説明

画像記録装置および画像記録方法

【課題】画像記録装置において、ウエブの蛇行を精度良く検出する。
【解決手段】画像記録装置では、第1光電エリアセンサが、ウエブの幅方向において、ウエブの側部エッジおよび複数の穴が通過する範囲に亘って存在し、第1光電エリアセンサの受光光量を示す出力の時系列81において、ウエブの複数の穴に対応する複数の補正対象範囲84が抽出され、各補正対象範囲84の光量出力が、隣接する補正不要範囲85の光量出力に基づいて補正される。そして、補正後の出力と基準出力との差に基づいてウエブの蛇行量が算出される。これにより、ウエブの側部に穴が存在する部位においても、ウエブの蛇行量を精度良く算出することができる。その結果、ウエブの蛇行を、長手方向の全範囲に亘って精度良く検出することができ、蛇行補正部により、ウエブの蛇行を精度良く補正することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺シート状のウエブ上に画像を記録する画像記録装置および画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、長尺シート状のウエブ上に画像を記録する画像記録装置では、所定の搬送方向に搬送されるウエブの位置が幅方向にずれる蛇行が発生することがある。特許文献1では、スプロケット穴を有しない連続帳票用紙に印刷を行うプリンタ装置において、変位検出センサにより連続帳票用紙の幅方向の変位量を検出し、変位量に応じて画像記録のタイミングを補正することにより、蛇行による画質の低下を回避する技術が開示されている。変位検出センサは、連続帳票用紙の側部エッジ近傍に配置されるフォトディテクタであり、投光部から連続帳票用紙の側部エッジ近傍の部位に光を照射し、連続帳票用紙からの反射光を受光部により受光する。そして、受光部により受光された光量に基づいて、連続帳票用紙の幅方向の変位が求められる。
【0003】
特許文献2では、電子写真装置において、用紙送り穴を有する印刷用紙の用紙端位置を検出する技術が開示されている。当該電子写真装置では、印刷用紙は、光源と受光センサとの間を、受光センサの受光面の一部を遮りながら通過する。印刷用紙の用紙端位置は、受光センサからの出力に基づいて求められるが、印刷用紙が蛇行して用紙送り穴が受光センサの受光面上を通過すると、受光センサからの出力が大きくなってしまう。そこで、特許文献2では、用紙送り穴の直径をR、隣接する用紙送り穴間の距離をL、距離Lにおける受光センサのサンプリング数をNとして、N個のサンプリングデータのうち、出力が大きい(N×R/L)個のサンプリングデータを排除し、残りのサンプリングデータのみに基づいて印刷用紙の用紙端位置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−91347号公報
【特許文献2】特開2003−114556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のプリンタ装置では、側部に用紙送り穴が設けられた印刷用紙の蛇行を精度良く検出することはできない。特許文献2の電子写真装置では、排除されたサンプリングデータに対応する位置では、用紙端位置を検出することができない。また、特許文献2では、受光センサと用紙送り穴とが重なった状態で受光センサからの出力が最大になるという前提で、出力が大きいサンプリングデータが排除されているが、印刷用紙の蛇行が大きく、受光センサが印刷用紙の用紙端から大きくはみ出した場合には、受光センサが用紙送り穴と重なっている状態よりも出力が大きくなることが考えられる。この場合、受光センサが用紙送り穴と重なっている状態のサンプリングデータは排除されず、受光センサが用紙送り穴と重なっていない状態のサンプリングデータが排除されてしまい、用紙端位置の検出精度が低くなる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ウエブの蛇行を精度良く検出することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、長尺シート状のウエブ上に画像を記録する画像記録装置であって、前記ウエブを、長手方向に搬送する搬送機構と、前記ウエブの搬送に同期して前記ウエブ上に画像を記録する画像記録部と、前記画像記録部よりも前記ウエブの搬送方向の上流側において、前記ウエブを挟んで対向して配置される光源および光電エリアセンサと、前記光電エリアセンサからの出力に基づいて前記ウエブの蛇行を検出する蛇行検出部とを備え、前記ウエブが、側部エッジに沿って一定の配列ピッチにて配列された複数の穴を有し、前記光電エリアセンサの受光面が、前記ウエブの幅方向において、前記側部エッジおよび前記複数の穴が通過する範囲に亘って存在し、前記蛇行検出部が、前記光電エリアセンサの受光光量を示す出力の時系列において、出力が増大する方向へと突出する一の範囲を抽出し、前記一の範囲のピーク位置を求め、前記ピーク位置に基づいて一の穴の前記搬送方向における中心位置を求める中心位置検出部と、前記ウエブの搬送速度、各穴の前記搬送方向の長さ、前記配列ピッチ、および、前記光電エリアセンサの前記受光面の前記搬送方向の幅に基づいて、前記出力の時系列において、前記複数の穴を通過した光が前記光電エリアセンサに入射する複数の範囲を、複数の補正対象範囲として抽出する補正対象範囲抽出部と、各補正対象範囲における前記光電エリアセンサの出力を、前記各補正対象範囲の前後に隣接する2つの補正対象範囲と前記各補正対象範囲との間の2つの補正不要範囲における出力に基づいて補正するセンサ出力補正部と、前記センサ出力補正部による補正後の出力と予め定められた基準出力との差に基づいて前記ウエブの蛇行量を算出する蛇行量取得部とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像記録装置であって、前記搬送方向において前記光電エリアセンサと前記画像記録部との間に配置され、前記ウエブの一部をその主面に垂直な軸を中心として回転させることにより、前記ウエブの蛇行を補正する蛇行補正部をさらに備える。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像記録装置であって、前記蛇行補正部よりも前記搬送方向の下流側において、前記ウエブを挟んで対向して配置される他の光源および他の光電エリアセンサと、前記他の光電エリアセンサからの出力に基づいて、前記複数の補正対象範囲の位置を修正する補正範囲修正部とをさらに備え、前記他の光電エリアセンサの受光面が、前記幅方向において、前記複数の穴が通過する範囲に亘って存在し、前記補正範囲修正部が、前記他の光電エリアセンサの受光光量を示す出力の時系列において、出力が増大する方向へと突出する複数の範囲を抽出し、前記複数の範囲の位置に基づいて、前記複数の補正対象範囲の位置を修正する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の画像記録装置であって、前記光電エリアセンサの前記受光面の前記搬送方向の幅が、前記各穴の前記搬送方向の長さ以下である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、長尺シート状のウエブを、長手方向に搬送しつつ、前記ウエブの搬送に同期して画像記録部により前記ウエブ上に画像を記録する画像記録方法であって、前記ウエブが、側部エッジに沿って一定の配列ピッチにて配列された複数の穴を有し、前記画像記録部よりも前記ウエブの搬送方向の上流側において、前記ウエブを挟んで光源および光電エリアセンサが対向して配置され、前記光電エリアセンサの受光面が、前記ウエブの幅方向において、前記側部エッジおよび前記複数の穴が通過する範囲に亘って存在し、前記画像記録方法が、a)前記ウエブを搬送しつつ前記光電エリアセンサの受光光量を示す出力の時系列を取得する工程と、b)前記出力の時系列において、出力が増大する方向へと突出する一の範囲を抽出し、前記一の範囲のピーク位置を求め、前記ピーク位置に基づいて一の穴の前記搬送方向における中心位置を求める工程と、c)前記ウエブの搬送速度、各穴の前記搬送方向の長さ、前記配列ピッチ、および、前記光電エリアセンサの前記受光面の前記搬送方向の幅に基づいて、前記出力の時系列において、前記複数の穴を通過した光が前記光電エリアセンサに入射する複数の範囲を、複数の補正対象範囲として抽出する工程と、d)各補正対象範囲における前記光電エリアセンサの出力を、前記各補正対象範囲の前後に隣接する2つの補正対象範囲と前記各補正対象範囲との間の2つの補正不要範囲における出力に基づいて補正する工程と、e)前記d)工程における補正後の出力と予め定められた基準出力との差に基づいて前記ウエブの蛇行量を算出する工程とを備える。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画像記録方法であって、前記b)工程が、前記ウエブの搬送開始直後に行われる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、ウエブの蛇行を精度良く検出することができる。また、請求項2の発明では、ウエブの蛇行を精度良く補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る画像記録装置の斜視図である。
【図2】ウエブの一部を示す平面図である。
【図3】制御部の機能を示すブロック図である。
【図4】吐出部の底面図である。
【図5】ウエブの蛇行検出の流れを示す図である。
【図6】第1光電エリアセンサの出力の時系列を示す図である。
【図7】第2光電エリアセンサの出力の時系列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る画像記録装置1の外観を示す斜視図である。画像記録装置1は、長尺シート状のウエブ9にインクの微小液滴を吐出してウエブ9上に画像を記録する(すなわち、画像の印刷を行う)インクジェットプリンタである。本実施の形態では、不透明の印刷用紙であるウエブ9に対するカラー画像の記録が行われる。
【0016】
図2は、ウエブ9の一部を示す平面図である。図2では、画像記録装置1の一部の構成を共に描いている。ウエブ9は、側部エッジ91に沿って一定の配列ピッチにて長手方向に配列された同形状の複数の穴92を有する。穴92は、ウエブ9を非常に高い位置精度にて低速搬送する際に利用される。本実施の形態では、穴92は円形であるが、穴92は四角形や他の形状であってもよい。
【0017】
図1に示す画像記録装置1は、搬送機構2、吐出部3、第1センサ部4、蛇行補正部5、第2センサ部6、および、これらの構成を制御する制御部を備える。図3は、制御部7の機能を示すブロック図である。図3では、制御部7に接続される画像記録装置1の構成の一部を併せて示す。制御部7は、ウエブ9上への画像の記録を制御する記録制御部71、および、ウエブ9の蛇行(すなわち、搬送中のウエブ9の位置が、搬送方向に垂直な方向にずれること)を検出する蛇行検出部72を備える。蛇行検出部72は、中心位置検出部73、補正対象範囲抽出部74、センサ出力補正部75、蛇行量取得部76および補正範囲修正部77を備える。
【0018】
図1に示す搬送機構2は、ウエブ9を図1中のY方向(すなわち、ウエブ9の長手方向)に搬送する。搬送機構2では、穴92を利用することなくウエブ9の搬送が行われる。搬送機構2では、それぞれが図1中のX方向に長い複数のローラ21がY方向に配列される。X方向は、水平かつY方向に垂直な方向であり、ウエブ9の幅方向でもある。複数のローラ21の(+Y)側にはロール状のウエブ9(供給ロール)を保持する供給部22が設けられ、複数のローラ21の(−Y)側にはロール状のウエブ9(巻取ロール)を保持する巻取部23が設けられる。ウエブ9は供給部22および巻取部23のそれぞれにてロール状とされる。以下の説明では、単にウエブ9という場合は搬送途上のウエブ9(すなわち、複数のローラ21上のウエブ9)を意味するものとする。
【0019】
搬送機構2の一のローラ21aにはウエブ9の走査方向の移動速度を検出するエンコーダ29が設けられ、記録制御部71(図2参照)がエンコーダ29の出力に基づいて巻取部23のモータの回転を制御することにより、ウエブ9が(−Y)方向に一定速度にて搬送される。以下、図1中の(−Y)方向を、ウエブ9の搬送方向ともいう。ウエブ9の搬送時には、供給部22が有するモータにてウエブ9に対して移動方向とは逆向き(すなわち、(+Y)方向)の負荷(テンション)を付与することにより、複数のローラ21上のウエブ9が波打つことなく滑らかに移動する。
【0020】
吐出部3は、搬送機構2を跨ぐようにして基台20に設けられるフレーム25に、搬送機構2の上方(すなわち、(+Z)側)にて固定される。図4は吐出部3を示す底面図である。吐出部3はそれぞれが互いに異なる色のインクを吐出する複数(本実施の形態では、4個)のヘッドであるインクジェットヘッド31を備え、これらのインクジェットヘッド31は同様の構造を有する。複数のインクジェットヘッド31はY方向(すなわち、走査方向)に配列されて吐出部3の取付部30に取り付けられる。
【0021】
図4中の最も(+Y)側のインクジェットヘッド31はK(ブラック)の色のインクを吐出し、Kのインクジェットヘッド31の(−Y)側のインクジェットヘッド31はC(シアン)の色のインクを吐出し、Cのインクジェットヘッド31の(−Y)側のインクジェットヘッド31はM(マゼンタ)の色のインクを吐出し、最も(−Y)側のインクジェットヘッド31はY(イエロー)の色のインクを吐出する。なお、吐出部3では、ライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイト等の他の色用のインクジェットヘッド等も設けられてよい。
【0022】
画像記録装置1では、記録制御部71(図2参照)により、吐出部3からのインクの吐出が、搬送機構2によるウエブ9の搬送に同期して制御されることにより、ウエブ9上に画像が記録される。すなわち、吐出部3は、ウエブ9に画像を記録する画像記録部として機能する。吐出部3の各インクジェットヘッド31(図4参照)は、X方向に関し、ウエブ9上の印刷領域の全体に亘って(ここでは、ウエブ9のX方向の全体に亘って)設けられる。そして、ウエブ9が、吐出部3の下方を搬送方向に1回だけ移動することにより、ウエブ9への画像の記録が完了する(いわゆる、ワンパス印刷が行われる)。
【0023】
第1センサ部4は、吐出部3よりもウエブ9の搬送方向の上流側(すなわち、(+Y)側)において、ウエブ9の(−X)側に配置される。第1センサ部4は、第1光源41および第1光電エリアセンサ42を備える。第1光源41および第1光電エリアセンサ42は、ウエブ9を挟んで上下に対向して配置される。本実施の形態では、第1光源41はウエブ9の(+Z)側に配置され、第1光電エリアセンサ42はウエブ9の(−Z)側に配置される。
【0024】
第1光電エリアセンサ42では、図2に示すように、受光面421の(−X)側の端部は、(−X)側の側部エッジ91よりも(−X)側に位置し、受光面421の(+X)側の端部は、(−X)側の穴92の(+X)側の端部よりも(+X)側に位置する。すなわち、受光面421は、ウエブ9の幅方向であるX方向において、ウエブ9の(−X)側の側部エッジ91、および、(−X)側の複数の穴92が通過する範囲に亘って存在する。第1光電エリアセンサ42の受光面421のY方向の幅は、好ましくは各穴92のY方向の長さ(すなわち、穴92の直径)以下であり、より好ましくは穴92のY方向の長さの1/2以下である。図2では図示を省略しているが、第1光源41も、ウエブ9の幅方向であるX方向において、ウエブ9の側部エッジ91および複数の穴92が通過する範囲に亘って存在する。
【0025】
図1に示すように、蛇行補正部5は、ウエブ9の搬送方向において第1センサ部4と吐出部3との間に配置される。蛇行補正部5は、X方向に長い円柱状のローラ51を備える。蛇行補正部5は、図2に示すように、ローラ51をZ方向を向く軸53(すなわち、ウエブ9の主面に垂直な軸)を中心として回転する回転機構52をさらに備える。ローラ51は、搬送機構2の複数のローラ21(図1参照)の間に配置され、図示省略のモータにより、搬送機構2の巻取部23と同期して回転する。
【0026】
蛇行補正部5では、回転機構52によりローラ51が所定の角度だけ回転することにより、ローラ51の上部に接するウエブ9の一部が、軸53を中心として僅かに回転し、ウエブ9の蛇行が補正される。ローラ51が平面視において(すなわち、(+Z)側から見て)時計回りに回転すると、ローラ51上のウエブ9は、搬送方向を向いて右側である(+X)側へと変位し、ローラ51が反時計回りに回転すると、ウエブ9は(−X)側へと変位する。
【0027】
図1に示すように、第2センサ部6は、蛇行補正部5よりもウエブ9の搬送方向の下流側(すなわち、(−Y)側)において、ウエブ9の(−X)側に配置される。第2センサ部6は、第2光源61および第2光電エリアセンサ62を備える。第2光源61および第2光電エリアセンサ62は、ウエブ9を挟んで上下に対向して配置される。本実施の形態では、第2光源61はウエブ9の(+Z)側に配置され、第2光電エリアセンサ62はウエブ9の(−Z)側に配置される。
【0028】
第2光電エリアセンサ62では、図2に示すように、受光面621の(−X)側の端部は、(−X)側の側部エッジ91よりも(−X)側に位置し、受光面621の(+X)側の端部は、(−X)側の穴92の(+X)側の端部よりも(+X)側に位置する。すなわち、受光面621は、ウエブ9の幅方向であるX方向において、ウエブ9の(−X)側の複数の穴92が通過する範囲に亘って存在する(第2光源61においても同様)。第2光電エリアセンサ62の受光面621のY方向の幅は、第1光電エリアセンサ42と同様に、好ましくは各穴92のY方向の長さ以下であり、より好ましくは穴92のY方向の長さの1/2以下である。
【0029】
次に、画像記録装置1におけるウエブ9の蛇行の検出について説明する。図5は、ウエブ9の蛇行検出の流れを示す図である。画像記録装置1では、まず、搬送機構2によりウエブ9を搬送しつつ、第1センサ部4の第1光電エリアセンサ42からの受光光量を示す出力(以下、「光量出力」という。)の時系列が、蛇行補正部5の蛇行検出部72(図3参照)により取得される(ステップS11)。図6は、第1光電エリアセンサ42の光量出力の時系列81の一部を示す図である。図6では、予め定められた基準出力を二点鎖線80にて示す(図7においても同様)。基準出力とは、ウエブ9が蛇行することなく、X方向の所定の位置(以下、「基準位置」という。)にて搬送される際に、受光面421が穴92に重なっていない状態の第1光電エリアセンサ42からの光量出力である。
【0030】
ウエブ9が、基準位置から(−X)側に蛇行すると、第1光電エリアセンサ42の受光面421において、ウエブ9に覆われる面積が増加し、第1光電エリアセンサ42の光量出力は基準出力よりも小さくなる。ウエブ9が基準位置から(+X)側に蛇行すると、第1光電エリアセンサ42の受光面421においてウエブ9に覆われる面積が減少し、第1光電エリアセンサ42の光量出力は基準出力よりも大きくなる。光量出力と基準出力との差は、ウエブ9の基準位置からのX方向へのずれ量に比例する。また、第1光電エリアセンサ42の受光面421が穴92に重なると、第1光電エリアセンサ42の光量出力は基準出力よりもかなり大きくなる。
【0031】
蛇行検出部72では、中心位置検出部73(図3参照)により、図6に示す第1光電エリアセンサ42の光量出力の時系列81において、光量出力が増大する方向へと突出する一の範囲82(以下、「突出範囲82」という。)が抽出される。突出範囲82は、第1光電エリアセンサ42の受光面421が、一の穴92と重なっている時間帯に対応する。突出範囲82の開始位置は、例えば、光量出力の時系列81において、単位時間当たりの光量出力の変化量が所定の正の閾値よりも大きくなる点として抽出される。突出範囲82の終了位置は、例えば、突出範囲82の開始位置から光量出力が増大した後に減少し、単位時間当たりの光量出力の変化量が所定の負の閾値よりも大きくなる点として抽出される。突出範囲82が抽出されると、突出範囲82のピーク位置83が求められ、ピーク位置83に基づいて、突出範囲82に対応する一の穴92の搬送方向における中心位置が求められる(ステップS12)。突出範囲82のピーク位置83は、突出範囲82において光量出力が最大値を取る位置として求められる。ピーク位置83は、突出範囲82の中心位置として求められてもよい。
【0032】
続いて、補正対象範囲抽出部74により、光量出力の時系列81において、複数の穴92を通過した光が第1光電エリアセンサ42の受光面421に入射する複数の範囲が、複数の補正対象範囲84として抽出される(ステップS13)。補正対象範囲84の抽出は、ステップS12にて求められた突出範囲82のピーク位置83、ウエブ9の搬送速度をV、穴92の搬送方向の長さをL、第1光電エリアセンサ42の受光面421の搬送方向の幅をBi、および、複数の穴92の搬送方向のピッチPに基づいて行われる。
【0033】
具体的には、突出範囲82のピーク位置83を始点として、ピークピッチPc1(=P/V)ずつ離れた位置が、複数の補正対象範囲84の中心位置として求められる。また、各補正対象範囲84の幅t1は、t1=(L+2Bi)/Vとして求められる。これにより、複数の補正対象範囲84の位置が求められる。以下の説明では、図6において複数の補正対象範囲84と交互に並ぶ複数の範囲をそれぞれ「補正不要範囲85」という。各補正不要範囲85の幅t2は、t2=P/V−t1として求められる。
【0034】
次に、センサ出力補正部75により、各補正対象範囲84における第1光電エリアセンサ42の光量出力が、各補正対象範囲84の前後に隣接する2つの補正対象範囲84と、各補正対象範囲84との間の2つの補正不要範囲85における光量出力に基づいて補正される(ステップS14)。本実施の形態では、補正対象範囲84の前後2つの補正不要範囲85において、当該補正対象範囲84に最も近い位置の光量出力が取得され、当該2つの光量出力が直線補間されることにより、補正対象範囲84の補正出力(すなわち、穴92が存在しないと仮定した場合の受光光量)が求められる。図6では、補正対象範囲84の補正出力を破線81aにて描いている。補正対象範囲84における光量出力の補正は、例えば、隣接する2つの補正不要範囲85における複数の光量出力に基づくスプライン補間により行われてもよい。
【0035】
そして、センサ出力補正部75による補正後の出力と基準出力80との差に基づいて、ウエブ9の蛇行量が算出される(ステップS15)。すなわち、補正対象範囲84に対応する位置での蛇行量は、補正対象範囲84の補正出力と基準出力との差に基づいて求められ、補正不要範囲85に対応する位置での蛇行量は、補正不要範囲85の光量出力と基準出力との差に基づいて求められる。
【0036】
画像記録装置1では、第1光電エリアセンサ42からの光量出力に基づいて、ウエブ9の蛇行が検出されると、蛇行検出部72から蛇行補正部5へと、蛇行を補正するための補正量が指示される。そして、蛇行補正部5により、ウエブ9の蛇行が補正されてウエブ9が基準位置へと戻される。吐出部3では、基準位置にて搬送されるウエブ9に対してインクの吐出が行われ、ウエブ9上に位置精度良く画像が記録される。画像記録装置1では、ウエブ9を搬送しつつ、上述の蛇行検出(ステップS11〜S15)、蛇行補正および画像記録が繰り返される。
【0037】
吐出部3を通過したウエブ9は、さらに搬送方向に搬送され、ウエブ9の(−X)側の端部が、第2センサ部6を通過する。第2センサ部6の第2光電エリアセンサ62の受光光量を示す出力は、蛇行検出部72(図3参照)へと送られ、第2光電エリアセンサ62の光量出力の時系列が、補正範囲修正部77により取得される。図7は、第2光電エリアセンサ62の光量出力の時系列86の一部を示す図である。ウエブ9のX方向の位置は、蛇行補正部5により基準位置になっているため、第2光電エリアセンサ62の受光面621が穴92と重ならない位置においては、光量出力は基準出力80と等しい。
【0038】
蛇行検出部72では、補正範囲修正部77により、第2光電エリアセンサ62の光量出力の時系列86において、光量出力が増大する方向へと突出する複数の突出範囲87が抽出される。突出範囲87は、第2光電エリアセンサ62の受光面621が、穴92と重なっている時間帯に対応する。補正範囲修正部77では、光量出力が基準出力80よりも大きい範囲が突出範囲87として高速に抽出される。突出範囲87の抽出は、上述の突出範囲82の抽出と同様の手法により行われてもよい。
【0039】
続いて、各突出範囲87の中心位置がピーク位置として求められ、複数の突出範囲87のピーク位置に基づいて、複数の補正対象範囲84(図6参照)の位置の修正が行われる。具体的には、複数の突出範囲87のピーク位置に基づいて、複数の突出範囲87のピークピッチPc2が求められ、ピークピッチPc2と、ステップS13において計算により求められた複数の補正対象範囲84のピークピッチPc1とが比較される。実際には、所定の個数(例えば、101個)の突出範囲87の両端のピーク間の時間が求められ、対応するピークピッチPc1の倍数(100倍)と比較される。
【0040】
例えば、ピークピッチPc1が、実際のピークピッチPc2よりも大きい場合、当該誤差の累積により、突出範囲82から離れた補正対象範囲84の位置は、実際に穴92を通過した光が第1光電エリアセンサ42の受光面421に入射する範囲よりも後側にずれてしまう。そこで、ピークピッチPc2がピークピッチPc1と異なる場合は、ステップS13における複数の補正対象範囲84の中心位置の算出と同様の手法により、突出範囲82のピーク位置83からピークピッチPc2ずつ離れた位置が、複数の補正対象範囲84の中心位置として求められる。補正範囲修正部77により求められた複数の補正対象範囲84の新たな位置(すなわち、修正後の補正対象範囲84の位置)は、補正対象範囲抽出部74に送られ、ステップS14において、位置が修正された補正対象範囲84における第1光電エリアセンサ42の光量出力が、センサ出力補正部75により補正される。
【0041】
上述の補正範囲修正部77による補正対象範囲84の位置の修正では、突出範囲87のピーク位置に代えて、例えば、突出範囲87の開始位置または終了位置が用いられてもよい。換言すれば、補正範囲修正部77では、複数の突出範囲87の位置に基づいて、複数の補正対象範囲84の位置の修正が行われる。
【0042】
以上に説明したように、画像記録装置1では、第1光電エリアセンサ42の光量出力の時系列81において、ウエブ9の複数の穴92に対応する複数の補正対象範囲84が抽出され、各補正対象範囲84の光量出力が隣接する補正不要範囲85の光量出力に基づいて補正される。そして、補正後の出力と基準出力との差に基づいてウエブ9の蛇行量が算出される。これにより、ウエブ9の側部に穴92が存在する部位においても、ウエブ9の蛇行量を精度良く算出することができる。その結果、ウエブ9の蛇行を、長手方向の全範囲に亘って精度良く検出することができる。また、蛇行補正部5により、ウエブ9の蛇行を精度良く補正することができ、ウエブ9に対して位置精度良く画像を記録することができる。
【0043】
蛇行検出部72では、補正範囲修正部77により、第2光電エリアセンサ62からの出力に基づいて、複数の補正対象範囲84の位置が修正される。これにより、エンコーダ29の測定誤差等に起因する補正対象範囲84の位置検出の精度低下を防止し、より高精度なウエブ9の蛇行検出を行うことができる。
【0044】
画像記録装置1では、受光面421の搬送方向の幅が、穴92の搬送方向の長さよりも長い場合であっても、ウエブ9の蛇行を精度良く検出および補正することはできるが、ステップS12において突出範囲の82のピーク位置83を求める際に、煩雑な演算が必要となる。そこで、上述のように、受光面421の搬送方向の幅を、穴92の搬送方向の長さ以下とすることにより、突出範囲82のピーク位置83が容易に求められる。また、受光面421の搬送方向の幅を、穴92の搬送方向の長さの1/2以下とした場合は、突出範囲82のピーク位置83をより容易に求めることができる。
【0045】
ステップS12では、第1光電エリアセンサ42による単位時間当たりの光量測定回数が多い方が、突出範囲82の抽出、および、ピーク位置83の算出の精度が向上し、突出範囲82に対応する1つの穴92の中心位置を高精度に求めることができる。したがって、ステップS12は、ウエブ9の搬送速度が比較的小さく、第1光電エリアセンサ42による単位時間当たりの光量測定回数を多くすることができるウエブ9の搬送開始直後に行われることが好ましい。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0047】
例えば、ウエブ9の蛇行が十分に高精度に検出できるのであれば、第2センサ部6および補正範囲修正部77は省略されてもよい。また、蛇行補正部5によるウエブ9の蛇行補正を行う代わりに、蛇行検出部72から記録制御部71へとウエブ9の蛇行量が送られ、記録制御部71から吐出部3へと送られる吐出信号が、蛇行量に基づいて補正されてもよい。この場合も、ウエブ9に対して位置精度良く画像が記録される。
【0048】
画像記録装置1では、ウエブ9が吐出部3の下方を1回通過するのみでウエブ9への画像の印刷が完了するワンパス印刷が行われるが、他の方法により画像の記録が行われてもよい。例えば、ウエブ9の長手方向に配列された複数の吐出口を有する吐出部を、ウエブ9の幅方向に移動する機構が設けられ、ウエブ9の上方にて吐出部がウエブ9を1回横切る毎に、ウエブ9が所定距離だけ長手方向に移動することを繰り返すことにより、ウエブ9への画像の記録が行われてもよい。
【0049】
画像記録装置1では、例えば、プラスチックにて形成された不透明または半透明の長尺シート状のウエブに対する画像の記録が行われてもよい。また、吐出部3からインク以外の流動性材料の微小液滴が吐出され、当該流動性材料により対象物上に画像が記録されてもよい。例えば、流動性材料として金属粒子を含むペーストが選択され、ペーストの微小液滴を長尺シート状のフレキシブル基板であるウエブ上に吐出することにより、ウエブ上に配線パターンが画像として記録されてもよい。画像記録装置1には、吐出部3以外の様々な構造の画像記録部が設けられてよい。例えば、電子写真方式にて表面上に保持したトナー画像をウエブに転写する転写機構が、画像記録部として設けられてもよい。
【0050】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。
【符号の説明】
【0051】
1 画像記録装置
2 搬送機構
3 吐出部
5 蛇行補正部
9 ウエブ
41 第1光源
42 第1光電エリアセンサ
53 軸
61 第2光源
62 第2光電エリアセンサ
72 蛇行検出部
73 中心位置検出部
74 補正対象範囲抽出部
75 センサ出力補正部
76 蛇行量取得部
77 補正範囲修正部
80 基準出力
81 時系列
82 突出範囲
83 ピーク位置
84 補正対象範囲
85 補正不要範囲
86 時系列
87 突出範囲
91 側部エッジ
92 穴
421 受光面
621 受光面
S11〜S15 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺シート状のウエブ上に画像を記録する画像記録装置であって、
前記ウエブを、長手方向に搬送する搬送機構と、
前記ウエブの搬送に同期して前記ウエブ上に画像を記録する画像記録部と、
前記画像記録部よりも前記ウエブの搬送方向の上流側において、前記ウエブを挟んで対向して配置される光源および光電エリアセンサと、
前記光電エリアセンサからの出力に基づいて前記ウエブの蛇行を検出する蛇行検出部と、
を備え、
前記ウエブが、側部エッジに沿って一定の配列ピッチにて配列された複数の穴を有し、
前記光電エリアセンサの受光面が、前記ウエブの幅方向において、前記側部エッジおよび前記複数の穴が通過する範囲に亘って存在し、
前記蛇行検出部が、
前記光電エリアセンサの受光光量を示す出力の時系列において、出力が増大する方向へと突出する一の範囲を抽出し、前記一の範囲のピーク位置を求め、前記ピーク位置に基づいて一の穴の前記搬送方向における中心位置を求める中心位置検出部と、
前記ウエブの搬送速度、各穴の前記搬送方向の長さ、前記配列ピッチ、および、前記光電エリアセンサの前記受光面の前記搬送方向の幅に基づいて、前記出力の時系列において、前記複数の穴を通過した光が前記光電エリアセンサに入射する複数の範囲を、複数の補正対象範囲として抽出する補正対象範囲抽出部と、
各補正対象範囲における前記光電エリアセンサの出力を、前記各補正対象範囲の前後に隣接する2つの補正対象範囲と前記各補正対象範囲との間の2つの補正不要範囲における出力に基づいて補正するセンサ出力補正部と、
前記センサ出力補正部による補正後の出力と予め定められた基準出力との差に基づいて前記ウエブの蛇行量を算出する蛇行量取得部と、
を備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像記録装置であって、
前記搬送方向において前記光電エリアセンサと前記画像記録部との間に配置され、前記ウエブの一部をその主面に垂直な軸を中心として回転させることにより、前記ウエブの蛇行を補正する蛇行補正部をさらに備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像記録装置であって、
前記蛇行補正部よりも前記搬送方向の下流側において、前記ウエブを挟んで対向して配置される他の光源および他の光電エリアセンサと、
前記他の光電エリアセンサからの出力に基づいて、前記複数の補正対象範囲の位置を修正する補正範囲修正部と、
をさらに備え、
前記他の光電エリアセンサの受光面が、前記幅方向において、前記複数の穴が通過する範囲に亘って存在し、
前記補正範囲修正部が、前記他の光電エリアセンサの受光光量を示す出力の時系列において、出力が増大する方向へと突出する複数の範囲を抽出し、前記複数の範囲の位置に基づいて、前記複数の補正対象範囲の位置を修正することを特徴とする画像記録装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像記録装置であって、
前記光電エリアセンサの前記受光面の前記搬送方向の幅が、前記各穴の前記搬送方向の長さ以下であることを特徴とする画像記録装置。
【請求項5】
長尺シート状のウエブを、長手方向に搬送しつつ、前記ウエブの搬送に同期して画像記録部により前記ウエブ上に画像を記録する画像記録方法であって、
前記ウエブが、側部エッジに沿って一定の配列ピッチにて配列された複数の穴を有し、
前記画像記録部よりも前記ウエブの搬送方向の上流側において、前記ウエブを挟んで光源および光電エリアセンサが対向して配置され、前記光電エリアセンサの受光面が、前記ウエブの幅方向において、前記側部エッジおよび前記複数の穴が通過する範囲に亘って存在し、
前記画像記録方法が、
a)前記ウエブを搬送しつつ前記光電エリアセンサの受光光量を示す出力の時系列を取得する工程と、
b)前記出力の時系列において、出力が増大する方向へと突出する一の範囲を抽出し、前記一の範囲のピーク位置を求め、前記ピーク位置に基づいて一の穴の前記搬送方向における中心位置を求める工程と、
c)前記ウエブの搬送速度、各穴の前記搬送方向の長さ、前記配列ピッチ、および、前記光電エリアセンサの前記受光面の前記搬送方向の幅に基づいて、前記出力の時系列において、前記複数の穴を通過した光が前記光電エリアセンサに入射する複数の範囲を、複数の補正対象範囲として抽出する工程と、
d)各補正対象範囲における前記光電エリアセンサの出力を、前記各補正対象範囲の前後に隣接する2つの補正対象範囲と前記各補正対象範囲との間の2つの補正不要範囲における出力に基づいて補正する工程と、
e)前記d)工程における補正後の出力と予め定められた基準出力との差に基づいて前記ウエブの蛇行量を算出する工程と、
を備えることを特徴とする画像記録方法。
【請求項6】
請求項5に記載の画像記録方法であって、
前記b)工程が、前記ウエブの搬送開始直後に行われることを特徴とする画像記録方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−158412(P2012−158412A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17822(P2011−17822)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】