説明

画像形成装置

【課題】転写材が転写ニップを通過するときに生じるベルト像担持体の速度変動を抑制できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】複数の張架ローラによって張架されながら無端移動せしめられるループ状のベルト像担持体と、該ベルト像担持体を介して該複数の張架ローラの1つと対向し、該ベルト像担持体のループ外側面であるおもて面に当接して転写ニップを形成する転写ローラが設けられ、該転写ニップ内に挟み込んだ転写材へ該おもて面に担持した画像を転写する転写手段と、を備えた画像形成装置において、前記転写ローラの近傍で、前記ベルト像担持体の前記転写ニップよりもベルト像担持体移動方向上流側の領域に当接する当接部材と、前記当接部材と前記転写ローラとを支持し、前記転写材の転写ニップ突入時の転写ローラ変位に連動して該当接部材を前記ベルト像担持体の張力が減少する方向に変位させる連動手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ、複写機などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置においては、複数の張架ローラによって張架されながら無端移動せしめられるベルト像担持体である中間転写ベルトに突発的な速度変動が生ずると、潜像担持体から一次転写部で中間転写ベルト上に転写された画像が伸び縮みしてしまう。そのため、潜像担持体から中間転写ベルト上に転写された画像に、一定の画像濃度であるべき部分に濃淡が生じる。また、中間転写ベルトに対して互いに異なる色の画像を順次重ね合わせて転写する多色画像形成装置においては、中間転写ベルトの速度変動によって色ズレが発生してしまう。
【0003】
上述の突発的な中間転写ベルトの速度変動は、二次転写ローラと、中間転写ベルトを介して二次転写ローラと対向する対向ローラとで形成した二次転写ニップに転写材である用紙を通紙した場合などに発生する。
【0004】
詳しく説明すると、図20に示すように、中間転写ベルト110を介して二次転写ローラ133と二次転写対向ローラ116とで形成した二次転写ニップへ用紙Sの先端が突入することにより、二次転写ニップが用紙Sの厚さ分だけ押し広げられる。二次転写ニップが用紙Sの厚さ分だけ押し広げられると二次転写対向ローラ116の駆動に突発的に負荷が加わり、二次転写対向ローラ116の回転が一時的に遅くなる。これにより、二次転写対向ローラ116で送られるベルト量よりも二次転写ニップ上流側張架面の上流端が巻き付いている駆動ローラ114から送り出されるベルト量の方が多くなる。その結果、二次転写ニップ上流側張架面が弛み気味となる。
【0005】
このように転写紙Sが二次転写ニップに対して突入することで生じる負荷変動により中間転写ベルト110が弛み張力変動が生じると、駆動ローラ114、従動ローラ115及び二次転写対向ローラ116により張架され回転移動している中間転写ベルト110に速度変動が生じる。そのため、このときに感光体ドラム104から中間転写ベルト110に一次転写部で画像の転写が行われると前記速度変動のため上述したような画質劣化が生じてしまう。
【0006】
特許文献1に記載の画像形成装置には、用紙が二次転写ニップに突入することで弛み気味となる中間転写ベルトの二次転写ニップ上流側張架面で、中間転写ベルトを内側に屈曲させるように外側からバネにより付勢するテンションローラが設けられている。中間転写ベルトの二次転写ニップ上流側張架面の張力が減少すると、バネの付勢力によってテンションローラが内側に変位し、前記二次転写ニップ上流側張架面の張力を増加させる。これにより、用紙先端の二次転写ニップ突入時に前記二次転写ニップ上流側張架面の張力が低下して前記速度変動が生じるのを抑制できるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、用紙先端がニップ部に突入した後、用紙がニップ部を通過するときには、用紙先端がニップ部に突入したときに生じた突発的な負荷がおさまり二次転写対向ローラにかかる負荷が低減する。そのため、前記突発的な負荷により一時的に減速していた二次転写対向ローラが加速し、テンションローラによって張力が付与されている前記二次転写ニップ上流側張架面がベルト移動方向に引っ張られる。このように前記二次転写ニップ上流側張架面がベルト移動方向に引っ張られると、前記二次転写ニップ上流側張架面の張力がさらに増加し、前記二次転写ニップ上流側張架面が張り気味となる。すると、従動ローラがベルト移動方向に引っ張られ加速し、中間転写ベルトの従動ローラと駆動ローラとの間の領域である一次転写領域がベルト移動方向に引っ張られ、一次転写領域における中間転写ベルトの速度が加速する速度変動が生じる。したがって、このような速度変動が生じているときに、感光体ドラムから中間転写ベルトに一次転写部で画像の転写が行われると上記速度変動のため画像に乱れが生じてしまう。
【0008】
また、これまでベルト像担持体が中間転写ベルトである中間転写方式の画像形成装置について説明したが、高画質化のために中間転写ベルト上のトナー像を用紙へ転写する際、画像転写と画像定着とを同時におこなう転写同時定着方式の画像形成装置であっても、上記転写部で同様の問題が生じ得る。
【0009】
また、ベルト像担持体が感光体ベルトであり感光体ベルト上のトナー像を転写部で用紙に直接転写する直接転写方式の画像形成装置であっても、前記転写部で同様の問題が生じ得る。この場合は、用紙が転写部に突入する際に、それまで一定速度で駆動されていた感光体ベルトの速度変動が生じる。この感光体ベルトの速度変動により、潜像を形成する露光光の照射タイミングと感光体ベルト表面が露光位置を通過するタイミングにズレが生じ、感光体ベルト上に形成される潜像の位置ズレが生じるという不具合が発生し得る。
【0010】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、転写材が転写ニップを通過するときに生じるベルト像担持体の速度変動を低減できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数の張架ローラによって張架されながら無端移動せしめられるループ状のベルト像担持体と、該ベルト像担持体を介して該複数の張架ローラの1つと対向し、該ベルト像担持体のループ外側面であるおもて面に当接して転写ニップを形成する転写ローラが変位可能に設けられ、該転写ニップ内に挟み込んだ転写材へ該おもて面に担持した画像を転写する転写手段と、前記転写ローラの近傍で、前記ベルト像担持体の前記転写ニップよりもベルト像担持体移動方向上流側の領域に当接し、該ベルト像担持体に張力を付与する当接部材とを備えた画像形成装置において、前記当接部材と前記転写ローラとを支持し、前記転写材が前記転写ニップに突入したときの転写ローラの変位に連動して、該当接部材を前記ベルト像担持体の張力が低減する方向に変位させる連動手段とを有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明においては、前記転写材が前記転写ニップに突入したときの転写ローラの変位に連動させて連動手段により、ベルト像担持体の張力が低減する方向に当接部材を変位させる。これにより、転写材が転写ニップを通過するときに、ベルト像担持体の転写ニップよりもベルト像担持体移動方向上流側の領域である転写ニップ上流側張架面の張力が弱められる。よって、転写材が転写ニップを通過するときに前記転写ニップ上流側張架面の張力が増加することで生じるベルト像担持体の速度変動を低減させることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上、本発明によれば、転写材が転写ニップを通過するときに生じるベルト像担持体の速度変動を低減できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】従来の画像形成装置の概略構成図。
【図3】中転駆動ローラと従動ローラとの速度変動を示す図。
【図4】位置ズレが発生したトナー像が転写された用紙の模式図。
【図5】(a)用紙がプレニップ部に突入した際の力の伝達を示した図、(b)用紙がプレニップ部に突入した際の二次転写ニップ近傍の拡大説明図、(c)用紙がプレニップ部に突入した際の速度変動を説明するグラフ。
【図6】(a)用紙が本ニップ部に突入した際の力の伝達を示した図、(b)用紙が本ニップ部に突入した際の二次転写ニップ近傍の拡大図、(c)用紙が本ニップ部に突入した際の速度変動を説明するグラフ。
【図7】用紙の本ニップ部突入によって中転駆動ローラと入口ローラとが共に減速するメカニズムの説明図。
【図8】(a)中間転写ベルトのプレニップ領域が戻る際の力の伝達を示した図、(b)中間転写ベルトのプレニップ領域が戻る際の二次転写ニップ近傍の拡大説明図、(c)中間転写ベルトのプレニップ領域が戻ることによる速度変動を説明するグラフ。
【図9】テンションローラ及び二次転写ローラの変位と、中転駆動ローラ及び従動ローラの速度変動との関係を示すグラフ。
【図10】構成例1における構成の動作の詳細図。
【図11】従来製品とこの機構を搭載した場合について用紙突入時従動ローラ速度変動を比較した実験データ。
【図12】構成例2の構成の模式図。
【図13】カム位置切り替え機構の制御回路図。
【図14】モード切り替えのフローチャート。
【図15】構成例3におけるフローチャート。
【図16】用紙厚さ検知を行う場合の構成図。
【図17】レジスト開始前に厚さ検知を行うときの動作フローチャート。
【図18】転写定着装置を有する画像形成装置の概略構成図。
【図19】別の構成の転写定着装置を有する画像形成装置の概略構成図。
【図20】転写材が二次転写ニップに突入した際に中間転写ベルトの張架状態が変化した状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した画像形成装置の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。この画像形成装置は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)のトナー像を形成するための4つのプロセスユニット100Y,100C,100M,100Bkを備えている。また、機内で転写材である用紙を搬送するための複数のガイド板からなる用紙搬送路、レジストローラ対(不図示)、定着装置(不図示)、光書込ユニット(不図示)、及び、転写ユニット50なども備えている。
【0016】
本実施形態の画像形成装置は、4つのプロセスユニット100Y,100C,100M,100Bkを、後述する中間転写ベルト2に対してその無端移動方向に沿って並べた所謂タンデム型の構成になっている。
【0017】
各色のプロセスユニット100Y,100C,100M,100Bkは、それぞれ、潜像担持体たる感光体ドラム1Y,1C,1M,1Bkと、その周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ部本体に対して着脱可能になっている。そして、互いに使用するトナーの色が異なる点以外は同様の構成になっている。
【0018】
Y用のプロセスユニット100Yを例にすると、ベルト像担持体たる感光体ドラム1Yの周囲に、帯電装置103Y、現像装置101Y、ドラムクリーニング装置102Y等を有している。プロセスユニット100Yの感光体ドラム1Yは、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動せしめる。帯電装置103Yは、回転駆動される感光体ドラム1Yの周面をトナーの帯電極性と同極性に一様帯電せしめる。図示しない光書込ユニットは、画像情報に基づいて、レーザーダイオードを駆動して、回転中の帯電した感光体ドラム1Yに対して、レーザー光をそれぞれ回転軸線方向に偏向せしめながら照射することで、光走査処理をおこなう。これにより、感光体ドラム1Yには、Y画像情報に基づいた静電潜像が形成される。感光体ドラム1Yとしては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
【0019】
現像装置101Yは、図示しない磁性キャリアと非磁性のYトナーとを含有する二成分現像剤(以下、単に現像剤という)を用いて、感光体ドラム1Y上の静電潜像を現像する。二成分現像剤の代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤によって現像をおこなうタイプのものを使用していもよい。
【0020】
現像によって感光体ドラム1Y上に形成されたYトナー像は、後述するY用の一次転写ニップで中間転写ベルト2のおもて面に転写される。このようにしてYトナー像を転写した後の感光体ドラム1Y上に付着している転写残トナーは、ドラムクリーニング装置102Yによって感光体ドラム1Y表面から除去される。このクリーニングに先立って、感光体ドラム1Yの表面は図示しない除電ランプによる光照射を受けて除電される。
【0021】
Y用のプロセスユニット100Yについて説明したが、M,C,Bk用のプロセスユニットにおいても、同様にして感光体ドラム1M,1C,1Bkの表面にM,C,Bkトナー像が形成される。
【0022】
4つのプロセスユニット100Y,100C,100M,100Bkの下方には、転写ユニット50が配設されている。この転写ユニット50は、ベルト像担持体たる中間転写ベルト2を有している。中間転写ベルト2は、中転駆動ローラ3、二次転写対向ローラ5、テンションローラ6、従動ローラ7、入口ローラ4などの張架ローラによって張架されている。この中間転写ベルト2を、感光体ドラム1Y,1C,1M,1Bkに当接させながら、中転駆動ローラ3の回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体ドラム1Y,1C,1M,1Bkと中間転写ベルト2とが当接するY,C,M,Bk用の一次転写ニップが形成されている。
【0023】
Y,C,M,Bk用の一次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された一次転写ローラ54Y,54C,54M,54Bkによって中間転写ベルト2を感光体ドラム1Y,1C,1M,1Bkに向けて押圧している。これら一次転写ローラ54Y,54C,54M,54Bkには、それぞれ図示しない電源によって一次転写バイアスが印加されている。これにより、Y,C,M,Bk用の一次転写ニップには、感光体ドラム1Y,1C,1M,1Bk上のトナー像を中間転写ベルト2に向けて静電移動させる一次転写電界が形成されている。
【0024】
図中時計回り方向の無端移動に伴ってY,C,M,Bk用の一次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト2のおもて面には、各一次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト2のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0025】
中間転写ベルト2の図中下方には、当接部材たる二次転写ローラ8が配設されており、中間転写ベルト2における二次転写対向ローラ5に対する掛け回し箇所にベルトおもて面から当接して二次転写ニップを形成している。これにより、中間転写ベルト2のおもて面と、二次転写ローラ8とが当接する二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ8の軸中心は、二次転写対向ローラ5の軸中心よりも、用紙搬送方向上流側に位置している。本実施形態においては、二次転写ローラ8を不図示のモータにより図中反時計回りに回転駆動させている。なお、二次転写ローラ8が中間転写ベルト2に対して連れ回る構成でもよい。
【0026】
ベルトループ内の二次転写対向ローラ5には、図示しない電源によってトナーと同極性の二次転写バイアスが印加されている。一方、ベルトループ外の二次転写ローラ8は接地されている。これにより、二次転写ニップ内に二次転写電界が形成されている。
【0027】
二次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対(不図示)が配設されている。画像形成に並行して、給紙カセット(不図示)から転写材たる用紙を繰り出し、用紙搬送経路に入れ、搬送ローラ(不図示)で搬送してレジストローラ対に突き当てて止める。
【0028】
レジストローラ間に挟み込んだ用紙を中間転写ベルト2上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。二次転写ニップ内では、中間転写ベルト2上の4色トナー像が二次転写電界やニップ圧の影響によって転写材たる用紙に一括二次転写され、用紙の白色と相まってフルカラー画像となる。
【0029】
二次転写ニップを通過した中間転写ベルト2のおもて面には、二次転写ニップで用紙に転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト2を介してクリーニング対向ローラ61と対向するベルトクリーニング装置60によってクリーニングされる。
【0030】
二次転写ニップを通過した用紙は、定着装置(不図示)に向けて送られる。定着装置は、定着と加熱ローラとで張架された定着ベルトに対して加圧ローラを圧接して構成する。定着ベルトは加熱ローラ内のIHコイルによって加熱され、画像定着に必要な温度まで加熱される。一方、加圧ローラにも内部にヒーターを内蔵しており、待機時の予備加熱に使用している。用紙上の未定着画像は、定着ベルトと加圧ローラとのニップ部において熱と圧力を与えられ、用紙に定着される。なお、定着装置のヒーターはIHコイルを用いたものでなくてもよく、熱ローラ対で構成された方式であっても良い。
【0031】
定着装置で熱と圧力とを加えて転写画像を定着して後、図示しない排紙トレイに排出される。または、図示しない両面反転機構により再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録、定着して後、排紙トレイに排出する。
【0032】
中間転写ベルト2に当接して二次転写ニップを形成している二次転写ローラ8は、金属製の芯金とこれの周面に被覆されたゴム等の弾性部材とを具備している。二次転写ニップでは、中間転写ベルト2における二次転写対向ローラ5に対する掛け回し箇所が、二次転写ローラ8の表面の弾性部材に食い込んでいる。これにより、幅広い二次転写ニップが形成されている。
【0033】
次に、従来の画像形成装置の中間転写ベルト2の課題について説明する。図2は従来の画像形成装置の概略構成図であり、基本的な構成は本実施形態の画像形成装置と略同じなので、その説明は省略する。
【0034】
用紙19が二次転写ニップ部に突入する際、中間転写ベルト2の感光体ドラム1Y,1C,1M,1Bkに当接する領域(以下、一次転写領域という)を張架する中転駆動ローラ3や従動ローラ7には図3に示すような速度変動が発生する。このような現象は特に厚紙通紙時(ここでは連量220[kg]紙、坪量256[g/m]紙以上を想定している)により顕著に見られる現象である。
【0035】
それに対して、感光体ドラム1Y,1C,1M,1Bkは用紙先端が二次転写ニップ突入時においてもほぼ同速で回転駆動されるので、感光体ドラム1Y,1C,1M,1Bkと中間転写ベルト2との間で速度差が発生する。この速度差によって、一次転写ニップにおいて転写位置ずれが発生する。
【0036】
図4は、単色の画像形成を行った場合に、前述したような転写位置ずれが発生したトナー象が最終画像として転写された用紙19を模式的に示す説明図である。
【0037】
用紙先端の二次転写ニップ突入時に発生した一次転写ニップにおける転写位置ずれを含むトナー像は、一次転写ニップから二次転写ニップまでの距離をLとすると、用紙先端からLの位置で用紙19に転写または転写・定着される。このため、排紙される用紙19上の最終画像には、図4に示すように用紙先端からLの位置に正常な画像の部分I1よりも色が薄い部分I2や色が濃い部分I3という局所的な濃度ムラをもった画像となる。
【0038】
なお、複数色の画像形成を行った場合は、各色で一次転写ニップから二次転写ニップまでの距離が異なるため、各色で用紙先端から濃度ムラまでの距離Lが異なる画像なって出力される。
【0039】
このように、用紙先端の二次転写ニップ突入時に発生する一次転写ニップにおける転写位置ずれを防ぐには、用紙先端の二次転写ニップ突入時における中転駆動ローラ3や従動ローラ7の速度変動を抑制する必要がある。この中転駆動ローラ3や従動ローラ7の速度変動がどのようなメカニズムで発生するのかについて以下に述べる。
【0040】
本実施形態の画像形成装置では、図1に示すように二次転写ローラ8の軸中心が二次転写対向ローラ5の軸中心よりも用紙搬送方向上流側に位置している。このため、中間転写ベルト2の外周面が二次転写ローラ8と当接するニップは、次の2つのニップ部を有する。すなわち、中間転写ベルト2の内周面が二次転写対向ローラ5と接触している二次転写ニップ(以下、本ニップ部という)と、二次転写ニップよりも用紙搬送方向上流側にあり、中間転写ベルト2の内周面が二次転写対向ローラ5と接触していないニップ部(以下、プレニップ部という)とを有している。
【0041】
このように、本実施形態の画像形成装置では、本ニップ部やプレニップ部を有する構成であるため、中転駆動ローラ3や従動ローラ7の速度変動は、大きく分けて以下の3つの変動から成り立っている。
【0042】
<(1)用紙19の先端がプレニップ部に突入することによる速度変動>
図5は、用紙19の先端がプレニップ部に突入した際に生じる速度変動の説明図である。用紙先端がプレニップ部に突入すると、中間転写ベルト2の二次転写ニップ上流側張架面である二次転写対向ローラ5と入口ローラ4との張架領域(以下、プレニップ領域T3という)が内側に押される。中間転写ベルト2のプレニップ領域T3が内側に押されると、プレニップ領域T3の用紙先端との当接部より中間転写ベルト移動方向上流側の部分が、図5(b)に示すように、中間転写ベルト移動方向へ引っ張られる。その結果、図5(b)に示すように、入口ローラ4には中間転写ベルト移動方向と同方向に引っ張る力I2が働き、入口ローラ4に回転方向と同方向のトルクE2が働く。その結果、入口ローラ4が加速する。
【0043】
また、図5(a)の矢印F(2)に示すように、中間転写ベルト移動方向と同方向に引っ張る力I2は、中間転写ベルト2を介して中転駆動ローラ3に伝達され、中転駆動ローラ3に回転方向と同方向のトルクがかかり、図5(c)で太線で示すように中転駆動ローラ3が加速される。そして、最終的には、図5(a)の矢印F(2)に示すように、中間転写ベルト移動方向と同方向に引っ張る力I2が中間転写ベルト2を介して従動ローラ7にまで伝達される。その結果、図5(c)の太線で示すように従動ローラ7が加速される。
【0044】
また、中間転写ベルト2のプレニップ領域T3の用紙先端との当接部より中間転写ベルト移動方向下流側の部分が、中間転写ベルト移動方向とは逆方向へ引っ張られる。その結果、図5(b)に示すように、二次転写対向ローラ5には、中間転写ベルト移動方向とは逆方向に引っ張る力I1が働き、二次転写対向ローラ5には回転方向とは逆方向のトルクE1がかかる。これにより、二次転写対向ローラ5が減速する。
【0045】
また、中間転写ベルト移動方向とは逆方向へ引っ張る力I1は、図5(a)の矢印F(1)に示すように、中間転写ベルト2を介してテンションローラ6や従動ローラ7へ伝達される。伝達経路を考えれば、中間転写ベルト移動方向と同方向へ引っ張る力I2が従動ローラ7へ伝達され従動ローラ7が加速する前に、中間転写ベルト移動方向とは逆方向へ引っ張る力I1により従動ローラ7が減速するはずである。しかしながら、図5(c)を見てみると、中間転写ベルト移動方向とは逆方向へ引っ張る力I1による従動ローラ7の減速が生じていない。これは、本実施形態では、二次転写ローラ8を中転駆動ローラ3とは別のモータで駆動させたため、二次転写ローラ8の回転駆動力によって中間転写ベルト移動方向とは逆方向へ引っ張る力I1を消滅させてしまったためと考えられる。
【0046】
図5(b)に示すように、中転駆動ローラ3が中間転写ベルト移動方向に引っ張られる力I2により加速することで、中間転写ベルト2の一次転写領域T1が加速される。その結果、図4に示すように正常な画像の部分I1よりも色が薄い部分I2が生じるのである。
【0047】
<(2)用紙19の先端が本ニップ部に突入することによる速度変動>
図6は、用紙先端が二次転写ニップたる本ニップ部に突入した際に生じる速度変動の説明図である。
【0048】
用紙19の先端が本ニップ部に突入することによる速度変動は、用紙19の先端が本ニップ部に突入する際に用紙19の先端が二次転写ローラ8を押し下げることによって二次転写対向ローラ5が減速する減少である。
【0049】
ここで、二次転写対向ローラ5が減速するメカニズムについて図7を用いて説明する。図7に示すように、用紙19の先端が本ニップ部に突入するためには、用紙19の先端が、二次転写ローラ8を用紙19の厚さ相当分押し下げる必要がある。
【0050】
図7に示すように二次転写ローラ8は、付勢コイルバネ10bにより図中矢印A方向に付勢されている。二次転写ローラ8を押し下げるには、用紙19の先端が二次転写ローラ8を押し下げる力(図中の矢印B)が、付勢コイルバネ10bの付勢力を上回る必要がある。用紙19の先端の押し下げる力Bは、用紙先端を図中右側へ搬送する搬送力であり、その搬送力は二次転写対向ローラ5の回転駆動力Cである。すなわち、用紙19の先端が二次転写ローラ8に当接したとき二次転写対向ローラ5には、中間転写ベルト2を搬送するためのトルクの他に、用紙先端が二次転写ローラ8を押し下げるのに必要なトルクが生じる。その結果、図6(b)に示すように二次転写対向ローラ5の回転負荷(図中矢印D1)が増加し、二次転写対向ローラ5が減速する。
【0051】
一方、入口ローラ4についても、二次転写対向ローラ5と同様に減速が生じる。これは、用紙19の先端が本ニップ部に突入すると、用紙19の先端が二次転写ローラ8を押し下げるまで用紙19が前に進まないので、中間転写ベルト2と用紙間の摩擦力によるベルト走行負荷J2が生じる。このベルト走行負荷J2により入口ローラ4に回転方向とは逆方向のトルクD2が働き、入口ローラ4も同様に減速する。
【0052】
このベルト走行負荷J2は、図6(a)の矢印(3)に示すように、中間転写ベルト2を介して中転駆動ローラ3へ伝達される。なお、中転駆動ローラ3に伝達されたベルト走行負荷は、中転駆動ローラ3を回転駆動させるモータの駆動力により打ち消されるため、中転駆動ローラ3より中間転写ベルト移動方向上流側の従動ローラ7に伝達されない。
【0053】
二次転写対向ローラ5が減速すると、中間転写ベルト2の二次転写ニップ下流側張架面たる二次転写対向ローラ5と従動ローラ7との張架領域(以下、テンション制御領域T2という)が中間転写ベルト移動方向とは逆方向へ引っ張られ、図6(a)の矢印F(4)に示すように、テンションローラ6や従動ローラ7に中間転写ベルト移動方向とは逆方向の力J1が伝達される。
【0054】
従動ローラ7に中間転写ベルト移動方向とは逆方向へ引っ張る力J1が伝達されると、図6(c)の太線に示すように従動ローラ7が減速する。従動ローラ7が減速することにより、中間転写ベルト2の一次転写領域T1が中間転写ベルト移動方向とは逆方向へ引っ張られ、中転駆動ローラ3に回転方向とは逆方向のトルクがかかる。その結果、図6(c)の太線に示すように中転駆動ローラ3が減速する。
【0055】
このように、従動ローラ7や中転駆動ローラ3が減速する結果、中間転写ベルト2の一次転写領域T1が減速し、図4に示すように正常な画像の部分I1よりも色が濃い部分I3が生じるのである。
【0056】
<(3)用紙先端が本ニップ部に突入した後における中間転写ベルト2のプレニップ領域T3の戻りによる速度変動>
図8は、用紙先端が本ニップ部に突入した後における中間転写ベルト2のプレニップ領域T3の戻りによる変動の説明図である。
【0057】
図8(b)に示すように、用紙先端が二次転写ローラ8を押し下げて本ニップ部へ突入すると、これまで用紙19の先端によって内側に押し込まれていた中間転写ベルト2のプレニップ領域T3が元に戻る。その結果、上記<(1)用紙19の先端がプレニップ部に突入することによる速度変動>とは逆の現象が発生する。
【0058】
すなわち、プレニップ領域T3の用紙先端が中間転写ベルト2を押していた位置よりも中間転写ベルト移動方向下流側では、中間転写ベルト移動方向と同方向に中間転写ベルト2を押し込むような力G1が発生する。
【0059】
一方、プレニップ領域T3の用紙先端が中間転写ベルト2を押していた位置よりも中間転写ベルト移動方向上流側では、中間転写ベルト移動方向とは逆方向に中間転写ベルト2を押し込むような力G2が発生するのである。
【0060】
中間転写ベルト移動方向とは逆方向に中間転写ベルト2を押し込む力G2は、図8(a)の矢印F(6)に示すように、中間転写ベルト2を介して入口ローラ4や中転駆動ローラ3に伝達される。入口ローラ4に中間転写ベルト移動方向とは逆方向に押し込む力G2が生じることで、図8(b)に示すような入口ローラ回転方向とは逆方向のトルクH1が入口ローラ4に生じ、入口ローラ4が減速する。同様に、中転駆動ローラ回転方向とは逆方向のトルクが中転駆動ローラ3に生じ、図8(c)の太線で示すように、中転駆動ローラ3の速度が低下する。
【0061】
一方、中間転写ベルト移動方向と同方向に中間転写ベルト2を押し込む力G1は、図8(a)の矢印F(5)に示すように、中間転写ベルト2を介して二次転写対向ローラ5やテンションローラ6や従動ローラ7に伝達される。二次転写対向ローラ5に中間転写ベルト移動方向とは逆方向に中間転写ベルト2を押し込む力G1が伝達されると、図8(b)で示すように、二次転写対向ローラ5に回転方向と同方向のトルクH2が生じ、二次転写対向ローラ5が加速する。同様に、従動ローラ回転方向と同方向のトルクが従動ローラ7に生じ、図8(c)の太線で示すように、従動ローラ7の速度が増加する。
【0062】
図9は、従動ローラ7及び中転駆動ローラ3の速度変動と、テンションローラ6及び二次転写ローラ8の変位との関係についての実験データである。
【0063】
図9に示すように、従動ローラ7の線速が落ち込み始める、つまり上記<(2)用紙19の先端が本ニップ部に突入することによる速度変動>の開始とほぼ同時にテンションローラ6は急激に中間転写ベルト外側方向に変位し始めることがわかる。これは、中間転写ベルト2の二次転写対向ローラ5と従動ローラ7との間のベルトテンション(張力)の増大によりテンションローラ6が中間転写ベルト外側に押し下げられていることを意味している。
【0064】
仮に、テンションローラ6が無い場合は、テンションローラ6が中間転写ベルト外側に押し下がることによるベルトテンションの緩和がないので、用紙先端が本ニップ部突入時に発生する負荷トルクがほぼ損失無く従動ローラ7に伝播することになり、従動ローラ7の減速は大きくなる。
【0065】
また、テンションローラ6が中間転写ベルト外側方向に変位し始めるのとほぼ同時に、二次転写ローラ8も中間転写ベルト外側方向(図では下側)に変位し始めていることがわかる。そこで、二次転写ローラ8の変位に連動してテンション制御領域T2のベルトテンションを弱めることができれば、二次転写対向ローラ5を減速させる負荷トルクが従動ローラ7に伝播し難くでき、従動ローラ7や中転駆動ローラ3の速度低下を抑制でき、中間転写ベルト2の一次転写領域T1の速度低下を抑制することができる。
【0066】
[構成例1]
本構成例においては図1に示すように、押し当てローラ41を二次転写ニップ上流側近傍の中間転写ベルト内側に配置し、中間転写ベルト内側から外側方向に当接するようにしている。
【0067】
本構成例においては、用紙先端の二次転写ニップ突入後、用紙が二次転写ニップを通過するときに、二次転写ローラ8の図中下方への変位に連動して、押し当てローラ41が中間転写ベルト内側へと変位する。これにより、中間転写ベルト2の二次転写ニップ上流側張架面の張力を低減し、中間転写ベルト2の一次転写領域において図中矢印X2で示すような減速力を発生させ、用紙突入により発生する前記一次転写領域の図中矢印X1で示すような速度変動オーバーシュートを引き起こす力(加速力)を低減させる。なお、二次転写ニップから用紙19が抜けるときには押し当てローラ41の変位が逆の変位となり、逆の減速力を抑制する。
【0068】
図10は本機構の動作の詳細図である。
押し当てローラ支持部材47は中間転写ベルト移動方向上流側の一端部で押し当てローラ41を支持し、支持部材回転中心52の回転軸を中心に回動するように設けられている。
【0069】
二次転写ユニット10と押し当てローラ支持部材47との距離を規制する規制部材としてカム32が二次転写ユニット側に固定されて設置されており、カム32が押し当てローラ支持部材47に当接することで、二次転写ユニット10が押し当てローラ支持部材47にそれ以上近づくことができなくなり両者間の距離が規制される。なお、本実施形態ではカム32を二次転写ユニット10に設けているが、押し当てローラ支持部材47にカム32を設けても良い。
【0070】
<二次転非加圧時>
二次転写ニップ非加圧時では図10(a)に示すように、偏芯カム48により二次転写ユニット10を下方に押し下げ二次転写ユニット回転支点43を中心に図中時計回りに回転させる。押し当てローラ41は、中間転写ベルト内側方向に退避しており、中間転写ベルト2に対してテンションをほぼ与えない状態で待機している。
【0071】
<二次転写部加圧時(用紙突入前)>
二次転写ニップ加圧時では図10(b)に示すように、偏芯カム48による二次転写ユニット10の押し下げを解除し、二次転写ユニット10を引張りバネ44の引張り力によって二次転写ユニット回転支点43を中心に図中反時計回りに回転させることで、中間転写ベルト2に二次転写ローラ8を当接させる。また、二次転写ユニット10が回転することで、カム32が押し当てローラ支持部材47に突き当たり、押し当てローラ支持部材47が支持部材回転中心52を中心として図中時計回りに回動し、押し当てローラ41が中間転写ベルト2を内側から外側方向に所定量食い込んで押圧する。これにより、二次転写ニップに用紙先端が突入したときの突発的な負荷により生じる前記二次転写ニップ上流側張架面の張力の低下を、押し当てローラ41から中間転写ベルト2に張力が付与されることで低減させることができ、中間転写ベルト2の速度変動を低減させることができる。
【0072】
<用紙突入後>
用紙先端が二次転写ニップに突入し用紙19が二次転写ニップを通過すると図10(c)に示すように、二次転写ユニット10と共にカム32が用紙厚さ相当分押し下げられる。これにより、押し当てローラ支持部材47が図中反時計回りに回動しベルト内側方向に退避する。
【0073】
このような構成により、用紙先端の二次転写ニップ突入後、用紙19が二次転写ニップを通過するときに二次転写ローラ8が変位するのに連動して、押し当てローラ支持部材47により押し当てローラ41が所定量、中間転写ベルト内側方向に退避する。これにより、前記二次転写ニップ上流側張架面が押し当てローラ41から張力を付与されなくなるので、その分、前記二次転写ニップ上流側張架面の張力が弱められ前記二次転写ニップ上流側張架面の張力増加を低減させることができる。よって、用紙先端の二次転写ニップ突入後、用紙19が二次転写ニップを通過するときに前記二次転写ニップ上流側張架面の張力が増加することで生じる中間転写ベルト2の一次転写領域が加速するような速度変動を低減させることができる。
【0074】
また、本実施形態では、中間転写ベルト2の張力変化を検知するセンサを設けたり、押し当てローラ41を変位させるためにアクチュエータを用いたりする必要がなく、二次転写ユニット10と押し当てローラ41とが独立した押し当てローラ支持部材47で支持されているので、装置本体に対して二次転写ユニット10を図中手前側に引き出して機外に取り出す際の操作性が向上する。
【0075】
なお本実施形態では、300[g/m]紙以上の厚紙印刷時において、用紙突入後、カム32と押し当てローラ支持部材47は離間するように設計しているが、用紙突入後も離間しない場合は、カムと支持部材の接触力分だけ転写ニップ圧が減少することになるため、その分二次転写部引張りバネの引張り力を上げる必要がある。ただし、ニップ圧が減少したとしても、転写画像に大きな影響がなければ必ずしも引張りバネ圧を増加させる必要はない。
【0076】
図11は、従来製品とこの機構を搭載した場合について、用紙突入時従動ローラ速度変動を比較した実験データである。図11は、坪量300[g/m]の用紙19を通紙した場合の結果であり、このような厚紙が二次転写ニップに入した場合でも、本構成例の装置では従来装置に比べて約30[%]の速度変動抑制効果を得ることができる。
【0077】
[構成例2]
構成例1では、300[g/m]紙以上の厚紙印刷時において、用紙突入後、カム32と押し当てローラ支持部材47が離間するように設計している。そのため、それより薄い用紙19の場合、用紙突入後においてもカムと支持部材が離間せず、転写ニップ圧が減少してしまい、場合によっては転写性能が損なわれる可能性がある。
【0078】
図12は構成例2における構成の全体図である。本構成例では、構成例1において二次転写ユニット10と押し当てローラ支持部材47との距離を規制する規制部材として二次転写ユニット10に固定されて設けられたカム32を、二次転写ユニット10に対して回転可能に設けられた偏芯カム33に変更して設けている。そして、偏芯カム33の位置を図示しないモータで制御することにより、押し当てローラ支持部材47への突き当て量を複数設定できるようにしたものである。
【0079】
本構成例では、偏芯カム33を押し当てローラ支持部材47に突き当てないモードであるモード1と、偏芯カム32を押し当てローラ支持部材47に所定量突き当てるモードであるモード2とを設けている。
【0080】
モード1は、例えば300[g/m]紙未満の普通紙や薄紙印刷時に用いるようにする。これにより、用紙19の二次転写ニップ突入時における中間転写ベルト2の速度変動が厚紙を用いる場合よりも比較的小さく一次転写ニップにおける転写位置ずれに伴う濃度ムラが生じにくい普通紙や薄紙印刷時に、モード1の状態で印刷を行えば、常に偏芯カム33と押し当てローラ支持部材47とが接触しないため、二次転写ニップのニップ圧を減少させることなく転写を行うことができる。
【0081】
一方、モード2は、例えば300[g/m]紙以上の厚紙印刷時に用いるようにする。用紙19が二次転写ニップに突入前は、偏芯カム33と押し当てローラ支持部材47とが接触するため、二次転写ニップのニップ圧が減少してしまう。ところが、用紙19の二次転写ニップ突入後、偏芯カム33と押し当てローラ支持部材47とが離間するように設計しているため、用紙19が二次転写ニップに突入する前では減少していた二次転写ニップのニップ圧が、モード1を実行したときと同じ水準まで戻り、所定のニップ圧で中間転写ベルト2から用紙19に画像を転写することができる。
【0082】
つまり、本構成例では、用紙19の二次転写ニップ突入時における中間転写ベルト2の速度変動が小さい普通紙や薄紙(300[g/m]紙未満)を用いる場合は、偏芯カム33を押し当てローラ支持部材47に突き当てないモード1を実行し、用紙19の二次転写ニップ突入時における中間転写ベルト2の速度変動が大きい厚紙(300[g/m]紙以上)を用いる場合は、偏芯カム33を押し当てローラ支持部材47に突き当てるモード2を実行し、負荷変動を抑制しつつ所定のニップ圧で転写するというように選択できるようにしている。
【0083】
図13は、偏芯カム33の位置を切り替える偏芯カム位置切り替え機構28の制御回路図を示すものである。図13に示すように、図示しないCPUからの指令が駆動司令部25内のマイクロプロセッサ26へと入力されると、マイクロプロセッサ26は、予めメモリ27に格納しておいた押し当てローラ41の変位量に対応する駆動電圧値を取り出し、偏芯カム位置切り替え機構28の駆動ドライバ29に送り、モータ30を回転させる。
【0084】
図14は、本構成例におけるモード1とモード2とのモード切り替えのフローチャートを示すものである。本構成例では、通常、モード1を用いて印刷処理が行われるように設定されており、モード切り替えOFFのときには偏芯カム33を押し当てローラ支持部材47に突き当てないモード1が実行され、モード切り替えONのときには偏芯カム33を押し当てローラ支持部材47に突き当てるモード2が実行される。
【0085】
印刷ジョブ投入時にモード切り替えONが選択されると(S1でYES)、モード切り替えONとなりモード2が実行され、プリンタ本体のCPUから、駆動司令部25、カム位置切り替え機構28へと指令が伝達され、二次転写ユニット10の加圧時に偏芯カム33を押し当てローラ支持部材47に突き当てる動作が行われる(S2)。このような動作が実行された後、印刷が開始され(S3)、印刷処理を行い(S4)、印刷が終了すると(S5でYES)、モード切り替えOFFとなりモード1が実行され押し当てローラ支持部材47から偏芯カム33を離間させた後(S6)、一連の制御が終了する。なお、モードの切り替え設定は、プリンタ本体でのボタン操作やコンピュータでの印刷設定で設定可能とする。
【0086】
[構成例3]
本構成例では、さらに複数の紙厚によって、表1に示すように押し当てローラ支持部材47への偏芯カム33の突き当て量を複数設定できるようにしたものである。
【0087】
【表1】

【0088】
図15に本構成例における制御のフローチャートを示す。本構成例では、モード2の中でさらに中厚紙モードと超厚紙モードとの2段階の設定ができるようにしており、中厚紙モードと超厚紙モードそれぞれに対応させた偏芯カム33の変位位置に偏芯カム33の位置を切り替える動作を行ってから、印刷を開始するようにしている。
【0089】
印刷ジョブ投入時にモード切り替えONが選択されると(S1でYES)、モード切り替えONとなりモード2が実行される。次に、モード2において超厚紙モードが選択されると(S3でYES)、超厚紙モードが実行され、プリンタ本体のCPUから、駆動司令部25、カム位置切り替え機構28へと指令が伝達され、二次転写ユニット10の加圧時に偏芯カム33を押し当てローラ支持部材47に表1に示した突き当て量だけ突き当てる動作が行われる(S4)。一方、モード2において超厚紙モードが選択されなければ(S3でNO)、中厚紙モードが実行され、プリンタ本体のCPUから、駆動司令部25、カム位置切り替え機構28へと指令が伝達され、二次転写ユニット10の加圧時に偏芯カム33を押し当てローラ支持部材47に表1に示した突き当て量だけ突き当てる動作が行われる(S9)。このような動作が実行された後、印刷が開始され(S5でYES)、印刷処理を行い(S6)、印刷が終了すると(S7でYES)、モード切り替えOFFとなりモード1が実行され押し当てローラ支持部材47から偏芯カム33を離間させた後(S8)、一連の制御が終了する。なお、モードの切り替え設定は、プリンタ本体でのボタン操作やコンピュータでの印刷設定で設定可能とする。
【0090】
用紙19の厚さに比例して用紙19が厚くなるほど用紙19の二次転写ニップ突入時における二次転写ユニット10の下がり量は大きくなる。そのため、用紙19が厚くなればなるほど、押し当てローラ支持部材47に対する偏芯カム33の突き当て量が大きくても、用紙19の二次転写ニップ突入後において偏芯カム33と押し当てローラ支持部材47とを離間させることができるようになるため、二次転写ニップのニップ圧の減少を抑えることが可能となる。
【0091】
このような構成にすることで、中厚紙モードにおいても、カム突き当てによる負荷変動抑制効果を得つつ、所定のニップ圧で転写することが可能となる。
【0092】
上述のものはユーザーによるモード選択であったが、設定ミスに備えて、実際に搬送された用紙19の厚さを検知した上で、位置切り替え動作を行なうようにしても良い。
【0093】
図16は用紙厚さ検知を行う場合の構成図を示すものである。厚さ検知センサ46をレジスト部の上流に配置し、レジスト開始前に厚さ検知を行うようにしている。図17はそのときの動作フローチャートを示すものである。
【0094】
印刷ジョブが投入されてレジスト部に用紙19が給紙されると(S1)、厚さ検知センサ46で用紙厚さが検知される。用紙厚さが所定の閾値を超えると(S2でYES)、モード切り替えONとなりモード2が実行され、プリンタ本体のCPUから、駆動司令部25、カム位置切り替え機構28へと指令が伝達され、二次転写ユニット10の加圧時に偏芯カム33を押し当てローラ支持部材47に突き当てる動作が行われる(S3)。このような動作が実行された後、印刷が開始され(S4)、印刷処理を行い(S5)、印刷が終了すると(S6でYES)、モード切り替えOFFとなりモード1が実行され押し当てローラ支持部材47から偏芯カム33を離間させた後(S7)、一連の制御が終了する。なお、厚さ検知センサ46により用紙厚さを検知する場合には、上述のように紙厚に応じた偏芯カム33の変位量を複数持つテーブルを設定しておき、それら変位量を閾値として各種モードを実行するようにしても良い。
【0095】
[構成例4]
構成例4においては、中間転写ベルト上のトナー像を用紙19へ転写すると同時に定着も行う転写定着装置を有する画像形成装置へと本発明を適用する方法について説明する。
【0096】
図18は転写定着装置を有する画像形成装置の概略構成図である。図18に示すように、二次転写ニップ近傍であり二次転写ニップよりも用紙搬送方向上流側に用紙19を加熱する加熱手段たる加熱装置21が設けられている。加熱装置21によって用紙19にトナーが定着するのに十分な温度まで加熱し、二次転写ニップにおいて転写と定着とを同時に行う構成となっている。
【0097】
図19は、別構成の転写定着装置を有する画像形成装置の概略構成図である。図19に示すように、二次転写ニップ近傍であり中転駆動ローラ3よりも中間転写ベルト移動方向下流側で押し当てローラ41よりも中間転写ベルト移動方向上流側に、中間転写ベルト2を加熱する加熱手段たる加熱装置22が設けられている。加熱装置22によって中間転写ベルト2を加熱し、中間転写ベルト2上のトナーを溶融して、二次転写ニップにおいて転写と定着とを同時に行う構成となっている。
【0098】
図18や図19に示したような転写定着装置を有する画像形成装置においても、用紙19が二次転写ニップへ突入するときの各ローラや中間転写ベルト2や用紙19等の挙動は、構成例1から構成例3の場合と同様である。よって、構成例1から構成例3で示した構成は、そのまま図18や図19に示したような転写定着装置を有する画像形成装置においても適用可能である。また、その際に、動作の詳細については構成例1から構成例3と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0099】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
複数の張架ローラによって張架されながら無端移動せしめられる中間転写ベルト2などのループ状のベルト像担持体と、ベルト像担持体を介して複数の張架ローラの1つと対向し、ベルト像担持体のループ外側面であるおもて面に当接して転写ニップを形成する二次転写ローラ8などの転写ローラが変位可能に設けられ、転写ニップ内に挟み込んだ用紙19などの転写材へ前記おもて面に担持した画像を転写する二次転写ユニット10などの転写手段と、転写ローラの近傍で、ベルト像担持体の前記転写ニップよりもベルト像担持体移動方向上流側の領域に当接し、ベルト像担持体に張力を付与する押し当てローラ41などの当接部材とを備えた画像形成装置において、前記当接部材と前記転写ローラとを支持し、前記転写材が前記転写ニップに突入したときの転写ローラの変位に連動して、該当接部材を前記ベルト像担持体の張力が低減する方向に変位させる連動手段とを有する。これよれば、上記実施形態について説明したように、転写材が転写ニップを通過するときに生じるベルト像担持体の速度変動を抑制できる。
(態様B)
(態様A)において、上記当接部材は上記ベルト像担持体のループ内側面である裏面に当接しベルト像担持体をループ内側から外側に押圧することで張力を付与しており、上記連動手段は、上記転写ローラの変位に連動して前記当接部材を前記ベルト像担持体のループ内側方向へ退避させるものである。これによれば、上記実施形態について説明したように、速度変動の加速部分を低減する力を付与することが可能となり、転写材の転写ニップ突入によるベルト像担持体の速度変動を抑制できる。
(態様C)
(態様A)または(態様B)において、上記連動手段は、上記転写ローラを支持する二次転写ユニット10などの転写ローラ支持部材と、上記当接部材を支持する押し当てローラ支持部材47などの当接部材支持部材と、前記転写ローラ支持部材と前記当接部材支持部材との間の距離を規制するカム32などの規制部材とを含む。これによれば、上記実施形態について説明したように、連動手段が1つの支持部材で構成される場合に比べて、レイアウトの自由度が向上し、転写ローラを支持するユニットのみを引き出す際の操作性が向上する。
(態様D)
(態様A)、(態様B)または(態様C)において、上記規制部材によって、上記転写ローラ支持部材と上記当接部材支持部材との間の距離が調節可能である。これによれば、上記実施形態について説明したように、転写ローラや当接部材の運動性を確保しつつ、当接部材の当接位置を調節することができる。
(態様E)
(態様A)、(態様B)、(態様C)または(態様D)において、上記ベルト像担持体に対する上記当接部材の位置を上記転写材の厚さに応じて調節する。これによれば、上記実施形態について説明したように、厚紙においても速度変動の加速部分の抑制効果を得ることができる。
(態様F)
(態様E)において、上記転写材の厚さを検知する厚さ検知センサ46などの転写材厚さ検知手段を備えており、前記転写材検知手段によって検知した厚さに応じて、上記ベルト像担持体に対する上記当接部材の位置を調節する。これによれば、上記実施形態について説明したように、ユーザーによる紙厚設定が誤って設定された場合でも、紙厚に応じた当接部材の位置を設定することができる。
(態様G)
(態様A)、(態様B)、(態様C)、(態様D)、(態様E)または(態様F)において、上記転写ニップ近傍に設けられ、上記ベルト像担持体または転写材を加熱する加熱装置21や加熱装置22などの加熱手段を有し、前記転写ニップで前記ベルト像担持体上のトナー像を転写材に転写すると同時に定着するように構成した。これによれば、上記実施形態について説明したように、転写定着装置を有する画像形成装置においても前述したのと同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0100】
1 感光体ドラム
2 中間転写ベルト
3 中転駆動ローラ
4 入口ローラ
5 二次転写対向ローラ
6 テンションローラ
7 従動ローラ
8 二次転写ローラ
9 レジストローラ対
10 二次転写ユニット
10b 付勢コイルバネ
11 搬送ベルト
12 加圧ローラ
13 定着ローラ
13a 定着ベルト
14 加熱ローラ
15 定着装置
16 搬送ローラ
17 分離ローラ
18 給紙ローラ
19 用紙
20 給紙カセット
21 加熱装置
25 駆動司令部
26 マイクロプロセッサ
27 メモリ
28 カム位置切り替え機構
29 駆動ドライバ
30 モータ
32 カム
32 偏芯カム
41 押し当てローラ
46 厚さ検知センサ
47 押し当てローラ支持部材
50 転写ユニット
52 支持部材回転中心
54 一次転写ローラ
100 プロセスユニット
101 現像装置
102 ドラムクリーニング装置
103 帯電装置
104 感光体ドラム
110 中間転写ベルト
114 駆動ローラ
115 従動ローラ
116 二次転写対向ローラ
133 二次転写ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0101】
【特許文献1】特開2005−338884号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の張架ローラによって張架されながら無端移動せしめられるループ状のベルト像担持体と、
該ベルト像担持体を介して該複数の張架ローラの1つと対向し、該ベルト像担持体のループ外側面であるおもて面に当接して転写ニップを形成する転写ローラが変位可能に設けられ、該転写ニップ内に挟み込んだ転写材へ該おもて面に担持した画像を転写する転写手段と、
前記転写ローラの近傍で、前記ベルト像担持体の前記転写ニップよりもベルト像担持体移動方向上流側の領域に当接し、該ベルト像担持体に張力を付与する当接部材とを備えた画像形成装置において、
前記当接部材と前記転写ローラとを支持し、前記転写材が前記転写ニップに突入したときの転写ローラの変位に連動して、該当接部材を前記ベルト像担持体の張力が低減する方向に変位させる連動手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記当接部材は上記ベルト像担持体のループ内側面である裏面に当接し該ベルト像担持体をループ内側から外側に押圧することで張力を付与しており、
上記連動手段は、上記転写ローラの変位に連動して前記当接部材を前記ベルト像担持体のループ内側方向へ退避させるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2の画像形成装置において、
上記連動手段は、上記転写ローラを支持する転写ローラ支持部材と、上記当接部材を支持する当接部材支持部材と、前記転写ローラ支持部材と前記当接部材支持部材との間の距離を規制する規制部材とを含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1、2または3の画像形成装置において、
上記規制部材によって、上記転写ローラ支持部材と上記当接部材支持部材との間の距離が調節可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4の画像形成装置において、
上記ベルト像担持体に対する上記当接部材の位置を上記転写材の厚さに応じて調節することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5の画像形成装置において、
上記転写材の厚さを検知する転写材厚さ検知手段を備えており、
前記転写材検知手段によって検知した厚さに応じて、上記ベルト像担持体に対する上記当
接部材の位置を調節することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6の画像形成装置において、
上記転写ニップ近傍に設けられ、上記ベルト像担持体または転写材を加熱する加熱手段を
有し、前記転写ニップで前記ベルト像担持体上のトナー像を転写材に転写すると同時に定
着するように構成したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2013−33087(P2013−33087A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168223(P2011−168223)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】