説明

画像表示装置およびその製造方法

【課題】画像表示装置において、基板間で生じる放電の放電電流の大きさを抑制し、電子源や蛍光面が破壊されることおよび発光特性の劣化を低減する。
【解決手段】この発明の画像表示装置1のメタルバック層36およびゲッタ層37は、吸着すべき不純物の大きさに対して所定の大きさの多くの空隙(孔)が形成された多孔質状のゲッタカット材38により、電気的に不連続な特性が与えられる。これにより、放電が生じる際の放電開始電圧が高められる(放電耐圧が向上される)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像表示装置およびその製造方法に係わり、さらに詳しくは、真空容器内に、電子源と、この電子源から放出される電子線の照射により画像を表示する蛍光面と、を備えた画像表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極線管(CRT)に代わる画像表示装置として、電子放出素子(電子源)を平面状、かつマトリクス状に配列し、所定間隔で対向させた平面状の蛍光面(前面基板)に選択的に電子線を照射することにより、蛍光面から任意の色の光を出力させて画像を表示させる画像表示装置が開発されている。この種の画像表示装置は、フィールド・エミッション・ディスプレイと呼ばれている(以下、FEDと称する)。また、FEDのうち、電子源として表面伝導型エミッタを用いた表示装置は、表面伝導型電子放出ディスプレイ(以下、SEDと呼称する)として区分されることもあるが、本願においては、SEDも含む総称として、FEDという用語を用いる。
【0003】
FEDは、上述した電子源側の基板と蛍光面側の基板との隙間を数mm以下に設定することができ、周知のCRTと比較して厚さを薄くすることが可能で、LCD装置のような平面表示装置と比較しても同等か、それ以下の厚さにできる。従って、軽量化の面でも、期待がされる。
【0004】
また、CRTやプラズマディスプレイと同様の自己発光型であるため、表示画像の輝度も、得やすい特徴がある。
【0005】
前面基板の内面に設けられる蛍光面には、赤(R)、青(B)、緑(G)の蛍光体が、所定の大きさ、かつ所定の順に配列されている。蛍光面の個々の蛍光体には、それぞれの蛍光体に所定の掃引電圧を与えるアノード電極が接続されている。
【0006】
電子源側の基板には、任意の位置のエミッタと対向される蛍光面を発光させるための、予め特定されたエミッタから所定量の電子を放出させるための走査線および信号線がそれぞれ、マトリックス状に接続されている。
【0007】
FEDにおいては、蛍光体から出力される画像光を前面基板の表示面(観測者からみた目視面)側に反射して画像の輝度高めるため、蛍光体上(組み立てた状態で、電子源側の基板と対向される側)に、金属材料の薄層であるメタルバック層が設けられる。
【0008】
なお、メタルバック層は、電子源すなわちエミッタに対して、アノード(陽極)として機能する。
【0009】
また、FEDは、上述したように、電子源側の基板と蛍光面側の基板とが数mm以下の間隔で対向され、真空度が10−4Pa程度の真空度に維持されているため、内部で発生するガスにより内圧が上昇すると、電子源からの電子放出量が低下して画像の輝度が低下することが知られている。このため、蛍光面または画像表示領域以外の所望の位置に、内部で発生するガスを吸着するゲッタ材を設けることが提案されている。
【0010】
ところで、FEDにおいては、その構造上の特徴から、前面基板と電子源側の基板との間に、10kV前後の高電圧が印加される。このため、メタルバック層(アノード電極)と電子源(エミッタ)との間で、100Aにも達する大きな放電電流の生じる放電(真空アーク放電)が生じやすいことが知られている。このため、メタルバック層を複数に分割し、抵抗部材を介在させた状態で共通電極(アノード電源)と接続することにより、アノードの高電圧を確保する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0011】
また、メタルバック層に、ジグザグ等のパターンの切り欠きを形成して、蛍光面の実効的なインピーダンスを高める技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0012】
なお、メタルバック層を複数に分割し、分割された個々のメタルバックの間にゲッタ材とを配置する例が、本願発明者を含む開発グループから報告されている(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平10−326583号公報
【特許文献2】特開2000−311642号公報
【特許文献3】特開2003−68237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記それぞれの特許文献には、アノードとして機能するメタルバック層を任意数に分割することにより、放電の発生を抑制できることが報告されているが、実際には、前面基板と電子源側と基板との間の間隔、アノードに印加される電圧の大きさおよび経時変化等により、放電の発生を完全に抑止することは困難である。また、放電発生時の放電電流の大きさも抑制されつつあるが、画像の表示に影響を与えない程度の大きさの放電電流よりも大きな放電電流が流れることは避けられない問題がある。
【0014】
フェイスプレート上の個々の画素の大きさを、例えば0.6mmピッチと仮定すると、光の3原色に対応する光を出力可能なR,G,Bの3色の蛍光体が帯状に配列される際の個々の蛍光体相互間の間隔は、最大でも数十μmとなる。また、蛍光体の長さ方向(帯状に伸びる方向)に関しても、その間隔は、100μm程度である。
【0015】
このため、ゲッタ材(メタルバック層と一体の場合もある)に所定形状を与える(区画する)方法として従来から利用されている真空蒸着法、CVD法もしくはスパッタリング法等を用いたとしても、マスク材の精度や、マスク材と蛍光体との位置合わせの精度等に起因して、好適な形状(精度)が得られず、異常な放電を回避できない問題がある。
【0016】
また、仮にゲッタ材またはメタルバック層とゲッタ材に好適な形状を与えることが可能であったとしても、3種類の蛍光体をフェイスプレートに配置する工程、個々の蛍光体を区画するための枠材(ブラックマスク)をフェイスプレートに形成する工程、蛍光体上にゲッタ材を所定厚さに形成する工程、あるいはゲッタ材(または一体のメタルバック層)を所定形状にパターニングする工程等に代表される数多くの工程が必要であり、生産性が低い問題がある。
【0017】
なお、上記それぞれの特許文献に記載された方法あるいは構造は、必ずしも、量産工程に好適に導入できるとは限らない問題がある。
【0018】
この発明の目的は、電子源側基板と蛍光面側基板との間で放電が生じた場合においても放電電流の大きさを抑止でき、表示画像の品位の高い画像表示装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明は、電子線源を保持した第1基板と、前記電子線源から出力された電子線が照射されることで所定の色の光を出力する蛍光体層と、この蛍光体層を色毎に区分する遮光部材と、この遮光部材および前記蛍光体層を覆うとともに前記電子線源からの電子線に対して掃引電圧を与える金属薄層と、この金属薄層に積層され、不純物を吸着する不純物吸着層と、前記金属層および前記不純物吸着層の少なくとも一方を、その電気抵抗が所定の抵抗値以上となるよう、区分するカット部材と、を保持し、前記第1基板に所定間隔で対向された第2基板と、前記第1基板および前記第2基板とを所定の真空度に密閉した画像表示装置において、前記カット部材は、所定の大きさの主材が不規則に配列された不定形状で、多数の孔を含む多孔質材料であることを特徴とする画像表示装置を提供するものである。
【0020】
また、この発明は、電子線源を保持した第1基板と、前記第1基板に保持された電子線源から出力された電子線が照射されることで所定の色の光を出力する蛍光体層と、この蛍光体層を色毎に区分する遮光部材と、この遮光部材および前記蛍光体層を覆うとともに前記遮光部材の側に所定角度に変形され、前記電子線源からの電子線に対して掃引電圧を与える金属薄層と、この金属薄層に積層され、不純物を吸着する不純物吸着層と、前記金属層および前記不純物吸着層の少なくとも一方を、その電気抵抗が所定の抵抗値以上となるよう、区分するカット部材と、を保持し、前記第1基板に所定間隔で対向された第2基板と、前記第1基板と前記第2基板とを所定間隔で、気密保持する枠体と、前記第1基板と前記第2基板との間の前記所定間隔を維持するとともに、前記枠体を介して気密保持される際に、前記第1基板と前記第2基板との間の強度を高めるスペーサ部材と、を有することを特徴とする画像表示装置を提供するものである。
【0021】
また、この発明は、基板の一方の面に、光遮光層を形成し、光遮光層により規定される区画に、R,G,Bの蛍光体を所定の配列でマトリクス状に形成し、光遮光層の少なくとも行方向のまたは列方向の一方向に沿って除去し、所定の大きさの主材が不規則に配列された不定形状で、多数の孔を有する多孔質材料を光遮光層を除去した領域に、配置し、マトリクス状に形成された光遮光層に、金属薄膜を形成し、金属薄膜に重ねて、不純物を吸着するゲッタ材を設け、電子源が形成された基板と対向させて、基板間を封じた後、所定の真空度に排気することを特徴とする画像表示装置の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板に、所定の順、かつマトリクス状に配列されるR,G,Bの蛍光体領域を区画するマスク部材上に設けられ、ゲッタ材が電気的な導通を示す連続した面となることを防止するゲッタカット材の効果を高めることができ、基板間で放電が発生した場合であっても放電電流の大きさを抑制可能である。
【0023】
従って、電子放出素子や蛍光面が損傷し、あるいは特性が劣化することが防止できる。この結果、画質が劣化することのない表示装置が、高い効率で、製造可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1および図2に、この発明の実施の形態が適用されるFED(フィールド・エミッション・ディスプレイ)の構造を示す。
【0026】
FED1は、電子放出素子(電子源すなわちエミッタ)を有する電子源側基板(第1基板、以下リアパネルと呼称する)2と、リアパネル2に所定の間隔で対向され、エミッタからの電子線が照射されることで蛍光を出力する蛍光面側基板(第2基板、以下フェースプレートと呼称する)3とを有する。
【0027】
リヤパネル2には、上述した電子放出素子すなわちエミッタが平面状、かつマトリクス状に、複数個配列されている。フェースプレート3には、リアパネル2の個々のエミッタと概ね対応され、加法混色の3原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)の光を出力する蛍光体が、複数区画形成されている。
【0028】
リアパネル2およびフェースプレート3は、図2に示すように、それぞれ、所定面積が与えられた矩形状の背面(電子源側)ガラス基材20と前面(蛍光面側)30とを含み、それぞれの基材20および30の主要な部分すなわち表示領域相当部には、電子源(電子放出素子)と蛍光体(発光素子)とが所定数設けられている。
【0029】
両基板2,3すなわち2枚のガラス基材20,30は、1〜2mmのギャップ(間隔)で対向され、両基板2,3の周縁部に設けられた側壁4(図2参照)により、相互に接合されている。すなわち、FED1は、2枚の基板2,3(基材20,30)と側壁4とにより密閉構造の外囲器5となる。なお、外囲器5の内部は、例えば10−4Pa程度の真空度に維持される。リアパネル2およびフェースプレート3のガラス基材相互間には、外囲器5として組み立てられた状態でそれぞれに作用する大気圧に抗するため、板状あるいは柱状に形成された多数のスペーサ6が配置されている。
【0030】
フェースプレート3に用いられるガラス基材30の一方の面、すなわち外囲器5として組み立てた際に内側に面する面には、上述したR,G,Bのそれぞれの蛍光体が所定の順に配列された蛍光面31が設けられている。なお、蛍光面31には、後段に詳述するが、アノード電極として機能する金属薄膜(メタルバック層)が設けられる。なお、電子源とアノード電極との間に、例えば10〜15kVの掃引電圧が印加される。
【0031】
リアパネル2(第1基板)のガラス基材20の一方の面、すなわち外囲器5として組み立てた際に内側に面する面には、前に説明した通り、フェイスプレート3の個々の蛍光体層32のそれぞれに、選択的に電子ビームを放出する複数のエミッタ(電子源)21が設けられている。
【0032】
それぞれのエミッタ(電子源)21は、フェースプレート3に形成された画素すなわち蛍光体層32(R),33(G),34(B)からなる3色の1単位に対応して、例えば800列×3および600行に配列されている。エミッタ21は、図示しない走査線駆動回路および信号線駆動回路と接続されたマトリックス配線等により、駆動される。
【0033】
蛍光面31は、図3および図4に示すように、リアパネル2の個々のエミッタから放射される電子が衝突されることでR,G,Bの光を放出する3種類の蛍光体が、所定の面積および位置関係で配列された蛍光体層32(R),33(G),34(B)と、それぞれの蛍光体層を区画するとともにマトリックス状に配列された光遮光層(ブラックマスク)35を含む。
【0034】
各蛍光体層32(R),33(G),34(B)は、フェースプレート3(ガラス基材30)の長手方向を第1方向(X方向)、X方向(長手方向)と直交する幅方向を第2方向(Y方向)とした場合、例えばY方向に延びたストライプ状に形成されている。なお、各蛍光体層R(32),G(33),B(34)は、3色を1単位として配列される。
【0035】
光遮光層35は、例えばカーボンとバインダ材の混合物であって、その抵抗値が、例えば10〜10[Ω/□]に設定されている。なお、バインダ材の含有量は、最大で80%に規定されている。
【0036】
光遮光層35は、第1方向Xに、蛍光体層R(32),G(33),B(34)の3色を単位として、例えば800ラインに区分可能に、所定のギャップ(間隔)で配列されている。なお、光遮光層35は、個々の色の蛍光体層相互間すなわちRとGとの間、GとBとの間のそれぞれにおいても、所定の幅(間隔)に設けられる。
【0037】
また、光遮光層35は、第2方向Yに、例えば600ライン配列されている。換言すると、3色で1組の蛍光体層R,G,Bは、それぞれ光遮光層35の個々のラインより規定される区画の内側すなわち光遮光層35が存在しない窓部(35a)に、所定の順に配置されている。
【0038】
光遮光層(ブラックマスク)35は、図3および図4から容易に理解できるとおり、X方向(列方向)とY方向(行方向)のそれぞれに、800×3列および600行、配列されている。
【0039】
例えば、1画素の大きさを0.6mm四方とすると、個々の蛍光体層が帯状に伸びるY方向に関しては、その幅(X方向)に対応する領域の太さは、横線部の太さに比較して、狭い。一例を示すと、縦線部の幅は、R,G,Bからなる1画素間すなわちB(34)とR(32)との間で20〜100μm、より好ましくは40〜50μmで、残りの部分すなわちR(32)とG(33)またはG(33)とB(34)との間20〜100μm、より好ましくは20〜30μmである。これに対し、横線部の幅は、150〜450μm、より好ましくは300μmである。
【0040】
蛍光面31には、光遮光層35により区画されたそれぞれの蛍光体層領域32,33,34を覆う全面に設けられ、表面に凹凸のある蛍光体層32,33,34に、以下に説明するアノード電極として機能するとともに、蛍光体層で放出された光をガラス基板30側に反射させるために利用される金属薄層すなわちメタルバック層36が、所定の厚さに形成される。なお、この発明において、メタルバック層という用語を用いているが、この層は、アノードとして機能することが可能であれば、金属(メタル)に限定されるものではなく、種々の材料を使うことが可能である。また、メタルバック層36が形成されるに先だって、蛍光体層32,33,34の全域に、例えば樹脂等の蛍光体粒子を相互に固定することのできる平滑化層が設けられてもよい。
【0041】
光遮光層35上には、図5により、より詳細に示すが、窓部35aのそれぞれに配置される蛍光体層のそれぞれから放射される光が隣接する蛍光体層に回り込むことを抑止するととともに、メタルバック層36およびメタルバック層36にさらに積層されるゲッタ層37の電気的導通を低減するためのゲッタカット材38が設けられている。なお、ゲッタ(不純物吸着)層37は、リアパネル(第1基板)2とフェースプレート(第2基板)3とが封止された状態、すなわち外囲器5に収容された状態で内部に生じる不純物ガスを吸着することのできる金属または化合物の薄層であり、例えばBa(バリウム)やTi(チタン)等が用いられる。また、図2(および図5)では、光遮光層35とゲッタカット材38とは独立に形成されているが、抵抗値を適切に設定することで、一体化することもできる。
【0042】
図5は、個々の蛍光体層が同色になる方向(図4における線B−Bに沿った方向(図3のY方向))を、示している。
【0043】
メタルバック層36(およびゲッタ層37)は、光遮光層35に積層されたゲッタカット材38により、部分的に、電気的に不連続な特性が与えられる。すなわちメタルバック層36およびゲッタ層37は、完全なシート状の金属薄膜に比較して、任意の位置で電気的な導通が困難に(電気的に)分断されている。なお、ここでは、分断という表現により電気的な導通がないことを意図しているが、一般に絶縁体といえでも抵抗値は無限大ではなく、厳密な意味で電気的に分断されるということはありえず、このため、本願では、不連続膜になることで、掃引電圧(アノード電圧)が2枚の基板間に印加された場合であっても放電が生じにくい、連続膜の状態に比べ著しく抵抗が高い状態をいう。
【0044】
図6ないし図8は、以下に[表1]に示す組成のゲッタカット材38の電子顕微鏡写真である。
【表1】

である。
【0045】
図6は、表1に示す[実験例1]の顕微鏡写真であり、ゲッタカット材38の特徴は、主材にZnSiO用い、その形状を不定としたものである。なお、顕微鏡写真から、主材の特徴の1つとして、不純物の大きさに比較して荒い凹凸を有し、多孔質状で、特定の規則性が容易に見いだせない形状であることが認められる。このことは、不純物を所定量吸着した状態で、電気的に非連続な状態を提供できる、と考えるに十分である。また、表1において、粒径の欄を1.5μmと表示しているが、個々の突起部(凹凸)を単位として便宜的に計測した結果である。
【0046】
図7は、表1に示す[実験例2]の顕微鏡写真であり、ゲッタカット材38の特徴は、主材にSiO用い、その形状を球状としたものである。なお、顕微鏡写真から、主材の特徴の1つとして、形状が球形(表面積が最小)であることは、放出ガスレートで見ると[実験例1]と同レベルであるが、電気的特性として、連続性を示すことが認められる。また、表1に示した通り、ゲッタ材として、BaとTiを順に供給(フラッシュ)したところ、Tiフラッシュ後、すなわちゲッタ材供給終了時点では、抵抗値が低下し、実質、導通状態となることが確認されている。
【0047】
図8は、表1に示す[比較例]の顕微鏡写真であり、ゲッタカット材38の特徴は、主材にSiO用い、その形状を粉体に近い微少体(元々は、球状)の集合体としたものである。なお、顕微鏡写真から、主材の特徴の1つとして、表面または表面近傍に無数の孔が有り、吸着面積が多いことが認められる。また、表1に示した通り、ゲッタ材としてBaとTiのそれぞれを順に供給(フラッシュ)したところ、Tiフラッシュ後、すなわちゲッタ材供給終了時点では、抵抗値が低下し、実質、導通状態となることが確認されている。
【0048】
表1および図6ないし図8から、主材に、Zn(Zn)を含ませること、および非球状の多孔質とし、吸着対象である不純物が所定量付着した状態で、多孔質の「孔」が不純物に埋もれることのない、組成/構造を持たせることが有益である。なお、[実験例1]において最も有効な要素は、現時点では特定されていないが、例えば多孔質である場合の空隙率、主材/バインダーの組成および比率、形状、粒径、熱膨張率、濡れ性(接触角)、空隙の大きさ(径)、表面積、等のさまざま要素を考えることができる。また、現時点では確認ができていないが、例えば膜(層)状態や、空隙の分布状態等も要因であると考えられる。
【0049】
このような構成により、フェースプレート(第2基板)3とリアパネル(第1基板)2との間で、万一放電が生じた場合でも、その際の放電電流のピーク値が十分に抑制され、放電によるダメージが低減される。これにより、長期に亘って、表示画像を安定に出力可能な画像表示装置が得られる。
【0050】
次に、上述した蛍光面を製造する工程の一例を簡単に説明する。
【0051】
まず、フェースプレート3(第2基板)に用いられるガラス基板30の一方の面に、図示しない下地処理剤等を所定厚さに形成した後、黒色顔料(カーボン)からなる所定のパターンの光遮光層35をフォトリソ法等により形成する。なお、光遮光層35には、縦線部と横線部がマトリクス状に配列されたパターンが与えられる。
【0052】
次に、ZnS系、Y系、YS系等の蛍光体溶液が、蛍光体層32(R),33(G),34(B)として、例えばスラリー法等により、先に形成された光遮光層35の縦線部および横線部により区画された個々の表示領域(発光スペース)に塗布される。以下、乾燥後の個々の蛍光体層が、フォトリソ法等を用いてパターニングされることで、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の蛍光体層32,33,34が得られる。
【0053】
光遮光層35には、各色の蛍光体層が形成されるに先だってゲッタカット材38が積層されてもよい。もちろん、ゲッタカット材38は、蛍光体層32,33,34が形成された後に形成することも可能である。
【0054】
次に、蛍光面31すなわち個々の蛍光体層32,33,34上に、例えばスプレー法により水ガラス等の無機材料からなる図示しない平滑化層を形成し、平滑化層に重ねて、アルミニウム(Al)等の金属膜を真空蒸着法やCVD法もしくはスパッタ等によりメタルバック層36を形成する。なお、メタルバック層36は、前に説明した原理に従って、光遮光層35の縦線部および横線部の少なくとも一方に沿って、ゲッタカット層38により、個々の蛍光体層32,33,34の区画(表示領域)毎に分断される。
【0055】
続いて、メタルバック層36に、ゲッタ層37をさらに積層する。ゲッタ層37は、ゲッタカット材38により、電気的に不連続に形成されることはいうまでもない。
【0056】
以下、蛍光面31が形成されたフェースプレート3と予め電子源(電子放出素子)21が所定個数、配列されたリアプレート2を、真空装置内に導入し、フェースプレート3とリアパネル2とを、所定の減圧下(真空中)にて、密閉する。一般に、ゲッタ層37は、大気に暴露されるとその作用が失われてしまうので、フェースプレート3とリアパネル2との間の空間を真空に保持した状態で形成される。
【0057】
続いて、詳述しないが、図示しないアノード用電源装置、走査線駆動回路および信号線駆動回路等を接続して、FED1が形成される。
【0058】
上記のように構成されたFEDによれば、導電性薄膜としてのメタルバック層36は、ゲッタカット材38により、電気的に不連続に区画(分断)される。従って、フェースプレート3とリアパネル1との間で放電が生じた場合でも、その際の放電電流のピーク値を十分に抑制でき、放電によるダメージを回避することが可能となる。
【0059】
以上説明したように、上述の構造をとることで、金属薄層(メタルバック層)に放電を生じさせる要因となる掃引電圧に対する耐圧を高めることができる。従って、2枚の基板間で放電が発生した場合であっても放電電流の大きさが抑止され、電子放出素子や蛍光面が損傷し、あるいは特性が劣化することが防止できる。この結果、内部で放電が生じることにより画質が劣化することのない表示装置が高い効率で、製造可能となる。
【0060】
なお、この発明は、前記各実施の形態に限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々な変形もしくは変更が可能である。また、各実施の形態は、可能な限り適宜組み合わせて実施されてもよく、その場合、組み合わせによる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の実施の形態に係るFEDを示す斜視図。
【図2】図1の線A−Aに沿った上記FEDの断面図。
【図3】図2に示したFEDにおける蛍光面の構成の一例を説明する平面図。
【図4】図2に示したFEDの蛍光面の近傍を拡大して示す概略図。
【図5】図4の線B−Bに沿った蛍光面等の断面図。
【図6】実験例1のゲッタカット材の状態を示す電子顕微鏡写真。
【図7】実験例2のゲッタカット材の状態を示す電子顕微鏡写真。
【図8】比較例のゲッタカット材の状態を示す電子顕微鏡写真。
【符号の説明】
【0062】
1…画像表示装置、2…リアパネル(電子源側基板,第1基板)、3…フェースプレート(蛍光面側基板,第2基板)、4…側壁、5…密閉構造(外囲器)、6…スペーサ、20…(電子源側)ガラス基材、21…電子放出素子(エミッタ)、30…(蛍光面側)ガラス基材、31…蛍光面、32…蛍光体層(R)、33…蛍光体層(G)、34…蛍光体層(B)、35…光遮光層(ブラックマスク)、36…メタルバック層(金属薄膜,掃引電圧印加部)、37…ゲッタ層、38…ゲッタカット材、。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線源を保持した第1基板と、前記電子線源から出力された電子線が照射されることで所定の色の光を出力する蛍光体層と、この蛍光体層を色毎に区分する遮光部材と、この遮光部材および前記蛍光体層を覆うとともに前記電子線源からの電子線に対して掃引電圧を与える金属薄層と、この金属薄層に積層され、不純物を吸着する不純物吸着層と、前記金属層および前記不純物吸着層の少なくとも一方を、その電気抵抗が所定の抵抗値以上となるよう、区分するカット部材と、を保持し、前記第1基板に所定間隔で対向された第2基板と、前記第1基板および前記第2基板とを所定の真空度に密閉した画像表示装置において、
前記カット部材は、所定の大きさの主材が不規則に配列された不定形状で、多数の孔を含む多孔質材料であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記カット部材は、ZnSiOを含むことを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記カット部材は、非球状に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の画像表示装置。
【請求項4】
電子線源を保持した第1基板と、
前記第1基板に保持された電子線源から出力された電子線が照射されることで所定の色の光を出力する蛍光体層と、この蛍光体層を色毎に区分する遮光部材と、この遮光部材および前記蛍光体層を覆うとともに前記遮光部材の側に所定角度に変形され、前記電子線源からの電子線に対して掃引電圧を与える金属薄層と、この金属薄層に積層され、不純物を吸着する不純物吸着層と、前記金属層および前記不純物吸着層の少なくとも一方を、その電気抵抗が所定の抵抗値以上となるよう、区分するカット部材と、を保持し、前記第1基板に所定間隔で対向された第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とを所定間隔で、気密保持する枠体と、
前記第1基板と前記第2基板との間の前記所定間隔を維持するとともに、前記枠体を介して気密保持される際に、前記第1基板と前記第2基板との間の強度を高めるスペーサ部材と、
を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
前記カット部材は、ZnSiOを含むことを特徴とする請求項4記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記カット部材は、非球状に形成されることを特徴とする請求項4または5記載の画像表示装置。
【請求項7】
基板の一方の面に、光遮光層を形成し、
光遮光層により規定される区画に、R,G,Bの蛍光体を所定の配列でマトリクス状に形成し、
光遮光層の少なくとも行方向のまたは列方向の一方向に沿って除去し、
所定の大きさの主材が不規則に配列された不定形状で、多数の孔を有する多孔質材料を光遮光層を除去した領域に、配置し、
マトリクス状に形成された光遮光層に、金属薄膜を形成し、
金属薄膜に重ねて、不純物を吸着するゲッタ材を設け、
電子源が形成された基板と対向させて、
基板間を封じた後、所定の真空度に排気する
ことを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項8】
多孔質材料は、ZnSiOを含むことを特徴とする請求項7記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項9】
多孔質材料は、非球状に形成されることを特徴とする請求項7または8記載の画像表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−100173(P2006−100173A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286639(P2004−286639)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】