説明

画像記録装置

【課題】複数の記録ヘッド、又は1つの長尺な記録ヘッドからなるラインヘッドを少なくとも備える記録モジュールを交換する際、記録モジュールを画像記録装置の内部から外部へ、又は外部から内部へと移動可能に設けることで、記録ヘッドを交換するための作業スペースを確保し、交換作業を容易に行える画像記録装置を提供する。
【解決手段】記録媒体を搬送する搬送機構と、搬送機構に対向配置し、インク吐出面からインクを吐出し、記録媒体に画像記録を行う少なくとも1つの記録ヘッドと、記録ヘッドを保持する保持部材と、保持部材を画像記録を行う収納位置から画像記録を行わない非収納位置に記録媒体の搬送方向と直交する記録媒体の幅方向に移動可能に取り付ける取り付け部材と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドの交換時、移動可能な記録モジュールを設ける画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば記録紙、OHP用紙といった記録媒体の全幅にわたって記録ヘッドを走査させ、記録ヘッドに設けられたノズル面からインクを吐出し記録媒体に画像を記録する画像記録装置が知られている。
【0003】
これに対して、近年、記録媒体の全幅に対応したノズルを有する長尺の記録ヘッド(ラインヘッド)を設けた画像記録装置が開示されている。長尺のラインヘッドを設けた画像記録装置は、記録ヘッドを移動させることなく、記録媒体を搬送させて、記録媒体に画像を記録する。よって、高速に画像を記録することが可能となっている。
【0004】
ところで、記録ヘッドは、大気中のダストといった異物がノズルから記録ヘッド内部に侵入したり、ノズルに付着すると、ノズル詰まりを引き起こし、インク吐出の不良を引き起こしてしまう。これにより記録媒体へのインクの着弾位置が損なわれ、結果として記録媒体に記録された画像が乱れてしまう。
【0005】
このような問題を解決するために画像記録装置には、記録ヘッドのノズルからインクを吸引、もしくは記録ヘッドを加圧することでインクを吐出してクリーニングするクリーニング機構が多く設けられている。クリーニング機構によってもインク吐出の不良が改善されない場合や、また、クリーニング機構を設けない場合、記録ヘッドを交換することになる。
【0006】
この際に、記録ヘッド交換の作業性が重要となってくる。
【0007】
特に記録媒体幅の全域にわたりノズルが形成されている長尺のラインヘッドの場合、ラインヘッドを交換する作業スペースの確保が難しく、ラインヘッド交換時のメンテナンス性を高める必要がある。
【0008】
例えば、特許文献1には、本体ユニットとラインヘッドユニットとからなるインクジェット式記録装置が開示されている。
本体ユニットは、直方体の一部が切りかかれているL字形状となっている。このL字に切り欠いた部分には、ラインヘッドユニットが装着される。
【0009】
ラインヘッドユニットを本体ユニットに装着する際は、ラインヘッドユニットをスライダーに係合させ、ラインヘッドユニットを本体ユニットの側面に当接するまでスライドさせる。このときに本体ユニットとラインヘッドユニットのインク経路が結合される。その後、ラインヘッドユニットを本体ユニットのL字切り欠き部の上面に当接するまで上方向にスライドさせる。このときに、本体ユニットとラインヘッドユニットの電気的接続が行われる。
【0010】
ラインヘッドユニットは、複数の記録ヘッドを並設することで長尺のラインヘッドを形成している。また、ラインヘッドは、複数の記録ヘッドと記録ヘッドの制御基板への接続、及び記録ヘッドヘインクを供給する分配タンクヘの接続を集中させて行うことで複数の記録ヘッドをユニット化させることを実現している。これにより開示されたインクジェット記録装置は、複雑な配線、配管の接続を行わずに、インク経路の接続、電気的な接続が行われるため、ラインヘッドユニットの本体ユニットヘの組み付けが容易になる。
【0011】
また、例えば特許文献2には、ラインヘッド及びインクジェット記録装置が開示されている。この装置は、複数の記録ヘッドを互い違いに配置することでラインヘッドを形成している。複数の記録ヘッドは一つの支持基板に各々位置決め固定され、各記録ヘッドはフレキシブルケーブルによって制御基板と接続されている。よって、複数の記録ヘッドが各々支持基板に位置決めされ、且つ各々が制御基板にフレキシブルケーブルにより接続されているため、ラインヘッド全体を交換する必要がなく、動作不良を起こした記録ヘッドのみを簡単に交換することが可能となる。
【特許文献1】特開2005−074763号公報
【特許文献2】特開2004−358874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前述した特許文献1,2に開示されている記録装置は、記録ヘッドの交換時の作業性をいずれも考慮しているものの、ラインヘッドが備える長尺という特性を考慮していない。
【0013】
記録媒体が水平方向に搬送される記録装置において、ラインヘッドを交換する場合、記録装置の上方からラインヘッドを交換することになる。しかしながら、記録媒体の全幅以上に奥行きを有する画像記録装置の上方から、同じく、記録媒体の全幅に対応した長さを有するラインヘッドを交換する際に、作業位置から離れた位置での作業性は、悪化してしまう。
【0014】
また、特許文献1に開示されたインクジェット式記録装置においては、ラインヘッドは、複数の記録ヘッドと分配タンクとでユニット化しているために相当な重量となる。このように重量のあるラインヘッドは、奥行きがある画像記録装置の上方から装置内部に配置されている。よってラインヘッドが交換される際には、作業位置から離れた位置での作業性がどうしても悪化してしまう。
【0015】
また、特許文献2の開示されているラインヘッド及びインクジェット記録装置は、複数の記録ヘッドを互い違いに配設することで、ラインヘッドを形成し、記録ヘッド単体で交換可能な構成である。しかし、作業位置から離れた記録ヘッドの交換の作業性が悪いという同じ問題を抱えている。
【0016】
そこで本発明は、複数の記録ヘッド、又は1つの長尺な記録ヘッドからなるラインヘッドを少なくとも備える記録モジュールを交換する際、記録モジュールを画像記録装置の内部から外部へ、又は外部から内部へと移動可能に設けることで、記録ヘッドを交換するための作業スペースを確保し、交換作業を容易に行える画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の画像記録装置は、記録媒体を搬送する搬送機構と、搬送機構に対向配置し、インク吐出面からインクを吐出し、記録媒体に画像記録を行う少なくとも1つの記録ヘッドと、記記録ヘッドを保持する保持部材と、保持部材を画像記録を行う収納位置から画像記録を行わない非収納位置に記録媒体の搬送方向と直交する記録媒体の幅方向に移動可能に取り付ける取り付け部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、複数の記録ヘッド、又は1つの長尺な記録ヘッドからなるラインヘッドを少なくとも備える記録モジュールを交換する際、記録モジュールを画像記録装置の内部から外部へ、又は外部から内部へと移動可能に設けることで、記録ヘッドを交換するための作業スペースを確保し、交換作業を容易に行える画像記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
尚、以下の説明においては、記録媒体の搬送方向をX軸方向又は副走査方向とし、この搬送方向に直交する方向をY軸方向又は主走査方向又は記録媒体の幅方向とし、さらに、XY平面に直交する方向をZ軸方向又は上下方向と定義する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る画像記録装置全体の配置図を示す図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る取り付け部材を除く記録モジュールを示す斜視図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係る記録モジュールを示す斜視図である。図4は、本発明の第1の実施形態に係る記録モジュールのコネクタ周辺の拡大図を示す。図5は、本発明の第1の実施形態に係る記録モジュールの下面図を示す。図6は、本発明の第1の実施形態に係る画像記録時における記録モジュール周辺の上方からの概略斜視図を示す。図7は、図6における正面図を示す。図8は、本発明の第1の実施形態に係る記録モジュールの位置決め部及びインク供給部上面周辺の斜視図である。図9は、保持部材が取り付け部材から引き出された状態における記録モジュール周辺の概略斜視図を示す。図10は、図9における下面図を示す。
【0021】
図1において、画像記録装置11は、給送系24、搬送機構12、記録モジュール1及び収納系28を備えている。
【0022】
給送系24には、給送トレイ25と、給送トレイ25上部に設けられたピックアップローラ26と、ピックアップローラ26の下流に設けられたレジストローラ対27が設けられている。
給送トレイ25には、記録媒体14が複数収納される。ピックアップローラ26は、給送トレイ25から記録媒体14を下流に1枚ずつピックアップ搬送する。レジストローラ対27は、ピックアップ搬送された記録媒体14を一旦当接させて斜行を矯正する。その後、レジストローラ対27は記録媒体14を挟持して搬送機構12方向へ搬送する。
【0023】
搬送機構12には、記録媒体14の搬送方向の上流側より下流側へ所定の距離に離間してそれぞれを略平行に配設する3つのプラテンローラ15,16及び17が設けられている。搬送機構12は、図示しない複数の孔を形成した搬送部材(無端ベルト)13を回動可能に架設した、いわゆるベルト搬送機構である。この搬送機構12は、昇降機構(図示せず)によってZ軸方向に昇降する。プラテンローラ15の回転軸には、記録媒体14の搬送距離情報を生成するロータリエンコーダ18が接続され、プラテンローラ16の回転軸には、駆動モータ19が接続されている。また、プラテンローラ15の上方には当接ローラ22が、プラテンローラ16の上方には当接ローラ23が、無端ベルト13を介した対向位置にそれぞれ設けられている。当接ローラ22,23は、記録媒体14の浮き上がりを防止している。記録媒体14の搬送方向において、無端ベルト13の内側のプラテンローラ15とプラテンローラ16との間には、無数の穴を開口した吸引プラテン20が設けられている。この吸引プラテン20の下方には、吸引ファン21が設けられている。この吸引ファン21は、搬送される記録媒体14を吸引プラテン20の無数の穴を介して無端ベルト13上に吸着させる。
【0024】
記録モジュール1は、搬送方向と直交する方向(Y軸方向)に、記録媒体14の幅以上に亘って、且つ搬送機構12の無端ベルト13(記録媒体14の搬送面)に対向して設けられている。記録モジュール1には、インク供給部2、記録ヘッド3、第1の電気接続部であるヘッド駆動基板8及びインク受容部6を保持する保持部材4と、保持部材4の連結部4Aを介して保持部材4を取り付ける取り付け部材5と、で構成されている。同図では、記録媒体の搬送方向の上流側から下流側に向けてそれぞれK(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)のインクを吐出する4つの記録ヘッド3が所定の間隔で設けられている。搬送機構12により搬送される記録媒体14に、記録ヘッド3のインク吐出面9に形成された図示しないノズル列よりインクが吐出され、画像を記録している。
【0025】
搬送機構12の下流には、収納系28が設けられている。この収納系28には、画像記録済の記録媒体14を搬送するための収納ローラ対29と、収納ローラ対29によって搬送された記録媒体14を収納する収納トレイ30が設けられている。
【0026】
ここで、本発明の第1の実施形態における記録モジュール1について図2乃至図5を参照し、さらに詳細に説明する。
【0027】
記録モジュール1には、記録媒体14上に所定色のインクを吐出して画像記録する記録ヘッド3と、記録ヘッド3に所定色のインクを供給するインク供給部2と、記録ヘッド3から滴るインクを受容する回動自在なインク受容部6と、記録ヘッド3との電気的接続を行う第1の電気接続部であるヘッド駆動基板8と、インク供給部2と記録ヘッド3とインク受容部6とヘッド駆動基板8と、をそれぞれ保持する保持部材4と、保持部材4を移動可能に取り付ける取り付け部材5と、により構成されている。
【0028】
まず、保持部材4によって保持される記録ヘッド3と、ヘッド駆動基板8と、インク供給部2と、インク受容部6とについて説明する。
【0029】
記録ヘッド3は、図5に示すように、インク吐出面9を有している。インク吐出面9には、図示しない複数のノズルによりノズル列が形成され、このノズル列よりインクが吐出される。インクが吐出される際、記録ヘッド3は、複数のノズルに対応する各インク室を各ピエゾ素子(PZT)で駆動させてインクを吐出させる構成を有する。尚、本第1の実施形態において記録ヘッド3は、記録媒体14の搬送方向と直交する方向(Y軸方向)に、記録媒体14の記録幅以上にわたってインク吐出面9のノズル列を形成する1個の長尺な記録ヘッドである。
【0030】
ヘッド駆動基板8は、図2乃至図3に示すように、記録ヘッド3に近接して配設されている。ヘッド駆動基板8と記録ヘッド3との接続は、記録ヘッド3に設けられたフレキシブル基板33をヘッド駆動基板8上に配置された図示しないコネクタに接続することにより接続されている。記録ヘッド3を交換する際には、フレキシブル基板33をコネクタから取り外すことによって交換を行う。尚、記録ヘッド3とヘッド駆動基板8との間の電気的接続は、必ずしもフレキシブル基板33とコネクタを用いた構造である必要はなく、例えば、それぞれに突出した接点を設けて、装着時に接触による接続としてもよい。
【0031】
また、ヘッド駆動基板8には、Y(−)側の端面にコネクタ8Aを有している。コネクタ8Aは、後述する取り付け部材5に装着された第2の電気接続部46と接続することで、装置本体側からヘッド駆動基板8及びヘッド駆動基板8を介して記録ヘッド3に信号や電源の供給を行う。またコネクタ8Aには、接続する第2の電気接続部46に対して、接続を補助するガイドピン47が設けられている。
【0032】
インク供給部2は、図2乃至図3に示すように、記録ヘッド3に近接して配設されている。インク供給部2には、供給チューブ31と、供給チューブ31先端に設けられた記録ヘッド3に接続される封止ジョイント32が設けられ、所定色のインクを記録ヘッド3へと供給する。封止ジョイント32は、封止ジョイント32が記録ヘッド3に接続されていない時に図示しないインクの流動を封止する機構を有している。
【0033】
また、インク供給部2の上面には、インク供給口40と、大気開放口41とが設けられている。
【0034】
インク受容部6は、図2乃至図3に示すように、長手方向の両側面に回動基準穴54を有している。この回動基準穴54は、保持部材4に設けられた回動基準ピン55に遊嵌される。回動基準ピン55には、トーションバネ51が設けられている。このトーションバネ51は、図2に示すようにインク受容部6を記録ヘッド3のインク吐出面9に対向するように付勢している。このようにインク受容部6は、保持部材4に回動可能に一体構成されている。
【0035】
また、インク受容部6には、インク吸収体52が設けられている。このインク吸収体52は、例えば不織布といった、繊維がでない材質のものを使用している。インク吸収体52は、記録ヘッド3のインク吐出面9に対向する際、インク吐出面9とは当接せずに離間した位置関係となり、インク吐出面9から滴るインクを吸収する。
【0036】
尚、本第1の実施形態では、インクの付着等を考慮し、保持部材4は記録ヘッド3を挟んでヘッド駆動基板8とインク供給部2とを対面して保持しているが、これに限らず、例えば、X軸方向に沿って、記録ヘッド3、インク供給部2、ヘッド駆動基板8、の順などに保持してもよい。
次に、保持部材4と取り付け部材5について説明する。
【0037】
保持部材4には、図2乃至図3に示すように、側面の一部に形成された連結部4Aを有し、保持部材4は、この連結部4Aによって取り付け部材5と連結されている。連結部4Aは、例えばガイドレール等で構成されており、保持部材4は取り付け部材5に対して、記録媒体の搬送方向と直交する記録媒体の幅方向、すなわちY軸方向に移動可能となっている。
【0038】
取り付け部材5には、図3に示すように、保持部材4をX軸方向及びY軸方向に位置決めする円筒ピンである位置決め部材34及び位置決め部材35が配置されている。位置決め部材34及び位置決め部材35は、取り付け部材5に嵌入され上下方向(Z軸方向)に摺動可能に保持されている。
【0039】
保持部材4の上面の2箇所には、位置決め穴36及び位置決め穴37が設けられている。位置決め穴36及び位置決め穴37には、それぞれ前述した位置決め部材34及び位置決め部材35が嵌合する。嵌合によって取り付け部材5に対する保持部材4のX軸方向及びY軸方向の位置決めがなされる。
【0040】
また、取り付け部材5には、保持部材4をZ軸方向に押圧し、連結部4Aのガタ取りを行い、位置決めする板バネからなる押圧部材42及び押圧部材43が設けられている。押圧部材42及び押圧部材43は、保持部材4の上面と取り付け部材5の下面との間に挟持される。また、押圧部材42及び押圧部材43には、位置決め部材34及び位置決め部材35が嵌通する嵌通穴が設けられている。
【0041】
また、取り付け部材5には、図4に示すように、ヘッド駆動基板8のコネクタ8Aに対向する位置に、第2の電気接続部46が多少移動可能に設けられている。第2の電気接続部46には、前述したコネクタ8Aのガイドピン47を嵌入するためのガイド穴48が設けられている。ガイド穴48は、ガイドピン47をガイドする形状である。ガイドピン47が第2の電気接続部46のガイド穴48に案内されることで、コネクタ8Aと第2の電気接続部46の位置決めがなされ、コネクタ8Aと第2の電気接続部46は、電気的接続がなされる。
【0042】
また、取り付け部材5には、図示しないインクタンクからインク供給部2へインクを供給するためのインク供給ポート38と、他端が大気に開放されている大気開放ポート39とが嵌入されている。インク供給ポート38及び大気開放ポート39は、取り付け部材5に上下方向(Z軸方向)に摺動可能に嵌入されている。また、インク供給ポート38は、インク供給口40と対向する位置(上方)に配置され、大気開放ポート39は大気開放口41と対向する位置(上方)に配置されている。
尚、位置決め部材34、インク供給ポート38及び大気開放ポート39は、図示しない移動機構により取り付け部材5に対して上下方向に移動する支持部材53により固定させている。
【0043】
また、取り付け部材5には、図5に示すようにインク受容部6の回動を促す開閉ガイド44が設けられている。この開閉ガイド44は、略台形形状となっており、インク受容部6は、開閉ガイド44の斜面44Aを摺動することにより、記録ヘッド3のインク吐出面9と対向、または退避する位置へ回動する。
【0044】
このように前述した構成において、記録ヘッド3の交換の際の一連の動作を図6乃至図10を参照し、説明する。
【0045】
図6は、画像記録時における記録モジュール周辺の上方からの概略斜視図である。また、図7は、図6の正面図である。
【0046】
記録モジュール1の取り付け部材5は、装置フレーム10に位置決めされて固定されている。画像記録時において、図6に示すように保持部材4は取り付け部材5に対して最もY(−)側に押し込まれた位置に収納されている(収納位置)。この時、図7に示すように、インク受容部6は開閉ガイド44により記録ヘッド3のインク吐出面9から退避した位置にある。また、前述した位置決め部材34及び位置決め部材35によって、保持部材4が取り付け部材5に対してX軸及びY軸方向の位置決めがなされ、押圧部材42及び押圧部材43によって、保持部材4が取り付け部材5に対してZ軸方向に押圧されているので位置決めがなされる。このように位置決め部材34,35及び押圧部材42,43により記録モジュール1の姿勢を矯正でき、適正に画像記録を行うことができる。
【0047】
次に、交換作業者からの指令によって、ヘッド交換モードになると、図示しない制御部は、図示しない昇降機構を駆動させ搬送機構12を降下させる。その後、図8に示すように、図示しない駆動機構によって、支持部材53に固定された位置決め部材34、インク供給ポート38、大気開放ポート39が上昇し、大気開放ポート39、インク供給ポート38、位置決め部材34の順で各々、大気開放口41、インク供給口40、位置決め穴36との接続が解除される。尚、インク供給ポート38には、図示しないがインク供給口40に非接続時にインクの流動を封止する機構を有している。解除された後、自動的に画像記録装置11の電源は、OFFとなる。
【0048】
記録ヘッド3の交換作業者は、位置決め部材35を位置決め穴36から取り外し、連結部4Aを介して保持部材4をY(+)軸方向へ移動させる(引き出す)。この時、インク受容部6は、トーションバネ51によりインク吐出面9に対向するように付勢されているため、開閉ガイド44の斜面44Aを摺動しながら徐々にインク吐出面9に対向するように回動され、保持部材4をインク受容部6が開閉ガイド44と当接しない位置までさらに移動させる(引き出す)ことにより、インク受容部6はインク吐出面に対向する位置へと回動される(非収納位置)。
【0049】
これにより、記録ヘッド3からインクが滴り落ちたとしてもインク受容部6に設けられたインク吸収体52によりインクが吸収されるため、例えば搬送機構12を汚す虞がない。
【0050】
また、保持部材4をY軸方向に移動させることによりヘッド駆動基板8のコネクタ8Aと第2の電気接続部46との接続が解除される。
【0051】
次に交換作業者は、位置決め部材35を位置決め穴36に嵌合させるために挿し込む。この時の状態を図9に示す。また、図10は図9における下面図である。位置決め部材35は、保持部材4に対してストッパとして働き、引き出された保持部材4が取り付け部材5から脱落することを防止できる。
【0052】
次に、記録ヘッド3の交換作業者は、ヘッド駆動基板8のコネクタからフレキシブル基板33を外し、記録ヘッド3とインク供給部2を接続している封止ジョイント32を記録ヘッド3から取り外す。この状態で交換作業者は、記録ヘッド3を保持部材4から単体で取り外すことができ、記録ヘッド3の交換が行われる。
【0053】
新しい記録ヘッド3に交換後、記録ヘッド3を保持部材4にビス等で固定し、記録ヘッド3に設けられているフレキシブル基板33をヘッド駆動基板8に設けられている図示しないコネクタに接続し、封止ジョイント32を記録ヘッド3に接続する。また、位置決め部材35を保持部材4に設けられている位置決め穴36から取り外し、保持部材4を取り付け部材5に対し、Y(−)軸方向へ移動させる(押し込む)。保持部材4が押し込まれると、ガイドピン47が取り付け部材5の第2の電気接続部46のガイド穴48に嵌合しながら相互の位置決めが行われ、コネクタ8Aと第2の電気接続部46の電気的な接続が行われる。この際、第2の電気接続部46は、取り付け部材5に多少移動可能に取り付けられていることで、コネクタ8A及び第2の電気接続部46にストレスがかからず接続がなされる。
【0054】
また、同時に、保持部材4が押し込まれるにつれて、インク受容部6は、取り付け部材5に設けられた開閉ガイド44と当接し、開閉ガイド44の斜面44Aに沿って摺動することでインク吐出面9に対向した位置から退避位置へ徐々に回動する。保持部材4をさらに押し込み、保持部材4が収納位置となると、インク受容部6は、インク吐出面9と完全に対向しない位置へと退避される。これにより記録ヘッド3のインク吐出面9が開放され、インク吐出面9下方に、搬送機構12が対向し画像記録可能状態となる。
【0055】
次に、位置決め部材35を保持部材4に設けられた位置決め穴37に嵌合させる。その後、画像記録装置11の電源をONにすると、図示しない駆動機構によって、支持部材53を介して位置決め部材34、インク供給ポート38及び大気開放ポート39が、下降し、位置決め部材34、インク供給ポート38、大気開放ポート39の順で各々、位置決め穴36、インク供給口40及び大気開放口41との接続がなされる。
【0056】
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、記録ヘッド3の交換の際には、保持部材4を取り付け部材5に対して記録媒体の搬送方向と直交する記録媒体幅方向に移動可能に設けているため、交換作業者は十分な交換スペースを確保でき記録ヘッド3を簡単に交換することができる。
【0057】
また、記録ヘッド3の交換時には、保持部材4の移動と連動してインク受容部6が、記録ヘッド3のインク吐出面9に対向する位置に回動するため、交換の作業時に万が一にインク吐出面9からインクが滴り落ちても、インク受容部6に設けられたインク吸収体52によって吸収され、例えば装置外部や搬送機構12を汚す虞がない。
【0058】
また、記録ヘッド3の交換作業においても、位置決め部材35が位置決め穴36に嵌合されて保持部材4が位置決めされているので(ストッパとして働き)、作業中に保持部材4が移動してしまうことなく、安全に記録ヘッドの交換を行うことができる。
【0059】
また、保持部材4はヘッド駆動基板8を保持しているため、保持部材4の移動だけでヘッド駆動基板8と対向配置された第2の電気接続部46との電気的な接続/解除を容易に行うことができる。
【0060】
また、位置決め部材34及び位置決め部材35をそれぞれ位置決め穴36及び位置決め穴37に嵌合させることで保持部材4をX軸方向及びY軸方向に位置決めができ、位置決めのための構成を簡素化できる。
【0061】
また、押圧部材42及び押圧部材43によりZ軸方向に付勢されることにより、保持部材4のZ軸方向における位置決めができ、位置決めのための構成を簡素化できる。
【0062】
尚、本第1の実施形態では、インク供給部2の上面にインク供給口40を設け、当該インク供給口40の上方にインク供給ポート38が配設されているが、これに限らず、インク供給口40をインク供給部2のY(−)側の側面に設け、対向する位置にインク供給ポート38を設けてもよい。これによりヘッド駆動基板8のコネクタ8Aと第2の電気接続部46との電気接続/解除と同時にインク供給口40とインク供給ポート38との接続/解除を行うことができる。
【0063】
また、記録ヘッド3の交換作業時、位置決め部材35を位置決め穴36に嵌合させたが、これに限らず、位置決め部材35を位置決め穴36に嵌合させず、保持部材4を取り付け部材5から取り外し別の作業スペースで交換作業を行ってもよい。
【0064】
次に、本発明に係る画像記録装置の第1の実施形態における第1の変形例について図11を参照して説明する。
【0065】
本変形例は、前述した第1の実施形態に対し、インク受容部を記録ヘッドに直接設けた点が異なる。
【0066】
記録ヘッド3には、回動基準ピン57が形成されており、回動基準ピン57にインク受容部6cの回動基準穴58が遊嵌して、インク受容部6cが回動自在に設けられている。回動基準ピン57には、トーションバネ59が設けられている。インク受容部6cは、トーションバネ59により記録ヘッド3のインク吐出面に対向する位置に付勢されている。
【0067】
記録ヘッド3の交換時に交換作業者は、保持部材4を取り付け部材5から引き出す。その際、インク受容部6は、取り付け部材5に設けられた開閉ガイド44を摺動し、トーションバネ59が記録ヘッド3のインク吐出面に対向するよう付勢されているため、インク吐出面9に対向する位置に回動される。
記録ヘッド3を交換する際には、記録ヘッド3はインク受容部6cを保持した状態で、且つインク受容部6cがインク吐出面9に対向した状態で、交換がなされる。
【0068】
以上説明したように、本変形例によれば、記録ヘッド3の交換の際には、インク受容部6cと共に記録ヘッド3を交換する。インク受容部6cによって、インク吐出面9が保護されていることにより、記録ヘッド3を保持部材4に取り付ける際に、誤ってインク吐出面9を破損することを防止することができる。また、記録ヘッド3を搬送する際に、インク吐出面9に保護部材を設ける場合があるが、インク受容部6cを保護部材として兼用することが可能となる。
【0069】
次に、本発明に係る画像記録装置の第2の実施形態について図12乃至図16を参照して説明する。
なお、前述した第1の実施形態と同等の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0070】
本第2の実施形態は、前述した第1の実施形態と、記録媒体幅に満たない短尺の記録ヘッド3を記録媒体の幅以上に記録媒体の搬送方向に対して直交方向(Y軸方向)に2列で、且つ画像記録時に隙間が生じないようにインク吐出面9のノズル列を互いに重なるように配列し、ラインヘッドを構成する点と、2列に配列された記録ヘッド3において1列毎に配置したインク受容部6a,6bを配置する点と、保持部材4のZ方向を位置決めするために保持部材4の下面に3本の突き当てピン49を配置する点と、が異なっている。
【0071】
保持部材4を取り付け部材5から引き出す際、インク受容部6aは、取り付け部材5に設けられた略台形形状の開閉ガイド44の斜面44Aを摺動し、インク受容部6bは、開閉ガイド44の他方の斜面44Bを摺動することにより、互いに対向するように回動する構成である。すなわち、インク受容部6a,6bは、記録ヘッド3のインク吐出面9と対向するように回動する。
【0072】
また、保持部材4を取り付け部材5に押し込む際は、インク受容部6a,6bは開閉ガイド44のそれぞれの斜面44A,44Bを摺動し、徐々に記録ヘッド3のインク吐出面9から退避するように回動し、取り付け部材5に対して最もY(−)側に押し込まれた位置(収納位置)で、インク吐出面9から完全に退避した位置に回動される。この際、インク受容部6a,6bは、対極方向に回動される。
【0073】
保持部材4の下面に設けられる3本の突き当てピン49は、各々が保持部材4に設けられた3つの穴56に対して、Z軸方向に摺動可能に嵌合して設けられている。
【0074】
図16に示すように、突き当てピン49と保持部材4との間には、バネ50がはめられている。このバネ50は、保持部材4と、保持部材4に固定されているインク供給部2、記録ヘッド3及びインク受容部6等の自重を支える力量以上に設定されている。
【0075】
搬送機構12が図示しない昇降機構によって、上昇し、記録ヘッド3の画像記録位置に移動すると、搬送部材13の記録面には3本の突き当てピン49が突き当たる。搬送部材13と突き当てピン49が突き当たると、保持部材4と突き当てピン49の間にはめられたバネ50の反力によって保持部材4が持ち上げられて、連結部4Aのガタ取りが行われる。
【0076】
以上の本第2の実施形態においては、前述した第1の実施形態と同等の作用効果をえることができる。さらに複数の短尺な記録ヘッド3をY軸方向に2列に配列しラインヘッドを構成した場合においても、インク受容部6a,6bが対極方向に回動して退避するため、記録ヘッド3の2列間の距離を縮めることが可能となり、記録ヘッド3の列間の距離によって生じてしまう記録位置のズレを軽減することが可能となる。
【0077】
また、記録ヘッド3と搬送機構12の距離の位置決めが、保持部材4に設けられた3本の突き当てピン49によって行われるため、1色毎に記録ヘッド3と搬送機構12の距離が正確に保たれ、記録媒体14への画像記録精度を向上させることが可能となる。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態及び変形例をそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
また、上記実施形態及び変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態に係る画像記録装置全体の配置図である。
【図2】発明の第1の実施形態に係る取り付け部材を除く記録モジュールを示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る記録モジュールを示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る記録モジュールのコネクタ周辺の拡大図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る記録モジュールの下面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る記録モジュール周辺の上方からの概略斜視図である。
【図7】図6における記録モジュールの正面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る記録モジュールの位置決め部及びインク供給部上面周辺の斜視図である。
【図9】保持部材が取り付け部材から引き出された状態における記録モジュール周辺の概略斜視図である。
【図10】図9における下面図である。
【図11】本発明に係る第1の実施形態における変形例記録ヘッドを交換する際の状態を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る第2の実施形態における記録モジュール周辺の上方からの斜視図である。
【図13】本発明に係る第2の実施形態におけるインク受容部が退避している際の記録モジュール周辺の正面図である。
【図14】本発明に係る第2の実施形態における保持部材が取り付け部から引き出された状態における記録モジュールの斜視図である。
【図15】図14における記録モジュールの下面図である。
【図16】突き当てピン周辺の側面図である。
【符号の説明】
【0080】
1…記録モジュール、2…インク供給部、3…記録ヘッド、4…保持部材、4A…連結部、5…取り付け部材、6(6a,6b,6c)…インク受容部、8…ヘッド駆動基板、8A…コネクタ、9…インク吐出面、10…装置フレーム、11…画像記録装置、12…搬送機構、13…搬送部材(無端ベルト)、14…記録媒体、15,16,17…プラテンローラ、18…ロータリエンコーダ、19…駆動モータ、20…吸引プラテン、21…吸引ファン、22,23…当接ローラ、24…給送系、25…給送トレイ、26…ピックアップローラ、27…レジストローラ対、28…収納系、29…収納ローラ対、30…収納トレイ、31…供給チューブ、32…封止ジョイント、33…フレキシブル基板、34,35…位置決め部材、36,37…位置決め穴、38…インク供給ポート、39…大気開放ポート、40…インク供給口、41…大気開放口、42,43…押圧部材、44…開閉ガイド、44A,44B…斜面、46…第2の電気接続部、47…ガイドピン、48…ガイド穴、49…突き当てピン、50…バネ、51,59…トーションバネ、52…インク吸収体、53…支持部材、54,58…回動基準穴、55,57…回動基準ピン、56…穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構に対向配置し、インク吐出面からインクを吐出し、前記記録媒体に画像記録を行う少なくとも1つの記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを保持する保持部材と、
前記保持部材を前記画像記録を行う収納位置から前記画像記録を行わない非収納位置に前記記録媒体の搬送方向と直交する前記記録媒体の幅方向に移動可能に取り付ける取り付け部材と、
を備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記画像記録装置は、前記記録ヘッドから滴る前記インクを受容するインク受容部を前記保持部材に一体構成したことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記保持部材が前記非収納位置に配置される際には、前記インク受容部は、前記インク吐出面に対向し、前記保持部材が前記収納位置にある際には、前記インク受容部は、前記インク吐出面に対向する位置から退避することを特徴とする請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記インク受容部は、前記保持部材の移動に連動して、前記インク吐出面と対向、または退避することを特徴とする請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記インク受容部は、前記記録ヘッドから滴る前記インクを吸収するためのインク吸収体を有することを特徴とする請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記保持部材は、前記記録ヘッドに前記インクを供給するためのインク供給部の少なくとも一部を保持することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記インク供給部は、インク供給口を有し、当該インク供給口の鉛直方向上方に配置されたインク供給ポートを介して前記インクが供給されることを特徴とする請求項6に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記保持部材は、前記記録ヘッドとの電気的接続を行うための第1の電気接続部を保持することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記第1の電気接続部は、前記保持部材の移動により、前記取り付け部材に配置された第2の電気接続部と電気的に接続、または解除されることを特徴とする請求項8に記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−237446(P2007−237446A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59496(P2006−59496)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】