画像情報抽出装置及びそれを用いた画像送信装置と画像受信装置並びに画像伝送システム
【課題】画像情報抽出装置において、低コストで高精度な背景除去を行い、対象物の画像を抽出する。
【解決手段】CPU14は、メモリ13に記憶されている基準画像の画像情報及びカメラ11からその後に入力された入力画像の画像情報を空間微分して、基準画像及び入力画像の輝度勾配を算出する。CPU14は、基準画像及び入力画像を構成する画素よりも大きな小領域に、基準画像及び入力画像を分割し、各小領域毎に輝度勾配のヒストグラムを算出する。CPU14は、基準画像のヒストグラムと入力画像のヒストグラムの類似度に基づいて差分情報を算出し、画像を抽出する。
【解決手段】CPU14は、メモリ13に記憶されている基準画像の画像情報及びカメラ11からその後に入力された入力画像の画像情報を空間微分して、基準画像及び入力画像の輝度勾配を算出する。CPU14は、基準画像及び入力画像を構成する画素よりも大きな小領域に、基準画像及び入力画像を分割し、各小領域毎に輝度勾配のヒストグラムを算出する。CPU14は、基準画像のヒストグラムと入力画像のヒストグラムの類似度に基づいて差分情報を算出し、画像を抽出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像された画像情報から対象物が含まれる画像情報を抽出する画像情報抽出装置等の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、テレビ電話等において画像情報を圧縮して送信する場合に、顔等の重要な部分を検出する技術として、特許文献1に示す技術が知られている。この特許文献1には、画像信号を複数領域のブロックに分割して、ブロック単位でフレーム毎に動き量、平均輝度等を算出し、顔等の領域を特定する技術が記載されている。
【0003】
画像情報を圧縮して送信する技術は、特許文献1に開示されているテレビ電話以外にも、家屋内外の要所に配設されたカメラで撮像された画像を家屋内のモニタで表示可能とするいわゆるホームセキュリティシステムへの応用が検討されている。ホームセキュリティシステムにおいては、カメラからモニタに画像情報を送信する際に、無線LANを用いる技術の他、特定小電力無線を用いる技術が検討されている。
【0004】
特定小電力無線は、無線LANと比較すると低消費電力で長距離通信が可能という長所を有しているが、その反面、通信に使用できる周波数帯域は狭い。そのため、ホームセキュリティシステムに特定小電力無線を適用する場合には、画像情報を圧縮することにより、送信に必要なビットレートを少なくすることが要求される。
【0005】
画像情報を圧縮する技術としては、H.264やMPEG等の規格が知られている。ホームセキュリティシステムの用途において良好な画質を得るためには、QVGA相当の解像度(320×240ドット)では、15〜30fps程度のフレームレートが必要とされる。また、VGA相当の解像度(640×480ドット)では、7.5〜15fps程度のフレームレートが必要とされる。ところが、上記解像度とフレームレートの組み合わせによる画像情報をH.264やMPEG等の規格を適用して圧縮した場合であっても、特定小電力無線で伝送可能なビットレートを超えることがある。そこで、特定小電力無線を適用してホームセキュリティシステムを構築するためには、画質の低下を抑制しつつ、さらなる低ビットレート化を実現する技術が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−133300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、図10に示すように、本願の出願人は、画像情報の伝送に必要なビットレートを下げるために、以下の技術を検討している。すなわち、カメラで撮像された画像から訪問者や車両等の注目すべき対象物(以下、監視対象物とする)の画像を抽出(監視対象物以外の背景(例えば木々)等を除去)し、その抽出した監視対象物の画像情報のみを送信する技術である。監視対象物の画像は、監視対象物を含まない基準画像を予め撮像・保存しておき、この基準画像と、その後カメラによって撮像された入力画像との差分を算出することによって抽出される。
【0008】
ところが、同一の被写体を撮像した場合であっても、カメラの構造上不可避的に発生する撮像ノイズ等の影響を受け、上記基準画像と入力画像との間で、本来であれば生じないはずの差分が生じてしまう場合がある。また、背景に木々が存在する場合、枝や葉の微小な動きの影響を受け、上記と同様に不必要な差分が生じてしまう場合がある。
【0009】
このような差分は、図11に示すように、基準画像を数多く記憶し、それぞれの基準画像と入力画像との差分を算出することにより、ある程度抑制可能であると考えられる。しかしながら、基準画像を数多く記憶するため大容量のメモリが必要となったり、差分を算出するための画像処理に要する電力が増加するため、低コストで消費電力の少ないシステムを構成することが困難となる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、低コストで高精度な背景除去を行うことができる画像情報抽出装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の画像情報抽出装置は、基準画像の輝度情報を空間微分して算出した輝度勾配と、入力された入力画像の輝度情報を空間微分して算出した輝度勾配を比較して、前記基準画像と前記入力画像との差分情報を算出し、対象物の画像を抽出するものである。
【0012】
この発明において、撮像手段から予め入力された基準画像の画像情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された基準画像の画像情報及び前記撮像手段からその後に入力された入力画像の画像情報を空間微分して、基準画像及び入力画像の輝度勾配を算出する勾配算出手段と、前記勾配算出手段によって算出された基準画像の輝度勾配と入力画像の輝度勾配を比較して、基準画像と入力画像との差分情報を算出する差分算出手段とを備えることが好ましい。
【0013】
この発明において、RGB各値の勾配を各色毎に個別に算出し、基準画像と入力画像との差分情報を算出することが好ましい。
【0014】
この発明において、基準画像及び入力画像を構成する画素よりも大きな小領域に、基準画像及び入力画像を分割し、各小領域毎に輝度勾配のヒストグラムを算出し、前記基準画像のヒストグラムと入力画像のヒストグラムの類似度に基づいて差分情報を算出することが好ましい。
【0015】
この発明において、前記小領域の大きさは、可変であることが好ましい。
【0016】
この発明において、前記小領域の形状は、可変であることが好ましい。
【0017】
この発明において、前記ヒストグラムの類似度は、ヒストグラム間距離に基づいて算出され、その類似度が第1閾値未満であるとき、その小領域の入力画像の画像情報を差分情報とすることが好ましい。
【0018】
この発明において、前記ヒストグラムの類似度は、ヒストグラムの偏角に基づいて算出され、その類似度が第2閾値未満であるとき、その小領域の入力画像の画像情報を差分情報とすることが好ましい。
【0019】
この発明において、前記第1閾値及び/又は第2閾値は、画像に応じて自動的に調整されることが好ましい。
【0020】
この発明において、前記第1閾値及び/又は第2閾値は、ユーザによって任意に設定可能であることが好ましい。
【0021】
この発明において、前記画像情報抽出装置と、前記画像情報抽出装置によって抽出された画像情報を送信する送信手段とを備えた画像送信装置が好ましい。
【0022】
また、本発明の画像受信装置は、前記送信手段によって送信された画像情報を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された画像情報と前記基準画像の画像情報を合成する画像合成手段と、前記画像合成手段によって合成された画像情報を表示するモニタとを備えたことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の画像伝送システムは、前記画像送信装置と、前記画像受信装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の画像情報抽出装置によれば、基準画像の輝度勾配と入力画像の輝度勾配を比較して、基準画像と入力画像との類似度を算出するので、輝度の微妙な相違を無視しながら、対象物の画像を抽出できる。従って、対象物の画像を抽出する際に、背景画像の微小な変動や撮像画像のノイズ成分の影響を抑制することができる。これにより、低コストかつ高精度に背景を除去し、対象物の画像を抽出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態による画像情報抽出装置及び画像送信装置、画像受信装置を備えたホームセキュリティ向け無線画像音声伝送システムのブロック図。
【図2】(a)は、メモリに記憶させた基準画像を示す図、(b)は、監視対象物(人物)を含む入力画像を示す図。
【図3】(a)は、小領域(ブロック)に分割された基準画像を示す図、(b)は、小領域に分割された入力画像を示す図。
【図4】図4は、ある小領域(X画素×Y画素)における各画素の輝度勾配を示す図。
【図5】(a)は、入力画像において各小領域毎に集計された輝度勾配のヒストグラム、(b)は、基準画像において各小領域毎に集計された輝度勾配のヒストグラム。
【図6】ヒストグラムの偏角θを示す図。
【図7】ヒストグラムの類似度に基づいて、小領域の画像情報が除去された入力画像を示す図。
【図8】小領域の形状の変形例を示す図。
【図9】小領域の形状の別の変形例を示す図。
【図10】監視対象物の画像情報を抽出する技術を示す図。
【図11】監視対象物の画像情報を抽出する別の技術を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態による画像情報抽出装置を備えたホームセキュリティ向けの無線画像音声伝送システム(画像伝送システム)について図面を参照して説明する。図1は無線画像音声伝送システム1の構成を示す。無線画像音声伝送システム1は、屋外又は屋内に設置される画像音声送信装置10と、屋内に設置される画像音声受信装置20等によって構成される。監視対象場所が複数存在する場合は、それぞれの場所に1又は複数の画像音声送信装置10が設けられる。
【0027】
画像音声送信装置10は、カメラ(撮像手段)11によって撮像した画像情報及びマイク12によって集音した音声情報を送信する。画像音声受信装置20は、画像音声送信装置10から送信された画像情報及び音声情報を受信して、モニタ24及びスピーカ25によって再生する。これにより、訪問者や不審者の画像や音声を確認でき、これらの情報は、必要に応じて、画像音声受信装置20等に保存される。画像音声送信装置10と画像音声受信装置20とは、例えば特定小電力無線を用いて通信される。
【0028】
画像音声送信装置10は、カメラ11と、マイク12と、メモリ(記憶手段)13と、CPU(勾配算出手段、差分算出手段)14と、送信部(送信手段)15と、電池(図示せず)等を備える。カメラ11は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子(Image Sensor)を有し、画像音声送信装置10の周辺の被写体を撮像して電子的な画像情報に変換して出力する。マイク12は、画像音声送信装置10の周辺の音声を集音して電子的な音声情報に変換して出力する。メモリ13は、カメラ11から入力された画像情報の他、CPU14の動作に必要な情報を記憶する。CPU14は、画像音声送信装置10の各部を制御する。送信部15は、カメラ11から入力された画像情報及びマイク12から入力された音声情報の他、各種の信号を特定小電力無線にて送信する。特定小電力無線は、送信に要する電力を抑制できるので、電池の消耗を抑制し、その交換サイクルを長くすることができる。
【0029】
画像音声受信装置20は、受信部(受信手段)21と、メモリ22と、CPU(画像合成手段)23と、モニタ24と、スピーカ25等を備える。受信部21は、送信部15から送信された画像情報及び音声情報の他、各種の信号を受信する。メモリ22は、受信部21によって受信された画像情報の他、CPU23の動作に必要な情報を記憶する。CPU23は、画像音声受信装置20の各部を制御する。モニタ24は、受信部21によって受信された画像情報を再生する。スピーカ25は、受信部21によって受信された音声情報を再生する。
【0030】
本実施形態においては、予めカメラ11によって基準画像を撮像し、その画像情報を記憶するメモリ13及びメモリ22に記憶させる(基準画像記憶ステップ)。その後、通常の動作時には、カメラ11によって撮像された画像が入力画像としてCPU14に入力される(撮像ステップ)。そして、人物や車両等の監視対象物の画像が基準画像に対する入力画像の差分情報として抽出され(差分情報算出ステップ)、送信部15から送信される。これにより、入力画像の画像情報から背景の情報を除去して、差分情報すなわち監視対象物の画像情報を低ビットレートで送信することが可能となり、周波数帯域の狭い特定小電力無線が使用可能となる。なお、送信部15から送信された監視対象物の画像情報は、受信部21によって受信され、CPU23によってメモリ22に記憶されている基準画像と合成され、背景を含む監視対象物の画像がモニタ24によって再生される。これにより、周波数帯域の狭い特定小電力無線に対応させながら、モニタ24によって再生される画像の質を高めることができる。
【0031】
人物や車両等の監視対象物の画像の抽出は、画像情報抽出装置18によってなされる。画像情報抽出装置18は、カメラ11と、メモリ13と、CPU14等を備える。CPU14は、メモリ13に記憶された基準画像の輝度情報を空間微分して輝度勾配を算出し(勾配算出ステップ)、メモリ13に記憶させる。また、CPU14は、カメラ11から入力された入力画像の輝度情報を空間微分して輝度勾配を算出し(勾配算出ステップ)、メモリ13に記憶させた基準画像の輝度勾配と比較する(勾配比較ステップ)。
【0032】
図2(a)は、基準画像記憶ステップにおいてメモリ13に記憶させた基準画像を、図2(b)は、撮像ステップにおいてCPU14に入力される監視対象物(人物)を含む入力画像をそれぞれ示す。基準画像としては、監視対象物が存在しないときの撮像画像が記憶される。カメラ11から入力された入力画像に監視対象物が存在すると、基準画像と入力画像との間で輝度勾配に差異が生じ、監視対象物の画像が抽出される。
【0033】
図3(a)は、矩形の小領域(ブロック)に分割された基準画像を、図3(b)は、小領域に分割された入力画像を示す。基準画像及び入力画像は、輝度勾配を算出するにあたって、図3に示す小領域に分割される(画像分割ステップ)。輝度勾配の算出及び比較、並びに監視対象物の画像抽出は、基準画像及び入力画像を構成する画素よりも大きく分割された小領域毎になされる。例えば、図3は、5行×3列に分割された小領域の例を示している。小領域の大きさは、任意である。従って、小領域を構成する画素の数も変更できる。
【0034】
図4は、ある小領域(X画素×Y画素)における各画素の輝度勾配を示している。各画素の輝度勾配は、各画素毎に、輝度情報を空間微分することにより算出され、図4に示すようにベクトルで表される。ベクトル化された輝度勾配は、小領域毎にヒストグラムとして集計され比較される。
【0035】
図5(a)は、入力画像において各小領域毎に集計された輝度勾配のヒストグラムを、図5(b)は、基準画像において各小領域毎に集計された輝度勾配のヒストグラムを示している。それぞれのヒストグラムの集計にあたっては、横軸の階級として輝度勾配ベクトルの方向(輝度勾配方向)が適用され、縦軸としてベクトルの度数のみならず輝度勾配ベクトルの大きさ(輝度勾配強度)が考慮される(ヒストグラム集計ステップ)。基準画像には監視対象物が存在しないので、入力画像の輝度勾配のヒストグラムと、基準画像の輝度勾配のヒストグラムを比較し、類似度を算出することにより、入力画像において監視対象物が存在する小領域が特定できる。すなわち、監視対象物が存在しない小領域におけるヒストグラムの類似度は高く、監視対象物が存在する小領域におけるヒストグラムの類似度は低く算出されるため、類似度を所定の閾値と比較することにより、監視対象物が存在する小領域が特定される。そして、監視対象物が存在する小領域の画像データは、基準画像に対する入力画像の差分情報として抽出され、送信部15を介して送信される。
【0036】
ヒストグラムの類似度は、例えばヒストグラム間距離を算出することにより、数値化できる(類似度算出ステップ)。ヒストグラム間距離としては、ユークリッド距離、バタチャリヤ距離等が挙げられる。そして、ある小領域においてヒストグラム間距離に基づいて算出されたヒストグラムの類似度が第1閾値以上であるとき、その小領域の入力画像は基準画像と同等(すなわち背景等)であるとして、画像情報を除去する。ヒストグラムの類似度が第1閾値未満であるとき、その小領域に監視対象物が存在すると判断して、その小領域の画像情報を差分情報として抽出する。
【0037】
また、図6に示すように、ヒストグラムの類似度は、ヒストグラムの偏角θを算出することによっても、数値化できる(類似度算出ステップ)。偏角θは、基準画像のヒストグラムの傾き(基準方位)と入力画像のヒストグラムの傾き(入力方位)のなす角で算出され、偏角θが小さいほどヒストグラム類似度が高くなる。そして、ある小領域において偏角θに基づいて出されたヒストグラムの類似度が第2閾値以上であるとき、その小領域の入力画像は基準画像と同等(すなわち背景等)であるとして、画像情報を除去する。ヒストグラムの類似度が第2閾値未満であるとき、その小領域に監視対象物が存在すると判断して、その小領域の画像情報を差分情報として抽出する。なお、ヒストグラムの類似度は、ヒストグラム間距離とヒストグラムの偏角θとを両方用いて評価してもよい。
【0038】
図7は、ヒストグラムの類似度に基づいて、小領域の画像情報が除去された入力画像を示す。ヒストグラムの類似度が高い小領域は、基準画像と実質的に同等すなわち背景等であると判断され、画像情報が除去される。その結果、カメラ11からCPU14に入力された入力画像の画像情報から、監視対象物が存在する小領域の画像情報が差分情報として抽出され、送信部15を介して送信される。
【0039】
以上のように、本実施形態の画像情報抽出装置18によれば、基準画像の輝度勾配と入力画像の輝度勾配を比較して、基準画像と入力画像との類似度を算出するので、輝度の微妙な相違を無視しながら、監視対象物の画像を抽出できる。すなわち、本実施形態においては、輝度勾配に着目して基準画像と入力画像との類似度を算出するので、輝度自体に着目して基準画像と入力画像との類似度を算出する場合と比較すると、木の葉の揺れ等の微妙な輝度の変化は、抽象化されて無視される。従って、対象物の画像を抽出する際に、背景画像の微小な変動や撮像画像のノイズ成分の影響を抑制することができる。これにより、低コストかつ高精度に背景等を除去し、監視対象物の画像を抽出できるようになる。
【0040】
また、小領域毎に輝度勾配のヒストグラムを算出し、基準画像のヒストグラムと入力画像のヒストグラムの類似度に基づいて差分情報を統計的に算出するので、より高精度に背景等を除去し、監視対象物の画像に抽出できるようになる。また、ヒストグラムの類似度の算出に、ヒストグラム間距離又はヒストグラムの偏角θを用いることより、より一層高精度に背景等を除去し、監視対象物の画像に抽出できるようになる。
【0041】
また、画像情報抽出装置18によって抽出された画像情報を送信する画像音声送信装置10によれば、抽出された対象物の画像情報のみを送信するので、送信信号のビットレートを特定小電力無線で伝送可能な程度に抑制できる。また、抽出された対象物の画像情報を受信して、メモリ22に記憶している基準画像の画像情報を合成する画像受信装置20によれば、カメラ11によって撮像され、CPU14に入力された入力画像と同等画質の画像をモニタ24に表示できる。そして、画像音声送信装置10と画像受信装置20を適用することにより、無線画像音声伝送システム1におけるモニタ画質の低下を抑制しつつ、特定小電力無線に対応できるように低ビットレート化を図ることができる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られない。少なくとも背景等を撮像した基準画像の輝度情報を空間微分して算出した輝度勾配と、カメラ11から入力された入力画像の輝度情報を空間微分して算出した輝度勾配を比較する。そして、基準画像と入力画像との差分情報を算出し、対象物の画像を抽出するように構成されていればよい。
【0043】
また、本発明は種々の変形が可能である。例えば、基準画像に対する入力画像の差分情報を抽出するにあたっては、基準画像及び入力画像のR(赤)G(緑)B(青)各値の勾配を各色毎に個別に算出し、比較してもよい。この場合、基準画像及び入力画像について、RGB各値の勾配に関するヒストグラムが算出され、それらの類似度が算出されて所定の閾値と比較される。また、RGB各値の勾配と上述した輝度勾配とを組み合わせて、基準画像に対する入力画像の差分情報を抽出してもよい。また、特定色について類似度の感度を変えたい場合は、RGBのうち特定色の値の勾配を偏重して評価してもよい。
【0044】
また、基準画像及び入力画像が分割されて生成される小領域の大きさは、可変としてもよい。小領域を大きく設定することにより、CPU14の処理時間を短縮できる。小領域を小さく設定することにより、監視対象物の輪郭に近づけて小領域を抽出することが可能となり、画像情報の送信に必要なビットレートをより一層抑制できる。
【0045】
また、図8に示すように、小領域の形状は、可変であってもよい。この場合、各小領域の間に隙間が生じないように小領域の形状を定めることにより、基準画像及び入力画像はもれなく分割される。図9に示すように、小領域の形状は、矩形に限られることなく、任意の形状とすることができる。このように、小領域の形状を変更可能とすることにより、監視対象物に応じて小領域を設定できる。これにより、CPU14の負荷を抑制しつつ、監視対象物の輪郭に近づけて小領域を抽出することが可能となり、画像情報の送信に必要なビットレートをより一層抑制できる。
【0046】
輝度勾配の類似度と比較される第1閾値及び/又は第2閾値は、画像に応じて自動的に調整されるように構成されていてもよい。また、この第1閾値及び/又は第2閾値は、ユーザによって任意に設定可能に構成されていてもよい。例えば、監視対象物として抽出される領域が、送信帯域に対して相対的に大きくなると、画像情報を適正に送信できなくなる虞が生ずる場合がある。そこで、背景等として画像情報を除去する領域(監視対象物として抽出される領域以外の領域)を大きくするために、各閾値を小さく設定すればよい。これにより、通信環境等に応じて送信する画像情報を適正化できる。
【0047】
また、カメラ11、マイク12は、画像情報抽出装置18(画像音声送信装置10)の外部に設けられる形態であってもよい。また、無線画像音声伝送システム1は、ホームセキュリティの用途に限られることなく、オフィスや工場のセキュリティの用途に適用してもよい。また、画像音声送信装置10等の施工の容易さを考慮すると、画像音声送信装置10と画像音声受信装置20とは、無線にて通信できる形態が最も望ましいが、両者が通信線を介して有線にて通信するように構成されていてもよい。この場合においても、画像信号の送信に必要とされるビットレートを低減できるので、狭い周波数帯域での通信が可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 無線画像音声伝送システム(画像伝送システム)
10 画像音声送信装置(画像送信装置)
11 カメラ(撮像手段)
13 メモリ(記憶手段)
14 CPU(勾配算出手段、差分算出手段)
15 送信部(送信手段)
18 画像情報抽出装置
20 画像音声受信装置(画像受信装置)
21 受信部(受信手段)
22 メモリ
23 CPU(画像合成手段)
24 モニタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像された画像情報から対象物が含まれる画像情報を抽出する画像情報抽出装置等の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、テレビ電話等において画像情報を圧縮して送信する場合に、顔等の重要な部分を検出する技術として、特許文献1に示す技術が知られている。この特許文献1には、画像信号を複数領域のブロックに分割して、ブロック単位でフレーム毎に動き量、平均輝度等を算出し、顔等の領域を特定する技術が記載されている。
【0003】
画像情報を圧縮して送信する技術は、特許文献1に開示されているテレビ電話以外にも、家屋内外の要所に配設されたカメラで撮像された画像を家屋内のモニタで表示可能とするいわゆるホームセキュリティシステムへの応用が検討されている。ホームセキュリティシステムにおいては、カメラからモニタに画像情報を送信する際に、無線LANを用いる技術の他、特定小電力無線を用いる技術が検討されている。
【0004】
特定小電力無線は、無線LANと比較すると低消費電力で長距離通信が可能という長所を有しているが、その反面、通信に使用できる周波数帯域は狭い。そのため、ホームセキュリティシステムに特定小電力無線を適用する場合には、画像情報を圧縮することにより、送信に必要なビットレートを少なくすることが要求される。
【0005】
画像情報を圧縮する技術としては、H.264やMPEG等の規格が知られている。ホームセキュリティシステムの用途において良好な画質を得るためには、QVGA相当の解像度(320×240ドット)では、15〜30fps程度のフレームレートが必要とされる。また、VGA相当の解像度(640×480ドット)では、7.5〜15fps程度のフレームレートが必要とされる。ところが、上記解像度とフレームレートの組み合わせによる画像情報をH.264やMPEG等の規格を適用して圧縮した場合であっても、特定小電力無線で伝送可能なビットレートを超えることがある。そこで、特定小電力無線を適用してホームセキュリティシステムを構築するためには、画質の低下を抑制しつつ、さらなる低ビットレート化を実現する技術が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−133300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、図10に示すように、本願の出願人は、画像情報の伝送に必要なビットレートを下げるために、以下の技術を検討している。すなわち、カメラで撮像された画像から訪問者や車両等の注目すべき対象物(以下、監視対象物とする)の画像を抽出(監視対象物以外の背景(例えば木々)等を除去)し、その抽出した監視対象物の画像情報のみを送信する技術である。監視対象物の画像は、監視対象物を含まない基準画像を予め撮像・保存しておき、この基準画像と、その後カメラによって撮像された入力画像との差分を算出することによって抽出される。
【0008】
ところが、同一の被写体を撮像した場合であっても、カメラの構造上不可避的に発生する撮像ノイズ等の影響を受け、上記基準画像と入力画像との間で、本来であれば生じないはずの差分が生じてしまう場合がある。また、背景に木々が存在する場合、枝や葉の微小な動きの影響を受け、上記と同様に不必要な差分が生じてしまう場合がある。
【0009】
このような差分は、図11に示すように、基準画像を数多く記憶し、それぞれの基準画像と入力画像との差分を算出することにより、ある程度抑制可能であると考えられる。しかしながら、基準画像を数多く記憶するため大容量のメモリが必要となったり、差分を算出するための画像処理に要する電力が増加するため、低コストで消費電力の少ないシステムを構成することが困難となる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、低コストで高精度な背景除去を行うことができる画像情報抽出装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の画像情報抽出装置は、基準画像の輝度情報を空間微分して算出した輝度勾配と、入力された入力画像の輝度情報を空間微分して算出した輝度勾配を比較して、前記基準画像と前記入力画像との差分情報を算出し、対象物の画像を抽出するものである。
【0012】
この発明において、撮像手段から予め入力された基準画像の画像情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された基準画像の画像情報及び前記撮像手段からその後に入力された入力画像の画像情報を空間微分して、基準画像及び入力画像の輝度勾配を算出する勾配算出手段と、前記勾配算出手段によって算出された基準画像の輝度勾配と入力画像の輝度勾配を比較して、基準画像と入力画像との差分情報を算出する差分算出手段とを備えることが好ましい。
【0013】
この発明において、RGB各値の勾配を各色毎に個別に算出し、基準画像と入力画像との差分情報を算出することが好ましい。
【0014】
この発明において、基準画像及び入力画像を構成する画素よりも大きな小領域に、基準画像及び入力画像を分割し、各小領域毎に輝度勾配のヒストグラムを算出し、前記基準画像のヒストグラムと入力画像のヒストグラムの類似度に基づいて差分情報を算出することが好ましい。
【0015】
この発明において、前記小領域の大きさは、可変であることが好ましい。
【0016】
この発明において、前記小領域の形状は、可変であることが好ましい。
【0017】
この発明において、前記ヒストグラムの類似度は、ヒストグラム間距離に基づいて算出され、その類似度が第1閾値未満であるとき、その小領域の入力画像の画像情報を差分情報とすることが好ましい。
【0018】
この発明において、前記ヒストグラムの類似度は、ヒストグラムの偏角に基づいて算出され、その類似度が第2閾値未満であるとき、その小領域の入力画像の画像情報を差分情報とすることが好ましい。
【0019】
この発明において、前記第1閾値及び/又は第2閾値は、画像に応じて自動的に調整されることが好ましい。
【0020】
この発明において、前記第1閾値及び/又は第2閾値は、ユーザによって任意に設定可能であることが好ましい。
【0021】
この発明において、前記画像情報抽出装置と、前記画像情報抽出装置によって抽出された画像情報を送信する送信手段とを備えた画像送信装置が好ましい。
【0022】
また、本発明の画像受信装置は、前記送信手段によって送信された画像情報を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された画像情報と前記基準画像の画像情報を合成する画像合成手段と、前記画像合成手段によって合成された画像情報を表示するモニタとを備えたことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の画像伝送システムは、前記画像送信装置と、前記画像受信装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の画像情報抽出装置によれば、基準画像の輝度勾配と入力画像の輝度勾配を比較して、基準画像と入力画像との類似度を算出するので、輝度の微妙な相違を無視しながら、対象物の画像を抽出できる。従って、対象物の画像を抽出する際に、背景画像の微小な変動や撮像画像のノイズ成分の影響を抑制することができる。これにより、低コストかつ高精度に背景を除去し、対象物の画像を抽出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態による画像情報抽出装置及び画像送信装置、画像受信装置を備えたホームセキュリティ向け無線画像音声伝送システムのブロック図。
【図2】(a)は、メモリに記憶させた基準画像を示す図、(b)は、監視対象物(人物)を含む入力画像を示す図。
【図3】(a)は、小領域(ブロック)に分割された基準画像を示す図、(b)は、小領域に分割された入力画像を示す図。
【図4】図4は、ある小領域(X画素×Y画素)における各画素の輝度勾配を示す図。
【図5】(a)は、入力画像において各小領域毎に集計された輝度勾配のヒストグラム、(b)は、基準画像において各小領域毎に集計された輝度勾配のヒストグラム。
【図6】ヒストグラムの偏角θを示す図。
【図7】ヒストグラムの類似度に基づいて、小領域の画像情報が除去された入力画像を示す図。
【図8】小領域の形状の変形例を示す図。
【図9】小領域の形状の別の変形例を示す図。
【図10】監視対象物の画像情報を抽出する技術を示す図。
【図11】監視対象物の画像情報を抽出する別の技術を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態による画像情報抽出装置を備えたホームセキュリティ向けの無線画像音声伝送システム(画像伝送システム)について図面を参照して説明する。図1は無線画像音声伝送システム1の構成を示す。無線画像音声伝送システム1は、屋外又は屋内に設置される画像音声送信装置10と、屋内に設置される画像音声受信装置20等によって構成される。監視対象場所が複数存在する場合は、それぞれの場所に1又は複数の画像音声送信装置10が設けられる。
【0027】
画像音声送信装置10は、カメラ(撮像手段)11によって撮像した画像情報及びマイク12によって集音した音声情報を送信する。画像音声受信装置20は、画像音声送信装置10から送信された画像情報及び音声情報を受信して、モニタ24及びスピーカ25によって再生する。これにより、訪問者や不審者の画像や音声を確認でき、これらの情報は、必要に応じて、画像音声受信装置20等に保存される。画像音声送信装置10と画像音声受信装置20とは、例えば特定小電力無線を用いて通信される。
【0028】
画像音声送信装置10は、カメラ11と、マイク12と、メモリ(記憶手段)13と、CPU(勾配算出手段、差分算出手段)14と、送信部(送信手段)15と、電池(図示せず)等を備える。カメラ11は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子(Image Sensor)を有し、画像音声送信装置10の周辺の被写体を撮像して電子的な画像情報に変換して出力する。マイク12は、画像音声送信装置10の周辺の音声を集音して電子的な音声情報に変換して出力する。メモリ13は、カメラ11から入力された画像情報の他、CPU14の動作に必要な情報を記憶する。CPU14は、画像音声送信装置10の各部を制御する。送信部15は、カメラ11から入力された画像情報及びマイク12から入力された音声情報の他、各種の信号を特定小電力無線にて送信する。特定小電力無線は、送信に要する電力を抑制できるので、電池の消耗を抑制し、その交換サイクルを長くすることができる。
【0029】
画像音声受信装置20は、受信部(受信手段)21と、メモリ22と、CPU(画像合成手段)23と、モニタ24と、スピーカ25等を備える。受信部21は、送信部15から送信された画像情報及び音声情報の他、各種の信号を受信する。メモリ22は、受信部21によって受信された画像情報の他、CPU23の動作に必要な情報を記憶する。CPU23は、画像音声受信装置20の各部を制御する。モニタ24は、受信部21によって受信された画像情報を再生する。スピーカ25は、受信部21によって受信された音声情報を再生する。
【0030】
本実施形態においては、予めカメラ11によって基準画像を撮像し、その画像情報を記憶するメモリ13及びメモリ22に記憶させる(基準画像記憶ステップ)。その後、通常の動作時には、カメラ11によって撮像された画像が入力画像としてCPU14に入力される(撮像ステップ)。そして、人物や車両等の監視対象物の画像が基準画像に対する入力画像の差分情報として抽出され(差分情報算出ステップ)、送信部15から送信される。これにより、入力画像の画像情報から背景の情報を除去して、差分情報すなわち監視対象物の画像情報を低ビットレートで送信することが可能となり、周波数帯域の狭い特定小電力無線が使用可能となる。なお、送信部15から送信された監視対象物の画像情報は、受信部21によって受信され、CPU23によってメモリ22に記憶されている基準画像と合成され、背景を含む監視対象物の画像がモニタ24によって再生される。これにより、周波数帯域の狭い特定小電力無線に対応させながら、モニタ24によって再生される画像の質を高めることができる。
【0031】
人物や車両等の監視対象物の画像の抽出は、画像情報抽出装置18によってなされる。画像情報抽出装置18は、カメラ11と、メモリ13と、CPU14等を備える。CPU14は、メモリ13に記憶された基準画像の輝度情報を空間微分して輝度勾配を算出し(勾配算出ステップ)、メモリ13に記憶させる。また、CPU14は、カメラ11から入力された入力画像の輝度情報を空間微分して輝度勾配を算出し(勾配算出ステップ)、メモリ13に記憶させた基準画像の輝度勾配と比較する(勾配比較ステップ)。
【0032】
図2(a)は、基準画像記憶ステップにおいてメモリ13に記憶させた基準画像を、図2(b)は、撮像ステップにおいてCPU14に入力される監視対象物(人物)を含む入力画像をそれぞれ示す。基準画像としては、監視対象物が存在しないときの撮像画像が記憶される。カメラ11から入力された入力画像に監視対象物が存在すると、基準画像と入力画像との間で輝度勾配に差異が生じ、監視対象物の画像が抽出される。
【0033】
図3(a)は、矩形の小領域(ブロック)に分割された基準画像を、図3(b)は、小領域に分割された入力画像を示す。基準画像及び入力画像は、輝度勾配を算出するにあたって、図3に示す小領域に分割される(画像分割ステップ)。輝度勾配の算出及び比較、並びに監視対象物の画像抽出は、基準画像及び入力画像を構成する画素よりも大きく分割された小領域毎になされる。例えば、図3は、5行×3列に分割された小領域の例を示している。小領域の大きさは、任意である。従って、小領域を構成する画素の数も変更できる。
【0034】
図4は、ある小領域(X画素×Y画素)における各画素の輝度勾配を示している。各画素の輝度勾配は、各画素毎に、輝度情報を空間微分することにより算出され、図4に示すようにベクトルで表される。ベクトル化された輝度勾配は、小領域毎にヒストグラムとして集計され比較される。
【0035】
図5(a)は、入力画像において各小領域毎に集計された輝度勾配のヒストグラムを、図5(b)は、基準画像において各小領域毎に集計された輝度勾配のヒストグラムを示している。それぞれのヒストグラムの集計にあたっては、横軸の階級として輝度勾配ベクトルの方向(輝度勾配方向)が適用され、縦軸としてベクトルの度数のみならず輝度勾配ベクトルの大きさ(輝度勾配強度)が考慮される(ヒストグラム集計ステップ)。基準画像には監視対象物が存在しないので、入力画像の輝度勾配のヒストグラムと、基準画像の輝度勾配のヒストグラムを比較し、類似度を算出することにより、入力画像において監視対象物が存在する小領域が特定できる。すなわち、監視対象物が存在しない小領域におけるヒストグラムの類似度は高く、監視対象物が存在する小領域におけるヒストグラムの類似度は低く算出されるため、類似度を所定の閾値と比較することにより、監視対象物が存在する小領域が特定される。そして、監視対象物が存在する小領域の画像データは、基準画像に対する入力画像の差分情報として抽出され、送信部15を介して送信される。
【0036】
ヒストグラムの類似度は、例えばヒストグラム間距離を算出することにより、数値化できる(類似度算出ステップ)。ヒストグラム間距離としては、ユークリッド距離、バタチャリヤ距離等が挙げられる。そして、ある小領域においてヒストグラム間距離に基づいて算出されたヒストグラムの類似度が第1閾値以上であるとき、その小領域の入力画像は基準画像と同等(すなわち背景等)であるとして、画像情報を除去する。ヒストグラムの類似度が第1閾値未満であるとき、その小領域に監視対象物が存在すると判断して、その小領域の画像情報を差分情報として抽出する。
【0037】
また、図6に示すように、ヒストグラムの類似度は、ヒストグラムの偏角θを算出することによっても、数値化できる(類似度算出ステップ)。偏角θは、基準画像のヒストグラムの傾き(基準方位)と入力画像のヒストグラムの傾き(入力方位)のなす角で算出され、偏角θが小さいほどヒストグラム類似度が高くなる。そして、ある小領域において偏角θに基づいて出されたヒストグラムの類似度が第2閾値以上であるとき、その小領域の入力画像は基準画像と同等(すなわち背景等)であるとして、画像情報を除去する。ヒストグラムの類似度が第2閾値未満であるとき、その小領域に監視対象物が存在すると判断して、その小領域の画像情報を差分情報として抽出する。なお、ヒストグラムの類似度は、ヒストグラム間距離とヒストグラムの偏角θとを両方用いて評価してもよい。
【0038】
図7は、ヒストグラムの類似度に基づいて、小領域の画像情報が除去された入力画像を示す。ヒストグラムの類似度が高い小領域は、基準画像と実質的に同等すなわち背景等であると判断され、画像情報が除去される。その結果、カメラ11からCPU14に入力された入力画像の画像情報から、監視対象物が存在する小領域の画像情報が差分情報として抽出され、送信部15を介して送信される。
【0039】
以上のように、本実施形態の画像情報抽出装置18によれば、基準画像の輝度勾配と入力画像の輝度勾配を比較して、基準画像と入力画像との類似度を算出するので、輝度の微妙な相違を無視しながら、監視対象物の画像を抽出できる。すなわち、本実施形態においては、輝度勾配に着目して基準画像と入力画像との類似度を算出するので、輝度自体に着目して基準画像と入力画像との類似度を算出する場合と比較すると、木の葉の揺れ等の微妙な輝度の変化は、抽象化されて無視される。従って、対象物の画像を抽出する際に、背景画像の微小な変動や撮像画像のノイズ成分の影響を抑制することができる。これにより、低コストかつ高精度に背景等を除去し、監視対象物の画像を抽出できるようになる。
【0040】
また、小領域毎に輝度勾配のヒストグラムを算出し、基準画像のヒストグラムと入力画像のヒストグラムの類似度に基づいて差分情報を統計的に算出するので、より高精度に背景等を除去し、監視対象物の画像に抽出できるようになる。また、ヒストグラムの類似度の算出に、ヒストグラム間距離又はヒストグラムの偏角θを用いることより、より一層高精度に背景等を除去し、監視対象物の画像に抽出できるようになる。
【0041】
また、画像情報抽出装置18によって抽出された画像情報を送信する画像音声送信装置10によれば、抽出された対象物の画像情報のみを送信するので、送信信号のビットレートを特定小電力無線で伝送可能な程度に抑制できる。また、抽出された対象物の画像情報を受信して、メモリ22に記憶している基準画像の画像情報を合成する画像受信装置20によれば、カメラ11によって撮像され、CPU14に入力された入力画像と同等画質の画像をモニタ24に表示できる。そして、画像音声送信装置10と画像受信装置20を適用することにより、無線画像音声伝送システム1におけるモニタ画質の低下を抑制しつつ、特定小電力無線に対応できるように低ビットレート化を図ることができる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られない。少なくとも背景等を撮像した基準画像の輝度情報を空間微分して算出した輝度勾配と、カメラ11から入力された入力画像の輝度情報を空間微分して算出した輝度勾配を比較する。そして、基準画像と入力画像との差分情報を算出し、対象物の画像を抽出するように構成されていればよい。
【0043】
また、本発明は種々の変形が可能である。例えば、基準画像に対する入力画像の差分情報を抽出するにあたっては、基準画像及び入力画像のR(赤)G(緑)B(青)各値の勾配を各色毎に個別に算出し、比較してもよい。この場合、基準画像及び入力画像について、RGB各値の勾配に関するヒストグラムが算出され、それらの類似度が算出されて所定の閾値と比較される。また、RGB各値の勾配と上述した輝度勾配とを組み合わせて、基準画像に対する入力画像の差分情報を抽出してもよい。また、特定色について類似度の感度を変えたい場合は、RGBのうち特定色の値の勾配を偏重して評価してもよい。
【0044】
また、基準画像及び入力画像が分割されて生成される小領域の大きさは、可変としてもよい。小領域を大きく設定することにより、CPU14の処理時間を短縮できる。小領域を小さく設定することにより、監視対象物の輪郭に近づけて小領域を抽出することが可能となり、画像情報の送信に必要なビットレートをより一層抑制できる。
【0045】
また、図8に示すように、小領域の形状は、可変であってもよい。この場合、各小領域の間に隙間が生じないように小領域の形状を定めることにより、基準画像及び入力画像はもれなく分割される。図9に示すように、小領域の形状は、矩形に限られることなく、任意の形状とすることができる。このように、小領域の形状を変更可能とすることにより、監視対象物に応じて小領域を設定できる。これにより、CPU14の負荷を抑制しつつ、監視対象物の輪郭に近づけて小領域を抽出することが可能となり、画像情報の送信に必要なビットレートをより一層抑制できる。
【0046】
輝度勾配の類似度と比較される第1閾値及び/又は第2閾値は、画像に応じて自動的に調整されるように構成されていてもよい。また、この第1閾値及び/又は第2閾値は、ユーザによって任意に設定可能に構成されていてもよい。例えば、監視対象物として抽出される領域が、送信帯域に対して相対的に大きくなると、画像情報を適正に送信できなくなる虞が生ずる場合がある。そこで、背景等として画像情報を除去する領域(監視対象物として抽出される領域以外の領域)を大きくするために、各閾値を小さく設定すればよい。これにより、通信環境等に応じて送信する画像情報を適正化できる。
【0047】
また、カメラ11、マイク12は、画像情報抽出装置18(画像音声送信装置10)の外部に設けられる形態であってもよい。また、無線画像音声伝送システム1は、ホームセキュリティの用途に限られることなく、オフィスや工場のセキュリティの用途に適用してもよい。また、画像音声送信装置10等の施工の容易さを考慮すると、画像音声送信装置10と画像音声受信装置20とは、無線にて通信できる形態が最も望ましいが、両者が通信線を介して有線にて通信するように構成されていてもよい。この場合においても、画像信号の送信に必要とされるビットレートを低減できるので、狭い周波数帯域での通信が可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 無線画像音声伝送システム(画像伝送システム)
10 画像音声送信装置(画像送信装置)
11 カメラ(撮像手段)
13 メモリ(記憶手段)
14 CPU(勾配算出手段、差分算出手段)
15 送信部(送信手段)
18 画像情報抽出装置
20 画像音声受信装置(画像受信装置)
21 受信部(受信手段)
22 メモリ
23 CPU(画像合成手段)
24 モニタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準画像の輝度情報を空間微分して算出した輝度勾配と、入力された入力画像の輝度情報を空間微分して算出した輝度勾配を比較して、前記基準画像と前記入力画像との差分情報を算出し、対象物の画像を抽出することを特徴とする画像情報抽出装置。
【請求項2】
撮像手段から予め入力された基準画像の画像情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された基準画像の画像情報及び前記撮像手段からその後に入力された入力画像の画像情報を空間微分して、基準画像及び入力画像の輝度勾配を算出する勾配算出手段と、
前記勾配算出手段によって算出された基準画像の輝度勾配と入力画像の輝度勾配を比較して、基準画像と入力画像との差分情報を算出する差分算出手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像情報抽出装置。
【請求項3】
RGB各値の勾配を各色毎に個別に算出し、基準画像と入力画像との差分情報を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像情報抽出装置。
【請求項4】
基準画像及び入力画像を構成する画素よりも大きな小領域に、基準画像及び入力画像を分割し、
各小領域毎に輝度勾配のヒストグラムを算出し、
前記基準画像のヒストグラムと入力画像のヒストグラムの類似度に基づいて差分情報を算出することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像情報抽出装置。
【請求項5】
前記小領域の大きさは、可変であることを特徴とする請求項4に記載の画像情報抽出装置。
【請求項6】
前記小領域の形状は、可変であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の画像情報送信装置。
【請求項7】
前記ヒストグラムの類似度は、ヒストグラム間距離に基づいて算出され、その類似度が第1閾値未満であるとき、その小領域の入力画像の画像情報を差分情報とすることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の画像情報抽出装置。
【請求項8】
前記ヒストグラムの類似度は、ヒストグラムの偏角に基づいて算出され、その類似度が第2閾値未満であるとき、その小領域の入力画像の画像情報を差分情報とすることを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれか一項に記載の画像情報抽出装置。
【請求項9】
前記第1閾値及び/又は第2閾値は、画像に応じて自動的に調整されることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の画像情報抽出装置。
【請求項10】
前記第1閾値及び/又は第2閾値は、ユーザによって任意に設定可能であることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の画像情報抽出装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の画像情報抽出装置と、
前記画像情報抽出装置によって抽出された画像情報を送信する送信手段とを備えたことを特徴とする画像送信装置。
【請求項12】
前記送信手段によって送信された画像情報を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された画像情報と前記基準画像の画像情報を合成する画像合成手段と、
前記画像合成手段によって合成された画像情報を表示するモニタとを備えたことを特徴とする画像受信装置。
【請求項13】
請求項11に記載の画像送信装置と、請求項12に記載の画像受信装置とを備えたことを特徴とする画像伝送システム。
【請求項1】
基準画像の輝度情報を空間微分して算出した輝度勾配と、入力された入力画像の輝度情報を空間微分して算出した輝度勾配を比較して、前記基準画像と前記入力画像との差分情報を算出し、対象物の画像を抽出することを特徴とする画像情報抽出装置。
【請求項2】
撮像手段から予め入力された基準画像の画像情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された基準画像の画像情報及び前記撮像手段からその後に入力された入力画像の画像情報を空間微分して、基準画像及び入力画像の輝度勾配を算出する勾配算出手段と、
前記勾配算出手段によって算出された基準画像の輝度勾配と入力画像の輝度勾配を比較して、基準画像と入力画像との差分情報を算出する差分算出手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像情報抽出装置。
【請求項3】
RGB各値の勾配を各色毎に個別に算出し、基準画像と入力画像との差分情報を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像情報抽出装置。
【請求項4】
基準画像及び入力画像を構成する画素よりも大きな小領域に、基準画像及び入力画像を分割し、
各小領域毎に輝度勾配のヒストグラムを算出し、
前記基準画像のヒストグラムと入力画像のヒストグラムの類似度に基づいて差分情報を算出することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像情報抽出装置。
【請求項5】
前記小領域の大きさは、可変であることを特徴とする請求項4に記載の画像情報抽出装置。
【請求項6】
前記小領域の形状は、可変であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の画像情報送信装置。
【請求項7】
前記ヒストグラムの類似度は、ヒストグラム間距離に基づいて算出され、その類似度が第1閾値未満であるとき、その小領域の入力画像の画像情報を差分情報とすることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の画像情報抽出装置。
【請求項8】
前記ヒストグラムの類似度は、ヒストグラムの偏角に基づいて算出され、その類似度が第2閾値未満であるとき、その小領域の入力画像の画像情報を差分情報とすることを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれか一項に記載の画像情報抽出装置。
【請求項9】
前記第1閾値及び/又は第2閾値は、画像に応じて自動的に調整されることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の画像情報抽出装置。
【請求項10】
前記第1閾値及び/又は第2閾値は、ユーザによって任意に設定可能であることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の画像情報抽出装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の画像情報抽出装置と、
前記画像情報抽出装置によって抽出された画像情報を送信する送信手段とを備えたことを特徴とする画像送信装置。
【請求項12】
前記送信手段によって送信された画像情報を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された画像情報と前記基準画像の画像情報を合成する画像合成手段と、
前記画像合成手段によって合成された画像情報を表示するモニタとを備えたことを特徴とする画像受信装置。
【請求項13】
請求項11に記載の画像送信装置と、請求項12に記載の画像受信装置とを備えたことを特徴とする画像伝送システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図7】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図7】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−70129(P2013−70129A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205530(P2011−205530)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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