説明

画像形成装置

【課題】中間転写ベルトの内周側に位置する二次転写対向ローラ(斥力ローラ)や、中間転写ベルトや、中間転写ベルトの外周側に位置する二次転写ローラの各抵抗値が環境によって変動しても、また記録媒体の抵抗値がその種類によって異なったり、記録媒体の抵抗値が環境によって変動しても、二次転写率の低下を抑制することができ、併せて記録媒体がエンボス紙のように表面凹凸が大きくものであっても、その凹部での二次転写率を向上させることにできるようにする。
【解決手段】二次転写実行時に、中間転写体の内周面にトナー像と同極性であって定電流制御された直流バイアスを印加し、同時に中間転写体と記録媒体の間に交番電界を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの機能を併せ持った複合機等の電子写真式画像形成装置に関し、特に、各色用の感光体に静電潜像を作成して、電荷を有するトナーで前記静電潜像を現像することで単色のトナー像を作成し、各感光体上の単色のトナー像を順次中間転写ベルトや中間転写ドラムの中間転写体に一次転写することで中間転写体上にカラー像を作成し、このカラー像を記録媒体(以下、用紙ともいう)に二次転写することで、記録媒体上にカラー画像を作成する画像形成装置に関するものである。また、カラー画像の二次転写だけでなく、原稿読取とPC上で構築した文字情報や図形情報を合成する場合のように中間転写体への一次転写、記録媒体への二次転写を経る画像形成装置にも等しく本発明が適用される。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において、中間転写ベルト(中間転写体)に一次転写されたトナー像を、二次転写ニップ部に搬送される記録媒体上に二次転写することが公知である。例えば、4つの感光体ドラム(像担持体)が中間転写ベルトに対向するように並設され、それら4つの感光体ドラムでそれぞれ、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンのトナー像が形成される様式の画像形成装置では、各感光体ドラムで形成された各色のトナー像が、複数のローラ部材によって張架・支持された中間転写ベルト上に重ねて転写される(一次転写)。さらに、中間転写ベルト上に担持された合成カラートナー像が、中間転写ベルトと二次転写ローラ(二次転写部材)との当接位置(二次転写ニップ部)で、記録媒体上に転写される(二次転写)。なお、中間転写ベルトを張架・支持する複数のローラ部材の一つである二次転写対向ローラ(二次転写対向部材)が中間転写ベルトを介して二次転写ローラに圧接して二次転写ニップ部を形成する。
【0003】
一次転写、二次転写を経て記録媒体に画像形成する画像形成装置において、環境変動によって転写率が低下する事態を回避する工夫がとられている。例えば特許文献1によれば、二次転写ローラを接地し、中間転写ベルト内周側に位置する二次転写対向ローラにトナーの極性と同極性の電流を一定量流すことで、二次転写対向ローラや中間転写ベルトや二次転写ローラの抵抗値(装置側の抵抗値)が環境によって変動したり、記録媒体の抵抗値が環境によって変動しても、二次転写工程における転写率の低下を避けることができるとする。しかしながら、装置を高速化したときや、中間転写ベルト上のトナー像のトナー付着量や帯電量や非静電付着力が大きいときや、OHPシート等のように体積抵抗が高くほぼ絶縁性を有するといえるような記録媒体を用いるときや、二次転写対向ローラや中間転写ベルトや二次転写ローラの抵抗値を予め高く設定したとき等には、二次転写対向ローラに一定の二次転写電流を与えるための二次転写電圧が大きくなってしまう問題があった。そして、このように二次転写電圧が大きくなってしまう装置においては、大きな電圧を出力するための大きく高価な高圧電源や、大きな電圧に耐えるための高耐圧性の太い高圧ハーネスを設置する必要が生じてしまう。更に、二次転写対向ローラに接続する電極の周りに高耐圧性の高価な絶縁部材を設けたり、二次転写対向ローラに対する沿面距離や空間距離を大きく設定したりする必要が生じてしまう。
【0004】
また、記録媒体の表面性が異なると、同じ転写条件では良好な転写画像を形成することが困難となるので、記録媒体の表面性が異なっても良好な転写性を確保するために、特許文献2によれば、二次転写対向ローラ(静電斥力用電極手段)にトナーと同極性のバイアスを定電流又は定電圧で印加して、二次転写ローラ(静電引力用電極手段)にトナーと逆極性のバイアスを定電流又は定電圧で印加することが知られている。ただ、このような対応は二次転写対向ローラへのバイアスの印加と二次転写ローラへのバイアスの印加とを転写条件に応じて選択的に行うものであり、それぞれに印加する電圧が大きくなって、装置全体が大型化・高コスト化してしまう可能性があった。
【0005】
またエンボス紙等の表面平滑度が低い記録媒体に画像を形成する場合の転写性能を向上させるために、特許文献3では、転写前に記録媒体の転写面をトナー極性と逆極性に帯電し、転写時に二次転写ローラにDC電圧にAC電圧を重畳した転写バイアスを印加することが提案されている。その際、中間転写ベルトの背面は接地されている。このような構成では、装置側の抵抗値、あるいは記録媒体の抵抗値が環境によって変動すると、二次転写率が低下することを避けることができない。
【0006】
なお、記録媒体の表面性の違いによる対応に関しては、二次転写ローラのクリーニングを良好にする目的で、中間転写ベルトの内周側に直流バイアスを印加し、二次転写ローラに交流バイアスを印加する構成も知られている(特許文献4)。しかし、この構成では、二次転写時には、スイッチを二次転写ローラが設置される側とし、中間転写ベルトの背面に印加するバイアスが定電圧である。そのため、装置側の抵抗値の変動や記録媒体の種類による抵抗値の違いに対して二次転写率も異なることになるし、エンボス紙の凹部の転写性を良くすることもできない。
【0007】
特許文献5には、装置を高速化した場合等であって、装置側の抵抗値や記録媒体の抵抗値が環境によって変動しても、装置全体が大型化・高コスト化せず、二次転写工程における転写率の低下を抑制できるようにすべく、二次転写時に、電流が一定になるように二次転写対向ローラを介して中間転写ベルトにトナーと同極性のバイアスを印加し、電圧が一定になるように二次転写ローラにトナーと逆極性のバイアスを印加する構成が提案されている。これら印加のための電源はともに直流電源である。このような構成では、エンボス紙等の表面凹凸の大きな記録媒体にあっては、凹部の転写電位が凸部の転写電位に比較して低くなり、凹部にトナーの転写が十分に行われずに画像の白抜けが発生する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、中間転写ベルトの内周側に位置する二次転写対向ローラ(斥力ローラ)や、中間転写ベルトや、中間転写ベルトの外周側に位置する二次転写ローラの各抵抗値が環境によって変動しても、また記録媒体の抵抗値がその種類によって異なったり、記録媒体の抵抗値が環境によって変動しても、二次転写率の低下を抑制することができ、併せて記録媒体がエンボス紙のように表面凹凸の大きなものであっても、その凹部での二次転写率を向上させることにできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記課題は、感光体と、該感光体上に形成されたトナー像を一次転写される中間転写体と、中間転写体の外周に当接して二次転写ニップを形成する二次転写部材とを備える画像形成装置において、中間転写体の内周側にトナー像と同極性であって定電流制御された直流バイアスを印加する第1の構成と、中間転写体と記録媒体の間に交番電界を形成する第2の構成とを備え、二次転写ニップに記録媒体を挟持してトナー像を記録媒体に転写するに際して前記両方の構成により同時に所定のバイアスを印加することによって、解決される。即ち、二次転写実行時に、中間転写体の内周面にトナー像と同極性であって定電流制御された直流バイアスを印加し、同時に中間転写体と記録媒体の間に交番電界を形成するのである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、二次転写実行時に、中間転写体の内周面にトナー像と同極性であって定電流制御された直流バイアスを印加し、同時に中間転写体と記録媒体の間に交番電界を形成するので、環境変動があっても転写率の低下を抑制でき、また表面凹凸の大きな記録媒体であっても転写性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概略図である。
【図2】図1のA−A断面図で、第1の実施形態を示す。
【図3】図2に対応し第2の実施形態を示す断面図である。
【図4】分離除電装置を備える場合の二次転写ニップ近傍の側方断面図である。
【図5a】分離除電針に印加するバイアスと二次転写ローラ芯金に印加するバイアスと両バイアスの電位差の周期的変化を示すグラフであり、分離除電バイアスと二次転写バイアスの周波数が異なる例のグラフである。
【図5b】分離除電針に印加するバイアスと二次転写ローラ芯金に印加するバイアスと両バイアスの電位差の周期的変化を示すグラフであり、分離除電バイアスと二次転写バイアスの周波数が同じで位相が1/2周期ズレる例のグラフである。
【図5c】分離除電針に印加するバイアスと二次転写ローラ芯金に印加するバイアスと両バイアスの電位差の周期的変化を示すグラフであり、分離除電バイアスと二次転写バイアスの周波数が同じで位相が±1/4周期以上にズレる例のグラフである。
【図5d】分離除電針に印加するバイアスと二次転写ローラ芯金に印加するバイアスと両バイアスの電位差の周期的変化を示すグラフであり、分離除電バイアスと二次転写バイアスの周波数が同じで位相が±1/4周期以下にズレる例のグラフである。
【図5e】分離除電針に印加するバイアスと二次転写ローラ芯金に印加するバイアスと両バイアスの電位差の周期的変化を示すグラフであり、分離除電バイアスと二次転写バイアスの周波数と位相が同じ例のグラフである。
【図6】本発明に係る画像形成装置の第2の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について説明する。図1は、画像形成装置としてのフルカラープリンタ100の概略構成を示すものである。図1において、プリンタ100は、その中央にプリンタ本体300を備え、その下方に給紙部200を、上方に画像スキャナー部400、原稿自動送り装置(以下、ADFという)500を有している。プリンタ本体300において、互いに異なる4色(イエロー:Y、マゼンタ:M、シアン:C、ブラック:K)のトナーを用いる4組の画像形成ユニットを並列して備える画像作像部10があり、その下方には、これら画像形成ユニットで形成されたトナー像が転写されるための中間転写体としての中間転写ベルト50を備える転写手段としての中間転写ユニット5が備えられている。つまり、プリンタ100は、4組の画像形成ユニットを中間転写ベルト50の移動方向に沿って並設したタンデム型の画像形成装置である。
【0013】
各画像形成ユニットは、感光体としての感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kと、各感光体ドラムの表面を帯電ローラによって帯電する帯電装置12(図の明瞭化のため感光体ドラム1Yに対するものだけで示す)とを備えている。また、ADF500で搬送された原稿を画像スキャナー部400で読み取った画像情報や不図示のPCから伝えられた画像情報に基づいて、各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kの帯電された表面をレーザ光により露光することで各表面に潜像を形成する画像情報露光装置3を備えている。また、各感光体ドラム1Y、1M、1C、1K上の潜像をトナー像化する画像形成手段としての現像装置13(図の明瞭化のため感光体ドラム1Yに対するものだけで示す)と、各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kの表面をクリーニングする感光体クリーニング装置14(図の明瞭化のため感光体ドラム1Yに対するものだけで示す)とを各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kの周囲に備えている。
【0014】
上記4組の画像形成ユニットの感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kは、不図示の感光体ドラム駆動装置によって図中矢印方向に回転駆動される。尚、ブラック用の感光体ドラム1Kと、カラー用の感光体ドラム1Y、1M、1Cとを独立に回転駆動できるようにしてもよく、そうすることにより、例えば、モノクロ画像を形成するときにはブラック用の感光体ドラム1Kのみを回転駆動し、カラー画像を形成するときには4つの感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kを同時に回転駆動することができる。
【0015】
中間転写ベルト50は、二次転写対向ローラ51および支持ローラ54、55といった複数の支持ローラに掛け回されている。これら支持ローラの一つ(通常、支持ローラ54)を不図示の駆動モータによって回転駆動することにより、中間転写ベルト50を図中時計方向に無端移動させることができる。ローラ56は中間転写ベルト50の外周面に当接するテンションローラである。
【0016】
各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kから中間転写ベルト50にトナー像を転写する一次転写位置には、中間転写ベルト50を間に挟んで各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに対向するように一次転写ローラ15(図の明瞭化のため感光体ドラム1Yに対するものだけで示す)が設けられている。中間転写ユニットを構成するこの一次転写ローラ15は、モノクロ画像を形成するときは、カラー用の感光体ドラム1Y、1M、1Cから離間するように部分的に揺動させられ、画像形成自体を行わないときは全ての感光体ドラムから離間するように、接離機構を備えている。
【0017】
転写体としての中間転写ベルト50は、一次転写ローラ15によって押圧されることにより、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに対して圧接し、それぞれの感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kとの対向部で一次転写ニップを形成している。
【0018】
また、中間転写ベルト50を介して二次転写対向ローラ51に対して対向する位置には、中間転写ベルト50に所定のニップ圧で当接され、中間転写ベルト50上に形成されたトナー像を記録媒体である用紙に転写する二次転写ローラ52を備えている。
【0019】
上述のような構成のプリンタ100で、カラー画像を形成するとき、各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kは、図中矢印方向に回転駆動され、このとき、各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kの表面は、帯電装置12によって所定の極性、例えば、マイナス極性に帯電される。次いで、各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kの帯電面に、画像情報露光装置3から出射する光変調されたレーザ光を照射して、これによって、各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kの表面に静電潜像を形成する。即ち、レーザ光が照射され感光体表面部分の電位の絶対値が低下した部分が静電潜像(画像部)となり、レーザ光が照射されず電位の絶対値が高く保たれた部分が地肌部となる。次いで、静電潜像が、現像装置13に収納され所定の極性に帯電されたトナーによって、現像されて、トナー像として可視化される。
【0020】
各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに形成された各色のトナー像は、各一次転写ニップ部で圧力と転写電界の作用により中間転写ベルト50上に順次重ね合わせて転写される。これにより、中間転写ベルト50上に4色のトナー像からなるフルカラートナー像が形成される。
【0021】
中間転写ベルト50に転写されずに各感光体ドラム1Y、1M、1C、1K上に残留した転写残トナーは、感光体クリーニング装置14によって掻き取られ、各感光体ドラム1Y、1M、1C、1K表面が清掃される。尚、各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kから除去したトナーを、不図示のトナーリサイクル装置を用いて現像装置に搬送して、トナーリサイクルすることも可能である。
【0022】
一方、給紙部200の給紙トレイ21a〜21dのいずれかから用紙が、中間転写ベルト50と二次転写ローラ52との間に、所定のタイミングで搬送される。このとき、中間転写ベルト50上に重ね合わされたフルカラートナー像は、二次転写ローラ52と二次転写対向ローラ51との間に形成された二次転写ニップ部で用紙上に一括転写される。フルカラートナー像が転写された用紙は定着装置7により加熱・加圧されて、トナー像が用紙上に定着される。その後、像定着された用紙は排紙部から排紙トレイ8へ排出されるか、反転ユニット9を介して裏面に画像形成されるべく備えられる。中間転写ベルト50上に残留した転写残トナーは、中間転写体クリーニング装置によって掻き取られ、ベルト表面が清掃される。
【0023】
次に図2において、一次転写ニップと二次転写ニップのそれぞれに電圧印加する構成の一例について詳細に説明する。図2では用紙Pが二次転写ローラ52と二次転写対向ローラ51とに挟持され中間転写ベルト50から画像を転写されている状態である。
【0024】
中間転写ベルト50やこれに内包される一次転写ローラ15、二次転写対向ローラ51、一次帯電用電源、二次帯電用電源、更に図示しないが中間転写体クリーニング装置等を含んで構成される中間転写ユニットは、ユニット筐体58に取り纏められて、プリンタ本体300に対して着脱自在に構成されており、既述のように、感光体ドラム1に加圧当接し、あるいは離間するために接離機構を備えた一次転写ローラ15は、中間転写ユニット内で変位可能になっている。
【0025】
一次帯電用電源である直流高圧電源60は、一次転写ローラ15に、トナーの極性とは逆極性の電圧をバイアス印加する定電流電源である。色ごとに備えられている。一次転写ローラ15を支承するホルダ62の一方の内部には、一次転写ローラ15の軸部(芯金)の端面に接触する接続端子を備えた高圧コネクタ(図示せず)が備えられ、高圧電線(ハーネス)64を介して直流高圧電源60と電気接続している。
【0026】
本実施の形態において二次帯電用電源は、二次転写対向ローラ51に、トナーの極性(本例ではマイナス)と同極性の電圧をバイアス印加する直流高圧電源70(定電流制御)と、二次転写ローラ52にバイアス印加する交流高圧電源72(定電圧制御)とから構成されており、直流高圧電圧70が一次帯電用直流高圧電源60(各色用)とともに同一基板に取り付けられて、中間転写ベルト50の内周面側(図1において、二次転写対向ローラ51の上方域の空間スペース)に配置されているのに対して、交流高圧電源72は中間転写ベルト50の外部に配置されている。直流高圧電源70を中間転写ベルト50の内周領域に配することで、内周領域の有効な空間利用ができ、また印加する二次転写対向ローラ51の近くに電源を配置することで、高圧電源と印加される対向ローラとを繋ぐ高圧線を短くでき、コネクタ部材を減らすことが可能である。また交流高圧電源72を中間転写ベルト50の外部で二次転写ローラ52の近傍に配置することで、交流電源と印加対象たる中間転写ベルト50を繋ぐ高圧線の長さを短くできる。図2に示すように、交流高圧電源72が二次転写ローラ52や二次転写対向ローラ51を間に挟んで直流高圧電源60,70と十分な距離をとることで、直流電源の高圧線や信号線に交流による干渉(高圧線同士の干渉や信号線にノイズが乗る事態)が引き起こされることがない。
【0027】
ユニット筐体58に取り付けられ二次転写対向ローラ51を支承するホルダ74の一方の内部には、二次転写対向ローラ51の軸部(芯金)の端面に接触する接続端子を備えた高圧コネクタ(図示せず)が備えられ、高圧電線(ハーネス)76を介して直流高圧電源70と電気接続している。同様に、二次転写ユニット筐体82に取り付けられ二次転写ローラ52を支承するホルダ78の一方の内部には、二次転写ローラ52の軸部(芯金)の端面に接触する接続端子を備えた高圧コネクタ(図示せず)が備えられ、高圧電線(ハーネス)80を介して交流高圧電源72と電気接続している。また一次帯電用直流高圧電源60、二次帯電用直流高圧電源70、交流高圧電源72は、信号線を介してプリンタ本体300に設置された制御板(図示せず)に接続されている。ちなみに二次転写ユニット筐体82には、図示しないが、二次転写ローラ52に対するクリーニング機構、潤滑剤供給機構、紙粉取りブラシ等が取り付けられている。そして二次転写ローラ52を含む二次転写ユニットは、不図示の接離機構によって、二次転写対向ローラ51に対して接離可能に変位でき、中間転写ユニットに対して、更にはプリンタ本体300に対して、着脱自在に構成されている。
【0028】
プロセススピード282mm/秒で駆動する中間転写ベルト50は、PI(ポリイミド)樹脂を主たる材質として単層で構成され、厚みが80μm、幅が320mmとなっているが、フッ化ビニルデンやエチレン-四フッ化エチレン共重合体を用いることもでき、複数層に構成してもよく、表面に離型層をコートしてもよい。そして中間転写ベルト50は、23℃50%環境下でのベルト裏面側の表面抵抗率が9.5〜11.5logΩ/□(109.5〜1011.5Ω/□、三菱化学製のハイレスタIPとそれに付属するHRプローブを用いて印加電圧500V、10秒値として求められた)、体積抵抗率8〜10logΩcm(10〜1010Ωcm)程度に設定されている。
【0029】
一次転写ローラ15は、8mm径の芯金に、NBR(ニトリルゴム)とECO(エピルロールヒドリン)の共重合体で成る弾性抵抗層を設けて、外径18mm、長さ302mmに形成されている。このローラの抵抗は、23℃50%環境下で7.25〜8.25logΩ程度に設定されている。トナーと逆極性の定電流直流高圧電源60を用いて芯金にバイアス印加するが、それはカラー印刷時に+20〜+35μAの定電流が流れるように制御されている。
【0030】
二次転写対向ローラ(斥力ローラ)51は、16mm径の芯金に、NBR(ニトリルゴム)とECOの共重合体で成る弾性抵抗層を設けて、外径24mm、長さ302mmに形成されている。このローラの抵抗は、23℃50%環境下で7.25〜8.25logΩ程度に設定されている。既述のように、トナーと同極性の定電流直流高圧電源70を用いて芯金にバイアス印加するが、それはカラー印刷時に−30〜−50μAの定電流が流れるように制御されている。
【0031】
二次転写ローラ52は、16mm径の芯金に、NBR(ニトリルゴム)とECOの共重合体で成る弾性抵抗層を設けて、更にフッ素系樹脂の表層を備えて、外径24mm、長さ312mmに形成されている。このローラの抵抗は、23℃50%環境下で7.25logΩ以下に設定されている。既述のように、定電圧交流高圧電源(サイン波)72を用いて芯金にバイアス印加するが、それはエンボス紙を印刷する際に6〜10kV(PtoP)、500〜1kHzに設定されている。この設定に際しては、4〜12kVの交流電圧が出力可能な交流電源を用いて、印刷されたエンボス紙上の濃度レベルを目視ランクにより評価した(凹み部分が小さく二次転写率を直接測定するのが困難なため)。その評価実験によれば、凹凸の凹みが大きくなるにしたがって適正な交流電圧が大きくなる傾向があり、また凹みが大きくなるにしたがってランクが上がらなくなることが分かった。交流電圧を大きくし過ぎると微小放電によりトナーが飛ばされるようであり、いったん上がった濃度レベルが再び低下する。更に、装置側の抵抗が上がるにしたがい、また環境が低温低湿になるにしたがい、適正な交流電圧が大きくなることも分かった。
【0032】
なお、一次転写ローラ15や二次転写対向ローラ51や二次転写ローラ52の抵抗値は、接地された金属平板の上にローラを乗せた状態で、測定用の高圧電源よりローラ芯金に1kVの電圧を印加した場合に金属平板に流れる電流を測定して、その電流値をオームの式に代入して求めた値である。
【0033】
一次転写ニップと二次転写ニップのそれぞれに電圧印加する構成の別例を、図3に基づいて説明する。図2の例との違いは、二次帯電バイアスに関連した部分であり、図2と同一の部分については同一の符号を付し、その重複説明は省略する。本実施の形態において二次帯電用電源は、トナーの極性と同極性の定電流直流に定電圧交流(サイン波)を重畳した電流を、二次転写対向ローラ51にバイアス印加する高圧電源84である。ユニット筐体58に取り付けられ二次転写対向ローラ51を支承するホルダ74の一方の内部に備えられた高圧コネクタ(図示せず)と、高圧電線(ハーネス)76とを介して、高圧電源84は、二次転写対向ローラ51の軸部芯金の端面に電気接続していて、エンボス紙を印刷する際に、直流成分−30〜−50μA、交流成分6〜10kV(PtoP)、500〜1kHzであるように設定されている。一方、二次転写ローラ52の芯金は接地されている。また図3の例において、二次転写用電源84の交流分によって一次転写用直流が不安定化する事態を回避するために、一次転写用電源60と二次転写用電源84の間に交番電界遮蔽板(金属製間仕切り)を配したり、一次転写用電源60を中間転写ベルト50の内周領域内で二次転写用電源84から遠ざけたりするのがよい。既述のように、モノクロ画像形成時に、接離機構によって一次転写ローラ15が感光体ドラムから離間するようになっており、中間転写ベルト内周領域のスペース的制約があるので、遮蔽板の配設が優先される。
【0034】
図2の例では、中間転写ベルト50を挟んで、内周側にある二次転写対向ローラ51に、トナーの極性と同極性の電圧をバイアス印加し、外側にある二次転写ローラ52に直流電圧を含まない交流電圧をバイアス印加し、二次転写対向ローラ51へのバイアス印加のための直流高圧電源70がベルト内周側に配置され、二次転写ローラ52へのバイアス印加のための交流高圧電源72がベルト外部に配置されている。このような構成において、未定着トナー像を転写された記録媒体を中間転写ベルト50から分離するためにバイアス印加することが公知であり実行されていて、このバイアス印加は二次転写ニップ部の記録媒体搬送方向のすぐ下流側に設けられた分離除電装置によって行われる。このような分離除電装置を備えた画像形成装置では、その分離除電針に印加される分離除電バイアスと、分離除電装置の記録媒体搬送方向のすぐ上流側に配された二次転写ローラに印加される交流バイアスが、互いの電源や電線に交流電流を流し合い干渉し、更に分離除電針と二次転写ローラとの間の周期的に変動する電界が大きくなる瞬間が生じて、分離除電針と二次転写ローラの間でリークが生じ易くなる。そこで、そのような不具合を防止する構成を図4において説明する。
【0035】
二次転写ニップ部には、中間転写ベルト50の回動に伴って中間転写ベルト50上の未定着トナー像が搬送されるとともに、タイミングを合わせて用紙Pも送り込まれる。この結果、二次転写ニップ部では、中間転写ベルト50の未定着トナー像載置面と用紙表面とが二次転写対向ローラ51と二次転写ローラ52によって挟持される。その際、定電流制御された直流高圧電源70によって、二次転写対向ローラ51(の芯金)に、したがって中間転写ベルト50の内周面にトナーの極性と同極性の、即ち、マイナスの電圧がバイアス印加され、定電圧制御された交流高圧電源72によって、二次転写ローラ52にバイアス印加され、中間転写ベルト50と用紙Pの間に交番電界が形成される。
【0036】
二次転写ニップ部の用紙搬送方向すぐ下流側に分離除電装置30が配されている。この分離除電装置30は、二次転写ローラ52に対向した第1部材31と、第1部材31と一体をなし中間転写ベルト50から分離された用紙Pを案内するガイド面33を有する第2部材32と、第1部材31と第2部材32によって挟持され、第1部材31と第2部材32によって形成される孔部34内において保持された分離除電針35と、分離除電針35に接続され分離除電針35に電圧を印加する電圧印加手段36とを有している。この電圧印加手段36は、直流と交流を重畳した交番電圧源である。電圧印加手段を交流電源とすることも可能である。電圧印加手段36は交流高圧電源72とともに中間転写ベルト50の外部に配され、二次転写ユニット筐体82に取り付けられ、あるいは共通の基板に取り付けられている。分離除電針35は、0.1mm厚のステンレス板を幅約3mm、奥行約8mmの鋸形状に形成したもので、紙種を問わず、印刷時には図5に示す交流成分が印加される。
【0037】
分離除電針35に印加される交流電圧、又は交番電圧の交流成分の周波数は、二次転写ローラ52に印加される交流電圧の周波数に等しく、位相のズレが四半周期以下であるように制御されている。つまり、分離除電針35からの高圧交流出力を生成するにあたり、外部より入力されるクロックを分周回路に介した後、波形成形を行い高圧交流出力を生成し、二次転写ローラ52からの高圧交流出力を生成するにあたり、分離除電針35からの高圧交流出力を生成するために使用した外部入力クロックにて分周回路及び位相調整回路を介した後、波形成形を行い高圧交流出力を生成する高圧電源において、分離除電針35からの高圧交流出力波形と二次転写ローラ52からの高圧交流出力波形の位相を四半周期以下にずらして出力する。
【0038】
分離除電針35に印加するバイアスと二次転写ローラ52の芯金に印加するバイアスと、両者の電位差の周期的変化を図5に示す。a〜eのいずれも、分離除電針35に印加するバイアスは12kV(PtoP)、二次転写ローラ芯金に印加するバイアスは8kV(PtoP)として、周波数や位相がそれぞれのグラフ中に示す通りである。
【0039】
図5aは、分離除電針35に印加するバイアスと二次転写ローラ52の芯金に印加するバイアスの周波数が異なる場合である。分離除電針35に印加するバイアスと二次転写ローラ52の芯金に印加するバイアスとの電位差は、分離除電針35に印加するバイアスの周波数と二次転写ローラ52の芯金に印加するバイアスの周波数の相違により、うねり状に大きくなったり小さくなったりするが、うねりが最大となる時の両者の電位差は両者のピーク電圧の半分の和である10kVになる。
【0040】
図5b〜図5eでは、分離除電針35に印加するバイアスと二次転写ローラ52の芯金に印加するバイアスの周波数が同じであるが、位相のズレが異なっている。図5bは位相が半周期、すなわち最大にズレる場合を示す。分離除電針35に印加するバイアスと二次転写ローラ52の芯金に印加するバイアスとの電位差は、山の頂上と谷の底が重なるので、両者のピーク電圧の半分の和である10kVになる。図5cは位相が四半周期以上半周期未満の間でズレる場合を示す。分離除電針35に印加するバイアスと二次転写ローラ52の芯金に印加するバイアスとの電位差は、半周期ズレた図5bの山頂と谷底までほどではないが、山の部分と谷の部分が重なるので、大きくなる。図5dは位相が四半周期未満でズレる場合を示す。分離除電針35に印加するバイアスと二次転写ローラ52の芯金に印加するバイアスとの電位差は、同位相の図5eの山頂と山頂、谷底と谷底とまではいかないが、山と山、谷と谷が重なるので、小さくなる。図5eは位相が同位相、すなわちズレない場合を示す。分離除電針35に印加するバイアスと二次転写ローラ52の芯金に印加するバイアスとの電位差は、山頂と山頂、谷底と谷底が重なるので、小さくなり、両者のピーク電圧の半分の差である2kVになる。
【0041】
以上より、分離除電針35に印加するバイアスと二次転写ローラ52の芯金に印加するバイアスとの電位差を小さくするには、両者が同一周波数で位相のズレが四半周期以下とする場合であることが分かる。電位差が小さいことで、分離除電針と二次転写ローラの間の周期的に変動する電界を常に小さくでき、分離除電針と二次転写ローラの間のリークを防止できる。なお、分離除電針35に印加するバイアスと二次転写ローラ52の芯金に印加するバイアスとの電位差が最小になるのは、両者が同一周波数で同位相の場合である。
【0042】
除電部材に印加する交番電圧源36が二次転写ローラ52用の交流高圧電源72と同様に中間転写ベルト50の外部に配され、特に、二次転写ローラ52や二次転写対向ローラ51を間に挟んで直流高圧電源60,70と十分な距離をとっているので、直流電源の高圧線や信号線に交流による干渉(高圧線同士の干渉や信号線にノイズが乗る事態)が引き起こされることがない。
【0043】
なお、図6に示すような構成のプリンタにおける二次転写ニップにも、本発明を適用することが可能である。このプリンタは、1つの感光体1の周囲に、Y,M,C,Bk用の現像装置13Y,13M,13C,13Bkを有している。画像形成を行う場合、まず、感光体1の表面を帯電装置12によって一様に帯電させた後、感光体1の表面に対してY用の画像データに基づいて変調されたレーザ光ーを照射して,感光体1の表面にY用の静電潜像を形成する。そして、このY用の静電潜像を現像装置13Yによって現像してYトナー像を得た後、これを中間転写ベルト20上に一次転写する。その後、感光体1の表面上の転写残トナーをドラムクリーニング装置14によって除去した後、感光体1の表面を帯電装置12によって再び一様に帯電させる。次に、感光体1の表面に対して、M用の画像データに基づいて変調されたレーザー光を照射して、感光体1の表面にM用の静電潜像を形成した後、これを現像装置13Mによって現像してMトナー像を得る。そして、このMトナー像を中間転写べルト50上のYトナー像に重ね合わせて一次転写する。以降、同様にして、感光体1上でCトナー像、Kトナー像を順次現像して、ベルト上のYMトナー像上に順次重ね合わせて一次転写していく。これにより、中間転写ベルト50上に4色重ね合わせトナー像を形成する。
【0044】
その後、中間転写ベルト50上の4色重ね合わせトナー像を、二次転写ニップで用紙の表面に一括二次転写して、用紙上にフルカラー画像を形成する。そして、定着装置7によって用紙にフルカラー画像を定着せしめた後、用紙を機外に排出する。
【0045】
このような構成のプリンタにおける二次転写バイアス電源84を、第1実施形態と同様に構成してもよい
【符号の説明】
【0046】
15 一次転写ローラ
50 中間転写ベルト
51 二次転写対向ローラ
52 二次転写ローラ
58 中間転写ユニット筐体
60 一次帯電用直流高圧電源
62 ホルダ
64 高圧電線(ハーネス)
70 二次帯電用直流高圧電源
72 二次帯電用交流高圧電源
74 ホルダ
76 高圧電線(ハーネス)
78 ホルダ
80 高圧電線(ハーネス)
82 二次転写ユニット筐体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特許第3697626号公報
【特許文献2】特許第3592488号公報
【特許文献3】特開2006−267486号公報
【特許文献4】特開2006−330110号公報
【特許文献5】特開2011−7907号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、該感光体上に形成されたトナー像を一次転写される中間転写体と、中間転写体の外周に当接して二次転写ニップを形成する二次転写部材とを備える画像形成装置において、
中間転写体の内周側にトナー像と同極性であって定電流制御された直流バイアスを印加する第1の構成と、中間転写体と記録媒体の間に交番電界を形成する第2の構成とを備え、二次転写ニップに記録媒体を挟持してトナー像を記録媒体に転写するに際して前記両方の構成により同時に所定のバイアスを印加することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記第1の構成が、定電流制御された直流電源であり、前記第2の構成が二次転写部材に接続された交流電源であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において、前記直流電源が中間転写体の内部に配され、前記交流電源が中間転写体の外部に配されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、一次転写のための直流電源が中間転写体の内部に配されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置において、中間転写体の内周側にトナー像と同極性であって定電流制御された直流バイアスを印加する直流電源と一次転写用直流電源が同一基板に取り付けられることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像形成装置において、交流に直流を重畳した電源と二次転写部材の接地をもって前記第1の構成と前記第2の構成とを実現することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項2に記載の画像形成装置において、二次転写ニップの記録媒体搬送方向下流側に記録媒体を除電する除電部材が配され、この除電部材に交流電圧又は直流と交流を重畳した交番電圧を印加し、その際、二次転写部材に印加する交流電圧と除電部材に印加する交流電圧若しくは交番電圧の交流成分の周波数を等しくし、位相のズレを四半周期以下に調整することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置において、前記直流電源が中間転写体の内部に配され、二次転写部材に接続された前記交流電源と除電部材に印加する電源とが中間転写体の外部に配されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の画像形成装置において、一次転写のための直流電源が中間転写体の内部に配されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−3335(P2013−3335A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134078(P2011−134078)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】