説明

画像表示装置および液晶レンズ

【課題】応答速度を改善した液晶レンズを備えた画像表示装置および、応答速度を改善した液晶レンズを提供することを目的とする。
【解決手段】マトリクス状に配置された複数の画素を有する表示パネルPNLと、表示パネルPNLの表示面側に配置される液晶レンズLZと、を有する画像表示装置であって、表示パネルPNLの画素は、2以上の画素を含む複数の画素グループに分けられ、液晶レンズLZは、電界が印加されることにより、画素グループの各々に対応する複数のレンズ部LPを有するレンズアレイを形成し、レンズ部LPは、一定の屈折率を有する第1領域L1と、屈折率の分布を有する第2領域L2と、を有して構成され、第2領域L2は、レンズ部LPの側部に配置され、第1領域L1は、第2領域L2よりも中央の側に配置されることを特徴とする画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置および液晶レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶は、液体のような流動性を有し、電気的光学的特性に異方性を示し、かつ分子配向状態を種々制御できるという特徴を有している。このような性質を有する液晶を、一対の基板間に封入し、液晶層に印加する電圧を制御することで屈折率の分布特性を制御する液晶レンズも知られている。なお、特許文献1〜3には、液晶レンズを観察者側(前面、表示面側)に備えた画像表示装置が開示されており、例えば、特許文献1に開示されている画像表示装置は、観察者に立体視を提供する3次元ディスプレイ装置となっている。
【0003】
ここで、図7Aおよび図7Bは、液晶レンズが前面に配置された画像表示装置の表示原理を説明するための図である。
【0004】
まず、図7Aでは、液晶層LCに電圧が印加されておらず、液晶分子の配向が初期配向状態で維持されている。このため、図7Aでは、液晶レンズがレンズ効果を奏していない状態となっている。一方、図7Bでは、液晶レンズに電圧が印加されて、第1の電極E1および第2の電極E2間の電界により液晶分子の配向状態が変化しており、液晶レンズがレンズ効果を奏する状態となっている。
【0005】
図7Bの場合には、表示パネルPNLの各画素からの透過光が液晶レンズにより集光されて、それぞれ異なる方向に進行する。このため、図7Aの場合と図7Bの場合とでは、画像表示装置を観察する所定位置の観察者に対して異なる画像(例えば2次元画像と3次元画像)が提供されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−72445号公報
【特許文献2】特開平7−77748号公報
【特許文献3】特表2009−511942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液晶レンズを前面に備えた画像表示装置では、液晶レンズの状態を制御することで、観察者に対して表示される画像に変化を生じさせることができる。
【0008】
ここで、例えば、図7Bで示されるような理想的な球面状のレンズを得ようとすると、液晶レンズを形成する液晶層の厚さを、球面状のレンズが形成できる程度に厚くする必要が生ずる。液晶層の厚さを厚くすると、液晶レンズの応答速度(例えば、2次元画像表示から3次元画像表示に切り替わる時間)が遅くなる場合がある。液晶レンズの応答速度が遅くなると、画像表示装置の観察者にストレスを生じさせる。
【0009】
本発明の目的は、以上の課題に鑑みて、液晶レンズの応答速度を改善した画像表示装置を提供すること、或いは、応答速度を改善した液晶レンズを提供することを目的とする。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みて、マトリクス状に配置された複数の画素を有する表示パネルと、前記表示パネルの観察者側(前面、表示面側)に配置される液晶レンズと、を有する画像表示装置であって、前記表示パネルの画素は、2以上の画素を含む複数の画素グループに分けられ、前記液晶レンズは、電界が印加されることにより、前記画素グループの各々に対応する複数のレンズ部を有するレンズアレイを形成し、前記レンズ部は、屈折率が一定となる第1領域と、屈折率の分布を有する第2領域と、を有して構成され、前記第2領域は、前記レンズ部の側部に配置され、前記第1領域は、前記第2領域よりも中央の側に配置される、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、マトリクス状に配置された複数の画素を有する表示パネルと、前記表示パネルの表示面側に配置される液晶レンズと、を有する画像表示装置であって、前記表示パネルの画素は、2以上の画素を含む複数の画素グループに分けられ、前記液晶レンズは、電界が印加されることにより、前記画素グループの各々に対応する複数のレンズ部を有するレンズアレイを形成し、前記レンズ部は、レンズ機能を有さない第1領域と、レンズ機能を有する第2領域と、を有して構成され、前記第2領域は、前記レンズ部の側部に配置され、前記第1領域は、前記第2領域よりも中央の側に配置される、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る画像表示装置の一形態では、前記第1領域の幅は、前記レンズ部が有する幅の5%以上となる、ことを特徴としてもよい。
【0013】
また、本発明に係る画像表示装置の一形態では、前記第2領域では、前記第2領域に入射する光(の進行方向)に対する屈折率が、前記第1領域の側に進むにつれて小さくなることを特徴としてもよい。
【0014】
また、本発明に係る画像表示装置の一形態では、前記第2領域では、前記第2領域に入射する光の屈折の量が、前記第1領域の側に進むにつれて小さくなることを特徴としてもよい。
【0015】
また、本発明に係る画像表示装置の一形態では、前記液晶レンズは、第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板および前記第2の基板の間に挟持される液晶層を有し、前記液晶層の厚みが50ミクロン以下となる、ことを特徴としてもよい。
【0016】
また、本発明に係る画像表示装置の一形態では、前記液晶レンズは、前記表示パネル側に配置される第1の基板と、前記表示パネルとは反対側に配置される第2の基板と、前記第1の基板側に形成される複数の第1の電極と、前記第2の基板側に形成される複数の第2の電極と、を有し、前記第1の電極および前記第2の電極は、前記画素グループの各々に対応して形成され、前記第1の電極および前記第2の電極の一方は、他方よりも広い領域に形成される、ことを特徴としてもよい。
【0017】
また、本発明に係る画像表示装置の一形態では、2次元画像の表示と3次元画像の表示とを切替える表示切り替え手段を有し、前記液晶レンズは、2次元画像の表示時に、液晶分子の配向が一定の方向に揃えられており、3次元画像の表示時に、前記複数のレンズ部を有する前記レンズアレイを形成し、前記レンズ部の前記第1領域では、前記2次元画像の表示時の液晶分子の配向が維持され、前記レンズ部の前記第2領域では、液晶分子の配向が前記一定の方向から変化している、ことを特徴としてもよい。
【0018】
また、本発明に係る画像表示装置の一形態では、2次元画像の表示と3次元画像の表示とを切替える表示切り替え手段を有し、前記表示切替え手段により、2次元画像および3次元画像の表示を切替える時間は、1秒以内となる、ことを特徴としてもよい。
【0019】
また、本発明に係る画像表示装置の一形態では、前記液晶レンズは、第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板および前記第2の基板の間に挟持される液晶層を有し、前記液晶層の厚みは、前記画素のピッチよりも小さい、ことを特徴としてもよい。
【0020】
また、本発明は、マトリクス状に配置された複数の画素を有する表示パネルと、所定位置から観察する観察者に対し、前記表示パネルの表示に基づいて立体視画像を出力する立体視画像出力手段と、を有する画像表示装置であって、前記表示パネルの画素は、2以上の画素を含む複数の画素グループに分けられて、前記複数の画素グループのそれぞれは、前記観察者に対して、右目用の表示をする画素と左目用の表示をする画素とを含み、前記立体視画像出力手段において前記画素グループの各々に対応する部分は、レンズ機能を有さない第1領域と、レンズ機能を有する第2領域と、を有して構成され、前記第2領域は、前記画素グループの各々に対応する部分の側部に配置され、前記第1領域は、前記第2領域よりも中央の側に配置される、ことを特徴とする。また、前記第2領域は、前記観察者の右目に前記右目用の表示が入力されるように前記表示パネルからの透過光を屈折する、或いは、前記観察者の左目に前記左目用の表示が入力されるように前記表示パネルからの透過光を屈折する、ことを特徴としてもよい。
【0021】
また、本発明に係る液晶レンズは、電界が印加されることにより複数のレンズ部を有するレンズアレイを形成する液晶レンズであって、前記レンズ部は、レンズ機能を有さない第1領域と、レンズ機能を有する第2領域と、を有して構成され、前記第2領域は、前記レンズ部の側部に配置され、前記第1領域は、前記第2領域よりも中央の側に配置される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、液晶レンズの応答速度を改善した画像表示装置を提供することができる。また、本発明によれば、応答速度を改善した液晶レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる画像表示装置を概略的に示す模式図である。
【図2】第1の実施形態の液晶レンズの電極構造を概略的に示す図である。
【図3A】第1の実施形態の画像表示装置の断面を概略的に示す図である。
【図3B】第1の実施形態の画像表示装置の断面を概略的に示す図である。
【図4】液晶レンズの液晶層の厚さと応答速度の関係を示すグラフである。
【図5】第1の実施形態の液晶レンズを視差バリア方式の観点から説明する図である。
【図6】第2の実施形態の画像表示装置の断面を概略的に示す図である。
【図7A】液晶レンズを有する画像表示装置の表示原理を説明する図である。
【図7B】液晶レンズを有する画像表示装置の表示原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる画像表示装置DPの模式図である。画像表示装置DPは、表示パネルPNLと、表示パネルPNLの観察者側(前面、表示面側)に配置される液晶レンズLZとを含んで構成される。また、第1の実施形態における画像表示装置DPは、3次元画像の表示と2次元画像の表示を切替える機能を有している。
【0026】
表示パネルPNLは、マトリクス状に配置される複数の画素を有して構成され、当該複数の画素は、さらに、2以上の画素を含んで構成される複数の画素グループに分けられる。本実施形態の各画素グループは、複数の画素がマトリクス状に配列された表示領域において、互いに隣接するように区画されており、3次元表示の際に右目用の表示を出力する画素と、左目用の表示を出力する画素とを有している。
【0027】
液晶レンズLZは、第1の基板B1と、第2の基板B2と、これらに挟持される液晶層LCとを含んで構成される。液晶レンズLZは、液晶層LCに電界が印加される際にレンズアレイを形成し、当該レンズアレイは、表示パネルPNLの各画素グループに対応する複数のレンズ部を含んで構成される。本実施形態においては、液晶層LCに電界が印加される際に観察者に3次元表示が提供され、電界が無印加の状態では2次元表示が提供される。
【0028】
図2は、本実施形態の液晶レンズLZにおける電極構造を平面的にみた模式図であり、画像表示装置DPを観察者側から見た場合を想定している。第1の電極E1は、第1の基板B1の複数箇所に短冊状に形成されて、観察者から見て上下方向に延在しており、第2の電極E2は、各画素グループに共通となる一枚の平板形状で形成される。液晶レンズLZは光を透過させる必要があるため、少なくとも第2の電極E2はITOなどの透明金属で形成される。
【0029】
第1の基板B1および第2の基板B2の液晶層LC側の界面には、不図示の配向膜が形成されて、図2における矢印Pは、第1の基板B1および第2の基板B2における配向膜のラビング方向を示すものである。したがって、電圧が無印加となる初期配向状態では、液晶分子が第1の基板B1の主面に平行に配向されて、液晶分子の長軸方向が矢印Pの方向に揃えられる。
【0030】
また、第1の電極E1と第2の電極E2との間には、表示切替え手段CMが配線によって接続される。表示切替え手段CMは、外部からの入力によりON状態とOFF状態とが切替えられ、ON状態の場合には、第1の電極E1および第2の電極E2間に電圧が入力されて液晶層LCの配向が制御される。また、ON状態のときの印加電圧は、液晶の劣化を防ぐために交流の電圧となっている。
【0031】
図3Aは、図2におけるIII−IIIの位置に相当する断面を示す図であり、画像表示装置DPの観察者から見て水平方向の断面となっている。同図では、表示パネルPNLにおける1つの画素グループに対応する1つのレンズ部LPの断面の様子が示されている。また、図3Bは、図3Aにおけるレンズ部LPからの透過光を説明するための図となっている。
【0032】
ここで特に、図3Aで示されるように、レンズ部LPは、通過する光の偏光方向に対して一定の屈折率を有する第1領域L1と、一定の屈折率ではなく、通過する光の偏光方向に対して屈折率の分布を有する第2領域L2とを有して構成される。
【0033】
まず、第1領域L1では、液晶分子の配向が揃えられて初期配向方向となっており、2つの基板間で空間的に一定の屈折率を示してレンズ機能を呈しないものとなっている。すなわち、第1領域L1は、表示パネルPNLからの画素からの透過光に関して光学的に均一な媒体となり、図3Bの光線OP3と光線OP4で示すように、表示パネルPNLからの画像が光学的な変調を受けずに、光の進行方向が屈折されることなく、そのまま出力される。一方、第2領域L2では、2つの基板間で液晶分子の配向が変化した状態となっており、レンズ機能を有するものとなっている。第2領域L2における液晶分子は、図3Aで示されるように、垂直方向に液晶分子の長軸が配向している状態から、第1電極E1から遠ざかるに従って徐々に倒れるようにして放射状に広がるような配向となっている。
【0034】
また、図3Aで示されるように、第1領域L1はレンズ部LPの中央に形成され、第2領域L2はレンズ部LPの側部に形成され、第1領域L1と第2領域L2とは互いに隣接している。表示切替え手段CMにより2次元表示から3次元表示に切替える際には、第1領域L1では、2次元表示時の液晶分子の配向(即ち、初期配向)が維持され、第1領域L1の外側に形成される第2領域L2では、印加される電界に従って液晶分子の配向が初期配向状態から変化して屈折率の分布が生じ、第2領域L2に入射される光の進行方向を屈折させる。
【0035】
液晶分子は複屈折性を持っており、液晶分子の長軸方向に振動する(偏光方向を持つ)光に対する屈折率と、液晶分子の短軸方向に振動する(偏光方向を持つ)光に対する屈折率とが異なる。図3Aに示す液晶レンズにおいては、液晶分子を通過する光の内、偏光方向が液晶分子の長軸方向である成分は屈折率が高く異常光となり、偏光方向が液晶分子の短軸方向である成分は屈折率が低く常光となる。
【0036】
図3Aにおいて、液晶レンズに入射される光の偏光方向、換言すると表示パネルPNLから出射される光の偏光方向は、液晶レンズの液晶分子の初期配向(即ち、図2における矢印Pの方向)と同じ方向である。よって、図3AのA点、D点の液晶分子の長軸が垂直に配向されている領域では、液晶レンズに入射される光の偏光方向は、液晶分子の短軸方向の成分がほとんどである。また、B点からC点の間の液晶分子の長軸が水平に配向されている領域(即ち、第1領域L1)では、液晶レンズに入射される光の偏光方向は、液晶分子の長軸方向の成分がほとんどである。
【0037】
更に、液晶分子の長軸が垂直方向に対して傾いて配向されているA点からB点の間、及びD点からC点の間の領域(即ち、第2領域L2)では、液晶レンズに入射される光の偏光方向は、液晶分子の短軸方向の成分と液晶分子の長軸方向の成分とが混在している。この混在の比率は、第2領域L2の各位置で異なっており、換言すれば、第2領域L2は通過する光の偏光方向に対して屈折率の分布を有しているとも表現できる。尚、図3Aにおいて、A点からB点の側、あるいは、D点からC点の側に進むに従って液晶分子の長軸方向の成分の比率が高くなる。
【0038】
図3Aにおける破線は、レンズ部LPにおいて形成されるレンズ界面ULを模式的に示したものである。このレンズ界面ULは、レンズ部LPを通過する光の偏光方向が、液晶分子の長軸方向成分が支配的であるエリアと液晶分子の短軸方向成分が支配的であるエリアとの界面に対応している。従って、第1領域L1は全て長軸方向成分が支配的であるので、破線は第2の基板B2の近傍に位置する。また、図3AのA点、D点は全て短軸方向成分が支配的であるので、破線は第1の基板B1の近傍に位置する。本実施形態における第2領域L2では、第1領域L1の側に進むに従って、長軸方向成分が短軸方向成分よりも支配的になり、通過する光の偏光方向に対して屈折率の分布が形成される。この分布により、通過する光の進行方向に対しては、凸レンズと同じような機能を有する(即ち、光の進行方向を屈折させる)液晶レンズが形成される。このため図3Bで示されるように、第2領域L2からの出力は、第1領域L1からの出力とは異なる方向に屈折して出力される。図中右側の第2領域L2からの出力は、主に図中左側に出力され、図中左側の第2領域L2からの出力は、主に図中右側に出力されることになる。
【0039】
以上説明をしたように、本実施形態における液晶レンズLZでは、電界印加時に形成されるレンズアレイの各レンズ部LPが上述の第1領域L1と第2領域L2とを有し、光の偏光方向に対する屈折率の分布が生じる部分(即ち第2領域L2)をレンズ部LPの一部に限定している。このため、図7Bに示す液晶レンズと比べ、電界印加時に液晶分子の配向が変化する領域が少なくなる。よって、液晶レンズの応答速度が向上する。また、図7Bに示す液晶レンズと比べ、液晶層LCの厚さを薄くすることができる。このことも、後述の通り、液晶レンズの応答速度向上に寄与する。
【0040】
また、第1領域L1の幅は、レンズ部LPが有する幅の少なくとも5%以上とし、10%以上、或いは20%以上とするのが好適である。また、第1領域L1の幅の上限としては、レンズ部LPの幅の60%以下、或いは50%以下とするのが好適である。なお、ここでいう第1領域L1やレンズ部LPの幅は、レンズ界面ULが形成される方向(屈折率の分布が生じる方向におけるレンズ部LPの長さ)のことをいい、本実施形態では、シリンドリカルレンズ状となるレンズ部LPのレンズ形状を有する断面方向の長さのことをいう。また、別の観点では、レンズ部LPの幅は、画素グループに対応して形成される電極パターンのピッチに対応するものとなっている。
【0041】
次に、本実施形態における3次元画像の表示について説明する。液晶レンズLZは、短冊状に形成される第1電極E1のそれぞれの間に、シリンドリカルレンズ状となるレンズ部LPを複数箇所に形成する。したがって、レンズ部LPは、第1電極E1と同様に、画像表示装置DPの上下方向に延在し、水平方向に並設されるものとなっている。また、レンズ部LPに対応する画素グループは、上下方向に延在する2列の画素となっており、RGBの順番で上下方向に配置される。画素グループにおいて水平方向に隣接する2つの画素は、同じ色の画素にするのが望ましい。
【0042】
また、各第1電極E1のピッチは、画素グループのピッチ(本実施形態では2画素のピッチ)とは厳密には異なるものとなっており、想定する観察者の視点位置に応じて適宜設計される。
【0043】
そして図3Bにおいて、画素グループにおける図中左側の列の画素PX1に左目用の画像を、図中右側の列の画素PX2に右目用の画像を表示すると、まず、左目用の画像が観察者の左目に出力され、右目用の画像が観察者の右目に出力されることになり、これにより観察者に立体視が提供される。一方、第1領域L1に入射する光線OP3と光線OP4は、進行方向を変えることなく直進する。しかしながら、第1領域L1の区間は空間的に限定されており、視差バリア方式の場合と同様の効果で、立体視効果を生じさせることが可能となる。このため、本実施形態のようなレンズアレイを形成する液晶レンズLZであっても、即ち、凸レンズ機能を有さない第1領域L1を含む液晶レンズLZであっても、観察者には立体視画像が提供される。
【0044】
ここで図4は、液晶レンズの液晶層LCの厚さと応答速度の関係を示すグラフである。同図は、2次元表示から3次元表示に変化させる場合(2D→3D)の液晶レンズLZの応答速度と、3次元表示から2次元表示に変化させる場合(3D→2D)の液晶レンズLZの応答速度を示すグラフとなっている。図4に示す通り、液晶層LCの厚さが小さくなると、応答速度も速くなる。ここで、図4に示す応答速度(秒)とは、2次元表示と3次元表示と変化させるために所定の電圧を第1の電極E1と第2の電極E2に印加してから、液晶レンズがレンズアレイを形成するまで(或いは、液晶レンズが形成したレンズアレイが解消されるまで)の時間のことをいう。
【0045】
本実施形態の表示パネルPNLは、300ppiであって画素PX1と画素PX2のサイズは概ね85μmとなっており、画素グループの幅やレンズ部LPの幅が概ね170μm(即ち、画素サイズの約2倍)となっている。この場合に、図7Bで示されるような理想的な円弧状のレンズ界面形状を得ようとすると、液晶層LCの厚さとして画素のサイズ程度は必要とされるが、本実施形態では液晶層LCの厚みを50μm(即ち、画素の(例えば短辺方向、水平方向の)サイズ、或いは画素の(例えば短辺方向、水平方向の)ピッチよりも小さい厚さ)としており、これにより、2次元表示および3次元表示の切替え時間(即ち、応答速度)を改善している。
【0046】
以上のように、本実施形態の画像表示装置は、液晶層LCの厚みを薄くすることにより、図3A及び図3Bに示す構造の液晶レンズLZを形成し、液晶レンズLZの応答速度を改善して、所定位置の観察者に立体視画像を提供するようにしている。
【0047】
また、液晶層LCの厚みを薄くして液晶レンズの応答速度を改善する場合には、液晶層LCを50μm以下としてもよいが、40μm以下とするのがより望ましい。液晶層LCの厚みを40μmとすることで、表示を切替える時間が1秒程度となるため視聴者へのストレスがさらに軽減される。またレンズ部LPの幅との比率との関係では、液晶層LCの厚みを、レンズ部LPの幅の3分の1以下、或いは、4分の1以下とするのが望ましく、液晶層LCを50μm以下とする場合には、レンズ部LPの幅を200μm以下とするのが望ましい。
【0048】
なお、図5は、第1の実施形態の液晶レンズLZを視差バリア方式の観点から説明するための図である。図5で示されるように、第1の実施形態の液晶レンズLZは、表示パネルPNLからの出力に基づいて、所定位置の観察者に対して立体画像を出力する立体視画像出力手段VMとして捉えることができる。立体視画像出力手段VMは、各画素グループに対応する部分(画素グループ対応部)のそれぞれに、第1領域L1と第2領域L2を有し、第1領域L1(の特に中心部)は、レンズ機能を呈しないので、視差バリア方式のスリット部に対応し、第2領域L2は、当該観察者の右目R(左目L)に左目(右目)用の画像が出力されるのを妨げる機能を持っている。画素グループ対応部において、第1領域L1は、第2領域L2の内側に配置されるようになっている。
【0049】
そして図5において、画素PX1に左目用の画像を表示し、画素PX2に右目用の画像を表示する場合には、画素PX1から左目(L)に、或いは画素PX2から右目(R)に、直線光として第1領域L1を通って進行する光(画像表示の1成分)が存在する。また、第2領域L2を通る光は、進行方向を屈折させられ、当該観察者の右目R(左目L)に左目用の画像(右目用の画像)が導かれるのを妨げるように、且つ左目用の表示(右目用の表示)を、当該観察者の左目L(右目R)に導くようになっている。観察者には、このようにして立体視画像が提供されることになる。
【0050】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明をする。
【0051】
図6は、第2の実施形態に係る画像表示装置DPの断面を示す図であり、図3Aと同様の位置の断面を示している。第1の実施形態と第2の実施形態とでは、第2の電極E2の形状や液晶層LCの厚みの観点で相違しており、第2の実施形態では、第2の電極E2が短冊状に形成されている。
【0052】
本実施形態では、第1の電極E1だけでなく第2の電極E2も、表示パネルPNLの各画素グループに対応して形成される。複数の第2の電極E2は、所定ピッチで間隔を空けて第2の基板B2上に形成され、2つの第2の電極E2の間では電界が印加されないようになっている。このようになっているため、液晶分子の配向が変化するのはレンズ部LPの一部となり、液晶レンズLZの応答速度が向上することとなる。
【0053】
また、第2の電極E2は、第1の電極E1よりも広い領域に形成されるようになっており、このような電極パターンとすることで、第1の電極E1から遠ざかるに従って、電気力線の傾斜を緩くできて放射状に広がるような液晶分子の配向にすることができる。また、電界印加時に第2の領域L2で生じる屈折率の分布は、第1の電極E1や第2の電極E2の電極パターンを変化させることにより適宜設定できる。また、第1の電極E1と第2の電極E2の電極パターンは入れ替わっても良く、このことは、上述した第1の実施形態の場合であっても同様である。
【0054】
なお、上記の各実施形態における画素グループは、画像表示装置DPの隣り合う2列の画素列としているが、少なくとも2つの画素を含んでいれば良く、さらに多数の画素を含むようにしても良い。また、図7A等で示されるように、3つのサブ画素を備えた2列の画素としてもよい。
【0055】
なお、上記の各実施形態では、画像表示装置DPの縦方向に延在するシリンドリカルレンズ状のレンズアレイを形成しているが、例えば、表示パネルPNLの画素が3×3の画素を有する画素グループに分けられて、液晶レンズLZが、各画素グループに対応するレンズ部LPを縦横方向に配列したレンズアレイを形成するようにしても良い。
【0056】
なお、上記の各実施形態の画像表示装置DPでは、画像を表示する表示領域全体の表示を液晶レンズLZで切替えるようにしても良いし、表示領域の一部の表示を液晶レンズLZで切替えるようにしても良い。
【0057】
なお、上記の各実施形態では、表示パネルPNLに液晶表示パネルを用いても良いし、有機EL表示パネルを用いても良い。液晶表示パネルを用いる場合には、さらに、表示パネルPNLの背面にバックライトが配置される。
【0058】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、各実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成、又は同一の目的を達成することができる構成でおきかえることが出来る。
【符号の説明】
【0059】
DP 画像表示装置、LZ 液晶レンズ、LC 液晶層、B1 第1基板、B2 第2基板、PNL 表示パネル、E1 第1電極、E2 第2電極、P 配向方向、CM 表示切り替え手段、LP レンズ部、L1 第1領域、L2 第2領域、PX1,PX2 画素、UL レンズ界面、OP1〜OP6 光線、L 左目、R 右目、SL スリット部、BR 屈折部分、VM 立体視画像出力手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数の画素を有する表示パネルと、
前記表示パネルの表示面側に配置される液晶レンズと、を有する画像表示装置であって、
前記表示パネルの画素は、2以上の画素を含む複数の画素グループに分けられ、
前記液晶レンズは、電界が印加されることにより、前記画素グループの各々に対応する複数のレンズ部を有するレンズアレイを形成し、
前記レンズ部は、
屈折率が一定となる第1領域と、
屈折率の分布を有する第2領域と、を有して構成され、
前記第2領域は、前記レンズ部の側部に配置され、
前記第1領域は、前記第2領域よりも中央の側に配置される、
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
マトリクス状に配置された複数の画素を有する表示パネルと、
前記表示パネルの表示面側に配置される液晶レンズと、を有する画像表示装置であって、
前記表示パネルの画素は、2以上の画素を含む複数の画素グループに分けられ、
前記液晶レンズは、電界が印加されることにより、前記画素グループの各々に対応する複数のレンズ部を有するレンズアレイを形成し、
前記レンズ部は、
レンズ機能を有さない第1領域と、
レンズ機能を有する第2領域と、を有して構成され、
前記第2領域は、前記レンズ部の側部に配置され、
前記第1領域は、前記第2領域よりも中央の側に配置される、
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された画像表示装置であって、
前記第1領域の幅は、前記レンズ部が有する幅の5%以上となる、
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載された画像表示装置であって、
前記第2領域では、前記第2領域に入射する光に対する屈折率が、前記第1領域の側に進むにつれて小さくなることを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載された画像表示装置であって、
前記第2領域では、前記第2領域に入射する光の屈折の量が、前記第1領域の側に進むにつれて小さくなることを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載された画像表示装置であって、
前記液晶レンズは、
第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板および前記第2の基板の間に挟持される液晶層を有し、
前記液晶層の厚みが50ミクロン以下となる、
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載された画像表示装置であって、
前記液晶レンズは、
前記表示パネル側に配置される第1の基板と、
前記表示パネルとは反対側に配置される第2の基板と、
前記第1の基板側に形成される複数の第1の電極と、
前記第2の基板側に形成される複数の第2の電極と、を有し、
前記第1の電極および前記第2の電極は、前記画素グループの各々に対応して形成され、
前記第1の電極および前記第2の電極の一方は、他方よりも広い領域に形成される、
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載された画像表示装置であって、
2次元画像の表示と3次元画像の表示とを切替える表示切り替え手段を有し、
前記液晶レンズは、
2次元画像の表示時に、液晶分子の配向が一定の方向に揃えられており、
3次元画像の表示時に、前記複数のレンズ部を有する前記レンズアレイを形成し、前記レンズ部の前記第1領域では、前記2次元画像の表示時の液晶分子の配向が維持され、前記レンズ部の前記第2領域では、液晶分子の配向が前記一定の方向から変化している、
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載された画像表示装置であって、
2次元画像の表示と3次元画像の表示とを切替える表示切り替え手段を有し、
前記表示切替え手段により、2次元画像および3次元画像の表示を切替える時間は、1秒以内となる、
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載された画像表示装置であって、
前記液晶レンズは、
第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板および前記第2の基板の間に挟持される液晶層を有し、
前記液晶層の厚みは、前記画素のピッチよりも小さい、
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
マトリクス状に配置された複数の画素を有する表示パネルと、
所定位置から観察する観察者に対し、前記表示パネルの表示に基づいて立体視画像を出力する立体視画像出力手段と、を有する画像表示装置であって、
前記表示パネルの画素は、2以上の画素を含む複数の画素グループに分けられて、
前記複数の画素グループのそれぞれは、前記観察者に対して、右目用の表示をする画素と左目用の表示をする画素とを含み、
前記立体視画像出力手段において前記画素グループの各々に対応する部分は、
レンズ機能を有さない第1領域と、
レンズ機能を有する第2領域と、を有して構成され、
前記第2領域は、前記画素グループの各々に対応する部分の側部に配置され、
前記第1領域は、前記第2領域よりも中央の側に配置される、ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項12】
請求項11に記載された画像表示装置において、
前記第2領域は、前記観察者の右目に前記右目用の表示が入力されるように前記表示パネルからの透過光を屈折する、或いは、前記観察者の左目に前記左目用の表示が入力されるように前記表示パネルからの透過光を屈折する、
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項13】
電界が印加されることにより複数のレンズ部を有するレンズアレイを形成する液晶レンズであって、
前記レンズ部は、
レンズ機能を有さない第1領域と、
レンズ機能を有する第2領域と、を有して構成され、
前記第2領域は、前記レンズ部の側部に配置され、
前記第1領域は、前記第2領域よりも中央の側に配置される、
ことを特徴とする液晶レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2012−242681(P2012−242681A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113960(P2011−113960)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】