説明

画像形成装置

【課題】転写部から定着装置に搬送される被転写体の帯電電位や搬送ガイド部材の帯電電位が変動する場合でも、被転写体が搬送ガイド部材でガイドされるときの転写チリを確実に防止することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】転写部から定着ユニット50に至る搬送路において用紙Pに対向するように配置され、用紙Pと摺動接触するテフロン層(摺動部)133とテフロン層133の用紙Pと摺動接触する側と反対側に設けられた定着前ガイド本体部(導電部)132とを有する定着前ガイド130と、定着前ガイド本体部132にバイアスを印加する可変出力電源142と、可変出力電源142で印加されるバイアスの電流を測定する電流計143と、電流計143の測定結果に基づいて電流の測定値が所定の値以下になるように可変出力電源142の出力を制御するコントローラ149とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像が転写された被転写体を定着装置に搬送する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電子写真方式の画像形成装置では、転写部から定着装置までの搬送路において被転写体の搬送をガイドする搬送ガイド部材が設けられている。通常、搬送ガイド部材は、導電性ではなく絶縁性を有する。これは、被転写体が湿潤化して低抵抗となった場合に電流漏洩(リーク)の発生を防止するためである。しかし、絶縁性の搬送ガイド部材では、大量の被転写体に画像を形成するときに被転写体の高抵抗成分による自己帯電や、被転写体との間の摩擦帯電が避けられない。これらの帯電は不安定に生じるため、絶縁性の搬送ガイド部材の全面に大きな帯電ムラが生じ、その周辺との間に大電界が発生する。この電界が転写部と定着装置との間の搬送路における転写チリの原因となる。トナー像が転写された被転写体は転写バイアスによる帯電が残っており、また、転写部から分離するときに転写バイアスと別極性の放電を転写面と反対側の面に受けていることもある。このような被転写体が、帯電ムラが生じてその周辺との間に大電界が発生している絶縁性の搬送ガイド部材に近接すると、被転写体と搬送ガイド部材との間の電位差や距離によっては放電が生じることがある。転写後の被転写体と絶縁性の搬送ガイド部材との間で放電が生じると、静電気力のみで被転写体に付着している画像のトナーに影響を与え、このトナーが飛散して「転写チリ」が発生するおそれがある。
【0003】
特許文献1には、転写出口ガイド板の開口部を通して通紙面に露呈するように除電部材としての除電針が設けられるとともに、その転写出口ガイド板の通紙面とは反対側の裏面側に、接地された電極板が設けられた画像形成装置が開示されている。この画像形成装置では、転写出口ガイド板の裏面側に設けられた電極板が接地されているため、転写紙(被転写体)と転写出口ガイド板との間の静電誘導により転写紙を静電吸着して搬送性を安定させ、転写紙と除電針との距離を一定にすることでブロードに除電することによりトナー飛散による異常画像を防止することができる。しかしながら、転写出口ガイド板の裏面側に設けられた電極板が接地されているので、転写出口ガイド自体の電位を所定の電位に保つことが難しく、転写部で転写紙に印加されたバイアスが転写出口ガイドを通して逃げてしまい、転写紙上のトナーが飛び散って転写チリとなるおそれがある。特に転写紙の抵抗が低い場合は転写紙のバイアスが更に逃げやすく転写チリが発生しやすい。
【0004】
また、特許文献2には、除電部材が開口部を通して通紙面に露呈するように、転写出口ガイド板の裏面側に除電部材を設けられている転写ベルト搬送装置が開示されている。この転写ベルト搬送装置では、除電部材の先端部が針状電極になっており、転写出口ガイド板の通紙面に記録紙の搬送方向と直交する方向に沿わせて除電部材が配設されている。除電部材は接地又は所定の電圧が印加される導電性材料で形成された導電層を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の画像形成装置や特許文献2の転写ベルト搬送装置であっても、被転写体の帯電量によっては、被転写体と搬送ガイド部材との間で放電が生じ、転写チリが発生してしまうおそれがある。例えば、被転写体のオモテ面とウラ面とに画像を形成する両面印刷の場合、最初にオモテ面にトナー像が転写された被転写体を搬送するときには転写チリは発生しないが、その被転写体のウラ面にトナー像を転写して定着装置まで搬送する間に転写チリが発生することがある。これは、定着装置で熱と圧力とを加えられて高温高抵抗となった被転写体が、ウラ面へのトナー像の転写のために転写部を通過すると、転写バイアスによる帯電量が大きくなるため、除電部材で十分に除電することができず、被転写体と搬送ガイド部材との間の電位差が大きくなって放電による転写チリが発生するものと考えられる。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、転写部から定着装置に搬送される被転写体の帯電電位や搬送ガイド部材の帯電電位が変動する場合でも、被転写体が搬送ガイド部材でガイドされるときの転写チリを確実に防止することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、像担持体上に形成された画像を被転写体に転写する転写部と、前記被転写体に転写された画像を定着する定着装置とを備えた画像形成装置であって、前記転写部から前記定着装置に至る搬送路において前記被転写体に対向するように配置され、該被転写体と摺動接触する絶縁性の摺動部と該摺動部の該被転写体と摺動接触する側と反対側に設けられた導電部とを有する搬送ガイド部材と、前記搬送ガイド部材の導電部にバイアスを印加するバイアス電源と、前記バイアス電源で印加されるバイアスの電流を測定する電流測定手段と、前記電流測定手段の測定結果に基づいて前記電流の測定値が所定の値以下になるように前記バイアス電源の出力を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搬送ガイド部材の摺動部の表面電位と被転写体の電位との電位差が、放電が生じるレベルを超えないようにすることができるので、転写部から定着装置に搬送される被転写体の帯電量が変動する場合でも、搬送ガイド部材と被転写体との間の放電を抑えて転写チリを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】本実施形態の画像形成装置における二次転写部及び定着装置の周辺の構成及びバイアスの制御系の一例を示す説明図。
【図3】二重積分型AD変換器のブロック図。
【図4】二重積分型AD変換器の動作波形の説明図。
【図5】(a)は3枚の用紙に連続して両面印刷した場合のバイアス電源の出力電圧とコンデンサーの電位との関係を示すグラフ、(b)は電流計の測定値を示すグラフ。
【図6】本発明の他の実施形態に係る画像形成装置における二次転写部及び定着装置の周辺の構成及びバイアスの制御系の一例を示す説明図。
【図7】オモテ面にトナー像が転写された用紙を搬送する場合及びウラ面にトナー像が転写された用紙を搬送する場合それぞれにおける電流計による電流測定の時間帯と除電針に印加する除電バイアスとの関係を示すグラフ。
【図8】除電針に印加する除電バイアスとチリランクとの関係を示すグラフ。
【図9】定着前ガイドに流れる電流とチリランクとの関係を示すグラフ。
【図10】比較例に係る画像形成装置における二次転写部及び定着装置の周辺の構成を示す説明図。
【図11】図10に示す画像形成装置で用紙に連続両面印刷した場合のチリ発生の状態を示すグラフ。
【図12】他の比較例に係る画像形成装置における二次転写部及び定着装置の周辺の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を用いて、本発明をフルカラー画像形成装置に適用した実施形態について詳細に説明する。
【0011】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の一実施形態に係るフルカラー画像形成装置の概略構成図である。本実施形態に係るフルカラー画像形成装置(以下「画像形成装置」という。)は、像担持体ユニットであるところの4色分の作像装置10Y(イエロー)、10C(シアン)、10M(マゼンタ)、10K(黒)が、画像形成ステーションに着脱自在に構成されている。また、本実施形態の画像形成装置は、画像データに基づいて変調されたレーザー光を照射可能な露光手段(光書き込み手段)としての光学ユニット20、中間転写体ユニット30、被転写体供給手段としての給紙ユニット40、及び定着装置としての定着ユニット50等を備えている。
【0012】
各作像装置10Y、10C、10M、10Kの構造は同一であり、それぞれ各色のトナー像が表面に形成される像担持体としての感光体ドラム12を備えている。イエローの作像装置10Yは、図中の時計方向に回転駆動される感光体ドラム12の周囲に、これに作用するプロセス手段として、感光体ドラム12Yを帯電する帯電装置13と感光体ドラム12Yに残留した現像剤等を除去するクリーニング装置14とが一体的に構成されており、これに感光体ドラム12Yに形成された潜像を現像する現像装置15が連結する構成になっている。他の色の作像装置10C、10M、10Kについても同様に構成されている。また、各作像装置10Y、10C、10M、10Kは、図示しない開閉式面板の開閉方向(感光体ドラム12の回転軸方向)に画像形成装置本体に対して着脱自在な構成になっている。
【0013】
中間転写体ユニット30は、図中の反時計方向に回転駆動される転写媒体(中間転写体)としての転写ベルト31、転写ベルト31を回転可能に支持する4つのローラ32、33、34−1、34−2、各感光体ドラム12に形成されたトナー像を転写ベルト31に転写する一次転写ローラ35、及び転写ベルト31上に転写されたトナー像を更に記録媒体としての被転写体である用紙Pに転写する二次転写部を構成する二次転写部材としての二次転写ローラ36を備えている。
【0014】
給紙ユニット40は、被転写体収容部としての給紙カセット41或いは手差し被転写体載置部としての手差し給紙トレイ42から用紙Pを二次転写領域に搬送する被転写体供給部材としての用紙供給ローラ43、レジストローラ44等を備えている。
【0015】
定着ユニット50は、定着ローラ51及び加圧ローラ52を備え、用紙P上のトナー像に熱と圧を加えることで定着を行う。
【0016】
上記構成の画像形成装置におけるカラー画像形成は例えば次のように行われる。
まず1色目、Y(イエロー)用の作像装置10Yにおいて、感光体ドラム12が帯電装置13によって一様に帯電された後、光学ユニット20から照射されたレーザー光によって潜像が形成される。この感光体ドラム12上の潜像が現像装置15によって現像されることにより、イエローのトナー像が形成される。
【0017】
感光体ドラム12上に形成されたイエローのトナー像は、一次転写ローラ35の作用によって転写ベルト31上に転写される。一次転写が終了した感光体ドラム12はクリーニング装置14によってクリーニングされ、次の画像形成に備える。クリーニング装置14によって回収された残留トナーは、作像装置10Yの取り出し方向(感光体ドラム12の回転軸方向)の端部に設置された廃トナー回収ボトルに貯蔵される。廃トナー回収ボトルは、満杯になると交換できるように画像形成装置本体に対し着脱自在になっている。
【0018】
同様の画像形成工程がC(シアン)、M(マゼンタ)、K(黒)用の各作像装置10C、10M、10Kにおいても行われて各色のトナー像が形成され、先に形成されたトナー像に順次重ねて転写される。
【0019】
一方、用紙Pが給紙カセット41又は手差し給紙トレイ42から二次転写部に搬送され、二次転写ローラ36の作用によって、転写ベルト31上に形成されたカラーのトナー像が用紙Pに転写される。トナー像を転写された用紙Pは定着ユニット50に搬送され、定着ユニット50の定着ローラ51と加圧ローラ52のニップ部にてトナー像が定着され、被転写体排出部材としての排出ローラ55によって被転写体排出部としての排紙トレイ56に排出される。
【0020】
なお、用紙Pのオモテ面とウラ面とに画像を形成する両面印刷モードの場合、定着ユニット50でオモテ面にトナー画像が定着された用紙Pは、反転装置60の搬送路61に送られ、一旦停止した後、逆方向に搬送されて反転搬送路62の被転写体供給部材としての用紙供給ローラ63で停止する。そして、レジストローラ44に送られ、転写ベルト31上に形成されたカラーのトナー画像とタイミングを合わせて二次転写部に搬送され、二次転写ローラ36の作用によって、カラーのトナー画像が用紙Pのウラ面に転写され、定着ユニット50で定着された後、被転写体排出トレイ56に排出される。このようにして、用紙Pのオモテ面とウラ面とに画像が形成される。
本実施形態に係る画像形成装置で、例えば3枚の用紙Pについて両面印刷を行う場合、用紙Pのオモテ面とウラ面との画像形成の順序は、1枚目のオモテ面、2枚目のオモテ面、1枚目のウラ面、3枚目のオモテ面、2枚目のウラ面、3枚目のウラ面のような順序となる(図5(a)、(b)参照)。
【0021】
各作像装置10Y、10C、10M、10Kに新しいトナーを供給するときは、トナーボトル57Y、57C、57M、57Kを回転させ、各トナーボトルからパイプを通してトナーを搬送する。
【0022】
次に、上記構成の画像形成装置における一次転写部の構成と二次転写ローラ36を有する二次転写部の出口から定着ユニット50の入口まで用紙Pを搬送する搬送経路の構成のより具体的な例について説明する。
【0023】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置における二次転写部及び定着装置の周辺の構成及びバイアスの制御系の一例を示す説明図である。この例では、定着前ガイドにバイアスを印加している。
【0024】
中間転写体31は、例えば、ポリアミドイミド体樹脂又はポリイミド体樹脂などのスーパーエンジニアリングプラスチック樹脂により、60〜150[μm]の厚みに作られる。また、中間転写体31は、例えば、カーボンブラックなどの微粉導電剤が配合され、電気的な特性として体積抵抗率が10〜1012[Ω・cm]になるように調整される。また、中間転写体31は、例えばインフレーション成型、遠心成型又はデッピング(引き上げ)などで製造される。また、中間転写体31としては、弾性層を有するベルトを使用してもよい。なお、カーボンブラックを配合したベルトや弾性層を有するベルトを使用せずに、イオン導伝剤などで抵抗調整を行ってもよい。
【0025】
斥力バイアスローラ32は、例えば、ウレタンなどの発泡樹脂やヒドリンゴムなどを切削、または肉部を成型して作られる。また、斥力バイアスローラ32は、例えば、金属板に片側1[kgf]で加圧した時、電気的な特性として厚み方向の抵抗が10〜1012[Ω]より好ましくは10〜1011[Ω]になるようにカーボンブラックなどの微粉導電剤で抵抗が調整される。
【0026】
二次転写ローラ36は、例えば、ウレタンなどの発泡樹脂やヒドリンゴムなどを切削、または肉部のみを成型して作られる。また、二次転写ローラ36は、金属板に片側1[kgf]で加圧したとき、電気的な特性として厚み方向の抵抗が10〜1012[Ω]より好ましくは10〜1011[Ω]になるようにカーボンブラックなどの微粉導電剤で抵抗を調整される。
【0027】
絶縁性の搬送ガイド部材としての転写出口ガイド110は、例えば、ポリカーボネイト、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene copolymer)、PO(ポリオレフィン)などの絶縁性樹脂を用い、射出成型などの手法で製造される。また、転写出口ガイド110は、用紙Pをガイドする必要があるため、通紙面はひっかかり、反り、うねりなども無く、平滑度も高く製造される。また、転写出口ガイド110は、例えば、3[mm]〜30[mm]の厚みで製造される。また、転写出口ガイド110の電気的特性としては、例えば、体積抵抗率ρvが1013[Ω・cm]以上の絶縁体で、比誘電率も絶縁体の一般的な値として3以下が望ましい。また、転写出口ガイド110の通紙面とは反対側(用紙とは反対側)の裏面にはリブ113を有する構造になっている。このようにリブ113を有するのは、転写出口ガイド110の剛性を向上させるためである。
【0028】
除電針112は、例えば、無酸素銅、リン精銅又はアルミニウムなどの電気抵抗が小さく、しかも加工容易な素材を、プレス加工又はエッチング加工して製造される。本実施形態では接地されているが、後述するようにバイアスが印加されてもよい(後述の実施形態2参照)。また、除電針カバー111は、例えば、転写出口ガイド110とほぼ同じ材質で形成され、除電針112を支持する。
【0029】
搬送ガイド部材としての定着前ガイド130は、例えば、定着前ガイド本体部132は、金属板をプレス加工して打ち抜き、用紙Pを摺擦しながらガイドする摺擦面の部分を曲げ加工して製造され、その摺擦面の表面に絶縁性の摺動部としてのテフロン(登録商標。以下、同様。)層133が被覆される。テフロン層133の厚みは、例えば、数[μm]〜数10[μm]が望ましく、さらに厚くてもよい。また、摺動性や摩耗性がよい絶縁層であればよく、テフロン層133に限られるものではなく、他の材質の絶縁層であってもよい。
【0030】
定着ユニット50は、例えば、100[°C]〜170[°C]に用紙Pを加熱し、用紙P上のトナー像を定着させる。定着ローラ51及び加圧ローラ52として絶縁性の材質のものを使用しているが、定着ユニット50でチリは発生していない。
【0031】
次に、定着前ガイド130へバイアスを印加するバイアス電源としてのバイアス印加装置140について説明する。
バイアス印加装置140は、コンデンサー141と、直流の可変出力電源142と、電流計143と、コントローラ149とから主に構成されている。
【0032】
コンデンサー141は、その静電容量が例えば10[pF]〜1000[pF]の範囲内にあるものが望ましく、より好ましくは32[pF]〜100[pF]の範囲の静電容量を有するものがよい。また、コンデンサー141は、耐圧が6[kV]以上の市販品を用いることができる。また、コンデンサー141は、高周波特性と極性の無い点とを考慮すると、セラミックコンデンサーが望ましい。また、耐圧が3[kV]〜10[kV]クラスの高圧コンデンサーが比較的低価格で、装置のコストダウンになる。
【0033】
なお、コンデンサー141はハイパスフィルターの機能を有している。つまり、定着前ガイド130のテフロン層133と用紙Pとの間の放電から生じる電流については、用紙Pの接近や離間で生じる誘導電流のノイズや、浮遊容量から生じるノイズなどがあり、これらのノイズを除去しないと放電による電流を正確に測定することができない。ここで、誘導電流のノイズや浮遊容量から生じるノイズは低周波であるのに対して放電による電流の変化は高周波であることから、この放電による電流の高周波成分を通過させるような所定の静電容量を有するコンデンサー141を備えることにより、低周波のノイズをカットし、高周波の放電による電流の変化を正確に検出することができる。
【0034】
可変出力電源142は、出力電圧の範囲が0〜3[kV]及び出力電流が±100[μA]の範囲であり、外部からアナログ電圧又はデジタルコードを入力して、これらに基づいて出力電圧を変化させることができる。なお、吸込み特性については市販品と同様に2〜3[%]のシンク許容があれば充分である。本実施形態では、実験用として、例えば、TREK社製の高圧電源(model 610C)を用いたが、実製品としては、例えば、松下プレシジョン社製の24[V]入力、±3[kV]出力の電源などを使用することができる。
【0035】
電流計143は、応答速度を考慮して選択されることが望ましい。本実施形態では、例えば、ケスレー社製のマイクロボルトメーター(型Keithley177)を使用し、DC200[μA]レンジを用いて電流を測定した。この電流計143による測定値の応答特性は、400[ms]〜100[ms]、すなわち2.5[Hz]〜10[Hz]であり、一般的な電流計の応答速度に比べて遅くなっている。これは、二重積分型AD変換を用いて電流の測定を行っているためであり、電流計143は、入力抵抗(電流測定シャント抵抗分)が100[kΩ]、入力容量が75[pF]以下に構成されている。二重積分型AD変換については後述する。
【0036】
ここで、電流計143の応答特性を低周波側にずらした(応答速度を遅くした)理由について説明する。
一般的に、波形測定は対象波形の周波数変動の10倍以上高い帯域で測定する。例えば、紙搬送速度500[mm/s]の画像形成装置で0.5[mm]のチリが発生したか否かを見るのは、0.5/500×10=1[kHz]の帯域が必要である。しかし、このような高速の電流計を実際に使用しても、もともとのノイズが大きいため、測定に支障が出る。
実験によれば、低速応答のケスレー社製モデルKeithley177(応答速度400[ms]〜100[ms](2.5[Hz]〜10[Hz]))では、測定したデータからチリのランクに対応したデータを得ることができた。これに対して、中速応答の同社モデルKeithley617(応答速度5[ms](200[Hz])や、高速応答のアドバンテスト社製モデルR6817E(応答速度0.5[ms](2[kHz])では、ノイズが大きく、本実施形態における測定結果を制御に用いるには適さなかった。この理由としては、ハイパスフィルターを介して得られた電流を再度二重積分型AD変換により平均化される点にあると考えられる。よって、二重積分方式を使う低速な電流計を用いた方が、平滑化回路を必要としなくなり、必要な精度も充分にあると考えられる。
【0037】
次に、上記電流の測定に用いる二重積分型AD変換の原理について説明する。
図3は、二重積分型AD変換器のブロック図であり、図4は、二重積分型AD変換器の動作波形の説明図である。図3に示すように、二重積分型AD変換器は、積分回路150と、コンパレータ(比較器)151と、カウンタ152と、パルス発生器153と、基準電圧(Vref)154とから主に構成されている。
【0038】
二重積分型AD変換器は、図4に示すように、まず入力の直流電流をその大きさにかかわらず一定の時間積分する。次に、入力とは逆の極性を持つ基準電圧(Vref)154に切り換え、さらに積分を続ける。積分回路150の出力Xp1はコンパレータ151に入力される。ここで、コンパレータのもう一方の入力は、グラウンド(ゼロ電圧)につながれている。この結果、積分回路150の出力Xp1は、入力の直流電流が接続されている期間は上昇し、基準電圧154が接続されている期間は下降する三角波形の変化をすることになる。積分回路150の出力Xp1の三角波が上昇する部分は、どんな入力でも時間(幅)は一定であるが、入力の大きさによって傾きが異なる。したがって、三角波の高さ(ピークの値)が入力に比例する。これに対して三角波の下降部分の傾きは変わらない。しかし、下降し始める高さが入力によって異なるため、結果的に、下降時間はアナログ入力の大きさに比例することになる。そして、カウンタ152は、三角波の下降開始をゼロとして、コンパレータ151が反転するまでの期間のパルスをカウントする。パルスの計数が開始されてから、停止するまでの時間、つまりパルスのカウント数は、入力の直流の大きさに比例する。したがって、カウンタの読み(デジタル値)は入力の直流値(アナログ値)がAD変換されたものとなる。
【0039】
二重積分型AD変換器では、積分がプラス方向とマイナス方向に行われるため、誤差を打ち消す働きがある。また、入力の直流電流に周期的な雑音(例えば商用電源からのハム雑音)が重畳していた場合に、入力を積分する時間(三角波の上昇部分)を雑音の周期(の整数倍)に合わせることで、その影響を取り除くことができる。二重積分型AD変換器は、その原理上、高速信号の変換はできないが、比較的簡単な回路構成で高精度な変換が可能である。
【0040】
コントラローラ149は、本実施形態では論理回路、プログラム及びI/Oをワンチップ化したマイクロコンピュータである。電流計143から出力された直流電流のデジタル値が、コントローラ149の図示しないADCから入力され、入力された直流電流のデジタル値に基づいて、可変出力電源142の出力が内部で演算されてコントローラ149から制御信号が出力される。コントローラ149の制御信号が入力された可変出力電源142では、その制御信号に基づいて出力を変化させる。
【0041】
次に、本実施形態の定着前ガイド130へバイアスを印加するバイアス印加装置140の動作について説明する。
図5(a)は3枚の用紙Pに両面印刷した場合の可変出力電源142の出力電圧とコンデンサー141の電位との関係を示すグラフ、(b)は電流計の測定値を示すグラフである。
図5(a)において、一点鎖線で示されるグラフ500の値は可変出力電源142の出力電圧であり、実線で示される波形波形のグラフ510はコンデンサー141の端子電位で測定した定着前ガイド本体部132に実際に与えられた電位である。電流計143で測定される電流値は図5(b)のように変化するが、その測定値が所定の値以下となるようにコントローラ149が可変出力電源142の出力電圧を制御している。具体的には、図5(a)に示すように、オモテ面に画像が転写された用紙Pを定着ユニット50に搬送する場合に比べて、ウラ面に画像が転写された用紙Pを定着ユニット50に搬送する場合に定着前ガイド130に印加されるバイアスを大きくなるように制御するが、いずれの場合においても、図5(b)に示すように、電流計143で測定される電流値を+0.1[μA]以下にするように制御する。このように制御することにより、用紙Pと定着前ガイド130との間で放電は起きなかった。また、転写チリも発生しなかった。
【0042】
なお、定着前ガイド130に印加されるバイアスとして、初めからグラフ510のような波形曲線のバイアスが印加されるように、予め実験やテスト動作などにより電流計143の測定値に基づいてバイアスの制御目標値を求めて記憶しておき、その制御目標値に基づいてコントローラ149が可変出力電源142の出力を制御するようにしてもよい。
また、コントローラ149は、画像形成動作に先立って予め実験やテスト動作などにより用紙Pのオモテ面とウラ面とに対するバイアスの制御目標値を電流計143の測定値に基づいて求めて記憶しておき、その制御目標値に基づいて、用紙Pの両面への画像形成時にオモテ面とウラ面とで定着前ガイド130に印加するバイアスを切り替えるように可変出力電源142を制御してもよい。これにより、電流計143の測定値に基づいて可変出力電源142の出力をリアルタイムに制御して定着前ガイド130に印加するバイアスを変化させる場合に比べて、用紙Pのオモテ面とウラ面とで定着前ガイド130に印加するバイアスを速やかに切り替えることができ、用紙Pと定着前ガイド130との放電を防いで転写の発生をより確実に防止することができる。また、この場合、コントローラ149が、画像形成動作時に測定される電流計143の測定値に基づいて、用紙Pのオモテ面とウラ面とについてあらかじめ設定された可変出力電源142のバイアス出力の制御目標値を補正するように制御してもよい。
【0043】
一方、定着前ガイド130の電位を一定値に維持するように、可変出力電源142のバイアス出力設定を固定すると、オモテ面にトナー像が転写された用紙Pを搬送するときは転写チリは発生しなかったが、ウラ面にトナー像が転写された用紙Pを搬送するときに転写チリが発生して定着後の画像に悪影響を及ぼした。
【0044】
なお、定着前ガイド本体部132と可変出力電源142との間に挿入されるコンデンサー141を設けずに、可変出力電源142を定着前ガイド130に直結する構成としてもよい。この構成によれば、レスポンスが向上し、定着前ガイド130のテフロン層133と用紙Pとの間の放電をより早く検知することができる。しかし、用紙Pの接近や離間で生じる誘導電流のノイズや浮遊容量から生じるノイズなどの影響を受け、転写チリが多少存在するような状態になるおそれがある。
【0045】
なお、用紙Pの搬送方向先端部と後端部とがそれぞれ定着前ガイド130を通過するときに、用紙Pがばたついて、高周波のノイズが発生し、可変出力電源142に微弱な電流が流れ、電流計143で測定されてしまうおそれがある。このため、用紙Pの搬送方向先端部と後端部とがそれぞれ定着前ガイド130を通過するタイミングで測定された電流計143の測定結果は、コントローラ149でのバイアス出力制御に用いないことが望ましい。これにより、用紙Pの先端部及び後端部のばたつきによる誤測定を防いで正確なバイアス出力の制御が可能になる。この場合において、用紙Pの先端部と後端部とが定着前ガイド130を通過するときのバイアス出力はあらかじめ設定された固定値を用いたり、直前に測定された測定値に基づいて制御したりしてもよい。
【0046】
〔実施形態2〕
上記実施形態1では定着前ガイド130にバイアスを印加する構成について説明したが、除電針112に除電バイアスを印加するように構成してもよい。
【0047】
図6は、本発明の他の実施形態に係る画像形成装置における二次転写部及び定着装置の周辺の構成及びバイアスの制御系の一例を示す説明図である。また、図7は、オモテ面にトナー像が転写された用紙Pを搬送する場合及びウラ面にトナー像が転写された用紙Pを搬送する場合に電流計143で電流値を測定する時間(タイミング)と、除電針112に印加するバイアス電圧との関係を示すグラフである。
【0048】
図6に示すように、除電バイアス印加装置146は、静電容量体としてのコンデンサー141と、除電バイアス電源としての直流の可変出力電源142と、電圧測定部145と、抵抗素子144と、コントローラ149とから主に構成されている。可変出力電源142が除電針112に接続されており、除電針112に印加する除電バイアスを制御できるようになっている。また、電流測定手段は、コンデンサー141と接地との間に挿入された抵抗素子144と、抵抗素子144の両端子間の電圧降下を測定可能な電圧測定部145と、コントローラ149とにより構成されている。コントローラ149は、電圧測定部145の測定結果と抵抗素子144の既知の抵抗値とに基づき、定着前ガイド本体部132と接地との間の電流の値を算出し、その電流値を除電バイアスの制御に用いる。なお、電流測定手段として、上記実施形態1で説明した電流計142を用いてもよい。
【0049】
図8は、除電針112に印加する除電バイアス電圧と転写の発生状態のランクであるチリランクとの関係を示すグラフである。また、図9は、定着前ガイド本体部132に流れる電流とチリランクとの関係を示すグラフである。チリランクは、数値が大きいほど転写の発生が少なく良好であることを示すランクであり、概ね4以上が望ましい。
【0050】
図8に示すように、除電針112に除電バイアスを印加しない場合(0[V])に比べて、−4000[V]〜−1000[V]の除電バイアスを印加する場合の方が、チリランクが向上する。また、図9に示すように、定着前ガイド本体部132に流れる電流が0.1[μA]以下の場合がチリランクが良好である。したがって、定着前ガイド本体部132に流れる電流が0.1[μA]以下となるように、除電針112に印加する除電バイアス電圧を制御することが望ましい。
【0051】
なお、用紙Pの先端部分及び後端部分が定着前ガイド130のテフロン層133を通過するときに、用紙Pのばたつきが生じるおそれがあり、高周波のノイズとなって、電圧測定部145で測定されてしまうおそれがある。このため、用紙Pの先端部分及び後端部分が定着前ガイド130のテフロン層133を通過するタイミングでは電圧測定部145での測定を行わず、このタイミングで計測された計測値をコントローラ149での制御に用いないようにして、誤制御を防いでいる。図7に示すグラフでは、可変出力電源142が除電バイアスを印加する時間内に、このバイアス印加時間よりも短いタイミングで、電圧測定部145が電圧の測定を行ってコントローラ149で電流値を算出している。
【0052】
また、本実施形態においても、上記実施形態1で説明したように、定着前ガイド本体部132にバイアスを印加する可変出力電源を設けて、コントローラ149で算出された電流値に基づいて、バイアスの大きさを制御するように構成してもよい。これにより、除電針122で除電された用紙Pの電位と定着前ガイド130の電位との電位差を放電が生じない大きさまで正確に制御することができ、転写チリを防ぐことが可能となる。
【0053】
〔比較例1〕
図10は、比較例に係る画像形成装置における二次転写部及び定着装置の周辺の構成を示す説明図である。また、図11は、図10に示す画像形成装置としてリコー製のMFP(Imagio Color MP-C4000)でリコー製マイペーパーを10°C、15%RH環境で連続5枚両面印刷した場合(グラフの表示は3枚のみ)の転写発生の状態を示すグラフである。インターリーブ方式という両面印刷方式が採用されているため、オモテ面とウラ面が効率的に組み合わされて両面印刷される。
【0054】
図10に示すように、本比較例1に係る画像形成装置では、定着前ガイド130の定着前ガイド本体部132に可変出力電源142が接続されており、定着前ガイド本体部132に印加するバイアス電圧を変更できるように構成されている。この比較例1の構成では、上記実施形態1や実施形態2の構成と異なり、一連の画像形成動作中にはバイアス電圧を変更することはできず、図11に示すように、一定の固定バイアスが印加される。例えば、オモテ面にトナー像が転写された用紙Pを搬送する場合に転写が発生しないレベルの一定のバイアス電圧に設定しておくことにより、オモテ面にトナー像が転写された用紙Pを搬送する場合には転写が発生しない。図11中「×」印は定着前ガイド130と用紙Pとの間の電位差が360[V]以上になる点を示しており、もし用紙Pの軌跡が定着前ガイド130の表面をほぼ触るように通れば、確実に放電が生じてしまうことを示している。実際に、ここで転写が発生した。
【0055】
〔比較例2〕
上記比較例1では定着前ガイド130にバイアス電圧を印加する構成について説明したが、本比較例2ではコンデンサーなどを介して接地する他の例について説明する。
図12は、他の比較例に係る画像形成装置における二次転写部及び定着装置の周辺の構成を示す説明図であり、定着前ガイド130をコンデンサー147を介して接地する構成を示している。定着前ガイド130の定着前ガイド本体部132はコンデンサー147を介して接地されているため、定着前ガイド本体部132をグランド(0[V])以外の電圧にすることができる。これにより、用紙Pが搬送されて定着前ガイド130が摩擦帯電したときに、定着前ガイド130を所定の電位に帯電させることができる。例えば、定着前ガイド130の電位を、オモテ面にトナー像が転写された用紙Pを搬送する場合に転写が発生しないレベルの一定の電位に帯電させることが可能となる。しかしながら、この場合であっても、ウラ面にトナー像が転写された用紙Pを搬送する場合に、用紙Pと定着前ガイド130との間の電位差が大きくなって、放電が生じ、転写が発生してしまうことがある。このように、比較例2に係る構成では、定着前ガイド130をグラウンド(0[V])以外の一定の固定した電位にしか帯電させることができないため、帯電電位が異なる用紙Pには対応できず、放電による転写が発生してしまう場合がある。
【0056】
なお、上記コンデンサー147に換えて、抵抗、ツェナーダイオード又はバリスタなどを介して定着前ガイド130の定着前ガイド本体部132を接地させ、定着前ガイド本体部132をグランド(0[V])以外の電圧にすることができるが、コンデンサーの場合と同様の欠点がある。
【0057】
なお、上述した各実施形態における各数値は、上記各実施形態の画像形成装置に特有であり、用紙Pの搬送速度などから求められたもので、他機種の画像形成装置では異なる値になる場合がある。
【0058】
また、上記各実施形態では、搬送ガイド部材として定着前ガイド130に適用した例について説明したが、その定着前ガイド130の搬送方向上流側に位置する搬送ガイド部材としての転写出口ガイド110に適用してもよい。この場合、例えば転写出口ガイド110の搬送面の裏側に導電部を設ける。そして、その転写出口ガイド110の導電部とバイアス電源又は接地との間を流れる電流を測定し、その測定結果に基づいて、転写出口ガイド110の導電部にバイアスを印加する可変出力電源142の出力を制御したり、除電針112に除電バイアスを印加する可変出力電源142の出力を制御したりするように構成すればよい。
【0059】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
転写ベルト31などの像担持体上に形成された画像を用紙Pなどの被転写体に転写する転写部と、被転写体に転写された画像を定着する定着ユニット50などの定着装置とを備えたフルカラー画像形成装置などの画像形成装置であって、転写部から定着装置に至る搬送路において被転写体に対向するように配置され、被転写体と摺動接触するテフロン層133などの絶縁性の摺動部と摺動部の被転写体と摺動接触する側と反対側に設けられた定着前ガイド本体部132などの導電部とを有する定着前ガイド130などの搬送ガイド部材と、導電部にバイアスを印加する可変出力電源142などのバイアス電源と、バイアス電源で印加されるバイアスの電流を測定する電流計143などの電流測定手段と、電流測定手段の測定結果に基づいて電流の測定値が所定の値以下になるようにバイアス電源の出力を制御するコントローラ149などの制御手段と、を備える。
これによれば、上記実施形態1について説明したように、転写部で画像が転写された被転写体が転写部から定着装置へ搬送されるとき、その被転写体をガイドする搬送ガイド部材の導電部に、バイアス電源からバイアスが印加される。このバイアスの印加によって搬送ガイド部材の導電部とバイアス電源との間に電流が流れるが、この電流は、バイアス電源から出力されるバイアスが一定であっても、搬送ガイド部材の摺動部の表面電位と被転写体の電位との電位差によって変化する。この電位差によって変化する電流を、電流測定手段で測定し、その電流の測定値が所定の値以下になるようにバイアス電源の出力を制御する。この制御により、転写部から定着装置に搬送される被転写体の帯電量が変動しても、搬送ガイド部材の摺動部の表面電位と被転写体の電位との電位差が、放電が生じるレベルを超えないようにすることができる。よって、転写部から定着装置に搬送される被転写体の帯電量が変動する場合でも、搬送ガイド部材と被転写体との間の放電を抑えて転写チリを確実に防止することができる。
(態様B)
転写ベルト31などの像担持体上に形成された画像を用紙Pなどの被転写体に転写する転写部と、被転写体に転写された画像を定着する定着ユニット50などの定着装置とを備えたフルカラー画像形成装置などの画像形成装置であって、転写部から定着装置に至る搬送路において被転写体に対向するように配置され、被転写体と摺動接触するテフロン層133などの絶縁性の摺動部と、摺動部の被転写体と摺動接触する側と反対側に設けられた定着前ガイド本体部132などの導電部とを有する定着前ガイド130などの搬送ガイド部材と、転写部の出口近傍に配設され転写部から排出された被転写体を除電する除電針112などの除電部材と、除電部材に除電バイアスを印加する可変出力電源142などの除電バイアス電源と、搬送ガイド部材の導電部と接地との間の電流を測定する抵抗素子144及び電圧測定部145などの電流測定手段と、電流測定手段の測定結果に基づいて電流の測定値が所定の値以下になるように除電バイアス電源の出力を制御するコントローラ149などの制御手段と、を備える。
これによれば、上記実施形態2について説明したように、転写部で画像が転写された被転写体が転写部から定着装置へ搬送されるときに、その転写部の出口近傍に配設された除電部材に、除電バイアス電源から除電バイアスが印加される。この除電バイアスの印加により、被転写体の帯電量が低下する。このように帯電量が低下した被転写体が搬送ガイド部材によって定着装置に向けて搬送される。ここで、被転写体をガイドする搬送ガイド部材の導電部と接地との間を流れる電流は、除電バイアス電源から出力されるバイアスが一定であり且つ搬送ガイド部材の導電部が接地されていたとしても、搬送ガイド部材の摺動部の表面電位と被転写体の電位との電位差によって変化する。この電位差によって変化する電流を電流測定手段で測定し、その電流の測定値が所定の値以下になるように除電バイアス電源の出力を制御する。この制御により、転写部から定着装置に搬送される被転写体の帯電量が変動しても、被転写体に対する除電量を変化させ、搬送ガイド部材の摺動部の表面電位と被転写体の電位との電位差が、放電が生じるレベルを超えないようにすることができる。よって、転写部から定着装置に搬送される被転写体の帯電量が変動する場合でも、搬送ガイド部材と被転写体との間の放電を抑えて転写チリを確実に防止することができる。
(態様C)
上記態様A又はBにおいて、搬送ガイド部材の導電部と電流測定手段との間に挿入されたコンデンサー141などの静電容量体を更に備えたことを特徴とするものである。これによれば、上記実施形態1について説明したように、搬送ガイド部材の摺動部と被転写体との間の放電から生じる電流については、被転写体の接近や離間で生じる誘導電流のノイズや、浮遊容量から生じるノイズなどがあり、これらのノイズを除去しないと放電による電流を正確に測定することができない。ここで、誘導電流のノイズや浮遊容量から生じるノイズは低周波であるのに対して放電による電流の変化は高周波であることから、静電容量体を備えることにより、低周波のノイズをカットし、高周波の放電による電流の変化を正確に検出することができる。
(態様D)
上記態様A乃至Cのいずれかにおいて、電流測定手段は、二重積分型アナログデジタル変換方式を用いて電流を測定することを特徴とするものである。これによれば、上記実施形態1について説明したように、二重積分型アナログデジタル変換では、積分がプラス方向とマイナス方向に行われるため、誤差を打ち消す働きがある。また、入力の直流電流に周期的な雑音(例えば商用電源からのハム雑音)が重畳していた場合に、入力を積分する時間(三角波の上昇部分)を雑音の周期(の整数倍)に合わせることで、その影響を取り除くことができる。二重積分型アナログデジタル変換は、その原理上、高速信号の変換はできないが、比較的簡単な回路構成で高精度な変換が可能である。
(態様E)
上記態様A乃至Dのいずれかにおいて、制御手段は、用紙Pなどの被転写体の搬送方向上流側端部及びその近傍における所定の範囲並びに被転写体の搬送方向下流側端部及び近傍における所定の範囲が搬送ガイド部材の摺動部を通過するときに前記電流測定手段で測定された前記電流の測定結果を、前記バイアス電源又は前記除電バイアス電源の出力の制御に用いないことを特徴とするものである。これによれば、上記実施形態2について説明したように、被転写体の先端部分及び後端部分が搬送ガイド部材の摺動部を通過するときに、被転写体のばたつきが生じるおそれがあり、高周波のノイズとなって、電流測定手段で測定されてしまうおそれがある。よって、被転写体の先端部分及び後端部分が搬送ガイド部材の摺動部を通過するときに測定された結果を制御手段で制御に用いないことにより、誤制御を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0060】
10Y 作像装置(イエロー)
10C 作像装置(シアン)
10M 作像装置(マゼンタ)
10K 作像装置(黒)
12 感光体ドラム
13 帯電装置
14 クリーニング装置
15 現像装置
20 光学ユニット
30 中間転写体ユニット
31 転写ベルト
32 ローラ
33 ローラ
34−1 ローラ
34−2 ローラ
35 一次転写ローラ
36 二次転写ローラ
40 給紙ユニット
41 給紙カセット
42 手差し給紙トレイ
43 用紙供給ローラ
44 レジストローラ
50 定着ユニット
51 定着ローラ
52 加圧ローラ
110 転写出口ガイド
130 定着前ガイド
132 定着前ガイド本体部
133 テフロン層
140 バイアス印加装置
141 コンデンサー
142 可変出力電源
143 電流計
144 抵抗素子
145 電圧測定部
146 除電バイアス印加装置
149 コントローラ
P 用紙(被転写体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2002−156834号公報
【特許文献2】特開2002−182491号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に形成された画像を被転写体に転写する転写部と、前記被転写体に転写された画像を定着する定着装置とを備えた画像形成装置であって、
前記転写部から前記定着装置に至る搬送路において前記被転写体に対向するように配置され、該被転写体と摺動接触する絶縁性の摺動部と該摺動部の該被転写体と摺動接触する側と反対側に設けられた導電部とを有する搬送ガイド部材と、
前記搬送ガイド部材の導電部にバイアスを印加するバイアス電源と、
前記バイアス電源で印加されるバイアスの電流を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段の測定結果に基づいて前記電流の測定値が所定の値以下になるように前記バイアス電源の出力を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
像担持体上に形成された画像を被転写体に転写する転写部と、前記被転写体に転写された画像を定着する定着装置とを備えた画像形成装置であって、
前記転写部から前記定着装置に至る搬送路において前記被転写体に対向するように配置され、該被転写体と摺動接触する絶縁性の摺動部と該摺動部の該被転写体と摺動接触する側と反対側に設けられた導電部とを有する搬送ガイド部材と、
前記転写部の出口近傍に配設され該転写部から排出された被転写体を除電する除電部材と、
前記除電部材に除電バイアスを印加する除電バイアス電源と、
前記搬送ガイド部材の導電部と接地との間の電流を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段の測定結果に基づいて前記電流の測定値が所定の値以下になるように前記除電バイアス電源の出力を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置において、
前記搬送ガイド部材の導電部と前記電流測定手段との間に挿入された静電容量体を更に備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの画像形成装置において、
前記電流測定手段は、二重積分型アナログデジタル変換方式を用いて電流を測定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの画像形成装置において、
前記制御手段は、前記被転写体の搬送方向上流側端部及びその近傍における所定の範囲並びに前記被転写体の搬送方向下流側端部及びその近傍における所定の範囲が前記搬送ガイド部材の摺動部を通過するときに前記電流測定手段で測定された前記電流の測定結果を、前記バイアス電源又は前記除電バイアス電源の出力の制御に用いないことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−97179(P2013−97179A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240141(P2011−240141)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】