説明

画像表示装置

【課題】液晶素子の駆動回路を簡略化して、発光効率向上と外光反射低減とを両立させるとともに、低コスト化を実現する。
【解決手段】反射電極を備えた自発光型の有機EL表示素子を有する有機ELパネルと、有機EL表示素子の出射面側に、有機EL表示素子側から順に、1/4λ波長板と、信号に応じて直線偏光を制御する液晶素子で形成される可変円偏光手段とを備える。有機EL表示素子が発光する期間に同期して、液晶素子の直線偏光機能を弱め、有機EL表示素子が消灯する期間に同期して、液晶素子の直線偏光機能を強める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関するものであり、特に、反射電極を備えた自発光型であって、例えば、有機EL表示装置等の画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という)を用いた有機ELディスプレイが注目されている。一般的な有機EL素子は、反射電極と透光電極の間に、数100nm程度の厚みの発光層を含む有機層を挟み込んだ構造をしている。そして、このような素子構成である、素子の発光・消灯に関わらず、外界から素子に入射してくる光(外光)が反射電極で反射してしまう。このため、外光の強い環境下では、外光反射成分が素子の発光成分に比べて大きくなってしまい、有機ELディスプレイのコントラスト低下を招いて、視認性が悪化してしまう。
【0003】
そこで、このような問題を解決するために、一般的には、有機EL素子の上に円偏光手段を備えることが知られている。例えば、直線偏光板と1/4λ波長板(複数の複屈折板によって構成したもの)で構成された円偏光板に関する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
有機EL素子の上に円偏光板を備えた場合に、外光は右回りまたは左回りの円偏光となって有機EL素子に入射する。そして、その入射光は、有機EL素子の反射電極によって入射時とは逆回りの円偏光となって反射する。その光が再び円偏光板に入射すると、1/4λ波長板を介した後、直線偏光板の軸と直行する直線偏光となって直線偏光板に入射するため、直線偏光板にて遮光される。この効果により、外光反射は格段に低減される。
【0005】
しかし、このような構成では、有機EL素子の発光も円偏光板で減少してしまうという問題がある。これは、円偏光板の構成要素として用いられる直線偏光板が原因であり、おおよそ50%の光が直線偏光板でカットされてしまう。
【0006】
そこで、このような問題を解決するために、円偏光板の構成要素として用いられる直線偏光板のかわりに、一軸配向処理を施した基板間に2色性色素を添加したネマチック液晶を備えた液晶素子を用いた構成が提案されている(特許文献2参照)。この特許文献2に記載された技術は、有機EL素子の非発光箇所では、電圧無印加状態の液晶素子と1/4λ波長板との効果で外光反射を遮断する。一方、有機EL素子の発光箇所では、液晶素子に電圧を加えて液晶層での光の吸収を抑えて、有機EL素子の発光をロスなく外部に取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−127885号公報
【特許文献2】特開2000−113988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2に開示された技術は、有機EL素子の非発光箇所および発光箇所に対応して液晶素子を駆動する必要があるため、有機EL素子の配置パターンに対応させて液晶素子を配置する必要がある。例えば、有機EL素子がマトリクス状に配置さている場合には、液晶素子もマトリクス状に配置して駆動しなければならない。この場合、有機EL素子だけでなく、液晶素子の駆動回路も複雑になってしまい、高コストなディスプレイとなってしまう可能性がある。
【0009】
本発明は上述した事情に鑑み提案されたもので、液晶素子の駆動回路を簡略化して、発光効率向上と外光反射低減とを両立させるとともに、低コスト化を実現することが可能な画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像表示装置は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を備えている。すなわち、本発明の画像表示装置は、反射電極を備えた自発光型の表示素子を有する表示パネルと、表示素子の出射面側に、表示素子側から順に、位相差板と、信号に応じて直線偏光を制御する光学素子で形成される円偏光手段と、を備えている。そして、表示素子が発光する期間に同期して、光学素子の直線偏光機能を弱め、表示素子が消灯する期間に同期して、光学素子の直線偏光機能を強めることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像表示装置によれば、表示素子の発光・消灯に同期して液晶素子を駆動し、この時、画像表示装置の全面が同時に発光・消灯を行う駆動方法とすれば、液晶素子の駆動も全面一括で行えばよいため、液晶素子の駆動回路を簡略化することができる。したがって、画像表示装置の発光効率向上と外光反射低減とを両立し、かつその機能を低コストで実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る画像表示装置の一例を示す概略全体図である。
【図2】本発明の実施形態に係る有機ELパネルの一例を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態に係る有機EL素子の一例を示す概略拡大断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る画像表示装置で用いる可変円偏光手段の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の実施形態に係る有機ELパネルと可変円偏光手段の動作を説明するタイミングチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る有機EL素子を含む画素回路の構成例である。
【図7】本発明の実施例1における、1行目、n行目、N行目の各信号線のタイミングチャートである。
【図8】本発明の実施例2における、1行目、n行目、N行目の各信号線のタイミングチャートである。
【図9】本発明の実施形態に係る画像表示装置で用いる可変円偏光手段の一例を示す概略図である。
【図10】本発明の実施例3における、1行目、2行目、(2n−1)行目、(2n)行目の各信号線のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の画像表示装置の実施形態を説明する。
【0014】
<概略構成>
図1は、本発明の実施形態に係る画像表示装置の一例を示す概略全体図である。
【0015】
本発明の実施形態に係る画像表示装置は、反射電極を備えた自発光型の表示素子を有する表示パネルを備えている。そして、表示素子の出射面側に、表示素子側から順に、位相差板と、信号に応じて直線偏光を制御する光学素子で形成される円偏光手段とを備えている。具体的には、図1に示すように、有機ELパネル11の発光面側に、可変円偏光手段12を重ねた構成となっている。
【0016】
後に詳述するが、有機ELパネル11が表示パネルに相当し、その陽極32が反射電極に相当する。また、可変円偏光手段12が円偏光手段に該当し、これを構成する1/4λ波長板41が位相差板に相当し、液晶素子42が光学素子に相当する(図1および図4参照)。
【0017】
また、本発明では、表示素子が発光する期間に同期して、光学素子の直線偏光機能を弱め、表示素子が消灯する期間に同期して、光学素子の直線偏光機能を強めるようになっている。ここで、表示パネルにおける表示素子は複数配置されるとともに、当該複数の表示素子はすべて一括して発光および消灯する機能を備えている。この場合には、円偏光手段における光学素子は、複数の表示素子の総領域に対応した1つの液晶素子とすることが可能である。
【0018】
さらに、表示パネルにおける表示素子はマトリクス状に複数配置されるとともに、当該複数の表示素子は単数あるいは複数の任意行単位で発光および消灯する機能を備えていてもよい。この場合には、円偏光手段における光学素子は、任意行単位の表示素子の総領域に対応した複数の液晶素子とすることが可能である。
【0019】
また、表示素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子とすることが可能である。
【0020】
<有機ELパネル>
まず、有機ELパネル11について説明する。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る有機ELパネルの一例を示す概略図である。
【0022】
有機ELパネル11は、図2に示すように、情報線に情報電圧を印加する情報線駆動回路21、走査線を駆動する走査線駆動回路22、情報電圧値に従って画素に流す電流を制御する画素回路23、発光期間を制御する発光期間制御線駆動回路24から構成される。
【0023】
<有機EL素子>
図3は、一般的な有機ELパネルの表示素子(発光素子)である有機EL素子の一例を示す概略拡大断面図である。
【0024】
有機EL素子は、基板31上に、陽極(反射電極)32、ホール輸送層33、発光層34、電子輸送層35、電子注入層36、陰極(半透明電極)37を順次設けた構成となっている。この有機EL素子に電流を通電することで、陽極32から注入されたホールと陰極37から注入された電子が、発光層34において再結合し、発光を生じる。なお、ホール輸送層33、発光層34、電子輸送層35、電子注入層36の各層を有機化合物層という。
【0025】
本実施形態では、基板31上に陽極32を形成した構成の一例を示したが、基板31上に陰極(反射電極)37、有機化合物層、陽極(半透明電極)32の順序で構成されていてもよく、電極の選択や、各層の積層順序には、特に制限はない。また、本実施形態では、基板31と反対側の半透明電極37から発光を取り出すトップエミッション型の表示装置を示しているが、本発明は、ボトムエミッション型の表示装置にも適用することができる。
【0026】
ホール輸送層33、発光層34、電子輸送層35、電子注入層36に用いられる有機化合物材料としては、低分子材料で構成されていても、高分子材料で構成されていても、両者を用いて構成されていてもよく、特に限定されるものではない。必要に応じて、これまで知られている材料を使用することができる。また、有機EL素子は、水分等の外気から保護する必要性がある。このため、例えば、ガラスで狭持したり、無機膜で保護したりする場合があるが、その手段について特に制限はない。
【0027】
以上、有機ELパネル11のデバイス構成について述べたが、R・G・Bの3色の有機EL素子からなる構成であっても、白色有機EL素子にカラーフィルターを重ねた形の有機ELパネルであってもよい。また、表示素子として有機EL素子について述べてきたが、反射電極を備えた自発光素子であればいかなる素子であっても適用することができる。
【0028】
<可変円偏光手段>
次に、可変円偏光手段12について述べる。図4に、可変円偏光手段の概略図を示す。
【0029】
可変円偏光手段12は、図4に示すように、1/4λ波長板41と、液晶素子42とからなる。液晶素子42は、2枚のガラス基板43、44に対して、透明電極45、46および配向膜47、48を形成し、その2枚のガラス基板43、44の間に、液晶49を狭持している。そして、液晶49は、ネマチック液晶410に2色性色素411を混合したゲストホスト液晶であり、正の誘電異方性を示すものを用いる。また、配向膜47、48に対しては、一軸配向処理を施す。この場合、液晶49に電圧を印加しない場合には水平配向し、液晶49に電圧を印加する場合には垂直配向する。また、1/4λ波長板41の光軸は、液晶素子42の配向軸と45度の角度となるように配置される。
【0030】
液晶素子42に電圧を印加しない場合、ネマチック液晶410は配向膜に従ってガラス基板43、44に沿ってほぼ水平配向する。この時、2色性色素411の長軸方向もネマチック液晶410に従って同様に配列する。したがって、この状態では、液晶素子42に入射する光の一方向は2色性色素411に吸収される。結果として、液晶素子42は直線偏光板として機能する。
【0031】
このように、直線偏光板として機能する液晶素子42と1/4λ波長板41とが組み合わさることになるので、可変円偏光手段12は円偏光板として機能する。したがって、この場合には、外光反射は低減し、発光光に対する透過率はおおよそ半減する。
【0032】
一方、液晶素子42に電圧を印加する場合、ネマチック液晶410はガラス基板43、44に対して垂直配向する。この時、2色性色素411の長軸方向もネマチック液晶410に従って同様に配列する。したがって、この状態では、液晶素子42に入射する光は2色性色素411に吸収されずに透過する。
【0033】
このため、液晶素子42は直線偏光板としては機能せず、1/4λ波長板41と組み合わさっても、発光光に対する透過率は高いままとなる。つまりこの時、可変円偏光手段12は、外光反射は多くなるが、発光光に対する透過率は通常の円偏光板と比べて高くなる。
【0034】
以上は、ネマチック液晶を用いた液晶素子の例であったが、電界ON,OFF時に高速応答性が求められる用途の場合、ネマチック液晶では応答速度が遅いので使えないことがある。再公表特許WO2005/090520には、高分子安定化ブルー相液晶が開示されており、その応答時間は100μsec程度であることが記載されている。
【0035】
<高速応答素子>
図9に、本発明の実施形態に係る画像表示装置で用いる可変円偏光手段の一例である高速応答素子の構造を示す。
【0036】
高速応答素子は、図9に示すように、ガラスなどの基板(図示せず)に櫛歯状の電極1を同一面内に配置し、基板面に平行に電界2を印加する。もう一方の基板は、電極のないガラス板で、スペーサーを介してサンドイッチし、それによって生じるギャップに高分子安定化ブルー液晶材料(液晶3)を注入する。
【0037】
図9(a)に示すように、櫛歯状の電極1に電圧を印加すると電界方向に液晶3が配向し、一軸の屈折率異方性が生じ、直線偏光板として機能する。そして、45度の光軸5を持つ1/4λ波長板4と組み合わせることによって円偏光板の機能が生じる。
【0038】
一方、図9(b)に示すように、電界をOFFにすると、液晶3はランダム配向となり、円偏光板の機能はなくなって、光透過状態となる。
【0039】
<可変変更手段の同期動作>
次に、図5を参照して、有機ELパネル11と可変円偏光手段12の同期動作について説明する。図5は、有機ELパネルと可変円偏光手段の動作を説明するタイミングチャートである。
【0040】
まず、有機ELパネル11の駆動シーケンスを図5(a)に示す。図5(a)に示すように、期間Aにおいて、走査線を駆動する走査線駆動回路22によって順次、画素回路23に画像情報を書き込む。そして、全画素に画像情報を書き込んだ後に、期間Bにおいて全面を一括で点灯させることが望ましい。
【0041】
また、可変円偏光手段12の透過率・偏光度のシーケンスをそれぞれ図5(b)、(c)に示す。
【0042】
図5(b)、(c)に示すように、期間A(画像情報の書込み期間)の間は、液晶素子42に電圧を印加せず、可変円偏光手段12を円偏光板として機能させる。この作用によって、期間Aの間は外光反射が低減される。この時、有機ELパネル11は発光していないので、発光をロスすることもない。
【0043】
また、期間B(全面が一括で点灯する期間)の間は、液晶素子42に電圧を印加して、可変円偏光手段12における発光光の透過率を高くする。この作用によって、通常の円偏光板と比べて、期間Bの間は有機ELパネル11の発光を効率よく取り出すことができる。また、この期間Bの間は、可変円偏光手段12は円偏光板として機能しないので、外光反射は増加する。
【0044】
したがって、外光反射の量は期間Aと期間Bの比率で変わる。全面で点灯する期間が短いほど、外光反射の量を低減することができ、視認性が向上する。
【0045】
以下、具体的な実施例により、本発明の画像表示装置をさらに詳しく説明する。
【0046】
〔実施例1〕
実施例1の画像表示装置の概略構成は、図1に示したものと同様である。また、実施例1の有機ELパネルの概略は、図2に示したものと同様である。
【0047】
図6に、実施例1の有機EL素子を含んだ画素回路の構成例を示す。
【0048】
図6において、P1が走査信号線であり、P2が発光期間制御線である。情報信号として、電圧データVdataが情報信号線から入力される。有機EL素子の陽極はTFT(M3)のドレイン端子に接続されており、陰極は接地電位CGNDに接続されている。以下に、画素回路の大まかな動作について説明する。
【0049】
情報信号が書き込まれる(Vdataが入力される)時、走査信号P1にはHIレベルの信号が、P2にはLOWレベルの信号が入力され、トランジスタM1がON、M3はOFFとなっている。この時、M3は導通状態でないため、有機EL素子には電流が流れない。そして、VdataによりM1の電流駆動能力に応じた電圧が、M2のゲート端子と電源電位V1の間に配置された容量C1に生じる。
【0050】
また、書き込まれた情報電圧を保持しつつ有機EL素子に流れる電流を遮断する時は、P1にはLOWレベルの信号、P2にはLOWレベルの信号を入力する。この時、トランジスタM1、M3がOFFとなる。また、M3が非導通状態であるため、有機EL素子への電流供給を遮断でき、非発光状態にすることができる。
【0051】
また、書き込まれた情報電圧の保持に従って有機EL素子に電流を供給する時は、P1にはLOWレベルの信号、P2にはHIレベルの信号を入力する。この時、トランジスタM1がOFF、M3がONとなる。また、M3が導通状態であるため、C1に生じた電圧により、M2の電流駆動能力に応じた電流が有機EL素子に供給され、その供給された電流に応じた輝度で有機EL素子が発光する。
【0052】
このように、P2に入力する信号レベルのHI・LOWを切り替えることで、任意に発光期間を制御することができる。
【0053】
なお、実施例1においては、画素回路として、図2の構成を採用したが、画素回路はこれに限るものではなく、発光期間を制御できる駆動方式・画素回路であれば、どのような構成であってもよい。
【0054】
次に、表示パネル全体の動作について説明する。
【0055】
実施例1の表示パネルでは、1水平期間の間に、1つの走査線に接続する画素群に対して一括して情報電流を書き込む。同様にして、順次、次行の走査線に接続する画素群に対して一括して情報電流を書き込んでゆく。そして、1垂直期間よりも短い期間で全画素に対する書込みが終了する。例えば、60Hz駆動の表示パネルの場合は、一垂直期間は16.67msecとなる。また、実施例1の表示パネルは、N行・M列のマトリクス配列であるとし、表示パネルn番目の行の画素回路に接続する走査信号線P1をP1nとし、発光期間制御線をP2nとする(N、n、Mは自然数、n≦N)。
【0056】
図7に、実施例1における、1行目、n行目、N行目の各信号線のタイミングチャートを示す。
【0057】
<期間A/画像情報の書込み期間>
表示パネルn行目への書込みは、P1nがHI、P2nがLOWの時に行われ、情報線から入力されるVdataに従って画素回路に情報が記憶される。この後、P1nがLOW、P2nがLOWになり、記憶された情報に従って有機EL素子に電流を流すことができる状態となる。ただし、P2nがLOWなので、トランジスタM3がOFFとなり有機EL素子に電流は流れない。この状態から、次行目(n+1)の書込みを行ってゆき、有機EL素子に電流を流さないまま、1行目からN行目までの書込みを終了する。ここで、期間Aは15.00msecとし、この期間中に全画素回路への画像情報の書込みを終了する。また、この期間中は、有機EL素子は発光しない。
【0058】
<期間B/全面が一括で点灯する期間>
期間Aで全画素への画像情報の書込みが終了した後、全画素を一括で点灯する。例えば、表示パネルn行の画素は、P1nがLOW、P2nがHI(トランジスタM3がON)となり、各画素回路に記憶されたVdataに従って有機EL素子に電流が流れ、有機EL素子が発光状態となる。ここで、期間Bは1.67msecとし、この期間中のみ有機EL素子が発光する。
【0059】
<可変円偏光手段>
次に、可変円偏光手段12について説明する。
【0060】
液晶素子42のガラス基板43、44上に備えた透明電極45、46は、両方とも全面ベタで形成する。このため、液晶素子42は、全面一括で直線偏光機能の調整が可能である。
【0061】
期間Aにおいて、可変円偏光手段12の液晶素子42に対して電圧を印加せず、可変円偏光手段12を円偏光板として機能させる。この作用によって、期間Aの間は外光反射が低減される。また、この時、有機ELパネル11は発光していないので、発光をロスすることもない。
【0062】
また、期間Bにおいて、可変円偏光手段12の液晶素子42に対して電圧を印加して、可変円偏光手段12の透過率を高くする。この作用によって、通常の円偏光板と比べて、期間Bの間は有機ELパネル11の発光を効率よく取り出すことができる。
【0063】
したがって、実施例1では、一般的な円偏光板を用いた場合と比べて、発光光の取り出し効率の良い有機ELパネルを提供することができる。単純には、従来と比較して約2倍の輝度のディスプレイを提供することができ、同じ輝度での比較の場合には、消費電力を約半分にすることができる。
【0064】
また、外光反射に対して、期間Aでは円偏光板と同等の効果が得られる。期間Bでは外光反射の量は増加するが、期間Bは期間Aと比べて1/10の時間である。このため、外光反射に対しては、円偏光板を用いた場合に近い良好な視認性が得られる。
【0065】
また、液晶素子42に形成する透明電極45、46は全面ベタでよく、液晶素子42の駆動システムも簡便でよい。このため、可変円偏光手段を安価に提供することができる。
【0066】
〔実施例2〕
実施例1では有機ELパネル11の点灯を全画素一括で制御し、可変円偏光手段12の駆動も全面一括で制御したが、実施例2では各行単位で制御するようにした。
【0067】
実施例2の画像表示装置、有機ELパネル、有機EL素子を含んだ画素回路の構成は、実施例1と同様である。
【0068】
次に、表示パネル全体の動作について説明する。
【0069】
実施例2の表示パネルでは、実施例1と同様に、N行・M列のマトリクス配列であるとし、表示パネルn番目の行の画素回路に接続する走査信号線P1をP1nとし、発光期間制御線をP2nとする(N、n、M、mは自然数、n≦N)。
【0070】
図8に、実施例2における、1行目、n行目、N行目の各信号線のタイミングチャートを示す。
【0071】
<期間An/画像情報の書込み期間>
表示パネルn行の書込みは、P1nがHI、P2nがLOWの時に行われ、情報線から入力されるVdataに従って画素回路に情報が記憶される。ここで、期間Anは(16.67msec/N)の時間であるとし、この期間中にn行目の画素回路への画像情報の書込みを終了する。また、この期間中は、有機EL素子は発光しない。この動作の後、次行の書込み動作を開始する。
【0072】
<期間Bn/有機EL素子点灯期間>
期間Anの後、表示パネルn行目に対する制御信号は、P1nがLOW、P2nがHIとなる。そして、トランジスタM3がONとなり、画素回路に記憶された画像情報に従って、有機EL素子に電流が流れる。これにより、有機EL素子は画像情報に従った明るさで発光する。
【0073】
<期間Cn/有機EL素子消灯期間>
期間Bnの後、表示パネルn行目に対する制御信号は、P1nがLOW、P2nがLOWとなる。画素回路には既に画像情報が記憶されているものの、トランジスタM3がOFFとなり有機EL素子に電流は流れない。このため、有機EL素子は発光しない。
【0074】
<可変円偏光手段>
次に可変円偏光手段12について説明する。
【0075】
液晶素子42のガラス基板43、44に備える透明電極45、46は、片面は全面ベタで形成し、片面は有機ELパネル11の行方向レイアウトに従ってパターニングする。これにより、液晶素子42は、各行単位で直線偏光機能の調整が可能である。
【0076】
期間An・Cnにおいて、可変円偏光手段12の液晶素子42に対して電圧を印加せず、可変円偏光手段12を円偏光板として機能させる。この作用によって、期間An・Cnの間は外光反射が低減される。また、この時、有機ELパネル11は発光していないので、発光をロスすることもない。
【0077】
期間Bnにおいて、可変円偏光手段12の液晶素子42に対して電圧を印加して、可変円偏光手段12の透過率を高くする。この作用によって、通常の円偏光板と比べて、期間Bnの間は有機ELパネル11の発光を効率よく取り出すことができる。
【0078】
したがって、実施例1と同様に、一般的な円偏光板を用いた場合と比べて、発光光の取り出し効率の良い有機ELパネルを提供することができる。また、外光反射に対しては、円偏光板を用いた場合に近い良好な視認性が得られる。
【0079】
また、液晶素子42に形成する透明電極はパネルの行レイアウトに対応したライン状のパターニングでよく、液晶素子42の駆動システムも簡便でよい。このため、可変円偏光手段を安価に提供することができる。
【0080】
〔実施例3〕
実施例2では有機ELパネル11の点灯を各行単位で制御し、可変円偏光手段12の駆動も有機ELパネル11の行単位の制御に対応して制御したが、実施例3では任意複数行単位で制御するようにした。
【0081】
実施例3の画像表示装置、有機ELパネル、有機EL素子を含んだ画素回路の構成は、実施例1と同様である。
【0082】
次に、表示パネル全体の動作について説明する。
【0083】
実施例3の表示パネルでは、実施例1と同様にN行・M列のマトリクス配列であるとし、表示パネルn番目の行の画素回路に接続する走査信号線P1をP1nとし、発光期間制御線をP2nとする(N、n、M、mは自然数、n≦N)。
【0084】
図10に、実施例3における、1行目、2行目、(2n−1)行目、(2n)行目の各信号線のタイミングチャートを示す。表示パネルの点灯・消灯の制御を2行単位で、k行目(kは自然数)の動作について述べる。
【0085】
<期間Ak/画像情報の書込み期間>
表示パネルk行の書込みはP1nがHI、P2nがLOWの時に行われ、情報線から入力されるVdataに従って画素回路に情報が記憶される。ここで、期間Akは(16.67msec/N)の時間であるとし、この期間中にk行目の画素回路への画像情報の書込みを終了する。また、この期間中は、有機EL素子は発光しない。この動作の後、次行の書込み動作を開始する。
【0086】
<期間Bk/有機EL素子点灯期間>
表示パネルk行目に対する制御信号は、P1kがLOW、P2kがHIとなる。トランジスタM3がONとなり、画素回路に記憶された画像情報に従って、有機EL素子に電流が流れる。これにより、有機EL素子は画像情報に従った明るさで発光する。
【0087】
<期間Ck/有機EL素子消灯期間>
表示パネルk行目に対する制御信号は、P1kがLOW、P2kがLOWとなる。画素回路には既に画像情報が記憶されているものの、トランジスタM3がOFFとなり有機EL素子に電流は流れない。このため、有機EL素子は発光しない。
【0088】
ここで、図10に示すように、隣接する(2n−1)行目と(2n)行目の有機EL素子点灯期間(期間B)が同タイミングとなるように、両行への発光期間制御信号P2(2n−1)、P2(2n)は同信号を入力する。これにより、2行単位の点灯制御となる。
【0089】
以上、表示パネルの点灯・消灯の制御を2行単位の形で説明したが、上記した行数に限定されるものではない。すなわち、任意複数の行に対して同一の発光期間制御信号P2を入力すれば、点灯行数は任意に設定することができる。
【0090】
<可変円変更手段>
次に、可変円偏光手段12について説明する。
【0091】
液晶素子42のガラス基板43、44に備える透明電極45、46は、片面は全面ベタで形成し、片面は有機ELパネル11の同タイミングで発光する任意単位行数に従ってパターニングする。このため、液晶素子42は、有機ELパネル11の各発光領域、各タイミングに対応して直線偏光機能の調整が可能である。
【0092】
可変円偏光手段12の動作については、実施例2と同様である。
【0093】
したがって、実施例1と同様に、一般的な円偏光板を用いた場合と比べて、発光光の取り出し効率の良い有機ELパネルを提供することができる。また、外光反射に対しては、円偏光板を用いた場合に近い良好な視認性が得られる。
【0094】
また、液晶素子42に形成する透明電極は表示パネルの行レイアウトに対応したライン状のパターニングでよく、液晶素子42の駆動システムも簡便でよい。したがって、可変円偏光手段を安価に提供することができる。
【0095】
〔実施例4〕
実施例4では、可変円偏光手段12の液晶素子として、前述した高分子安定化ブルー相液晶を用いた。その他の内容および作用効果については、実施例1および実施例2と同様である。
【0096】
高分子安定化ブルー相液晶を用いた高速応答素子は、前述した文献(再公表特許WO2005/090520)に開示されている材料を用いて、櫛歯状電極を形成したセル中に注入し、さらに位相板を貼り付けて作成した。
【0097】
また、以上の説明では、可変円偏光手段12の直線偏光を制御する光学素子を液晶素子としてきたが、これに限られるものではない。
【符号の説明】
【0098】
11:有機ELパネル、12:可変円偏光手段、32:陽極(反射電極)、41:1/4λ波長板(位相差板)、42:液晶素子(光学素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射電極を備えた自発光型の表示素子を有する表示パネルと、
前記表示素子の出射面側に、表示素子側から順に、位相差板と、信号に応じて直線偏光を制御する光学素子で形成される円偏光手段と、を備えた画像表示装置であって、
前記表示素子が発光する期間に同期して、前記光学素子の直線偏光機能を弱め、
前記表示素子が消灯する期間に同期して、前記光学素子の直線偏光機能を強めることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記表示パネルにおける前記表示素子は複数配置されるとともに、当該複数の表示素子はすべて一括して発光および消灯する機能を備えており、
前記円偏光手段における前記光学素子は、複数の表示素子の総領域に対応した1つの液晶素子であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記表示パネルにおける前記表示素子はマトリクス状に複数配置されるとともに、当該複数の表示素子は単数あるいは複数の任意行単位で発光および消灯する機能を備えており、
前記円偏光手段における前記光学素子は、前記任意行単位の表示素子の総領域に対応した複数の液晶素子であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記表示素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−75630(P2011−75630A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224327(P2009−224327)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】