説明

画像表示装置

【課題】良好なホワイトバランスを得ることが可能な画像表示装置を提供する。
【解決手段】ガラスパネル1と赤蛍光体3Gの蛍光面及び青蛍光体3B蛍光面との間にそれぞれ内面フィルタ4R及び内面フィルタ4Bを設置することにより、赤色の色度(x,y)は、(0.656,0.343)、青色のそれは(0.146,0.063)となる。また、赤、緑、青の輝度比は、R:G:B=306:1150:159となる。白色の色度(x,y)を(0.283,0.298)(=色温度9300K),白色輝度200cd/m2にした場合、各色へ照射する電流密度比はR:G:B=65:100:98となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好なホワイトバランスを得るように構成されたフィールド・エミッション・ディスプレイ(Field Emission Display:以下FEDと称する)等の画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤、緑、青の蛍光体を個別に励起して発光させ、画像を形成する平面型の画像表示装置においては、各色の蛍光体の発光輝度が異なるために良好なホワイトバランスが得られない場合がある。このような画像表示装置において、良好なホワイトバランスを得るための従来技術としては、例えば、下記特許文献1または特許文献2に記載の技術が知られている。この特許文献1にはプラズマディスプレイパネル(PDP)において、また、特許文献2には有機ELにおいて、青の蛍光体の輝度が緑、赤に比べて相対的に低いために青の蛍光体の面積を他の2色よりも大きくすることが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−63847号公報
【特許文献2】特開2003−249361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PDPは、プラズマ放電で生成された紫外光により蛍光体を励起発光するのに対してFEDは、電子放出素子からの電子ビームにより蛍光体を発光させる。すなわち、PDPとFEDでは、互いに蛍光体を励起させる方法が異なっており、使用される蛍光体の種類、材質も互いに異なる。PDPに使用される蛍光体は、例えば、赤:(Y,Gd)BO3:Eu、緑:ZnSiO4:Mn、青:BaMgAl1017:Euが使用されており、白色表示時においては、緑の輝度を基準とする場合、青の輝度が相対的に低い。
【0005】
一方、FEDに使用される蛍光体は、例えば、赤:Y23:Eu、緑:Y2SiO5:Tb、青:ZnS:Ag,Clが使用されており、白色表示時においては、緑の輝度を基準として、赤及び青の輝度が相対的に高い。したがって、特許文献1に記載の技術をFEDに適用しても良好なホワイトバランスを得ることが困難である。
【0006】
特許文献2は、青の蛍光体の面積を他の2色よりも大きくするとの技術手段が、有機ELのみならずFEDにも適用可能であることを開示している。しかしながら、上述したようにFEDに使用される蛍光体は、赤及び青の輝度よりも緑の輝度が低いので、当該技術手段をFEDに適用したとしても、良好なホワイトバランスを得ることが困難である。
【0007】
したがって、本発明は、前述した従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、良好なホワイトバランスを得ることを可能にした画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために本発明による画像表示装置は、複数の電子放出素子を含む第1基板と、第1基板と対向して配置され、且つ電子放出素子からの電子により励起されて発光する赤,緑,青の3色の蛍光体を含む第2基板とを備え、電子放出素子からの電子により励起されて発光する赤、緑、青の3色の蛍光体がNTSCの標準白色である9300Kを表示する画像表示装置において、赤、緑、青に対する励起電流密度比が赤:緑:青=95〜105:100:95〜105の範囲に設定することにより、赤、緑、青の発光輝度比を所望の輝度比に近づけることができるので、背景技術の課題を解決することができる。
【0009】
本発明による他の画像表示装置は、複数の電子放出素子を含む第1基板と、第1基板と対向して配置され、且つ電子放出素子からの電子により励起されて発光する赤,緑,青の3色の蛍光体を含む第2基板とを備え、電子放出素子からの電子により励起されて発光する赤、緑、青の3色の蛍光体がNTSCの白色である6500Kを表示する画像表示装置において、赤、緑、青に対する励起電流密度比が赤:緑:青=95〜105:100:95〜105の範囲に設定することにより、赤、緑、青の発光輝度比を所望の輝度比に近づけることができるので、背景の技術の課題を解決することができる。
【0010】
本発明によるさらに他の画像表示装置は、複数の電子放出素子を含む第1基板と、第1基板と対向して配置され、且つ電子放出素子からの電子により励起されて発光する赤,緑,青の3色の蛍光体を含む第2基板とを備え、電子放出素子からの電子により励起されて発光する赤、緑、青の3色の蛍光体がNTSCの白色である13000Kを表示する画像表示装置において、赤、緑、青に対する励起電流密度比が赤:緑:青=95〜105:100:95〜105の範囲に設定することにより、赤、緑、青の発光輝度比を所望の輝度比に近づけることができるので、背景の技術の課題を解決することができる。
【0011】
好ましくは、上記構成において、一つまたは複数色の蛍光体の前面に色選択性を有する層を配設することを特徴としている。
【0012】
また、好ましくは、上記構成において、一つまたは複数色の蛍光体の前面に色選択性を有する顔料を付着させることを特徴としている。
【0013】
また、好ましくは、上記構成において、3色の蛍光体のうち、塗布面積が最小である蛍光体の面積に比べて一つまたは二つの蛍光体塗布面積を広くすることことを特徴としている。
【0014】
また、好ましくは、上記構成において、第2基板の前面に色選択性を有するフィルタを配設することを特徴としている。
【0015】
また、本発明による他の画像表示装置は、電子放出素子からの電子により励起されて発光する赤、緑、青の3色の蛍光体が複数の白色設定が可能であり、各々に白色設定に対して対応する交換可能な第2基板の前面に色選択性フィルタを有し、対応する色選択性フィルタを用いた場合に白色を表示すると、赤、緑、青の蛍光体に対する励起電流密度比が赤:緑:青=95〜105:100:95〜105の範囲であることを特徴としている。
【0016】
なお、本発明は、上記各構成及び後述する実施の形態に記載される構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱することなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0017】
本発明による画像表示装置によれば、赤、緑、青に対する励起電流密度比が赤:緑:青=95〜105:100:95〜105の範囲に設定することにより、赤、緑、青の発光輝度比を所望の輝度比に近づけることができるので、低い色温度から高い色温度の白色及び良好なホワイトバランスを得ることができるという極めて優れた効果を有する。
【0018】
また、本発明による画像表示装置によれば、一つまたは複数色の蛍光体の前面に色選択性を有する層または色選択性を有する顔料が付着していること及びその両方を用いることで赤、緑、青に発光輝度比を所望の輝度比に近づけることにより、励起電流密度比を1:1:1に近づけることができるので、表示諧調を最大化できるという極めて優れた効果が得られる。
【0019】
また、本発明による画像表示装置によれば、一つまたは複数色の蛍光体の前面に色選択性を有する層または色選択性を有する顔料が付着していること及びその両方を用いることにより、各色の色純度が向上し、色再現範囲が増加できるなどの極めて優れた効果得られる。
【0020】
また、本発明による画像表示装置によれば、蛍光体の前面に色選択性を有する顔料を付着させたことにより、蛍光体の保護効果によって蛍光体寿命が向上できるなどの極めて優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
ここで、具体的な実施の形態を説明する前に図1を用いて本発明の基礎概念について説明する。図1に示す傾斜している直線は、蛍光体輝度の電流依存性を示している(以下、輝度−電流曲線と称する)。一般に蛍光体は、照射される電流が増加すれば、輝度も増加する。一方、所望の白色色度及び白色輝度と、赤(R),緑(G),青(B)各色の色度とが決まれば、R、G、Bの輝度比は計算により一義的に決定される。
【0023】
この各色に所望の輝度を輝度−電流曲線上にプロットすると、通常、図1の丸印で示すR、四角印で示すG、三角印で示すBプロット点のように照射すべき電流値は異なることになる。R、G、Bの輝度比は維持する必要があるので、図1より明らかなように実際に各色で使用する電流範囲はFED電子放出素子の電流可変範囲よりも狭くなる。
【0024】
ここで、仮にFED電子放出素子の電流可変範囲を256段階で制御できるとする。この場合、各色が実際に使用できる電流範囲は、FED電子放出素子の電流可変範囲より狭いため、各色は256段階以下でしか制御できないことになる。これにより、各色の表示階調数は減少し、当然全体としても表示階調数は減少する。
【0025】
この問題を解決するために後述する(1)〜(4)で説明するように蛍光面構造を改良し、各色の所望輝度を輝度−電流曲線自体を変化させた。なお、実際の蛍光体において、輝度−電流曲線は直線にはならないが、図1では簡単なために直線として表現している。また、発光色度も変化するが、これも簡単のために変化しないものとして記述している。この相違は実施例にも記載したように僅かなずれを生むが、照射すべき電流値を各色に対応してR:G:Bで1:1:1に近づけるという本発明の基礎概念に影響を及ぼさない。
【0026】
図2は、第2基板の内側に形成されている蛍光面の要部拡大断面図であり、1は第2基板である透光性ガラスパネル、2はガラスパネル1の内側の所定位置に形成されたブラックマトリクス膜、3R、3G、3Bはガラスパネル1の内側でブラックマトリクス膜2により区画されて形成されたそれぞれ赤蛍光体、緑蛍光体、青蛍光体、4R,4Bはそれぞれ赤蛍光体3R、青蛍光体3Bとガラスパネルの間に形成された内面フィルタである。
【0027】
上述した蛍光面構造の改良手段としては、
(1)図2に示すように必要電流値がより少ない色の赤蛍光体3R及び青蛍光体3Bにのみ、それぞれ内面フィルタ4R及び内面フィルタ4Bを設置する。また、図3に示すようにこの内面フィルタ4R及び内面フィルタ4Bの設置に加えて赤蛍光体3Rの粒子表面に顔料5を付着させる。この手段を用いて白色を表示した場合の赤、緑、青への励起電流密度比がR:G:B=1:1:1に近づくように調整する。これにより、FED電子放出素子の電流可変範囲全体を有効的に利用できるようになり、諧調が最大化する。また、同時に顔料及び内面フィルタに色選択効果により、必要電流値が少なかった蛍光体に色純度が向上するので、色再現範囲が拡大する。
【0028】
図4は、第2基板の内側に形成されている蛍光面の構成を説明する図であり、図4(a)は内側から見た要部平面図、図4はその要部拡大断面図であり、図3と同一部分に同一符号を付し、その説明は省略してある。図中、6G、6Bは開口部7から外側に食み出したそれぞれ緑蛍光体3G、青蛍光体3Gの食み出し部である。
【0029】
また、上述した蛍光面構造の他の改良手段としては、
(2)図4に示すように必要電流がより多い色にのみ、ブラックマトリクス膜2側により多く食み出させる蛍光体食み出し部6G、6Bを設ける。その食み出し部6G、6Bの面積は、必要電流が多いほど多くする。必要電流が多い色の面積を増やすことにより、輝度を増加させる。この手段を用いて白色を表示したい場合のR、G、Bへの励起電流密度比がR:G:B=1:1:1に近づくように調整する。なお、混色を防止するために蛍光体の食み出し距離はブラックマトリクス膜2の端から、その蛍光体膜厚以下とする。
【0030】
また、上述した蛍光面構造のさらに他の改良手段としては、
(3)ガラスパネル1の表面(外面)に図5に示す赤、緑、青の各領域に透過率のピーク値Pr,Pg、Pgを有するフィルタを配置する。このフィルタに透過率を予め調整しておき、白色を表示した場合の赤、緑、青への励起電流密度比がR:G:B=1:1:1に近づくように設定する。
【0031】
また、上述した蛍光面構造の他の改良手段としては、
(4)上述した手段(1)〜(3)を組み合せて白色を表示した場合の赤、緑、青への励起電流密度比がR:G:B=1:1:1に近づくようにしても良い。
【実施例1】
【0032】
次に、実施例の図面を参照して詳細に説明する。FEDに使用する蛍光体として例えば、赤色蛍光体:Y23:Eu、緑色蛍光体:Y2SiO5:Tb、青色蛍光体:ZnS:Ag,Clを使用して作製した蛍光面をFEDに使用される電子放出素子で電子線励起した。加速電圧約7kVの場合、同一の電流密度で各蛍光面を励起すると、その輝度比はR:G:B=380:1150:190であった。また、このときの各色の色度(x,y)は、赤色(0.639,0.347)、緑色(0.345,0.577)、青色(0.148,0.067)であった。
【0033】
上記条件で赤、緑、青の各画素の蛍光面面積が同じ場合に、白色色度(x,y)を(0.283,0.298)にするためには、各色へ照射する電流密度比はR:G:B=56:100:89となり、緑及び青により多くの電流を照射する必要がある。ここで、電流密度比が上記のようになる理由は、緑及び青に要求される輝度が緑及び青の実際の輝度に比べて高いためである。上記電流密度比は、R:G:B=1:1:1に近いほど、電子放出素子の利用効率及び表示色確保の観点から望ましい。
【0034】
上記問題を解決するために図2に示すようにガラスパネル1と赤蛍光面及び青蛍光面との間にそれぞれ内面フィルタ4R及び内面フィルタ4Bを設置した。これにより、赤色の色度(x,y)は、(0.656,0.343)、青色のそれは(0.146,0.063)となった。また、赤、緑、青の輝度比は、R:G:B=306:1150:159となった。白色色度(x,y)を(0.283,0.298)(=色温度9300K(NTSCの標準白色))、白色輝度200cd/m2(設計上の標準的な条件)にした場合、各色へ照射する電流密度比はR:G:B=65:100:98となった。
【実施例2】
【0035】
電流密度比を1:1:1により近づけるために図3に示すように実施例1で行ったガラスパネル1と赤蛍光面及び青蛍光面との間にそれぞれ内面フィルタ4R及び内面フィルタ4Bの設置に加え、赤蛍光面の粒子表面に顔料を付着させた蛍光体を使用した。これにより、赤色の色度(x,y)は、(0.664,0.343)となった。また、赤、緑、青の輝度比は、R:G:B=199:1150:159となった。白色色度(x,y)を(0.283,0.298)(=色温度9300K)、白色輝度200cd/m2(設計上の標準的な条件で中程度の白色)にした場合、各色へ照射する電流密度比はR:G:B=95:100:97となった。
【0036】
なお、同じ白色色度で白色輝度を20cd/m2(設計上の標準的な条件で暗い白色)にした場合、電流密度比は、R:G:B=93:100:95となり、同じ白色色度で白色輝度を500cd/m2(設計上の標準的な条件で明るい白色)にした場合、電流密度比はR:G:B=101:100:104となった。これは各蛍光面の輝度−電流曲線の形状が異なることに由来する。
【実施例3】
【0037】
電流密度比を1:1:1に近づけるために図4(a)に蛍光面の平面図、図4(b)にその断面図で示すように緑蛍光体3G及び青蛍光体3Bの塗布面積を赤蛍光体3Rの蛍光体塗布面積よりも大きくした。このとき、混色を防止するためにそれぞれの食み出し部66G,6Bの距離は緑蛍光体3G,青蛍光体3Bの厚さ以下とした。このような構成では、色度は変化しないが、見かけ上、緑及び青の輝度が上昇するので、電流密度比の差を小さくすることができた。
【0038】
白色色度(x,y)を(0.283,0.298)(=色温度9300K)、白色輝度200cd/m2にした場合、各色へ照射する電流密度比はR:G:B=95:100:100となった。なお、同じ白色色度で白色輝度を20cd/m2にした場合、電流密度比は、R:G:B=93:100:97となり、同じ白色色度で白色輝度を500cd/m2にした場合、電流密度比はR:G:B=101:100:107となった。
【0039】
このような構成では、蛍光体の色度は変化しない。したがって、各色の色度(x、y)は、赤色(0.639,0.347)、緑色(0.345,0.577)、青色(0.148,0.067)であり、実施した中で色再現範囲は最も小さいNTSC比約61.7%であった。
【実施例4】
【0040】
電流密度比を1:1:1に近づけるために図5に示すような赤、緑、青の各領域に透過率のピークPr、Pg、Pbを有するフィルタ8を図6に示すようにガラスパネル1の前面に設置した。白色色度(x,y)を(0.283,0.298)(=色温度9300K),白色輝度200cd/m2にした場合、各色へ照射する電流密度比はR:G:B=100:100:95となった。なお、同じ白色色度で白色輝度を20cd/m2にした場合、電流密度比は、R:G:B=98:100:92となり、同じ白色色度で白色輝度を500cd/m2にした場合、電流密度比はR:G:B=102:100:99となった。
【実施例5】
【0041】
電流密度比を1:1:1に近づけるために上述した顔料付き蛍光体,内面フィルタ,蛍光体食み出し部の面積の制御及び前面フィルタの設置を行った。白色色度(x,y)を(0.283,0.298)(=色温度9300K)、白色輝度200cd/m2にした場合、各色へ照射する電流密度比はR:G:B=100:100:100となった。なお、同じ白色色度で白色輝度を20cd/m2にした場合、電流密度比は、R:G:B=99:100:99となり、同じ白色色度で白色輝度を500cd/m2にした場合、電流密度比はR:G:B=101:100:101となった。
【実施例6】
【0042】
設計上の標準的な条件として白色色温度を6500K(ヨーロッパ規格)または13000K(日本規格:青系の白色)とし、白色輝度200cd/m2にした場合でも、実施例5と同様の方法で電流密度比を1:1:1に近づけることが可能か否かの試作を行った。当然のことながら、この条件でも顔料付き蛍光体,内面フィルタ,蛍光体食み出し部の面積の制御及び前面フィルタの設置を行えば、各色へ照射する電流密度比はR:G:B=100:100:100とすることができた。なお、この場合も、同じ白色色度で白色輝度を20cd/m2にした場合、電流密度比は、R:G:B=99:100:99となり、同じ白色色度で白色輝度を500cd/m2にした場合、電流密度比はR:G:B=101:100:101となった。
【実施例7】
【0043】
FEDに使用する蛍光体として赤色蛍光体:Y22S:Eu、緑色蛍光体:ZnS:Cu,Al、青色蛍光体としてZnS:Ag,Clを使用して作製した蛍光面をFEDに使用する電子放出素子で電子線励起した。加速電圧約7kVの場合、同一の電流密度で各蛍光面を励起すると、その輝度比はR:G:B=370:1180:190であった。また、このときの各色の色度(x,y)は、赤色(0.654,0.335)、緑色(0.288,0.613)、青色(0.146,0.064)であった。
【0044】
上記条件で赤、緑、青の各画素に蛍光面面積が同じ場合に白色色度(x,y)を(0.283,0.298)にするためには各色へ照射する電流密度比はR:G:B=90:100:92となり、緑色画素及び青色画素により多くの電流を照射する必要がある。
【0045】
電流密度比が上記のようになる理由は、赤色画素及び青色画素に要求される輝度が赤色画素及び青色画素の実際の輝度に比べて高いためである。上記電流密度比は、1:1:1に近いほど、電子放出素子の利用効率及び表示色確保の観点から望ましい。上記問題を解決するために赤及び青蛍光体として顔料付き蛍光体を使用した。また、ガラスパネルの内面と蛍光面との間に内面フィルタを設置した。
【0046】
これにより、赤色の色度(x,y)は、(0.661,0.335)、緑色の色度(x,y)は、(0.287,0.622)、青色の色度は(0.146,0.056)となった。また、赤、緑、青の輝度比は、R:G:B=254:982:118となった。白色色度(x,y)を(0.283,0.298)(=色温度9300K)、白色輝度200cd/m2にした場合、各色へ照射する電流密度比はR:G:B=104:100:105となった。この場合、実施した中で色再現範囲は、最も大きいNTSC比約79.7%であった。
【実施例8】
【0047】
異なる標準白色を設定でき、且つ各々の場合において、励起電流密度比を各色に対応して1:1:1に近づけるために対応する交換可能な複数の前面フィルタの設置を行った。色温度6500K、9300K、13000Kのそれぞれにおいて、白色輝度200cd/m2にした場合、各色へ照射する電流密度比はR:G:B=100:100:100となるように前面フィルタを作製した。色温度の設定を行った場合、自動的に対応するフィルタが配置される巻取り式装置を設置した。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による画像表示装置の基礎概念を説明するための蛍光体輝度の電流依存性を示す図(輝度−電流曲線)である。
【図2】本発明による画像表示装置の一実施例の構成を示す蛍光面の要部拡大断面図である。
【図3】本発明による画像表示装置の他の実施例の構成を示す蛍光面の要部拡大断面図である。
【図4】本発明による画像表示装置のさらに他の実施例の構成を示す蛍光面の図であり、図4(a)は内側から見た要部平面図、図4(b)はその要部拡大断面図である。
【図5】赤色、緑色、青色の各領域の透過率曲線を示す図である。
【図6】本発明による画像表示装置の他の実施例の構成を示す蛍光面の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1・・・透光性ガラスパネル(第2基板)、2・・・ブラックマトリクス膜、3R・・・赤色蛍光体、3G・・・緑蛍光体、3B・・・青蛍光体、4R・・・内面フィルタ、4B・・・内面フィルタ、5・・・顔料、6G・・・蛍光体食み出し部、6B・・・蛍光体食み出し部、7・・・開口部、8・・・フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子放出素子を含む第1基板と、
前記第1基板と対向して配置され、且つ前記電子放出素子からの電子により励起されて発光する赤,緑,青の3色の蛍光体を含む第2基板と、
を備え、
前記電子放出素子からの電子により励起されて発光する赤、緑、青の3色の蛍光体がNTSCの標準白色である9300Kを表示する画像表示装置であって、
前記赤、緑、青に対する励起電流密度比が赤:緑:青=95〜105:100:95〜105の範囲であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
複数の電子放出素子を含む第1基板と、
前記第1基板と対向して配置され、且つ前記電子放出素子からの電子により励起されて発光する赤,緑,青の3色の蛍光体を含む第2基板と、
を備え、
前記電子放出素子からの電子により励起されて発光する赤、緑、青の3色の蛍光体がNTSCの白色である6500Kを表示する画像表示装置であって、
前記赤、緑、青に対する励起電流密度比が赤:緑:青=95〜105:100:95〜105の範囲であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
複数の電子放出素子を含む第1基板と、
前記第1基板と対向して配置され、且つ前記電子放出素子からの電子により励起されて発光する赤,緑,青の3色の蛍光体を含む第2基板と、
を備え、
前記電子放出素子からの電子により励起されて発光する赤、緑、青の3色の蛍光体がNTSCの白色である13000Kを表示する画像表示装置であって、
前記赤、緑、青に対する励起電流密度比が赤:緑:青=95〜105:100:95〜105の範囲であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
一つまたは複数色の蛍光体の前面に色選択性を有する層があることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の画像表示装置。
【請求項5】
一つまたは複数色の蛍光体に色選択性を有する顔料が付着していることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記3色の蛍光体のうち、塗布面積が最小である蛍光体の面積に比べて一つまたは二つの蛍光体塗布面積が広くなっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記第2基板の前面に色選択性を有するフィルタを配設したことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記赤、緑、青の3色の蛍光体の色再現範囲がNTSC比61.7%乃至79.7%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載の画像表示装置。
【請求項9】
複数の電子放出素子を含む第1基板と、
前記第1基板と対向して配置され、且つ前記電子放出素子からの電子により励起されて発光する赤,緑,青の3色の蛍光体を含む第2基板と、
を備え、
前記電子放出素子からの電子により励起されて発光する赤、緑、青の3色の蛍光体が複数の白色設定を選択可能とし、各々に白色設定に対して対応する交換可能な前記第2基板の前面に色選択性フィルタを有し、対応する色選択性フィルタを用いた場合に白色を表示すると、前記赤、緑、青の蛍光体に対する励起電流密度比が赤:緑:青=95〜105:100:95〜105の範囲であることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−66161(P2008−66161A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243671(P2006−243671)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】