説明

画像形成装置

【課題】装置コストを抑え、且つ、部品寿命を無駄に浪費しないように、画像形成動作中の各部品の接触、及び電圧印加に伴う負荷変動を吸収し、色ズレ発生や印字精度の向上を達成することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】中間転写体30を介して中間転写体30の駆動ローラ100側に押圧をかけるために中間転写体30の外部に押し当て部材Pkを設け、押し当て部材Pkは、駆動ローラ100の長手軸線方向の両側の端部における中間転写体30の画像形成領域外に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、像担持体に形成したトナー像を中間転写体に転写した後記録材に転写する電子写真方式の画像形成装置に関し、特に、カラー画像形成装置及びモノクロ画像形成装置における色ズレ防止技術及び印字精度向上技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カラープリンタやカラー複写機などの電子写真方式を採用したカラー画像形成装置には、出力画像の高画質化が求められている。
【0003】
この出力画像の品質を決める要素として、記録材上での画像の書き出し位置ズレや、画像伸び縮みなどに代表される記録精度や、画像の色味に影響する各色トナー画像の重ね合せ精度として、色ズレや印字精度が挙げられる。
【0004】
特に後述する中間転写ベルトを有する電子写真方式のカラー画像形成装置の場合、環境の変化や長時間の使用による装置各部の変動要因により、記録精度の悪化や色ズレによる色味の変動が発生し、出力画像の品質を低下させてしまう。
【0005】
これらの変動の原因として、例えば、無端ベルトとして中間転写ベルトを採用した画像形成装置においては、中間転写ベルトの速度変動が挙げられる。
【0006】
そこで、例えば特許文献1に記載されている方法が用いられている。具体的には、中間転写ベルト上に各色のトナーパッチを形成し、そのトナーパッチの位置をレジ検知センサで検出し、その検出結果より各色トナー画像の中間転写ベルトへの書き出しタイミングを変更して、色ズレを抑制することが行われている。ここで、トナーパッチとは、色ズレ検知用の未定着のトナー画像のことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2655603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のレジ検知センサを用いた色ズレ補正を行っても、補正後において、実際に印刷を開始し、記録材に各色トナー画像が転写されたときに色ズレが発生してしまう。
【0009】
これは、中間転写ベルト上のトナーパッチの位置をレジ検知センサで検出する初期のベルトの周面速度と、実際にプリントを開始する時における画像形成時のベルトの周面速度が異なっていることが原因である。以下、この中間転写ベルトの周面速度の違いの発生について順に説明していく。
【0010】
図9(a)は、中間転写ベルトを用いたタンデム型カラー画像形成装置の概略模式図であり、4つのプロセスカートリッジP(PY、PM、PC、PBk)及び中間転写ユニット31を備えている。各プロセスカートリッジの感光ドラム26(26Y、26M、26C、26Bk)が、中間転写ユニット31を構成する中間転写ベルト30の移動方向に沿って順次配置されている。感光ドラム26の回りには電子写真プロセス装置が配置されているが、図9(a)の模式図においては、現像装置の現像ローラ54(54Y、54M、54C、54Bk)、及び、一次転写ローラ52(52Y、52M、52C、52Bk)が図示されている。なお、Yはイエロー、Mはマゼンタ、Cはシアン、Bkはブラックの各色を表している。
【0011】
図9(a)の模式図は、上記構成のタンデム型カラー画像形成装置の中間転写ベルトユニット31に掛かる負荷状態を示している。
【0012】
図9(a)において、転写精度向上から、一般的に感光ドラムの周面速度Vdと中間転写ベルト30の周面速度Vbの速度設定は、0.5%以下程度、ベルト周面速度Vbの方が速い設定となっている。
【0013】
ここで、中間転写ベルト30のみを動かすトルクをTb、中間転写ベルト30とドラム26の接触及び一次転写バイアスの印加の有無によって発生する摩擦力をμFとする。また、μFは後述する各色Y、M、C、BkのカートリッジPが4本あるため、この時のベルト駆動トルクTは、下記の式(1)が成り立つ。
【0014】
なお、μはベルトとドラム間の摩擦係数であり、転写圧及び一次転写時の圧力はFである。ここでの接触とは、中間転写ベルト30と感光ドラム26との間のトナー層の有無に関わりなく、中間転写ベルト30と感光ドラム26とが当接し、圧力が生じている状態を意味するものとする。
T=Tb+μF×4・・・式(1)
【0015】
以下では、式(1)を例に取り上げ、ベルトが停止状態から起動し、画像形成を経て再び停止するまでのトルクの変化について説明していく。
【0016】
先ず、ベルトが停止状態から起動し、画像形成を経て再び停止するまでのトルクTの変化は、ベルトとドラム間の摩擦係数、及び一次転写バイアスの印加の有変化時をμと定義すると、下記の式(2)〜(6)となる。このとき、ベルトにかかる負荷トルクの状態の変化を図9(a)〜図9(e)に示す。
【0017】
図9において、ベルトとドラム間の摩擦係数μを、ベルトとドラム間にトナーが存在しない場合の摩擦係数μ1、ベルトとドラム間にトナーが存在する場合の摩擦係数μ2の2つと定義している。
T=Tb+μ1F×4 ・・・式(2)(図9(a)参照)
T=Tb+(μ1F×3+μ2F) ・・・式(3)(図9(b)参照)
T=Tb+(μ1F×2+μ2F×2) ・・・式(4)(図9(c)参照)
T=Tb+(μ1F+μ2F×3) ・・・式(5)(図9(d)参照)
T=Tb+μ2F×4 ・・・式(6)(図9(e)参照)
【0018】
次に、レジ検知センサでトナーパッチを検出する場合を説明する。
【0019】
レジ検知センサでベルト上のトナーパッチを検出している時のベルト駆動のトルク状態は、無負荷のためT=Tbの状態で一定であり、ベルト周面速度も一定となっている。
【0020】
一方、画像形成開始直後においては、像担持体上のトナー像を中間転写ベルトへ転移させるための一次転写時、及び中間転写ベルト上のトナー画像を記録材上に転移させるための二次転写がある。そもそも、ドラムの接触以外にもこの転写部材と中間転写ベルトとの直接的な接触自体によって、転写部材とベルトとの摩擦力が増大することでトルクを増加させてしまう場合もある。その他、一次転写及び二次転写を行う際はトナーを中間転写ベルト及び記録材上に転写させるために電圧を印加する必要があり、この時それぞれの部品同士に対して吸引力が発生する。その結果、中間転写ベルトの回転を阻害するように摩擦力が増加し、ベルトの回転速度が変動する場合がある。
【0021】
さらに、耐久に伴い中間転写ベルトや一次転写、二次転写部品の抵抗値や形状が経時変化する場合もあり、これによって中間転写ベルトの走行性が不安定になってしまうことがある。
【0022】
このように、中間転写ベルトの回転が阻害されるような状態になると、トナーパッチによる印字精度調整もずれてしまう結果になる場合がある。さらに、画像形成の途中においても中間転写ベルトの走行性が不安定になり、結果として色がずれた画像になってしまう場合がある。
【0023】
そこで、このベルトの速度変動を無くす方法には、以下に示すように、例えば4つの代表例がある。
【0024】
第1に、ベルト駆動伝達系の剛性を上げ弾性変形を無くすことである。また、第2に、ベルトとドラム間の摩擦係数μの変動を無くすことである。さらに、第3に、ベルトを内面から駆動している駆動ローラの摩擦係数μを向上させることである。
【0025】
第4に、駆動ローラの駆動力を下げないようにするために、駆動ローラ表層へ異物の付着を防止する方法がある。この方法としては、中間転写ベルトの内面強度をアップさせる必要があったり、中間転写ベルト内部に内包し、接触している部品を削れにくい材料に変更する手段が考えられる。しかし、このような材料は非常に高価になったり、製造コストがアップすることを免れない。その他、軸受け削れの発生を防止しようとした時でも、上記と同様材料費や製造コストがアップすることを免れない。
【0026】
一方、転写のバイアスダウンを行うことで駆動ローラと中間転写ベルトとの吸着力を下げる方法もあるが、吸着力を下げる、即ち、電圧を下げるということは、転写性が悪化することになることを免れない。
【0027】
第1の方法について説明する。一般的にベルト駆動伝達系の剛性を上げれば上述の弾性変形は抑えられる。例えば、駆動伝達系の一要素であるギアの材質をポリアセタールなどの樹脂から黄銅などの金属に変えれば、剛性を上げることはできる。本発明者らの実験において、ギアの金属化で剛性上げることで、速度変動が改善できることが確認できている。
【0028】
しかし、金属ギアは剛性が高すぎ、噛み合いによる振動が発生し、その振動が画像に載ってしまう弊害が発生する。また金属ギアは切削加工のため射出成形の樹脂ギアに対し、かなりのコストアップとなってしまい、現実的ではない。
【0029】
第2の方法について説明する。理論上は、摩擦係数μ1、μ2を同じにすれば、摩擦係数μの変動を抑えることができる。しかし、現状の感光ドラムの表層は平滑でベルトと貼り付き易く、非常に大きい摩擦力が発生する。感光ドラム表面に微小な凸凹を設け、接触面積を減らすなどの手段も考えられるものの、画質の劣化が予想され、現実的ではない。また、摩擦の変動は、トナーの有無だけではなく、転写バイアスによる吸着力も存在するため、ゼロにすることはできない。
【0030】
第3の方法について説明する。理論上は各摩擦抵抗に対して駆動ローラとベルトとの摩擦係数を大きくすることが考えられる。現状の駆動ローラは駆動力を増加させるために摩擦係数の高いゴムを用いている。しかし、摩擦係数が高い分中間転写ベルト内に発生、若しくは、混入してきた異物がくっつき易くなり、耐久や本体の寿命の末期状態になると中間転写ベルトを搬送する力さえ落ちてくることがある。こうなると駆動力は落ちることとなり中間転写ベルトを安定して搬送することが出来なくなり、色ずれや印字精度への影響が大きくなってくる。
【0031】
なお、上記中間転写ベルトを用いた場合の問題は、カラー画像形成装置のみならず、モノクロの画像形成装置に同様に生じ得る問題である。
【0032】
そこで、本発明の目的は、装置コストを抑え、且つ、部品寿命を無駄に浪費しないように、画像形成動作中の各部品の接触、及び電圧印加に伴う負荷変動を吸収し、色ズレ発生や印字精度の向上を達成することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体の前記トナー像が転写される無端ベルト状の中間転写体と、
前記像担持体を前記中間転写体に接触させ、前記トナー像を前記中間転写体に転写する一次転写部材と、
前記中間転写体の前記トナー像を記録材に転写する二次転写部材と、
前記中間転写体を回転駆動する駆動ローラと、
を備える画像形成装置であって、
前記中間転写体を介して前記駆動ローラ側に押圧をかけるために前記中間転写体の外部に押し当て部材を設け、
前記押し当て部材は、前記駆動ローラの長手軸線方向の両側の端部における前記中間転写体の画像形成領域外に配置されている、
ことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、装置コストを抑え、且つ、部品寿命を無駄に浪費しないように、画像形成動作中の負荷変動にも容易に対応し、色ズレの発生を防止すると共に印字精度を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施例である、中間転写ベルトを用いた4ドラム式のフルカラー画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】画像形成動作中の中間転写ベルトの駆動ローラのトルク変動を示す図である。
【図4】出力画像上の色ズレ挙動を示す図である。
【図5】画像形成中の一次及び二次転写バイアスのタイミングを示した図である。
【図6】実施例1の構成を示した図であり、図6(a)は画像形成装置の概略構成図であり、図6(b)は図6(a)を右側から見た側面図であり、図6(c)は押し当て部材の斜視図である。
【図7】ベルトにかかる負荷トルク状態図である。
【図8】実施例2の構成を示した図であり、図8(a)は画像形成装置の概略構成図であり、図8(b)は図8(a)を右側から見た側面図であり、図8(c)は押し当て部材の斜視図である。
【図9】図9(a)〜(e)は、ベルトにかかる負荷トルク状態図である。
【図10】本発明に係る画像形成装置の他の実施例である、中間転写ベルトを用いた4パス構成のフルカラー画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0037】
実施例1
第1実施例にて、本発明に係る画像形成装置は、電子写真方式を採用した画像形成装置のうち中間転写ベルトを用いた4ドラムフルカラー画像形成装置とされる。図1は、中間転写ベルトを用いた4ドラムフルカラー画像形成装置の概略構成を示す模式断面図である。
【0038】
(画像形成装置の全体構成)
図1に示すように、4ドラムフルカラー画像形成装置1は、画像形成装置本体(以下、「装置本体」という。)2に対して、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のプロセスカートリッジP(PY、PM、PC、PBk)が着脱自在に構成されている。また、装置本体2には、中間転写体(被転写体)である中間転写ベルト30を有する中間転写ベルトユニット31や、定着器25が設けられている。
【0039】
ここで、各プロセスカートリッジPは、メモリータグ(不図示)を有しており、装置本体2との通信により、プロセスカートリッジPの残り寿命や交換状況を判別することができるように構成されている。
【0040】
また、各プロセスカートリッジPは、それぞれ像担持体であるドラム状の電子写真感光体(以下、「感光ドラム」という。)26(26Y、26M、26C、26Bk)を有している。感光ドラム26(26Y、26M、26C、26Bk)は、被転写体である無端ベルト状の中間転写体、即ち、中間転写ベルト30の移動方向に沿って順次配置されている。被転写体である中間転写ベルト30の移動方向に関して感光ドラム26Yが最上流の感光ドラムに対応し、感光ドラム26Bkが最下流の感光ドラム26に対応する。
【0041】
更に、各プロセスカートリッジPは、それぞれ感光ドラム26の周囲に、帯電手段としての一次帯電器50(50Y、50M、50C、50Bk)及び現像手段としての現像器51(51Y、51M、51C、51Bk)を備えている。更に、各プロセスカートリッジPは、感光ドラム26の周囲に、クリーニング手段としてのクリーナ53(53Y、53M、53C、53Bk)が配置されている。各プロセスカートリッジPは、中間転写ベルト30に沿って並列配置されている。
【0042】
各プロセスカートリッジPにおいて、一次帯電器50は、感光ドラム26の外周表面上に配置され、感光ドラム表面を一様に帯電する。また、現像器51は、各レーザ露光器(露光手段)28(28Y、28M、28C、28Bk)からの露光により形成された感光ドラム表面上の各色の静電潜像を、対応する色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナーを用いて現像する。なお、現像器51内の現像ローラ54は、現像器51ごと感光ドラム26から離間し回転を停止させることで、現像剤の劣化を防止できるように構成されている。即ち、現像ローラ54は現像器51ごと感光ドラム26に対して当接又は離間可能に構成されている。クリーナ53は、トナー画像が順次転写された後、感光ドラム表面に付着(残存)している転写残りトナーを除去する。
【0043】
また、感光ドラム26と共に中間転写ベルト30を挟持する位置には、感光ドラム26と共に一次転写部T1(T1Y、T1M、T1C、T1Bk)を形成する一次転写部材である一次転写ローラ52(52Y、52M、52C、52Bk)が対向設置されている。
【0044】
一方、中間転写ベルトユニット31は、中間転写ベルト30と、中間転写ベルト30を張架する駆動ローラ100、テンションローラ105、二次転写対向ローラ108の3本のローラを備えている。そして、ベルト駆動モータ(不図示)により駆動ローラ100を回転駆動させることで中間転写ベルト30を回転搬送している。
【0045】
テンションローラ105は、中間転写ベルト30の長さに応じて図1の水平方向に移動可能に構成されている。
【0046】
さらに、駆動ローラ100の近傍には、中間転写ベルト30上のトナーパッチを検出するためのレジ検知センサ90がローラ長手方向両端に2個設置されており、更に、マークセンサ91も設置されている。なお、長手方向とは、ローラの軸線方向であり、ベルトの搬送方向と直交する幅方向である。
【0047】
また、二次転写対向ローラ108の中間転写ベルト30を挟んだ位置には、二次転写対向ローラ108と共に二次転写部T2を形成する二次転写部材である二次転写ローラ27が対向配置されている。この二次転写ローラ27は、転写搬送ユニット33によって保持されている。
【0048】
また、装置本体2の下部には、二次転写部T2に記録材Qを給送する給送部3が配置されている。この給送部3は、複数枚の記録材Qを収納したカセット20、給送ローラ21、重送防止のリタードローラ対22、搬送ローラ対23a、23b、レジストローラ対24等を備えている。
【0049】
定着器25の下流側搬送路には、排出ローラ対61、62、63が設けられている。
【0050】
(画像形成装置のブロック図)
次に、図2を用いて画像形成装置の制御構成について説明する。図2は、画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。
【0051】
図1に示す装置本体2は、装置本体2に対して通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部ホスト機器10からジョブを受信する。また、装置本体2が別途備える原稿読み取り部(不図示)からのRGB画像信号を受信する。
【0052】
画像処理制御部(制御手段)11では、受信し入力したデータを、CMYK信号に変換し、階調、濃度補正を加えた後に、レーザ露光器28用の露光信号を生成する。画像形成制御部12では、以下に説明する画像形成動作を統括して制御すると共に、パッチ検出手段としてのレジ検知センサ90、マーク検出手段としてのマークセンサ91を用いた画像形成動作補正時の装置本体2の制御を行っている。
【0053】
この画像形成制御部12は、この画像形成制御部12による処理を制御するCPU121、このCPU121により実行されるプログラムなどを記憶しているROM122、CPU121による制御処理時に各種データを記憶するRAM123を有している。
【0054】
なお、画像形成部13は、図1に示すように、感光ドラム26と、このドラムに作用する帯電手段50、現像手段51、クリーニング手段53、露光手段28を有し、中間転写ベルト30の回転方向に複数(ここでは4つ)設けられている。
【0055】
メイン駆動モータ14は、画像形成制御部12からの指示により、中間転写ベルト30及び、全ての感光ドラム26を所定の速度で回転駆動するための駆動手段である。
【0056】
レジ検知センサ部16は、レジ検知センサ90を用いて中間転写ベルト30上のトナーパッチの検出を行っている。
【0057】
マークセンサ部17は、マークセンサ91を用いて中間転写ベルト30上に設けられた位置表示マークの検出を行っている。
【0058】
(画像形成動作)
ここで、以上のように構成された4ドラムフルカラー画像形成装置1の画像形成動作について図1を用いて説明する。画像形成装置1は、記録材Qに複数色(ここでは4色)のトナーからなる画像を形成することが可能な構成となっている。
【0059】
画像形成動作が開始されると、先ず、カセット20内の記録材Qは、給送ローラ21により給送された後、リタードローラ対22により一枚ずつに分離され、次いで、搬送ローラ対23a、23b等を経てレジストローラ対24に搬送される。ここで、このときレジストローラ対24は、回転を停止しており、このレジストローラ対24のニップに記録材Qが突き当てられることにより、記録材Qの斜行が矯正される。
【0060】
一方、この記録材Qの搬送動作に並行して、例えばイエローのプロセスカートリッジPYにおいては、先ず、感光ドラム26Yの表面が一次帯電器50Yによって一様にマイナス帯電され、次にレーザ露光器28Yにより画像露光が行われる。これにより、感光ドラム26Yの表面には画像信号のイエロー画像成分と対応した静電潜像が形成される。
【0061】
次に、現像器51Y内の現像ローラ54Yが回転駆動されながら、感光ドラム26Yに当接し、上記静電潜像が、現像器51Yによりマイナス帯電したイエロートナーを用いて現像され、イエロートナー画像として可視化される。そして、このようにして得られた感光ドラム26Yに担持されたイエロートナー画像は、一次転写バイアスが供給された一次転写ローラ52Yにより、中間転写ベルト30上に一次転写される。このとき、中間転写ベルト30と感光ドラム26Yとは接触している。なお、ここでの接触とは、中間転写ベルト30と感光ドラム26Yとの間のトナー層の有無に関わりなく、中間転写ベルト30と感光ドラム26とが当接し圧力が生じている状態を意味するものとする。
【0062】
なお、トナー画像が転写された後、感光ドラム26Yは、表面に付着している転写残りトナーがクリーナ53Yによって除去される。
【0063】
このような一連のトナー画像形成動作は、他のプロセスカートリッジPM、PC、PBkにおいても所定のタイミングをもって順次行われる。
【0064】
なお、各現像ローラ54は、画像形成動作が開始される直前に上流側のプロセスカートリッジが一次転写中であっても、現像剤の劣化を防止するため順次感光ドラム26に回転しながら当接する。そして、各感光ドラム26上に形成された各色トナー画像は、それぞれの一次転写部T1(T1Y、T1M、T1C、T1Bk)で中間転写ベルト30上に順次重ねて一次転写される。なお、現像ローラ54は、現像動作を終えると、下流側のプロセスカートリッジが一次転写中であっても、現像剤の劣化を防止するために順次感光ドラム26から離間し回転が停止される。
【0065】
次に、このように中間転写ベルト30上に重畳して転写された4色のトナー画像は、中間転写ベルト30の矢印方向の回転に伴い、二次転写部T2に移動される。
【0066】
さらに、レジストローラ対24で斜行を矯正された記録材Qは、中間転写ベルト30上の画像とタイミングをとって二次転写部T2に送り出される。それまでの間は、二次転写ローラ27は不図示の当接離間カムによって中間転写ベルト30とは離間状態にしており、各色の現像器51による感光ドラム26へのトナー画像の転写状態に影響を与えないようにしている。
【0067】
この後、記録材Qを挟んで中間転写ベルト30に当接した二次転写ローラ27により、中間転写ベルト30上の4色のトナー画像が記録材Q上へ一括して二次転写される。しかし、その前に二次転写ローラ27は、記録材Qへトナーを転写させる必要があるため、二次転写ローラ27へ印加する電圧が所望の値で転写動作が行えるよう所定のタイミングで中間転写ベルト30へ当接し、電圧が印加出来るように当接状態にさせておく。そして、二次転写ローラ27によってトナー画像が転写された記録材Qは、定着器25に搬送されて、加熱、加圧されることによりトナー画像が定着された後、排出ローラ対61、62、63により、装置本体上面に排出され、積載される。
【0068】
なお、二次転写を終了した中間転写ベルト30は、テンションローラ105近傍に設置されたベルトクリーナブレード150によって表面に残留した転写残りトナーが除去される。
【0069】
(非制御時の負荷変動)
次に、感光ドラム26の周面速度Vdと中間転写ベルト30の周面速度Vbが同じ場合の、中間転写ベルト30の駆動トルクTの変動について説明する。なお、以下の説明では、感光ドラム26のことを単に「ドラム」と呼び、中間転写ベルト30のことを単に「ベルト」と呼ぶこともある。
【0070】
このドラム周面速度Vdとベルト周面速度Vbの周速度差とベルト駆動トルクの関係を、実際の画像形成装置で測定し検証した結果を用いて詳しく説明する。
【0071】
上記構成の画像形成装置1において、紙の大きさにLTRサイズの紙を用いて3枚連続印刷した際の駆動ローラ100の回転トルク変動を測定した結果を図3に示す。
【0072】
図3から分かるように、画像形成の初期と最後に過渡的なトルク変動(負荷変動)が発生している。このトルク変動(負荷変動)は、上にも説明したように、中間転写ベルト30と感光ドラム26の接触及び一次転写の有無によって発生する摩擦力に起因している。
【0073】
しかし、その後、各色の現像器51から発生するかぶりトナーが一次転写ニップ部T1に入り込むタイミングからトルクが軽くなる方向への変動が始まる。
【0074】
それは、トナーによってドラム26とベルト30間の摩擦力が減ることでこのような現象になることが確認できた。
【0075】
一方、画像形成終盤になって、上流側のイエロートナーから1次転写が終了するにつれて、現像器51の離間が始まると、1次転写ニップT1へのトナーの供給が少なくなる。このため、再度、ドラム26がベルト30の駆動負荷になり始め、ベルト30の駆動トルクが上昇していく。
【0076】
ただし、トルクの変動は中間転写ベルト30を駆動しているモータにかかっているトルクのことであり、このモータは制御通り動作しており、中間転写ベルト30を回転させる回転速度への影響はない。その半面、トルク変動が発生することで影響を受けるのは駆動ローラ100と中間転写ベルト30が一対一で追従して回転しない状況である、中間転写ベルト30と駆動ローラ100との間で発生する微小なマイクロスリップという形になって現れてくる。
【0077】
(非制御時の色ズレ計測結果)
図4は、3枚のLTR用紙を連続出力した場合の、記録材上のブラックに対するイエローの相対位置ズレである色ズレを測定した結果を示す。なお、色ずれが無いということは色ずれ量として20μm程度であり、この量以下であれば、画像上問題の発生がなく、きれいな画像が出力される。
【0078】
ここで、横軸は、トナー像を転写する際の記録材の移動方向における記録材の先端を零とし、先端から後端への移動方向に沿った距離を示す。つまり、縦長のLTR用紙の先端から後端へ向けてどれだけの距離かを示す。このことを図中では紙搬送方向距離と記載している。一方、縦軸は、画像上でブラック(Bk)に対して、イエロー(Y)が用紙後端側に色ズレしている場合を正としている。なお、ブラックとイエロー間の色ズレに着目するのは、ここで取り上げる色ズレが、後述する理由により、転写順序で、第一色であるイエローと最終色であるブラックとの間で顕著に発生するからである。
【0079】
図4の1枚目の測定結果を見ると、紙搬送方向距離で0〜250mm付近において色ズレが発生しており、3枚目の紙搬送方向距離で100mm以降の後半部では1枚目とは逆方向に色ズレが発生している。
【0080】
1枚目の色ズレに関しては、図4において見られた、現像器当接開始に伴うベルト駆動トルクの減少に伴い、転写順序が第一色であるイエローの1次転写中のベルト速度が徐々に速くなっていることが関与している。一方、3枚目の色ズレに関しては、図4において見られた、現像器離間開始に伴うベルト駆動トルクの増加に伴い、最終色であるブラックの1次転写中のベルト速度が徐々に遅くなっていることが関与している。
【0081】
トルク変動、即ち、マイクロスリップがない状態で1次転写が行われている2枚目に関しては、ほとんど色ズレは発生していない。なお、ここでは取り上げていないが、マゼンタ、シアンも色ズレが生じているものの、イエロー、ブラックほど顕著ではない。
【0082】
また、図4に示すトルク変動は、画像形成装置による印刷枚数が増えるほど顕著になることが判っており、また、トルク変動、即ち、ベルト30と駆動ローラ100との間でマイクロスリップが発生してしまうのは、主に画像形成装置の寿命末期あたりに発生する駆動ローラ100の摩擦抵抗が下がることが原因である。摩擦力が下がる要因としては、駆動ローラ100を使用することによる表面性の変化や、中間転写ベルト内面の微小な削りカスが駆動ローラに付着することが原因である。その他、耐久に伴い、一次転写ローラ52の軸受け、二次転写ローラ27の軸受けの摩耗によって駆動ローラ100が中間転写ベルト30を搬送しようと思っていても、上記ローラの回転が中間転写ベルト30の回転を阻害する方向に働く。その結果、駆動ローラ100が中間転写ベルト30を搬送しきれなくなり、駆動ローラ100と中間転写ベルト30の間でマイクロスリップが発生する場合もある。その他、一次転写などの構成をローラではなく、シート状のものに変更して一次転写を行う場合もある。この場合においては、転写を行うために電圧を印加した場合には、転写部材のシートと中間転写ベルトとの間に吸着力が発生し、駆動ローラ100が中間転写ベルト30を搬送することが難しくなる。その結果、駆動ローラ100と中間転写ベルト30の間でマイクロスリップが発生する場合もある。
【0083】
そこで、本実施例では、図4に示したトルク変動によるマイクロスリップを小さくするため、駆動ローラ100と中間転写ベルト30との間でマイクロスリップが発生しないよう、構成を変更して上記色ズレの発生を防止した。
【0084】
以下に、本実施例の構成について、先ず、関係する装置構成を説明する。
【0085】
(制御シーケンスの説明)
図5は、本実施例を適用する装置の各色の現像バイアス印加タイミングとそれぞれの色に対して中間転写ベルト30へ転写するための一次転写バイアスの印加開始タイミングを記載している。また、最後に中間転写ベルト30から記録材Qに転写するための二次転写バイアスの印加開始タイミングを記載している。イエローの現像バイアス印加開始タイミングをDyStart、マゼンタの現像バイアス印加開始タイミングはDmStart、シアンの現像印加開始タイミングはDcStart、ブラックの現像バイアス印加開始タイミングはDkStartとする。それぞれの印加を終了するタイミングをイエローの現像バイアス印加終了タイミングはDyEnd、マゼンタの現像バイアス印加終了タイミングはDmEnd、シアンの現像印加終了タイミングはDcEnd、ブラックの現像バイアス印加終了タイミングはDkEndとする。また、イエローの一次転写バイアスの印加開始タイミングと終了タイミングをそれぞれT1yStart、T1yEnd、マゼンタの一次転写バイアスの印加開始タイミングと終了タイミングをそれぞれT1mStart、T1mEnd、シアンの一次転写バイアスの印加開始タイミングと終了タイミングをそれぞれT1cStart、T1cEnd、ブラックの一次バイアスの印加開始タイミングと終了タイミングをそれぞれT1kStart、T1kEndとする。最後に、中間転写ベルト上の画像を記録材Qに転写するタイミングの開始と終了タイミングをそれぞれT2Start、T2Endとする。
【0086】
このタイミングシートによる駆動制御を行った場合にトルク変動が発生するのが上記に示した一次転写のバイアスの印加開始タイミング、及び二次転写バイアスの印加のタイミングに合致する。一次転写のバイアス印加開始タイミングにおいては、バイアスが印加されると一次転写部材(一次転写ローラ)52と中間転写ベルト30との間に電位差が発生し、両者に吸着力が発生する。反対に印加終了のタイミングにおいては、バイアスの印加自体がなくなり、中間転写ベルト30と一次転写ローラ52との吸着力は発生しないため、一次転写部T1において中間転写ベルト30の走行性を阻害する要素がなくなり、駆動ローラ100と中間転写ベルト30との間にマイクロスリップが発生しなくなる。
【0087】
(本実施例の構成)
本実施例では、中間転写ベルト30を駆動している駆動ローラ100側に中間転写ベルト30の外側から所定の押圧をもって押し当てる押し当て部材Pkを配置して、マイクロスリップの防止を図るものである。
【0088】
図6には、押し当て部材Pkの配置位置を示しており、図6(a)は、転写ユニット31を装置の側面から見た時の図であり、押し当て部材Pkは、駆動ローラ側へ中間転写ベルト30を押しつけるように配置されている。当接圧は1.0kgfである。この当接圧は、画像形成装置の構成によって適宜変更することは可能である。本件のようなマイクロスリップが発生する条件としては、駆動ローラ100による中間転写ベルト30の搬送力が大きな部分と小さな部分が駆動ローラ上に存在し、搬送力が足りない部分において発生し易い。さらに、画像形成装置の耐久(通紙枚数の増加)に伴って一次転写や二次転写の部品に劣化が生じたり、表面性の変化が発生したりすることで、抵抗が変化し、中間転写ベルト30の回転を阻害する方向の抵抗成分が増加することで発生する。
【0089】
本実施例では、テンションローラ105のテンション力は4kgfを印加しながら駆動ローラ100で中間転写ベルト30を搬送させている。また、押し当て部材Pkの押し当て力を、500gf以上、本実施例では各押し当て部材Pkに1.0kgfを付加させて駆動ローラ100の駆動力を増加させ、中間転写ベルト30の搬送力を増加させている。この構成にすることで、押し当て部材Pkによる駆動力の増加量は耐久寿命末期における一次転写や二次転写による抵抗成分(トルク)よりも大きくなるためにマイクロスリップの発生を防止できる構成になる。
【0090】
図6(b)は、転写ユニット31に取り付けた押し当て部材Pk側から見た時の図であり、押し当て部材Pkは、中間転写ベルト30の移動方向に対し直交する幅方向端部、即ち、駆動ローラ100の長手軸線方向端部位置に配置している。駆動ローラ100の長手方向の配置位置については、本実施例における最大幅の通紙可能紙種は、サイズでLTR(横幅216mm)であり、この幅よりも外側に、即ち、非画像領域(画像形成領域外)に、コロPkが当接するように配置している。押し当て部材Pkであるコロを複数個所に設ける理由としては、押し当て部材Pkを中間転写ベルト30の長手全域に配置し当接させてしまうと、中間転写ベルト30の画像印字面全面に押し当て部材Pkが接触することになり、中間転写ベルト表面を傷つけてしまう可能性があるためである。本実施例では、中間転写ベルト30の長手端部部分の両側に押し当て部材Pkを配置し、中間転写ベルト30の印字面部に傷をつけないようにしている。また、両端部に配置する理由は、片側のみの場合は、中間転写ベルト30の搬送性が長手方向でアンバランスになってしまい、中間転写ベルト30の走行性が不安定になり、長手方向で色ずれや印字精度のずれが発生してしまうことを防止するためである。
【0091】
図6(c)は、押し当て部材Pkの形状を示しており、押し当て部材Pkの材料にはPOMを用いている。形状としては、外径は、直径(D)が10mm、長さ(L)が10mmの円筒形をしている。そして、その端面の円の中心からは中間転写ベルト30の回転に従動出来るように軸Pkaを出ており、この軸Pkaに圧力をかけることで押し当てコロPk自体を中間転写ベルト側へと押し当てながら、中間転写ベルト30を介して駆動ローラ100へ圧力を常時かけられる構成にしている。
【0092】
図7は、本実施例における各現像位置における一次転写バイアスが印加された時にベルト30の回転を阻害する力を示しており、イエロー位置ではμyT1、マゼンタ位置ではμmT1、シアン位置ではμcT1、ブラック位置ではμkT1である。更に、二次転写バイアスを印加した時にベルトの回転を阻害する力μ22を示している。さらに、駆動ローラ位置において、駆動ローラ100が中間転写ベルト30を駆動させるときの力をμ3Fk、押し当て部材Pkを当接させている時の力をμ32kとした図を示している。μ3kとμ32kの関係は、μ3Fk<μ32kであることは言うまでもない。
【0093】
ここで、マイクロスリップが発生する状況としては一次転写位置T1と二次転写位置T2の阻害抵抗力の合計よりも駆動ローラ100が中間転写ベルト30を搬送させる力の方が弱くなった場合に発生する。式としては、以下のように、
μyT1+μmT1+μcT1+μkT1+μ22>μ3Fk
である。
【0094】
この状態で、押し当て部材Pkを当接した場合は、上記式の不等号が変わり、
μyT1+μmT1+μcT1+μkT+μ22<μ32
となり、駆動ローラ100と中間転写ベルト30との間にスリップが発生しなくなる構成となる。
【0095】
以下に、本件の構成における画像形成装置の状態の違いによる力の変化を以下にまとめた。スティックスリップを防止するためには、以下の表1のAとBの和を、CとEの和よりも小さくすることが必要である。
【0096】
【表1】

【0097】
上記表1を不等号を交えて式にしたものが以下になる。一次転写部阻害トルク(A)と二次転写部阻害トルク(B)の和が、駆動ローラ駆動トルク(C)よりも、又は、駆動ローラ駆動トルク(C)と押し当て部材Pkによる駆動力増加トルク量(E)の和よりも小さければスティックスリップの発生は防止できる。
1.(マイクロスリップ無し)
一次転写部阻害トルク(μyT1+μmT1+μcT1+μkT1)+二次転写部阻害トルク(μ22)(1030kgf・cm)<駆動ローラ駆動トルク(μ3Fk)(1830kgf・cm)
2.(マイクロスリップ無し)
一次転写部阻害トルク(μyT1+μmT1+μcT1+μkT1)+二次転写部阻害トルク(μ22)(1460kgf・cm)<駆動ローラ駆動トルク(μ3Fk)(1700kgf・cm)
3.(マイクロスリップ可能性有り)
一次転写部阻害トルク(μyT1+μmT1+μcT1+μkT1)+二次転写部阻害トルク(μ22)(1670kgf・cm)≒駆動ローラ駆動トルク(μ3Fk)(1680kgf・cm)
4.(マイクロスリップ無し)
一次転写部阻害トルク(μyT1+μmT1+μcT1+μkT1)+二次転写部阻害トルク(μ22)(1670kgf・cm)<駆動ローラ駆動トルク(μ3Fk)+押し当て部材による駆動力増加トルク量(1820kgf・cm)
5.(マイクロスリップ無し)
一次転写部阻害トルク(μyT1+μmT1+μcT1+μkT1)+二次転写部阻害トルク(μ22)(1670kgf・cm)<駆動ローラ駆動トルク(μ3Fk)+押し当て部材による駆動力増加トルク量(1890kgf・cm)
6.(マイクロスリップ無し)
一次転写部阻害トルク(μyT1+μmT1+μcT1+μkT1)+二次転写部阻害トルク(μ22)(1670kgf・cm)<駆動ローラ駆動トルク(μ3Fk)+押し当て部材による駆動力増加トルク量(2040kgf・cm)
【0098】
このように、画像形成装置の寿命に伴い、駆動ローラの搬送力が低下していき、その中で、一次転写及び二次転写部の阻害力も増加していくことが分かる。その中で、押し当て部材Pkの当接の有無及び押し当て力の違いでどのように駆動ローラ100による搬送力が増加していくかが分かる。
【0099】
駆動ローラ100の搬送力と押し当て部材Pkとの関係については、押し当て部材Pkを駆動ローラ100及び中間転写ベルト30に押し当てる位置にも影響することが分かっている。押し当て部材Pkの配置位置を、図7に示した駆動ローラ100と中間転写ベルト30との接触領域A〜Bの範囲から少しずらすことで中間転写ベルト30が駆動ローラ100へ巻きつく角度を増やすことができ、上記したμ3Fkのμ3の値をより大きくすることができる。例えばA点よりも中間転写ベルト30の上流側、若しくは、B点よりも中間転写ベルト30の下流側である。
【0100】
本実施例では、上記説明したようにベルト30へのトルクが変動するタイミング、つまり、ベルト30のスリップが起こり得るタイミングは一次転写時と二次転写時の2か所である。本実施例の構成では、押し当て部材Pkは常時中間転写ベルト30を所定の圧力で当接させているため、駆動ローラ100と中間転写ベルト30の間には大きな摩擦力を生じさせている。このため、駆動ローラ100と中間転写ベルト30間の摩擦力の方が、一次転写時と二次転写時の2か所の合計値よりも大きな値であるために駆動ローラ100と中間転写ベルト30間のスリップの発生を防止することができる。
【0101】
よって、その結果として、パッチを中間転写ベルト30に形成している時の中間転写ベルト30の回転速度と、画像形成を行っている時のベルト30の回転速度は同じ状態にすることができる。その結果、各色において、色ずれの現象の発生を防止することができる。
【0102】
(第1実施例の効果)
このように、小型のコロPkを押し当てる構成にすることで、装置コストを抑え、かつ常時当接させておくことで、各タイミングにおける中間転写ベルト30と駆動ローラ100とのスリップ現象を防止することができる。従って、画像形成中においても像担持体(感光ドラム)26と中間転写ベルト30との速度変動がないため、結果として色ズレのない良好な画像を出力できる。
【0103】
また、本実施例のように押し当て部材Pkを長手全域ではなく、中間転写ベルト30の端部のみに、しかも、画像形成領域外に配置する構成とされる。画像形成に用いる部品で、画像領域内に配置されている二次転写部材27と像担持体(感光ドラム)26以外は接触しないため、中間転写ベルト表面を傷つけることはなくなる。その結果、寿命を通して良好な画像を得ることが可能となる。その他、画像領域内に常時当接する構成ではないため、中間転写ベルト30へ紙粉やゴミなどの異物を押しつける構成とはされておらず、中間転写ベルト表面にそのような異物を付着させることが無くなるため、画像不良の発生が無くなる。
【0104】
実施例2
以下、図8を参照して第2実施例に係る画像形成装置について説明する。ただ、第1実施例にて説明した画像形成装置の全体構成、画像形成装置のブロック図、画像形成動作、非制御時の負荷変動、非制御時の色ズレ計測結果、制御シーケンスの説明については同じであるために実施例1の説明を援用し、ここでの再度の説明は省略する。以下に、本実施例の特徴部について説明する。
【0105】
(本実施例の構成)
本実施例では、中間転写ベルト30を駆動している駆動ローラ100側に中間転写ベルト30の外側から所定の圧をもって押し当てる押し当て部材Pkを配置して、マイクロスリップの防止を図ることは第1実施例と同じである。本実施例では、トルク変動が発生するタイミングに応じて押し当て部材Pkの中間転写ベルト30への当接及び離間を制御するものである。つまり、本実施例は、トルクが大きくなるタイミングに押し当て部材Pkに駆動力を与えて中間転写ベルト30の回転を一定に保つ構成とされる。
【0106】
第1の実施例においては、常時コロPkを当接させる構成にしており、駆動ローラ100の駆動力を中間転写ベルト30に与えてスリップを防止しているが、この構成においては、転写ユニット31のトルク自体を大きくすることで目的を達成している。しかし、この実施例1の構成においては、トルクの変動を抑える構成にまではなっておらず、不図示の駆動ローラ100を駆動するモータへの負荷によって、駆動ローラ100の回転速度、及び、中間転写ベルト30の回転速度が微小ながら変化が生じてしまう。その結果、色ずれを完全に解消することが困難であった。
【0107】
(本実施例の具体的な構成)
図8には、押し当て部材Pkの配置位置を示しており、図8(a)は、転写ユニット31を装置の側面から見た時の図であり、押し当て部材Pkは、駆動ローラ側へ中間転写ベルト30を押しつけるように配置されている。当接圧は1.0kgfである。図8(b)は、転写ユニット31に取り付けた押し当て部材Pk側から見た時の図であり、押し当て部材Pkは、中間転写ベルト30及び駆動ローラ100の長手端部位置に配置している。長手方向の配置位置については、本実施例における最大幅の通紙可能紙種はサイズでLTR(横幅216mm)であり、この幅よりも外側にコロが当接するように配置している。図8(c)は、押し当て部材Pkの形状を示しており、押し当て部材Pkの材料にはPOMを用いており、外径(D)は、直径10mm、長さ(L)が10mmの円筒形をしている。そして、その端面の円の中心からは中間転写ベルト30の回転に従動出来るように軸Pkaが出ている。この軸Pkaに圧力をかけることで押し当てコロPk自体を中間転写ベルト側へと押し当てながら、中間転写ベルト30を介して駆動ローラ100へ圧力を常時かけられる構成にしている。
【0108】
本実施例の図8(b)は、実施例1の図6(b)と違う点として、押し当て部材Pkを駆動回転させるモータMo1、Mo2をそれぞれの押し当て部材Pkに取り付けている。このモータMo1、Mo2は、転写ユニット31のトルクの変動に対して駆動と従動を行うことが可能である。
【0109】
(本実施例の制御)
実施例1に関連して上述したように、本実施例におけるトルクの変動、つまりスリップが発生し、色ずれが発生しうるタイミングは、一次転写時と二次転写時の2か所である。これらのタイミングと同期させて押し当て部材Pkを回転駆動させるものである。なお、本実施例で用いている押し当て部材Pkは、実施例1と同じPOMを用いている。しかし、押し当て部材Pkによる中間転写ベルト30の駆動力及び搬送力を増大させるためには、押し当て部材Pkの最表層部、つまり、中間転写ベルト30と接触する位置に摩擦力の高いゴム材を用いることができる。また、表面の粗さを大きくすることで摩擦力を上げる構成の押し当て部材Pkを用いても良い。
【0110】
実施例1では、押し当て部材Pkを当接した場合は、以下の関係式
μyT1+μmT1+μcT1+μkT1+μ22<μ32
となり、駆動ローラ100と中間転写ベルト30との間にスリップが発生しなくなる構成となる。
【0111】
しかし、この構成は、単に駆動ローラ100を回転駆動させているモータの負荷の許容内のトルク値に頼っているのみで、このモータへの負荷が大きくなる。そのために、画像形成装置に入力されている電圧の降下や使用環境の変化に伴って若干ながら回転ながら回転速度が変動している。そこで、トルクを変動させる外的要因のトルク変動値Hについて、押し当て部材Pkを駆動させるモータMo1、Mo2に負担してもらうことによって先に記載した外的トルク変動要因分をなくすことが可能となり、中間転写ベルト30の回転を一定に維持することが可能となる。
【0112】
よってその結果として、外的トルク要因の有無に関わらずパッチを中間転写ベルト30に形成している時の中間転写ベルト30の回転速度と、画像形成を行っている時の一次転写時や二次転写時などのベルト30の回転速度を同じ状態にすることができる。その結果、各色において、色ずれの現象の発生を防止することができる。
【0113】
一方、本実施例では、図1に示すように、二次転写後に発生することのある中間転写ベルト30に残った二次転写残トナーを回収するためにブレード150を設けている。一方、特開平9−50167号公報に記載するように、また、図8(a)に一点鎖線で示すように、中間転写ベルト上の転写残トナーをクリーニングローラ150Rによって帯電し、像担持体(感光ドラム)26に戻すクリーニング方法を採用することもできる。この構成では、クリーニングローラ150Rを中間転写ベルト30に当接離間させる構成にしている。
【0114】
クリーニングの動作は、各色を中間転写ベルト30に転移させた後、所定のタイミングでクリーニングローラ150Rを当接させるが、この場合、クリーニング時において電源151からバイアスを印加して中間転写ベルト上の残トナーを帯電させる必要がある。この時バイアスを印加するために中間転写ベルト30とクリーニングローラ150Rとの間に吸着力が発生し、中間転写ベルト30を止める方向の力が発生する。この場合にもトルクが上昇する場合があるため、中間転写ベルト30の回転速度が微小に不安定になる場合がある。本実施例では、このタイミングにおいても押し当て部材Pkに駆動力を与えることで中間転写ベルト30の回転速度を安定化させることができる。
【0115】
一方、押し当て部材Pkの駆動回転は、常時行っても中間転写ベルト30を駆動回転させている駆動ローラ100に対する負荷の軽減になるため問題はない。
【0116】
本発明で用いた構成は、図1のような4色の現像器を各色持ち、そこに4つの像担持体(感光ドラム)26を配置し、中間転写ベルト30に現像器内のトナーを現像器51の配置位置分の時間差を設けて、ほぼ同時に転写している、所謂、インライン構成の画像形成装置で説明した。
【0117】
図10には、像担持体(感光ドラム)26が一つの構成の画像形成装置を示す。本実施例の画像形成装置は、感光ドラム26に対して回転現像装置200と、上記実施例1で説明したと同様の構成とされる中間転写ユニット31とを備えている。斯かる構成の画像形成装置は、当業者には周知であり、実施例1で説明したと同様の構成及び作用をなす部材には、同じ参照番号を付し、詳しい説明は省略する。
【0118】
本実施例の画像形成装置は、像担持体としての感光ドラム26に、回転現像装置200に搭載した4色の現像器201〜204の内、一つの現像器で一ページ分の画像形成を中間転写ベルト30に転写させる。その後、次々と別の現像器で画像を形成していく、所謂、4パス構成の画像形成装置である。
【0119】
また、上記各実施例と同様に、本実施例においても、中間転写ベルト30を介して駆動ローラ100側へと押圧を掛けるために押し当て部材Pkが配置されている。
【0120】
このような本実施例の画像形成装置の構成によれば、本発明の効果は増大する。
【0121】
何故ならば、順次各色を中間転写ベルト30に転写している最中は二次転写部材(二次転写ローラ)27に中間転写ベルト上のトナーを付着させてはならないため、二次転写ローラ27は離間している必要がある。そして、記録材Qに中間転写ベルト上のトナーを転写する際に初めて二次転写ローラ27が当接を行う動作が入る。この時、中間転写ベルト30への負荷が変わるタイミングが多くあるため、画像のずれが生じる可能性が高くなるためである。
【0122】
(第2実施例の効果)
このように、小型のコロPkを押し当て、さらに所定のタイミングで回転駆動させる構成にすることで、外的要因に左右されることなく画像形成を行うことが可能となる。また、各タイミングにおける中間転写ベルト30と駆動ローラ100とのスリップ現象を防止することができる。従って、画像形成中においても像担持体(感光ドラム)26と中間転写ベルト30との速度変動がないため、結果として色ズレのない良好な画像を出力できる。
【0123】
なお、本発明は、上記カラー画像形成装置のみならず、中間転写ベルトを用いたモノクロの画像形成装置に同様に適用することができ、上記各実施例にて説明したと同様の作用効果を得ることができ、印字精度の向上を達成することができる。
【符号の説明】
【0124】
1 画像形成装置
2 画像形成装置本体
26(26Y、26M、26C、26Bk) 感光ドラム
27 二次転写ローラ(二次転写部材)
30 中間転写ベルト(中間転写体)
31 中間転写ベルトユニット
52 一次転写ローラ(二次転写部材)
100 駆動ローラ
105 テンションローラ
108 二次転写対向ローラ
Pk 押し当て部材
Q 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体の前記トナー像が転写される無端ベルト状の中間転写体と、
前記像担持体を前記中間転写体に接触させ、前記トナー像を前記中間転写体に転写する一次転写部材と、
前記中間転写体の前記トナー像を記録材に転写する二次転写部材と、
前記中間転写体を回転駆動する駆動ローラと、
を備える画像形成装置であって、
前記中間転写体を介して前記駆動ローラ側に押圧をかけるために前記中間転写体の外部に押し当て部材を設け、
前記押し当て部材は、前記駆動ローラの長手軸線方向の両側の端部における前記中間転写体の画像形成領域外に配置されている、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記押し当て部材は、前記中間転写体の回転駆動に対して従動しており、少なくとも前記一次転写時と前記二次転写時には前記押し当て部材は、前記中間転写体に常時当接していることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記押し当て部材は、少なくとも前記一次転写時と前記二次転写時に前記中間転写体に当接させながら回転駆動させていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−72884(P2013−72884A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209415(P2011−209415)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】