説明

画像表示装置およびその制御方法、プログラム

【課題】 表示装置の周辺視野の色による対比効果を抑制し、好適な画像表示を提供することを目的とする。
【背景技術】
【解決手段】 画像表示装置の周辺視野の色情報を取得し、入力された映像信号から白色基準を算出し、取得された色情報と算出された白色基準とから、順応点を算出し、算出された順応点を用いて、入力された映像信号を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視聴者の視聴環境に応じて視認性が改善されるよう入力信号を補正し、補正信号を画面に表示することのできる画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイやテレビジョン装置等の表示装置の周辺視野の明るさに応じて入力信号を補正し、補正信号を画面に表示する画像表示装置がある。例えば、特許文献1では、表示装置周辺の照度を検出し、照度対補正係数の関係を示すテーブルを使用して、照度に対する補正係数に基づき入力信号のRGB値を補正する方法が提案されている。また、特許文献2では、スクリーンの色や周辺環境光の影響を考慮した画像表示装置として、投影画像の色情報を検出し、投影画像が所望の色の見えとなるように補正する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−248936号公報
【特許文献2】特開2003−323610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の補正方法は、表示装置の周辺視野の色情報までは考慮できないため、壁色など周囲の色によっては、必ずしも好適に表示されない場合があった。例えば、表示装置の出力信号が同一であっても壁色など周囲の色が異なれば、周囲の色との対比効果により、色の見えが異なることが知られている。対比効果には明度対比、彩度対比、色相対比などが知られている。色相対比とは隣り合う色によって同じ色の色相が変化して見える現象である。人は背景色に順応した状態で中央色を見ると、心理的に背景色の補色が加わり、それが中央色と混色することで色相が変化して見える。そのため、壁色など周囲の色が異なる場合に、必ずしも好適に表示されない問題があった。
【0005】
一方、特許文献2に記載の補正方法においては、投影画像に直接影響するスクリーンの色や周辺環境光は考慮しているものの、特許文献1と同様、投影画像の周辺視野の色による対比効果までは考慮されていなかった。そのため、投影画像周辺の色が異なる場合に、必ずしも好適に表示されない問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、表示装置の周辺視野の色による対比効果を抑制し、好適な画像表示を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の画像表示装置は、本装置の周辺視野の色情報を取得する周辺色情報取得手段と、入力された映像信号から白色基準を算出する白色基準算出手段と、前記周辺色情報取得手段によって取得された色情報と前記白色基準算出手段によって算出された白色基準とから、順応点を算出する順応算出手段と、前記順応点算出手段によって算出された順応点を用いて、入力された映像信号を補正する補正手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、表示装置の周辺視野の色に応じて表示装置のカラーバランスを制御することにより、周辺視野の色による対比効果を抑制し、好適な画像表示を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明の実施形態に係る動画像処理装置のシステム構成例を示すブロック図。
【図2】実施形態1における画像表示装置のブロック図。
【図3】センサにより壁色情報を取得する方法を説明する図。
【図4】ユーザの指示により壁色情報を取得する方法を説明する図。
【図5】白色基準算出部の構成を示すブロック図である。
【図6】順応点の算出方法を説明するフローチャート。
【図7】無彩色な壁に対する順応点の算出方法を説明するフローチャート。
【図8】無彩色な壁に対する順応点の算出方法を説明する図。
【図9】周辺視野の色に対する順応点の算出方法を説明するフローチャート。
【図10】周辺視野の色に対する順応点の算出方法を説明する図。
【図11】実施形態2における画像表示装置の詳細を示すブロック図。
【図12】実施形態2における周辺視野の色に対する順応点の算出方法を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して、本願発明をその好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0011】
<実施形態1>
図1は本実施形態の画像処理装置の構成を示すブロック図である。アナログ放送入力端子101は、地上アナログ放送、衛星アナログ放送などのアナログ放送信号を入力するための端子である。アナログ外部入力端子102は、D端子などのアナログ映像信号を入力するための端子である。デジタル放送入力端子103は、地上デジタル放送、衛星デジタル放送などのデジタル放送信号を入力するための端子である。デジタル外部入力端子104は、HDMIなどのデジタル映像信号を入力するための端子である。アナログチューナ105は、アナログ放送信号を映像信号に変換するための装置である。デジタルチューナ106は、デジタル放送信号を映像信号に変換するための装置である。A/Dコンバータ107は、アナログ映像信号をデジタル映像信号に変換するための装置である。デコーダ108は、MPEGなどの符号化された映像信号を復号化するための装置である。セレクタ109は、A/D変換された映像信号か、デコードされた映像信号かを選択し、出力する装置である。高画質変換補正処理部110は、映像信号に対して、与えられたパラメータを基に高画質化、補正を行う装置であり、例えばノイズリダクションやI/P変換、色補正などが行われる。CPU111は、上述した全ての処理に関わる。ROM112とRAM113は、その処理に必要なプログラム、データ、作業領域などをCPU111に提供する。操作部114は、ディスプレイ本体でユーザからの指示を入力する装置であり、ボタンやタッチパネルなどが該当する。環境光入力端子117は、太陽光や蛍光灯などの環境光を入力するための端子である。環境光センサ115は、入力された環境光を何らかの値に変換するための装置である。リモコン118は、ユーザがディスプレイを操作するためのリモコン装置のことである。リモコン受光センサ116は、リモコンからの信号を受信するための装置である。表示部119は、高画質化、補正などが行われた映像信号を表示するための装置である。
【0012】
上記構成における動画像処理動作について、図2を用いて説明する。
【0013】
周辺色情報取得部201は環境光センサ115によって実現され、補正処理部202、白色基準算出部203、パラメータレジスタ204は高画質変換補正処理部110によって実現され、順応算出部205はCPU111によって実現される。
【0014】
次に、本実施形態の画像表示装置の全体の処理フローを説明する。
【0015】
はじめに、周辺色情報取得部201は、照明情報と壁色情報を取得し、RAM113に保存する。ここで、照明情報は環境光センサ115により取得された情報であり、照明照度ならびに色度情報u’、v’で構成される。色度情報u’、v’は国際照明委員会(CIE)で規定されたXYZ刺激値から算出されるu’v’平面の値である。本実施形態では、色度情報をu’v’平面の値としたが、xy平面の値、またはuv平面の値、あるいはXYZ刺激値そのものであってもよい。また、壁色情報は画像表示装置周辺の色情報であり、輝度ならびに色度情報u’、v’で構成される。壁色情報の取得方法については後述する。
【0016】
次に、白色基準算出部203は、入力された映像信号から白色基準を算出し、RAM113に保存する。白色基準は、通常、画像表示装置が表示可能な最も明度が高い色を採用する。例えば、sRGB規格に準拠した画像表示装置の場合、白色基準はD65の色度点となる。
また、表示画像中の最も明度が高い色を白色基準として採用する場合もある。ここで、本発明の白色基準は映像信号から算出した輝度ならびに色度情報u’、v’で構成される。本実施形態では、色度情報をu’v’平面の値としたが、xy平面の値、またはuv平面の値、あるいはXYZ刺激値そのものであってもよい。白色基準の算出方法については後述する。
【0017】
そして、順応算出部205は、RAM113に保存された照明情報と白色基準に基づいて無彩色な壁に対する順応点、ならびに周辺視野の色に対する順応点を算出し、順応点をパラメータレジスタ204に保存する。人間の目は通常、最も明度が高い色を白として知覚する(順応)が、最も明度が高い色が有彩色の場合は、完全には順応しない現象(不完全順応)が発生する。また、観察環境の周囲光の影響により、白と知覚する色が変わる現象(部分順応)が発生する。そのため、人間の目が無彩色な白であると感じる白色を順応点と定義する。順応点の算出方法については後述する。
【0018】
最後に、補正処理部202は、パラメータレジスタ204に保存された無彩色な壁に対する順応点と周辺視野の色に対する順応点に基づいて、映像信号を変換する。映像信号の変換方法については後述する。
【0019】
<壁色情報の取得方法>
図3は壁色情報の取得方法を説明する図である。301は照明情報を取得するためのセンサであり、302は壁色情報を取得するためのセンサである。壁色情報を取得するためのセンサは、表示装置の背面に設置されている。なお、センサは壁色情報を取得可能な位置であれば、表示装置の上面や側面、斜めに加工された面などに設置しても構わない。
【0020】
また、壁色情報は環境光センサ以外の構成で取得しても構わない。例えば、操作部114を用いてユーザからの指示により決定してもよい。図4はユーザの指示により壁色情報を取得する方法を説明する図である。リモコン401には操作キー402が備えられており、パネル119に表示される色情報をコントロールすることができる。なお、操作キー402は図示された十字式のみでなく、ボタン式やタッチホイール式など、任意の方法で構わない。また、表示部119には、色相調整バー403、彩度調整バー404、明るさ調整バー405が表示されており、表示領域406に調整バーの値に基づいた色が表示される。ユーザは操作キー402により、表示領域406の色が表示装置周辺の色と近くなるように調整バーを調整する。これにより、ユーザの指示により調整された色情報を壁色情報として取得する。なお、ユーザからの指示により壁色情報を取得する方法はこれに限定されるものではない。例えば、表示部119に複数の色を表示し、表示装置周辺の色と最も近い色をユーザに選択してもらう方法でも構わない。
【0021】
<白色基準の算出方法>
図5は白色基準算出部203の構成を示すブロック図である。
【0022】
白色基準算出部203は、輝度色差算出部501、比較部502、保持回路503、色差平均算出部504より構成されている。
【0023】
輝度色差算出部501では、映像信号の画像1フレームから各画素の色情報を取得し、輝度色差信号値に変換する。ここでは、色情報はRGBであるとするが、Lab値など任意の色空間に基づく値であっても構わない。その場合は、国際電気通信連合(ITU)や国際照明委員会(CIE)で規定された変換式に基づいてRGB値に変換可能である。また、RGB値から輝度色差信号(YUV値)への変換は、ITU−R B.601規格に基づいて変換できる。
【0024】
比較部502では、各画素の輝度色差信号値と基準値とを比較し、ハイライトポイントがあるか否かを判定する。ハイライトポイントとは、ある基準値以上の輝度を持つ画素のことである。ここでは、基準値は最大輝度を100としたときに99となる値であるとするが、それ以外の値であっても構わない。基準値はROM112、またはRAM113に予め保持されているものとする。
【0025】
保持回路503では、ハイライトポイントの色差情報を保持する。なお、色差情報はYUV値におけるUVの値である。また、白色基準算出部203は映像信号の画像1フレームのすべての画素を走査した際にVリセット信号を生成し、保持回路503はVリセット信号を受けると保持しているデータをクリアする。
【0026】
色差平均算出部504では、保持回路503に保持されたすべてのハイライトポイントの色差情報から平均値を算出し、ハイライトポイントの平均値を白色基準としてRAM112に保存する。なお、映像信号中にハイライトポイントが含まれていない場合は、予め定められた値を用いるものとする。
【0027】
また、白色基準の算出方法はこれに限定されるものではない。最も簡易的な方法としては、表示装置の色温度情報など、予め定められた値を用いてもよい。
【0028】
<順応点の算出方法>
図6は順応算出部205において順応点の算出方法を説明するフローチャートである。
【0029】
ステップS601において、順応算出部205はRAM113に保存された照明情報ならびに壁色情報を取得する。
【0030】
ステップS602において、順応算出部205はRAM113に保存された白色基準を取得する。
【0031】
ステップS603において、順応算出部205は取得した照明情報と白色基準に基づいて、無彩色な壁に対する順応点を算出する。無彩色な壁に対する順応点の算出方法については後述する。
【0032】
ステップS604において、順応算出部205は取得した壁色情報と白色基準に基づいて、周辺視野の色に対する順応点を算出する。周辺視野の色に対する順応点の算出方法については後述する。
【0033】
ステップS605において、順応算出部205は算出した無彩色な壁に対する順応点と周辺視野の色に対する順応点をパラメータレジスタ204に保存する。
【0034】
<無彩色な壁に対する順応点の算出方法>
図7は無彩色な壁に対する順応点の算出方法を説明するフローチャートである。また、図8は順応点の算出方法を説明する図であり、以下、これを引用しながら説明する。
【0035】
ステップS701において、順応算出部205はステップS601より取得した照明情報と、ステップS602より算出した白色基準を取得する。図8はu’v’平面図であり、801は照明情報の色度点、802は白色基準の色度点である。
【0036】
ステップS702において、順応算出部205は照明情報の色度点から黒体放射軌跡上に垂線を下ろした交点を算出する。図8において、803は黒体放射軌跡、804は交点である。なお、黒体放射軌跡とは、反射光をすべて吸収する理想的な黒体が放射する光エネルギーの軌跡である。
【0037】
ステップS703において、順応算出部205は照明情報の照度と白色基準の輝度から順応比率を算出する。照明情報の照度をLs[lx]、白色基準の輝度をYs[cd/m2]とすると、順応比率Rwは以下式(1)で表すことができる。
【0038】
Rw=Ys/(Ys+Ls/π) ・・・(1)
ステップS704において、順応算出部205は交点と白色基準の色度点から順応比率に基づいて順応点を算出する。図8において、805は算出された順応点である。なお、順応点805は、順応比率Rwに基づいて、交点804と白色基準802を内分する点である。
【0039】
なお、無彩色な壁に対する順応点の算出方法はこれに限定されるものではない。最も簡易的な方法としては、照明情報の色度点と白色基準の色度点の中点を順応点として算出してもよい。
【0040】
<周辺視野の色に対する順応点の算出方法>
図9は周辺視野の色に対する順応点の算出方法を説明するフローチャートである。また、図10は順応点の算出方法を説明する図であり、以下、これを引用しながら説明する。
【0041】
ステップS901において、順応算出部205はステップS601より取得した照明情報と壁色情報、ステップS602より算出した白色基準を取得する。図10はu’v’平面図であり、1001は照明情報の色度点、1002は壁色情報の色度点、1003は白色基準の色度点である。
【0042】
ステップS902において、順応算出部205は壁色情報の色度点から黒体放射軌跡上に垂線を下ろした交点を算出する。図10において、1004は黒体放射軌跡、1005は交点である。
【0043】
ステップS903において、順応算出部205は照明情報の照度と壁色情報の輝度から基準比率を算出する。照明情報の照度をLs[lx]、壁色基準の輝度Ya[cd/m2]とすると、基準比率Raは以下式(2)で表すことができる。
【0044】
Ra=Ya/(Ya+Ls/π) ・・・(2)
ステップS904において、順応算出部205は交点と壁色情報の色度点から基準比率に基づいて順応基準点を算出する。図10において、1006は順応基準点である。なお、順応基準点1006は、基準比率Raに基づいて、交点1004と壁色情報1002を内分する点である。
【0045】
ステップS905において、順応算出部205は照明情報の照度と白色基準の輝度から順応比率を算出する。照明情報の照度をLs[lx]、白色基準の輝度をYs[cd/m2]とすると、順応比率Rwは以下式(3)で表すことができる。
【0046】
Rw=Ys/(Ys+Ls/π) ・・・(3)
ステップS906において、順応算出部205は順応基準点と白色基準の色度点から順応比率に基づいて順応点を算出する。図10において、1007は算出された順応点である。なお、順応点1007は、順応比率Rwに基づいて、順応基準点1006と白色基準1003を内分する点である。
【0047】
なお、周辺視野の色に対する順応点の算出方法はこれに限定されるものではない。最も簡易的な方法としては、壁色情報の色度点に対する順応点の補正量の関係を示すテーブルを予め保持し、壁色情報に基づいて順応点を決定してもよい。
【0048】
<映像信号の変換方法>
補正処理部202では、以下の処理が実行される。
【0049】
まず、映像信号の画像1フレームから各画素の色情報を取得し、色情報をXYZ刺激値に変換する。RGB値の色情報からXYZ刺激値への変換は、ITU−R B.709規格に基づいて変換できる。
【0050】
次に、パラメータレジスタ204に保持された無彩色な壁に対する順応点に基づいてXYZ値を知覚色空間の値に変換する。知覚色空間の値への変換は、国際照明委員会(CIE)が勧告しているCIECAM97sやCIECAM02などの変換式を用いて算出することができる。ここでは、CIECAM02に基づいて、XYZ値を知覚色空間の値(JCH値)に変換する。CIECAM02では、順応視野の輝度La、背景の相対輝度Yb、順応白色の3刺激値Xw、Yw、Zwがパラメータとして設定されている。さらに、これらの影響を決定するパラメータとして、周辺の影響係数c、色の誘導係数Nc、明度コントラスト係数Fl、順応度合い係数Fが設定されている。これらのパラメータは、照明情報の照度をLs[lx]、白色基準の輝度をYs[cd/m2]、無彩色な壁に対する順応点の色度点をum’、vm’とすると、例えば以下式(4)で表すことができる。
【0051】
La=Ls/π
Yb=20
Xw=9/4×Ys×um’/vm’
Yw=Ys
Zw=Ys/4/vm’×(3−3/4×um’−5×vm’) (4)
なお、順応白色の3刺激値Xw、Yw、Zwは、CIE1976UCS色度座標の変換式を用いて、色度点がum’、vm’となるように算出した値である。
【0052】
また、CIECAM02のパラメータ値はこれに限定されるものではなく、被験者実験等により予め決定したパラメータを保持し、順応点に応じて設定してもよい。
【0053】
次に、パラメータレジスタ204に保持された周辺視野の色に対する順応点に基づいて知覚色空間の値をXYZ刺激値に変換する。照明情報の照度をLs[lx]、白色基準の輝度をYs[cd/m2]、周辺視野の色に対する順応点の色度点をun’、vn’とすると、例えば以下式(5)で表すことができる。
【0054】
La=Ls/π
Yb=20
Xw=9/4×Ys×un’/vn’
Yw=Ys
Zw=Ys/4/vn’×(3−3/4×un’−5×vn’) (5)
なお、順応白色の3刺激値Xw、Yw、Zwは、CIE1976UCS色度座標の変換式を用いて、色度点がun’、vn’となるように算出した値である。
【0055】
最後に、XYZ刺激値をRGB値に変換する。なお、XYZ刺激値からRGB値への変換は、ITU−R B.709規格に基づいて変換できる。
【0056】
以上説明した処理を行うことにより、周辺視野の色に応じた補正処理が可能となり、周辺視野の色による対比効果を抑制し、好適な表示を提供することができる。
【0057】
<実施形態2>
実施形態1では、周辺視野の色に基づいて順応点を算出する方法について説明した。しかしながら、周辺視野の色が視覚に及ぼす影響度は、視聴者の距離や画面サイズから求められる画角によって異なる場合がある。本実施形態においては、周辺視野の色と画角に基づいて順応点を算出する方法について説明する。
【0058】
図11は本実施例の画像処理装置の構成を示すブロック図である。なお、実施形態1と同一の部位に関しては説明を省略する。
【0059】
画角情報取得手段1101は、視聴者の距離と画面サイズに基づいて画角情報を算出する。視聴者の距離は、例えば、リモコン118から照射される光が反射して戻ってくる時間を測定することにより求めることができる。また、操作部114を用いてユーザからの指示により決定してもよい。画面サイズは予め定められた値を用いるが、投影機など画面サイズが可変な表示装置の場合は、表示装置に搭載された測距計から算出できる。視聴者の距離をd[m]、画面サイズをH[inch]とすると、画角θ[deg]は以下式(6)で表すことができる。
【0060】
tan(θ/2)=H/2/d (6)
次に、周辺視野の色と画角に基づいて順応算出部1105が順応点を算出する方法について説明する。
【0061】
図12は周辺視野の色に対する順応点の算出方法を説明するフローチャートである。
【0062】
ステップS1201において、順応算出部1105は照明情報、壁色情報、白色基準、画角情報を取得する。
【0063】
ステップS1202において、順応算出部1105は実施形態1と同様に、壁色情報の色度点から黒体放射軌跡上に垂線を下ろした交点を算出する。
【0064】
ステップS1203において、順応算出部1105は照明情報の照度と壁色情報の輝度、および画角情報から基準比率を算出する。照明情報の照度をLs[lx]、壁色基準の輝度Ya[cd/m2]、画角をθ[deg]とすると、基準比率Raは以下式(7)で表すことができる。
【0065】
Ra=Ya×θ×Wg/(Ya×θ×Wg+Ls/π) ・・・(7)
ここで、Wgは画角に対する重み係数である。重み係数Wgは、例えば、視聴者の距離が3Hとなる画角θaを基準として、以下式(8)で定めてもよい。
【0066】
Wg=1/θa ・・・(8)
なお、基準比率Raの算出方法はこれに限定されるものではなく、被験者実験等により予め決定したパラメータを保持し、照明情報と壁色情報と画角に応じて設定してもよい。
ステップS1204において、順応算出部1105は実施形態1と同様に、交点と壁色情報の色度点から基準比率に基づいて順応基準点を算出する。
【0067】
ステップS1205において、順応算出部1105は実施形態1と同様に、照明情報の照度と白色基準の輝度から順応比率を算出する。
【0068】
ステップS1206において、順応算出部1105は実施形態1と同様に、順応基準点と白色基準の色度点から順応比率に基づいて順応点を算出する。
【0069】
以上説明した処理を行うことにより、周辺視野の色と画角に応じた補正処理が可能となり、周辺視野の色による対比効果の影響度を考慮して、好適な表示を提供することができる。
【0070】
<その他の実施形態>
なお、本発明は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インターフェース機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置など)に適用してもよい。
【0071】
また、本発明の目的は、前述した機能を実現するコンピュータプログラムのコードを記録した記憶媒体を、システムに供給し、そのシステムがコンピュータプログラムのコードを読み出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたコンピュータプログラムのコード自体が前述した実施形態の機能を実現し、そのコンピュータプログラムのコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成する。また、そのプログラムのコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した機能が実現される場合も含まれる。
【0072】
さらに、以下の形態で実現しても構わない。すなわち、記憶媒体から読み出されたコンピュータプログラムコードを、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込む。そして、そのコンピュータプログラムのコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行って、前述した機能が実現される場合も含まれる。
【0073】
本発明を上記記憶媒体に適用する場合、その記憶媒体には、先に説明したフローチャートに対応するコンピュータプログラムのコードが格納されることになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本装置の周辺視野の色情報を取得する周辺色情報取得手段と、
入力された映像信号から白色基準を算出する白色基準算出手段と、
前記周辺色情報取得手段によって取得された色情報と前記白色基準算出手段によって算出された白色基準とから、順応点を算出する順応算出手段と、
前記順応算出手段によって算出された順応点を用いて、入力された映像信号を補正する補正手段と
を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記色情報は、照明情報と壁色情報で構成されることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記順応算出手段は、前記照明情報から無彩色な壁に対する順応点と、前記壁色情報から周辺視野の色に対する順応点を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記順応算出手段によって算出された無彩色な壁に対する順応点と周辺視野の色に対する順応点を考慮して映像信号を補正することを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記画像表示装置は更に、
視聴者と本装置との距離と本装置の画面サイズとから画角情報を取得する画角情報取得手段と備え、
前記順応算出手段は、前記周辺色情報取得手段によって取得された色情報と前記白色基準算出手段によって算出された白色基準と前記画角情報取得手段によって取得された画角情報とから順応点を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項6】
画像表示装置の周辺視野の色情報を取得する周辺色情報取得工程と、
入力された映像信号から白色基準を算出する白色基準算出工程と、
取得された色情報と算出された白色基準とから、順応点を算出する順応算出工程と、
算出された順応点を用いて、入力された映像信号を補正する補正工程と
を備えることを特徴とする画像表示装置の制御方法。
【請求項7】
コンピュータが読み出して実行することにより、前記コンピュータを、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像表示装置として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−128232(P2011−128232A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284572(P2009−284572)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】