説明

画像表示装置

【課題】クロストークによる画質の低下を抑制する補正をインタレース駆動時に好適に行う画像処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】画面に画像を表示するための複数の画素と、複数の画素をインタレース駆動するための駆動信号を出力する駆動部と、を有しており、前記駆動部は、クロストークによる画質の低下を抑制する補正を行うための補正値を出力する補正値出力回路と、前記補正値によって補正された前記駆動信号を出力する出力部と、を有しており、前記補正値は、補正の対象となる画素に近接する画素に対応する画素データに基づいて算出されるものであり、前記算出に用いる画素データは、前記補正の対象となる画素が駆動されるフィールドの画素データと、前記補正の対象となる画素が駆動されないフィールドの画素データである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(米国特許第6,307,327号明細書)には、電界放出ディスプレイにおけるスペーサの可視性を制御する方法が開示される。スペーサ近傍の第1領域と、スペーサ非近傍の第2領域を定義し、スペーサを視者に対して見えなくするために、第1領域に伝送する画素データを修正するという画素データ補正方法が記載されている。
【0003】
特許文献2(特開2005−31636号公報)には、画像表示装置において注目画素の近傍の画素に対応するデータに基づいて注目画素に対応するデータを補正する補正方法が開示されている。
【特許文献1】米国特許第6,307,327号明細書
【特許文献2】特開2005−31636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の画素をマトリックス駆動する画像表示装置においては画素間のクロストークが生じうる。
【0005】
ここで、クロストークとは、所定の画素が出力する光量が、他の画素の駆動によってうける影響のことをいう。
【0006】
例えば、画素が電子放出素子と該電子放出素子が放出する電子が照射されることで発光する発光領域とを有するものである場合を例に挙げる。
【0007】
この構成においては、ある画素の電子放出素子が放出する電子が他の画素の発光領域に入射する場合がある。これにより他の画素の発光領域が出力する光量は増加する。
【0008】
また液晶に電界を印加する電極を有する画素を用いる画像表示装置においては、ある画素の電極が発生させる電界が他の画素にも影響を与える場合がある。これにより他の画素の出力する光量(透過光量もしくは反射光量)は影響を受ける。
【0009】
クロストークは表示された画像の画質に影響を及ぼす。クロストークが生じることで画素の光量が所望の光量からずれる。またクロストークが異なる色の画素間で発生すると彩度が低下する。またクロストークが画面内で不均一に生じると、画面内に明るさのむらが生じる。これらはいずれも画質を低下させる。
【0010】
このようなクロストークによる画質の低下は、補正により減らすことが可能である。
【0011】
例えば、クロストークによって出力する光量が増える画素が出力する光量を減らすように補正することで、実際に得られる光量と必要な光量(入力信号が指定する光量)との差を低減することができる。クロストークが異なる色の画素間で発生する場合には、この補正を行うことで彩度の低下を抑制することができる。またクロストークの量が画面内で不均一である場合の明るさのむらを、この補正を行うことで減らすことができる。
【0012】
また、クロストークによって増える光量が複数の画素で異なる場合に、クロストークに
よって増える光量が少ない画素の光量を増やすように補正することで明るさのむらを減らすことができる。
【0013】
複数の種類の画像の表示条件が知られている。
【0014】
例えば、インタレース表示やプログレッシブ表示が知られている。また、60Hz表示(リフレッシュレートが60Hz、すなわち、1秒間に60回の画像表示(1回の画像表示はインタレース表示であってもプログレッシブ表示であってもよい)を行う)やより高いリフレッシュレートでの表示が知られている。
【0015】
複数の画素をマトリックス駆動して表示を行う画像表示装置においては、インタレース表示を行う際には複数の画素をインタレース駆動する。またプログレッシブ表示を行う際には複数の画素をプログレッシブ駆動する。本発明は以下の課題の少なくとも1つを解決することを目的とする。
【0016】
本発明は、クロストークによる画質の低下を抑制する補正をインタレース駆動時に好適に行う構成を実現することを課題とする。
【0017】
また、クロストークによる画質の低下を抑制する補正を、単位時間あたりの画像表示の回数が異なる表示条件に対応して行うことができる構成を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は上記目的を達成するため、画面に画像を表示するための複数の画素と、複数の画素をインタレース駆動するための駆動信号を出力する駆動部と、を有しており、駆動部は、クロストークによる画質の低下を抑制する補正を行うための補正値を出力する補正値出力回路と、補正値によって補正された駆動信号を出力する出力部と、を有しており、補正値は、補正の対象となる画素に近接する画素に対応する画素データに基づいて算出されるものであり、算出に用いる画素データは、補正の対象となる画素が駆動されるフィールドの画素データと、補正の対象となる画素が駆動されないフィールドの画素データであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、画面に画像を表示するための複数の画素と、複数の画素をインタレース駆動するための駆動信号を出力する駆動部と、を有しており、駆動部は、クロストークによる画質の低下を抑制する補正を行うための補正値を出力する補正値出力回路と、補正値によって補正された駆動信号を出力する出力部と、を有しており、補正値出力回路は、補正の対象となる画素に近接するn個の画素にそれぞれ対応するn個の画素データを記憶するメモリと、メモリに記憶したn個の画素データを、m個(mはnよりも大きい整数)の画素データに変換する変換回路と、を有しており、該変換回路の出力に基づいて補正値を生成する、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、画面に画像を表示するための複数の画素と、該複数の画素を駆動するための駆動信号を出力する駆動部と、を有しており、該駆動部は、クロストークによる画質の低下を抑制する補正を行うための補正値を出力する補正値出力回路と、補正値によって補正された駆動信号を出力する出力部と、を有しており、補正値出力回路は、補正の対象となる画素に近接する画素に対応する画素データを用いた演算によって補正値を生成するものであり、複数の画素による単位時間あたりの画像表示の回数が第1の値である場合と、該第1の値よりも大きい第2の値である場合とで、異なる演算を行うものである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、クロストークによる画質の低下を抑制する補正をインタレース駆動時に好適に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0023】
本発明は、表面伝導型放出素子を用いた表示装置、電界放出型表示装置(FED)、プラズマ表示装置(PDP)、有機EL表示装置などに適用できる。本発明は、クロストークの視覚への悪影響を適切に低減できるので、クロストークの生じる種々の表示装置に適用可能である。例えば、表面伝導型放出素子を用いた表示装置やFEDなどの電子線表示装置では、自発光した輝点輝度によって周辺画素でハレーション発光が生じる可能性がある点から、電子線表示装置は本発明が適用される好ましい形態である。更に、プラズマ表示装置においても放電セル間の隔壁がない場合や隔壁構造が画素単位より大きくなった場合などは同様に周辺画素へハレーション(クロストーク)が生じる可能性がある点から、プラズマ表示装置も本発明が適用される好ましい形態である。また液晶表示装置や有機ELにおいては、保持容量の電位によって明るさが決まるが、画素の電位が近傍の画素の電位に影響を与える(クロストーク)ことがある。特にこれは画素ピッチが小さくなる(高精細化される)と顕著である。このように近傍の素子間でクロストークが生じ得る画像表示装置において本発明は特に好適に適用可能である。以下では画像表示装置として表面伝導型放出素子を用いた表示装置の構成を特に好適な形態として説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。この実施形態は、インタレース表示を行う際のクロストークによる明るさむらの補正を行う形態である。
【0025】
まず、図4を用いて実施形態の画像表示装置の構成を示す。20は表示パネルである。表示パネル20は、薄型の真空容器内に、対向して配置された、基板上に多数の電子放出素子(例えば冷陰極素子)を配列してなるマルチ電子源と、電子の照射により画像を形成する画像形成部材(例えば蛍光体)とを備える。蛍光体は画面を構成するフェースプレートガラス基板に形成されている。電子放出素子が行方向配線電極42(行配線)と列方向配線電極43(列配線)により単純マトリクス状に配線されており、列/行電極バイアスにより選択された素子から電子が放出される。電子を高圧電圧により加速し蛍光体に衝突させることで発光が得られる。ここでは蛍光体を発光領域として用いている。電子放出素子とその電子放出素子に対応する発光領域とによって画素が構成される。ある画素の電子放出素子からの電子は、主にその画素の発光領域を発光させる。
【0026】
なお一つの画素を、それぞれ異なる色に対応する複数の画素を組み合わせることによって構成することもできる。本発明は、一つの画素が一つの色のみに対応するものであっても、一つの画素が複数の色に対応する画素を組み合わせたもの(例えば赤の画素と緑の画素と青の画素を組み合わせたものを一つの画素として扱う構成)であっても適用できる。
【0027】
本実施形態では、電子放出素子として、表面伝導型放出素子が用いられる。表面伝導型放出素子を用いた表示パネルの構成と製造法については、特開2000−250463号公報に詳しく開示されている。
【0028】
表示パネル20が有する画素を駆動する信号を出力するのが駆動部41である。駆動部41は信号処理部10、PWMパルス制御部14、駆動電圧制御部15、列配線スイッチ部
16、行選択制御部17、行配線スイッチ部18、高圧発生部19を有している。表示パネル20の複数の画素をインタレース駆動する際には、行配線スイッチ部18から行配線を一つおきに順次選択する選択信号が出力される。プログレッシブ駆動する際には、行配
線を間に選択しない行配線を挟まずに順次選択する選択信号が出力される。列配線には、選択された行配線に接続される画素を駆動する駆動信号が、行配線の選択に同期して出力される。この表示パネル20に映像信号を入力し表示するまでの動作を説明する。信号S1は入力映像信号である。入力映像信号は、各画素の光量を指定するデータである画素データの集合である。それぞれ異なる画素に対応する画素データが順次に入力される。信号処理部10は、入力映像信号S1に対し表示に好適な信号処理を施し、表示信号S2を出力する。
【0029】
11は逆γ補正部である。一般的に、入力映像信号S1は、CRTディスプレイで表示することを前提として、CRTディスプレイの入力−発光特性(γ=2.2)に合わせたガンマ変換と呼ばれる非線形変換(γ=0.45)が施されて伝送あるいは記録されている。その映像信号を、表面伝導型放出素子を用いた表示装置、FED、PDPなどの入力−発光特性が線形な表示デバイスに表示する場合には、入力信号に対して、逆ガンマ変換(γ=2.2)を施すことで好適な表示が可能となる。
【0030】
逆γ補正部11への入力信号S1は各色8ビット〜10ビットで入力されることが多い。ただし、非線形な逆ガンマ変換による低階調部のつぶれなどを避けるために、表示装置の表示性能に応じて10ビット〜16ビットのデータ幅にて変換を行うことが好ましい。
ここではクロストークにかかわる補正以外の信号処理の例として逆γ補正を挙げている
が、逆γ補正以外にも必要に応じて種々の信号処理を行うことができる。
【0031】
逆γ補正部11の出力データは、表示パネル20の輝度とデータが線形になるように変換される。その出力データは、ハレーション補正部12に入力される。ハレーション補正部12は補正値出力回路を有している。ハレーション補正部12に関しては以降で詳しく説明する。
【0032】
ハレーション補正部12からは、表示パネル20に好適な映像を表示させるための表示信号S2が出力される。この実施形態においてはハレーション補正部12は補正値出力回路で生成した補正値を補正対象となる信号に演算する回路を有しているので、表示信号S2は補正された信号である。タイミング制御部13は、入力映像信号S1と共に受け渡された同期信号を元に、各ブロックの動作のための各種タイミング信号を生成し出力する。
【0033】
PWMパルス制御部14は、水平1周期(行選択期間)毎に表示信号S2を表示パネル20に適応した駆動信号に変換する(本実施形態では、パルス幅変調(PWM))。駆動電圧制御部15は、表示パネル20に配置されている素子を駆動する電圧を制御する。列配線スイッチ部16は、トランジスタなどのスイッチ手段により構成され、水平1周期(行選択期間)ごとに駆動電圧制御部15からの出力をPWMパルス制御部14から出力されるPWMパルス期間だけパネル列電極に印加する。これにより補正された駆動信号が表示パネル20に供給される。行選択制御部17は、表示パネル20上の素子を駆動する行選択パルスを発生する。行配線スイッチ部18は、トランジスタなどのスイッチ手段により構成され、行選択制御部17から出力される行選択パルスに応じた駆動電圧制御部15の出力を表示パネル20に出力する。列配線スイッチ部16と行配線スイッチ部18は画素が接続される配線に駆動信号を出力する出力部である。高電圧発生部19は、表示パネル20に配置されている電子放出素子から放出された電子を蛍光体に衝突させるために加速する加速電圧を発生する。以上により、表示パネル20が駆動されて映像が表示される。次に、クロストークの一態様である「ハレーション」について説明する。
【0034】
図5(a)は、リアプレートに形成した電子放出素子51と、該電子放出素子と間隔を空けてフェースプレートに配置される発光体52(本例では、赤、青、緑の各色の蛍光体であり、それぞれが発光領域を構成する)とを用い、電子放出素子から放出される電子ビ
ームを前記発光体に照射して前記発光体を発光させる画像表示装置を示す。メタルバック53は電子を加速する電位が印加されるアノードである。本発明者は、このような画像表示装置において、画素間のクロストークが生じることに着目した。ある画素を駆動することでそれに近接する画素が出力する光量が所望値からはずれてしまう。これにより色再現性が所望の状態とは異なるという問題が生じる。具体的な例を挙げると、青の蛍光体にのみ電子を照射して青色の発光を得ようとした場合に、純粋な青ではなく、わずかに他の色すなわち、緑と赤の発光が混ざった発光状態、すなわち、彩度が良くない発光状態になる。
【0035】
本発明者は研究を重ねた結果、電子放出素子が放出する電子が、該電子放出素子に対応する発光体に入射することで、対応する発光領域が輝点発光するだけでなく、以下の状態が生じていることを確認した。すなわち、放出された電子が対応する発光領域で反射するなどにより近接(隣接も含む)の発光領域(異なる色の発光領域も含む)への電子(反射電子もしくは2次電子)の入射が生じて、周辺の発光領域も発光させることがわかった。注目している発光領域に近接しており、注目している発光領域が対応する電子放出素子の駆動によって発光を生じてしまう発光領域に注目している発光領域とは異なる色の発光領域が含まれると彩度の低下が生じる。このように、ある表示素子(画素)が近接する他の表示素子(画素)の駆動による影響を受けて発光する現象を、本明細書では「ハレーション」と呼んでいる。近傍の画素間で発生するクロストークの一例である。
【0036】
表面伝導型放出素子を用いた表示装置(以下の実施形態に示す構成)においては、図5(b)に示すように、ある蛍光体に電子が照射されるとその画素を中心にハレーションによる円形発光(発光量としての輝度で表現すると輝点を中心とした円柱形に分布)が起きることが分かった。注目画素に対して他の画素が与える影響を評価できれば、クロストークによる画質の低下を抑制する補正処理を行うことができる。注目画素に対する他の画素の影響は他の画素の駆動状態によって決まるので、他の画素の駆動状態と相関関係を有するデータを用いて補正値を生成することで適当な補正処理を行うことができる。画素の駆動状態と相関関係を有するデータとしてはその画素の光量を指定する画素データを用いることができる。任意の2つの画素の間のクロストークを評価する場合、該2つの画素が充分に離れて位置していればそれらの間のクロストークは無視してもよい。したがって、注目画素に近接しており、注目画素に対して影響を及ぼし得る位置にある画素の画素データを用いて補正値を生成することで適切な補正処理を行うことが可能となる。注目画素の光量が、ある一つの画素の駆動によって影響を受ける量は、その一つの画素の画素データを変数とする関数によって評価することができる。該関数としては例えば、その一つの画素の画素データにクロストークがどの程度の割合で発生するかを示す係数を掛けるものを採用することができる。注目画素に対してハレーションなどのクロストークを生じさせる画素は一つには限らない。注目画素への周辺の複数の画素からの影響を評価する場合は、複数の画素データを変数として参照する。複数の画素データを参照するにあたってはフィルタ処理を好適に採用できる。例えばこのハレーションの及ぶ円形領域の半径がN画素であれば、後ほど詳しく説明するハレーション補正処理のための画素参照範囲として2N+1タップのフィルタを好適に採用できる。
【0037】
前記ハレーションの及ぶ領域の半径は、蛍光体が配置されているフェースプレートと電子源が配置されているリアプレートとの間隔、画素サイズなどによって一意に決めても実用上差支えないことが分かった。したがって、フェースプレートとリアプレートの間隔がわかっていれば、フィルタタップ数は一意に決まる。本実施形態ではN=5画素であったために、11タップフィルタを用いる。つまり、ハレーションの影響度を考慮する為には、図7に示したように11画素×11ラインのデータ参照を行えばよいことが分かる。すなわち、注目画素を基準位置とし、その近傍にあって、クロストーク補正のために参照が必要な画素に対応するデータを参照する。ここでは注目画素を中心として、直径が11×
画素ピッチの円内に位置する画素であり、これらの画素はいずれも注目画素との距離が、各素子の駆動が注目画素の明るさを増加させるという条件を満たす距離になっている。参照範囲はこれらの画素を包含する範囲である。なお参照が必要な画素を含む範囲は、表示装置の構成に応じて適宜設定できる。
【0038】
このようにハレーションの及ぶ領域の半径は表示パネルの物理構造(フェースプレートとリアプレートとの間隔、画素サイズ)から得られる静的パラメータである。よって、同一の補正回路を複数の種別の異なる表示パネルに対応させる場合は、図7のハレーションマスクパターンを可変パラメータとして変更できるようにしておけば良い。
【0039】
なおハレーションのようなクロストークの発生は、それ自体で画質に影響を与え得るものである。画素の光量がクロストークによって所望の光量からずれるからである。またクロストークが異なる色の画素間で生じると彩度が低下する。これらによる画質への影響が第1の問題である。またクロストークの発生の仕方が画面内で局所的に異なる場合には、画質はより大きな影響を受けうる。例えば入力される画素データが画面内の各画素に対して同じ光量を要求する場合、クロストークによって増える光量が各画素で同じであれば、各画素の間での光量の差は生じない。しかしながら、入力される画素データが画面内の各画素に対して同じ光量を要求する場合に、ある画素ではクロストークによる光量の増加が大きく、他の画素ではクロストークによる光量の増加が相対的に小さい場合、画素の間での光量の差が生じる。この光量の差は、画面内に明るい部分と暗い部分を生じさせる。この明るさのむらは輝度計による輝度測定によって評価することができる。この明るさのむらによる画質への影響が第2の問題である。
【0040】
画面内の一部の領域(第1の領域)ではクロストークが多く発生し、他の一部の領域では第1の領域に比べてクロストークが生じにくい画像表示装置がありうる。クロストークの量は上述したように注目画素に対してクロストークを生じさせうる画素の駆動状態に依存するものであるが、画質の低下が顕在化するのは、同じ駆動条件であってもクロストークの量が領域によって異なる場合である。
【0041】
図5(a)及び図5(b)は反射電子の反射軌道にスペーサのような遮蔽部材がない場合(スペーサ非近傍)である。一方、スペーサのような遮蔽部材がある場合(スペーサ近傍)は反射電子(2次電子)が図6(a)に示すようにスペーサにより遮断されてしまうためハレーション強度が軽減する。電子放出素子と発光領域の間には空間が設けられる。該空間は表示パネルの外部雰囲気よりも低圧に保たれている。スペーサはこの空間を維持するための部材である。スペーサの最近接の電子放出素子から電子ビーム(1次電子)が放出された場合のハレーションの影響範囲は図6(b)のように半円発光となってしまうことが分かった。ここで図5、図6では注目画素からの周辺の画素への影響を図示しているが、周辺の画素から注目画素への影響も同様に生じる。図5に示す領域では、中央の画素を注目画素とすると、その周辺の半径5画素の距離内にある画素からの影響が注目画素に対して生じる。一方図6に示す領域では、注目画素を中心とする半径5画素の距離内にある画素のうちのスペーサに対して注目画素と同じ側にある画素のみが注目画素に対して影響を与え得る。ここではスペーサがクロストークを抑制する部材として機能している。
【0042】
本実施形態で用いた表示パネルには、フェースプレートとリアプレートを支えるために、水平方向に伸びる複数の長尺スペーサが数十ラインおきに実装されている。スペーサを1ラインごとに配置するのはコスト上の問題があるため、スペーサとスペーサとの間に15ライン(15素子)分以上の間隔を設けるのが好適である。スペーサとしては種々の形状のものを用いることができる。ここでは表示パネル内で水平方向のラインに沿って配置されており、表示パネルの水平方向の一端近傍から他端近傍に至る長さを持つ板状のスペーサを採用した。
【0043】
この構成において全面同色点灯をすると、上述したハレーションによりスペーサ近傍とスペーサ非近傍の異なる領域間でハレーション量の違いが生じることがわかった。このハレーション量の違いによりスペーサ近傍の色純度が変化するスペーサむらという特有の課題が生じることが確認された。スペーサむらの程度は表示画像の点灯パターンにより異なる。例えば、全面青を点灯した場合、図9(a)に示すように、青の発光輝度にハレーション輝度が付加される。このハレーション輝度は、「所定の発光領域の発光に対し、その所定の発光領域以外の発光領域を有する表示素子の駆動が与える変化量」ということができる。スペーサ近傍はスペーサからの距離に依存して、反射電子の遮断量が段階的に変わるため、10ライン程度の幅の段階的なくさび状の色純度の変化が視認される。このくさび状の輝度の落ち込みが、「ハレーション輝度のうちスペーサによって減じられる量」である。
【0044】
このように近接する画素間のクロストークが画面内で不均一に生じることによって明るさのむらが発生する。多色表示の場合はこの明るさのむらは色のむらとしても知覚できる。
【0045】
なお近接する画素間のクロストークが画面内で不均一に生じることによって生じる明るさのむらは、全ての画素に対応する入力画素データが同一の値の画素データである場合(べた一色(solid color)の画像を表示する場合)に顕著である。すなわち、べた一色の
画面を表示しようとする場合には、クロストークが画面内で不均一に生じることによって生じる明るさのむら(色のむら)が目立つ。画像表示装置において表示する画像はべた一色の画像には限るものではなく、べた一色の画像とそれ以外の画像を区別する必要はないが、少なくともべた一色の画像においては本発明の補正が行われるようにすると好適である。
【0046】
なお、ハレーションのようなクロストークによる画質の低下を抑制する方策としては大きく2つの方策がある。ひとつは、注目画素の光量が他の画素の駆動によって所望の値(入力する画素データが指定する光量)からΔL異なってしまう場合に、該ΔL分の補正が行われた駆動信号が得られるように補正処理を行う構成である。例えば注目画素の光量が他の画素の駆動による影響で所望の値からΔL増える場合は、注目画素の駆動信号が、所望の値からΔL小さい光量が得られるような補正を受けた信号になるように補正するとよい。補正による光量の減少と、クロストークによる光量の増分が相殺することで所望の光量を得ることができる。
【0047】
該補正を行うことによりクロストークが生じない構成に近い画質での表示を行うことが可能となる。これにより上述の第1の問題は改善できる。
【0048】
一方本実施形態で採用するのは、上述の第1の問題と第2の問題のうち、第2の問題を解決する形態である。具体的にはクロストークを抑制する部材によるクロストークの抑制の影響を受ける領域を有する画像表示装置において、その領域においてもクロストークが抑制されていない状態と同じもしくは近い表示になるように補正している。これはクロストークによって生じる所望の光量と実際に得られる光量とのずれを補正するものではないが、この補正もクロストークによる画質の低下を抑制する補正である。
すなわち、
・第1の領域(例えばスペーサの近傍の領域)に位置する第1の画素の光量が他の画素の駆動による影響を受けて所望の値からずれる量、が、
・第2の領域(前記スペーサの近傍の領域よりもスペーサから離れた領域)に位置する第2の画素の光量が他の画素の駆動による影響を受けて所望の値からずれる量、
よりも少ない場合に生じる明るさのむら、
入力される画素データが第1の画素と第2の画素に同じ光量を要求するものである場合に顕現する上記明るさのむら、
もクロストークによる画質の低下である。そして、第1の画素の光量を第2の画素の光量に近づける(同じにすることを含む)ようにする補正も、クロストークによる画質の低下を抑制する補正である。スペーサなど、クロストークを抑制する部材の局所的な存在による画質の低下を抑制する補正はその部材によるクロストーク抑制の量を評価することで行うことができる。以下にその構成を詳細に説明する。
【0049】
以下では画像表示装置及び駆動信号の補正方法の具体的な例について図3を用いて説明する。インタレース駆動の際の補正について説明する前に、まずプログレッシブ駆動の際の補正について説明する。図3は、プログレッシブ駆動(フレームレート60Hz)で表示パネルを駆動した場合の例を示している。
【0050】
図3に示すハレーション補正回路は、補正値出力回路31と、補正値出力回路31が出力する補正値を用いて画素データを補正する演算回路である補正演算部8を有している。補正演算部8から出力される画素データは補正された画素データ(表示信号S2)なので、その補正された画素データによって生成される駆動信号は補正された駆動信号となる。
【0051】
ハレーション補正部12に入力される元画像データ(補正前の画素データ)は、逆γ補正部11からの出力である。この元画像データは、RGB各nビットで入力されるとする。上述したようにハレーションの影響範囲を考慮した補正を行うためには、本実施形態で用いる表示パネルの構成では11×11タップフィルタが必要であり、演算処理を行うためには、最低限11ラインメモリが必要となる。この例で補正に必要なラインメモリ量Mを見積ると、以下の式で表される。
【0052】
ラインメモリ容量M = 水平画素数×nビット×RGB×11ライン
水平画素数=1920画素、n=16ビットの高階調表示を行う場合は、補正用ラインメモリ容量Mは、1920×16×3×11=1014Kbitと膨大な量に膨れ上がる。このような量の演算用メモリを信号処理用のLSIにそのまま実装すると、ダイサイズが大きくなり大幅にチップコストが上がることは、当業者であれば容易に理解できるところである。
【0053】
そこで、間引き処理部1が元データを減じて第1のメモリ2に受け渡すことで、ラインメモリ容量Mの削減を図る。本実施形態では元データを減じるために2つ方法を採用する。
【0054】
1つ目は、元データ(nビット)の上位mビット(n>m)のみを参照することで、参照ビット数を削減する方法である。ここで、m値はハレーション補正の演算精度が低下しない誤差率に収まるように決定される。前述した逆γ補正部11の出力がn=12ビット〜16ビットの場合は、m=8ビットまで削減できることが実験で明らかになっている。この理由は、ハレーション量は、参照画素の総点灯量に対して所定の微小な係数を掛ける事で算出されるため、元データの下位ビットの値は無視しても、算出結果への影響は小さいからである。すなわち、この微小な係数に依存して参照画素の分解能が決定するため、元データの下位ビットを無視できるのである。
【0055】
2つ目は、上述したハレーションの影響範囲をRGBサブピクセル(単色の画素)単位ではなく異なる色に対応する複数の画素を組み合わせた画素単位として近似する方法である。具体的には、Pixel(m+2ビット)=R(mビット)+G(mビット)+B(mビット)のように各RGBサブピクセルの点灯量を加算し、この和をピクセルの総点灯量として代表させる。
【0056】
この元データを減じる2つの方法によって、ラインメモリ容量は、
ラインメモリ容量M′=水平画素数×mビット×((m+2)/3m)RGB×11ライン
=(m/n)×((m+2)/3m)×M
=(8/16)×(10/24)×M
=0.21×M
となる。補正精度を低下させることなく、213Kbit(1024Kbitの21%)まで第1のメモリ2の容量を削減することができる。なおこのような間引き処理は必要に応じて行えばよく、第1のメモリの容量が充分に確保できる場合は間引き処理を行う必要はない。
【0057】
プログレッシブ駆動の場合、間引き処理部1からの出力は11ラインメモリで構成された第1のメモリ2に1ライン単位で順次書き込まれる。第1のメモリ2には書き込まれた画素データ(間引き処理された画素データ)が記憶される。11ライン分のデータ(間引き処理された画素データ)が格納された時点で、演算参照のために11ラインメモリから同時に11画素×11ラインのデータが読み出されていく。第1のメモリ2は、このように同時読み出しができる構成が望まれるため、SRAMによってラインメモリを構成することが好適である。そのためには、ASIC、或いは、FPGAなどのLSI内部のRAMを用いることが好ましい。復元部3は、間引き処理部1で減じられたデータを復元するため、同時に読み出された11画素×11ラインデータを2n−m倍する。
【0058】
選択的加算部4は、まず、11画素×11ラインデータを、図7に示したハレーションマスクパターンでマスクする。ハレーションマスクパターンは、反射電子が影響を及ぼす周辺画素の情報(範囲)を示すものである。マスク領域の画素量は0となる。選択的加算部4は、次に、スペーサ近傍の注目画素に対して、周囲の画素からの反射電子のうちスペーサにより遮断された分のみを選択的に加算する。すなわち、注目画素に近接した画素のうちの、注目画素に対してスペーサをはさんで反対側にある画素の画素データ(間引き処理を受けた後、復元処理を受けた画素データ)を加算する。スペーサ位置情報生成部5は、タイミング制御部13より受け取ったタイミング制御信号とスペーサ位置情報を元に生成された注目画素とスペーサとの位置関係を示す値であるSPD(Spacer Distance)値
により、注目画素とスペーサとの位置関係を判断する。
【0059】
スペーサ近傍の注目画素に関し、反射電子が遮断される画素は図8のように10パターンある。各パターンに、1〜10のSPD値が割り当てられている。遮断量に関係する総点灯量は、SPD値に応じてグレーで示した画素を選択し、これらの画素の値をすべて加算することで求めることができる。スペーサの非近傍の画素では、反射電子のスペーサによる遮断は起きないため、加算結果は0とすればよい。
【0060】
係数乗算部6は、加算結果のうち何%が遮断されたハレーション分になるかを示す係数(ハレーションゲイン値)を、加算結果に乗算する。係数は通常0と1の間の値を取り、本実施形態のパネルにおいては0.03%程度の値である。係数乗算部6により算出された補正値は、第2のメモリ7に格納される。第2のメモリ7の役割は、算出された補正値を、第1のメモリ2を経由していない元画像データ(補正対象となる画像データ)の所定の画素位置(算出した補正値と対応する画素位置)に対応させるべくタイミング調整をすることである。本実施形態では1フレーム遅延が行われるため、第2のメモリ7は、補正値を格納するフレームバッファとなる。第2のメモリ7はタイミング調整バッファとして機能するので、外付けのDRAMなどの安価なデバイスを用いることが好ましい。
【0061】
1フレーム後に第2のメモリ7から読み出された補正値は、補正演算部8で元画像デー
タRin、Gin、Binに次式で示されるように加算演算される。その加算結果が補正演算部8から補正データRout、Gout、Boutとして出力される。
Rout=Rin+補正値
Gout=Gin+補正値
Bout=Bin+補正値
上述したように、本実施形態では、補正値を1フレーム後の元画像データに加算して補正データを算出している。しかし、この1フレームのずれは大きな問題とはならない。なぜなら、一般に、隣り合うフレーム間の映像は相関性が強いため、1フレームの遅延による補正量の相違は極めて小さいからである。また仮に、フレーム相関性が弱い映像の場合でも、ハレーションの補正量は前述した通り輝度の0.03%程度と小さいため、補正誤差による輝度変化は人間の目では検知されにくいほど微小だからである。フレーム相関性が弱い映像には、例えば、黒い背景に白い矩形が毎フレーム移動する映像などがある。
【0062】
以上説明したハレーション補正は、プログレッシブ駆動方式に適した方法である。
【0063】
次に、本実施形態の表示パネルをインタレース駆動した場合のハレーション補正について検討する。インタレース駆動の場合、その駆動方式に特有なハレーション発光について考慮する必要がある。
【0064】
なお、本実施形態の表示パネルは、プログレッシブ駆動とインタレース駆動の両方の駆動方式に対応しており、選択された駆動方式に応じてハレーション補正方法を自動的に切り替え可能である。
【0065】
表面伝導型放出素子を用いたこの実施形態における表示パネルは、図4で説明したように、基本的には1ライン単位で駆動(線順次駆動)される。この線順次駆動におけるハレーションむらを人間の視覚がどのように認識するか、という点について検討した。本発明者は、60Hzの線順次でプログレッシブ駆動を行った場合のハレーション補正の実験を繰り返した。60Hzのプログレッシブ駆動なので、1秒間あたりの画像表示の回数は60回である。その実験の結果、図7および図8で示したように周辺の参照画素のすべてが同時点灯したと仮定して、周辺の参照画素の駆動データに基づく補正演算を行えば、ハレーションむら(クロストークが画面内で不均一に生じることによって生じる明るさのむら)を認識できないレベルまで補正可能との知見を得た。この結果より、60Hz前後のフレームレートであれば、ハレーション補正演算はフレーム単位で行えば良いことが分かる。
【0066】
次に、インタレース信号に基づく表示を行う場合について説明する。ここでは、60Hzのプログレッシブ駆動(以下、「60p駆動」とよぶ。)のための信号を、インタレース信号に変換し、120Hzのインタレース駆動(以下、「120i駆動」とよぶ。)した場合の例について説明する。120Hzのインタレース駆動は、フレームレート(1フレームは偶奇2つのフィールドで構成される)は60Hzであるが、画像は1フィールド単位で構成されるので、1秒間あたりの画像表示の回数は120回である。120i駆動と60p駆動との違いのひとつは、フィールド単位の駆動であるか、フレーム単位の駆動であるかである。上記60p駆動時のハレーション補正の知見によれば、120i駆動時も2フィールド分(1フレーム分)を補正の参照範囲と考えれば良い。
【0067】
以下、図1を参照して、120i駆動の場合のハレーション補正について詳しく説明する。ただし、図3で説明した60p駆動と共通の部分についての説明は簡略化する。図1における補正値出力回路32が図3の補正値出力回路31と大きく異なる点は、奇数フィールド用メモリ7aと偶数フィールド用メモリ7bと演算回路33を有する点である。演算回路33からは補正値が出力され、補正演算部8は補正値を用いて補正対象となる画素
データを補正する。間引き処理部1は、60p駆動と同様に、元データを減じて第1のメモリ2に受け渡す処理を行う。間引き処理部1からの出力は、第1のメモリ2に書き込まれる。ここでは、入力される信号がインタレース信号であるため、上下方向に隣接するラインの信号は、別々のフィールドの信号として入力される。従ってメモリで同時に保持するデータ量はプログレッシブ駆動の約1/2(5ライン分または6ライン分)になる。以下、5ラインの場合を例に説明する。5ライン分のデータが格納された時点で、演算参照のために第1のメモリ2から同時に11画素×5ラインのデータが読み出されていく。復元部3は、間引き処理部1で減じられたデータを復元するため、同時に読み出された11画素×5ラインデータを2n−m倍する。
【0068】
選択的加算部4は、まず、11画素×5ラインデータを、図10(a)に示したハレーションマスクパターンでマスクする。図10(a)のハレーションマスクパターンは、注目画素の存在するラインが駆動されるフィールドのデータに対して適用されるマスクパターンである。インタレース駆動では、偶数フィールドと奇数フィールドで駆動ラインが異なる。よって、上記フィールドの次のフィールドでは、注目画素の存在するラインが駆動されない状態が起きる。このフィールドのデータに対しては、図10(b)に示すハレーションマスクパターンが適用される。図10(b)のフィールドでは、参照画素は、11画素×6ラインのデータとなる。
【0069】
これ以降の処理は、上述したプログレッシブ駆動における補正処理と同様である。すなわち、選択的加算部4がSPD値に基づいてスペーサによる遮断量を計算し、係数乗算部6がハレーションゲイン値を加算結果に乗算することで補正値を算出する。
【0070】
奇数フィールドのデータから算出された補正値は、奇数フィールド用メモリ7aに格納され、偶数フィールドのデータから算出された補正値は、偶数フィールド用メモリ7bに格納される。この奇数フィールド用メモリ7aと偶数フィールド用メモリ7bの役割は、フィールド単位で算出した補正値をそれぞれ格納するだけでなく、60p駆動時と同様に補正対象となる元画像データとのタイミング調整をする目的もある。
【0071】
1フィールド遅延して、奇数フィールド用メモリ7aと偶数フィールド用メモリ7bからそれぞれ補正値が読み出され、演算回路33で加算される。加算された結果得られた補正値が演算回路33から補正演算部8に出力される。補正値は補正演算部8で元画像データに加算される。つまり、k奇数フィールド(k番目のフレームの奇数フィールド)の元画像データには、k−1奇数フィールドのデータから算出された補正値と、k−1偶数フィールドのデータから算出された補正値とが加算されることになる。
【0072】
インタレース駆動時には、注目画素の存在するラインが駆動されるフィールドの発光(図10(a)参照)と、そのラインが駆動されないフィールドの発光(図10(b)参照)の両方が、注目画素のハレーション輝度に影響を及ぼすと考えられる。よって、本実施形態のように、両方のフィールドの発光の影響分を考慮する厳密な方法を採用すれば、インタレース駆動時のハレーション補正量を精度良く算出することができる。
【0073】
すなわち本実施形態では、あるフィールドの信号から、注目画素の近傍の画素のデータを抽出し、該抽出したデータに基づいて補正値を決定する。更に、続くフィールドの信号から前記注目画素の近傍の画素のデータを抽出し、該抽出したデータに基づいて補正値を決定する。この両方の補正値に基づいて注目画素のデータを補正するための補正値を決定することで高精度な補正を実現している。
【0074】
なお、インタレース信号の2つの連続するフィールドの信号から1フレーム分のプログレッシブ信号を生成し、該プログレッシブ信号を用いて補正値を生成する構成も採用でき
る。この構成においてはインタレース駆動時の補正値の演算とプログレッシブ駆動時の補正値の演算を同一にすることができる。しかしながら該構成を採用するにあたってはインタレース信号をプログレッシブ信号に変換するためのフレームメモリを要するなど回路規模が大きくなる。本実施形態では、フィールドごとに補正値を生成し、2つのフィールドでそれぞれ生成した補正値から実際に使用する補正値を求める演算を行うことで構成を簡便にしている。
【0075】
この形態においてプログレッシブ駆動時の補正とインタレース駆動時の補正とを切り替え可能にするためには、図3のハレーション補正部と図1のハレーション補正部をそれぞれ独立に備える形態を採用できる。または、補正値出力回路31と補正値出力回路32のうちの一部(間引き処理部1、第1のメモリ2、復元部3、選択的加算部4、スペーサ位置情報生成部5、係数乗算部6)は共通化し、それ以外の構成要素のみ別々に備える形態も採用できる。
【0076】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態の補正方法は、ハレーション補正量を厳密に精度良く算出できるという利点を有する。しかしながら、この補正方法を実現するには、第1のメモリ2以降の信号処理において、フィールドの処理レートの2倍の処理レートが要求される。例えば、120i駆動の場合は、120Hzの処理レートが必要となる(これは、60p駆動の2倍の処理レートとなる。)。
【0077】
そこで第2の実施形態では、注目画素が非駆動ライン上にあるフィールド(つまり、直前のフィールド)の発光の影響を近似的に計算することで、処理の単純化を図る。本実施形態の補正値出力回路のブロック図は図1と同じである。
【0078】
具体的には、選択的加算部4および係数乗算部6が、図10(a)のマスクパターンのみを用いて、注目画素が駆動ライン上にある場合の補正値のみを算出する。例えば、奇数フィールドのデータからは奇数ライン上にある画素に対する補正値のみ、偶数フィールドのデータからは偶数ライン上にある画素に対する補正値のみが、それぞれ算出される。そうすると、2つ前のフィールドのデータから算出された補正値(第1の補正値)には補正対象画素に対応する補正値が含まれているが、直前のフィールドから算出された補正値(第2の補正値)には補正対象画素に対応する補正値が含まれないことになる。そこで、本実施形態では、第2の補正値からは、補正対象画素の1つ前(もしくは1つ後)のライン上の隣接画素に対応する補正値を選択する。つまり、補正対象画素の元データに対して、その2つ前のフィールドにおける対応画素について算出された補正値と、直前のフィールドにおける対応隣接画素について算出された補正値を加算するのである。すなわち、補正対象画素(注目画素)に関する補正値として以下を用いる。一つのフィールドにおける注目画素対して算出された補正値を一つの補正値とする。またそのフィールドに時間的に隣接するフィールドにおける注目画素に近接する画素(注目画素と空間的に近接する画素であればよく、好適には隣接する画素)について(その近接する画素を注目画素と見なして)算出された補正値をもう一つの補正値とする。前記一つの補正値と前記もう一つの補正値を加算した値を注目画素のための補正値として用いる。前記もう一つの補正値は注目画素に対して算出した補正値ではないが,これを援用することで演算処理を簡便にしている
。これにより、1つのフィールドについて算出した補正値が、その後のフィールドと2つ後のフィールドの2つのフィールドのデータのハレーション補正に利用できるようになる。しかも、非駆動ライン上にある注目画素については補正値を算出しなくてよい。すなわちあるフィールドの信号に基づいて、そのフィールドでは駆動しない画素を注目画素と見なして補正値を求める必要がないので、第1の実施形態に比べて演算量およびメモリ容量が約1/2に抑えられる。
【0079】
以下、図1を参照して、本実施形態のハレーション補正について詳しく説明する。ただし、第1の実施形態と共通の部分についての説明は簡略化する。
【0080】
間引き処理部1は、元データを減じて第1のメモリ2に受け渡す処理を行う。間引き処理部1からの出力は、第1のメモリ2に書き込まれる。5ライン分のデータが格納された時点で、演算参照のために第1のメモリ2から同時に11画素×5ラインのデータが読み出されていく。復元部3は、間引き処理部1で減じられたデータを復元するため、同時に読み出された11画素×5ラインデータを2n−m倍する。
【0081】
選択的加算部4は、まず、11画素×5ラインデータを、図10(a)に示したハレーションマスクパターンでマスクする。選択的加算部4は、次に、スペーサ近傍の注目画素に対して、周囲の画素からの反射電子のうちスペーサにより遮断された分のみを選択的に加算する。スペーサ位置情報生成部5は、タイミング制御部13より受け取ったタイミング制御信号とスペーサ位置情報を元に生成されたSPD値により、注目画素とスペーサとの位置関係を判断する。
【0082】
スペーサ近傍の注目画素に関し、反射電子が遮断される画素は図11のように10パターンある(各フィールドにつき5パターンずつある。)。各パターンに、1〜10のSPD値が割り当てられている。なお、図11では、図8との比較を容易にするためSPD1とSPD10を記載したが、本実施形態の手法ではこれらを事実上考慮する必要はない。遮断量に関係する総点灯量は、SPD値に応じてグレーで示した画素を選択し、これらの画素の値をすべて加算することで求めることができる。スペーサの非近傍の画素では、反射電子のスペーサによる遮断は起きないため、加算結果は0とすればよい。
【0083】
係数乗算部6は、加算結果にハレーションゲイン値を乗算し、補正値を求める。奇数フィールドのデータから算出された補正値は奇数フィールド用メモリ7aに、偶数フィールドのデータから算出された補正値は偶数フィールド用メモリ7bに、それぞれ格納される。
【0084】
図12は、k奇数フィールドにある補正対象画素A(SPD=4)と、k偶数フィールドにある補正対象画素B(SPD=5)のそれぞれに対する、ハレーション補正処理のタイミングを表す概念図である。実線は駆動ラインを示し、破線は非駆動ラインを示している。横軸は時間を表している。
【0085】
時刻t0に、k−1奇数フィールドの映像データが入力される。時刻t1に、5ライン分のデータの第1のメモリ2への書き込みが完了し、k−1奇数フィールドのデータに基づく補正値の演算が開始される。この演算結果(補正値)は、ほぼ同時に、奇数フィールド用メモリ7aに格納されていく。
【0086】
時刻t2には、k−1偶数フィールドの映像データが入力される。時刻t3に、5ライン分のデータの第1のメモリ2への書き込みが完了し、k−1偶数フィールドのデータに基づく補正値の演算が開始される。この演算結果(補正値)は、ほぼ同時に、偶数フィールド用メモリ7bに格納されていく。
【0087】
時刻t4には、補正対象のk奇数フィールドの映像データが入力される。このとき、奇数フィールド用メモリ7aからはk−1奇数フィールドのデータに基づく補正値が、偶数フィールド用メモリ7bからはk−1偶数フィールドのデータに基づく補正値が、同時に読み出され、補正演算部8に受け渡される。そして、補正演算部8において、k奇数フィールドの補正対象画素A(SPD=4)に対して、k−1奇数フィールドの対応画素C(SPD=4)についての補正値と、k−1偶数フィールドの隣接画素D(SPD=3)に
ついての補正値とが加算される。この加算の結果得られた補正値を用いて、補正対象画素Aのハレーション補正がなされる。
【0088】
また、k奇数フィールドのデータに対するハレーション補正と並行して、k奇数フィールドのデータに基づく補正値の演算が行われ、算出された補正値から順次奇数フィールド用メモリ7aに格納されていく。
【0089】
時刻t5には、補正対象のk偶数フィールドの映像データが入力される。このとき、偶数フィールド用メモリ7bからはk−1偶数フィールドのデータに基づく補正値が、奇数フィールド用メモリ7aからはk奇数フィールドのデータに基づく補正値が、同時に読み出され、補正演算部8に受け渡される。そして、補正演算部8において、k偶数フィールドの補正対象画素B(SPD=5)に対して、k−1偶数フィールドの対応画素E(SPD=5)についての補正値と、k奇数フィールドの隣接画素A(SPD=4)についての補正値とが加算される。この加算の結果得られた補正値を用いて、補正対象画素Bのハレーション補正がなされる。
【0090】
また、k偶数フィールドのデータに対するハレーション補正と並行して、k偶数フィールドのデータに基づく補正値の演算が行われ、算出された補正値から順次偶数フィールド用メモリ7bに格納されていく。
【0091】
上記処理を繰り返していくことで、各フィールドの映像データ(画素データ)が順次補正されていく。
【0092】
以上のように図12に示したような位置関係でスペーサが配置されている場合、補正演算部8では、補正対象画素のSPD値に応じて、奇数フィールド用メモリ7aと偶数フィールド用メモリ7bから補正値が読み出される。そして、次式に示すように、補正対象画素の元画像データRin、Gin、Binに補正値が加算され、その加算結果が補正データRout、Gout、Boutとして出力される。
【0093】
Rout=Rin+SPD値に応じた補正値
Gout=Gin+SPD値に応じた補正値
Bout=Bin+SPD値に応じた補正値
上記「SPD値に応じた補正値」は、次式のように、2つ前と直前の2つのフィールドの補正値の合計である。なお、次式において、「SPDx(y偶数フィールド)」という表記は、「y番目のフレームの偶数フィールドにおける、SPD値がxの注目画素についての補正値」を意味している。
【0094】
SPD1(k偶数フィールド)=0
SPD2(k奇数フィールド)=SPD2(k−1奇数フィールド)+SPD1(k−1偶数フィールド)
SPD3(k偶数フィールド)=SPD3(k−1偶数フィールド)+SPD2(k奇数フィールド)
SPD4(k奇数フィールド)=SPD4(k−1奇数フィールド)+SPD3(k−1偶数フィールド)
SPD5(k偶数フィールド)=SPD5(k−1偶数フィールド)+SPD4(k奇数フィールド)
SPD6(k奇数フィールド)=SPD6(k−1奇数フィールド)+SPD7(k−1偶数フィールド)
SPD7(k偶数フィールド)=SPD7(k−1偶数フィールド)+SPD8(k奇数フィールド)
SPD8(k奇数フィールド)=SPD8(k−1奇数フィールド)+SPD9(k−1偶数フィールド)
SPD9(k偶数フィールド)=SPD9(k−1偶数フィールド)+SPD10(k奇数フィールド)
SPD10(k奇数フィールド)=0
上述した本実施形態の補正方法は、映像のフィールド間の相関性の高さを利用した近似手法といえる。
【0095】
図13は、第1の実施形態で述べた60p駆動時の参照画素の範囲と、本実施形態の120i駆動時の参照画素の範囲との比較を示している。矩形で囲まれている部分が、120i駆動での参照範囲である。これによると、参照されない画素が円の周辺に7つあり、この部分が本実施形態の補正方法による近似誤差を生む要因となると考えられる。ここで、この近似誤差の影響度合について検討する。ハレーション発光量を輝度で表現すると輝点を中心とした概ね円柱形の分布になる。ただし、図5(b)および図6(b)にも示したように、最外周部分は中心部分に比べてハレーション発光量が40%〜50%少ないことが分かっている。したがって、最外周部分の画素を参照しない近似は許容できる。
【0096】
すなわち、本実施形態の方法を用いれば、実用上問題ない程度に、インタレース駆動時のハレーション補正を精度良く行うことができる。しかも、第1の実施形態の厳密な方法に比べて、処理の簡単化および回路規模の縮小を図ることができ、実装面でも有利である。
【0097】
(第3の実施形態)
上記実施形態では、インタレース駆動時のハレーション補正を精度良く実現する方法について説明した。これらの方法は、プログレッシブ駆動時の方法と比べて、奇数用と偶数用の2つのフィールドメモリが必要である点、および、補正演算部8においてSPD値に応じた制御が必要である点などが異なる。したがって、60p駆動と120i駆動を動的に切り替えるような使い方をする場合は、回路構成の共通化が若干複雑になる。
【0098】
そこで本実施形態では、プログレッシブ駆動時のハレーション補正とインタレース駆動時のハレーション補正とで回路構成を共通化しやすい方法を述べる。本実施形態の構成は、第1のメモリ2と復元部3の間に補間部30を設けた点以外は、図3の構成とほぼ同じである。
【0099】
間引き処理部1は、元データを減じて第1のメモリ2に受け渡す処理を行う。間引き処理部1からの出力は、第1のメモリ2に書き込まれる。第1のメモリ2は7ライン(第2実施形態で説明したインタレース駆動時の補正に必要なラインメモリ数:5+後述する内挿演算のための参照ライン数:2=7)のデータを格納する。7ライン分のデータが格納された時点で、演算参照のために第1のメモリ2から同時に11画素×7ラインのデータが読み出されていく。同時に読み出された11画素×7ラインデータは変換回路である補間部30に受け渡される。
【0100】
図14は、補間部30の動作を示す。補間部30は、駆動ラインから非駆動ライン(次もしくは直前のフィールドにおいて駆動されるライン)のデータを推定するために、線形内挿入法による補間演算をライン間で行う。そのため、注目画素から上下5ライン目のデータを内挿演算のための参照ラインとして予め読み込んでおく必要がある。
【0101】
線形内挿入法の一例として、上側と下側の駆動ラインにおける画素(データを予測する画素を挟む位置の画素)の平均値を非駆動ラインの画素の推定画素値とする平均化法が挙げられる。平均化法では、図14の式における係数tは0.5となる。この補間演算が本
実施形態の補正性能に影響するため、必要に応じて、上下2画素だけを参照するのでなく、上下4画素、上下6画素などのように参照画素数を増やしてもよい。また、この方法に準ずる他の補間方法を適用してもよい。
【0102】
上述したいずれかの方法にて、補間部30は、第1のメモリ2から読み出したデータから、60p駆動時と同様の11画素×11ラインデータを生成する。すなわち、そのフィールドで駆動される5ライン分の信号と補間処理のために特に利用する2ライン分の信号の合計7ライン分の信号が、11ライン分の信号に変換されたことになる。変換処理はライン単位で行う必要はない。ここで画素単位で見ると、7ライン×11画素(個)の画素データが、11ライン×11画素(個)の画素データに変換されているといえる。このように参照できる画素データの数を増やすことで精度の高い補正が可能となる。なおこの変換処理は一つのフィールドの信号で行われ、他のフィールドの信号は利用していない。そして、復元部3が、この11画素×11ラインデータを2n−m倍して、データ量を復元する。
【0103】
選択的加算部4および係数乗算部6の処理は、第1の実施形態で述べた60p駆動時の処理と同じである。係数乗算部6から出力された補正値は、第2のメモリ7に格納される。本実施形態では1フィールド遅延を行うため、第2のメモリ7はフィールドバッファとして機能する。この点、第2のメモリ7がフレームバッファとして機能する第1の実施形態とは機能的に異なるが、回路構成は共通で良い。1フィールド後に第2のメモリ7から読み出された補正値は、補正演算部8で元画像データRin、Gin、Binに次式で示されるように加算演算される。その加算結果が補正演算部8から補正データRout、Gout、Boutとして出力される。
Rout=Rin+補正値
Gout=Gin+補正値
Bout=Bin+補正値
図15は、n奇数フィールドにある補正対象画素A(SPD=4)と、n偶数フィールドにある補正対象画素B(SPD=5)のそれぞれに対する、ハレーション補正処理のタイミングを表す概念図である。実線は駆動ラインを示し、破線は非駆動ラインを示している。横軸は時間を表している。
【0104】
時刻t0に、n−1偶数フィールドの映像データが入力される。時刻t1に、7ライン分のデータの第1のメモリ2への書き込みが完了し、n−1偶数フィールドのデータに基づく補正値の演算が開始される。この演算結果(補正値)は、ほぼ同時に、第2のメモリ7に格納されていく。そして、時刻t2において、補正演算部8において、n奇数フィールドの補正対象画素Aに対して、n−1偶数フィールドの隣接画素Cについての補正値が加算される。これにより、補正対象画素Aのハレーション補正がなされる。
【0105】
同様にして、n奇数フィールドのデータに基づく補正値の演算も行われ、時刻t4には、n偶数フィールドの補正対象画素Bに対して、n奇数フィールドの隣接画素Aについての補正値が加算される。これにより、補正対象画素Bのハレーション補正がなされる。
【0106】
上記処理を繰り返していくことで、各フィールドの映像データが順次補正されていく。
【0107】
以上説明したように、本実施形態の方法を用いれば、インタレース駆動においても、プログレッシブ駆動と同様な信号処理方法でハレーション補正ができる。したがって、60p駆動と120i駆動を動的に切り替えるような使い方をする場合に回路構成が共通化できるメリットがある。
【0108】
図3に記載の補正値出力回路をプログレッシブ駆動時に使用する際は、変換回路である
補間回路30で信号のライン数を増やす必要が無いので、補間回路30は入力信号をそのまま次段に出力するように制御する。
【0109】
(他の実施形態)
以上述べた実施形態では、補正対象画素の近傍に位置する画素が補正対象画素の明るさに対して与え得る明るさの増分のうち、スペーサによって遮蔽される分に相当する補正値を演算する構成を示した。該演算により得られた補正値は補正対象データを大きくするように補正対象データに対して演算される。これにより、スペーサの近傍にある画素において、あたかも近傍にスペーサがないようにハレーションによる明るさの増分が擬似的に付与される。これにより上記第2の問題が改善されている。
【0110】
一方本実施形態では、補正対象画素の近傍に位置する画素が補正対象画素の明るさに対して与える明るさの増分に相当する補正値を演算する構成とする。ここでは、得られた補正値によって、補正対象画像の明るさを、近傍に位置する画素によって補正対象画素に与えられる明るさの分減少させるように補正を行う。
【0111】
本実施形態のハレーション補正部の構成は上記実施形態のものと同じである。ただし、選択的加算部4及び補正演算部8の動作が上記実施形態とは異なる。
【0112】
補正対象画素がスペーサから充分に離れている場合、スペーサ近傍に位置する場合とでそれぞれ以下のように制御する。
【0113】
・スペーサから充分にはなれている場合
補正対象画素に対してハレーションによる影響を及ぼし得る画素(近傍画素)と、補正対象画素との間にスペーサがなければ、その補正対象画素に対してはスペーサによるハレーションを遮蔽する作用は影響しない。従って、選択的加算部4において駆動ライン上の近傍画素のデータをすべて積算して出力する。
【0114】
・スペーサ近傍
スペーサ近傍では、近傍画素のうち、スペーサに対して補正対象画素と同じ側に位置する駆動ライン上の近傍画素のデータのみを加算する。
【0115】
以上のようにして得られた積算値を用いて上記実施形態と同様に補正値を算出する。
【0116】
本実施形態は、ハレーションによって生じる輝度増分を、補正によって減少させる構成であるため、補正演算部8では補正対象データから補正値を減算する処理を行う。これによりハレーションがあたかも発生しない表示装置のような表示を行うことができる。
【0117】
なお以上から明らかなようにこの形態はスペーサを用いない構成においても適用できる。スペーサもしくはスペーサに相当する部材を用いない表示パネルであれば上述のスペーサから充分に離れている場合の処理を全領域で行えばよい。
【0118】
ここでは表面伝導型放出素子を用いた表示装置の例を挙げているが、その他の表示装置においてもここでハレーションとして説明しているようなクロストークが発生しうる。例えばプラズマ表示装置においては、一つの素子が発生したプラズマが近接した素子の明るさに影響を与え得る。また液晶表示装置や有機EL表示装置の場合には、一つの素子に与えられた駆動電圧が、近接した素子の駆動電圧に影響を与え得る。これらの表示装置においても以上で詳細に示した実施形態と同様にクロストークを補正することができる。なおバックライトやプロジェクション用光源と合わせて用いる透過型の液晶表示装置においては、発光領域は光を透過する領域を意味する。また反射型の液晶表示装置においては、発光
領域は光を反射する領域を意味する。
【0119】
また、インタレース信号に基づいて、注目画素のデータを補正する補正値を求める構成として、1つのフィールドの信号のみを利用し、第3の実施形態のような補間処理も行わずに補正値を求める構成とすることも可能ではある。しかしながら1秒あたりの画像表示の回数が120回の駆動と、60回の駆動のように、1秒あたりの画像表示の回数が異なる駆動(単位時間あたりの画像表示の回数が異なる駆動)を切り替えて行う構成においては、補正値を決定するための演算の内容を異ならせることで好適な補正値を得ることができる。すなわち、複数の画像データ(上記実施形態1、2では複数のフィールドデータ)で求めた補正値を加算して補正に利用する補正値を得る演算を行う構成や、実施形態3のように補間演算を含む演算を行って補正値を得る構成である。これらの演算は画像の表示周波数が高い場合に複数の画像の表示による影響を一つの補正値に反映させる効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】第1および第2の実施形態に係る、インタレース駆動時のハレーション補正部のブロック図。
【図2】第3の実施形態に係る、インタレース駆動時のハレーション補正部のブロック図。
【図3】プログレッシブ駆動時のハレーション補正部のブロック図。
【図4】画像表示装置のブロック図。
【図5】スペーサ非近傍でのハレーション発生メカニズムの説明図。
【図6】スペーサ近傍でのハレーション発生メカニズムの説明図。
【図7】プログレッシブ駆動時のハレーションマスクパターン図。
【図8】プログレッシブ駆動時における注目画素とスペーサとの距離に応じて反射電子が遮断される画素領域の対応図。
【図9】遮断量加算方式によるハレーション補正のイメージ図。
【図10】インタレース駆動時のハレーションマスクパターン図。
【図11】インタレース駆動時における注目画素とスペーサとの距離に応じて反射電子が遮断される画素領域の対応図。
【図12】第2の実施形態に係るインタレース駆動時のハレーション補正処理のタイミングを表す概念図。
【図13】プログレッシブ駆動時の参照画素の範囲と、インタレース駆動時の参照画素の範囲との比較を示す図。
【図14】第3の実施形態に係る、線形内挿入法による非駆動ラインの画素補間方法を示す概念図。
【図15】第3の実施形態に係るインタレース駆動時のハレーション補正処理のタイミングを表す概念図。
【符号の説明】
【0121】
1 間引き処理部
2 第1のメモリ
3 復元部
4 選択的加算部
5 スペーサ位置情報生成部
6 係数乗算部
7 第2のメモリ
7a 奇数フィールド用メモリ
7b 偶数フィールド用メモリ
8 補正演算部
30 補間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面に画像を表示するための複数の画素と、
複数の画素をインタレース駆動するための駆動信号を出力する駆動部と、
を有しており、
前記駆動部は、
クロストークによる画質の低下を抑制する補正を行うための補正値を出力する補正値出力回路と、
前記補正値によって補正された前記駆動信号を出力する出力部と、を有しており、前記補正値は、補正の対象となる画素に近接する画素に対応する画素データに基づいて算出されるものであり、前記算出に用いる画素データは、前記補正の対象となる画素が駆動されるフィールドの画素データと、前記補正の対象となる画素が駆動されないフィールドの画素データであることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記補正値出力回路は、
前記補正の対象となる画素が駆動される前記フィールドの前記画素データを用いて算出した値と、
前記補正の対象となる画素が駆動されない前記フィールドの前記画素データを用いて算出した値と、
を演算して前記補正値を算出する請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
画面に画像を表示するための複数の画素と、
複数の画素をインタレース駆動するための駆動信号を出力する駆動部と、
を有しており、
前記駆動部は、
クロストークによる画質の低下を抑制する補正を行うための補正値を出力する補正値出力回路と、
前記補正値によって補正された前記駆動信号を出力する出力部と、を有しており、
前記補正値出力回路は、
補正の対象となる画素に近接するn個の画素にそれぞれ対応するn個の画素データを記憶するメモリと、
メモリに記憶したn個の画素データを、m個(mはnよりも大きい整数)の画素データに変換する変換回路と、を有しており、
該変換回路の出力に基づいて前記補正値を生成する、ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
前記変換回路は、前記n個の画素のうちの複数の画素に対応する画素データを用いた補間演算を行う請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
画面に画像を表示するための複数の画素と、
該複数の画素を駆動するための駆動信号を出力する駆動部と、
を有しており、
該駆動部は、
クロストークによる画質の低下を抑制する補正を行うための補正値を出力する補正値出力回路と、
前記補正値によって補正された前記駆動信号を出力する出力部と、を有しており、
前記補正値出力回路は、
補正の対象となる画素に近接する画素に対応する画素データを用いた演算によって前記補正値を生成するものであり、
前記複数の画素による単位時間あたりの画像表示の回数が第1の値である場合と、該第1の値よりも大きい第2の値である場合とで、異なる演算を行うものである、
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
前記補正値は、
画面内の複数の画素に対応する画素データが同一である場合であって、かつ、
画面内の所定の領域において互いに近接する画素間のクロストークが、画面内の他の領域において互いに近接する画素間のクロストークよりも少ない場合に、
前記所定の領域の画素の明るさを増やす補正値である請求項1乃至5の何れかに記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記画素は、電子放出素子と、該電子放出素子が放出する電子が照射されることで発光する発光領域と、を有しており、
前記画像表示装置は、前記電子放出素子と前記発光領域との間の空間を維持するスペーサを有しており、
該スペーサは、近接した画素間でのクロストークを抑制する、
請求項1乃至6に記載の何れかに画像表示装置。
【請求項8】
前記補正値は、前記スペーサに対して前記補正の対象となる画素とは反対側に位置する画素、に対応する画素データを用いて算出される請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記補正値は、
出力する光量がクロストークによって増加する画素の光量を減らす補正を行うための補正値である請求項1乃至5の何れかに記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−199683(P2007−199683A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329262(P2006−329262)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】