説明

画像表示装置用前面フィルター

【課題】金属を含有する導電性パターン層2を有し、その上に光硬化性樹脂組成物を用いて形成した他の機能層4を粘着剤層3を介して接合した積層構造を含む画像表示装置用前面フィルター101において、導電性パターン層と他の機能層との密着性に優れ、導電性パターン層の腐蝕による変色が生じず、さらに粘着剤層の黄変も生じない前面フィルターを提供する。
【解決手段】前記粘着剤層が、カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系樹脂、シランカップリング剤、ベンゾトリアゾール系化合物、及び、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルなどの画像表示本体の鑑賞者側に配置される画像表示装置用前面フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDPという)、陰極線管(CRTという)など一部の画像表示装置は電磁波を発生し、電磁気的なノイズ妨害(Electro Magnetic Interference;EMI)の原因となる。特に、PDPは、発光にプラズマ放電を利用するため、30MHz〜1GHz帯域の不要な電磁波が外部に漏洩して他の機器(例えば、遠隔制御機器、情報処理装置等)に影響を与えるおそれがある。そのため、PDPの前面側(観察者側)に、電磁波遮蔽層を含む前面フィルターを設ける。
一般的にPDP用前面フィルターは、電磁波遮蔽層を含むだけでなく、近赤外線吸収層、反射防止層、コントラスト向上層など他の複数の機能層をさらに積層して多機能化、高機能化されている。複数の機能層を積層し、一体化する方法としては、粘着剤層を介して接合する方法が知られている。
例えば特許文献1には、電磁波遮蔽層とコントラスト向上層を、透明粘着剤層を介して貼り合せることが記載されている。また特許文献1において、コントラスト向上層はレンズ部と光吸収部と備えており(段落0022)、レンズ部は紫外線硬化型樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物により形成できるが量産性の観点から紫外線硬化型樹脂組成物を用いることが好ましいとされ(段落0023)、光吸収部の透明バインダとしては電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましいとされる(段落0024)。
【0003】
特許文献2には、電磁波遮蔽シートの銅メッシュ層上に粘着剤層を介して被着体層を積層した構成において、カルボキシル基を有するアクリル系粘着剤のような酸価を有する粘着剤と、ベンゾトリアゾール系酸化防止剤のような酸化防止剤を含む粘着剤層を用いることが記載されている。特許文献2において、酸価を有する粘着剤を用いることによって、銅メッシュ層と被着体層の密着性が高くなる。また、酸価を有する粘着剤は銅を腐蝕して銅メッシュ層の表面及び粘着剤層を青色に変色させるが、特許文献2においては、酸化防止剤によって、そのような銅の腐蝕に起因する青色への変色が防止される。
特許文献3(特開2006−15707号公報)には、電磁波遮蔽シートの金属製の網目パターン上に粘着層を介して光学フィルター用機能性フィルムを貼り合わせた複合フィルターにおいて、防錆剤としてベンゾトリアゾール系化合物、粘着剤としてアクリル系樹脂の粘着剤を含有する粘着層を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−272161号公報
【特許文献2】特開2007−95971号公報
【特許文献3】特開2006−15707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前面フィルターの電磁波遮蔽層として金属を含有する導電性パターン層を設け、その上に粘着剤層を介して特許文献1のようなコントラスト向上層を接合したい場合に、上記特許文献2に記載されたような酸価を有する粘着剤と酸化防止剤を含有する粘着剤層を用いることで、導電性パターン層と他の機能層との優れた密着性が得られ、導電性パターン層の金属が腐蝕することによる変色も防止できた。
しかし、この場合に於いて、金属の錆が粘着剤層中へ移行することに起因する錆は解消したはずであるにもかかわらず、依然として粘着剤層が黄色に変色(黄変)するという問題が生じた。本発明者らが鋭意検討した結果、コントラスト向上層のレンズ部及び光吸收部を紫外線硬化型樹脂組成物により形成すると、コントラスト向上層に含まれる光重合開始剤や単量体などの残留物が粘着剤層に移行し、粘着剤層中の成分と相互作用することによって、上記粘着剤層の黄変が引き起こされるものと推測される。さらに、導電性パターン層に含まれる金属が粘着剤層に移行し、コントラスト向上層に含まれる上記残留物が粘着剤層に移行し、これらが粘着剤層中で相互作用することや、導電性パターン層からの移行物質が、コントラスト向上層からの移行物質及び粘着剤層を形成する成分と粘着剤層中で相互作用することも、黄変の原因になると推測される。
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであり、電磁波遮蔽層などの何らかの機能を発揮させるために金属を含有する導電性パターン層を有し、その上に、紫外線硬化型樹脂組成物などの光硬化性樹脂組成物を用いて形成した他の機能層を、粘着剤層を介して接合した積層構造を含む画像表示装置用前面フィルターにおいて、導電性パターン層と他の機能層との密着性に優れ、導電性パターン層の腐蝕による変色が生じず、さらに粘着剤層の黄変も生じない前面フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像表示装置用前面フィルターは、金属を含有する導電性パターン層の上に、光硬化性樹脂組成物を硬化させた機能層を、粘着剤層を介して接合した積層構造を含み、
前記粘着剤層が
カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系樹脂
シランカップリング剤
ベンゾトリアゾール系化合物
ヒンダードフェノール系酸化防止剤
を含有する粘着組成物を用いて形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の画像表示装置は、画像表示装置本体の鑑賞者側に、前記本発明の画像表示装置用前面フィルターを配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属を含有する導電性パターン層と光硬化性樹脂組成物を硬化させた機能層とを接合する粘着剤層が、密着性に優れ、導電性パターン層の錆に起因する変色を起こさず、黄色に変色することも起きないので、品質の良い画像表示装置用前面フィルターが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の画像表示装置用前面フィルターをPDPパネルの鑑賞者側に配置したPDPの断面を模式的に示した図である。
【図2】図2は、本発明の画像表示装置用前面フィルターに含まれる導電性パターン層の平面図である。
【図3】図3は、導電性パターン層の一例の断面を模式的に示した図である。
【図4】図4は、本発明の画像表示装置用前面フィルターに含まれるコントラスト向上層の平面図である。
【図5】図5は、導電性パターン層を形成する装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを表す。
本発明において、分子量とは、分子量分布を有する場合には、THF溶剤におけるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である重量平均分子量を意味し、分子量分布を有しない場合には、化合物そのものの分子量を意味する。
フィルムとシートのJIS K6900での定義では、シートとは薄く一般にその厚さが長さと幅の割りには小さい平らな製品をいい、フィルムとは長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通例、ロールの形で供給されるものをいう。したがって、シートの中でも厚さの特に薄いものがフィルムであるといえるが、シートとフィルムの境界は定かではなく、明確に区別しにくいので、本発明では、厚みの厚いもの及び薄いものの両方の意味を含めて、「シート」と定義する。
本発明の光は、電離放射線の中で、可視領域の波長の電磁波だけでなく、紫外線、X線のような非可視領域の波長の電磁波を含み、これらを総称する。
【0011】
本発明の画像表示装置用前面フィルターは、金属を含有する導電性パターン層の上に、光硬化性樹脂組成物を硬化させた機能層を、粘着剤層を介して接合した積層構造を含み、
前記粘着剤層が
カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系樹脂
シランカップリング剤
ベンゾトリアゾール系化合物
ヒンダードフェノール系酸化防止剤
を含有する粘着組成物を用いて形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
従来、画像表示装置用前面フィルターに用いる粘着剤層の粘着成分としては、酸価、即ち、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂が用いられてきたが、光硬化性樹脂組成物を硬化させた機能層の残留物が粘着剤層中に移行すると、酸価を有するアクリル系樹脂と相互反応し、黄変を引き起こすと考えられる。
そこで本発明においては、粘着剤層の粘着成分としてカルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系樹脂を用い、さらにベンゾトリアゾール系化合物とヒンダードフェノール系酸化防止剤を粘着剤層に配合することにより、粘着剤層の黄変を防止または軽減する。
しかしながら粘着剤層の粘着成分としてカルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系樹脂を用いると、充分な粘着性能が得られなくなる。そこで本発明においては、カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系樹脂と共にシランカップリング剤を粘着剤層に配合することにより、金属を含有する導電性パターン層と他の機能層との間に充分な密着性を確保する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態の一例を模式的に示した断面図である。この実施形態を代表例として用い、以下、説明を続ける。
図1は、画像表示装置用前面フィルター(101)を、画像表示装置の本体であるPDPパネル(102)の鑑賞者側に配置した状態を示している。画像表示装置用前面フィルター(101)は、PDPパネル(102)の鑑賞者側に空気層を介して配置されているが、PDPパネル(102)の表面に貼り付けられていてもよい。
画像表示装置用前面フィルター(101)は、透明基材1の上に電磁波遮蔽層として金属を含有する導電性パターン層2を設け、その上に粘着剤層3を介してコントラスト向上層4を接合した積層構造を有している。透明基材1と導電性パターン層2の間には、プライマー層5が介在している。
画像表示装置用前面フィルター(101)を製造するには、透明基材1の上に導電性パターン層2を形成したシート状部材と、コントラスト向上層の構造を有するシート状部材を、それぞれ準備し、それらを粘着組成物により接合する。
なお、本発明は、導電性パターン層の上に光硬化性樹脂組成物を硬化させた層を粘着剤層を介して接合したい場合に広く適用することができる。導電性パターン層は電磁波遮蔽以外の機能を発揮させることを期待するものであってよいし、導電性パターン層の上に接合される他の機能層は、光硬化性樹脂組成物を硬化させて形成した機能層であれば、コントラスト向上以外の如何なる機能を発揮させるものであってもよい。
【0014】
<透明基材>
透明基材1は、可視光線領域での透明性(光透過性)、耐熱性、機械的強度等の要求物性を考慮して、公知の材料及び厚みを適宜選択すればよく、ガラス、セラミックス等の透明無機物の板、或いは樹脂板など板状体の剛直物でもよい。ただし、生産性に優れるロール・トゥ・ロールでの連続加工適性を考慮すると、可撓性のある樹脂フィルム(乃至シート)が好ましい。なお、ロール・トゥ・ロールとは、巻取(ロール)から巻き出して供給し、適宜加工を施し、その後、巻取に巻き取って保管する加工方式をいう。
【0015】
樹脂フィルム、樹脂板の材料として用いる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール−テレフタール酸共重合体、エチレングリコール−テレフタール酸−イソフタール酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどのポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリプロピレン、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等である。なかでも、ポリエチレンテレフタレートの2軸延伸フィルムは、耐熱性、機械的強度、光透過性、コスト等の点で好ましい透明基材である。
透明無機物としては、ソーダ硝子、カリ硝子、硼珪酸硝子、鉛硝子等の硝子、或いはPLZT、石英等の透明セラミックス等である。
【0016】
透明基材の厚みは基本的には特に制限はなく用途等に応じ適宜選択することができる。可撓性のある樹脂フィルムを利用する場合、例えば12〜500μm、好ましくは25〜200μm程度である。樹脂や透明無機物の板を利用する場合、例えば、500〜5000μm程度である
【0017】
<金属を含有する導電性パターン層>
金属を含有する導電性パターン層2は、それ自体が不透明性であっても、導電性ラインの間に開口部が存在することにより、電磁波遮蔽性能等の何らかの機能と光透過性を両立させている。
図2は、図1の導電性パターン層2を鑑賞者側から見た平面図である。導性性パターン層2は、格子状に配列した導電性ライン2aと、導電性ラインが枠となって仕切られた正方形の開口部2bから構成され、開口部2bが密に配列したメッシュ状である。また、導電性パターン層2の周囲には、接地パターン8が設けられている。
【0018】
導電性ラインのパターン形状としては、メッシュ(網目乃至格子)形状が代表的なものであるが、その他、ストライプ(平行線群乃至縞模様)形状、螺旋形状等も用いられる。メッシュ形状の場合、単位格子形状は、正3角形、不等辺3角形等の3角形、正方形、長方形、台形、菱形等の4角形、6角形、8角形等の多角形、円、楕円等が用いられる。また、モアレを軽減する目的で、ランダム網目状、または擬似ランダム網目状のパターンなども使用可能である。
導電性ラインの線幅と線間ピッチも、通常採用されている寸法であればよい。例えば、線幅は5〜50μmとすることができ、線間ピッチは100〜500μmとすることができる。線幅は、より高透明のものを得るために微細化する観点から、30μm以下、特に20μm以下とすることが好ましい。開口率(導電性パターン層の全面積中における開口部の合計面積の占める比率)は、通常、50〜95%程度である。
また、導電性パターン層の周辺部の全周又はその一部に、導電性パターン層との導通を保ちつつ隣接した全ベタ(開口部の無い層)等の接地パターンが設けられる場合もある。この接地パターンは、導電性パターン層形成時に同時に形成してもよく、別途形成してもよい。接地パターンを別途形成する場合には、導電インキを用いて印刷してもよいし、導電金属テープなどを貼ることにより形成してもよい。
導電性パターン層は、必要に応じて、黒化層や防錆層など、導電性パターン層の機能を補助する層を含んでいてもよい。
【0019】
導電性パターン層の形成方法は特に限定されるものではないが、例えば、次の4つの方法が挙げられる。
(1)導電性インキまたは導電性ペーストを用いる凹版印刷法によって、充分な透視性を確保するための所定パターン形状を有し、且つ、十分な電磁波遮蔽性能を発揮するための厚さ(ライン高さ)を有する導電性ラインを形成する。
(2)透明基材へ導電性インキを所定パターン状に印刷し、該パターン状導電性インキ層の上へ金属メッキする方法(例えば、特開2000−13088号公報)。
(3)透明基材へ、導電性インキ又は化学メッキ触媒含有感光性塗布液を全面に塗布し、該塗布層をフォトリソグラフィー法で所定パターン状とした後に、該パターン状塗布層の上へ金属メッキする方法(例えば、住友大阪セメント株式会社新材料事業部新規材料研究所新材料研究グループ、“光解像性化学メッキ触媒”、[online]、掲載年月日記載なし、住友大阪セメント株式会社、[平成15年1月7日検索]、インターネット〈URL:http://www.socnb.com/product/hproduct/display.html〉)。
(4)透明基材と金属箔とを接着剤で積層した後に、金属箔をフォトリソグラフィー法で所定パターン状とする(例えば、特開平11−145678号公報)。
(5)透明基材の一方の面へ、導電処理層を形成し、その上に電解メッキにより金属メッキ層として金属層を形成した透明基材を準備し、該金属メッキした透明基材の金属メッキ層及び導電処理層を、フォトリソグラフィー法で所定パターン状とする(例えば、特開2003−86991号公報)。
【0020】
特に本発明においては、透明基材の表面にプライマー層を形成し、該プライマー層が流動性を保持した状態下で、該プライマー層上に導電性インキまたは導電性ペーストを用いて凹版印刷法を行う方法(いわゆる引き抜きプライマー凹版印刷法)によって、所定パターンの導電性パターン層を形成することが好ましい。
<引き抜きプライマー凹版印刷法>
(プライマー層用組成物)
プライマー層は、その主目的が導電性パターン層の印刷形成時に、凹版から被印刷物(透明基材)へのインキ(導電層用組成物)転移性を向上させ、転移後の導電層用組成物と被印刷物との密着性を向上させるための層である。すなわち、透明基材及び導電性パターン層の双方に密着性が良く、また開口部(ライン非形成部)の光透過性確保のために透明な層でもある。
更に、該プライマー層は、流動性を保持できる状態で透明基材上に設けられ、凹版印刷時の凹版に接触している間に液状から固化させる層として形成される層であり、導電性パターン層が形成されたときに固化している層である。
【0021】
かかるプライマー層を構成する材料としては、熱可塑性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などを用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
本発明では、未硬化状態において液状(流動性)の電離放射線重合性化合物を含む電離放射線硬化性組成物を塗工、硬化(固体化)してなる層が好適に用いられる。
該電離放射線重合性化合物としては、電離放射線で架橋等の反応により重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーが用いられる。
【0022】
かかるモノマーとしては、ラジカル重合性モノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート類、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類等の各種(メタ)アクリレートが挙げられる。
カチオン重合性モノマーとして、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどグリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどオキセタン類等が挙げられる。
また、かかるプレポリマー(乃至オリゴマー)としては、ラジカル重合性プレポリマーとして、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートプレポリマー、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオール系プレポリマー、不飽和ポリエステルプレポリマー等が挙げられる。その他、カチオン重合性プレポリマーとして、例えば、ノボラック系エポキシ樹脂プレポリマー、芳香族ビニルエーテル系樹脂プレポリマー等が挙げられる。
【0023】
電離放射線として、紫外線、又は可視光線を採用する場合には、通常は、プライマー層用組成物に光重合開始剤を添加する(この場合の電離放射線硬化性組成物を光硬化性組成物と呼称する)。
プライマー層を凹版表面で硬化させた後に剥離する際、版面からの剥離に要する力(剥離力)を小さくして円滑に剥がれるように、プライマー層用組成物に離型剤を添加してもよい。プライマー層の離型剤としては、一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等が挙げられる。
プライマー層用組成物は、溶剤を含んでもよいが、その場合、塗布後に乾燥工程が必要となるため、コストを考えれば溶剤を含まないタイプの電離放射線硬化性組成物(ノンソルベントタイプ乃至無溶剤型)であることが好ましい。
【0024】
(導電性パターン層を形成するための組成物)
導電性パターン層は、導電性粒子とバインダー樹脂を含む導電層用組成物(導電性インキ或は導電性ペースト)を、WO2008/149969号公報に開示されている凹版印刷法によりプライマー層上に所定パターン状に印刷することで得ることができる。
導電層用組成物を構成する導電性粒子としては、金、銀、白金、銅、ニッケル、錫、アルミニウムなどの低抵抗率金属の粒子、或は芯材粒子としての高抵抗率金属粒子、樹脂粒子、非金属無機粒子等の表面が金や銀などの低抵抗率金属で被覆された粒子、黒鉛粒子、導電性高分子粒子、導電性セラミックス粒子等を挙げることができる。
導電性粒子の形状は、正多面体状、截頭多面体状等の各種の多面体状、球状、回転楕円体状、鱗片状、円盤状、樹枝状、繊維状等から選ぶことができる。特に、多面体状、球状、又は回転楕円体状が好ましい。これらの材料や形状は適宜混合して用いてもよい。
導電性粒子の大きさは種類に応じて任意に選択されるので一概に特定できないが、好ましくは、平均粒子径が0.01〜10μm程度のものを用いることができる。得られる凸状パターン層の電気抵抗を低くして良好な電磁波シールド性を得るためには、平均粒子径は小さい方が好ましく、この観点からは平均粒子径0.1〜1μmが好ましい。
【0025】
導電層用組成物を構成するバインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用可能である。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等の樹脂を挙げることができ、電離放射線硬化性樹脂としては、プライマーの材料として前記した物を挙げることができ、これらを1種単独で、或いは2種以上混合して用いる。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の樹脂を挙げることができ、これらを1種単独で、或いは2種以上混合して用いる。なお、熱硬化性樹脂を使用する場合、必要に応じて硬化触媒を添加してもよい。電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は、必要に応じて光重合開始剤を添加してもよい。
尚、導電層用組成物中における導電性粒子とバインダー樹脂との質量比は、(導電性粒子)/(バインダー樹脂)=60/40〜97/3、の範囲とすることが、十分な導電性(電磁波遮蔽性)、印刷適性、及び導電性パターン層の強度を発現する上で、好ましい。
【0026】
版の凹部への充填に適した流動性を導電層用組成物に付与するために、通常は、これら樹脂を溶剤に溶かし、ペースト状にして使用する。導電性ペーストの溶剤は特に制限はなく、一般的に印刷インキに用いられる溶剤の中から適宜選択して使用できるが、プライマー層の安定硬化を阻害したり、硬化後のプライマー層を膨潤、白化、溶解させたりしないものが好ましい。凹版凹部への塗工時点での溶剤の含有量は通常、10〜70質量%程度であるが、必要な流動性が得られる範囲でなるべく少ないほうが好ましい。但し、WO2008/149969号公報開示の凹版印刷法を適用する場合、十分な転写性及び導電性パターン層とプライマー層との十分な密着性を得る為には、導電層用組成物中には、版凹部からの転写時点で、0.01〜10質量%程度の溶剤を含有することが好ましい。
また、導電層用組成物の流動性や安定性を改善するために、導電性や、プライマー層との密着性に悪影響を与えない限りにおいて適宜充填剤や増粘剤、帯電防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、分散剤、沈降防止剤などを添加してもよい。
【0027】
(凹版印刷の手順)
先ず、透明基材の一面側に、上記プライマー層用組成物を塗布し、プライマー層を形成する。
次に、上記透明基材のプライマー層を形成した面に、凹版印刷の方法によって、導電層用組成物を所定パターン状に転写する。
図5は、凹版印刷による転写工程を実施する装置の概略構成図である。図5の装置は、版胴の側面に凹版を供えたグラビア版ロール10を中心とし、その周囲に、導電層用組成物17を貯留した容器11、ピックアップロール12、ドクターブレード13、第1ニップロール14、電離放射線照射ゾーン15、第2ニップロール16を設けた構成をとる。
【0028】
図5の装置において、グラビア版ロール10の回転に合わせてピックアップロール12を回転させて、容器11内の導電層用組成物17をピックアップロールによって版面の凹部に充填する。版面に付着した余剰の導電層用組成物は、ドクターブレード13により掻き取り、凹部の導電層用組成物だけを残す。ドクターブレードの位置を通過した版面と、プライマー層が形成された透明基材18のプライマー層側とを、第1ニップロール14で圧着する。
【0029】
圧着する時点において、プライマー層は流動性を保持した状態下で版面に圧着される。本発明で言う「プライマー層が流動性を保持した状態」とは、プライマー層を導電層用組成物が充填された版面に圧着する際の圧力によって流動(変形)する性質又は状態をいい、水のように低粘度である必要はない。また、必ずしもNewton粘性である必要もなく、チキソトロピー性或いはダイラタンシー性のような非Newton粘性を有していてもよい。
そのようなプライマー層の流動性状態は、プライマー層用の樹脂として電離放射線硬化性樹脂を用いた場合には、電離放射線硬化性を持ったインキを透明基材上に塗布し、未硬化の状態を維持するだけで得られる。
また、プライマー層用の樹脂として熱可塑性樹脂組成物を用いた場合には、透明基材上に熱可塑性樹脂組成物を塗布した後、版面と圧着する段階で、流動性状態になる程度(例えば、50℃〜200℃程度)に加熱すればよい。
【0030】
プライマー層が電離放射線硬化性樹脂組成物である場合には、第1ニップロール14の位置を通過後、電離放射線照射ゾーン15を通過させる間にプライマー層を硬化する。また、プライマー層が熱可塑性樹脂組成物である場合には、第1ニップロール14の位置を通過後、プライマー層の温度を下げて固化する。
そして、プライマー層が硬化または固化して流動性を失った後、第2ニップロール16によって透明基材を版面から剥がすことによって、透明基材のプライマー層上に導電層用組成物が所定パターン状に転写する。
導電層用組成物として熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などの硬化性樹脂を用いた場合には、透明基材を版面から引き剥がした後、硬化処理を行うことによって、導電性パターン層が得られる。
【0031】
図3は、引き抜きプライマー凹版印刷法によって形成された導電性パターン層を構成するライン部分の延在方向に直交する断面、即ち主切断面を模式的に示したものである。
引き抜きプライマー凹版印刷法で導電性パターン層を形成する場合、導電性パターン層の厚さ(プライマー層の表面から導電性ライン2aの頂上部までの高さ)Tは、2μm〜50μm程度であることが好ましい。
また、プライマー層5の厚さTpは、硬化後の厚さで1μm〜10μm程度とする。引き抜きプライマー凹版印刷法を行った場合、導電性ライン2aの直下の位置におけるプライマー層の厚さTp’は、他の位置での厚さTよりも1〜5μm程度厚くなる。
図3において、導電性ライン2aとプライマー層5の界面は明瞭であるが、この界面の断面形態は、不規則に入り組んでいる場合や、相溶して不明瞭になっている場合がある。
導電性パターン層は、充分な電磁波遮蔽効果を得る観点から、表面抵抗率(単に、表面抵抗とも略称)が0.8Ω/□以下であることが好ましい。
【0032】
<光硬化性樹脂組成物を硬化させた機能層>
導電性パターン層の上に接合される他の機能層は、如何なる機能を発揮するものであってもよく、例えば、コントラスト向上層、近赤外線吸収層、反射防止層、防眩層などを例示することができる。
当該機能層を形成するための光硬化性樹脂組成物に配合する光硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂に光重合開始剤を添加してなる紫外線硬化型の光硬化性樹脂などが広く該当し、電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、前記プライマー層の材料として列記した物などが挙げられる。
尚、特にコントラスト向上層に好適な光硬化性樹脂については、改めて詳述する。
【0033】
(コントラスト向上層)
図1の実施形態において、コントラスト向上層4は、光硬化性樹脂組成物を硬化させた機能層に該当する。
斯かる構成のコントラスト向上層は、鑑賞者側から前面フィルターに入射する外光を効率良く吸収すると共に、画像表示装置で生成した画像光を鑑賞者側へ効率よく出射することによって、画像表示のコントラストを向上させる機能を発揮する層である。
図1に示した構成のコントラスト向上層4の断面は、画像光を出射する光透過部(透明樹脂部)6と、外光や迷光を吸収する光吸収部(黒樹脂部)7を有し、光透過部6と光吸収部7が交互に配列する。なお、コントラストに影響を与える外光は、可視領域(一般に、380nm〜780nm)である。
また、図4は、図1に含まれるコントラスト向上層4をPDPパネル(102)側から見た平面図であり、ストライプ状の光透過部6と光吸収部7が交互且つ平行に配列する、所謂微小ルーバー構造をなす。
【0034】
コントラスト向上層4は、層の面方向(表裏面乃至これに平行な面内の任意の方向)に沿った所定方向に直線状に連なり、その延長方向に対して垂直な断面(主切断面)が幅広の下底を観察者側に向ける台形となる形状を有する光透過部6と、該光透過部と平行な方向に直線状に連なり、その主切断面が幅広の下底をPDP側に向ける楔型となる形状を有する光吸収部7とを、交互に多数噛み合わせて配列してなる、PDP画像光の透過面を備える。
なお、交互に多数噛み合わせて配列するとは、光透過部と光吸収部が交互に多数隣接して一体となり、互いに相手の一部の形状を構成することを意味する。また、PDP画像光の透過面は層の界面に限定されず、一定の厚みを有する。
【0035】
光透過部6の形成方法としては、加熱された金型を熱可塑性樹脂に押圧する熱プレス法、熱可塑性樹脂組成物を金型内に注入して固化させるキャスティング法、射出成形法、光硬化型樹脂組成物を成形型内に注入して紫外線等で硬化させる光硬化法等の従来公知の方法が用いられる。
これらの方法の中では、量産性に優れた光硬化法がより好ましい。光硬化法は、ロール状の型を使用して、連続シートを供給しながら光透過部の単位を連続的に型押しして生産することが可能である。
【0036】
光透過部を形成するための光硬化型樹脂組成物は、光硬化性樹脂と光重合開始剤とを含んでいる。このような光硬化型樹脂組成物としては、例えば、光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)および光重合開始剤(S1)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
上記光硬化型プレポリマー(P1)としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等のプレポリマーを挙げることができる。
また、上記反応性希釈モノマー(M1)としては、例えば、ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
また、上記光重合開始剤(S1)としては、例えば、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらのうち光透過部の着色防止の観点から好ましいのは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドである。
なお、上記光重合開始剤(S1)は、光透過部を形成するための樹脂組成物全量を基準(100質量%)として、0.5質量%以上5.0質量%以下含まれていることが好ましい。
また必要に応じて、光透過部用樹脂組成物中に、塗膜の改質や塗布適性、金型からの離型性を改善させるため、種々の添加剤としてシリコーン系添加剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、離型剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を添加することも可能である。
【0037】
光透過部6が形成されるのと同時に、楔形の溝が形成される。この楔形の溝に、光吸収粒子とバインダを含むインキを充填し、硬化することにより、バインダからなるマトリックス中に光吸収粒子が分散された構造を有する光吸収部7が形成され。
当該バインダとして用いられるものは特に限定されないが、例えば、光硬化型プレポリマー(P2)、反応性希釈モノマー(M2)および光重合開始剤(S2)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
上記光硬化型プレポリマー(P2)としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびブタジエン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また、上記反応性希釈モノマー(M2)としては、例えば、単官能モノマーとして、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクトン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、スチレン等のビニルモノマー、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、ベンジルメタクリレ−ト、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。また、多官能モノマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレ−ト、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレ−ト等が挙げられる。
また、上記光重合開始剤(S2)としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置および光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。本発明において光硬化型樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(S2)の量は、光硬化型樹脂組成物の硬化性およびコストの観点から、光硬化型樹脂組成物全量を基準(100質量%)として、0.5質量%以上10.0質量%以下含まれていることが好ましい。
これらの光硬化型プレポリマー(P2)、反応性希釈モノマー(M2)および光重合開始剤(S2)は、それぞれ、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
具体的には、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートおよびメトキシトリエチレングリコールアクリレートからなる光重合性成分(詳しくは、光硬化型プレポリマーおよび反応性希釈モノマー)を、屈折率、粘度を考慮し、任意に配合して用いることができる。
なお、添加剤として、シリコーン、消泡剤、レベリング剤および溶剤等を光硬化型樹脂組成物に添加してもよい。
【0038】
光吸収粒子は、光吸収部を形成する組成物中に含まれ、光吸収部を構成したとき、外光(鑑賞者側から前面フィルターに入射する光)や迷光(コントラスト向上層内をさまよう光)を吸収するように作用する。
光吸収粒子の色、即ち光吸収部の色は黒又は灰色といった低明度の無彩色とすることが、画像の色相に影響を与えない点からは最も好ましいが、其の他にも、紺色、褐色、臙脂色、深緑色、濃紫色等の低明度の有彩色とすることも出来る。
光吸収粒子としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、画像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を使用してもよい。具体的には、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の顔料、アニリンブラック等の染料、或いは顔料等で着色した樹脂微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。
こうした着色粒子は、通常、上記の光硬化型樹脂組成物中に3質量%以上30質量%以下の範囲で含まれる。平均粒子径は1.0μm以上20μm以下の着色粒子が用いられる。
【0039】
<粘着剤層>
粘着剤とは、接着剤の1種をいい、接着剤のうち、接着の際には単に適度な、通常、軽く手で押圧する程度の加圧のみにより、表面の粘着性のみで接着可能なものをいう。粘着剤の接着力発現には、通常特に、加熱、加湿、放射線(紫外線や電子線等)照射といった物理的なエネルギー乃至作用が不要で、且つ重合反応等の化学反応も不要である。又、粘着剤は、接着後も再剥離可能な程度の接着力を経時的に維持し得るものである。
本発明において粘着剤層3は、少なくとも次の各成分を含有する粘着組成物を用いて形成される。
(1)カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系樹脂
(2)シランカップリング剤
(3)ベンゾトリアゾール系化合物
(4)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
【0040】
本発明においては、黄変防止の観点から、アクリル系樹脂のなかでもカルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系樹脂を用いる。
アクリル系樹脂とは、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含んで重合させたものであり、(メタ)アクリルアルキルエステルモノマーがアクリル系樹脂100重量部中に30〜99.5重量部の割合で共重合されていることが好ましい。
粘着性樹脂として、一般的には、炭素原子数1〜18程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの単独重合体や共重合体を用いるが、本発明においては、カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系樹脂を用いるため、カルボキシル基を有するモノマーはカルボキシル基の許容範囲内(後述の如く、25ppm未満)となる少量のみ含むことができる。
【0041】
ここで使用される(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸sec−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル及び(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができる。
【0042】
カルボキシル基を実質的に含有し無いアクリル系樹脂とは、アクリル系樹脂(ポリマ)中のカルボキシル基の含有量が25ppm未満であることを意味する。
ここで、アクリル系樹脂中のカルボキシル基含有量の測定方法は、核磁気共鳴装置(NMR)により測定することができる。具体的には、カルボキシル基とシリル化剤とを反応させ、1H−NMR(600MHz)にて、シリル化物に由来するピークを測定する。この測定法による定量下限は25ppmである。よって、この方法にて、カルボキシル基が検出されない場合は、実質的にカルボキシル基を含有しないと判断する。
【0043】
カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系樹脂の重量平均分子量は、200,000〜800,000の範囲であることが好ましい。
カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系樹脂の市販品としては、SK1811L(綜研化学(株))が挙げられる。
【0044】
シランカップリング剤は、カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系粘着剤だけでは金属を含む導電性パターン層との粘着性能が不充分となることから、粘着性能または接着性能を強化するために用いる。
シランカップリング剤としては、シランモノマー、ビニルシラン、メタクリルシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、サルファーシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、イソシアネートシラン等が挙げられ、アクリル樹脂に対しては特に、アミノシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、メルカプトシラン、イソシアシランが好ましく使用される。
シランカップリング剤の市販品としては、A50(綜研化学(株))が挙げられる。
【0045】
ベンゾトリアゾール系化合物は、黄変防止のために用いる。ベンゾトリアゾール系化合物としては、少なくとも下記式(1)の構造を骨格として含むことを特徴とする化合物、並びに、そのナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩が挙げられる。下記式(1)の構造に有していてもよい置換基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0046】
【化1】

【0047】
具体的には、1,2,3−ベンゾトリアゾール(1H−ベンゾトリアゾール)、1H−ベンゾトリアゾールナトリウム塩、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール(4−メチル−1H−ベンゾトリアゾールと5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールの混合物)、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾールカリウム塩、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールカリウム塩、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾールアミン塩、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールアミン塩、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
これらの中でも1,2,3−ベンゾトリアゾール(1H−ベンゾトリアゾール)、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール(4−メチル体/5−メチル体混合物)が好ましい。
【0048】
【化2】

【0049】
1H−ベンゾトリアゾールの市販品としてはTH−BTA(城北化学工業(株))、トリルトリアゾールの市販品としてはTT−R(シプロ化成(株))が挙げられる。
【0050】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、黄変防止のために用い、下記の構造式で表わされるヒンダードフェノール構造を有する化合物の中から適宜選び用いる。
【0051】
【化3】

【0052】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、ヒンダードフェノール構造とヒドラジン構造を有する化合物は、特に黄変防止作用に優れているので好ましい。
【0053】
【化4】

【0054】
通常、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、2〜4量体程度の多量体であり、分子量は5000以下であるが、特に分子量や多量体であることなどの分子サイズに関する限定は無い。
【0055】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の市販品としては、いずれもBASFジャパン(株)の下記製品が挙げられる。これらの中でも、IRGANOX MD1024は、ヒンダードフェノール構造とヒドラジン構造を有する化合物であり、好ましく用いられる。
IRGANOX MD1024(一般名:1,2−ジ[−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、分子量:553)
IRGANOX 1010(一般名:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、分子量:1178)
IRGANOX 1035(一般名:チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、分子量:643)
IRGANOX 1098(一般名:N、N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、分子量:637)
IRGANOX 259(一般名:ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、分子量:639)
【0056】
【化5】

【0057】
各成分の配合割合は、特に限定されないが通常は粘着組成物中に、カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系樹脂が99.0〜99.5質量部、シランカップリング剤が0.05〜0.15質量部、ベンゾトリアゾール系化合物が0.06〜0.20質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.06〜0.20質量部の割合で含有される。
上記粘着組成物からなる粘着剤層の厚さは、通常5〜40μm程度とされる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
(1)導電性パターン層を含むシート部材Aの作成
透明基材としてPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、下記組成の導電層用組成物、下記組成のプライマー層用組成物を用い、いわゆる引き抜きプライマー凹版印刷法により導電性パターン層を印刷形成し、更に該導電性パターン層表面に厚さ2μmの銅の層を硫酸銅浴を用いた電解メッキ法により形成して、導電性パターン層付きシート部材Aを作成した。
得られた導電性パターン層の寸法は、平面視形状は縦横の導電性ラインの配列周期が275μmの正方格子であり、該導電性ラインの主切断面形状は、高さ(厚み)が18μm、線幅は透明基材側の最も広幅の部分で25μm、頂部の最も狭幅の部分で17μmだった。
【0059】
<導電層用組成物>
導電層用組成物は下記組成を有する。
・平均粒径約2μmの銀粉末 93質量部
・熱可塑性のポリエステルウレタン樹脂 7質量部
・ブチルカルビトールアセテート(溶剤) 25質量部
上記成分を配合し、十分に攪拌混合した後、3本ロールで混練りして導電層用組成物を調製した。
【0060】
<プライマー層用組成物>
プライマー層用組成物は下記組成を有する。
・エポキシアクリレートプレポリマー 35質量部
・ウレタンアクリレートプレポリマー 12質量部
・フェノキシエチルアクリレート 44質量部
・エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレート 9質量部
・光開始剤としてイルガキュア184(物質名;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、製造元;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ) 3質量部
該組成物の粘度は約1300cps(25℃、B型粘度計)であり、塗布後のプライマー層は触ると流動性を示すものの、PETフィルム上から流れ落ちることはなかった。
【0061】
(2)コントラスト向上層を含むシート部材Bの作成
PETフィルムの一面に、下記組成の光透過部用組成物を塗布し、型押し、光硬化して光透過部を形成した後、下記組成の光吸収部用組成物を光透過部の単位間の境界となっている楔形の溝に充填し、光硬化して、光吸収部を形成することにより、コントラスト向上層を含むシート部材Bを作成した。
<光透過部用組成物>
(プレポリマー) エポキシアクリレートプレポリマー:40質量部
(プレポリマー) ウレタンアクリレートプレポリマー:10質量部
(単官能モノマー)フェノキシエチルアクリレート:45質量部
(3官能モノマー)トリメチロールプロパントリアクリレート:10質量部
(離型劑) シリコーン樹脂系離型剤:1質量部
(光重合開始剤)1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名イルガキュア184):3質量部
<光吸収部用組成物>
(バインダ)上記光透過部の樹脂組成物:90質量部
(光吸収粒子)カーボンブラックを含有したウレタン架橋樹脂からなる平均粒子径2.0μmの粒子:10質量部
【0062】
得られたコントラスト向上層の寸法及び形状は、光吸収部の主切断面形状は、台形形状で、高さ85μm、大きい方の底辺である下底の長さが10μm、小さい方の底辺である上底の長さが4μmである。下底が光透過部の表面側に、また上底がPETフィルム側となる。また該光吸収部は楔形のストライプが各々の延在方向を互いに平行にして配列し、配列方向(延在方向と直交方向)の配列周期は80μmであった。
【0063】
(3)粘着組成物の調製
下記第1表(1/3−3/3)の組成を有する各粘着組成物を調製した。なお、表中の含有量(質量部単位で表示した値)は、固形分換算した実質の配合量である。
粘着組成物1は次の手順で調製した。アクリル系樹脂(商品名:SK1811L,固形分:23%,綜研化学(株)製)60質量部に対して、硬化剤(商品名:TD75,固形分:75%,綜研化学(株)製)を0.24質量部、シランカップリング剤(商品名:A50,固形分:5%,サイデン化学(株)製)を0.054質量部、ベンゾトリアゾール系化合物(商品名:TH−BTA,固形分100%,城北化学工業(株)製)を0.07質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名:IRGANOX MD1024,固形分100%,BASFジャパン(株)製)を0.07質量部配合し、トルエン32質量部で希釈し、十分に分散させて粘着組成物1(固形分は約15%程度)を調製した。
第1表に示した他の粘着組成物(固形分は約15%程度)も、上記粘着組成物1と同様の手順で調製した。
【0064】
(4)粘着シートの作製
上記のようにして得られた粘着剤を、剥離フィルム(PETセパレーター,商品名:セラピールBX,膜厚:38μm,東レフィルム加工(株)製)上に25g/m(乾燥時)の膜厚となるように塗工し、十分に乾燥させた後、剥離フィルム(PETセパレーター,商品名:セラピールMD,膜厚:38μm,東レフィルム加工(株)製)をラミネートし、粘着シートを得た。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
(5)実施例・比較例(複合フィルムの作成)
実施例、比較例で作成した複合フィルムの積層構造を、第2表に示す。
導電性パターン層を含む上記シート部材Aとコントラスト向上層を含む上記シート部材Bを、前者の導電性パターン層と後者の光吸収部とが向き合うようにして、上記粘着シートの粘着剤層を介して貼り合わせ、複合フィルムの作成した。積層後の粘着剤層の厚さは25μmとした。
また、コントラスト向上層を含む上記シート部材Bに替えて、単なるPETフィルムを用いた複合フィルムも作成した。
従って、複合フィルムは次の何れかの積層構造を有する。
<積層構造1> 導電性パターン層を含むシート部材A/粘着剤層/コントラスト向上層を含むシート部材B
<積層構造2> 導電性パターン層を含むシート部材A/粘着剤層/PETフィルム
【0069】
(6)評価方法
作成した複合フィルムを、80℃オーブンに投入し、500時間後に取り出したものと、60℃で相対湿度(RH)95%恒温恒湿槽に投入し、500時間後に取り出したものとの2種類の耐久試験条件について評価した。
各評価項目について次の方法で評価した。結果を第2表に示す。
(6−1)密着性
上記のオーブン及び恒温恒湿槽から取り出した各複合フィルムについて24時間後、複合フィルムの粘着剤層が導電性パターン層から浮いていないか(部分的に剥離して空隙が生じていないか)目視で確認し、次の基準に従って評価した。
<密着性試験の評価基準>
密着性良好(○):2種類の耐久試験条件共に、浮きは発生していなかった。
密着性不良(×):2種類の耐久試験条件のうち、少なくとも片方において浮きは発生していた。
【0070】
(6−2)変色
複合フィルムの粘着剤層の透過率を、複合フィルムを上記のオーブン及び恒温恒湿槽に投入する前、及び、上記のオーブン及び恒温恒湿槽から取り出してから24時間後の各時点で、分光光度計(島津製作所製UV−3100PC、C光源を使用)を用いて測定し、各時点での色度値を計算した。そして、上記オーブン及び恒温恒湿槽投入前と投入後の色度値の差(Δx、Δy)を計算し、次の基準に従って評価した。
粘着剤の色変化無し(○):2種類の耐久試験条件共に、Δx及びΔyが、いずれも0.005未満であった。
粘着剤の色変化有り(×):2種類の耐久試験条件の少なくとも片方において、Δx及びΔyが、いずれも0.005以上であった。
【0071】
【表4】

【0072】
(7)総合評価
本発明の実施品である実施例1、2は、粘着剤層の密着性が良好で、変色も生じなかった。
比較例1は、カルボキシル基を有するアクリル系粘着剤を用いたので、シランカップリング剤を含有しなくても密着性が良好だった。しかし、カルボキシル基を有するアクリル系粘着剤を用いたので変色が起きた。
比較例2は、実施例1との対比においてシランカップリング剤を含有していないため密着性が不良だった。その一方、カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系粘着剤を用いたので、変色は起きなかった。
比較例3は、実施例1との対比においてヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有していないため変色が起きた。その一方、カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系粘着剤を用いたにも関わらず、シランカップリング剤を組み合わせたので密着性が良好だった。
比較例4は、実施例2との対比においてヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有していないため変色が起きた。その一方、カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系粘着剤を用いたにも関わらず、シランカップリング剤を組み合わせたので密着性が良好だった。
比較例5は、実施例1および2との対比においてベンゾトリアゾール系化合物を含有していないため変色が起きた。その一方、カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系粘着剤を用いたにも関わらず、シランカップリング剤を組み合わせたので密着性が良好だった。
比較例6は、比較例5との対比においてヒンダードフェノール系酸化防止剤を増量した実験である。この実験により、ベンゾトリアゾール系化合物を含有していない場合にはヒンダードフェノール系酸化防止剤を増量したとしても変色が起きることを確認した。
比較例7は、比較例3との対比においてベンゾトリアゾール系化合物を増量した実験である。この実験により、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有していない場合にはベンゾトリアゾール系化合物を増量したとしても変色が起きることを確認した。
比較例8は、比較例4との対比においてベンゾトリアゾール系化合物を増量した実験である。この実験により、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有していない場合にはベンゾトリアゾール系化合物を増量したとしても変色が起きることを確認した。
比較例9は、実施例2との対比においてシランカップリング剤を含有していないため、密着性が不良だった。その一方、カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系粘着剤を用いたので、変色は起きなかった。
比較例10は、実施例1との対比において、カルボキシル基を有するアクリル系粘着剤を実施例1のカルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系粘着剤と同量用いた実験例である。この実験により、カルボキシル基を有するアクリル系粘着剤を用いる場合には、シランカップリング剤を含有しなくても密着性が良好であるが、変色が起きることを確認した。
比較例11〜14は、比較例1、3、4、7との対比において、コントラスト向上層の替わりに単なるPETフィルムを積層した実験例である。この実験により、粘着剤層を介して貼り合わせる層が光硬化性樹脂組成物を用いて形成したものでない場合には、そもそも粘着剤層の変色が起きないことを確認した。
各実験例の結果を総合すると次のとおりである。
カルボキシル基を有するアクリル系粘着剤を用いると、密着性は良好であるが、変色が起きる(比較例1、比較例10)。
導電性パターン層上に粘着剤層を介して貼り合わせる層が光硬化性樹脂組成物を用いて形成したものでない場合には、粘着剤層が変色する問題がそもそも生じない。(比較例11〜14)
カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系粘着剤は、シランカップリング剤と組み合わせて用いることにより、密着性が良好となる。(実施例1と比較例2の対比、実施例2と比較例9の対比)
カルボキシル基を有するアクリル系粘着剤に替えて、カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系粘着剤を用いるだけでは、変色を防止できない。カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系粘着剤は、ベンゾトリアゾール系化合物及びヒンダードフェノール系酸化防止剤の両方と組み合わせて用いることによって、変色を防止できる。(比較例3〜5)
カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系粘着剤とベンゾトリアゾール系化合物だけ組み合わせて用い、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いない場合には、ベンゾトリアゾール系化合物を増量しても変色を防止できない。(比較例7、8)
カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系粘着剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤だけ組み合わせて用い、ベンゾトリアゾール系化合物を用いない場合には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を増量しても変色を防止できない。(比較例6)
【符号の説明】
【0073】
101:画像表示装置用前面フィルター
102:PDPパネル
1:透明基材
2:金属を含有する導電性パターン層
2a:導電性ライン
2b:開口部
3:粘着剤層
4:コントラスト向上層
5:プライマー層
6:光透過部
7:光吸収部
8:接地パターン
10:グラビア版ロール
11:容器
12:ピックアップロール
13:ドクターブレード
14:第1ニップロール
15:電離放射線照射ゾーン
16:第2ニップロール
17:導電層用組成物
18:透明基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含有する導電性パターン層の上に、光硬化性樹脂組成物を硬化させた機能層を、粘着剤層を介して接合した積層構造を含む画像表示装置用前面フィルターであって、
前記粘着剤層が
カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系樹脂
シランカップリング剤
ベンゾトリアゾール系化合物
ヒンダードフェノール系酸化防止剤
を含有する粘着組成物を用いて形成されていることを特徴とする画像表示装置用前面フィルター。
【請求項2】
画像表示装置本体の鑑賞者側に、請求項1に記載の画像表示装置用前面フィルターを配置した画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−201078(P2012−201078A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69954(P2011−69954)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】