画像表示装置
【課題】表示媒体のコントラストを向上させることができる、画像表示装置を提供する。
【解決手段】コレステリック液晶を含む表示層、及び複数の画素毎の電圧を印加することが可能なように表示層を挟持する走査電極18及びデータ電極20が積層された表示媒体12が備えられ、表示媒体12に画像を表示させた後、又は表示媒体12を初期化させた後に、制御部40は、走査電極駆動部46、データ電極駆動部48及び電力供給部44A,44Bによって、コレステリック液晶をプレーナ状態からフォーカルコニック状態に徐々に変化させる電圧の範囲内の大きさの電圧を、当該電圧の印加が開始された時点から、当該電圧が印加されることによりフォーカルコニック状態へ変化を開始した上記液晶が当該電圧の印加が停止された後にプレーナ状態に戻ることが可能な時点までの期間、走査電極18及びデータ電極20を介して上記表示層に印加させる。
【解決手段】コレステリック液晶を含む表示層、及び複数の画素毎の電圧を印加することが可能なように表示層を挟持する走査電極18及びデータ電極20が積層された表示媒体12が備えられ、表示媒体12に画像を表示させた後、又は表示媒体12を初期化させた後に、制御部40は、走査電極駆動部46、データ電極駆動部48及び電力供給部44A,44Bによって、コレステリック液晶をプレーナ状態からフォーカルコニック状態に徐々に変化させる電圧の範囲内の大きさの電圧を、当該電圧の印加が開始された時点から、当該電圧が印加されることによりフォーカルコニック状態へ変化を開始した上記液晶が当該電圧の印加が停止された後にプレーナ状態に戻ることが可能な時点までの期間、走査電極18及びデータ電極20を介して上記表示層に印加させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コレステリック液晶を用いた表示装置において、選択信号をコモン選択電極上の画素を構成するコレステリック液晶に印加して表示状態を選択し、また非選択信号をコモン非選択信号上の画素を構成するコレステリック液晶に印加する書換え動作を繰り返すことで各画素毎にコレステリック液晶の表示状態を書き換えた後に、全ての画素を構成するコレステリック液晶に対して微小電圧を印加することによって、プレーナ状態の光反射率を変えずに、フォーカルコニック状態の光反射率を低くすることによって、コントラストを向上させる技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、コレステリック液晶を用いた表示装置では書き込み速度が高速になると、フォーカルコニック状態への遷移が不十分となるために画像全体が薄くなるという特性を用いて、中間調の書き込みを行い、それを繰り返すことで多値画像を形成する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、コレステリック液晶とモノマーの混合物とを、電極を備えた2枚のガラスプレートで挟持することで、反射状態で緑色を反射し、散乱状態で黒色となるディスプレーにおいて、最小反射が観測される電圧から最大反射が観測される電圧までの範囲で電圧を変化させることでグレースケールの反射状態を実現する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−257999号公報
【特許文献2】国際公開第2005/024774パンフレット
【特許文献3】特許第3551381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、表示媒体のコントラストを向上させることができる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、第1の範囲内の大きさの第1の電圧が印加されることによってプレーナ状態からフォーカルコニック状態に徐々に変化し、フォーカルコニック状態に変化した状態で前記第1の範囲に重ならず、前記第1の範囲よりも大きい第2の範囲内の大きさの第2の電圧が印加されることによってフォーカルコニック状態からホメオトロピック状態に徐々に変化することで入射光に対する反射率が変化する液晶を含む表示層、及び複数の画素毎の電圧を印加することが可能なように前記表示層を挟持する電極が積層された表示媒体と、前記表示媒体に画像情報に基づいた画像を表示させた後、又は前記表示媒体をプレーナ状態又はフォーカルコニック状態に初期化させた後に、前記第1の範囲内の大きさの第3の電圧を、当該第3の電圧の印加が開始されてから、当該第3の電圧が印加されることによりフォーカルコニック状態へ変化を開始した前記液晶が当該第3の電圧の印加が停止された後にプレーナ状態に戻ることが可能な時点までの期間、前記電極を介して前記表示層に印加する印加手段と、を備えている。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記印加手段が、前記第3の電圧を前記期間、前記電極を介して前記表示層に繰り返し印加するものである。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記印加手段が、フォーカルコニック状態へ変化を開始した前記液晶が電圧の印加が停止された後にプレーナ状態に戻るのに要する時間の経過後に、次の前記第3の電圧を前記期間、前記電極を介して前記表示層に印加するものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、本発明を適用しない場合に比較して、表示媒体のコントラストを向上させることができる、という優れた効果を有する。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、本発明を適用しない場合に比較して、表示媒体のコントラストをより向上させることができる、という優れた効果を有する。
【0011】
更に、請求項3に記載の発明によれば、本発明を適用しない場合に比較して、第3の電圧を繰り返し印加することによる効果をより発揮させることができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る画像表示装置10の電気的構成を説明する。
【0014】
本実施の形態に係る画像表示装置10は、表示媒体12及び駆動装置14を備えており、表示媒体12は画像表示装置10から着脱可能とされている。
【0015】
具体的には、表示媒体12はコネクタ16A及びコネクタ17Aを、駆動装置14はコネクタ16B及びコネクタ17Bを備えており、コネクタ16Aとコネクタ16Bとが着脱可能とされ、コネクタ17Aとコネクタ17Bとが着脱可能とされている。そして、コネクタ16Aとコネクタ16Bとが電気的かつ機械的に接続され、コネクタ17Aとコネクタ17Bとが電気的かつ機械的に接続されることにより、コネクタ16A,16B及びコネクタ17A,17Bを介して駆動装置14から表示媒体12に画像情報に基づいた電圧が印加され、表示媒体12に画像が表示される。
【0016】
また、本実施の形態に係る表示媒体12は、短冊状で透明な複数の走査電極18及び複数のデータ電極20を備えており、各走査電極18と各データ電極20とは、複数の画素毎に異なる電圧を印加することが可能なように後述する表示層32を挟持し、各々が交差するように対向して配置される。これにより、各走査電極18と各データ電極20との交差位置が画素を構成する。なお、本実施の形態に係る走査電極18及びデータ電極20は、一例として、ITO(Indium Tin Oxide)で形成されている。
【0017】
また、本実施の形態に係る表示媒体12は、図2の断面図に示されるように、画像を表示する表示面側から、基板30A、走査電極18、表示層32、データ電極20、基板30B、及び表示層32を透過した光を吸収する光吸収層34が積層されている。なお、表示層32に表示された画像は表示面側から視認される。
【0018】
また、本実施の形態に係る基板30A,30Bは、透光性を有しているPET(Polyethylene Terephthalate)で形成されている。なお、当該基板30A,30Bは、ガラス及びシリコン等の無機シート、又はポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、及びポリエチレンナフタレート等の高分子フィルムを用いて形成してもよい。
【0019】
一方、本実施の形態に係る表示層32は、コレステリック液晶のみで構成されているが、これに限らず、表示層32は、コレステリック液晶を含むと共に、透明樹脂で構成される自己保持型液晶複合体であってもよい。また、本実施の形態に係る表示層32は、走査電極18とデータ電極20との距離(本実施の形態では、2μm)を規定すると共に、コレステリック液晶が偏在することを防止するリブ36が設けられている。
【0020】
表示層32に含まれるコレステリック液晶は、入射光のうち特定の波長の光の反射・透過状態を変調する機能を有し、液晶分子が螺旋状によじれて配向しており、螺旋軸方向から入射した光のうち、螺旋ピッチに依存して特定の波長の光を干渉反射する。さらに、コレステリック液晶は、表示層32に形成される電界の強度によって配向が変化し、当該配向の変化によって入射光の反射状態を変化させることができる。当該反射状態として、図3(A)に螺旋軸が表面に対してほぼ垂直になり、螺旋ピッチに応じた特定の波長の光を選択的に反射するプレーナ状態の模式図を示し、図3(B)に螺旋軸が表面に対してほぼ平行になり、入射光を少し前方散乱させながら透過させるフォーカルコニック状態の模式図を示し、図3(C)に液晶分子の螺旋構造がほどけ、液晶分子が電界の向きに従い、入射光を透過させるホメオトロピック状態であるホメオトロピック状態の模式図を示す。
【0021】
上記の3つの状態のうち、プレーナ状態及びフォーカルコニック状態は、無電圧で双安定に存在する。したがって、コレステリック液晶の配向状態は、表示層32に印加される電圧に対して一義的に決まらず、プレーナ状態が初期状態の場合には、印加される電圧の増加に伴って、プレーナ状態、フォーカルコニック状態、ホメオトロピック状態の順に変化し、フォーカルコニック状態が初期状態の場合には、印加される電圧の増加に伴って、フォーカルコニック状態、ホメオトロピック状態の順に変化する特性を有している。
【0022】
一方、表示層32に印加した電圧を急激にゼロにした場合には、プレーナ状態とフォーカルコニック状態はそのままの状態を維持し、ホメオトロピック状態はプレーナ状態に変化する特性を有している。
【0023】
図4に、630nmの光が入射した場合におけるコレステリック液晶の光学特性の一例を示す。同図において、最大光反射率を100、最小光反射率を0として、光反射率を正規化した正規化光反射率が90%以上の場合を選択反射状態とし、正規化光反射率が10%以下の場合を透過状態としてコレステリック液晶の反射状態を区別した場合、領域Aはプレーナ状態(選択反射状態)を示し、領域Bはプレーナ状態からフォーカルコニック状態へ変化する遷移領域を示し、領域Cはフォーカルコニック状態(透過状態)を示し、領域Dはフォーカルコニック状態からホメオトロピック状態へ変化する遷移領域を示し、領域Eはホメオトロピック状態を示し、ホメオトロピック状態で電圧をゼロにするとプレーナ状態(選択反射状態)に変化する。また、電圧Vpf90は領域Bで正規化光反射率が90%となる電圧、電圧Vpf10は領域Bで正規化光反射率が10%となる電圧、電圧Vfh10は領域Dで正規化光反射率が10%となる電圧、電圧Vfh90は領域Dで正規化光反射率が90%となる電圧である。なお、プレーナ状態のコレステリック液晶は、電圧Vpf90より若干低い電圧から電圧Vfh10より若干低い電圧が予め定められた時間(例えば、50msec)印加されることによって、電圧が印加されている期間にプレーナ状態からフォーカルコニック状態へ徐々に変化し、フォーカルコニック状態のコレステリック液晶は、電圧Vfh10より若干低い電圧から電圧Vfh90より若干高い電圧が予め定められた時間(例えば、50msec)印加されることによって、電圧が印加されている期間にフォーカルコニック状態からホメオトロピック状態へ徐々に変化する。
【0024】
また、コレステリック液晶として使用可能な具体的な液晶としては、ネマチック液晶やス メクチック液晶(たとえばシッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、安息香酸エステル系、ビフェニル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、シクロヘキサン系、トラン系、アルケニル系、スチルベン系、縮合多環系)、またはこれらの混合物に、カイラル剤(たとえばステロイド系コレステロール誘導体、シッフ塩基系、アゾ系、エステル系、ビフェニ ル系)を添加したもの等を挙げることができる。また、コレステリック液晶を、高分子マトリクス中に分散したものや、高分子ゲル化したものや、マイクロカプセル化したものでもよい。また、液晶は高分子、中分子、低分子のいずれでもよく、またこれらの混合物でもよい。
【0025】
なお、本実施の形態に係る表示媒体12では、プレーナ状態となったコレステリック液晶で形成される画素は、光を反射することで螺旋ピッチに対応した波長を選択的に反射し、フォーカルコニック状態となったコレステリック液晶で形成される画素は、散乱しながら透過した光を光吸収層34が吸収することで黒色を表示するが、これに限らず、各々他の色を表示してもよい。
【0026】
一方、図1に示す駆動装置14は、駆動装置14全体の動作を司る制御部40、画像情報等の各種情報を記憶しているメモリ42、電力供給部44Aから供給される電圧を制御部40の指示に従い、コネクタ16A,16Bを介して各走査電極18に印加する走査電極駆動部46、電力供給部44Bから供給される電圧を制御部40の指示に従い、コネクタ17A,17Bを介して各データ電極20に印加するデータ電極駆動部48を備えている。
【0027】
制御部40は、メモリ42に記憶されている画像情報に基づいて、走査電極18の行番号nを指定するための行番号指定信号、及び走査電極18に印加する電圧の大きさを行番号n毎に指定するための走査電極用電圧指定信号を走査電極駆動部46に出力すると共に、その行番号指定信号により指定された走査電極18に対応して電圧を印加すべきデータ電極20の列番号mを指定するための列番号指定信号、及びデータ電極20に印加する電圧の大きさを列番号m毎に指定するためのデータ電極用電圧指定信号をデータ電極駆動部48に出力する。
【0028】
走査電極駆動部46は、制御部40から行番号指定信号によって指定された行の走査電極18に対して、走査電極用電圧指定信号で指定された大きさの電圧(以下、「走査電圧」という。)を印加する。
【0029】
データ電極駆動部48は、制御部40から列番号指定信号によって指定された列のデータ電極20に対して、データ電極用電圧指定信号で指定された大きさの電圧(以下、「データ電圧」という。)を印加する。
【0030】
なお、制御部40、電力供給部44A,44B、走査電極駆動部46、データ電極駆動部48の組み合わせが本発明の印加手段に相当する。
【0031】
次に、図5を参照して、本実施の形態に係る画像表示装置10の作用を説明する。なお、図5は、画像表示装置10に対して図示しない操作部を介して、メモリ42に記憶されている画像情報に基づいた画像を表示媒体12に表示させる指示が入力された場合に、制御部40によって実行される画像表示プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ42の予め定められた記憶領域に予め記憶されている。
【0032】
まずステップ100では、表示媒体12を構成するコレステリック液晶を初期化する初期化処理を実行するための、行番号指定信号及び走査電極用電圧指定信号を走査電極駆動部46に出力すると共に、列番号指定信号及びデータ電極用電圧指定信号をデータ電極駆動部48に出力する。
【0033】
次のステップ102では、画像情報に基づいた画像を表示媒体12に表示させる画像書換処理を行うための、行番号指定信号及び走査電極用電圧指定信号を走査電極駆動部46に出力すると共に、列番号指定信号及びデータ電極用電圧指定信号をデータ電極駆動部48に出力する。
【0034】
図6を参照して、本実施の形態に係る上記初期化処理及び上記画像書換処理を説明する。図6(A)は、走査電極駆動部46により走査電極18に印加される走査電圧の波形を示し、図6(B)は、データ電極駆動部48によりデータ電極20に印加されるデータ電圧の波形を示している。なお、本実施の形態に係る画像表示装置10では、初期化処理として表示層32をプレーナ状態にした後に、画像書換処理を実行するプレーナリセット法を行う。
【0035】
本実施の形態に係る走査電極駆動部46は、走査電圧として、初期化処理を行うための初期化電圧、及び画像書換処理を実行するための選択電圧を走査電極18に印加する。
【0036】
上記初期化電圧は、コレステリック液晶をホメオトロピック状態に変化させた後に、電圧を急激にゼロにすることによりプレーナ状態にするために各走査電極18に印加されるパルス状の電圧(本実施の形態では、±20V)である。
【0037】
また、上記選択電圧は、初期化電圧が各走査電極18に印加された後に走査電極18の行毎に順に印加される、画素毎に画像の書き換えを行うためのパルス状の電圧である。なお、本実施の形態に係る画像書換処理では、選択電圧を各走査電極18に印加する時間として、50msecを適用する。また、選択電圧は、同図(A)に示すように、正の電位が先に印加され、続いて負の電位が印加されるが、負の電位が先に印加され、続いて正の電位が印加されるようにしてもよい。
【0038】
一方、データ電圧は、選択電圧に同期して、画像情報に応じて列毎に印加される。データ電圧の印加は、1行目の走査電極18に選択電圧が印加されるのと同期して開始される。例えば、n行m列に位置する画素に対応するコレステリック液晶の反射状態を定めるためには、n行目の走査電極18に選択電圧が印加されるのと同期して、n行m列に位置する画素に対応するコレステリック液晶の反射状態を定めるためのデータ電圧がm列目のデータ電極20に印加される。このように、データ電圧は、選択電圧が最後の行に対応する走査電極18に対して印加されるまで各列に対して順次連続して印加される。
【0039】
次のステップ104(図5参照。)では、画像書換処理によって生じる、表示媒体12に表示された画像のムラを除去する画像ムラ除去処理を実行する。
【0040】
なお、上記画像のムラは、画像書換処理によってコレステリック液晶に電圧が印加された際に、本来プレーナ状態となるべきコレステリック液晶が、プレーナ状態とフォーカルコニック状態との中間状態となることで、本来螺旋ピッチに応じた選択波長を表示するべき画素が灰色や黒色を表示することによって生じる。
【0041】
本実施の形態に係る画像ムラ除去処理は、図4に示す領域Bの範囲内の大きさの電圧(以下、「ムラ除去電圧」という。)を、当該ムラ除去電圧の印加が開始されてから、当該ムラ除去電圧の印加によりフォーカルコニック状態へ変化を開始したコレステリック液晶がムラ除去電圧の印加が停止された後にプレーナ状態に戻ることが可能な時点までの期間(以下、「印加時間」という。)、走査電極18及びデータ電極20を介して表示層32に印加する処理である。
【0042】
すなわち、本実施の形態に係る画像ムラ除去処理は、ムラ除去電圧を表示層32に印加させることによって、プレーナ状態とフォーカルコニック状態との中間状態となっているコレステリック液晶をプレーナ状態に変化させる。なお、プレーナ状態とフォーカルコニック状態との中間状態となっているコレステリック液晶がプレーナ状態に変化したか否かは、表示層32の光反射率の測定、顕微鏡による表示層32の表面の観察等により確認する。
【0043】
図7に、表示層32に印加する電圧の印加時間及び電圧の周波数を一定(印加時間50msec、周波数100Hz)とし、印加する電圧を変化させた場合(5,6,7Vの場合)の、光反射率の変化の一例を示す。
【0044】
同図に示すように、領域Bに含まれない電圧5Vを印加した場合の光反射率に比較して、領域Bに含まれ電圧Vpf90近辺の電圧6Vを印加した場合の光反射率が高く、また、正規化光反射率が約50%となる電圧7Vを印加した場合の光反射率に比較して電圧6Vを印加した場合の光反射率が高い。この結果から、ムラ除去電圧として、領域Bの範囲内の大きさで、かつ正規化光反射率が50%となる電圧より小さい大きさの電圧が適していることが分かる。なお、本実施の形態に係る画像ムラ除去処理では、ムラ除去電圧として6Vを適用する。
【0045】
また、図8に、ムラ除去電圧及び周波数を一定(ムラ除去電圧6V、周波数100Hz)とし、印加時間を変化させた場合(0,20,30,40,50,60,70,80msecの場合)の、光反射率の変化の一例を示す。
【0046】
同図に示すように、印加時間40,50msecにおける光反射率は、他の印加時間における光反射率に比較して高い。このことは、ムラ除去電圧の印加時間が40〜50msec未満の場合では、コレステリック液晶の状態が変化しないか、又は変化しても印加時間が40〜50msecの場合に比較して微小な変化であることを示している。一方、ムラ除去電圧の印加時間が40〜50msecを超える場合は、フォーカルコニック状態へ変化を開始したコレステリック液晶が、ムラ除去電圧の印加の停止後にプレーナ状態へ戻ることが不可能となることを示している。なお、本実施の形態に係る画像ムラ除去処理では、印加時間として50msecを適用する。
【0047】
また、図9に、ムラ除去電圧及び印加時間を一定(ムラ除去電圧6V、印加時間50msec)とし、周波数を変化させた場合(20,50,100,200Hzの場合)の、光反射率の変化の一例を示す。
【0048】
同図に示すように、周波数を100Hzとした場合の光反射率が最も高く、100Hzの周波数が、ムラ除去電圧6Vを印加時間50msecで印加した場合に、ディスクリネーション(異常が発生した領域の境界)をほどくために適した周波数であることを示している。この結果より、本実施の形態に係る画像ムラ除去処理では、ムラ除去電圧の周波数として、同図の中で光反射率が最も高い100Hzを適用する。
【0049】
また、図10に、画像ムラ除去処理において、ムラ除去電圧を複数回繰り返して印加した場合の光反射率の変化を示す。なお、同図は、横軸を表示媒体12で反射された光の波長とし、縦軸を光反射率としている。さらに、630nm〜690nmの反射された光の波長に対する光反射率を拡大して示す。また、繰り返し回数が0回の場合とは、画像ムラ除去処理を実行していない場合、すなわち、すなわち初期化処理によってプレーナ状態となった場合の光反射率である。
【0050】
同図に示すように、繰り返し回数が多くなるほど光反射率は高くなり、ディスクリネーションのほどけ効果が高くなっていることを示しているが、繰り返し回数が20回を超えると、光反射率の変化は鈍くなっている。すなわち、ディスクリネーションのほどけ効果が小さくなっている。この結果より、本実施の形態に係る画像ムラ除去処理では、ムラ除去電圧を繰り返し印加する回数として20回を適用する。
【0051】
また、本実施の形態に係る画像ムラ除去処理では、ムラ除去電圧を繰り返し印加する場合に、フォーカルコニック状態への変化を開始したコレステリック液晶がムラ除去電圧の印加の停止後にプレーナ状態に戻るのに要する時間(以下、「インターバル時間」という。)の経過後に、次のムラ除去電圧を印加する。
【0052】
本実施の形態に係る画像ムラ除去処理では、上記インターバル時間として、5secを適用するが、インターバル時間は、コレステリック液晶がムラ除去電圧の印加の停止後にプレーナ状態に戻る時間が確保できる時間(例えば、1sec〜10sec)であれば、これに限らないことは言うまでも無い。
【0053】
図11に、初期化処理を実行した後で画像ムラ除去処理を実行する前、及び初期化処理を実行した後で画像ムラ除去処理を実行した後における、顕微鏡(倍率50倍)によって表示媒体12の表面を観察した写真を示す。
【0054】
図11(A)は,初期化処理として電圧30Vを印加時間300msec、周波数300Hzで印加した後の、表示媒体12の表面の状態、すなわち初期化処理によってプレーナ状態となった表示媒体12の表面の状態を示している。
【0055】
一方、図11(B)は、画像ムラ除去処理としてムラ除去電圧6Vを印加時間50msec、周波数100Hz、インターバル時間を5secとし、ムラ除去電圧を20回繰り返し印加した後の、表示媒体12の表面の状態を示す。
【0056】
図11(A)に示す表示媒体12の表面の状態と図11(B)に示す表示媒体12の表面の状態とを比較すると、図11(B)に示す表示媒体12の表面の状態の方が白色の領域が多いことが分かる。すなわち、当該白色の領域が多いほど光反射率が高くなっていることを示している。
【0057】
また、図12に、表示層32の全面をフォーカルコニック状態とした後に、ムラ除去電圧を複数回繰り返して印加した場合の光反射率の変化を示す。なお、同図は、横軸を表示媒体12で反射された光の波長とし、縦軸を光反射率としている。また、繰り返し回数が0回の場合とは、画像ムラ除去処理を実行していない場合の光反射率である。
【0058】
同図に示すように、画像ムラ除去処理を実行することによって、光反射率が低くなっており、画像ムラ除去処理を繰り返し実行しても光反射率が高くなることが無く、画像ムラ除去処理を実行することで、画像ムラ除去処理を実行する前に比較して光反射率の最大値と最小値との差が大きくなることを示している。
【0059】
以上、本発明を上記実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0060】
また、上記実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における組み合わせにより種々の発明を抽出できる。上記実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0061】
例えば、上記実施の形態では、初期化処理及び画像書換処理としてプレーナリセット法を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、初期化処理として表示層32をフォーカルコニック状態にした後に、画像書換処理を実行するフォーカルコニックリセット法を行う形態としてもよい。
【0062】
この形態の場合、図13に示すように、初期化電圧を、コレステリック液晶をフォーカルコニック状態に変化させるために各走査電極18に印加されるパルス状の電圧(本形態では、±13V)とする。
【0063】
また、初期化処理及び画像書換処理として、図14に示すように、予め定めた周期(一例として、1周期)毎に時間遅れを持たせて、各走査電極18に対して走査電圧を印加するDDS(Dynamic Drive scheme)法を行う形態としてもよい。
【0064】
この形態の場合、同図に示すように、まず、1行目の走査電極18に、初期化電圧を印加した後に、プレーナリセット法及びフォーカルコニックリセット法に比較して短い期間(一例として、1msec)選択電圧を印加する。その後、コレステリック液晶の反射状態を維持させるための維持電圧が予め定められた期間(一例として、49msec)印加される。そして、1行目の走査電極18に初期化電圧を印加してから1周期後に、2行目の走査電極18に初期化電圧、選択電圧、及び維持電圧が順に印加される。さらに、この走査電圧の印加処理を3行目以降の走査電極18に対しても実行する。また、データ電圧は、上記選択電圧に同期して、画像情報に基づいてデータ電極20の列毎に印加される。
【0065】
また、上記実施の形態では、表示媒体12に1つの表示層32を備えた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、表示媒体12に複数の表示層32を備えた形態としてもよい。
【0066】
この形態の一例として、図15に、3つの表示層32B,32G,32Rを備えた表示媒体12’を示す。表示層32B,32G,32Rはそれぞれ460nm,530nm,620nmに反射スペクトルのピークが来るように螺旋ピッチが調整されている。
【0067】
同図に示す表示媒体12’は、表示層32Bに対応する黄色のカラーフィルター80B、表示層32Gに対応する赤色のカラーフィルター80G、及び表示層32Rに対応する黒色の遮光膜80Rが設けられている。さらに、表示層32B,32G,32R各々に対応させて走査電極18及びデータ電極20を設けることで各色に対応した画像を表示層32B,32G,32Rに表示させることで、表示面では表示層32B,32G,32Rで表示された画像が重なってカラー画像として視認される。なお、この形態に係る画像表示装置は、表示層32B,32G,32Rの各々に対応する走査電極18及びデータ電極20を介してムラ除去電圧を印加することで、表示層32B,32G,32Rの各々毎に画像ムラ除去処理を実行する。
【0068】
その他、上記実施の形態で説明した画像表示装置10の構成(図1、図2及び図15参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したりすることができることは言うまでもない。
【0069】
また、上記実施の形態で説明した画像表示プログラムの処理の流れ(図5参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態では、画像ムラ除去処理を画像書換処理の後に実行する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、初期化処理の後、かつ画像書換処理の前に画像ムラ除去処理を実行する形態としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施の形態に係る画像表示装置の電気的構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る表示媒体の断面図である。
【図3】実施の形態に係るコレステリック液晶の分子配向と光学特性の関係を示す図である。
【図4】実施の形態に係るコレステリック液晶の光反射率とコレステリック液晶に印加される電圧との関係の一例を示すグラフである。
【図5】実施の形態に係る画像表示プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施の形態に係る初期化処理及び画像書換処理における走査電圧の波形及びデータ電圧の波形を示す図である。
【図7】実施の形態に係るコレステリック液晶の光反射率とコレステリック液晶に短時間で印加される電圧との関係の一例を示すグラフである。
【図8】実施の形態に係るコレステリック液晶の光反射率とムラ除去電圧の印加時間との関係の一例を示すグラフである。
【図9】実施の形態に係るコレステリック液晶の光反射率とムラ除去電圧の周波数との関係の一例を示すグラフである。
【図10】実施の形態に係るコレステリック液晶の光反射率とムラ除去電圧の印加の繰り返し回数との関係の一例を示すグラフである。
【図11】実施の形態に係る画像ムラ除去処理前後における表示媒体の表面の状態を示す図である。
【図12】実施の形態に係るコレステリック液晶がフォーカルコニック状態の場合におけるコレステリック液晶の光反射率とムラ除去電圧の印加の繰り返し回数との関係の一例を示すグラフである。
【図13】他の形態に係る初期化処理及び画像書換処理として、フォーカルコニックリセット法を適用した場合における走査電圧の波形及びデータ電圧の波形を示す図である。
【図14】他の形態に係る初期化処理及び画像書換処理として、DDS法を適用した場合における走査電圧の波形及びデータ電圧の波形を示す図である。
【図15】他の形態に係る3つの表示層を設けた表示媒体の断面図である。
【符号の説明】
【0071】
10 画像表示装置
12 表示媒体
18 走査電極
20 データ電極
32 表示層
40 制御部
44A 電力供給部
44B 電力供給部
46 走査電極駆動部
48 データ電極駆動部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コレステリック液晶を用いた表示装置において、選択信号をコモン選択電極上の画素を構成するコレステリック液晶に印加して表示状態を選択し、また非選択信号をコモン非選択信号上の画素を構成するコレステリック液晶に印加する書換え動作を繰り返すことで各画素毎にコレステリック液晶の表示状態を書き換えた後に、全ての画素を構成するコレステリック液晶に対して微小電圧を印加することによって、プレーナ状態の光反射率を変えずに、フォーカルコニック状態の光反射率を低くすることによって、コントラストを向上させる技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、コレステリック液晶を用いた表示装置では書き込み速度が高速になると、フォーカルコニック状態への遷移が不十分となるために画像全体が薄くなるという特性を用いて、中間調の書き込みを行い、それを繰り返すことで多値画像を形成する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、コレステリック液晶とモノマーの混合物とを、電極を備えた2枚のガラスプレートで挟持することで、反射状態で緑色を反射し、散乱状態で黒色となるディスプレーにおいて、最小反射が観測される電圧から最大反射が観測される電圧までの範囲で電圧を変化させることでグレースケールの反射状態を実現する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−257999号公報
【特許文献2】国際公開第2005/024774パンフレット
【特許文献3】特許第3551381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、表示媒体のコントラストを向上させることができる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、第1の範囲内の大きさの第1の電圧が印加されることによってプレーナ状態からフォーカルコニック状態に徐々に変化し、フォーカルコニック状態に変化した状態で前記第1の範囲に重ならず、前記第1の範囲よりも大きい第2の範囲内の大きさの第2の電圧が印加されることによってフォーカルコニック状態からホメオトロピック状態に徐々に変化することで入射光に対する反射率が変化する液晶を含む表示層、及び複数の画素毎の電圧を印加することが可能なように前記表示層を挟持する電極が積層された表示媒体と、前記表示媒体に画像情報に基づいた画像を表示させた後、又は前記表示媒体をプレーナ状態又はフォーカルコニック状態に初期化させた後に、前記第1の範囲内の大きさの第3の電圧を、当該第3の電圧の印加が開始されてから、当該第3の電圧が印加されることによりフォーカルコニック状態へ変化を開始した前記液晶が当該第3の電圧の印加が停止された後にプレーナ状態に戻ることが可能な時点までの期間、前記電極を介して前記表示層に印加する印加手段と、を備えている。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記印加手段が、前記第3の電圧を前記期間、前記電極を介して前記表示層に繰り返し印加するものである。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記印加手段が、フォーカルコニック状態へ変化を開始した前記液晶が電圧の印加が停止された後にプレーナ状態に戻るのに要する時間の経過後に、次の前記第3の電圧を前記期間、前記電極を介して前記表示層に印加するものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、本発明を適用しない場合に比較して、表示媒体のコントラストを向上させることができる、という優れた効果を有する。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、本発明を適用しない場合に比較して、表示媒体のコントラストをより向上させることができる、という優れた効果を有する。
【0011】
更に、請求項3に記載の発明によれば、本発明を適用しない場合に比較して、第3の電圧を繰り返し印加することによる効果をより発揮させることができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る画像表示装置10の電気的構成を説明する。
【0014】
本実施の形態に係る画像表示装置10は、表示媒体12及び駆動装置14を備えており、表示媒体12は画像表示装置10から着脱可能とされている。
【0015】
具体的には、表示媒体12はコネクタ16A及びコネクタ17Aを、駆動装置14はコネクタ16B及びコネクタ17Bを備えており、コネクタ16Aとコネクタ16Bとが着脱可能とされ、コネクタ17Aとコネクタ17Bとが着脱可能とされている。そして、コネクタ16Aとコネクタ16Bとが電気的かつ機械的に接続され、コネクタ17Aとコネクタ17Bとが電気的かつ機械的に接続されることにより、コネクタ16A,16B及びコネクタ17A,17Bを介して駆動装置14から表示媒体12に画像情報に基づいた電圧が印加され、表示媒体12に画像が表示される。
【0016】
また、本実施の形態に係る表示媒体12は、短冊状で透明な複数の走査電極18及び複数のデータ電極20を備えており、各走査電極18と各データ電極20とは、複数の画素毎に異なる電圧を印加することが可能なように後述する表示層32を挟持し、各々が交差するように対向して配置される。これにより、各走査電極18と各データ電極20との交差位置が画素を構成する。なお、本実施の形態に係る走査電極18及びデータ電極20は、一例として、ITO(Indium Tin Oxide)で形成されている。
【0017】
また、本実施の形態に係る表示媒体12は、図2の断面図に示されるように、画像を表示する表示面側から、基板30A、走査電極18、表示層32、データ電極20、基板30B、及び表示層32を透過した光を吸収する光吸収層34が積層されている。なお、表示層32に表示された画像は表示面側から視認される。
【0018】
また、本実施の形態に係る基板30A,30Bは、透光性を有しているPET(Polyethylene Terephthalate)で形成されている。なお、当該基板30A,30Bは、ガラス及びシリコン等の無機シート、又はポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、及びポリエチレンナフタレート等の高分子フィルムを用いて形成してもよい。
【0019】
一方、本実施の形態に係る表示層32は、コレステリック液晶のみで構成されているが、これに限らず、表示層32は、コレステリック液晶を含むと共に、透明樹脂で構成される自己保持型液晶複合体であってもよい。また、本実施の形態に係る表示層32は、走査電極18とデータ電極20との距離(本実施の形態では、2μm)を規定すると共に、コレステリック液晶が偏在することを防止するリブ36が設けられている。
【0020】
表示層32に含まれるコレステリック液晶は、入射光のうち特定の波長の光の反射・透過状態を変調する機能を有し、液晶分子が螺旋状によじれて配向しており、螺旋軸方向から入射した光のうち、螺旋ピッチに依存して特定の波長の光を干渉反射する。さらに、コレステリック液晶は、表示層32に形成される電界の強度によって配向が変化し、当該配向の変化によって入射光の反射状態を変化させることができる。当該反射状態として、図3(A)に螺旋軸が表面に対してほぼ垂直になり、螺旋ピッチに応じた特定の波長の光を選択的に反射するプレーナ状態の模式図を示し、図3(B)に螺旋軸が表面に対してほぼ平行になり、入射光を少し前方散乱させながら透過させるフォーカルコニック状態の模式図を示し、図3(C)に液晶分子の螺旋構造がほどけ、液晶分子が電界の向きに従い、入射光を透過させるホメオトロピック状態であるホメオトロピック状態の模式図を示す。
【0021】
上記の3つの状態のうち、プレーナ状態及びフォーカルコニック状態は、無電圧で双安定に存在する。したがって、コレステリック液晶の配向状態は、表示層32に印加される電圧に対して一義的に決まらず、プレーナ状態が初期状態の場合には、印加される電圧の増加に伴って、プレーナ状態、フォーカルコニック状態、ホメオトロピック状態の順に変化し、フォーカルコニック状態が初期状態の場合には、印加される電圧の増加に伴って、フォーカルコニック状態、ホメオトロピック状態の順に変化する特性を有している。
【0022】
一方、表示層32に印加した電圧を急激にゼロにした場合には、プレーナ状態とフォーカルコニック状態はそのままの状態を維持し、ホメオトロピック状態はプレーナ状態に変化する特性を有している。
【0023】
図4に、630nmの光が入射した場合におけるコレステリック液晶の光学特性の一例を示す。同図において、最大光反射率を100、最小光反射率を0として、光反射率を正規化した正規化光反射率が90%以上の場合を選択反射状態とし、正規化光反射率が10%以下の場合を透過状態としてコレステリック液晶の反射状態を区別した場合、領域Aはプレーナ状態(選択反射状態)を示し、領域Bはプレーナ状態からフォーカルコニック状態へ変化する遷移領域を示し、領域Cはフォーカルコニック状態(透過状態)を示し、領域Dはフォーカルコニック状態からホメオトロピック状態へ変化する遷移領域を示し、領域Eはホメオトロピック状態を示し、ホメオトロピック状態で電圧をゼロにするとプレーナ状態(選択反射状態)に変化する。また、電圧Vpf90は領域Bで正規化光反射率が90%となる電圧、電圧Vpf10は領域Bで正規化光反射率が10%となる電圧、電圧Vfh10は領域Dで正規化光反射率が10%となる電圧、電圧Vfh90は領域Dで正規化光反射率が90%となる電圧である。なお、プレーナ状態のコレステリック液晶は、電圧Vpf90より若干低い電圧から電圧Vfh10より若干低い電圧が予め定められた時間(例えば、50msec)印加されることによって、電圧が印加されている期間にプレーナ状態からフォーカルコニック状態へ徐々に変化し、フォーカルコニック状態のコレステリック液晶は、電圧Vfh10より若干低い電圧から電圧Vfh90より若干高い電圧が予め定められた時間(例えば、50msec)印加されることによって、電圧が印加されている期間にフォーカルコニック状態からホメオトロピック状態へ徐々に変化する。
【0024】
また、コレステリック液晶として使用可能な具体的な液晶としては、ネマチック液晶やス メクチック液晶(たとえばシッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、安息香酸エステル系、ビフェニル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、シクロヘキサン系、トラン系、アルケニル系、スチルベン系、縮合多環系)、またはこれらの混合物に、カイラル剤(たとえばステロイド系コレステロール誘導体、シッフ塩基系、アゾ系、エステル系、ビフェニ ル系)を添加したもの等を挙げることができる。また、コレステリック液晶を、高分子マトリクス中に分散したものや、高分子ゲル化したものや、マイクロカプセル化したものでもよい。また、液晶は高分子、中分子、低分子のいずれでもよく、またこれらの混合物でもよい。
【0025】
なお、本実施の形態に係る表示媒体12では、プレーナ状態となったコレステリック液晶で形成される画素は、光を反射することで螺旋ピッチに対応した波長を選択的に反射し、フォーカルコニック状態となったコレステリック液晶で形成される画素は、散乱しながら透過した光を光吸収層34が吸収することで黒色を表示するが、これに限らず、各々他の色を表示してもよい。
【0026】
一方、図1に示す駆動装置14は、駆動装置14全体の動作を司る制御部40、画像情報等の各種情報を記憶しているメモリ42、電力供給部44Aから供給される電圧を制御部40の指示に従い、コネクタ16A,16Bを介して各走査電極18に印加する走査電極駆動部46、電力供給部44Bから供給される電圧を制御部40の指示に従い、コネクタ17A,17Bを介して各データ電極20に印加するデータ電極駆動部48を備えている。
【0027】
制御部40は、メモリ42に記憶されている画像情報に基づいて、走査電極18の行番号nを指定するための行番号指定信号、及び走査電極18に印加する電圧の大きさを行番号n毎に指定するための走査電極用電圧指定信号を走査電極駆動部46に出力すると共に、その行番号指定信号により指定された走査電極18に対応して電圧を印加すべきデータ電極20の列番号mを指定するための列番号指定信号、及びデータ電極20に印加する電圧の大きさを列番号m毎に指定するためのデータ電極用電圧指定信号をデータ電極駆動部48に出力する。
【0028】
走査電極駆動部46は、制御部40から行番号指定信号によって指定された行の走査電極18に対して、走査電極用電圧指定信号で指定された大きさの電圧(以下、「走査電圧」という。)を印加する。
【0029】
データ電極駆動部48は、制御部40から列番号指定信号によって指定された列のデータ電極20に対して、データ電極用電圧指定信号で指定された大きさの電圧(以下、「データ電圧」という。)を印加する。
【0030】
なお、制御部40、電力供給部44A,44B、走査電極駆動部46、データ電極駆動部48の組み合わせが本発明の印加手段に相当する。
【0031】
次に、図5を参照して、本実施の形態に係る画像表示装置10の作用を説明する。なお、図5は、画像表示装置10に対して図示しない操作部を介して、メモリ42に記憶されている画像情報に基づいた画像を表示媒体12に表示させる指示が入力された場合に、制御部40によって実行される画像表示プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ42の予め定められた記憶領域に予め記憶されている。
【0032】
まずステップ100では、表示媒体12を構成するコレステリック液晶を初期化する初期化処理を実行するための、行番号指定信号及び走査電極用電圧指定信号を走査電極駆動部46に出力すると共に、列番号指定信号及びデータ電極用電圧指定信号をデータ電極駆動部48に出力する。
【0033】
次のステップ102では、画像情報に基づいた画像を表示媒体12に表示させる画像書換処理を行うための、行番号指定信号及び走査電極用電圧指定信号を走査電極駆動部46に出力すると共に、列番号指定信号及びデータ電極用電圧指定信号をデータ電極駆動部48に出力する。
【0034】
図6を参照して、本実施の形態に係る上記初期化処理及び上記画像書換処理を説明する。図6(A)は、走査電極駆動部46により走査電極18に印加される走査電圧の波形を示し、図6(B)は、データ電極駆動部48によりデータ電極20に印加されるデータ電圧の波形を示している。なお、本実施の形態に係る画像表示装置10では、初期化処理として表示層32をプレーナ状態にした後に、画像書換処理を実行するプレーナリセット法を行う。
【0035】
本実施の形態に係る走査電極駆動部46は、走査電圧として、初期化処理を行うための初期化電圧、及び画像書換処理を実行するための選択電圧を走査電極18に印加する。
【0036】
上記初期化電圧は、コレステリック液晶をホメオトロピック状態に変化させた後に、電圧を急激にゼロにすることによりプレーナ状態にするために各走査電極18に印加されるパルス状の電圧(本実施の形態では、±20V)である。
【0037】
また、上記選択電圧は、初期化電圧が各走査電極18に印加された後に走査電極18の行毎に順に印加される、画素毎に画像の書き換えを行うためのパルス状の電圧である。なお、本実施の形態に係る画像書換処理では、選択電圧を各走査電極18に印加する時間として、50msecを適用する。また、選択電圧は、同図(A)に示すように、正の電位が先に印加され、続いて負の電位が印加されるが、負の電位が先に印加され、続いて正の電位が印加されるようにしてもよい。
【0038】
一方、データ電圧は、選択電圧に同期して、画像情報に応じて列毎に印加される。データ電圧の印加は、1行目の走査電極18に選択電圧が印加されるのと同期して開始される。例えば、n行m列に位置する画素に対応するコレステリック液晶の反射状態を定めるためには、n行目の走査電極18に選択電圧が印加されるのと同期して、n行m列に位置する画素に対応するコレステリック液晶の反射状態を定めるためのデータ電圧がm列目のデータ電極20に印加される。このように、データ電圧は、選択電圧が最後の行に対応する走査電極18に対して印加されるまで各列に対して順次連続して印加される。
【0039】
次のステップ104(図5参照。)では、画像書換処理によって生じる、表示媒体12に表示された画像のムラを除去する画像ムラ除去処理を実行する。
【0040】
なお、上記画像のムラは、画像書換処理によってコレステリック液晶に電圧が印加された際に、本来プレーナ状態となるべきコレステリック液晶が、プレーナ状態とフォーカルコニック状態との中間状態となることで、本来螺旋ピッチに応じた選択波長を表示するべき画素が灰色や黒色を表示することによって生じる。
【0041】
本実施の形態に係る画像ムラ除去処理は、図4に示す領域Bの範囲内の大きさの電圧(以下、「ムラ除去電圧」という。)を、当該ムラ除去電圧の印加が開始されてから、当該ムラ除去電圧の印加によりフォーカルコニック状態へ変化を開始したコレステリック液晶がムラ除去電圧の印加が停止された後にプレーナ状態に戻ることが可能な時点までの期間(以下、「印加時間」という。)、走査電極18及びデータ電極20を介して表示層32に印加する処理である。
【0042】
すなわち、本実施の形態に係る画像ムラ除去処理は、ムラ除去電圧を表示層32に印加させることによって、プレーナ状態とフォーカルコニック状態との中間状態となっているコレステリック液晶をプレーナ状態に変化させる。なお、プレーナ状態とフォーカルコニック状態との中間状態となっているコレステリック液晶がプレーナ状態に変化したか否かは、表示層32の光反射率の測定、顕微鏡による表示層32の表面の観察等により確認する。
【0043】
図7に、表示層32に印加する電圧の印加時間及び電圧の周波数を一定(印加時間50msec、周波数100Hz)とし、印加する電圧を変化させた場合(5,6,7Vの場合)の、光反射率の変化の一例を示す。
【0044】
同図に示すように、領域Bに含まれない電圧5Vを印加した場合の光反射率に比較して、領域Bに含まれ電圧Vpf90近辺の電圧6Vを印加した場合の光反射率が高く、また、正規化光反射率が約50%となる電圧7Vを印加した場合の光反射率に比較して電圧6Vを印加した場合の光反射率が高い。この結果から、ムラ除去電圧として、領域Bの範囲内の大きさで、かつ正規化光反射率が50%となる電圧より小さい大きさの電圧が適していることが分かる。なお、本実施の形態に係る画像ムラ除去処理では、ムラ除去電圧として6Vを適用する。
【0045】
また、図8に、ムラ除去電圧及び周波数を一定(ムラ除去電圧6V、周波数100Hz)とし、印加時間を変化させた場合(0,20,30,40,50,60,70,80msecの場合)の、光反射率の変化の一例を示す。
【0046】
同図に示すように、印加時間40,50msecにおける光反射率は、他の印加時間における光反射率に比較して高い。このことは、ムラ除去電圧の印加時間が40〜50msec未満の場合では、コレステリック液晶の状態が変化しないか、又は変化しても印加時間が40〜50msecの場合に比較して微小な変化であることを示している。一方、ムラ除去電圧の印加時間が40〜50msecを超える場合は、フォーカルコニック状態へ変化を開始したコレステリック液晶が、ムラ除去電圧の印加の停止後にプレーナ状態へ戻ることが不可能となることを示している。なお、本実施の形態に係る画像ムラ除去処理では、印加時間として50msecを適用する。
【0047】
また、図9に、ムラ除去電圧及び印加時間を一定(ムラ除去電圧6V、印加時間50msec)とし、周波数を変化させた場合(20,50,100,200Hzの場合)の、光反射率の変化の一例を示す。
【0048】
同図に示すように、周波数を100Hzとした場合の光反射率が最も高く、100Hzの周波数が、ムラ除去電圧6Vを印加時間50msecで印加した場合に、ディスクリネーション(異常が発生した領域の境界)をほどくために適した周波数であることを示している。この結果より、本実施の形態に係る画像ムラ除去処理では、ムラ除去電圧の周波数として、同図の中で光反射率が最も高い100Hzを適用する。
【0049】
また、図10に、画像ムラ除去処理において、ムラ除去電圧を複数回繰り返して印加した場合の光反射率の変化を示す。なお、同図は、横軸を表示媒体12で反射された光の波長とし、縦軸を光反射率としている。さらに、630nm〜690nmの反射された光の波長に対する光反射率を拡大して示す。また、繰り返し回数が0回の場合とは、画像ムラ除去処理を実行していない場合、すなわち、すなわち初期化処理によってプレーナ状態となった場合の光反射率である。
【0050】
同図に示すように、繰り返し回数が多くなるほど光反射率は高くなり、ディスクリネーションのほどけ効果が高くなっていることを示しているが、繰り返し回数が20回を超えると、光反射率の変化は鈍くなっている。すなわち、ディスクリネーションのほどけ効果が小さくなっている。この結果より、本実施の形態に係る画像ムラ除去処理では、ムラ除去電圧を繰り返し印加する回数として20回を適用する。
【0051】
また、本実施の形態に係る画像ムラ除去処理では、ムラ除去電圧を繰り返し印加する場合に、フォーカルコニック状態への変化を開始したコレステリック液晶がムラ除去電圧の印加の停止後にプレーナ状態に戻るのに要する時間(以下、「インターバル時間」という。)の経過後に、次のムラ除去電圧を印加する。
【0052】
本実施の形態に係る画像ムラ除去処理では、上記インターバル時間として、5secを適用するが、インターバル時間は、コレステリック液晶がムラ除去電圧の印加の停止後にプレーナ状態に戻る時間が確保できる時間(例えば、1sec〜10sec)であれば、これに限らないことは言うまでも無い。
【0053】
図11に、初期化処理を実行した後で画像ムラ除去処理を実行する前、及び初期化処理を実行した後で画像ムラ除去処理を実行した後における、顕微鏡(倍率50倍)によって表示媒体12の表面を観察した写真を示す。
【0054】
図11(A)は,初期化処理として電圧30Vを印加時間300msec、周波数300Hzで印加した後の、表示媒体12の表面の状態、すなわち初期化処理によってプレーナ状態となった表示媒体12の表面の状態を示している。
【0055】
一方、図11(B)は、画像ムラ除去処理としてムラ除去電圧6Vを印加時間50msec、周波数100Hz、インターバル時間を5secとし、ムラ除去電圧を20回繰り返し印加した後の、表示媒体12の表面の状態を示す。
【0056】
図11(A)に示す表示媒体12の表面の状態と図11(B)に示す表示媒体12の表面の状態とを比較すると、図11(B)に示す表示媒体12の表面の状態の方が白色の領域が多いことが分かる。すなわち、当該白色の領域が多いほど光反射率が高くなっていることを示している。
【0057】
また、図12に、表示層32の全面をフォーカルコニック状態とした後に、ムラ除去電圧を複数回繰り返して印加した場合の光反射率の変化を示す。なお、同図は、横軸を表示媒体12で反射された光の波長とし、縦軸を光反射率としている。また、繰り返し回数が0回の場合とは、画像ムラ除去処理を実行していない場合の光反射率である。
【0058】
同図に示すように、画像ムラ除去処理を実行することによって、光反射率が低くなっており、画像ムラ除去処理を繰り返し実行しても光反射率が高くなることが無く、画像ムラ除去処理を実行することで、画像ムラ除去処理を実行する前に比較して光反射率の最大値と最小値との差が大きくなることを示している。
【0059】
以上、本発明を上記実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0060】
また、上記実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における組み合わせにより種々の発明を抽出できる。上記実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0061】
例えば、上記実施の形態では、初期化処理及び画像書換処理としてプレーナリセット法を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、初期化処理として表示層32をフォーカルコニック状態にした後に、画像書換処理を実行するフォーカルコニックリセット法を行う形態としてもよい。
【0062】
この形態の場合、図13に示すように、初期化電圧を、コレステリック液晶をフォーカルコニック状態に変化させるために各走査電極18に印加されるパルス状の電圧(本形態では、±13V)とする。
【0063】
また、初期化処理及び画像書換処理として、図14に示すように、予め定めた周期(一例として、1周期)毎に時間遅れを持たせて、各走査電極18に対して走査電圧を印加するDDS(Dynamic Drive scheme)法を行う形態としてもよい。
【0064】
この形態の場合、同図に示すように、まず、1行目の走査電極18に、初期化電圧を印加した後に、プレーナリセット法及びフォーカルコニックリセット法に比較して短い期間(一例として、1msec)選択電圧を印加する。その後、コレステリック液晶の反射状態を維持させるための維持電圧が予め定められた期間(一例として、49msec)印加される。そして、1行目の走査電極18に初期化電圧を印加してから1周期後に、2行目の走査電極18に初期化電圧、選択電圧、及び維持電圧が順に印加される。さらに、この走査電圧の印加処理を3行目以降の走査電極18に対しても実行する。また、データ電圧は、上記選択電圧に同期して、画像情報に基づいてデータ電極20の列毎に印加される。
【0065】
また、上記実施の形態では、表示媒体12に1つの表示層32を備えた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、表示媒体12に複数の表示層32を備えた形態としてもよい。
【0066】
この形態の一例として、図15に、3つの表示層32B,32G,32Rを備えた表示媒体12’を示す。表示層32B,32G,32Rはそれぞれ460nm,530nm,620nmに反射スペクトルのピークが来るように螺旋ピッチが調整されている。
【0067】
同図に示す表示媒体12’は、表示層32Bに対応する黄色のカラーフィルター80B、表示層32Gに対応する赤色のカラーフィルター80G、及び表示層32Rに対応する黒色の遮光膜80Rが設けられている。さらに、表示層32B,32G,32R各々に対応させて走査電極18及びデータ電極20を設けることで各色に対応した画像を表示層32B,32G,32Rに表示させることで、表示面では表示層32B,32G,32Rで表示された画像が重なってカラー画像として視認される。なお、この形態に係る画像表示装置は、表示層32B,32G,32Rの各々に対応する走査電極18及びデータ電極20を介してムラ除去電圧を印加することで、表示層32B,32G,32Rの各々毎に画像ムラ除去処理を実行する。
【0068】
その他、上記実施の形態で説明した画像表示装置10の構成(図1、図2及び図15参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したりすることができることは言うまでもない。
【0069】
また、上記実施の形態で説明した画像表示プログラムの処理の流れ(図5参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態では、画像ムラ除去処理を画像書換処理の後に実行する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、初期化処理の後、かつ画像書換処理の前に画像ムラ除去処理を実行する形態としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施の形態に係る画像表示装置の電気的構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る表示媒体の断面図である。
【図3】実施の形態に係るコレステリック液晶の分子配向と光学特性の関係を示す図である。
【図4】実施の形態に係るコレステリック液晶の光反射率とコレステリック液晶に印加される電圧との関係の一例を示すグラフである。
【図5】実施の形態に係る画像表示プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施の形態に係る初期化処理及び画像書換処理における走査電圧の波形及びデータ電圧の波形を示す図である。
【図7】実施の形態に係るコレステリック液晶の光反射率とコレステリック液晶に短時間で印加される電圧との関係の一例を示すグラフである。
【図8】実施の形態に係るコレステリック液晶の光反射率とムラ除去電圧の印加時間との関係の一例を示すグラフである。
【図9】実施の形態に係るコレステリック液晶の光反射率とムラ除去電圧の周波数との関係の一例を示すグラフである。
【図10】実施の形態に係るコレステリック液晶の光反射率とムラ除去電圧の印加の繰り返し回数との関係の一例を示すグラフである。
【図11】実施の形態に係る画像ムラ除去処理前後における表示媒体の表面の状態を示す図である。
【図12】実施の形態に係るコレステリック液晶がフォーカルコニック状態の場合におけるコレステリック液晶の光反射率とムラ除去電圧の印加の繰り返し回数との関係の一例を示すグラフである。
【図13】他の形態に係る初期化処理及び画像書換処理として、フォーカルコニックリセット法を適用した場合における走査電圧の波形及びデータ電圧の波形を示す図である。
【図14】他の形態に係る初期化処理及び画像書換処理として、DDS法を適用した場合における走査電圧の波形及びデータ電圧の波形を示す図である。
【図15】他の形態に係る3つの表示層を設けた表示媒体の断面図である。
【符号の説明】
【0071】
10 画像表示装置
12 表示媒体
18 走査電極
20 データ電極
32 表示層
40 制御部
44A 電力供給部
44B 電力供給部
46 走査電極駆動部
48 データ電極駆動部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の範囲内の大きさの第1の電圧が印加されることによってプレーナ状態からフォーカルコニック状態に徐々に変化し、フォーカルコニック状態に変化した状態で前記第1の範囲に重ならず、前記第1の範囲よりも大きい第2の範囲内の大きさの第2の電圧が印加されることによってフォーカルコニック状態からホメオトロピック状態に徐々に変化することで入射光に対する反射率が変化する液晶を含む表示層、及び複数の画素毎の電圧を印加することが可能なように前記表示層を挟持する電極が積層された表示媒体と、
前記表示媒体に画像情報に基づいた画像を表示させた後、又は前記表示媒体をプレーナ状態又はフォーカルコニック状態に初期化させた後に、前記第1の範囲内の大きさの第3の電圧を、当該第3の電圧の印加が開始されてから、当該第3の電圧が印加されることによりフォーカルコニック状態へ変化を開始した前記液晶が当該第3の電圧の印加が停止された後にプレーナ状態に戻ることが可能な時点までの期間、前記電極を介して前記表示層に印加する印加手段と、
を備えた画像表示装置。
【請求項2】
前記印加手段は、前記第3の電圧を前記期間、前記電極を介して前記表示層に繰り返し印加する請求項1記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記印加手段は、フォーカルコニック状態へ変化を開始した前記液晶が電圧の印加が停止された後にプレーナ状態に戻るのに要する時間の経過後に、次の前記第3の電圧を前記期間、前記電極を介して前記表示層に印加する請求項2記載の画像表示装置。
【請求項1】
第1の範囲内の大きさの第1の電圧が印加されることによってプレーナ状態からフォーカルコニック状態に徐々に変化し、フォーカルコニック状態に変化した状態で前記第1の範囲に重ならず、前記第1の範囲よりも大きい第2の範囲内の大きさの第2の電圧が印加されることによってフォーカルコニック状態からホメオトロピック状態に徐々に変化することで入射光に対する反射率が変化する液晶を含む表示層、及び複数の画素毎の電圧を印加することが可能なように前記表示層を挟持する電極が積層された表示媒体と、
前記表示媒体に画像情報に基づいた画像を表示させた後、又は前記表示媒体をプレーナ状態又はフォーカルコニック状態に初期化させた後に、前記第1の範囲内の大きさの第3の電圧を、当該第3の電圧の印加が開始されてから、当該第3の電圧が印加されることによりフォーカルコニック状態へ変化を開始した前記液晶が当該第3の電圧の印加が停止された後にプレーナ状態に戻ることが可能な時点までの期間、前記電極を介して前記表示層に印加する印加手段と、
を備えた画像表示装置。
【請求項2】
前記印加手段は、前記第3の電圧を前記期間、前記電極を介して前記表示層に繰り返し印加する請求項1記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記印加手段は、フォーカルコニック状態へ変化を開始した前記液晶が電圧の印加が停止された後にプレーナ状態に戻るのに要する時間の経過後に、次の前記第3の電圧を前記期間、前記電極を介して前記表示層に印加する請求項2記載の画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図11】
【公開番号】特開2010−117518(P2010−117518A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290177(P2008−290177)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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