説明

画像表示装置、信号処理装置、および画像表示方法、並びにコンピュータ・プログラム

【課題】IP変換を伴う表示データ生成処理において、ブランキング区間のデータを劣化なく表示可能とした装置および方法を実現する。
【解決手段】インタレース信号に含まれるブランキング区間をプログレッシブ信号に変換する際、インタレース信号に含まれない補間フィールドの画素値をインタレース信号に含まれるデータのコピー値または黒画素値として設定するIP変換処理を実行する。例えば補間フィールドをカレントラインの繰り返しラインとして設定するラインリピート方式、補間フィールドを黒画素ラインとして設定する擬似インタレース方式などにより、一般的な補間処理によって生成される擬似画素を含まないプログレッシブデータを生成し、ブランキング区間データを確認可能な表示データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置、信号処理装置、および画像表示方法、並びにコンピュータ・プログラムに関する。さらに、詳細には、ブランキング区間の表示を行なう構成において、インタレース信号をプログレッシブ信号に変換するIP変換処理におけるブランキング区間データの劣化を防止し確実なデータ表示を可能とした画像表示装置、信号処理装置、および画像表示方法、並びにコンピュータ・プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)や有機EL等を利用したフラットパネルディスプレイ(FPD)を利用した表示処理では、点順次インパルス駆動であるCRTと異なり面ホールド表示による表示を行う。すなわち、例えば一般的なフレーム周波数60Hzで動作する場合、1つのフレームの表示期間(1/60sec=16.7msec)毎にディスプレイ面全体で同一の画像をホールドする面ホールド型の表示を行なう。
【0003】
しかし、画像表示に適用するコンテンツや放送信号の多くは、CRT対応のインタレース方式に従った画像データとして生成されている。すなわち、CRTの水平走査線に表示する1つの画像を2フィールドで構成し、まず、最初のフィールドで画面の上から1本おきに水平走査線を走査して下端に至った後、再度、上から、走査されていない1本おきの走査線を次フィールドで走査する処理によって1フレーム対応の画像表示を行なうインタレース方式の画像コンテンツである。
【0004】
LCD等、面ホールド型の表示を行なう表示装置において、このようなインタレース方式の画像コンテンツの表示を行なうと、各表示フレームにおいて、表示画像信号が存在するラインと存在しないラインが交互に発生しフリッカが目立ち、かつ輝度が半減するという問題を発生させる。この問題を解決するため、インタレース信号をプログレッシブ信号に変換して表示する処理が行われる。インタレース信号をプログレッシブ信号に変換する処理はIP変換と呼ばれる。
【0005】
画面の上から1本おきに水平走査線を走査する処理をインタレース方式と呼び、画面を構成する複数本の水平走査線(水平表示ライン)を1本ずつ順番に走査する方式をプログレッシブ方式(順次走査方式)と呼ぶ。プログレッシブ方式では、全てのラインに対応する画素信号が提供されることになる。
【0006】
インタレース方式の信号をプログレッシブ信号に変換するIP変換においては、インタレース信号に含まれる信号の無いラインの信号を補間処理によって生成する。この補間処理によって生成した擬似的な信号を適用してインタレース信号をプログレッシブ信号として全ての画素に信号を含むプログレッシブ信号として表示が実行される。なお、IP変換処理については、例えば特許文献1に記載されている。
【0007】
しかしながら、インタレース信号をプログレッシブ信号に変換するIP変換を行うと、オリジナルのインタレース信号に含まれていたH/V Blanking区間、すなわち、映像信号の各水平ラインの切り替え区間である水平ブランキング区間、およびフレームまたはフィールドの切り替え区間である垂直ブランキング区間の信号の劣化が発生する。すなわち、これらのブランキング区間の信号に対しても、映像信号区間と同様の処理、すなわち補間処理などの信号処理が実行されてしまい信号の劣化が発生する。
【0008】
ブランキング区間には、音声データや、コンテンツの属性情報などのメタデータなどの補助信号が記録されている。一般ユーザがこれらのブランキング区間の信号をディスプレイに表示して確認することは少ないが、コンテンツの制作者や編集者は、これらのブランキング区間の信号が存在していることを確認するために、業務用モニタに映像コンテンツに併せて表示させたいという要請がある。
【0009】
すなわち、業務用モニタでは、映像信号だけでなく、インタレース信号のH/VBlanking区間に重畳されている音声情報やメタデータなどの補助信号が存在していることの確認を行なうことが要請される。従来のCRT方式のモニタでは、Under−Scan/HV delayなど、表示タイミングや位置を変更する処理を行なうのみで、ブランキング区間の信号をCRT上に表示することが可能となり、補助信号のモニタ表示に対する特別な処理は必要としていなかった。
【0010】
しかしながら、面ホールド型(固定画素方式)のモニタでは、上述したように、入力信号がインタレース信号方式の場合、インタレース信号をプログレッシブ信号に変換するIP変換を行うことになり、上述の補間処理をブランキング区間の信号に対して実行すると、信号劣化が発生しモニタ上での確認が困難になるという問題が発生する。
【特許文献1】特開平8−221039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、インタレース信号をプログレッシブ信号に変換するIP変換処理を実行してもブランキング区間の重畳信号の劣化を防止することを可能としたものであり、ブランキング区間に記録されたデータの劣化を発生させることなく表示装置に表示して確実な確認を可能とする画像表示装置、信号処理装置、および画像表示方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の側面は、
インタレース信号に含まれるブランキング区間のデータ表示処理を実行する画像表示装置であり、
インタレース信号に含まれる映像データ記録区間であるアクティブ区間をプログレッシブ信号に変換するアクティブ区間IP変換部と、
インタレース信号に含まれるブランキング区間をプログレッシブ信号に変換するブランキング区間IP変換部と、
前記アクティブ区間IP変換部において生成されたアクティブ区間対応プログレッシブ信号と、前記ブランキング区間IP変換部において生成されたブランキング区間対応プログレッシブ信号を入力し、アクティブ区間およびブランキング区間双方のプログレッシブ信号を含む表示データを生成して出力するマルチプレクサと、
前記マルチプレクサの出力を表示する表示部とを有し、
前記ブランキング区間IP変換部は、
インタレース信号の各フィールドデータに含まれない補間フィールドの画素値をインタレース信号に含まれるデータのコピー値または黒画素値として設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする画像表示装置にある。
【0013】
さらに、本発明の画像表示装置の一実施態様において、前記ブランキング区間IP変換部は、現行フィールドに隣接する補間フィールドに現行フィールドを繰り返して設定するラインリピート方式に従ったIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の画像表示装置の一実施態様において、前記ブランキング区間IP変換部は、現行フィールドに隣接する補間フィールドに黒画素を設定する擬似インタレース方式に従ったIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の画像表示装置の一実施態様において、前記ブランキング区間IP変換部は、現行フィールドに隣接する補間フィールドに、先行フィールドのデータを設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の画像表示装置の一実施態様において、前記ブランキング区間IP変換部は、現行フィールドに隣接する補間フィールドに、現行フィールドと同一フレームの異なるフィールドのデータを設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明の第2の側面は、
インタレース信号に含まれる映像データ記録区間であるアクティブ区間をプログレッシブ信号に変換するアクティブ区間IP変換部と、
インタレース信号に含まれるブランキング区間をプログレッシブ信号に変換するブランキング区間IP変換部と、
前記アクティブ区間IP変換部において生成されたアクティブ区間対応プログレッシブ信号と、前記ブランキング区間IP変換部において生成されたブランキング区間対応プログレッシブ信号を入力し、アクティブ区間およびブランキング区間双方のプログレッシブ信号を含む表示データを生成して出力するマルチプレクサとを有し、
前記ブランキング区間IP変換部は、
インタレース信号の各フィールドデータに含まれない補間フィールドの画素値をインタレース信号に含まれるデータのコピー値または黒画素値として設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする信号処理装置にある。
【0018】
さらに、本発明の信号処理装置の一実施態様において、前記ブランキング区間IP変換部は、現行フィールドに隣接する補間フィールドに現行フィールドを繰り返して設定するラインリピート方式に従ったIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明の信号処理装置の一実施態様において、前記ブランキング区間IP変換部は、現行フィールドに隣接する補間フィールドに黒画素を設定する擬似インタレース方式に従ったIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明の信号処理装置の一実施態様において、前記ブランキング区間IP変換部は、現行フィールドに隣接する補間フィールドに、先行フィールドのデータを設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明の信号処理装置の一実施態様において、前記ブランキング区間IP変換部は、現行フィールドに隣接する補間フィールドに、現行フィールドと同一フレームの異なるフィールドのデータを設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする。
【0022】
さらに、本発明の第3の側面は、
画像表示装置において、インタレース信号に含まれるブランキング区間のデータ表示処理を実行する画像表示方法であり、
アクティブ区間IP変換部において、インタレース信号に含まれる映像データ記録区間であるアクティブ区間をプログレッシブ信号に変換するアクティブ区間IP変換ステップと、
ブランキング区間IP変換部において、インタレース信号に含まれるブランキング区間をプログレッシブ信号に変換するブランキング区間IP変換ステップと、
マルチプレクサにおいて、前記アクティブ区間IP変換部において生成されたアクティブ区間対応プログレッシブ信号と、前記ブランキング区間IP変換部において生成されたブランキング区間対応プログレッシブ信号を入力し、アクティブ区間およびブランキング区間双方のプログレッシブ信号を含む表示データを生成して出力する出力データ生成ステップと、
表示部において、前記マルチプレクサの出力を表示する表示ステップとを有し、
前記ブランキング区間IP変換ステップは、
インタレース信号の各フィールドデータに含まれない補間フィールドの画素値をインタレース信号に含まれるデータのコピー値または黒画素値として設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成するステップであることを特徴とする画像表示方法にある。
【0023】
さらに、本発明の第4の側面は、
画像表示装置において、インタレース信号に含まれるブランキング区間のデータ表示処理を実行させるコンピューヌ・プログラムであり、
アクティブ区間IP変換部において、インタレース信号に含まれる映像データ記録区間であるアクティブ区間をプログレッシブ信号に変換させるアクティブ区間IP変換ステップと、
ブランキング区間IP変換部において、インタレース信号に含まれるブランキング区間をプログレッシブ信号に変換させるブランキング区間IP変換ステップと、
マルチプレクサにおいて、前記アクティブ区間IP変換部において生成されたアクティブ区間対応プログレッシブ信号と、前記ブランキング区間IP変換部において生成されたブランキング区間対応プログレッシブ信号を入力し、アクティブ区間およびブランキング区間双方のプログレッシブ信号を含む表示データを生成して出力させる出力データ生成ステップと、
表示部において、前記マルチプレクサの出力を表示させる表示ステップとを有し、
前記ブランキング区間IP変換ステップは、
インタレース信号の各フィールドデータに含まれない補間フィールドの画素値をインタレース信号に含まれるデータのコピー値または黒画素値として設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成させるステップであることを特徴とするコンピュータ・プログラムにある。
【0024】
なお、本発明のコンピュータ・プログラムは、例えば、様々なプログラム・コードを実行可能な汎用コンピュータ・システムに対して、コンピュータ可読な形式で提供する記憶媒体、通信媒体、例えば、CDやFD、MOなどの記憶媒体、あるいは、ネットワークなどの通信媒体によって提供可能なコンピュータ・プログラムである。このようなプログラムをコンピュータ可読な形式で提供することにより、コンピュータ・システム上でプログラムに応じた処理が実現される。
【0025】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施例や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。なお、本明細書においてシステムとは、複数の装置の論理的集合構成であり、各構成の装置が同一筐体内にあるものには限らない。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一実施例の構成によれば、インタレース信号に含まれるブランキング区間のデータ表示処理を実行する画像表示処理において、インタレース信号に含まれるブランキング区間をプログレッシブ信号に変換する際、補間フィールドの画素値をインタレース信号に含まれるデータのコピー値または黒画素値として設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する。具体的には、
1.補間フィールドをカレントラインの繰り返しラインとして設定するラインリピート方式、
2.補間フィールドを黒画素ラインとして設定する擬似インタレース方式、
3.補間フィールドをカレントラインの前のフィールドのラインデータを適用して設定するフィールドユニット方式、
4.補間フィールドをカレントラインと同一フレームの他のフィールドのラインデータを適用して設定するフレームユニット方式、
これらのいずれかの方式に従ったIP変換を実行することで、擬似的な画素値を含まないオリジナルのインタレース信号のみ、あるいはオリジナルのインタレース信号と黒画素のみからなるプログレッシブ信号を生成して出力する構成としたので、IP変換後のブランキング信号区間の表示データに擬似画素が含まれることがなく、確実なブランキング区間データの確認が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の画像表示装置、信号処理装置、および画像処理方法、並びにコンピュータ・プログラムの詳細について説明する。説明は以下の項目
に従って行なう。
1.IP変換について
2.ブランキング信号の表示処理について
3.本発明の装置構成および処理の詳細
【0028】
[1.IP変換について]
まず、最初に、一般的なIP変換処理の概要について説明する。先に説明したように、1本おきに水平走査線を走査するインタレース方式の画像を、例えば液晶ディスプレイなどの面ホールド型の表示装置に表示する場合、画像信号のないラインの画素値を補間処理によって決定して全ライン表示としたプログレッシブ方式に変換するIP変換が実行される。
【0029】
図1は、一般的なIP変換処理構成を示す図である。図1(A)はIP変換前のインタレース方式の出力例を示している。左から時間t0〜t4の出力画素ラインを示している。例えば、時間t0において、表示部51の1つのラインおきに画素値の出力が実行され、次の時間t1において、時間t0で画素値出力を行わなかったラインの画素値出力が実行される。
【0030】
時間t0に出力されるインタレース信号が第1フィールド信号に対応し、時間t1に出力されるインタレース信号が第2フィールド信号に対応し、この2つのフィールド信号によって1フレームが形成されることになる。
【0031】
このインタレース信号を、面ホールド型表示を行なう表示部に表示すると、前述したように、表示画像信号が存在するラインと存在しないラインが交互に発生しフリッカが目立ち、かつ輝度が半減するという問題を発生させる。この問題を解決するため、インタレース信号をプログレッシブ信号に変換するIP変換が実行される。
【0032】
IP変換後の画像が図1(B)に示す画像である。図1(B)に示すように、元々の表示画像信号が存在するオリジナルライン61と、元々の表示画像信号が存在しない補間ライン62が同一時間の表示画像においては、垂直に1つおきに交互に配置され、時間軸方向にも1つおきに配置された構成となる。
【0033】
一般的なIP変換の方式について、図2を参照して説明する。IP変換の方式としては、図2に示す様に、時間方向における前後のフレームのラインから補間を行うフレーム間補間と、同一フレームの上下のラインから補間を行う面内補間があり、その切り替え、または配分を画像特徴に応じてリアルタイムに切り替える方法が一般的である。具体的には、動き情報を取得して、その配分比率を変更する処理などによって、補間画素の画素値を決定する。
【0034】
補間画素の画素値は、このように時間方向または、面方向にある画素の画素値に基づいて、例えば周囲画素の画素値平均を算出して設定する方法がとられる。しかし、この補間処理によって決定される画素値は、インタレース画像の内容によっては、実際の画像に対応する画素値とは異なる画素値が設定されてしまう場合が発生し、画質を劣化させる要因ともなっている。
【0035】
このような補間処理によって生成される画素の画素値はあくまでも面方向または時間方向の周囲画素に基づいて推定された画素値であり擬似的な画素である。従って、視聴者は、擬似的な画素値によって改変されたコンテンツを見ることになり、忠実なオリジナルコンテンツの再生を望むユーザにとっては迷惑となってしまうことがある。
【0036】
さらに、ブランキング区間のデータについて、このような補間処理を行なってデータ表示を行なうと、意味のない擬似画素が生成されて表示されることになり、ブランキング区間に含まれる音声データや、コンテンツの属性情報などのメタデータなどの補助信号が劣化してしまい、表示データとしての確認が困難な状況になるという問題を発生させる。
【0037】
[2.ブランキング信号の表示処理について]
次に、ブランキング信号の表示処理構成について説明する。前述したように、インタレース信号中のブランキング区間には、音声データや、コンテンツの属性情報などのメタデータなどの補助信号が記録されている。一般ユーザがこれらのブランキング区間の信号をディスプレイに表示して確認することは少ないが、コンテンツの制作者や編集者は、これらのブランキング区間の信号が存在していることを確認するために、業務用モニタに映像コンテンツに併せて表示させたいという要請がある。
【0038】
すなわち、業務用モニタでは、映像信号だけでなく、インタレース信号のH/VBlanking区間に重畳されている音声情報やメタデータなどの補助信号が存在していることの確認を行なうことが要請される場合がある。このような場合、業務用モニタに映像コンテンツに併せてブランキング区間の信号の表示を行なう。ブランキング信号の表示態様には複数の態様がある。図3〜図6を参照して主要なブランキング区間信号の表示態様について説明する。
【0039】
図3は、ブランキング信号を表示しない映像信号のみの一般的な表示処理態様を示している。図3(a)は、入力インタレース信号であり、先に説明したように、1フレームデータを構成する第1フィールドと第2フィールドに対応する信号が連続して入力される。それぞれの信号には、図に示すように水平ブランキング信号と、垂直ブランキング信号が含まれる。水平ブランキング信号は、映像信号の各水平ラインの切り替え区間であり、垂直ブランキング信号は、フレームまたはフィールドの切り替え区間に相当する。図ではグレーの部分がブランキング信号である。
【0040】
一般的には、図3(b)に示すように、ブランキング信号を除いた映像信号部分、すなわち、図に示すアクティブピクセル第1フィールドとアクティブピクセル第2フィールドに対応する各フィールドの映像信号が選択され、図3(c)に示すように第1フィールドと第2フィールドの映像信号のみが表示部に出力される。
【0041】
しかし、コンテンツ製作者や編集者が利用する業務用モニタでは、映像信号だけでなく、インタレース信号のH/VBlanking区間に重畳されている音声情報やメタデータなどの補助信号が存在していることの確認を行なうために、特殊な表示処理を実行する。例えば、Under−Scan/HV delayなどの方式によってブランキング区間の表示を行なう。
【0042】
図4は、アンダースキャン(Under−Scan)方式によるブランキング区間の表示構成を説明する図である。図4(a)は、入力インタレース信号であり、図3(a)と同様の信号であり、1フレームデータを構成する第1フィールドと第2フィールドに対応する信号から構成される。それぞれの信号には、図のグレー部に示すように水平ブランキング信号と、垂直ブランキング信号が含まれる。
【0043】
アンダースキャン(Under−Scan)方式では、図4(b)に示すように、図4(b)に示すアクティブピクセル第1フィールド121とその周囲のブランキング信号122を含む信号部分を出力信号として選択し、さらに、アクティブピクセル第2フィールド123とその周囲のブランキング信号124を含む信号部分を出力信号として選択して、表示部に出力する。表示結果は、図4(c)に示すように、第1フレームの映像信号の周囲にブランキング信号の表示領域が設定された表示態様となる。視聴者は、ブランキング区間の変化に基づいて、音声やメタデータなどの補助情報が記録されていることを確認することが可能となる。
【0044】
図5は、水平ディレイ(H−Delay)方式によるブランキング区間の表示構成を説明する図である。図5(a)は、入力インタレース信号であり、図3(a)と同様の信号であり、1フレームデータを構成する第1フィールドと第2フィールドに対応する信号から構成される。それぞれの信号には、図のグレー部に示すように水平ブランキング信号と、垂直ブランキング信号が含まれる。
【0045】
水平ディレイ(H−Delay)方式では、図5(b)に示すように、水平方向に遅延させたデータを生成して、出力データを選択する。図5(b)に示す出力データ131は、水平方向に遅延させたデータから、矩形領域を選択したデータ領域であり、アクティブピクセル第1フィールドとその周囲のブランキング信号を含む信号部分からなるデータである。出力データ132は、水平方向に遅延させたデータから、矩形領域を選択したデータであり、アクティブピクセル第2フィールドとその周囲のブランキング信号を含む信号部分からなるデータである。これらを出力信号として選択して、表示部に出力する。表示結果は、図5(c)に示すように、左右に分断されたフレームの映像信号の中央および周囲にブランキング信号133の表示領域が設定された表示態様となる。視聴者は、ブランキング区間の変化に基づいて、音声やメタデータなどの補助情報が記録されていることを確認することが可能となる。
【0046】
図6は、垂直ディレイ(V−Delay)方式によるブランキング区間の表示構成を説明する図である。図6(a)は、入力インタレース信号であり、図3(a)と同様の信号であり、1フレームデータを構成する第1フィールドと第2フィールドに対応する信号から構成される。それぞれの信号には、図のグレー部に示すように水平ブランキング信号と、垂直ブランキング信号が含まれる。
【0047】
垂直ディレイ(V−Delay)方式では、図6(b)に示すように、垂直方向に遅延させたデータを生成して、出力データを選択する。図6(b)に示す出力データ141は、垂直方向に遅延させたデータから矩形領域を選択したデータ領域であり、M−1フレームのアクティブピクセル第2フィールドの下半分(Lower)領域と、Mフレームのアクティブピクセル第1フィールドの上半分(Upper)領域と、その間のブランキング信号を含む信号部分からなるデータである。出力データ142は、垂直方向に遅延させたデータから矩形領域を選択したデータ領域であり、Mフレームのアクティブピクセル第1フィールドの下半分(Lower)領域と、Mフレームのアクティブピクセル第2フィールドの上半分(Upper)領域と、その間のブランキング信号を含む信号部分からなるデータである。
【0048】
これらを出力信号として選択して、表示部に出力する。表示結果は、図6(c)に示すように、上下に分断されたフレーム映像信号の中央および周囲にブランキング信号143の表示領域が設定された表示態様となる。視聴者は、ブランキング区間の変化に基づいて、音声やメタデータなどの補助情報が記録されていることを確認することが可能となる。
【0049】
図4〜図6を参照して説明したブランキング信号の表示処理は、CRT方式のモニタでは、問題のない表示が可能であるが、LCDなどの面ホールド型表示装置においては、インタレース方式の信号をプログレッシブ信号に変換するIP変換が行なわれる。このIP変換を水平ブランキング区間、および垂直ブランキング区間の信号について実行してしまうと、信号の劣化が発生してしまい、表示した際に信号の有無を確実に確認できないことがある。本発明は、このような弊害を解消するものである。以下、本発明の処理の詳細について説明する。
【0050】
[3.本発明の装置構成および処理の詳細]
以下、本発明の装置構成および処理の詳細について説明する。本発明は、LCDや有機EL、その他の様々な面ホールド型表示処理を実行する表示装置を適用した映像表示を行なう構成において、インタレース信号をプログレッシブ信号に変換するIP変換処理を実行してもブランキング区間の重畳信号の劣化を防止して表示可能としたものである。
【0051】
具体的には、インタレース信号をプログレッシブ信号に変換するIP変換を実行する際に、入力ビデオ信号(インタレース信号)に含まれる同期信号に基づいて、ブランキング区間信号と、映像信号の含まれるアクティブビデオ区間信号に信号領域を区分し、各々の領域に対して異なるIP変換処理を実行する。
【0052】
図7に、本発明の画像表示装置における信号処理回路を示すブロック図である。本発明の画像処理装置は図7に示すようにインタレース信号としての処理対象信号を入出力するメモリ(FIFO)201、同期信号に基づく入出力制御を実行する入出力制御部202、システム制御信号を入力してデコードし、各処理部に制御情報を出力する制御部203、アクティブピクセル、すなわち映像信号のIP変換を実行するアクティブ区間IP変換部204、ブランキング区間のIP変換を実行するブランキング区間IP変換部210、IP変換後のアクティブ区間信号(映像信号)およびブランキング区間信号を合成して、アクティブ区間およびブランキング区間双方のプログレッシブ信号を含む表示データを生成して出力するマルチプレクサ205、表示部のサイズに応じたスケーリング処理を実行するスケーラー206を有する。
【0053】
ブランキング区間IP変換部210は、水平ラインの1ライン分の遅延を実行する1H遅延処理部(1H Delay)211、水平ラインを黒画素ラインに変換する黒ライン変換処理部(Black Line)212、1フィールド分の遅延処理を実行するフィールド遅延処理部(Field Delay)213、フィールド遅延処理部(Field Delay)213からの出力に対して、さらに、1フィールド分の遅延処理を実行するフィールド遅延処理部(Field Delay)214、さらに、メモリ201からの出力と各処理部211〜214の出力(a)〜(e)を入力して合成しマルチプレクサ205に出力する処理を実行するマルチプレクサ215を有する。
【0054】
処理対象となるインタレース信号は入力信号クロックに従って、メモリ(FIFO)201に入力される。また同期信号は同期制御部202に入力される。メモリ(FIFO)201に入力されたデータは、アクティブ区間IP変換部204と、ブランキング区間IP変換部210とによって読み出され、それぞれの区間のIP変換処理が実行される。なお、データ読み出し処理は、メモリ(FIFO)201に対する信号の入力タイミングを規定するクロックの倍以上のクロック速度で読み出しが実行される。これは、ブランキング区間IP変換部210において、各種のデータ遅延処理が実行され、その遅延処理による出力遅れを防止するためである。
【0055】
また、アクティブ区間IP変換部204と、ブランキング区間IP変換部210におけるメモリ(FIFO)201からのデータの読み出し処理は、同期信号に基づく入出力制御を実行する入出力制御部202からの制御信号に従って実行され、アクティブ区間IP変換部204に対しては、映像信号からなるアクティブピクセル区間データが出力され、ブランキング区間IP変換部210に対しては、ブランキング区間信号が出力される。
【0056】
映像信号のIP変換を実行するアクティブ区間IP変換部204では、アクティブセピクセル、すなわちブランキング区間以外の映像信号区間のデータに対して、従来どおりの補間処理によるIP変換を実行する。すなわち、先に、図1、図2を参照して説明したように、時間方向における前後のフレームのラインから補間を行うフレーム間補間と、同一フレームの上下のラインから補間を行う面内補間を適宜、切り替え、または配分を画像特徴に応じてリアルタイムに切り替えて補間画素の画素値を決定し、インタレース信号からプログレッシブ信号を生成してマルチプレクサ205に出力する。
【0057】
ブランキング区間信号のIP変換処理は、ブランキング区間IP変換部210において実行される。この処理の詳細については後述する。アクティブ区間IP変換部204においてIP変換が実行されたアクティブ区間信号(映像信号)、およびブランキング区間IP変換部210においてIP変換が実行されたブランキング区間信号は、マルチプレクサ205において合成され、その後、表示部のサイズに応じたスケーリング処理を実行するスケーラー206によって、スケーリング処理がなされて、表示部に出力される。表示部に対する表示態様は、たとえば、先に説明した図4〜図6に示すブランキング区間データの表示領域を含む表示データである。
【0058】
次に、図8〜図11を参照して、ブランキング区間IP変換部210において実行されるブランキング区間信号のIP変換処理の詳細について説明する。ブランキング区間のI/P変換方式として、以下の4方式がある。
1.ラインリピート方式
2.擬似インタレース方式
3.フィールドユニット方式
4.フレームユニット方式
これらの4態様のいずれかを選択的に適用する。以下、これらの4方式の具体的な処理例について説明する。
【0059】
(1.ラインリピート方式)
まず、図8を参照してブランキング区間IP変換部210において実行されるラインリピート方式に従ったブランキング区間信号のIP変換処理について説明する。
【0060】
図8には、ラインリピート方式に従ったブランキング区間信号のIP変換処理の具体例を示している。図8(1a)は、ブランキング区間IP変換部210から出力されるブランキング区間信号のIP変換処理後の先行データであり、(1b)は後続データの構成である。
【0061】
基本的な考え方は、インタレース信号中に存在しない補間対象ラインをインタレース信号中に含まれるカレントフィールドの画素値をそのままコピーして、補間ラインを埋める方式である。例えば、図8(1a)のライン301は、インタレース信号中に含まれるカレントフィールドのラインであり、ライン302は、本来、インタレース信号中に存在しない補間対象ラインであるが、ここに、ライン301と同一のラインを繰り返し設定する。すなわち1つのラインを2ラインとしてリピートさせる方式である。この処理によって、同じ信号ラインが繰り返されることになるが、複数の画素値に基づく保管処理といった一般的なIP変換は実行されず、オリジナルのインタレース信号が繰り返されることになるので、表示データ信号の減少といった弊害は発生することがなく、ブランキング区間の補助情報の確認が確実に実行されることになる。なお、図8(1b)の補間フィールドライン312のコピー元となるデータ311は、例えばブランキングデータに置換されるので、それをコピーして出力する。
【0062】
図7に示すブランキング区間IP変換部210では、メモリ201からの出力と各処理部211〜214の出力(a)〜(e)を適宜、組み合わせて、図8に示す態様の出力を生成して、これをブランキング区間のIP変換結果としてマルチプレクサ205に出力する。具体的には、図7に示すブランキング区間IP変換部210では、メモリ201からの出力と、水平ラインの1ライン分の遅延を実行する1H遅延処理部(1H Delay)211の出力とに基づいて、図8に示す態様の出力データを生成して、これをブランキング区間のIP変換結果としてマルチプレクサ205に出力する。この処理例では、1フィールドのデータで1つの出力(図8(1a)や(1b))が完結することになる。
【0063】
この処理の場合、表示処理の遅延、すなわちシステムディレイは1ライン分のディレイが発生するが、表示部に表示されるブランキング区間のデータは、オリジナルのインタレース信号が繰り返されるのみであり、他の信号が交じり合うことがなく、ブランキング区間の補助情報の確認が確実に実行可能となる。
【0064】
(2.擬似インタレース方式)
次に、図9を参照してブランキング区間IP変換部210において実行される擬似インタレース方式に従ったブランキング区間信号のIP変換処理について説明する。
【0065】
図9には、擬似インタレース方式に従ったブランキング区間信号のIP変換処理の具体例を示している。図9(1a)は、ブランキング区間IP変換部210から出力されるブランキング区間信号のIP変換処理後の先行データであり、(1b)は後続データの構成である。
【0066】
基本的な考え方は、インタレース信号中に存在しない補間対象ラインを黒レベルの画素ラインとして設定する方式である。例えば、図9(1a)のライン321は、インタレース信号中に含まれるカレントフィールドのラインであり、ライン322は、本来、インタレース信号中に存在しない補間対象ラインであるが、ここを、黒レベルの画素ラインとして設定する。この処理によって、表示されるブランキング区間のデータは、輝度レベルは落ちるが、オリジナルのインタレース信号はそのまま出力されることになり、ブランキング区間の補助情報の確認が確実に実行されることになる。
【0067】
図7に示すブランキング区間IP変換部210では、メモリ201からの出力と各処理部211〜214の出力(a)〜(e)を適宜、組み合わせて、図9に示す態様の出力を生成して、これをブランキング区間のIP変換結果としてマルチプレクサ205に出力する。具体的には、図7に示すブランキング区間IP変換部210では、メモリ201からの出力と、水平ラインを黒画素ラインに変換する黒ライン変換処理部(Black Line212の出力とに基づいて、図9に示す態様の出力データを生成して、これをブランキング区間のIP変換結果としてマルチプレクサ205に出力する。この処理例においても、1フィールドのデータで1つの出力(図9(1a)や(1b))が完結することになる。
【0068】
この処理の場合、表示処理の遅延、すなわちシステムディレイは発生することなく、表示部に表示されるブランキング区間のデータは、オリジナルのインタレース信号が、そのまま出力され、他の信号が交じり合うことがなく、ブランキング区間の補助情報の確認が確実に実行可能となる。ただし、本処理では、スケーリングは1:1とする構成とする。拡大や縮小のスケーリングを実行すると黒ラインと他のラインの混在が発生する可能性があるためである。ただし、混在を防止したスケーリング処理を実行する構成とした場合は、スケーリングを適用してもよい。
【0069】
(3.フィールドユニット方式)
次に、図10を参照してブランキング区間IP変換部210において実行されるフィールドユニットに従ったブランキング区間信号のIP変換処理について説明する。
【0070】
図10には、フィールドユニット方式に従ったブランキング区間信号のIP変換処理の具体例を示している。図10(1a)は、ブランキング区間IP変換部210から出力されるブランキング区間信号のIP変換処理後の先行データであり、(1b)は後続データの構成である。
【0071】
基本的な考え方は、インタレース信号中に存在しない補間対象ラインを、前のフィールドのラインデータで埋める方式である。例えば、図10(1a)のライン341は、インタレース信号中に含まれるカレントフィールドのラインであり、ライン342は、本来、インタレース信号中に存在しない補間対象ラインであるが、ここを、カレントフィールドの前のフィールドのラインで埋める処理を実行する。
【0072】
例えば、図10(1a)に示すように、
カレントフィールドがMフレームの第1フィールドである場合、
補間フィールドは、M−1フレームの第2フィールドのデータに設定される。
また、図10(1b)に示すように、
カレントフィールドがMフレームの第2フィールドである場合、
補間フィールドは、Mフレームの第1フィールドのデータに設定される。
従って、出力は、図10(1a)の場合は、異なるフレームのデータが混在し、図10(1b)の場合は、同一フレームのデータのみから構成されることになる。本例においては、全てインタレース中の信号を使用して出力データが生成されることになり、擬似的な画素値が生成されて出力されることがなく、オリジナルのインタレース信号に含まれるデータは確実に出力されることになり、ブランキング区間の補助情報の確認が可能となる。
【0073】
図7に示すブランキング区間IP変換部210では、メモリ201からの出力と各処理部211〜214の出力(a)〜(e)を適宜、組み合わせて、図10に示す態様の出力を生成して、これをブランキング区間のIP変換結果としてマルチプレクサ205に出力する。具体的には、図7に示すブランキング区間IP変換部210では、メモリ201からの出力と、1フィールド分の遅延処理を実行するフィールド遅延処理部(Field Delay)213の出力とに基づいて、図10に示す態様の出力データを生成して、これをブランキング区間のIP変換結果としてマルチプレクサ205に出力する。
【0074】
この処理の場合、表示処理の遅延、すなわちシステムディレイは発生することなく、表示部に表示されるブランキング区間のデータは、オリジナルのインタレース信号が間違いなく出力され、ブランキング区間の補助情報の確認が確実に実行可能となる。
【0075】
(4.フレームユニット方式)
次に、図11を参照してブランキング区間IP変換部210において実行されるフレームユニットに従ったブランキング区間信号のIP変換処理について説明する。
【0076】
図11には、フレームユニット方式に従ったブランキング区間信号のIP変換処理の具体例を示している。図11(1a)は、ブランキング区間IP変換部210から出力されるブランキング区間信号のIP変換処理後の先行データであり、(1b)は後続データの構成である。
【0077】
基本的な考え方は、インタレース信号中に存在しない補間対象ラインを、同一フレームの他のフィールドのラインデータで埋める方式である。例えば、図11(1a)のライン361は、インタレース信号中に含まれるカレントフィールドのラインであり、ライン362は、本来、インタレース信号中に存在しない補間対象ラインであるが、ここを、カレントフィールドと同一フレームの他のフィールドのラインで埋める処理を実行する。
【0078】
例えば、図11(1a)に示すように、
カレントフィールドがMフレームの第1フィールドである場合、
補間フィールドは、Mフレームの第2フィールドのデータに設定される。
また、図11(1b)に示すように、
カレントフィールドがMフレームの第2フィールドである場合、
補間フィールドは、Mフレームの第1フィールドのデータに設定される。
従って、出力は、すべて同一フレームのデータのみから構成されることになる。本例においては、全てインタレース中の信号を使用して出力データが生成されることになり、擬似的な画素値が生成されて出力されることがなく、オリジナルのインタレース信号に含まれるデータは確実に出力されることになり、ブランキング区間の補助情報の確認が可能となる。
【0079】
図7に示すブランキング区間IP変換部210では、メモリ201からの出力と各処理部211〜214の出力(a)〜(e)を適宜、組み合わせて、図11に示す態様の出力を生成して、これをブランキング区間のIP変換結果としてマルチプレクサ205に出力する。具体的には、図7に示すブランキング区間IP変換部210では、メモリ201からの出力と、1フィールド分の遅延処理を実行するフィールド遅延処理部(Field Delay)213の出力、および、さらに、1フィールド分の遅延処理を実行するフィールド遅延処理部(Field Delay)214の出力とに基づいて、図11に示す態様の出力データを生成して、これをブランキング区間のIP変換結果としてマルチプレクサ205に出力する。
【0080】
この処理の場合、表示処理の遅延、すなわちシステムディレイは1フィールド分発生するが、表示部に表示されるブランキング区間のデータは、オリジナルのインタレース信号が間違いなく出力され、ブランキング区間の補助情報の確認が確実に実行可能となる。
【0081】
最後に、図12に示すフローチャートを参照して本発明の画像表示装置において実行する処理シーケンスについて説明する。この図12に示すフローに従った処理は、図7に示す画像表示装置において実行される。なお、全体的な処理制御は、図7に示す制御部203および図示しないシステム制御信号の出力元の制御部によって実行される。例えば、これらの制御部はCPUを有しメモリに記録されたコンピュータ・プログラムに従った処理制御を行なう。
【0082】
図13に示すフローチャートの各ステップの処理について説明する。まず、ステップS101において、IP変換処理対象となる処理対象データを入力するこれは、メモリ(FIFO)201に対する入力処理である。次に、メモリ(FIFO)201に入力されたデータが、アクティブ区間IP変換部204と、ブランキング区間IP変換部210とによって読み出され、それぞれの区間のIP変換処理が実行される。ステップS102a,bの処理である。なお、前述したように、メモリ201からのデータ読み出し処理は、メモリ(FIFO)201に対する信号の入力タイミングを規定するクロックの倍以上のクロック速度で読み出しが実行される。これは、ブランキング区間IP変換部210において、各種のデータ遅延処理が実行され、その遅延処理による出力遅れを防止するためである。
【0083】
ステップS102aでは、アクティブ区間IP変換部204において、アクティブセピクセル、すなわちブランキング区間以外の映像信号区間のデータに対して、従来どおりの補間処理によるIP変換が実行される。すなわち、先に、図1、図2を参照して説明したように、時間方向における前後のフレームのラインから補間を行うフレーム間補間と、同一フレームの上下のラインから補間を行う面内補間を適宜、切り替え、または配分を画像特徴に応じてリアルタイムに切り替えて補間画素の画素値を決定し、インタレース信号からプログレッシブ信号を生成してマルチプレクサ205に出力する。
【0084】
ステップS102bでは、ブランキング区間IP変換部210において実行される。この処理は、先に、図8〜図11を参照して説明したように、
1.ラインリピート方式
2.擬似インタレース方式
3.フィールドユニット方式
4.フレームユニット方式
これらの4態様のいずれかを選択的に適用した処理として実行される。処理結果は、それぞれ、図8〜図11を参照して説明した通りであり、
1.ラインリピート方式は、補間フィールドをカレントラインの繰り返しラインとして設定、
2.擬似インタレース方式は、補間フィールドを黒画素ラインとして設定、
3.フィールドユニット方式は、補間フィールドをカレントラインの前のフィールドのラインデータを適用して設定、
4.フレームユニット方式は、補間フィールドをカレントラインと同一フレームの他のフィールドのラインデータを適用して設定、
これらの処理態様である。
【0085】
ステップS103では、ステップS102aの結果とステップS102bの結果、すなわち、IP変換後のアクティブ区間信号(映像信号)およびブランキング区間信号を合成する処理が実行される。この処理は、図7におけるマルチプレクサ205によって実行される。その後、ステップS104において合成データが表示部に表示される。表示データは、例えば先に説明した図4〜図6に示すブランキング区間の信号の表示を含む表示データである。なお、必要に応じてスケーラーによるスケーリング処理が実行される。
【0086】
上述したように、本発明の処理においては、映像区間であるアクティブピクセル区間と、ブランキング信号区間を区別し、それぞれの区間において異なるIP変換を実行する構成とし、ブランキング信号区間に対するIP変換では、擬似的な画素値を持つ補間信号を生成することなく、オリジナルのインタレース信号のみからなる信号、あるいはオリジナルのインタレース信号と黒画素のみからなるプログレッシブ信号を生成して出力する構成としたので、IP変換後のブランキング信号区間の表示データには、一般的な補間処理によって生成される擬似画素が含まれることがなく、確実に補助データを確認することが可能となる。
【0087】
以上、特定の実施例を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施例の修正や代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、限定的に解釈されるべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
【0088】
また、明細書中において説明した一連の処理はハードウェア、またはソフトウェア、あるいは両者の複合構成によって実行することが可能である。ソフトウェアによる処理を実行する場合は、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれたコンピュータ内のメモリにインストールして実行させるか、あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させることが可能である。
【0089】
例えば、プログラムは記録媒体としてのハードディスクやROM(Read Only Memory)に予め記録しておくことができる。あるいは、プログラムはフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory),MO(Magneto optical)ディスク,DVD(Digital Versatile Disc)、磁気ディスク、半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体に、一時的あるいは永続的に格納(記録)しておくことができる。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することができる。
【0090】
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体からコンピュータにインストールする他、ダウンロードサイトから、コンピュータに無線転送したり、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介して、コンピュータに有線で転送し、コンピュータでは、そのようにして転送されてくるプログラムを受信し、内蔵するハードディスク等の記録媒体にインストールすることができる。
【0091】
なお、明細書に記載された各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。また、本明細書においてシステムとは、複数の装置の論理的集合構成であり、各構成の装置が同一筐体内にあるものには限らない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上、説明したように、本発明の一実施例の構成によれば、インタレース信号に含まれるブランキング区間のデータ表示処理を実行する画像表示処理において、インタレース信号に含まれるブランキング区間をプログレッシブ信号に変換する際、補間フィールドの画素値をインタレース信号に含まれるデータのコピー値または黒画素値として設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する。具体的には、
1.補間フィールドをカレントラインの繰り返しラインとして設定するラインリピート方式、
2.補間フィールドを黒画素ラインとして設定する擬似インタレース方式、
3.補間フィールドをカレントラインの前のフィールドのラインデータを適用して設定するフィールドユニット方式、
4.補間フィールドをカレントラインと同一フレームの他のフィールドのラインデータを適用して設定するフレームユニット方式、
これらのいずれかの方式に従ったIP変換を実行することで、擬似的な画素値を含まないオリジナルのインタレース信号のみ、あるいはオリジナルのインタレース信号と黒画素のみからなるプログレッシブ信号を生成して出力する構成としたので、IP変換後のブランキング信号区間の表示データに擬似画素が含まれることがなく、確実なブランキング区間データの確認が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】IP変換処理について説明する図である。
【図2】IP変換処理について説明する図である。
【図3】ブランキング信号を省いた表示処理構成について説明する図である。
【図4】ブランキング信号の表示処理構成について説明する図である。
【図5】ブランキング信号の表示処理構成について説明する図である。
【図6】ブランキング信号の表示処理構成について説明する図である。
【図7】本発明の画像表示装置における信号処理回路を示すブロック図である。
【図8】本発明の装置においてブランキング区間のIP変換処理として実行するラインリピート方式について説明する図である。
【図9】本発明の装置においてブランキング区間のIP変換処理として実行する擬似インタレース方式について説明する図である。
【図10】本発明の装置においてブランキング区間のIP変換処理として実行するフィールドユニット方式について説明する図である。
【図11】本発明の装置においてブランキング区間のIP変換処理として実行するフレームユニット方式について説明する図である。
【図12】本発明の画像表示装置において実行する処理シーケンスについて説明するフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0094】
51 表示部
61 オリジナルライン
62 補間ライン
121 アクティブピクセル第1フィールド
122 ブランキング信号
123 アクティブピクセル第2フィールド
124 ブランキング信号
131 出力データ
132 出力データ
133 ブランキング信号
141 出力データ
142 出力データ
143 ブランキング信号
201 メモリ(FIFO)
202 入出力制御部202
203 制御部
204 アクティブ区間IP変換部
205 マルチプレクサ205
206 スケーラー
210 ブランキング区間IP変換部
211 1H遅延処理部(1H Delay)
212 黒ライン変換処理部(Black Line)
213 フィールド遅延処理部(Field Delay)
214 フィールド遅延処理部(Field Delay)
215 マルチプレクサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インタレース信号に含まれるブランキング区間のデータ表示処理を実行する画像表示装置であり、
インタレース信号に含まれる映像データ記録区間であるアクティブ区間をプログレッシブ信号に変換するアクティブ区間IP変換部と、
インタレース信号に含まれるブランキング区間をプログレッシブ信号に変換するブランキング区間IP変換部と、
前記アクティブ区間IP変換部において生成されたアクティブ区間対応プログレッシブ信号と、前記ブランキング区間IP変換部において生成されたブランキング区間対応プログレッシブ信号を入力し、アクティブ区間およびブランキング区間双方のプログレッシブ信号を含む表示データを生成して出力するマルチプレクサと、
前記マルチプレクサの出力を表示する表示部とを有し、
前記ブランキング区間IP変換部は、
インタレース信号の各フィールドデータに含まれない補間フィールドの画素値をインタレース信号に含まれるデータのコピー値または黒画素値として設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記ブランキング区間IP変換部は、
現行フィールドに隣接する補間フィールドに現行フィールドを繰り返して設定するラインリピート方式に従ったIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記ブランキング区間IP変換部は、
現行フィールドに隣接する補間フィールドに黒画素を設定する擬似インタレース方式に従ったIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記ブランキング区間IP変換部は、
現行フィールドに隣接する補間フィールドに、先行フィールドのデータを設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記ブランキング区間IP変換部は、
現行フィールドに隣接する補間フィールドに、現行フィールドと同一フレームの異なるフィールドのデータを設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項6】
インタレース信号に含まれる映像データ記録区間であるアクティブ区間をプログレッシブ信号に変換するアクティブ区間IP変換部と、
インタレース信号に含まれるブランキング区間をプログレッシブ信号に変換するブランキング区間IP変換部と、
前記アクティブ区間IP変換部において生成されたアクティブ区間対応プログレッシブ信号と、前記ブランキング区間IP変換部において生成されたブランキング区間対応プログレッシブ信号を入力し、アクティブ区間およびブランキング区間双方のプログレッシブ信号を含む表示データを生成して出力するマルチプレクサとを有し、
前記ブランキング区間IP変換部は、
インタレース信号の各フィールドデータに含まれない補間フィールドの画素値をインタレース信号に含まれるデータのコピー値または黒画素値として設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする信号処理装置。
【請求項7】
前記ブランキング区間IP変換部は、
現行フィールドに隣接する補間フィールドに現行フィールドを繰り返して設定するラインリピート方式に従ったIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする請求項6に記載の信号処理装置。
【請求項8】
前記ブランキング区間IP変換部は、
現行フィールドに隣接する補間フィールドに黒画素を設定する擬似インタレース方式に従ったIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする請求項6に記載の信号処理装置。
【請求項9】
前記ブランキング区間IP変換部は、
現行フィールドに隣接する補間フィールドに、先行フィールドのデータを設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする請求項6に記載の信号処理装置。
【請求項10】
前記ブランキング区間IP変換部は、
現行フィールドに隣接する補間フィールドに、現行フィールドと同一フレームの異なるフィールドのデータを設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成する構成であることを特徴とする請求項6に記載の信号処理装置。
【請求項11】
画像表示装置において、インタレース信号に含まれるブランキング区間のデータ表示処理を実行する画像表示方法であり、
アクティブ区間IP変換部において、インタレース信号に含まれる映像データ記録区間であるアクティブ区間をプログレッシブ信号に変換するアクティブ区間IP変換ステップと、
ブランキング区間IP変換部において、インタレース信号に含まれるブランキング区間をプログレッシブ信号に変換するブランキング区間IP変換ステップと、
マルチプレクサにおいて、前記アクティブ区間IP変換部において生成されたアクティブ区間対応プログレッシブ信号と、前記ブランキング区間IP変換部において生成されたブランキング区間対応プログレッシブ信号を入力し、アクティブ区間およびブランキング区間双方のプログレッシブ信号を含む表示データを生成して出力する出力データ生成ステップと、
表示部において、前記マルチプレクサの出力を表示する表示ステップとを有し、
前記ブランキング区間IP変換ステップは、
インタレース信号の各フィールドデータに含まれない補間フィールドの画素値をインタレース信号に含まれるデータのコピー値または黒画素値として設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成するステップであることを特徴とする画像表示方法。
【請求項12】
画像表示装置において、インタレース信号に含まれるブランキング区間のデータ表示処理を実行させるコンピューヌ・プログラムであり、
アクティブ区間IP変換部において、インタレース信号に含まれる映像データ記録区間であるアクティブ区間をプログレッシブ信号に変換させるアクティブ区間IP変換ステップと、
ブランキング区間IP変換部において、インタレース信号に含まれるブランキング区間をプログレッシブ信号に変換させるブランキング区間IP変換ステップと、
マルチプレクサにおいて、前記アクティブ区間IP変換部において生成されたアクティブ区間対応プログレッシブ信号と、前記ブランキング区間IP変換部において生成されたブランキング区間対応プログレッシブ信号を入力し、アクティブ区間およびブランキング区間双方のプログレッシブ信号を含む表示データを生成して出力させる出力データ生成ステップと、
表示部において、前記マルチプレクサの出力を表示させる表示ステップとを有し、
前記ブランキング区間IP変換ステップは、
インタレース信号の各フィールドデータに含まれない補間フィールドの画素値をインタレース信号に含まれるデータのコピー値または黒画素値として設定するIP変換処理を実行してブランキング区間対応プログレッシブ信号を生成させるステップであることを特徴とするコンピュータ・プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図12】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−316459(P2007−316459A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147698(P2006−147698)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】