説明

画像形成装置

【課題】 高トナー帯電量を使いこなす画像形成装置において、画像形成環境の変動に対する濃度変動を現像バイアスの調整では調整しきれず、所望の画像濃度を得ることが出来ない。
【解決手段】 電界強度に対して抵抗率が線形的に変化しない特性を有するキャリアを用いて、キャリアにかかる電界強度の制御を行なう事を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上に形成された静電像をトナーにより可視化して画像を得る複写機、プリンターなどの画像形成装置に関するものである。より詳細には、現像剤としてトナーとキャリアとを備える2成分現像剤を用いる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた複写機、プリンターなどの画像形成装置は、現像器内でトナーを帯電し、現像スリーブに現像バイアスを印加し、現像スリーブと感光体の間に電界を形成することによって、感光体の所望の場所にトナーを移動させ、画像形成を行なっている。
【0003】
現像剤として、トナー粒子のみから成る1成分現像剤と、トナー粒子とキャリア粒子とを備えた2成分現像剤とがある。2成分現像剤はトナーとキャリアを混合し、トナーとキャリアの摩擦によってトナーを帯電するため、一成分現像剤よりトナーの帯電量が安定しており、より高精細で色再現性を求められる画像形成装置においては、2成分現像剤を用いた現像方式の方が適している。
【0004】
しかし、比較的トナー帯電性が安定している二成分現像方式においても、ユーザーは様々な温湿度環境下で画像形成装置を使用するため、トナー帯電量を一定に保つことは難しく、ある程度の範囲で変化してしまう。トナー帯電量が変化すると画像濃度に影響を及ぼすため、トナー帯電量が変化した場合に画像濃度を安定化させる手段がいろいろ提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1のように、画像出力を行なう環境条件に応じて、現像バイアスに印加されている交流電圧のピークtoピーク電圧Vppを調整し、感光体と現像スリーブ間の電界強度を変化させて、感光体に現像するトナー量をコントロールする技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平2−41030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来製品に搭載されている現像剤を用いた場合には、特許文献1にあるように、温湿度条件に応じて交流電圧のピークtoピーク電圧Vppを調整することで、感光体に現像するトナー量をコントロールし、画像濃度を安定化することができたが、高画質、省エネ、高生産性を実現するために高い帯電量のトナーを用いる画像形成装置においては、温湿度条件に応じて交流電圧のピークtoピーク電圧Vppを調整しても、感光体に現像するトナー量を十分にコントロールしきれず、画像濃度を安定化することができないという課題がみられた。
【0008】
なお、高画質、省エネ、高生産性を実現するために高い帯電量のトナーを用いる理由について以下のとおりである。電子写真は紙上にトナーを溶融固着するため、生産性向上や使用電力低減を実現するためには、紙上に載せるトナー量を減らすことが有効である。しかしながらトナー帯電量が従来製品のままだとγが立ってしまい、階調性が確保できなくなる。従来製品と同じ階調性を維持するために、トナー帯電量を高くする必要があるのである。
【0009】
では、上記の課題について、この後詳細に説明する。
【0010】
そもそも二成分現像方式において現像ニップ中に存在するトナーには、現像バイアスが作る電界によって形成される力の他に、キャリア内に存在する電荷によって形成される力(カウンタチャージによる力)が働く。この力は、トナーとキャリアが摩擦帯電した時にキャリア内に生じた電荷(トナーと逆極性)によって作られるものであるため、トナーをキャリアに引き付ける方向、つまりトナーを感光体へ向かうのを妨げる方向に働く力である。この力はトナー帯電量がおおきいほど大きくなる力である。またキャリアの抵抗が高いほど、キャリア内の電荷が逃げにくくなるため、大きくなる力である。
【0011】
図に、従来キャリアを用いた時の現像促進側の交流電圧のピークtoピーク電圧印加時のトナーに働く力を図に示す。図の横軸はトナー帯電量であり、縦軸は現像ニップ中に存在するトナーに働く力(現像バイアスが作る電界によって形成される力と、キャリア内に存在する電荷によって形成される力の合力)である。
【0012】
例えば、通常環境下における従来のトナー帯電量(30uC/g)では、トナーに働く力はAである。このトナーが低湿環境下でトナー帯電量が高くなってしまった場合(40uC/g)、キャリア内に生じる電荷量が多くなり、トナー/キャリアの静電的付着力が大きくなり、トナーに働く力は小さくなる(B)。その結果、必要濃度が得られなくなる。また高湿環境下でトナー帯電量が低くなってしまった場合(20uC/g)、キャリア内に生じる電荷量が減少し、トナー/キャリアの静電的付着力が小さくなり、トナーに働く力は大きくなる(C)。その結果、必要濃度以上になってしまう。
【0013】
一方、通常環境下におけるトナー帯電量が高い場合(60uC/g)には、トナーに働く力はDである。このトナーが低湿環境下で更にトナー帯電量が高くなってしまった場合(70uC/g)、上記と同様にトナーに働く力は小さくなり(E)、このトナーが高湿環境下でトナー帯電量が低くなってしまった場合(50uC/g)、上記と同様にトナーに働く力は大きくなる(F)。 このように環境によるトナー変動幅が同じであっても、トナー帯電量の中心値が高いとトナーに働く力の変動幅が大きくなり、画像濃度もトナー帯電量の中心値が大きいほど変動しやすくなってしまう。なお、トナー帯電量が高くなるにつれて、トナーに働く力は指数的に小さくなるのは、現像バイアスが作る電界によって形成される力はトナー帯電量に比例するのに対し、キャリア内部に存在する電荷によって形成される力はトナー帯電量の2乗に比例するためである。
【0014】
次に、図の現像バイアスに印加されている交流電圧のピークtoピーク電圧Vppを変えたときのトナーに働く力を図に示す。図1と同様、図2の横軸はトナー帯電量であり、縦軸はトナーに働く力(現像バイアスが作る電界によって形成される力と、キャリア内に存在する電荷によって形成される力の合力)である。
【0015】
例えば、従来トナーにおいて低湿環境下(40uC/g)で通常環境と同じ画像濃度を得るためには、Vppを大きくすることで通常環境下とトナーに働く力を同じ(A)にし、トナー帯電量の変動を交流電圧のピークtoピーク電圧Vppで吸収することができる。また従来トナーにおいて高湿環境下(20uC/g)で通常環境と同じ画像濃度を得るためには、Vppを小さくすることで通常環境下とトナーに働く力を同じ(A)にし、トナー帯電量の変動を交流電圧のピークtoピーク電圧Vppで吸収することができる。
【0016】
図に従来キャリアの抵抗率を示す。横軸は電界強度で、縦軸は抵抗率である。交流電圧のピークtoピーク電圧Vppを大きくするとトナーに働く力が大きくなるのは、現像バイアスが作る電界によって形成される力が大きくなるのに加えて、図にあるように電界強度が大きくなるとキャリア抵抗が下がり、キャリア内の存在する電荷が逃げやすくなり、キャリア内に存在する電荷によって形成される力(カウンタチャージによる力)が小さくなるからである。
【0017】
また、交流電圧のピークtoピーク電圧Vppを小さくするとトナーに働く力が小さくなるのは、現像バイアスが作る電界によって形成される力が小さくなるのに加えて、図にあるようにキャリア抵抗が大きくなり、キャリア内の存在する電荷が逃げにくくなり、キャリア内に存在する電荷によって形成される力(カウンタチャージによる力)が大きくなるからである。
【0018】
一方、トナー帯電量の絶対値が高い場合において、低湿環境下(70uC/g)で通常環境と同じ画像濃度を得るためにVppを大きくしキャリア抵抗を下げてトナーに働く力を大きくしようとしても、キャリア抵抗の振りしろが少なく、キャリア内に存在するカウンタチャージの絶対量がおおいため、増加した分を十分に逃がしきれず、通常環境下とトナーに働く力を同じ(D)にできない。十分にキャリア抵抗を下げようとして無理に電界強度を上げると、スリーブ/Dr間のリーク上限電界強度を超えてしまい、リークによる画像不良が発生してしまう。
【0019】
またトナー帯電量の絶対値が高い場合において、高湿環境下(50uC/g)で通常環境と同じ画像濃度を得るためにVppを大きくしキャリア抵抗を上げてトナーに働く力を小さくしようとしても、キャリア抵抗の振りしろが少なく、キャリア内に存在するカウンタチャージ量があまり変わらないため、通常環境下とトナーに働く力を同じ(D)におさえることが出来ない。十分にキャリア抵抗を上げようとして現像電界を弱くするために無理にVppを落としすぎるとじゅうぶんな引戻しが得られずにVbackかぶりが生じ、画像不良が発生してしまう。
【0020】
キャリアの低抵抗しても現像性は上がるものの、トリボの変化に対しては休できないため、上記課題は解決できない。
【0021】
そこで本出願に係る第1の発明の目的は、従来技術では制御不可能だったトナー帯電量の高いシステムの濃度安定化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
キャリアとトナーを混合してなる2成分現像剤を用いて画像形成を行なう画像形成装置において、該画像形成装置は静電潜像を担持する感光体と、
該2成分現像剤を有する現像器を有しており、該感光体と該現像担持体との間にトナーを現像する為の現像バイアス(AC+DC)が印加されており、
該キャリアに与えられる電界強度を横軸、前記キャリアの誘電率を縦軸とするグラフにおいて、
電界強度Ea=|(Vp1−VL)/D|における傾きをK1、
電界強度Eb=|(Vp2−VL)/D|における傾きをK2、としたとき、
電界強度Eaにおける前記キャリアの抵抗率ρ1を通る傾きK1の直線と、前記電界強度Ebにおける前記キャリアの抵抗率ρ2を通る傾きK2の直線との交点における電界強度をEpとすると、
|K1|>|K2|、 Ea > Ep > Eb であり、
(Vp1は通常時のVL電位に対しトナーが現像される側のピーク電位、Vp2は通常時のVL電位に対しトナーが引き戻される側のピーク電位、
VLは最高濃度を得る為の潜像電位、 Dは感光体-現像担持体最近接距離)
且つ
トナー濃度を検知する濃度検知手段と、現像バイアスの出力を調整するバイアス調整手段を有し、
濃度感知手段によって得られた信号に応じて、 トナーが感光体に現像される側の電界強度をバイアス調整手段によって調整するモードを有することを特徴とする。
【0023】
更に、バイアス調整手段によって調整されるモードは、
トナーが感光体に現像される側の電界強度をEpより大きな範囲に調整するモードと
トナーが感光体に現像される側の電界強度をEpより小さい範囲に調整するモードを
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
電界強度に対して抵抗率が線形的に変化しない特性を有するキャリアを用いてキャリアにかかる電界強度の制御を行なうことにより、キャリア抵抗を大幅に変化させることとが出来、キャリア内のカウンタチャージが大幅に変動しても十分に対応することができる。その結果、カウンタチャージの変動の大きい高トリボシステムにおいても、十分に濃度安定化を行なうことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】画像形成装置を説明する図
【図2】有機感光体を説明する図
【図3】アモルファスシリコン感光体を説明する図
【図4】現像バイアスを説明する図
【図5】本発明におけるキャリア抵抗率を説明する図
【図6】キャリア抵抗率測定装置を説明する図
【図7】本発明におけるキャリアに働く力を説明する図
【図8】本発明におけるキャリア抵抗率を説明する図
【図9】本発明における現像バイアスのピークtoピーク電圧制御を説明する図
【図10】実施例におけるキャリア抵抗率を説明する図
【図11】実施例における画像濃度結果を説明する図
【図12】従来キャリアに働く力を説明する図
【図13】従来キャリアに働く力を説明する図
【図14】従来キャリアの抵抗率を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0026】
[実施例1]
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0027】
[画像形成装置]
図1は、本発明の一実施例に係る画像形成装置の要部の概略断面構成を示す。
【0028】
画像形成装置100は、像担持体としての円筒型の感光体(感光ドラム)1を有する。感光体1の周囲には、帯電手段としての帯電器2、露光手段としての露光器3、現像手段としての現像器4、転写手段としての転写帯電器5、クリーニング手段としてのクリーナー7、前露光手段としての前露光器8などが配置されている。又、転写材Sの搬送方向において、感光体1と転写帯電器5とが対向する転写部よりも下流には、定着手段としての定着器6が配置されている。
【0029】
感光体1としては、一般的なOPC感光体、a−Si感光体を用いることができる。
【0030】
OPC感光体は、導電性基体上に、有機光導電体を主成分とする光導電層を備えた感光層(感光膜)が形成されて成る。OPC感光体は、一般的には、図2のように金属基体(感光体用支持体)11の上に有機材料から成る電荷発生層12、電荷輸送層13、表面保護層14が積層されて構成される。
【0031】
又、a−Si感光体は、導電性基体上に、非晶質シリコン(アモルファスシリコン)を主成分とする光導電層を備えた感光層(感光膜)を有する。a−Si感光体としては、一般的に、次のような層構成のものがある。即ち、図3(a)に示すa−Si感光体は、感光体用支持体(基体)21の上に、感光膜22が設けられている。該感光膜22は、a−Si:H、X(Hは水素原子、Xはハロゲン原子)からなり光導電性を有する光導電層23で構成されている。図3(b)に示すa−Si感光体は、感光体用支持体21の上に、感光膜22が設けられている。該感光膜22は、a−Si:X、Xからなり光導電性を有する光導電層23と、アモルファスシリコン系表面層24とから構成されている。図3(c)に示すa−Si感光体は、感光体用支持体21の上に、感光膜22が設けられている。該感光膜22は、a−Si:H、Xからなり光導電性を有する光導電層23と、アモルファスシリコン系表面層24と、アモルファスシリコン系電荷注入阻止層25とから構成されている。図3(d)に示すa−Si感光体は、感光体用支持体21の上に、感光膜22が設けられている。該感光膜22は、光導電層23を構成するa−Si:H、Xからなる電荷発生層26ならびに電荷輸送層27と、アモルファスシリコン系表面層24とから構成されている。
【0032】
尚、感光体1としては、上述のような層構成のものに限定されるものではなく、その他の層構成の感光体も用いることができる。
【0033】
感光体1は、図1に示すように、図示矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。回転する感光体1の表面は、帯電器2により略一様に帯電される。そして、露光器3に対向する位置では、画像信号に対応して発光されるレーザーが露光器3から照射され、感光体1上に原稿画像に対応した静電像が形成される。
【0034】
感光体1に形成された静電像は、感光体1の回転により現像器4に対向する位置まで到達すると、現像器4内の非磁性トナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)とを備える2成分現像剤によりトナー像として現像される。静電像は、2成分現像剤のうち実質的にトナーのみで現像される。
【0035】
現像器4は、2成分現像剤を収容する現像容器(現像器本体)44を有する。又、現像器4は、現像剤担持体としての現像スリーブ41を有する。現像スリーブ41は、現像容器44の開口部に回転可能に配置され、且つ、内部に磁界発生手段としてのマグネット42を内包している。本実施例では、現像スリーブ41は、その表面が、感光体1と対向する現像部Gにおいて感光体1の表面移動方向と同方向に移動するように回転駆動される。2成分現像剤は、現像スリーブ41の表面上に担持された後、規制部材43によって量が規制され、感光体1と対向する現像部Gまで搬送される。キャリアは、帯電したトナーを担持して現像部Gまで搬送する働きをする。又、トナーは、キャリアと混合されることにより、摩擦帯電により所定の極性の所定の帯電量に帯電される。現像スリーブ41上の2成分現像剤は、現像部Gにおいて、マグネット42の発生する磁界により穂立ちして磁気ブラシを形成する。そして、本実施例では、この磁気ブラシを感光体1の表面に接触させ、又不図示の電源から現像スリーブ41に現像バイアスを印加することにより、2成分現像剤からトナーのみを感光体1上の静電像に転移させる。
【0036】
感光体1上に形成されたトナー像は、転写帯電器5によって転写材S上に静電的に転写される。その後、転写材Sは、定着器6に搬送され、ここで加熱、加圧されることにより、その表面にトナーが定着される。その後、転写材Sは、出力画像として装置外に排出される。
【0037】
尚、転写工程後に感光体1上に残留したトナーは、クリーナー7によって除去される。その後、クリーナー7によって清掃された感光体は、前露光器8からの光照射により電気的に初期化され、上記の画像形成動作が繰り返される。
【0038】
本発明では、電界強度に対して抵抗率が非線形的に変化するキャリアを用い、且つ、画像形成環境に応じて電界強度の制御をおこなうことで高帯電量トナーを使うシステムの画像濃度安定化を行なっているため、現像強度を決定する現像バイアス、キャリア抵抗率、制御方法について詳しく説明する。
【0039】
[現像バイアス]
現像動作時における感光体1上の静電像の電位及び現像スリーブ41に印加される現像バイアスを図4に示す。図4の横軸は時間を示し、縦軸は電位を示す。
【0040】
本実施例では、現像バイアスとしては、一般的な矩形波の現像バイアス(交番電圧)が用いられる。この現像バイアスは、ACバイアスに、Vdcで示されるDCバイアス成分が重畳された現像バイアスである。この現像バイアスが、感光体1の静電像と現像スリーブ41との間に印加される。
【0041】
本実施例では、静電像は、画像部に露光を行うことによって静電像を形成するイメージ露光方式にて形成されるものとして説明する。又、本実施例では、感光体1は、負極性に帯電されるものとして説明する。本実施例では、トナーはキャリアとの摩擦帯電により負極性に帯電され、現像方式としては、感光体の帯電極性と同極性に帯電したトナーを用いる(感光体上の露光された画像部を現像する)反転現像方式を用いるものとして説明する。
【0042】
図4中、VDは、感光体1の帯電電位であり、本実施例では、帯電手段により負極性に帯電されている。図4中、VLは、露光手段により露光された画像部の領域であり、最高濃度を得るための電位となっている。即ち、VL電位部は、トナーTの付着量がもっとも多くなる領域である。
【0043】
現像スリーブ41には、上述のように矩形波の現像バイアスが印加されている。そのため、現像スリーブ41にピーク電位のうちVp1電位が付与された時には、VL電位部に対して最も大きな電位差が形成され、この電位差による電界(以下「現像電界」という。)によって、トナーTが感光体1に転移される。又、逆に、現像スリーブ41にピーク電位のうちVp2電位が付与された時には、VL電位に対し、現像電界が形成される時とは逆方向の電位差が形成され、VL電位部よりトナーTが現像スリーブ41側に引き戻される電界(以下「引き戻し電界」という。)が形成される。このようにして、現像バイアスが印加された現像スリーブ41は、VL電位部に対して交番電界を形成する。又、現像バイアスが印加された現像スリーブ41は、VD電位部に対しても交番電界を形成する。
【0044】
ここで、図4を参照して、現像バイアスのVL電位に対する時間的変化を考えると、Vp1電位とVp2電位の時の電界強度Ea、Ebは、それぞれ下記式で表される。
【0045】
Eb=|(Vp1−VL)/D|
Ed=|(Vp2−VL)/D|
[ここで、
VLは、最高濃度を得るための静電像の電位[V]
Vp1は、交番電圧におけるピーク電位のうち、VL電位に対しトナーを感光体に向けて移動させるような電位差を設けるピーク電位[V]
Vp2は、交番電圧におけるピーク電位のうち、VL電位に対しトナーを現像剤担持体に向けて移動させるような電位差を設けるピーク電位[V]
Dは、感光体1と現像スリーブ41との間の最近接距離[m]]
尚、Vp1、Vp2は、トナーの帯電極性に応じて、下記式で表される。
トナーが−極性の場合:Vp1=Vdc−|Vpp/2|
トナーが+極性の場合:Vp1=Vdc+|Vpp/2|
トナーが−極性の場合:Vp2=Vdc+|Vpp/2|
トナーが+極性の場合:Vp2=Vdc−|Vpp/2|
[但し、
Vppは、交番電圧におけるピーク間電圧、
Vdcは、現像バイアスのDCバイアス成分]
即ち、電界Ea(現像電界)は、感光体1上のVL電位との間に、トナーを感光体1に向けて移動させる側の電界を形成する電位差を設けるピーク電位と、感光体1上のVL電位との間の電位差を、感光体1と現像スリーブ41との最近接距離Dで割ったものである。又、電界Eb(引き戻し電界)は、感光体1上のVL電位との間に、トナーを現像スリーブ41に向けて移動させる側の電界を形成する電位差を設けるピーク電位と、VL電位との間の電位差を、感光体1と現像スリーブ41との最近接距離Dで割ったものである。
従って、Vppを大きくすれば現像電界Ea、引戻し電界Ebは大きくなり、Vppを小さくすれば現像電界Ea、引戻し電界Ebは小さくなる。
【0046】
[キャリア抵抗]
図5は、本発明で用いるキャリア及び従来キャリアの抵抗率ρ[Ω・m]を示す。図の横軸は電界[V/m]を示し、縦軸は抵抗率ρ[Ω・m]を示す。但し、縦軸は対数表示(対数軸)の片対数グラフである。以下、同様に、抵抗率ρのグラフはその数値を対数で記述する。
【0047】
キャリアの抵抗率ρ[Ω・m]とは、図6に示すような装置を用いて計測したものである。所定の周速(表面移動速度)で回転するアルミニウム製の円筒体(以下、「アルミドラム」という)Drに、キャリアのみを内包した現像器4の現像スリーブ41を所定の距離(最近接距離)をあけて対向させる。そして、所定の周速で現像スリーブ41を回転させながら、アルミドラムDrと現像スリーブ41との間にAC電圧を印加して、図中Zで示したインピーダンス測定装置によりキャリアのインピーダンスを測定する。その測定値からキャリアの抵抗率を算出することができる。なお、アルミドラムDrの周速、現像スリーブ41の周速は、それぞれ実際の画像形成装置の感光ドラムの周速、現像スリーブの周速と同じにするのが良い。又、アルミドラムDrと現像スリーブ41との距離は、実際の画像形成装置の感光ドラムと現像スリーブとの距離にするのが良い。
【0048】
又、横軸の電界E[V/m]は、アルミドラムDrと現像スリーブ41との最近接位置(アルミドラムDr−現像スリーブ41間の最近接距離D)における電界強度であり、アルミドラムDrと現像スリーブ41との間の印加電圧を距離Dで割ったものである。
【0049】
尚、上述したキャリアの抵抗率は、キャリアのみでの測定結果であり、トナーと混合された2成分現像剤の状態になると、キャリア間に電気的に高抵抗なトナーが存在するため、上述したキャリアのみの抵抗率より若干大きいものとなる。しかしながら、現像動作中では、トナーがキャリアから引き離され、キャリアのみの状態に近くなることから、上述のようにして計測された抵抗率が実際に近い状態を示している。従って、本明細書で述べるキャリア抵抗率は、キャリアのみの抵抗率を表わしている。
【0050】
図5からわかる通り、本発明で用いるキャリアの特徴は、抵抗率を片対数グラフの縦軸(対数軸)にとり、電界強度を横軸にとった時に、従来キャリアは電界強度に対して線形的に変化するのに対し、本発明で用いるキャリアは電界強度に対して非線形的に変化する特徴を有する。
【0051】
詳しく説明すれば、本発明で用いるキャリアは、現像電界Eaと引戻し電界Ebの間にありEd<Ep<Ebの関係が成り立つ電界強度Epで抵抗率ρの電界依存性の傾き(Δρ/ΔE)が変化する。 又、現像電界Eaにおける抵抗率ρの電界依存性の傾き(Δρ/ΔE)をK1とし、引戻し電界Ebにおける抵抗率ρの電界依存性の傾き(Δρ/ΔE)をK2とした場合、0≧K2>K1の関係が成り立つ。即ち、K1が0でないとき、K1とK2は同符号(ここでは負)である。
【0052】
ここで、本発明に用いるキャリアにおける現像電界現像促進側の交流電圧のピークtoピーク電圧印加時のトナーに働く力を図7に示す。図7の横軸はトナー帯電量であり、縦軸は現像ニップ中に存在するトナーに働く力(現像バイアスが作る電界によって形成される力と、キャリア内に存在する電荷によって形成される力の合力)である。
【0053】
例えば、通常環境下において-60uC/gの帯電量を有するトナーで所望の画像濃度を得るための現像バイアスのピークtoピーク電圧は1.6kVppであり、このときの現像電界はEa(通常)、引戻し電界はEb(通常)である。現像電界Ea(通常)の時のトナーに働く力は(1)であり、トナーに働く力はaである。
【0054】
このトナーが低湿環境下でトナー帯電量が高くなってしまった場合(70uC/g)、通常環境下と同じVppではキャリア内に生じる電荷量が多くなり、トナーに働く力は小さくなり(b)、必要濃度が得られなくなる。
【0055】
しかし、Vppを少し大きくして現像電界をEa(低湿)、引戻し電界をEb(低湿)にすると、トナーに働く力は大幅に大きくなり((2))、通常環境下と同じaにすることができ、通常環境下と同じ画像濃度を得ることができる。
【0056】
また、このトナーが低湿環境下でトナー帯電量が高くなってしまった場合(70uC/g)、通常環境下と同じVppではキャリア内に生じる電荷量が少なくなり、トナーに働く力は大きくなり(c)、必要以上に濃度が濃くなってしまう。
【0057】
しかし、Vppを少し小さくして現像電界をEa(高湿)、引戻し電界をEb(高湿)にすると、トナーに働く力は大幅に小さくなり((3))、通常環境下と同じaにすることができ、通常環境下と同じ画像濃度を得ることができる。
【0058】
このように電界強度の変化に対してトナーに働く力を大きく変えられるのは、本発明で用いたキャリアが電界強度に対して抵抗率の変化が大きいからである。キャリアの抵抗率を大幅に下げたりあげたりできることにより、キャリア内に存在する電荷によって形成される力(カウンタチャージによる力)を大幅に変化させることができ、トナーに働く力を大幅に変えることができるのである。
【0059】
なお、高湿環境下でVppを大きくする際には、引戻し電界Eb(高湿)が、抵抗率の傾きが変わる電界強度Epより小さくすべきである。引戻し電界EbがEpより大きくなると、引戻し時のキャリア抵抗が大きくなってしまい、現像電界によって感光体へ飛ばしたトナーの多くを引戻し電界時に感光体へ戻してしまい、必要な画像濃度を得られない可能性があるからである。
【0060】
[画像形成環境の感知、及び電界強度の制御]
上述したような画像形成環境に応じて、現像バイアスのピークtoピーク電圧Vppを制御する方法について説明する。
【0061】
図9に、制御のフローチャートを示す。
【0062】
画像形成装置内の現像装置の近傍に設置された温湿度センサー(不図示)により、画像形成装置の温度湿度を測定する((1))。測定の結果、予め決められた通常温湿度範囲内である場合は、現像バイアスのピークtoピーク電圧Vppは現状のままに変えずに画像瀬形成動作を続行する((2) ‘)。測定の結果、予め決められた通常温湿度範囲外であれば、画像形成動作の紙間などにおいて感光体上や転写体上に濃度測定用画像を作成して、光検知センサーなどで画像濃度が適正濃度からどの程度ずれているのか算出する((2))。
【0063】
算出結果が基準濃度範囲内であれば、現像バイアスのピークtoピーク電圧Vppは現状のままに変えずに画像瀬形成動作を続行する((3) ‘)。算出結果が基準濃度範囲外であれば、予め画像形成装置のメモリー内に作成してある電界強度に対する画像濃度のテーブルから、最適濃度にするための現像バイアスのピークtoピーク電圧Vppを予測する((3))。その予測値を現像バイアス制御手段にフィードバックし、現像バイアスのピークtoピーク電圧Vppを変更する((4))。変更したピークtoピーク電圧Vppが適正かどうか確かめるため、再度画像形成動作の紙間などにおいて感光体上や転写体上に濃度測定用画像を作成して、光検知センサーなどで画像濃度が適正濃度からどの程度ずれているのか算出する((5))。算出結果が基準濃度範囲内であれば、(5)で決定したピークtoピーク電圧Vppに決定される((6))。算出結果が基準濃度範囲外であれば、再度(3)→(4)→(5)のフローを基準濃度内になるまで行い、最適なピークtoピーク電圧Vppに変更する。
【0064】
[具体的な実施例]
以下、より具体的な試験例に則して本実施例の効果を更に詳しく説明する。
【0065】
本実施例の効果を確認するために、本発明に従うキャリア、並びに、従来のキャリアを用いて比較評価を行った。
【0066】
・本実施例に従うキャリアX:
本実施例に従うキャリアとしては、例えば、ポーラス状のコアにシリコーン樹脂等の樹脂を流し込み、コア内の空隙を樹脂で充填したポーラス状樹脂充填キャリアを用いることができる。
【0067】
斯かるキャリアの作製方法としては、次のような方法を挙げることができる。最初に、上記低抵抗キャリアAに用いられるような金属酸化物、酸化鉄(Fe)及び添加物を所定量秤量し、混合する。上記添加物としては、周期律表のIA、IIA、IIIA、IVA、VA、IIIB及びVB族に属する元素1種類以上の酸化物、例えば、BaO、Al、TiO、SiO、SnO及びBiなどを挙げることができる。次に、得られた混合物を700〜1000℃の範囲で5時間仮焼し、その後、0.3〜3μm程度の粒径に粉砕する。得られた粉砕物に、必要に応じて結着剤、更には発泡剤を加え、100〜200℃の加熱雰囲気下で噴霧乾燥し、20〜50μm程度の大きさに造粒する。その後、酸素濃度5%以下の不活性ガス(例えば、Nガス等)の雰囲気下で焼結温度1000〜1400℃で8〜12時間焼成する。これによりポーラス状のコアが得られる。次いで、シリコーン樹脂を浸漬法により8〜15質量%充填し、180〜220℃不活性ガス雰囲気下でそのシリコーン樹脂を硬化させる。
【0068】
上述した製法において、コアのポーラス度、並びに、コア自身の電気的抵抗、更には、充填するシリコーン樹脂等の樹脂量等を制御することで、変曲点、傾きK1・K2、電界Ea・Eb印加時の抵抗率等のキャリアの抵抗率の電界依存性を制御可能となる。
【0069】
上記の如く制御することにより、キャリアの内部において、絶縁部と導電部を所望の状態に混在させることが可能となり、キャリアを流れる電荷量を制御することが可能となる。本実施例に従うキャリアの内部は、ポーラス状コアの空隙に、樹脂が充填されているため、該樹脂部において電荷の流れがある程度食い止められる構成となっている。従って、現像バイアスが印加された際、急激な抵抗低下が生じず、所望の電界強度において、抵抗を低下させることが可能となる。
【0070】
又、コアのポーラス度や抵抗値は、前述した発泡剤量、並びに、焼成雰囲気をコントロールするための不活性ガス濃度、及び、焼結温度をコントロールすることで制御が可能となる。本実施例では、焼結温度1200℃、酸素濃度1%、発泡剤量5%の条件にて作成したキャリアを用いた。
【0071】
・従来キャリアY:
高抵抗キャリアとしては、例えば、次のようなものを挙げることができる。
【0072】
第1には、マグネタイト粒子と熱可塑性樹脂とを溶融混練し、粉砕して製造する磁性体分散型樹脂キャリアをコア材として用いるものである。第2には、マグネタイト粒子と熱可塑性樹脂とを溶媒中に溶融分散させたスラリーをスプレードライヤー等により噴霧乾燥させて製造する磁性体分散型樹脂キャリアをコア材として用いるものである。第3には、マグネタイト粒子及びヘマタイト粒子存在下でフェノールを直接重合により反応硬化させた磁性体分散型樹脂キャリアをコア材として用いるものである。斯かるキャリアのコア材に、更に流動層コーティング装置などにより、熱可塑性樹脂等の樹脂を1.0〜4.0質量%程度コートする。
【0073】
・比較評価:
図10は、本発明に従うキャリアX、従来キャリアYの抵抗率の電界依存性を示す。低抵抗キャリアA、高抵抗キャリアB及びキャリアCのいずれも、抵抗率に電界依存性を有し、概略、電界が大きくなると、抵抗率が低下する。
【0074】
それぞれのキャリアの抵抗率ρは、図6に示す装置を用いて計測されたものである。即ち、300mm/secの周速(表面移動速度)で回転するアルミドラムDrに、キャリアのみを充填した現像器4の現像スリーブ41を300μmの距離(最近接距離)をあけて対向させる。そして、現像スリーブ41を540mm/secの周速で回転させながら、アルミドラムDrと現像スリーブ41との間にAC電圧を印加して、キャリアのインピーダンス測定を行い、その測定値よりキャリアの抵抗値Rを求めた。その際、インピーダンス測定は、インピーダンス測定装置ZとしてのSolartron社製 126096Wにて行なった。又、アルミドラムDrとキャリアとの接触している面積Sを計測し、下記式より、キャリアの抵抗率ρを求めた。
【0075】
【数1】

又、横軸の電界Eは、アルミドラムDrと現像スリーブ41との最近接位置(最近接距離D)における電界強度であり、アルミドラムDrと現像スリーブ41との間の印加電圧を単純に距離Dで割ったものである。
【0076】
本試験例では、静電像は、イメージ露光方式で形成される。又、本試験例では、トナーはキャリアとの摩擦帯電により負極性に帯電され、現像方式としては、反転現像方式が用いられる。
【0077】
感光体の帯電電位VDは−600V、露光部電位VLは−100Vである。
【0078】
現像スリーブ41には、周波数f=12KHz、DC成分Vdc=−400V、の矩形波の現像バイアス(交番電圧)が印加されている。
【0079】
感光体1として膜厚(感光層の厚さ)が30μmのOPC感光体を用いて、通常環境(温度23℃湿度50%)、低湿環境(温度23℃湿度5%)、高湿環境(温度30℃85%)という各環境において、実際に画像出力を行なった際の画像濃度比較結果を図11に示す。図において、○は所望の画像濃度であること、↓は所望の画像濃度を下回っていること、↑は所望の画像濃度を上回っていることを表わしている。
【0080】
本発明に用いるキャリアにおいて、通常環境下のトナーの帯電量は-60uC/gであり、所望の画像濃度を得るために必要なVppは1000Vであり、現像電界Ea(通常)、引戻し電界Eb(通常)はEa(通常)=Ea(1000)=2.7×106(V/m)、Eb(通常)=Eb(1000)=6.7×105(V/m)である。また現像電界Ea(通常)、引戻し電界Eb(通常)の時のキャリア抵抗率を、ρa(通常)、ρb(通常)とすると、ρa(通常)=(Ωm)、引戻し電界ρb(通常)=(Ωm)である。
【0081】
一方、従来キャリアにおいて、通常環境のトナーの帯電量は-60uC/gであり、所望の画像濃度を得るために必要なVppは1100Vである。現像電界Ea’(通常)、引戻し電界Eb’(通常)は、Ea’(通常)=2.8×106(V/m)、Eb’(通常)=8.3×105(V/m)である。また現像電界ρa’(通常)、引戻し電界ρb’(通常)は、ρa’(通常)=(Ωm)、引戻し電界ρb’(通常)=(Ωm)である。
【0082】
同じトナー帯電量を同じ量だけ感光体に現像するのに本発明キャリアの方がVppが少ないのは、本発明キャリアの方がVppが小さくても現像電界と引戻し電界の抵抗率の差が大きく、トナーを感光体に現像しやすく、感光体からトナーを戻しにくいためである。
【0083】
次に画像形成装置を低湿環境下に画像形成動作を行ったところ、本発明キャリアも従来キャリアもトナー帯電量は-70uC/gであった。そこで本発明キャリアにおいて通常環境下と同じVpp=1000Vで画像出力した結果、所望の画像濃度より薄かった。Vppを振って検討したところVpp=1200Vにすれば所望の画像濃度を得ることが出来、画像不良も発生しなかった。このときの現像電界Ea(低湿)、引戻し電界Eb(低湿)はEa(低湿)=Ea(1200)=3.0×106(V/m)、Eb(低湿)=Eb(1200)=1.0×106(V/m)である。また現像電界Ea(低湿)、引戻し電界Eb(低湿)の時のキャリア抵抗率を、ρa(低湿)、ρb(低湿)とすると、ρa(低湿)=(Ωm)、引戻し電界ρb(低湿)=(Ωm)である。
【0084】
一方、従来キャリアにおいて通常環境下と同じVpp=1100Vで画像出力した結果、所望の画像濃度より薄かった。Vppを振って検討したところ、Vpp=1400Vにすれば所望の画像濃度を得ることが出来たが、現像スリーブと感光体間でリークが発生し、画像部にリーク跡が発生してしまった。このときの現像電界Ea’(低湿)、引戻し電界Eb’(低湿)はEa’(低湿)=Ea(1400)=3.3×106(V/m)、Eb’(低湿)=Eb(1400)=1.3×106(V/m)である。また現像電界Ea’(低湿)、引戻し電界Eb’(低湿)の時のキャリア抵抗率を、ρa’(低湿)、ρb’(低湿)とすると、ρa’(低湿)=(Ωm)、引戻し電界ρb’(低湿)=(Ωm)である。
【0085】
次に高湿環境下に画像形成動作を行ったところ、本発明キャリアも従来キャリアもトナー帯電量は-50uC/gであった。そこで本発明キャリアにおいて通常環境下と同じVpp=1000Vで画像出力した結果、所望の画像濃度より濃くなった。Vppを振って検討したところVpp=800Vにすれば所望の画像濃度を得ることが出来、画像不良も発生しなかった。このときの現像電界Ea(高湿)、引戻し電界Eb(高湿)はEa(高湿)=Ea(800)=2.3×106(V/m)、Eb(高湿)=Eb(800)=3.3×105(V/m)である。また現像電界Ea(高湿)、引戻し電界Eb(高湿)の時のキャリア抵抗率を、ρa(高湿)、ρb(高湿)とすると、ρa(高湿)=(Ωm)、引戻し電界ρb(高湿)=(Ωm)である。
【0086】
一方、従来キャリアにおいて通常環境下と同じVpp=1200Vで画像出力した結果、所望の画像濃度より濃くなった。Vppを振って検討したところ、Vpp=700Vにすれば所望の画像濃度を得ることが出来たが、非画像部にもトナーが付着してしまう「カブリ」という画像不良が発生してしまった。このときの現像電界Ea’(低湿)、引戻し電界Eb’(低湿)はEa’(低湿)=Ea(700)=2.2×106(V/m)、Eb’(低湿)=Eb(700)=1.7×105(V/m)である。また現像電界Ea’(低湿)、引戻し電界Eb’(低湿)の時のキャリア抵抗率を、ρa’(低湿)、ρb’(低湿)とすると、ρa’(低湿)=(Ωm)、引戻し電界ρb’(低湿)=(Ωm)である。
【0087】
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではないことを理解されたい。
【0088】
例えば、上記各実施例では、感光体は負極性に帯電し、イメージ露光方式によって感光体上に静電像が形成されるものとして説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、感光体の帯電極性は正極性であってもよい。又、トナーが付着すべきではない非画像部に露光を行うことで静電像を形成する背景露光方式によって、感光体に静電像が形成されてもよい。又、現像方式としては、感光体の帯電極性とは逆極性に帯電したトナーを用いる(感光体の露光されていない画像部を現像する)正規現像方式を用いてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1‥‥感光体
2‥‥帯電器
3‥‥露光器
4‥‥現像器
5‥‥転写部材
6‥‥定着器
7‥‥クリーナー
8‥‥前露光器
41‥‥現像スリーブ
42‥‥マグネット
43‥‥規制部材
44‥‥現像容器
S‥‥転写材
Ea‥‥現像電界
Eb‥‥引戻し電界
ρa‥‥現像電界におけるキャリア抵抗率
ρb‥‥引戻し電界におけるキャリア抵抗率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアとトナーを混合してなる2成分現像剤を用いて画像形成を行なう画像形成装置において、該画像形成装置は静電潜像を担持する感光体と、
該2成分現像剤を有する現像器を有しており、該感光体と該現像担持体との間にトナーを現像する為の現像バイアス(AC+DC)が印加されており、
該キャリアに与えられる電界強度を横軸、前記キャリアの誘電率を縦軸とするグラフにおいて、
電界強度Ea=|(Vp1−VL)/D|における傾きをK1、
電界強度Eb=|(Vp2−VL)/D|における傾きをK2、 としたとき、
電界強度Eaにおける前記キャリアの抵抗率ρ1を通る傾きK1の直線と、前記電界強度Ebにおける前記キャリアの抵抗率ρ2を通る傾きK2の直線との交点における電界強度をEpとすると、
|K1|>|K2|、 Ea > Ep > Eb であり、
(Vp1は通常時のVL電位に対しトナーが現像される側のピーク電位、Vp2は通常時のVL電位に対しトナーが引き戻される側のピーク電位、
VLは最高濃度を得る為の潜像電位、 Dは感光体-現像担持体最近接距離)
且つ
トナー濃度を検知する濃度検知手段と、現像バイアスの出力を調整するバイアス調整手段を有し、
濃度感知手段によって得られた信号に応じて、 トナーが感光体に現像される側の電界強度をバイアス調整手段によって調整するモードを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
バイアス調整手段によって調整されるモードは、
トナーが感光体に現像される側の電界強度をEpより大きな範囲に調整するモードと
トナーが感光体に現像される側の電界強度をEpより小さい範囲に調整するモードを
を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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