説明

画像投影装置

【課題】発光する波長帯域が完全に一致する補助光源を使用しても、主光源から出射された照明光の損失を可能な限り低減した、画像投影装置を提供する。
【解決手段】主光源1から出射された主の照明光と、補助光源19から出射された副の照明光は第1の波長分離素子5によって合成される。第1の波長分離素子5は、第1の領域20の中に特性の異なる第2の領域21を備えることを特徴とし、主光源1から出射された主の照明光は第1の領域20を反射または透過し、補助光源19から出射された副の照明光は第2の領域21を透過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助光源を備えた画像投影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、白色光源を使用する画像投影装置において、光源の特性上ホワイトバランスをとるために不足する発光を補助光源で補う技術がある。
【0003】
均一な照明を得る為には、主光源からの照明光と補助光源からの照明光とを合成する必要があるが、従来この部分には光学薄膜の波長選択特性を利用する方法で合成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2002−296680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記従来の構成では、主光源と補助光源の発光する波長帯域が完全に異ならない限り、主光源の補助光源と同一波長帯域の光が利用できないため、補助光源を高出力で使用しなければいけないという課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、補助光源を備えた画像投影装置における主光源の照明光と補助光源の照明光の合成効率の改善を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明は、前記光源が白色である所定の発光スペクトルにより、主の照明光を出射する主光源と、前記主の照明光とは異なる発光スペクトルにより、前記主の照明光の発光スペクトルにて光量的に不足している波長領域を補う為の副の照明光を出射する補助光源と、前記主の照明光を反射または透過する領域を、前記副の照明光を透過または反射する領域よりも広く制限した波長分離素子を備えることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の補助光源を備えた画像投影装置によれば、主光源からの照明光は補助光源からの照明光を透過または反射させる極めて狭い領域のみで損失を生じ、両光源からの照明光を効率よく合成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の補助光源を備えた画像投影装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0009】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における補助光源を備えた画像投影装置の構成を示す。
【0010】
図1において主光源1は高周波で駆動する無電極ランプであり、光学変調素子13を照射する白色光を出射する。また、補助光源19は半導体励起によって発振するレーザー光源であり、光学変調素子13を照射する中心波長が400nm〜480nmにあることを特徴とした青色光を出射する。前記白色光は、可視光波長域のみ利用され、その中でも特に青色光波長域(445nm〜465nm)は他の波長域に比べて光量が不足気味である。そのため、補助光源19は中心波長が前記青色光波長域内にあるようなレーザー光源を利用している。また、この補助光源19は狭帯域発光を行なう発光ダイオード光源にも置き換えることができる。
可視光とは、電磁波のうち、人間の目で見える波長のものであり、可視光に相当する電磁波の波長は、おおよそ短波長側が360nm〜400nm、長波長側が760nm〜830nmである。
【0011】
図1において光学変調素子13は、各色(赤色、緑色、青色)光を映像信号に応じて電気的に変調する透過型の液晶表示素子である。透過型液晶素子は投影表示される映像を所望のものとするため、入射側偏光板12および出射側偏光板14とセットで利用されるのが一般的であり、必要な直線偏光(成分)が出射側偏光板14により透過され、不要な直線偏光(成分)が出射側偏光板14に吸収されるように、照射された照明光を映像信号に基づいて変調する。
【0012】
図1においてインテグレータレンズ2は、一対のレンズ群(複眼レンズ)から構成されており、前記白色光に存在する照度分布を平均化し、光学変調素子13の全面を均一に照明するための主の照明光を生成する。また、ロッドインテグレータ18も同様に、前記青色光に存在する照度分布を平均化し、光学変調素子13の全面を均一に照明する副の照明光を生成する。レンズ群17は前記副の照明光を第1の波長分離素子5へ集光させ、その後光学変調素子13の全面に均一に照射させるように光を導く設計がなされている。
【0013】
図1において偏光変換素子3は、主光源1から出射された様々な振動方向(ランダム偏光)の光の90%以上を特定の振動方向(直線偏光)に揃える働きを持つ。
【0014】
図1において第1の波長分離素子5は、第1の領域20の中に特性の異なる第2の領域21を備える。第1の領域20は青色光(430nm〜500nm)を反射し、黄色光(500nm〜700nm)を透過させる特性を備え、第2の領域21は青色光(445nm〜455nm)を透過し、黄色光(500nm〜700nm)も透過させる特性を持つ。
【0015】
また、前記第2の領域21の有効面積は、前記第1の領域20の有効面積の約10%とすることで、前記主の照明光の反射損失を大きく抑えることが出来る。
【0016】
前記主の照明光は偏光変換素子3によってランダム偏光からP偏光(入射平面に平行な直線偏光)に変換された後、コンデンサーレンズ4を経て第1の波長分離素子5へ照射され、前記副の照明光はレンズ群17を経てP偏光(補助光源19は直線偏光の光を出射する)として第1の波長分離素子5へ照射される。
【0017】
第1の波長分離素子5に入射した前記主の照明光の青色光成分(430nm〜500nm)は、第1の領域20によって反射され、全反射ミラー7により光路を変更された後、青色光用入射側偏光板10bを経て青色光用光学変調素子13bに照射される。また、第1の波長分離素子5に入射した前記副の照明光は、第2の領域21を透過し、第1の領域20によって反射された前記主の照明光と同一光路を経て、青色用光学変調素子13bに照射される。
【0018】
一方、第1の波長分離素子5を透過した前記主の照明光の黄色光成分(500nm〜700nm)は、緑色光(520nm〜580nm)を反射し、赤色光(600nm〜700nm)を透過する第2の波長分離素子6へ照射される。
【0019】
第2の波長分離素子6により反射された前記主の照明光の緑色光成分(520nm〜580nm)は、緑色光用入射側偏光板10gを経て緑色光用光学変調素子13gに照射し、これを透過することにより光変調される。また、第2の波長分離素子6を透過した前記主の照明光の赤色光成分(600nm〜700nm)は、リレーレンズ9、全反射ミラー8、および赤色光用入射側偏光板10rを経て赤色光用光学変調素子13rに照射し、これを透過することにより光変調される。
【0020】
ここで、前記光学変調素子13r、13g、13bによって光変調された前記主の照明光および前記副の照明光は、各色光用出射側偏光板を経てダイクロイックプリズム15でカラー映像光として光合成される、投射レンズ16によってスクリーンへ投影される。
【0021】
以上のように実施の形態1においては、第1の波長分離素子5における第2の領域21の範囲を限定することで前記主の照明光を効率良く使用することができ、補助光源の出力を極力抑えて使用することができる。
【0022】
また、補助光源を複数個で使用している場合には、数量を減らすことにより光学系が簡略化され、コストダウンを行なう事ができる。
【0023】
図2は本発明の第1の実施の形態における第1の波長分離素子の平面構成図を示す。
図3は図2における第1の領域の特性を説明する図を示す。
【0024】
図4は図2における第2の領域の特性を説明する図を示す。
【0025】
図5は本発明の実施の形態1における主光源1の発光スペクトルを説明する図を示す。
【0026】
図6は本発明の実施の形態1における補助光源19の発光スペクトルを説明する図を示す。
【0027】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2における補助光源を備えた画像投影装置の構成を示す。
【0028】
図7において実施の形態1の構成と異なるところは、前記主光源1を主光源22に置き換えた点である。ここで主光源22は超高圧水銀ランプであり、光学変調素子13を照射する白色光を出射する。前記白色光は、前記主光源1同様に可視光波長域のみ利用され、その中でも特に赤色光波長域(600nm〜780nm)の光量が不足気味である。このため、補助光源25は中心波長が600nm〜750nmであることを特徴とした赤色光を発振するレーザー光源(または発光ダイオード光源)を使用する。
【0029】
図7において第1の波長分離素子23は、第1の領域26の中に特性の異なる第2の領域27を備える。第1の領域26は赤色光(580nm〜700nm)を反射し、シアン色光(434nm〜580nm)を透過させる特性を備え、第2の領域27は赤色光(600nm〜700nm)を透過し、シアン色光(434nm〜580nm)も透過させる特性を持つ。
【0030】
図7において第2の波長分離素子24は、緑色光(515nm〜580nm)を反射し、青色光(434nm〜515nm)を透過する特性を備える。
(省略 以下、実施の形態1の記載方法と同様とする)
図8は本発明の実施の形態における画像投影装置を利用した、リアプロジェクションディスプレイの概略構成図を示す。
【0031】
図9は本発明の実施の形態における画像投影装置を利用した、フロントプロジェクタの概略構成図を示す。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明にかかる補助光源を備えた画像投影装置は、2種類以上の光源から照射される照明光の中で、所定の波長帯域を効率良く合成する波長分離素子(ダイクロイックミラー等)を用いた構造を有し、2種類以上の光源の照明光を分離または合成する技術等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態1における補助光源を備えた画像投影装置の概略構成図
【図2】本発明の実施の形態1における第1の波長分離素子の平面図
【図3】図2における第1の領域の特性を説明する図
【図4】図2における第2の領域の特性を説明する図
【図5】本発明の実施の形態1における主光源1の発光スペクトルを説明する図
【図6】本発明の実施の形態1における補助光源19の発光スペクトルを説明する図
【図7】本発明の実施の形態2における補助光源を備えた画像投影装置の概略構成図
【図8】本発明の実施の形態における画像投影装置を利用した、リアプロジェクションディスプレイの概略構成図
【図9】本発明の実施の形態における画像投影装置を利用した、フロントプロジェクタの概略構成図
【符号の説明】
【0034】
1 主光源(無電極ランプ)
2 インテグレータレンズ
3 偏光変換素子(P/Sコンバータ)
4 コンデンサーレンズ
5 第1の波長分離素子
6 第2の波長分離素子
7 、8 全反射ミラー
9 リレーレンズ
10r、10g、10b フィールドレンズ(r:赤色、g:緑色、b:青色)
11r、11g、11b トリミングフィルター(r:赤色、g:緑色、b:青色)
12r、12g、12b 入射側偏光板(r:赤色、g:緑色、b:青色)
13r、13g、13b 光学変調素子(r:赤色、g:緑色、b:青色)
14r、14g、14b 出射側偏光板(r:赤色、g:緑色、b:青色)
15 ダイクロイックプリズム
16 投射レンズ
17 レンズ群
18 照明光学系
19 補助光源(青紫色レーザー光源)
20 第1の領域
21 第2の領域
22 主光源(超高圧水銀ランプ)
23 第1の波長分離素子
24 第2の波長分離素子
25 補助光源(赤色レーザー光源)
26 第1の領域
27 第2の領域
28 背面投射型画像投影装置
29 背面ミラー
30 透過型スクリーン
31 画像投影装置
32 反射型スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の白色光源と、前記白色光源から出射された照明光を映像信号に基づいて変調する光学変調素子と、前記光学変調素子によって変調された光を拡大投影する投射レンズと、を備えた画像投影装置において、前記光源が白色である所定の発光スペクトルにより、主の照明光を出射する主光源と、前記主の照明光とは異なる発光スペクトルにより、前記主の照明光の発光スペクトルにて光量的に不足している波長領域を補う為の副の照明光を出射する補助光源と、前記主の照明光を反射または透過する領域を、前記副の照明光を透過または反射する領域よりも広く制限した波長分離素子と、を備えることを特徴とした画像投影装置。
【請求項2】
前記主光源が高周波で駆動される無電極ランプであり、前記補助光源が、所定の狭帯域発光スペクトルにより副の照明光を出射することを特徴とする請求項1に記載の画像投影装置。
【請求項3】
前記主光源が、可視光の範囲で、波長500[nm]以下に吸収線(暗線)をもつことを特徴とする請求項2に記載の画像投影装置。
【請求項4】
前記主光源が、波長445[nm]〜465[nm]に吸収線(暗線)をもつことを特徴とする請求項2に記載の画像投影装置。
【請求項5】
前記副の照明光の中心波長が可視光の範囲で500[nm]以下であることを特徴とする請求項2に記載の画像投影装置。
【請求項6】
前記副の照明光の中心波長が400[nm]〜480[nm]であることを特徴とする請求項2に記載の画像投影装置。
【請求項7】
前記主光源が超高圧水銀ランプであり、前記補助光源が、所定の狭帯域発光スペクトルにより副の照明光を出射することを特徴とする請求項1に記載の画像投影装置。
【請求項8】
前記副の照明光の中心波長が可視光の範囲で600[nm]以上であることを特徴とする請求項7に記載の画像投影装置。
【請求項9】
前記副の照明光の中心波長が600[nm]〜750[nm]であることを特徴とする請求項7に記載の画像投影装置。
【請求項10】
前記補助光源が、レーザー光源または発光ダイオード光源であることを特徴とする請求項2、請求項7に記載の画像投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−198630(P2009−198630A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38257(P2008−38257)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】