説明

画像形成装置

【課題】定着部の定着温度を最適に設定する画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、画像形成装置本体が被転写材に画像を形成することができない状態から被転写材に画像を形成することが可能な状態に移行したことを検出する検出部92と、検出部92によって被転写材に画像を形成することが可能な状態に移行したことが検出された場合に、記憶部80又は外部記憶部110に画像データが記憶されているか否かを判定する判定部93と、判定部93によって記憶部80又は外部記憶部110に画像データが記憶されていると判定された場合に、画像データに含まれる画素の階調値に基づいて、画素と階調値とに関するデータ量を算出する算出部94と、算出部94によって算出されたデータ量に対応する定着部60の定着温度を選択し、選択した定着温度になるよう定着部60を制御する定着制御部95と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーを利用して被転写材に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターやコピー機等の画像形成装置には、複数の用紙(被転写材)が収容される給紙カセットと、感光体ドラムにトナー画像を形成する画像形成部と、給紙カセットから1枚ずつ搬送された用紙に対して画像形成部にて形成されたトナー画像を転写する転写部と、トナー画像が転写された用紙を加熱すると共に加圧することにより、トナー画像を用紙に定着させる定着部とを備えるものがある。そのような画像形成装置は、画像を用紙に形成することができる通常モードから、消費電力を低減して画像を用紙に形成することができない省電力モードに移行した場合には、定着部の温度を低下させ又は定着部の加熱を停止させる。そして、画像形成装置は、省電力モードに移行した後に、画像データに基づく画像を用紙に形成させる指示があった場合には、定着部の温度を定着温度まで上昇させる。この場合、画像形成装置には、画像データに基づいて得られた平均印字率と、画像が形成される用紙の種類とに応じて、定着温度を決定するものがある(特許文献1参照)。なお、平均印字率とは、用紙全体の面積に対して画像が形成される領域の面積を示す指標である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−271508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された画像形成装置は、平均印字率に基づいて定着温度を決定しており、1画素当たりの階調値(濃度)を考慮して定着温度を決定していない。しかしながら、例えば、用紙に形成される画像の階調値が相対的に高い場合には、定着部の熱がトナーに吸収され易くなるため、階調値が相対的に小さい場合に比べて、定着温度は高く設定されなければならない。このため、特許文献1に記載された画像形成装置では、定着温度が適切に設定されない場合がある。
【0005】
本発明は、定着部の定着温度を最適に設定する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、画像データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された画像データに基づいてトナー画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部によって形成されたトナー画像を被転写材に転写する転写部と、前記転写部によってトナー画像が転写された被転写材を加熱すると共に加圧することにより、被転写材に転写されたトナー画像を定着させる定着部と、を含む画像形成装置本体によって被転写材に画像を形成する画像形成装置であって、前記画像形成装置本体が被転写材に画像を形成することができない状態から被転写材に画像を形成することが可能な状態に移行したことを検出する検出部と、前記検出部によって被転写材に画像を形成することが可能な状態に移行したことが検出された場合に、前記記憶部に画像データが記憶されているか否かを判定する判定部と、前記判定部によって前記記憶部に画像データが記憶されていると判定された場合に、画像データに含まれる画素の階調値に基づいて、画素と階調値とに関するデータ量を算出する算出部と、前記算出部によって算出されたデータ量に対応する前記定着部の定着温度を選択し、選択した定着温度になるよう前記定着部を制御する定着制御部と、を備える画像形成装置に関する。
【0007】
また、前記算出部は、画像データに含まれる全ての画素の階調値をそれぞれ加算することにより前記データ量を算出することが好ましい。
【0008】
また、画像形成装置は、被転写材の種類を設定する種類設定部をさらに備え、前記定着制御部は、前記算出部によって算出された前記データ量と、前記種類設定部の設定とに基づいて、前記定着部の定着温度を選択することが好ましい。
【0009】
また、画像形成装置は、前記画像形成装置本体の温度及び湿度を測定する測定部をさらに備え、前記定着制御部は、前記算出部によって算出された前記データ量と、前記種類設定部の設定と、前記測定部の測定結果とに基づいて、前記定着部の定着温度を選択することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、定着部の定着温度を最適に設定する画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像形成装置の一実施形態に係るコピー機の全体構成を説明するための図である。
【図2】コピー機の機能構成を示すブロック図である。
【図3】コピー機の動作について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の画像形成装置の一実施形態に係る複合機について説明する。まず、複合機1の全体構成について説明する。図1は、画像形成装置の一実施形態に係る複合機1の全体構成を説明するための図である。
【0013】
複合機1は、原稿搬送部10と、原稿読取部20と、用紙搬送部30と、画像形成部40と、転写部50と、定着部60とを備える複合機本体(画像形成装置本体)2によって用紙Tに画像を形成する。
原稿搬送部10は、ADF(Automatic Document Feeder)であり、原稿載置部11と、第1送りローラー12と、ガイド13と、タイミングローラー対14と、原稿排出部15とを備える。第1送りローラー12は、原稿載置部11に載置された原稿Gを1枚ずつ順にタイミングローラー対14に供給する。タイミングローラー対14は、原稿読取部20が原稿Gの画像を読み取るタイミングと、原稿Gの画像が原稿読取部20によって読み取られる位置(ガイド13が配置されている位置)に原稿Gを供給するタイミングとを合わせるために、原稿Gの搬送又は原稿Gの搬送停止を行う。ガイド13は、搬送された原稿Gを後述する第1読取面21aに導く。原稿排出部15は、原稿読取部20によって画像が読み取られた(ガイド13を通過した)原稿Gを複合機本体2の外部に排出する。
原稿排出部15における複合機本体2の外側には、原稿集積部16が形成される。原稿集積部16には、原稿排出部15から排出された原稿Gが積層して集積される。
【0014】
原稿読取部20は、第1読取面21aと、第2読取面22aとを備える。第1読取面21aは、ガイド13に対向して配置された第1コンタクトガラス21の上面に沿って形成され、原稿Gの画像を読み取る面となる。第2読取面22aは、第1読取面21aに隣接して(図1に示す場合では、第1読取面21aの右側の大部分に亘って)配置される。第2読取面22aは、原稿搬送部10を用いずに原稿Gの画像を読み取る場合に用いられる。第2読取面22aは、原稿Gが載置される第2コンタクトガラス22の上面に沿って形成され、原稿Gの画像を読み取る面となる。
【0015】
また、原稿読取部20は、照明部23と、第1ミラー24と、第2ミラー25と、第3ミラー26と、結像レンズ27と、撮像部28とを複合機本体2の内部に備える。照明部23と第1ミラー24とは、それぞれ副走査方向Xに移動する。第2ミラー25と第3ミラー26とは、図1において照明部23及び第1ミラー24の左側に配置される。さらに、第2ミラー25及び第3ミラー26は、第1ミラー24と、第2ミラー25と、第3ミラー26と、結像レンズ27とを介した第1読取面21a又は第2読取面22aから撮像部28までの距離(光路長)を一定に保ちつつ、それぞれ副走査方向Xに移動する。
【0016】
照明部23は、原稿Gに光を照射する光源である。第1ミラー24、第2ミラー25及び第3ミラー26は、光路長を一定に保ちつつ、原稿Gによって反射された光を結像レンズ27に導くためのミラーである。結像レンズ27は、第3ミラー26から入射した光を撮像部28に結像させる。撮像部28は、入射された光を電気信号に変換することにより、結像された光像に基づいて画像データを得るための撮像素子であり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサーである。
【0017】
用紙搬送部30は、第2送りローラー31と、第3送りローラー32と、レジストローラー対33と、用紙排出部34とを備える。第2送りローラー31は、給紙カセット36に収容される用紙T(被転写材)を転写部50に供給する。第3送りローラー32は、手差しトレイ37に載置される用紙T(被転写材)を転写部50に供給する。レジストローラー対33は、転写部50にトナー画像が到達するタイミングと、転写部50に用紙Tを供給するタイミングとを合わせるために、用紙Tの搬送又は用紙Tの搬送停止を行う。また、レジストローラー対33は、用紙Tのスキュー(斜め給紙)補正を行う。用紙排出部34は、トナー画像が定着された用紙Tを複合機本体2の外部に排出する。
用紙排出部34における複合機本体2の外側には、排紙集積部35が形成される。排紙集積部35には、用紙排出部34から排出された用紙Tが積層して集積される。
【0018】
画像形成部40は、後述する記憶部80に記憶された画像データに基づいてトナー画像を形成するためのものである。このため、画像形成部40は、感光体ドラム41と、帯電部42と、レーザースキャナーユニット43と、現像器44と、クリーニング部45と、トナーカートリッジ46と、1次転写ローラー47と、中間転写ベルト48と、対向ローラー49とを備える。
感光体ドラム41(41a,41b,41c,41d)は、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローそれぞれのトナー画像を形成するために、感光体又は像担持体として機能する。各感光体ドラム41a,41b,41c,41dの周囲には、感光体ドラム41の回転方向に沿って上流側から下流側へ順に、帯電部42と、レーザースキャナーユニット43と、現像器44と、クリーニング部45とが配置される。帯電部42は、感光体ドラム41の表面を帯電させる。レーザースキャナーユニット43は、感光体ドラム41の表面から離れて配置され、原稿読取部20によって読み取られた原稿Gに関する画像データに基づいて感光体ドラム41の表面を走査露光する。これにより、感光体ドラム41の表面には、露光された部分の電荷が除去されて静電潜像が形成される。現像器44は、感光体ドラム41の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー画像を形成する。クリーニング部45は、除電器(図示せず)によって感光体ドラム41の表面が除電された後のその表面に残るトナー等を除去する。
トナーカートリッジ46は、現像器44に供給される各色のトナーを収容する。トナーカートリッジ46と現像器44とは、トナー供給路(図示せず)により接続されている。
【0019】
1次転写ローラー47(47a,47b,47c,47d)は、中間転写ベルト48における各感光体ドラム41a,41b,41c,41dとは反対側にそれぞれ配置される。中間転写ベルト48は、画像形成部40及び転写部50を通過するベルトである。中間転写ベルト48の一部分は、各感光体ドラム41a,41b,41c,41dと各1次転写ローラー47a,47b,47c,47dとの間に挟み込まれ、各感光体ドラム41a,41b,41c,41dの表面に形成されたトナー画像が1次転写される。対向ローラー49は、環状形状の中間転写ベルト48の内側に配置され、中間転写ベルト48を図1に示す矢印A方向に進行させるための駆動ローラーである。
【0020】
転写部50は、画像形成部によって形成されたトナー画像を用紙Tに転写するために、2次転写ローラー51を備える。2次転写ローラー51は、中間転写ベルト48における対向ローラー49とは反対側に配置され、中間転写ベルト48の一部分を対向ローラー49との間に挟みこむ。さらに、2次転写ローラー51は、中間転写ベルト48に1次転写されたトナー画像を用紙Tに2次転写させる。
【0021】
定着部60は、転写部50によってトナー画像が転写された用紙Tを加熱すると共に加圧することにより、用紙Tに転写されたトナー画像を定着させる。具体的には、定着部60は、加熱回転体61と、加圧回転体62とを備える。加熱回転体61と加圧回転体62とは、トナー画像が2次転写された用紙Tを挟み込んで、トナーを溶融及び加圧し、そのトナーを用紙Tに定着させる。
【0022】
次に、複合機1の機能構成について説明する。図2は、複合機1の機能構成を示すブロック図である。
複合機1は、上述した構成要素(原稿搬送部10、原稿読取部20、用紙搬送部30、画像形成部40、転写部50及び定着部60)を備える。用紙搬送部30、画像形成部40、転写部50及び定着部60によりエンジン部3が構成される。なお、図1を用いて説明した構成要素については、その説明を省略する。
さらに、複合機1は、上述した機能構成に加えて、操作部70と、記憶部80と、インターフェイス部100と、制御部90とを備える。
【0023】
操作部70は、テンキー(図示せず)、タッチパネル(図示せず)及びスタートキー(図示せず)等を備える。テンキーは、印刷部数等の数字を入力するために操作される。タッチパネルは、種々の機能(一例として、印刷倍率の設定機能や、複数のページを1枚の用紙Tに割り付ける機能(2in1等))が割り当てられた複数のキー等を表示する。タッチパネルに表示されたキーは、種々の機能のうちのいずれかを複合機1に実行させるために操作される。スタートキーは、印刷を実行させるために操作される。操作部70は、いずれかのキーが操作されることにより、このキーが操作されたことを表す信号を制御部90に供給する。
【0024】
記憶部80(本発明の「記憶部」に対応する)は、ハードディスクや半導体メモリー等から構成される。記憶部80は、原稿読取部20によって読み取られた原稿Gに基づく画像データを記憶する。また、記憶部80は、後述するインターフェイス部100と不図示の通信ネットワークとを介して接続された不図示の外部端末(例えば、パーソナルコンピューター)から入力された画像データを記憶する。また、記憶部80は、ファクシミリ機能によって受信した画像データ(ファクシミリ画像データ)を記憶する。さらに、記憶部80は、複合機1において利用される制御プログラム、及びこの制御プログラムによって利用されるデータ等を記憶する。
【0025】
インターフェイス部100には、上述した通信ネットワークが接続される。また、インターフェイス部100には、USB(Universal Serial Bus)メモリー等の外部記憶部110(本発明の「記憶部」に対応する)が接続される。外部記憶部110には、画像データ等を始めとする種々のデータが記憶される。
【0026】
制御部90は、原稿搬送部10、原稿読取部20、エンジン部3、操作部70等を制御する。
さらに、制御部90は、状態移行制御部91と、検出部92と、判定部93と、算出部94と、定着制御部95と、を備える。また、制御部90は、種類設定部96を備えることが可能である。
【0027】
状態移行制御部91は、複合機本体2が用紙Tに画像を形成することができる画像形成可能状態から用紙Tに画像を形成することができない画像形成不能状態に移行するよう各部を制御する。また、状態移行制御部91は、複合機本体2が画像形成不能状態から画像形成可能状態に移行するよう各部を制御する。画像形成不能状態は、例えば、複合機本体2の電源スイッチ(図示せず)がオフ(OFF)にされた場合又は複合機本体2が通常モードから省電力モードに移行した場合に、状態移行制御部91の制御によってエンジン部3等を始めとする各部に対して電力の供給が停止された状態である。また、画像形成可能状態は、例えば、複合機本体2の電源スイッチがオフからオン(ON)にされ、又は複合機本体2が省電力モードから通常モードに移行して、状態移行制御部91の制御によってエンジン部3等を始めとする各部に対して電力が供給されることにより画像形成が可能になっている状態である。
【0028】
検出部92は、複合機本体2が用紙Tに画像を形成することができない状態(画像形成不能状態)から用紙Tに画像を形成することが可能な状態(画像形成可能状態)に移行したことを検出する。すなわち、検出部92は、状態移行制御部91によって複合機本体2が画像形成不能状態から画像形成可能状態に移行するよう各部が制御された場合に、画像形成不能状態から画像形成可能状態への移行を検出する。
【0029】
判定部93は、検出部92によって用紙Tに画像を形成することが可能な状態(画像形成可能状態)に移行したことが検出された場合に、記憶部80に画像データが記憶されているか否かを判定する。また、判定部93は、外部記憶部110がインターフェイス部100に接続されている場合には、外部記憶部110に画像データが記憶されているか否かを判定する。
【0030】
判定部93は、検出部92によって画像形成不能状態から画像形成可能状態への移行が検出されてから所定の時間を経過した時に、記憶部80に画像データが記憶されたか否かを判定することも可能である。さらに、判定部93は、検出部92によって画像形成不能状態から画像形成可能状態への移行が検出されたときから所定の時間を経過するまでに、外部記憶部110がインターフェイス部100に接続された場合には、その外部記憶部110に画像データが記憶されているか否かを判定することも可能である。
【0031】
算出部94は、判定部93によって記憶部80又は外部記憶部110に画像データが記憶されていると判定された場合に、画像データに含まれる画素の階調値に基づいて、画素と階調値とに関するデータ量を算出する。すなわち、算出部94は、画像データに含まれる全ての画素の階調値をそれぞれ加算することによりデータ量を算出する。これにより、画像データ全体の階調値がデータ量として得られる。
【0032】
ここで、用紙TがA4サイズの場合には、A4サイズ1枚当たりの画素数は、600dpi(dots per inch)とすると、7128画素×5040画素=35925120画素となる。そして、画像データがA4サイズ1枚に対応し、さらに、簡単化のために全ての画素の階調値が60であると仮定すると、一枚当たりの最大のデータ量は、式(1)によって求められる。
最大データ量=階調値×画素数×用紙Tの枚数=60×35925120×1=2155507200[画素×階調] …(1)
【0033】
定着制御部95は、算出部94によって算出されたデータ量に対応する定着部60の定着温度を選択し、選択した定着温度になるよう定着部60を制御する。記憶部80は、データ量と定着温度とを対応付けた選択データを複数記憶する。例えば、記憶部80は、最大定着温度(Tmax)とデータ量(4598415360[画素×階調]〜9196830729[画素×階調])とを対応付けた第1選択データと、通常定着温度(Ttyp)とデータ量(2299207680[画素×階調]〜4598415359[画素×階調])とを対応付けた第2選択データと、最小定着温度(Tmin)とデータ量(1[画素×階調]〜2299207679[画素×階調])とを対応付けた第3選択データとを記憶する。なお、上記の選択データは、用紙TがA4サイズ1枚、用紙の種類が普通紙で、複合機本体2の内部が常温及び常湿の場合を前提にしている。また、選択データの数は、3つに限定されることはない。
【0034】
そして、定着制御部95は、記憶部80に記憶された選択データを参照することに基づいて、算出部94によって算出されたデータ量(一例として、2155507200[画素×階調])が第1〜3選択データのうちいずれの選択データのデータ量の範囲に含まれるのかを特定し(一例として、第3選択データを特定する)、その特定された選択データの定着温度を選択する(一例として、最小定着温度(Tmin)を選択する)。定着制御部95は、定着温度を選択した後に、定着部60(加熱回転体61)の温度が選択された定着温度(一例として、最小定着温度(Tmin))になるように定着部60を制御する。
【0035】
上述したように、制御部90は、種類設定部96をさらに備えることが好ましい。種類設定部96は、用紙Tの種類を設定する。用紙Tの種類は、例えば、普通紙、及び、その普通紙よりも厚い厚紙等である。制御部90が種類設定部96を備える場合には、定着制御部95は、算出部94によって算出されたデータ量と、種類設定部96の設定とに基づいて、定着部60の定着温度を選択する。種類設定部96の設定として用紙Tの種類に厚紙が設定された場合には、選択される定着温度は、普通紙が設定された場合よりも高くなる。例えば、複数の選択データのそれぞれには、定着温度及びデータ量に加えて用紙の種類が対応付けて設定される。このため、定着制御部95は、選択データを参照することにより、算出部94によって算出されたデータ量と、種類設定部96の設定とに対応する定着温度を選択する。
【0036】
また、複合機1は、複合機本体2の温度及び湿度を測定する測定部120(温度・湿度センサー)をさらに備えることが好ましい。複合機1が測定部120を備える場合には、定着制御部95は、算出部94によって算出されたデータ量と、種類設定部96の設定と、測定部120の測定結果とに基づいて、定着部60の定着温度を選択する。複合機本体2の温度及び湿度に応じた定着温度は、予め実験等が行われることにより決定されている。このため、定着制御部95は、その実験結果に基づいて、測定部120の測定結果に応じた定着温度を選択する。すなわち、複数の選択データのそれぞれには、定着温度、データ量及び用紙の種類に加えて複合機本体2の温度及び湿度が対応付けて設定されている。このため、定着制御部95は、選択データを参照することにより、算出部94によって算出されたデータ量と、種類設定部96の設定と、測定部120の測定結果とに対応する定着温度を選択する。測定部120によって測定される温度が相対的に高い場合には、定着制御部95によって選択される定着温度は、測定部120によって測定される温度が常温の場合に比べて低くなる。また、測定部120によって測定される湿度が相対的に高い場合には、定着制御部95によって選択される定着温度は、測定部120によって測定される湿度が常湿の場合に比べて高くなる。
【0037】
次に、本実施形態における複合機1の動作について説明する。図3は、複合機1の動作について説明するためのフローチャートである。
【0038】
ステップST1において、状態移行制御部91の制御によって複合機本体2が画像形成不能状態から画像形成可能状態に移行した場合に、検出部92は、その画像形成可能状態への移行を検出する。
【0039】
ステップST2において、判定部93は、記憶部80又は外部記憶部110に画像データが記憶されているか否かを判定する。記憶部80又は外部記憶部110に画像データが記憶されている場合(Yes)には、処理は、ステップST3に進む。記憶部80又は外部記憶部110に画像データが記憶されていない場合(No)には、処理は、終了する。
【0040】
ステップST3において、算出部94は、画像データに記録される全ての画素の階調値をそれぞれ加算することによりデータ量を算出する。
【0041】
ステップST4において、定着制御部95は、ステップST3にて算出されたデータ量に対応する定着温度を選択する。例えば、定着制御部95は、データ量の範囲及び定着温度等を対応付けた複数の選択データを参照することにより、ステップST3にて算出されたデータ量がいずれの選択データのデータ量の範囲に含まれるのかを特定し、特定したデータ量の範囲に対応する定着温度を選択する。
【0042】
ステップST5において、定着制御部95は、定着部60(加熱回転体61)の温度がステップST4にて選択された定着温度になるよう定着部60を制御する。
【0043】
ステップST6において、定着制御部95は、定着部60(加熱回転体61)の温度が画像形成可能な温度範囲内に到達したか否かを判断する。すなわち、定着制御部95は、定着部60(加熱回転体61)の温度がステップST4にて選択された定着温度(許容される温度範囲内(一例として、選択された定着温度に対して±5℃の範囲))に到達したか否かを判断する。定着部60の温度が画像形成可能な温度範囲に到達していない場合(No)には、処理は、定着部60(加熱回転体61)の温度が上記の温度範囲に到達するまで、ステップST6を繰り返す。定着部60の温度が選択された定着温度の温度範囲に到達している場合(Yes)には、処理は、ステップST7に進む。
【0044】
ステップST7において、制御部90は、エンジン部3等を制御することにより、記憶部80又は外部記憶部110に記憶される画像データに基づく画像を用紙Tに形成する。
ステップST7の後には、処理は、終了する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の複合機1によれば、以下の効果が奏される。
すなわち、本実施形態の複合機1は、複合機本体2が用紙Tに画像を形成することができない状態から用紙Tに画像を形成することが可能な状態に移行したことを検出する検出部92と、検出部92によって用紙Tに画像を形成することが可能な状態に移行したことが検出された場合に、記憶部80又は外部記憶部110に画像データが記憶されているか否かを判定する判定部93と、判定部93によって記憶部80又は外部記憶部110に画像データが記憶されていると判定された場合に、画像データに含まれる画素の階調値に基づいて、画素と階調値とに関するデータ量を算出する算出部94と、算出部94によって算出されたデータ量に対応する定着部60の定着温度を選択し、選択した定着温度になるよう定着部60を制御する定着制御部95と、を備える。この場合、算出部94は、画像データに含まれる全ての画素の階調値をそれぞれ加算することによりデータ量を算出する。
【0046】
これにより複合機1は、定着部60(加熱回転体61)の温度を、画像データに基づく画像の階調値(画像データのデータ量)に対応する最適な定着温度に設定することができる。また、複合機1は、最適な定着温度に設定することができるため、定着部60(加熱回転体)の温度を調整するときの電力を削減することができる場合がある。さらに、複合機1は、画像データのデータ量が相対的に少ない場合には、定着の温度を相対的に低い定着温度に設定するため、定着温度が相対的に高い場合に比べて、定着部60(加熱回転体)の温度を調整する時間を短縮することができる。
【0047】
また、定着制御部95は、算出部94によって算出されたデータ量と、種類設定部96の設定とに基づいて、定着部60の定着温度を選択する。これにより複合機1は、定着部60(加熱回転体61)の温度を、画像を用紙Tに形成するのに最適な定着温度に設定することができる。
【0048】
また、定着制御部95は、算出部94によって算出されたデータ量と、種類設定部96の設定と、測定部120の測定結果とに基づいて、定着部60の定着温度を選択する。これにより複合機1は、定着部60(加熱回転体61)の温度を、画像を用紙Tに形成するのに最適な定着温度に設定することができる。
【0049】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、種々の形態で実施することができる。
本実施形態の複合機1は、カラー複合機であるが、この形態に限定されることはなく、モノクロ複合機であってもよい。
また、本実施形態の複合機1は、中間転写ベルト48を介して用紙Tにトナー画像を転写している(間接転写方式)が、この形態に限定されることはなく、感光体ドラムに形成されたトナー画像を直接に用紙Tに転写してもよい(直接転写方式)。
また、本実施形態の複合機1は、用紙Tの片面を印刷する構成であるが、これに限定されることはなく、用紙の両面を印刷する構成であってもよい。
【0050】
また、本発明の画像形成装置は、上述した複合機1に限定されることはない。すなわち、本発明の画像形成装置は、コピー機やプリンターであってもよい。
また、本発明の画像形成装置によってトナー画像が定着される被転写材は用紙Tに限定されることはなく、例えば、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)シート等のフィルムシートであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…複合機(画像形成装置)、40…画像形成部、50…転写部、60…定着部、80…記憶部、90…制御部、91…状態移行制御部、92…検出部、93…判定部、94…算出部、95…定着制御部、96…種類設定部、110…外部記憶部(記憶部)、120…測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された画像データに基づいてトナー画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって形成されたトナー画像を被転写材に転写する転写部と、
前記転写部によってトナー画像が転写された被転写材を加熱すると共に加圧することにより、被転写材に転写されたトナー画像を定着させる定着部と、を含む画像形成装置本体によって被転写材に画像を形成する画像形成装置であって、
前記画像形成装置本体が被転写材に画像を形成することができない状態から被転写材に画像を形成することが可能な状態に移行したことを検出する検出部と、
前記検出部によって被転写材に画像を形成することが可能な状態に移行したことが検出された場合に、前記記憶部に画像データが記憶されているか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記記憶部に画像データが記憶されていると判定された場合に、画像データに含まれる画素の階調値に基づいて、画素と階調値とに関するデータ量を算出する算出部と、
前記算出部によって算出されたデータ量に対応する前記定着部の定着温度を選択し、選択した定着温度になるよう前記定着部を制御する定着制御部と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記算出部は、画像データに含まれる全ての画素の階調値をそれぞれ加算することにより前記データ量を算出する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
被転写材の種類を設定する種類設定部をさらに備え、
前記定着制御部は、前記算出部によって算出された前記データ量と、前記種類設定部の設定とに基づいて、前記定着部の定着温度を選択する
請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成装置本体の温度及び湿度を測定する測定部をさらに備え、
前記定着制御部は、前記算出部によって算出された前記データ量と、前記種類設定部の設定と、前記測定部の測定結果とに基づいて、前記定着部の定着温度を選択する
請求項3に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−68674(P2013−68674A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205299(P2011−205299)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】