が形成され、現像ニップ部において感光体ドラム1の表面電位と現像ローラー29に印加される現像バイアスとの電位差により感光体ドラム1の表面に飛翔することで静電潜像の現像が行われる。外添剤付着工程の実行時には現像ローラー29に外添剤及びトナー母粒子の極性に応じたバイアスを印加することで、感光体ドラム1表面に外添剤が優先的に移動する。
【0096】
また、本発明は図1に示したタンデム式のカラープリンターや図8に示したようなモノクロプリンターに限らず、デジタル或いはアナログ方式のモノクロ複写機、ロータリー現像式のカラープリンター及びカラー複写機、ファクシミリ等、像担持体に非接触でトナーを飛翔させる現像装置を備えた種々の画像形成装置に適用可能である。以下、実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0097】
図3及び図9に示した現像装置3a、3に二成分現像剤を投入し、図1及び図8に示したような第1、第2実施形態の試験機(未使用)に搭載した。そして、外添剤付着工程及びトナー吐出工程を順次実行した場合(本発明1〜7)、外添剤付着工程及びトナー吐出工程のいずれも実行しなかった場合(比較例1)、外添剤付着工程のみを実行した場合(比較例2)、トナー吐出工程のみを実行した場合(比較例3)について、セットアップ直後に印字率25%のハーフトーン画像を印字し、スジ画像及び画像濃度ムラの発生を目視により観察した。
【0098】
感光体ドラムは外周面にOPC(有機感光層)が形成された直径30mmのOPCドラムを使用し、ドラム周速を130mm/秒とした。また、帯電装置は帯電ローラーを用いた接触帯電方式とし、帯電バイアスは1300Vとした。現像ローラーの直径は16mm、回転数は250rpm、磁気ローラーの直径は16mm、回転数は280rpmとし、ドラム−現像ローラー間の距離(DS間距離)を110μmとした。
【0099】
また、通常の印字時における現像ローラーへの電圧印加条件は、Vslv(DC)=150V、Vslv(AC)のVppを1400V、周波数を3.6kHz、Duty=30%とした。また、磁気ローラーにはVmag(DC)=450V、Vmag(AC)のVppを650V、周波数を3.6kHz、Duty=70%として逆位相で印加した。また、平均粒径6.8μmの正帯電トナーと、平均粒径35μmのコーティングフェライトキャリアとから成る二成分現像剤を用い、キャリアに対するトナーの混合比率(T/C)を10重量%とした。
【0100】
試験結果を各工程におけるバイアスの印加条件、実行時間等と合わせて表1、表2に示す。なお、表1、2中の現像方式は、図9に示したような現像ローラーのみを用いる方式を「2成分」、図3に示したような磁気ローラーと現像ローラーを用いる方式を「TD」(タッチダウン方式)で示した。また、トナー吐出工程における現像ローラー、磁気ローラーへの電圧印加条件は通常印字時と同様とした。
【0101】
スジ画像の評価は、画像上、ドラム表面のいずれにもスジが無い場合を◎、画像上にスジが無く、ドラム表面に10本未満のスジが有る場合を○、画像上にスジが無く、ドラム表面に10本以上のスジが有る場合を△、画像上にスジが有る場合を×とし、△は画像上にスジが認められないため実用上問題なしと判断した。画像濃度ムラの評価は、画像に濃度ムラが無い場合を○、濃度ムラが有る場合を×とした。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
表1から明らかなように、図9に示した2成分現像式の現像装置3において外添剤付着工程とトナー吐出工程の両方を実行する本発明1〜5では、クリーニングブレードのエッジ部分に均一に形成された外添剤の層によって感光体ドラムとクリーニングブレードとの摩擦抵抗が低減され、クリーニング性能が向上するため、スジ画像の発生を効果的に抑制することができた。また、外添剤が減少し、チャージアップした劣化トナーが強制消費されるため、ハーフトーン画像の濃度ムラの発生も防止できた。
【0105】
特に、外添剤付着工程の実行時に現像ローラーに印加されるVsl(DC)を通常の印字時よりも低い50Vに設定した本発明4、5では、通常の印字時と同じ150Vに設定した本発明1〜3に比べてスジ画像の発生が抑制され、外添剤付着工程の実行時に現像ローラーに印加されるVsl(AC)のVppを通常の印字時(1400V)よりも大きい1450Vに設定した本発明5では、画像上、ドラム表面のいずれにもスジの発生が認められなかった。
【0106】
また、図3に示したタッチダウン現像式の現像装置3において外添剤付着工程とトナー吐出工程の両方を実行する本発明6、7においても、スジ画像及び画像濃度ムラの発生を効果的に抑制することができ、現像ローラーに印加されるVsl(DC)を通常の印字時よりも低い50Vに設定するか、或いは現像ローラーに印加されるVsl(AC)のVppを通常の印字時よりも大きい1450Vに設定することでスジの発生が一層抑制されることが確認された。
【0107】
これに対し、表2から明らかなように、外添剤付着工程とトナー吐出工程の両方を実行しなかった比較例1では、クリーニングブレードのエッジ部分に外添剤の層が形成されないため、印字時に感光体ドラム表面の残存トナーを均一にクリーニングすることができず画像にスジが発生した。また、外添剤付着工程のみを実行し、トナー吐出工程を実行しなかった比較例2では、外添剤付着工程の実行により現像ローラー上に残存した劣化トナーが現像に使用され、ハーフトーン画像の濃度ムラが発生した。
【0108】
さらに、トナー吐出工程のみを実行した比較例3では、感光体ドラム表面に吐出されたトナーがクリーニングブレードのエッジ部分に一度に供給されるため、エッジ部分への外添剤の付着にばらつきが生じる。その結果、クリーニングブレードのエッジ部分に外添剤の層が均一に形成されず、比較例1と同様に画像にスジが発生した。
【0109】
以上の結果より、本発明では画像形成装置のセットアップ時に外添剤付着工程とトナー吐出工程の両方を実行することで、画像形成装置のセットアップ直後におけるスジ画像及び画像濃度ムラの発生を効果的に抑制できることが確認された。なお、ここでは二成分現像剤を用いた二成分現像方式及びタッチダウン方式について説明したが、図9に示した現像装置において一成分現像剤を用いた場合においても同様の効果が確認されている。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、像担持体に非接触で対向配置されるトナー担持体を備えた現像装置が搭載される画像形成装置に利用可能である。本発明の利用により、画像形成装置のセットアップ直後におけるクリーニングブレードのめくれや振動音、クリーニング不良によるスジ画像の発生を効果的に抑制するとともに、トナー担持体上に残存した外添剤の少ないトナーを強制消費して画像濃度ムラの発生も抑制可能な画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0111】
1、1a〜1d 感光体ドラム(像担持体)
2、2a〜2d 帯電器(帯電手段)
3、3a〜3d 現像装置
5、5a〜5d クリーニング装置
7 定着部
27 磁気ローラー(現像剤担持体)
29 現像ローラー(トナー担持体)
31 クリーニングブレード
41 バイアス制御回路(電圧印加手段)
42 現像バイアス電源(電圧印加手段)
90 制御部
100 カラープリンター
101 モノクロプリンター
P、Pa〜Pd 画像形成部
T トナー母粒子
G 外添剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に感光層が形成される像担持体と、
該像担持体の表面を一様に帯電させる帯電手段と、
該帯電手段により帯電された前記像担持体の表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記像担持体に非接触で対向配置されるとともにトナー母粒子と外添剤とを含むトナーを担持するトナー担持体を有する現像装置と、
前記像担持体表面に所定の圧力で圧接されるクリーニングブレードと、
前記トナー担持体に直流成分と交流成分から成るバイアスを印加することで前記像担持体上の静電潜像にトナーを付着させる電圧印加手段と、
を備えた画像形成装置において、
画像形成装置のセットアップ時に、前記帯電手段を用いて前記像担持体の表面を一様に帯電させるとともに、前記電圧印加手段を用いて像担持体上に外添剤が優先的に移動するバイアスを前記トナー担持体に印加することにより、前記クリーニングブレードのエッジ部分へ外添剤を付着させる外添剤付着工程と、該外添剤付着工程に続いて前記トナー担持体上に残存したトナーを前記像担持体側へ強制的に吐出するトナー吐出工程と、を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記外添剤付着工程の実行時に前記トナー担持体に印加するバイアスの直流成分を、画像形成時に印加するバイアスの直流成分よりも小さくすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記外添剤付着工程の実行時に前記トナー担持体に印加するバイアスの交流成分のピークツーピーク値を、画像形成時に印加するバイアスの交流成分のピークツーピーク値よりも大きくすることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像装置は、前記トナー担持体に対向配置され、表面に形成された磁気ブラシを用いて前記トナー担持体にトナーを供給する現像剤担持体を備え、前記電圧印加手段は、前記現像剤担持体に直流成分と交流成分から成るバイアスを印加可能であり、
前記外添剤付着工程の実行時に前記現像剤担持体に印加するバイアスの直流成分を、画像形成時に印加するバイアスの直流成分と同電圧とすることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−25143(P2013−25143A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160729(P2011−160729)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】