説明

画像記録装置

【課題】複数の記録ヘッドを使用した画像記録装置において、比較的小さな装備で複数ヘッドを並行して動作させることができる画像記録装置を提供する。
【解決手段】例えば、画像変換手段106は、元画像データim1を、予め格納されていたパラメータに従って画像データim3に画像変換する。そして、画像変換手段106は、この画像データim3を第1画像処理手段81に送る。また、画像変換手段106は、元画像データim2を、画像変換手段107に予め格納されていた回転パラメータに従って画像データim4に画像変換する。そして、画像変換手段106は、この画像データim4を第1画像処理手段81に送る。これにより、記録ヘッド10、20のそれぞれは、いずれか一方によって、各色成分画像の輪郭が略一致するように、対応する印刷版上に画像記録ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像データに基づいて印刷版等の画像記録材料上に画像記録を行う画像記録装置に関するもので、特に、画像記録を効率的に行う手法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷版等の画像記録材料が巻装されるドラムと、画像データに応じて発光する発光手段を備えドラムの軸方向に移動する記録ヘッドとを有するいわゆる外面円筒型の画像記録装置は周知である。この装置では、ドラムを高速で回転させ、記録ヘッドをドラム軸方向に移動させながら、発光手段を発光させることで画像記録材料上に二次元画像を形成する。
【0003】
このような外面円筒型の画像記録装置において、走査速度を向上させるためにはドラムの回転速度を向上させる、あるいは記録装置に搭載される発光手段の配列数を増やす等の改善手法があるが、その有効性には限界がある。
【0004】
上記の問題を解決するために、画像を記録する記録ヘッドを複数設け、印刷版上の複数の領域を並行走査して高速化することが考えられる。例えば特開平9−185196号に開示された画像記録装置では、複数の記録ヘッドを副走査方向に配列し、各々の記録ヘッドにより並行して画像を記録するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−185196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような複数の記録ヘッドを使用した画像記録装置は、従来ある回路構成を、その記録ヘッドの数だけ並置したものにすぎず、効率的な構成ではなかった。
【0007】
そこで、本発明では、複数の記録ヘッドを使用した画像記録装置において、比較的小さな装備で複数ヘッドを並行して動作させることができる画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
また、請求項1の発明は、互いに対応する複数の画像データに基づいて、複数の記録材料に複数の画像をそれぞれ記録する画像記録装置において、略円筒面形状の保持面で前記複数の記録材料を並列的に保持する保持要素と、前記保持面に対向して並列的に配置された複数の記録ヘッドのうち、実際に記録を行う一の記録ヘッドと、前記記録ヘッドに前記複数の画像データを順次供給する画像データ供給要素と、前記保持面の軸線方向に沿って前記記録ヘッドを移動させる移動要素と、前記記録ヘッドの移動信号を前記移動要素に与える移動信号供給要素と、前記複数の画像データと前記各々の移動信号のうちの少なくとも一部を調整することによって、前記記録ヘッドによる前記複数の記録材料のそれぞれの走査の幾何学的不整合を補償する調整要素とを備え、前記調整要素は、前記実際に記録を行う一の記録ヘッドに対応する画像変換パラメータに基づいて前記複数の画像データを変換し、それによって複数の調整済画像データを得る画像変換要素、を備え、前記実際に記録を行う一の記録ヘッドは、前記複数の調整済画像データに基づいて、前記複数の記録材料に順次画像を記録する画像記録装置。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の画像記録装置において、前記移動要素は、前記記録ヘッドを前記軸方向に沿って案内するためのガイド要素と、前記ガイド要素に沿って前記記録ヘッドを前記軸方向に駆動する駆動要素とを備え、前記調整要素は、前記ガイド要素と前記保持面との相対的な歪みに応じて前記複数の画像データを調整する画像記録装置。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の画像記録装置において、前記調整要素は、前記記録ヘッドへの前記複数の画像データの供給開始タイミングを調整する画像記録装置。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項1に記載の画像記録装置において、前記保持要素は、前記複数の記録材料を前記保持面上に位置決めする位置決め要素、を備え、前記調整要素は、i)前記記録ヘッドの移動方向と、ii)前記位置決め要素によって規定される記録材料保持位置と、の相対位置関係に基づいて前記複数の画像データを調整する画像記録装置。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像記録装置において、前記画像変換要素は、前記複数の画像データを回転変換することによって前記調整済画像データを得る画像記録装置。
【発明の効果】
【0013】
本願記載の発明によれば、走査位置の調整に使用するデータ量を削減することができる。また、本願記載の発明によれば、データメモリへのアクセスが重ならず、比較的簡易な回路構成によりデータメモリに読出しアドレスを供給することができる。
【0014】
また、本願記載の発明によれば、複数の記録ヘッドによって複数の記録材料のそれぞれに略同一形状の画像を記録することができる。
【0015】
さらに、請求項1ないし請求項5に記載の発明によれば、1つの記録ヘッドによって2つの記録材料に正確な画像を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態における画像記録装置の一例を示す平面概要図である。
【図2】第1の実施の形態における画像記録装置の側面概要図である。
【図3】第1の実施の形態における画像記録装置の制御手段のハード構成を説明するブロック図である。
【図4】第1の実施の形態における画像記録装置の制御手段の機能ブロック図である。
【図5】第1の実施の形態の画像記録装置における画像歪み補正を説明する図である。
【図6】第1の実施の形態における画像記録装置に使用される補正データメモリの構造を説明する図である。
【図7】第1の実施の形態における画像記録装置のドラム1の表面を模式的に示す図である。
【図8】第1の実施の形態の画像記録装置における補正処理を説明するタイムチャートである。
【図9】第2の実施の形態の画像記録装置の一例における制御手段の簡略されたブロック図である。
【図10】第2の実施の形態におけるの画像記録装置における補正処理を説明するタイムチャートである。
【図11】第1の実施の形態における画像記録装置で使用されるPLLクロックとドットクロックの関係を説明するタイムチャートである。
【図12】第1の実施の形態の画像記録装置における画像歪み補正を説明する図である。
【図13】第1の実施の形態におけるドット調整データによる主走査ラインのドット間隔補正の例を示す図である。
【図14】第3の実施の形態におけるボールネジの送り量補正を説明するための図である。
【図15】第3の実施の形態における画像記録装置の制御手段の機能ブロック図である。
【図16】第3の実施の形態におけるボールネジの送り量の測定を説明するための図である。
【図17】第3の実施の形態におけるボールネジの送り量調整データの測定手順の一例を示すフロチャートである。
【図18】第3の実施の形態におけるボールネジの送り量調整データの測定手順の一例を示すフロチャートである。
【図19】第3の実施の形態における画像記録装置における補正処理を説明するタイムチャートである。
【図20】第4の実施の形態において、2台の記録ヘッドにより2枚の印刷版を描画する場合における各位置決めピンの立設位置と各印刷版の固定位置との関係を説明するための図である。
【図21】第4の実施の形態において、回転軸に対して印刷板が傾いている場合における画像記録領域を説明するための図である。
【図22】第4の実施の形態における画像記録装置の制御手段のハードウェア構成を説明するブロック図である。
【図23】第4の実施の形態における画像記録装置の制御手段の機能ブロック図である。
【図24】第5の実施形態におけるベース部やボールネジの撓みを説明するための図である。
【図25】第5の実施形態において、ベース部やボールネジが撓んでいる場合に、2台の記録ヘッドにより2枚の印刷版を描画する場合における画像記録領域を説明するための図である。
【図26】第5の実施形態において、撓み補正データを取得するために記録する画像を説明するための図である。
【図27】第6の実施形態において、1台の記録ヘッドにより2枚の印刷版を描画する場合における各位置決めピンの立設位置と印刷版の固定位置との関係を説明するための図である。
【図28】第8の実施の形態における画像記録装置の制御手段のハードウェア構成を説明するブロック図である。
【図29】第8の実施の形態における制御手段の機能ブロック図である。
【図30】第3の実施の形態における画像記録装置の制御手段の機能ブロックの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
<1.第1の実施の形態>
この発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はこの発明の第1の実施の形態に係る画像記録装置の一例を示すものであって、装置主要部を上面から見た平面概要図である。図1において、画像記録装置は、印刷版P(画像記録材料)を保持して回転可能なドラム1と、このドラム1の軸線方向に沿って移動可能な第1および第2の記録ヘッド10、20と、この画像記録装置を制御する制御手段8とを備える。
【0019】
ドラム1はその外周面を保持面とし、シート状の印刷版P(画像記録材料)を略円筒形状に保持するものである。ドラム1の外周面にはクランプ部材5およびクランプ部材6(図2参照)が配置される。これら一対のクランプ部材5、6は印刷版Pの両端部を挟持することでドラム1の外周面にこの印刷版Pを保持する。また、ドラム1はベルト駆動手段3を介して駆動モータ4により回転駆動される。なおクランプ部材5、6に代えて、または併用して、吸着手段などで印刷版Pを保持するようにしてもよい。ドラム1の、駆動モータ4と反対側の回転軸にはエンコーダ7が軸支される。エンコーダ7はドラム1の回転位置が原点位置であることを表す原点信号osおよびドラム1の回転に同期したエンコーダパルス信号epを出力する。
【0020】
次に図1と図2を参照して第1および第2記録ヘッド10、20について説明する。図2は、図1に示される画像記録装置の概略左側面図である。
【0021】
第1記録ヘッド10および第2記録ヘッド20は、いずれも共通の案内レール12上に載置されている。案内レール12はドラム1の軸線に対して平行に延設されている。第1記録ヘッド10はボールネジ11に、第2記録ヘッド20はボールネジ21にそれぞれ螺合されており、ボールネジ11および21の回転によりドラム1の軸方向に沿って移動する。そのため、第1記録ヘッド10および第2記録ヘッド20は、共通の移動経路上を移動することができる。なお、ボールネジ11および21は上下に並設されているので図1には上側のボールネジ(第2記録ヘッド20を駆動するボールネジ21)のみが図示されている。
【0022】
第1記録ヘッド10を駆動するボールネジ11は、その両端部をネジ支持手段23によって回転自在に支持されるとともに、ベルト駆動手段14を介して駆動モータ15により回転駆動される。駆動モータ15はエンコーダ7のエンコーダパルス信号epを分周して得られるパルス信号ps1に同期して駆動される(詳細は後述する)。
【0023】
第2記録ヘッド20を駆動するボールネジ21は、その両端部をネジ支持手段23によって回転自在に支持されるとともに、ベルト駆動手段24を介して駆動モータ25により回転駆動される。
【0024】
駆動モータ25はエンコーダ7のエンコーダパルス信号epを分周して得られるパルス信号ps2に同期して駆動される(詳細は後述する)。
【0025】
図2に示されるように第1記録ヘッド10の上面には切り欠きが形成されており、第2記録ヘッド20のためのボールネジ21と第1記録ヘッド10とが干渉しないようになっている。また、駆動モータ15および25は個別に駆動可能であるので第1及び第2記録ヘッド10、20は個別に副走査方向に移動可能である。
【0026】
なお、この実施の形態では、第1および第2の記録ヘッド10、20が、ドラム1の軸線と同一高さを水平移動するように構成されている。そのため、第1記録ヘッド10と第2記録ヘッド20はドラム1に関してほぼ同一の円周位置を走査する。
【0027】
第1および第2の記録ヘッド10、20はそれぞれ複数の光ビームを同時に照射可能な照射手段BEをドラム1のほぼ軸線方向に沿って配置したマルチビーム方式のヘッドである。このビーム照射手段BEとしては、例えばLEDや半導体レーザなどの発光素子が直線的に配置されたビームアレイなどが使用され、各発光素子は画像データに基づいて各々独立して発光制御されるように構成されている。従って、ドラム1の主走査回転にともない各記録ヘッド10、20はそれぞれビーム数の配列の巾だけ画像を記録することができる。例えば、第1および第2の記録ヘッド10、20がそれぞれ64チャンネルのビーム数を有するとすれば、この実施の形態では、両記録ヘッド10、20を並行動作させて1回転で同時に128チャンネル巾の記録が行える。
【0028】
制御手段8は、画像記録装置の各部と接続されたコンピュータシステムであって、所定のプログラムに従って装置全体の制御を行うように機能している。制御手段8は、LAN(Local Area Network)等の構内ネットワークまたはインターネット等の広域ネットワークであるネットワーク60と接続され画像データの供給を受ける。この実施の形態では、各記録ヘッド10、20は、それぞれの走査位置に応じた補正を行いながら画像記録を行う。
【0029】
図3に本画像記録装置の制御手段8のハードウェア構成を示す。制御手段8は、第1記録ヘッド10、第2記録ヘッド20の各々に描画信号d1、d2を供給する第1および第2画像処理手段81、82と、後述する画像補正を行う回路をプログラミングしたFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)83と、該FPGA83を再プログラミングするためのデータを記憶するROM83bと、FPGA83に対して補正データda1、da2を供給する補正データメモリ84と、ネットワーク60等を通して外部から供給される画像データim1、im2を記憶する画像データメモリ85と、エンコーダ7から出力されるエンコーダパルス信号epを記録解像度に応じた逓倍比で逓倍してPLLクロックpcを生成するPLL(フェーズ・ロックド・ループ)回路86と、上記の各ハードウェア要素を相互に連結するデータバス87とを有している。
【0030】
FPGA83は再プログラミングによって回路構成が変更できる半導体チップである。そのため、FPGA83を再プログラミングすることによって制御手段8の機能を変更することができる。再プログラミングのためのデータはFPGA83に連結されたROM83bに予め書き込まれている。
【0031】
本画像記録装置では、FPGA83は、通常の画像記録、テストパターン焼き付け、初期調整等の目的に応じてその回路構成が書き替え可能であるが、以下では、FPGA83が通常の画像記録を行うための回路構成となっているとして説明する。
【0032】
FPGA83にはサブメモリ83aが内蔵されている。このサブメモリ83aは種々の目的に使用されるが、ここでは、特に、補正データメモリ84から出力される補正データを一時的に記憶する目的で使用される。このサブメモリ83aの記憶容量は、ドラム1が1回転する間に1個の記録ヘッドが必要とするだけのデータ量以上であればよい。
【0033】
図4は、通常の画像記録を行う際のFPGA83の回路構成を機能的ブロック図で示した説明図である。図4中、FPGA83によって実現される要素は、二点鎖線によって囲まれる要素である。すなわち、これらの要素は、制御部91、切換器92、93、カウンタ94、ドット長調整器95、96、データ分離器97、98、分周器99、100、カウンタ101、102、アドレス発生器103である。
【0034】
図4に示すように、FPGA83は、エンコーダ7から入力される原点信号osと、PLL回路86から入力されるPLLクロックpcとから、第1および第2記録ヘッド10、20によるドット形成周期を規定するドットクロックdc1、dc2を出力する。さらにFPGA83は記録ヘッド10、20の各副走査位置に応じて補正されたパルス信号ps1、ps2を出力する。先述のように駆動モータ15、25はこのパルス信号ps1、ps2に同期して回転駆動される。
【0035】
FPGA83から出力されるドットクロックdc1、dc2は、第1画像処理手段81、第2画像処理手段82にそれぞれ入力される。第1、第2画像処理手段81、82は、画像データメモリ85から送出される画像データim1、im2に基づき、前記ドットクロックdc1、dc2に同期するように描画信号d1、d2を生成する。
【0036】
ドット長調整器95、96は、PLLクロックpcを所定の分周比で分周してドットクロックdc1、dc2を生成する手段である。このドット長調整器95、96における分周比は、「1/7」「1/8」「1/9」のいずれかである。これらの分周比のいずれかを適用することによりドットクロックdc1、dc2の長さを変更し、以て、第1、第2記録ヘッド10、20によって印刷版上に記録される1ドットの主走査方向長さを変更できるようになっている。
【0037】
図11は、ドットクロックdc1およびdc2とPLLクロックpcとの関係を示す図である。通常の分周比は、1/8であり、このときには、図11(a)に示すようにPLLクロックpcが8パルス出力される毎(基準時間間隔)に1個のドットクロックが出力され、それに基づいて1ドットの描画が実行される。
【0038】
分周比が1/7に設定された場合、図11(b)に示すように、PLLクロックpcが7パルス出力される毎に1個のドットクロックが出力される。その結果、ドットクロックの発生時間間隔は、基準時間間隔よりもPLLクロックpcの1パルス分短くなるため、主走査方向に沿うドットの長さが短縮される。また、分周比を1/9とすれば、図11(c)に示すように、PLLクロックpcが9パルス出力される毎に1個のドットクロックが出力されることにより、ドットクロックの発生時間間隔が基準時間間隔よりもPLLクロックpcの1パルス分長くなるため、主走査方向に沿うドットの長さが伸長される。
【0039】
分周比の設定は補正データメモリ84から出力される補正データda1、da2に含まれるドット調整データdm1、dm2により行われる。
【0040】
カウンタ94はPLLクロックpcと原点信号osとに基づいて第1記録ヘッド10の主走査位置を示す第1主走査位置信号m1と、第2記録ヘッド20の主走査位置を示す第2主走査位置信号m2とを出力する。カウンタ94は原点信号osが発せられてからのPLLクロック数で各記録ヘッド10、20の主走査位置を把握する。記録ヘッド10、20の高さが異なるような場合には、第1主走査位置信号m1と第2主走査位置信号m2とは異なる信号になる。第1主走査位置信号m1は切換器92に対して出力される。第2主走査位置信号m2はサブメモリ83aに出力される。
【0041】
アドレス発生器103は、制御部91の指示によりドラム一回転分の複数の主走査位置を主走査位置信号m2aとして高速に出力する手段である。
【0042】
カウンタ94から出力される第1主走査位置信号m1と、アドレス発生器103から出力される主走査位置信号m2aとは、切換器92に出力される。切換器92は、制御部91からの切換信号に従って、入力信号の一方を補正データメモリ84に出力する。なお、第1主走査位置信号m1はドラム1の回転に同期した周波数で補正データメモリ84に出力されるが、アドレス発生器103から出力される主走査位置信号m2aは高周波数で補正データメモリ84に出力される。詳細は後述する。
【0043】
分周器99、100は分周比が可変な分周器であり、PLL回路86から出力されるPLLクロックpcを副走査送り調整データds1、ds2に応じた分周比で分周し、パルス信号ps1、ps2を生成する。
【0044】
カウンタ101、102は、パルス信号ps1、ps2をカウントして各記録ヘッド10、20の副走査位置を示す副走査位置信号s1、s2を出力する。第1記録ヘッド10の副走査位置を示す第1副走査位置信号s1および第2記録ヘッド20の副走査位置を示す第2副走査位置信号s2は切換器93に出力される。切換器93は、制御部91からの切換信号に従って、入力信号の一方を補正データメモリ84に出力する。
【0045】
補正データメモリ84は、入力される主走査位置信号m1またはm2aおよび副走査位置信号s1またはs2を読出しアドレスとして使用し、これらの位置信号が示す走査座標が含まれるドラム表面上の分割領域(後述)に対応するセルに格納された補正データdaを出力する。
【0046】
制御部91には原点信号osおよびPLLクロックpcが入力する。制御部91はこれらの信号から判断される各記録ヘッド10、20の走査位置に応じて切換器92、93に対して切換信号を出力する。すなわち、第1記録ヘッド10が記録可能エリア(後述)を走査している期間においては、第1副走査位置信号s1および第1主走査位置信号m1が補正データメモリ84に出力されるように切換器92、93を制御する。同様に、第1記録ヘッド10および第2記録ヘッド20が記録禁止エリア(後述)を走査している期間においては、第2副走査位置信号s2およびアドレス発生器103より発生させられた主走査位置信号m2aが補正データメモリ84に出力されるように切換器92および93を制御する。
【0047】
描画信号d1、d2は第1及び第2記録ヘッド10、20に送られ、第1および第2記録ヘッド10、20の発光素子を発光させる。
【0048】
次に、本画像記録装置で行われる補正について説明する。本画像記録装置では主走査方向に関する補正と副走査方向に関する補正とを各記録ヘッドに対して同時に行うことができる。最初に主走査方向に関する補正の内容を、次に副走査方向に関する補正の内容を説明する。
【0049】
ドラム1はその外寸が長手方向に沿って均一になるように設計・製作されているが、誤差によってそのように製作されないことがある。たとえば、ドラムの周面が厳密な円周面ではなく、樽形になっていたり(軸方向中間部の径が端部の径よりも大きい形)、鼓形(軸方向中間部の径が端部の径よりも小さい形)になっていたりする場合がある。
【0050】
ここでは、印刷版Pに記録される画像が歪む場合の例として、ドラム1の形状が鼓形となる場合について説明する。図12は、ドラム1の外周面が厳密な円筒面でなく鼓形となる場合に、ドラム1上に保持された印刷版Pに記録される画像を説明するための図である。また、図5は、ドラム1上に保持された印刷版Pの図12の画像記録領域PA(線分LU、LS1、LEおよびLS2によって囲まれた領域)をXY平面上に展開した図である。図12に示すように、ドラム1の外周面SCが厳密な円筒面でなく鼓形になっているため、回転軸RA1方向中間付近における径D2が回転軸RA1方向端部付近における径D1よりも小さくなる。この場合、ドラム1を回転させて印刷版P上の画像記録領域PAに長方形の画像を描画し、当該画像記録領域PA領域をXY平面に展開すると、記録される画像は図5に示すとおり画像記録領域PAがX軸方向中間部付近で縮まった形状となる。これは、ドラム1の直径が小さな回転軸RA1方向中間部付近においては、印刷版表面における主走査速度が相対的に遅くなるから、ドットの主走査方向長さが短くなることに起因する。
【0051】
このような画像の歪みを解消するためには図5に示すように各主走査ラインの描画終了位置LEを上端基準直線LUと平行な直線である下端基準線LLに揃えるべく、X軸方向中央付近の主走査ラインを伸長すればよい。これにより、図5に示すように線分LU、LS1、LLおよびLS2で囲まれる長方形の画像が得られる。つまり、主走査ラインの伸縮倍率を個別に設定すれば、ドラム1の歪みに起因する画像の歪みを補正できる。
【0052】
次に、副走査方向の補正について説明する。先述のように第1及び第2記録ヘッド10、20は共通の案内レール12上に載置されている。案内レール12は記録ヘッドを等速に案内するように製作されているが、案内レールが長大になると、ドラムと案内レールとの平行度に歪みが生じて記録ヘッドによる副走査方向の走査位置が均一にならないことがあり得る。
【0053】
本画像記録装置では、駆動モータ15、25の回転速度を規定するパルス信号ps1、ps2を生成する分周器99、100の分周比を副走査位置に応じて調整することにより第1及び第2記録ヘッド10、20の副走査方向の走査位置が均一になるように制御している。分周比の調整は副走査送り調整データdsにより行われる。この副走査送り調整データdsは両記録ヘッド間で共有される。
【0054】
本画像記録装置では、ドラム1の表面を主走査方向に125分割、副走査方向に250分割して得た分割領域毎に補正データを適用する。図6は、補正データメモリ84の記憶内容を説明する図である。図6に示すように、補正データメモリ84のメモリ空間は複数のセルからなる。また、当該メモリ空間の主走査方向に対応する方向をi軸、副走査方向に対応する方向をj軸とすることにより、値の組(i,j)によって補正データメモリ84上の各セルを一義的に指定することができる。各セルは前述の各分割領域に対応している。各セルには対応する各分割領域に適用される補正データdaが格納されている。各セルに格納されている補正データdaは、主走査ライン中のドット間隔を均一にするためのドット調整データdmと記録ヘッドの副走査位置を均一にするための副走査送り調整データdsとを含むデータであり、ドット調整データdmおよび副走査送り調整データdsは、第1記録ヘッド10および第2記録ヘッド20で共通して使用される。第1記録ヘッド10用に読み出された補正データda1および第2記録ヘッド20用に読み出された補正データda2はそれぞれ、データ分離器97、98(後述)によってドット調整データdm1、dm2と副走査送り調整データds1、ds2とに分離され、前者はドット長調整器95、96へ、後者は分周器99、100にそれぞれ出力される。
【0055】
ドット調整データdm1、dm2は各セルに対応する分割領域を描画する際にドット長調整器95、96に適用される分周比「1/7」「1/8」「1/9」の適用比率を規定するデータである。すなわち、各セルにはドット調整データとして「分周比1/7:10%、分周比1/8:90%、分周比1/9:0%」のような値が格納されている。図13は、ドット調整データdm1、dm2によって生成されるドットクロックdc1、dc2の例を示す図である。ある分割領域のドット調整データが、「分周比1/7:10%、分周比1/8:90%、分周比1/9:0%」のように設定されている場合、図13に示すように、第1のドットクロック(丸数字1)が連続して9個出力され、その後に第2のドットクロック(丸数字2)が1個出力される。これらのドットクロックのうち、第1のドットクロック(丸数字1)はPLLクロックpcが8パルス出力されると1個生成され、第2のドットクロック(丸数字2)はPLLクロックpcが7パルス出力されると1個生成される。そして、これら10個のドットクロックからなる組を1サイクルとして、当該分割領域内においてドットクロックが生成される。
【0056】
このように、ドット長調整器95、96は、補正データに格納されたドット調整データdm1、dm2によって指定される分周比の適用比率に基づいて、該手段95、96に入力するPLLクロックpcの分周比を切り替えることにより、生成されるドットクロックdc1、dc2における1クロック当たりの平均時間を変化させることができるため、主走査方向に沿う画像の長さを伸縮することができる。
【0057】
本画像記録装置は2つの記録ヘッドを有している。しかし、主走査方向の補正を行う補正データ(ドット調整データdm)はこれらの記録ヘッド間で共用してよい。なぜなら、上記ドット調整データdmは、両記録ヘッドで共用されるドラム1の歪みを補償するためのデータであるからである。同様に、副走査方向の補正を行う補正データ(副走査送り調整データds)もこれらの記録ヘッド間で共用されてよい。なぜなら、上記副走査送り調整データdsは、両記録ヘッドで共用される案内レール12に起因する送りむらを補償するためのデータであるからである。
【0058】
このように補正データは記録ヘッド間で共用されるので記録ヘッドの数に応じた数のメモリを用意する必要はない。すなわち補正データを記憶するメモリは単一でよい。しかし、補正データを読み出すためにメモリにアクセスするタイミングが重なると補正データを良好に読み出すことができなくなる。その意味では補正データメモリを記録ヘッドの数だけ用意するのが望ましい。しかしこの場合、本来1つでよいメモリを複数設けているため不要な資源を使用しなければならないという別の問題が生じることになる。また、メモリに記憶させる補正データの演算のためCPUのパフォーマンスが一時的に低下する場合もある。
【0059】
本発明では次に説明する手法の採用により上記相反する2つの問題を解決している。
【0060】
図7はドラム1の表面を二次元に展開した図である。先述のように、ドラム1の表面には印刷版Pを固定するための一組のクランプ部材5、6が配置されている。印刷版Pが配されたドラム表面の内、一対のクランプ部材5および6によって押圧されていない領域に対しては画像記録を行うことができる。この領域を記録可能エリアと言う。また、この領域を記録ヘッド10、20が走査している期間を記録可能期間と言う。
【0061】
上記記録可能エリア以外のドラム表面領域に対しては画像記録を行うことができない。この画像記録が行えない領域のことを記録禁止エリアと言い、この領域が記録ヘッド10、20によって走査されている期間を記録禁止期間と言う。
【0062】
図8は、本画像記録装置での補正処理を説明するためのタイムチャートである。
【0063】
最上段は原点信号osでありドラム1が1回転する度に1パルス生成される。その下段は、ドラム1が125分の1回転するタイミングを示している。その下段は、第1記録ヘッド10の記録禁止期間のタイミングを、その下段は第2記録ヘッド20の記録禁止期間のタイミングを示している。その下段「補正データメモリ84からの出力」および「サブメモリ83aからの出力」は、それぞれ各メモリから出力される補正データdaの種類を示している。
【0064】
図4と図8を参照して、本画像記録装置の補正処理を順を追って説明する。なお、本画像記録装置では第1記録ヘッド10と第2記録ヘッド20の主走査位置は完全には一致していない。すなわち第1記録ヘッド10の主走査位置は第2記録ヘッド20のそれよりも僅かに先の円周方向位置を走査する。
【0065】
ドラム1がドラム原点に達した段階(t0)から第1記録ヘッド10が記録禁止エリアに達する段階(t1)までは、制御部91は、第1主走査位置信号m1と第1副走査位置信号s1とが補正データメモリ84へ供給されるように切換器92、93を制御する。補正データメモリ84は第1記録ヘッド10の走査位置に対応するセルに格納された補正データda1をデータ分離器97に向けて出力する。データ分離器97は補正データda1をドット調整データdm1と副走査送り調整データds1とに分離して前者をドット長調整器95に、後者を分周器99に出力する。ドット長調整器95はドット調整データdm1に基づいて適宜補正されたドットクロックdc1を第1画像処理手段81に送出する。分周器99は副走査送り調整データds1によって適宜補正されたパルス信号ps1を駆動モータ15に出力する。
【0066】
このt0からt1までの期間では第2記録ヘッド20用の補正データda2はサブメモリ83aから読み出されている。
【0067】
第1記録ヘッド10が記録禁止エリアに達し、なおかつ、第2記録ヘッド20が記録禁止エリアに達すると(t2)と、制御部91は、切換器92、93を制御して、アドレス発生器103からの主走査位置信号m2aと、カウンタ102からの第2副走査位置信号s2とが補正データメモリ84に送られるようにする。アドレス発生器103はt2時の第2記録ヘッド20の走査位置に対応する1ライン分の補正データda2を、高周波数(第1記録ヘッド10が記録可能エリアに達するt3より前に上記1ライン分の補正データda2を出力させることができる程度の周波数)で、サブメモリ83aに出力する。
【0068】
その後、第1記録ヘッド10が記録可能エリアに達する(t3)と、制御部91は、切換器92、93を制御して第1主走査位置信号m1と第1副走査位置信号s1が補正データメモリ84に送られるようにする。これにより補正データメモリ84から補正データda1が順次データ分離器97に送られるようになる。
【0069】
第2記録ヘッド20が記録可能エリアに達する(t4)と、サブメモリ83aは、順次入力される第2主走査位置信号m2を参照して補正データda2をデータ分離器98に送出する。補正データda2はここでドット調整データdm2と副走査送り調整データds2とに分離され、前者はドット長調整器96に、後者は分周器100にそれぞれ出力される。ドット長調整器96はこのドット調整データdm2に基づいてPLLクロックpcを分周してドットクロックdc2を生成する。一方、分周器100はこの副走査送り調整データds2によって適宜補正されたパルス信号ps2を駆動モータ25に出力する。
【0070】
その後、ドラム1の回転位置が再度原点位置に到達し、エンコーダ7から制御部91に向けて原点信号osが出力される時刻t0(図8中の右側に示す時刻t0)まで、補正データda1、da2が対応するデータ分離器97、98に向けて並行して出力され、ドットクロックdc1、dc2が並行してそれぞれの画像処理手段81、82に送られ、なおかつ、パルス信号ps1、ps2が並行してそれぞれの駆動モータ15、25に送られる。これにより、第1および第2記録ヘッド10、20による画像記録が並行して行われる。しかもこの間に補正データメモリ84へのアクセスが重なることがない。仮に、補正データメモリ84へのアクセスが重畳して生じるような回路構成であったならば、重畳して生じるアクセスの一方を他方に対して微少時間だけ退避ないし待機させるためのアクセスタイミング調整機構が別途必要になる。しかし、これでは複雑な回路になってしまう。本実施の形態は、これとは異なり、補正データメモリ84へのアクセスが重なることがないのでこのような複雑な回路配置が必要ない。すなわち、比較的簡易な回路構成により補正データメモリ84に読出しアドレスを供給することができるという効果がある。同時に、補正データメモリ84を重複して保持する必要がなく、資源の節約になるという効果もある。
【0071】
<2.第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、第1および第2の記録ヘッド10、20の両方が対応の記録禁止エリアを走査している期間においてのみ補正データdaをサブメモリ83aに読み出すことができた。これは、第1記録ヘッド10と第2記録ヘッド20がほぼ同一のドラム円周位置を走査していたため記録禁止エリアの重なりが大きかったことによる。しかし、これらの記録ヘッドの走査位置の円周方向間隔が広がったり、あるいは、多数の記録ヘッドを使用する場合等には前記記録禁止エリアの重なりが小さくなる(場合によっては無くなる)ことも考えられる。
【0072】
このような場合には記録ヘッド毎にサブメモリ83aを2個用意し、補正データdaの書込と読出とを交互に行うようにすればよい。こうすることにより、任意のタイミングで補正データメモリ84から補正データdaを読み出すことができるようになる。すなわち、第2記録ヘッド20の記録可能期間であってもサブメモリ83aは補正データdaを取得することができる。
【0073】
第2実施形態に係る画像記録装置には記録ヘッドが3個搭載される(第1記録ヘッド210と第2記録ヘッド220、第3記録ヘッド230)。各記録ヘッド210、220、230は先に図1と図2を用いて説明した第1の実施形態に係る画像記録装置と同様に共通の案内レール12にそれぞれ載置されるとともに、個別に準備された送り機構により個別の副走査送りが行えるようになっており、共通のドラム1に対して光ビームを照射する。ただ、この第2実施形態においては記録ヘッド210、220、230の走査位置の円周方向間隔が大きくて記録禁止エリアの重なりが存在しないものとする。
【0074】
図9は第2の実施形態にかかる画像記録装置における制御処理を説明するための図である。
【0075】
本画像記録装置は補正データメモリ200を有しており、該メモリ200には第1実施形態で説明したドット調整データdmと副走査送り調整データdsとを含む補正データdaが格納されている。
【0076】
補正データメモリ200は切換器203からの主走査位置信号m1、m2、m3および切換器204からの副走査位置信号s1、s2、s3をアドレスにして読み出される。主走査位置信号m1乃至m3はそれぞれ第1乃至第3記録ヘッド210、220、230の主走査位置を示しており、第1乃至第3主走査位置生成手段215、225、235から供給される。第1主走査位置生成手段215は第1実施形態で説明したエンコーダ7、PLL回路86、カウンタ94等により実現される手段である。
【0077】
また第2記録ヘッド、第3記録ヘッド220、230用の主走査位置生成手段225、235は第1実施形態におけるアドレス発生器103に相当する手段で構成される。
【0078】
副走査位置信号s1乃至s3はそれぞれ第1乃至第3記録ヘッド210、220、230の副走査位置を示しており、第1乃至第3副走査位置生成手段216、226、236から供給される。この第1乃至第3副走査位置生成手段216、226、236は第1実施形態で説明したエンコーダ7、PLL回路86、分周器99、100、カウンタ101、102等により実現される手段である。
【0079】
切換器203は、上述の主走査位置生成手段215、225、235から供給される主走査位置信号m1乃至m3の1つを制御部205から供給される切換信号によって選択し補正データメモリ200に出力する。
【0080】
切換器204は、上述の副走査位置生成手段216、226、236から供給される副走査位置信号s1乃至s3の1つを制御部205から供給される切換信号によって選択し補正データメモリ200に出力する。
【0081】
切換器202は、補正データメモリ200から出力される補正データdaを第1記録ヘッド用補正手段217(後述)または切換器221、231(後述)のいずれかに向けて、制御部205から供給される切換信号によって選択し出力する。
【0082】
制御部205は第1の実施形態における制御部91に相当する手段であって、ドラム1の角度位置に応じて切換信号を出力する。切換えタイミングについては後述する。
【0083】
第1記録ヘッド210から発せられた光ビームの主走査位置および第1記録ヘッド210の副走査位置は第1記録ヘッド用補正手段217により補正が行われる。この第1記録ヘッド用補正手段217は第1実施形態で述べたドット長調整器95および分周器99に相当する手段であり、補正データメモリ200から供給される補正データda1に従ってドット発生タイミングや第1記録ヘッド210の副走査送りを補正する。
【0084】
第2記録ヘッド220から発せられた光ビームの主走査位置および第2記録ヘッド220の副走査位置は第2記録ヘッド用補正手段227により補正が行われる。この第2記録ヘッド用補正手段227は第1実施形態で述べたドット長調整器95および分周器99に相当する手段であり、補正データメモリ200から供給される補正データda2に従ってドット発生タイミングや第2記録ヘッド220の副走査送りを補正する。
【0085】
第3記録ヘッド230から発せられた光ビームの主走査位置および第3記録ヘッド230の副走査位置は第3記録ヘッド用補正手段237により補正が行われる。この第3記録ヘッド用補正手段237は第1実施形態で述べたドット長調整器95および分周器99に相当する手段であり、補正データメモリ200から供給される補正データda3に従ってドット発生タイミングや第3記録ヘッド230の副走査送りを補正する。
【0086】
第2記録ヘッド220に関しては一対のサブメモリ222a、222bが用意されている。ハードウェア構成においては、この一対のサブメモリ222a、222bは、たとえばFPGAに内蔵されているメモリであり、第1実施形態で述べたサブメモリ83aと同様に、補正データメモリ200から読み出された補正データda2を一時的に記憶する目的で使用される。一対のサブメモリ222a、222bはトグルメモリとして使用される。すなわち、切換器221によってデータ書き込みメモリが、切換器223によってデータ読み出しメモリが選択される。切換器221、223の切り換え動作は第2制御部224によって制御される。この第2制御部224は、第2記録ヘッド220が記録禁止エリアに到達する度にサブメモリ222a、222bの動作を交代させる。切換えタイミングについては後述する。
【0087】
第3記録ヘッド230に関しても一対のサブメモリ232a、232bが用意されている。ハードウェア構成においては、この一対のサブメモリ232a、232bは、たとえばFPGAに内蔵されているメモリであり、第1実施形態で述べたサブメモリ83aと同様に、補正データメモリ200から読み出された補正データda3を一時的に記憶する目的で使用される。一対のサブメモリ232a、232bはトグルメモリとして使用される。すなわち、切換器231によってデータ書き込みメモリが、切換器233によってデータ読み出しメモリが選択される。切換器231、233の切り換え動作は第3制御部234によって制御される。この第3制御部234は、第3記録ヘッド230が記録禁止エリアに到達する度にサブメモリ232a、232bの動作を交代させる。切換えタイミングについては後述する。
【0088】
図10は本画像記録装置での補正処理を説明するためのタイムチャートである。なお、第1実施形態で定義した「記録禁止エリア」「記録可能エリア」「記録禁止期間」「記録可能期間」の用語は以下の説明においても同様の意味で使用される。
【0089】
最上段の時間軸は原点信号osの発生タイミングを示している。該原点信号osはドラム1が1回転する度に1パルス生成される。その下段は、ドラムが125分の1回転するタイミングを示している。以下の時間軸はそれぞれ、第1記録ヘッド210、第2記録ヘッド220、第3記録ヘッド230の記録禁止期間を示している。その下段「補正データメモリ200からの出力」は当該メモリ200から読み出される補正データdaの種類を示している。その下段「補正データda2の書込先」および「補正データda3の書込先」は、各補正データda2、da3の書き込み先と書き込みタイミングとを示している。その下段の時間軸「補正データda2の読出元」および「補正データda3の読出元」は各補正データda2、da3の読み出し元のサブメモリと読み出しタイミングとを示している。
【0090】
図9と図10を参照して、第2実施態様に係る画像記録装置の補正処理を順を追って説明する。
【0091】
ドラム1がドラム原点に達した段階(t0)から第1記録ヘッド210が記録禁止エリアに達する段階(t1)までは、制御部205は第1主走査位置信号m1および第1副走査位置信号s1が補正データメモリ200へ供給されるように切換器203、204を制御する。また補正データメモリ200から読み出された補正データda1が第1記録ヘッド用補正手段217に送られるように切換器202を制御する。補正データメモリ200は第1記録ヘッド210の走査位置に対応するセルに格納された補正データda1を切換器202に向けて供給する。補正データメモリ200から読み出された補正データda1は第1記録ヘッド用補正手段217に送られ、該手段217は第1記録ヘッド210に関する主走査位置および副走査位置に関する補正を行う。
【0092】
このタイミングt0からt1までの期間では第2記録ヘッド220用の補正データda2および第3記録ヘッド230用の補正データda3はそれぞれ、読み出し側のサブメモリ222b、232bから読み出されて、第2記録ヘッド用補正手段227、第3記録ヘッド用補正手段237に供給されている。
【0093】
第1記録ヘッド210が記録禁止エリアに達すると(t1)、制御部205は切換器203、204を制御して、第2主走査位置信号m2および第2副走査位置信号s2が補正データメモリ200に供給されるようにする。これにより補正データメモリ200から第2記録ヘッド220用の補正データda2が読み出される。この補正データda2は切換器202、221を経由してこの時点での書き込み側のサブメモリ222aに書き込まれる。なお、この補正データda2はドラム1回転分の補正データである。すなわち、これは125セル分の補正データである。
【0094】
上記第2補正データda2の読み出しが完了すると、制御部205は切換器203、204を制御して、第3主走査位置信号m3および第3副走査位置信号s3が補正データメモリ200に供給されるようにする(t2)。これにより補正データメモリ200から第3記録ヘッド230用の補正データda3が読み出される。この補正データda3は切換器202、231を経由してこの時点での書き込み側のサブメモリ232aに書き込まれる。なお、この補正データda3はドラム1回転分の補正データである。すなわち125セル分の補正データである。
【0095】
なお、上記補正データda2、da3のサブメモリ222a、232aへの書き込み作業中も、この時点での読み出し側のサブメモリ222b、232bから補正データが読み出されて、第2および第3記録ヘッド用補正手段227、237へ供給されている。
【0096】
第1記録ヘッド210が記録可能エリアを走査するようになると(t3)、補正データメモリ200から再び第1記録ヘッド210用の補正データda1の読み出しが開始される。
【0097】
次に、第2記録ヘッド220が記録禁止エリアを走査するようになると(t4)、サブメモリの222a、222bの読み出し側・書き込み側の交代が行われる。すなわち、t4までは書き込み側であったサブメモリ222aが読み出し側に、同じくt4までは読み出し側であったサブメモリ222bが書き込み側になるように、第2制御部224によって切換器221、223が制御される。第2記録ヘッド220が記録可能エリアを走査するようになると(t5)、補正データda2はサブメモリ222aから読み出されるようになる。
【0098】
次に、第3記録ヘッド230が記録禁止エリアを走査するようになると(t6)、サブメモリの232a、232bの読み出し側・書き込み側の交代が行われる。すなわち、t6までは書き込み側であったサブメモリ232aが読み出し側に、同じくt6までは読み出し側であったサブメモリ232bが書き込み側になるように、第3制御部234によって切換器231、233が制御される。第3記録ヘッド230が記録可能エリアを走査するようになると(t7)、補正データda3はサブメモリ232aから読み出されるようになる。
【0099】
ドラム1が原点復帰し次の回転が開始されると(t8)、上記t0からt8までの動作が再度繰り返される。しかし、タイミングt8からの工程では補正データda2、da3の書き込み先がそれぞれサブメモリ222b、232bであり、補正データda2、da3の読み出し元がそれぞれサブメモリ222a、232aであることが上記タイミングt0からt8までの工程と異なる。
【0100】
このように第2の実施の形態にかかる画像記録装置によると、複数の記録ヘッドの記録禁止エリアが重なっていなくても各記録ヘッド用の補正データを対応する補正回路に向けて並行して供給することが可能である。
【0101】
<3.第3の実施の形態>
<3.1.副走査方向の送り量補正>
第1の実施の形態に示す画像記録装置では、ドラム1に2枚の印刷版を固定し、記録ヘッド10、20に対して、それぞれ異なった描画信号d1、d2を供給することにより、当該2枚の印刷版のそれぞれに異なった画像を記録することができる。そのため、カラー製版の完成画像を構成する各色版の画像のうち、いずれか2つの画像を同時に2枚の印刷版に記録することが可能である。
【0102】
ここで色版とは、例えば、C(シアン)版、M(マゼンタ)版、Y(イエロー)版、K(ブラック)版の4つの色成分の画像を記録するための印刷版のことであり、RGBの色フィルタをそれぞれ備えた複数のCCDラインセンサなどによってRGBの各色成分を有する1枚の印刷対象画像を読みとって、それらをCMYKの各色に分解し、分解された各色の画像を版材上に分離して記録することにより作成される。以上のように、色版は同一の印刷対象画像を色分解して作成されるため、各色版に記録されている画像は、色成分画像の輪郭がほぼ同一で、各ドットの色強度(例えば、網点の大きさ)のみ異なることとなる。
【0103】
このようにして作成されたCMYKの各色版は、印刷工程において、各色版に対応する色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)を紙に印刷するのに使用される。そして、各色の画像を重ね合わせることにより、フルカラー画像が印刷される。
【0104】
ところで、各色版のように、輪郭がほぼ同一で互いに対応する複数の色成分画像を作成する工程において、従来の画像記録工程では、第1の実施の形態の画像記録装置を用いて説明すると、画像記録装置のドラム1上の同一個所に1枚の印刷版(感光性版材)Pを固定し、これら4枚の色版を作成していた。したがって、ドラム1の回転速度を一定に保持することが可能な場合、各色版に記録される色成分画像の輪郭を副走査方向について略同一にするには、駆動モータ15、25によって各記録ヘッド10、20を移動する際の繰り返し再現性が、主として問題となっていた。
【0105】
しかし、図14に示すように、ドラム1上の異なった場所に並列的に保持された2つの印刷版P12、P11のそれぞれについて、並列的に配置された2つの記録ヘッド10、20を使用し、CMYKに分解された画像のうちいずれか2つを記録する場合、各記録ヘッド10、20の移動の繰り返し再現性だけでなく、ボールネジ11、21による送り量のバラツキも問題となる。
【0106】
例えば、図14に示すように、第1記録ヘッド10がヘッド位置PL1に停止しており、駆動モータ15に1パルス送信した際の第1記録ヘッド10の移動量がMD1、移動方向が矢印AR1であるとすると、駆動モータ15にパルス数nを与えたときの第1記録ヘッド10のヘッド位置PLの演算値PL2と、実際に駆動モータ15にパルスを送信して第1記録ヘッド10を移動させた際のヘッド位置の実測値PL3とが相違する。
【0107】
つぎに、第2記録ヘッド20について、移動量MD11、ヘッド位置PLの演算値PL12、ヘッド位置の実測値PL13それぞれを、第1記録ヘッド10について定義したMD1、PL2、PL3と同様に定義する。このときも、演算値PL12と実測値PL13とが相違したとする。
【0108】
このように、第1記録ヘッド10および第2記録ヘッド20の両方が所定の演算値からずれて移動する場合には、各印刷版P11、P12には、副走査方向長さが異なる色成分画像が記録される。この場合には、各印刷版P11、P12に記録される各色版画像は副走査方向にずれてしまう。このような印刷版P11、P12を用いてフルカラー画像を印刷すると、当該画像内の色成分画像の輪郭が色版ごとにズレたり不鮮明になったりする。
【0109】
そこで、本実施の形態では、ドラム1上の異なった場所に固定された2枚の印刷版P11、P12に記録される各色成分画像の輪郭を略同一にするために実施されるボールネジの送り量の補正処理について説明する。なお、本実施の形態で使用する画像記録装置は、第1の実施の形態の画像記録装置とほぼ同様なハードウェア構成を有する装置を使用しているため、第1の実施の形態と本実施の形態の相違点について説明する。
【0110】
<3.2.第3の実施の形態における画像記録装置のハードウェア構成>
図15は本実施の形態における画像記録装置の制御手段の機能ブロック図である。本実施の形態における補正データメモリ84のメモリ空間は、第1の実施の形態と同様に主走査方向に対応するi軸方向に125分割、副走査方向に対応するj軸方向に250分割されており、計31250個のセルから構成される(図6参照)。メモリ空間の各セルには、第1の実施の形態の実施の形態で説明した第1記録ヘッド10の主走査ライン中のドット間隔を均一にするドット調整データdm1、および、第1記録ヘッド10の副走査位置を均一にする調整データds1に加えて、ボールネジ11の送り量の補正に使用される送り量調整データdr1(単位:パルス)が補正データda1として格納されている。
【0111】
補正データメモリ84は、カウンタ94から入力される主走査位置信号m1をメモリ空間のj軸方向の読出しアドレスとして、また、カウンタ101から入力される副走査位置信号s1をメモリ空間のi軸方向の読出しアドレスとして使用することにより、補正データメモリ84上の各セルを指定し、当該セルに格納されている補正データda1を読み出してデータ分離器97に出力する。
【0112】
データ分離器97は、補正データメモリ84から入力される補正データda1を、ドット調整データdm1、調整データds1および送り量調整データdr1に分離する機器である。データ分離器97で分離された各データについて、ドット調整データdm1はドット長調整器95に、調整データds1は分周器99に、送り量調整データdr1はパルス調整器104にそれぞれ出力される。
【0113】
パルス調整器104は、図15に示すように、分周器99から入力されるパルス信号ps1を、データ分離器97において補正データda1から分離されて入力される送り量調整データdr1によって調整し、調整されたパルス信号ps3を駆動モータ15に出力する機器である。
【0114】
ここで、送り量調整データdr1とは、副走査方向の所定範囲内におけるボールネジ11のネジリードの有するバラツキのため、第1記録ヘッド10の移動量の実測値DPが、1パルスあたりの第1記録ヘッド10の移動量MD1(単位:mm/パルス)とパルス数とによって求められる第1記録ヘッド10の移動量の演算値DCと相違する場合に、駆動モータ15に送信するパルス数を調整するのに使用されるデータである。すなわち、送り量調整データdr1とは、ボールネジ11のネジリードの有するバラツキに起因して、記録ヘッド10の移動量の実測値DPと移動量の演算値DCとが幾何学的に不整合となる場合、この不整合を補償するためのデータである。例えば、特定の副走査区間における第1記録ヘッド10の移動量の実測値DPが当該区間における演算値DCと比較して大きくなる場合、この区間において駆動モータ15に送信されるパルス数が、前記演算値DCと実測値DPとの差分に応じた数だけ減ずるような送り量調整データdr1が、パルス調整器104に入力される。
【0115】
なお、実測値DPと演算値DCとが同一の場合、すなわち副走査方向の所定範囲内におけるボールネジ11のネジリードにバラツキがない場合、パルス調整器104においてパルス数の調整を行う必要がない。したがって、実測値DPと演算値DCとが同一の場合、パルス調整器104に入力されるパルス信号ps1がそのままパルス調整器104の出力パルス信号ps3として駆動モータ15に出力される。
【0116】
補正データメモリ84aは、図6に示す補正データメモリ84と同様なメモリ空間を有しており、当該メモリ空間は、主走査方向に対応するi軸方向に125分割、副走査方向に対応するj軸方向に250分割されている。メモリ空間の各セルには、第1の実施の形態で説明した第2記録ヘッド20の主走査ライン中のドット間隔を均一にするドット調整データdm2、および、第2記録ヘッド20の副走査位置を均一にする調整データds2に加えて、ボールネジ21の送り量の補正に使用される送り量調整データdr2(単位:パルス)が補正データda2として格納されている。
【0117】
補正データメモリ84aは、カウンタ94から入力される主走査位置信号m2をメモリ空間のj軸方向の読出しアドレスとして、また、カウンタ102から入力される副走査位置信号s2をメモリ空間のi軸方向の読出しアドレスとして使用することにより、補正データメモリ84a上の各セルを指定し、当該セルに格納されている補正データda2を読み出してデータ分離器98に出力する。
【0118】
データ分離器98は、補正データメモリ84aから入力される補正データda2を、ドット調整データdm2、調整データds2および送り量調整データdr2に分離する機器である。データ分離器98で分離された各データについて、ドット調整データdm2はドット長調整器96に、調整データds2は分周器100に、送り量調整データdr2はパルス調整器105にそれぞれ出力される。
【0119】
パルス調整器105は、パルス調整器104と同様に,調整されたパルス信号を駆動モータ25に出力する機器である。ここで、送り量調整データdr2とは、送り量調整データdr1と同様、ボールネジ21のネジリードの有するバラツキによって第2記録ヘッド20の移動量の演算値と実測値とが相違する場合に、駆動モータ25に送信するパルス数を調整するのに使用されるデータである。図15に示すように、パルス調整器105では、分周器100から入力されるパルス信号ps2を、データ分離器98において補正データda2から分離されて入力される送り量調整データdr2によって調整し、調整されたパルス信号ps4を駆動モータ25に出力する。
【0120】
<3.3.送り量の調整データ取得手順>
図16は、本実施の形態によるボールネジ11、21の送り量調整データdr1、dr2を取得方法を説明する図である。また、図17および図18は、ボールネジ11、21の送り量調整データdr1、dr2の取得手順の一例を示すフローチャートである。ただし、ボールネジ11、21とも同様な手順により送り量調整データdr1、dr2の取得を行うため、ここでは、第1記録ヘッド10を移動させるのに使用するボールネジ11の送り量調整データdr1の取得手順についてのみ説明する。
【0121】
送り量調整データの取得手順において、まず、駆動モータ15に所定パルスを送信し、第1記録ヘッド10をヘッド位置PLの初期位置PL(1,0)(原点位置)に移動させる(S101)。次に、レーザ測長器300から第1記録ヘッド10にレーザを照射することにより、測長器300から第1記録ヘッド10までの距離DL(1,0)を測定する(S102)。続いて、制御手段8内に設けられた演算用メモリ(図示せず)に変数kの領域を確保し、変数kに1を格納する(S103)。
【0122】
続いて、駆動モータ15に所定パルス数n1を送信し、第1記録ヘッド10をヘッド位置PL(1,1)まで移動させる(S104)。なお、本実施の形態において、1パルスあたりの第1記録ヘッド10の移動量MD1は0.5μmであり、また、ステップS104において駆動モータ15に送信されるパルス数n1は200,000パルスであるため、1回当たりの第1記録ヘッド10の移動量の演算値DCは100mmである。
【0123】
続いて、レーザ測長器300によりヘッド位置PL(1,k)における距離DL(1,k)を測定する(S105)。そして、変数kの値が「1」の場合には、ステップS102で測定した距離DL(1,0)とステップS105で測定した距離DL(1,1)とを、また、変数kの値が「1」より大きい場合には、ステップS105で測定した距離DL(1,k-1)とDL(1,k)とを、演算値DCと、1パルスあたりの第1記録ヘッド10の移動量MD1とともに数1に代入することにより送り量補正データRe(1,k)(単位:パルス)を求める(S106)。
【0124】
【数1】

【0125】
ここで、送り量補正データRe(1,k)は、第1記録ヘッド10を演算値DCだけ実際に移動させる際に、所定パルス数n1を補正するのに必要となる補正データである。例えば、変数kが「1」の場合であって、(DL(1,1)−DL(1,0))の値が100.010(mm)の場合、送り量補正データRe(1,k)は、20パルスとなる。すなわち、第1記録ヘッド10を初期位置PL(1,0)から100mm移動させるためには、パルス数n1から20パルス分だけ差し引いた199,980パルスを駆動モータ15に送信することとなる。また、(DL(1,1)−DL(1,0))の値が99.994(mm)の場合、送り量補正データRe(1,k)は、−12パルスとなり、第1記録ヘッド10を初期位置PL(1,0)から100mm移動させるためには、200,012パルスだけ駆動モータ15に送信する必要がある。
【0126】
そして、すべての測定位置PL(1,k)において送り量補正データRe(1,k)の演算が終了した場合、ステップS106で求めた送り量補正データRe(1,k)を使用し、図6に示す補正データメモリ84に格納する送り量調整データdr1を演算する(S109)。
【0127】
前述したように本実施の形態における補正データメモリ84のメモリ空間は第1の実施の形態と同様にi軸方向に125分割、j軸方向に250分割されている。ここで、セル(i,j)に格納される送り量調整データをdr1(i,j)と表し、所定パルスn1が200,000パルス、1パルスあたりの第1記録ヘッド10の移動量MD1が0.5μm(したがって、ステップS104における第1記録ヘッド10の移動量の演算値DCが100mm)、ボールネジ11の有効範囲が初期位置PL(1,0)から2500mm(したがって、ステップS104からS106は25回繰り返される)、送り量補正データRe(1,k)(1≦k≦25)とした場合、dr1(i,j)は、例えば、数2および数3によって求められる。
【0128】
【数2】

【0129】
【数3】

【0130】
但し、数2は、変数kと補正データメモリ84のメモリ空間のj座標との関係を示す式である。但し、[]*は小数点以下の切り捨てを意味する関数である。また、数3は、送り量調整データdr1(i,j)と送り量補正データRe(1,k)の関係を示す式であり、任意の変数i(0≦i≦124)について成立する。すなわち、数3は、補正データメモリ84のメモリ空間のi座標の値が等しいセルについて、同一の送り量調整データdr1(i,j)が格納されることを示す。例えば、数2および数3によれば、送り量補正データRe(1,1)の値が、20パルスの場合、送り量調整データdr1(0,j)(0≦j≦9)には、「2」が格納される。また、dr1(i,8)(0≦i≦124)には、「2」が格納される。
【0131】
一方、すべてのPL(1,k)において送り量補正データRe(1,k)の演算が終了していない場合には、変数iに「1」を加え(S108)、ステップS104〜S106の処理を再度実行する(S107)。
【0132】
<3.4.送り量の調整データを含む補正データによる補正処理>
図19は、本実施の形態の画像記録装置における補正処理を説明するタイムチャートである。ここでは、図19に示すタイムチャートと、図15に示す機能ブロック図を用いて、補正データメモリ84に格納されている補正データda1による補正処理、および、補正データメモリ84aに格納されている補正データda2による補正処理について説明する。
【0133】
図19に示すように、ドラム1の回転位置が原点位置に達してエンコーダ7から制御部91に原点信号osが送出される時刻t0から、第1記録ヘッド10の主走査位置が記録禁止エリアに達する時刻t1において、制御部91は、第1主走査位置信号m1と第1副走査位置信号s1とが補正データメモリ84へ供給されるようにカウンタ94、101を制御する。補正データメモリ84は第1記録ヘッド10の走査位置に対応するセルに格納された補正データda1(ドット調整データdm1、調整データds1および送り量調整データdr1により構成される)をデータ分離器97に向けて出力する。すなわち、主走査位置信号m1と副走査位置信号s1とを補正データメモリ84に供給することにより、第1記録ヘッド10の現在位置に応じた補正データda1をデータ分離器97に出力することができる。データ分離器97は補正データda1を分離し、ドット調整データdm1をドット長調整器95に、調整データds1を分周器99に、また、送り量調整データdr1をパルス調整器104に出力する。
【0134】
分周器99は、副走査送り調整データds1によって適宜補正されたパルス信号ps1をパルス調整器104に出力する。そして、パルス調整器104は、データ分離器97から入力された送り量調整データdr1に基づきパルス信号ps1を調整してパルス信号ps3を生成することにより、駆動モータ15に出力するパルス数を増減させ、第1記録ヘッド10の移動量を調整する。
【0135】
また、ドット長調整器95は、データ分離器97から入力されたドット調整データdm1に基づいて、適宜補正されたドットクロックdc1を第1画像処理手段81に送出する。そして、画像処理手段81では、ドット長調整器95から入力されるドットクロックdc1と画像データim1とにより描画信号d1を生成して第1記録ヘッド10に送信することにより、印刷版P12に画像を記録する。
【0136】
一方、時刻t0から、第2記録ヘッド20の主走査位置が記録禁止エリアに達する時刻t2において、制御部91は、主走査位置信号m2と副走査位置信号s2とが補正データメモリ84aへ供給されるようにカウンタ94、102を制御する。補正データメモリ84aは第2記録ヘッド20の走査位置に対応するセルに格納された補正データda2をデータ分離器98に向けて出力する。すなわち、第1記録ヘッド10の場合と同様に、第2記録ヘッド20の現在位置に対応する補正データda2をデータ分離器98に出力する。データ分離器98は補正データda2を分離し、ドット調整データdm2をドット長調整器96に、調整データds2を分周器100に、また、送り量調整データdr2をパルス調整器105に出力する。
【0137】
分周器100は、副走査送り調整データds2によって適宜補正されたパルス信号ps2をパルス調整器105に出力する。そして、パルス調整器105は、データ分離器98から入力された送り量調整データdr2に基づきパルス信号ps2を調整してパルス信号ps4を生成することにより、駆動モータ25に出力するパルス数を増減させ、第2記録ヘッド20の移動量を調整する。
【0138】
また、ドット長調整器96は、データ分離器98から入力されたドット調整データdm2に基づいて、適宜補正されたドットクロックdc2を第2画像処理手段82に送出する。そして、画像処理手段82では、ドット長調整器96から入力されるドットクロックdc2と画像データim2とにより描画信号d2を生成し、第2記録ヘッド20に送信することにより印刷版P11に画像を記録する。
【0139】
このように、時刻t0から時刻t1において、制御手段8は、(1)記録ヘッド10、20の副走査方向の送り量をそれぞれ送り量調整データdr1、dr2により調整し、調整後のパルス信号ps3、ps4をそれぞれ駆動モータ15、25に供給することにより記録ヘッド10、20を個別的に移動させつつ、(2)記録ヘッド10および記録ヘッド20に対してそれぞれ描画信号d1、d2を供給することにより画像記録を並行して行わせることができる。
【0140】
時刻t1において第1記録ヘッド10が記録禁止エリアに達すると、制御部91はカウンタ94、101を制御して補正データメモリ84に入力される主走査位置信号m1および副走査位置信号s1の供給が停止され、補正データメモリ84からの補正データda1の読出しが一旦停止する。続いて、時刻t2において、第2記録ヘッド20が記録禁止エリアに達すると、制御部91は、カウンタ94、102を制御して補正データメモリ84aに入力される主走査位置信号m2および副走査位置信号s2の供給が停止され、補正データメモリ84aからの補正データda2の読出しが一旦停止する。
【0141】
その後、第1記録ヘッド10が記録可能エリアに達する時刻t3において、制御部91は、カウンタ94、101を制御して第1主走査位置信号m1と第1副走査位置信号s1とが補正データメモリ84に送られるようにして、補正データメモリ84から補正データda1の出力が再開される。そのため、時刻t3からドラム1の回転位置が再び原点位置に達する時刻t0(図19中の右側に示す時刻t0)において、補正データメモリ84から補正データda1が順次データ分離器97に送られるようになる。そして、前述したように補正データda1に基づいて、パルス調整器104から駆動モータ15にパルス信号ps3が、また、画像処理手段81から第1記録ヘッド10に描画信号d1が、それぞれ出力される。
【0142】
続いて、第2記録ヘッド20が記録可能エリアに達する時刻t4において、制御部91は、カウンタ94、102を制御して主走査位置信号m2と副走査位置信号s2とが補正データメモリ84aに送られるようにして、補正データメモリ84aから補正データda2の出力が再開される。そのため、時刻t4からドラム1の回転位置が再び原点位置に達する時刻t0において、補正データメモリ84aから補正データda2が順次データ分離器98に向けて送られるようになる。そして、前述したように補正データda2に基づいて、パルス調整器105から駆動モータ25にパルス信号ps4が、画像処理手段82から記録ヘッド20に描画信号d2が、それぞれ出力される。
【0143】
このように、時刻t4からドラム1の回転位置が再び原点位置に達する時刻t0において、制御手段8は、記録ヘッド10、20の副走査方向の送り量をそれぞれ送り量調整データdr1、dr2により調整しつつ、記録ヘッド10および記録ヘッド20に対して画像記録を並行して行わせることができる。
【0144】
また、図19中の右側に示す時刻t0から、左側に示す時刻t0に処理が連続して移行することにより、補正処理が引き続き実施される。
【0145】
<3.5.第3の実施の形態の画像記録装置の利点>
第3の実施の形態では、(1)パルス調整器104において送り量調整データdr1を使用することにより調整されたパルス信号ps3を駆動モータ15に出力することにより、また、(2)パルス調整器105において送り量調整データdr2を使用することにより調整されたパルス信号ps4を駆動モータ25に出力することにより、ボールネジ11およびボールネジ21のネジリードのバラツキに起因する第1記録ヘッド10および第2記録ヘッド20送り量のバラツキの影響を低減し、各印刷版(版材)P12、P11に記録される互いに対応する複数の色成分画像の輪郭が副走査方向について略同一になるように調整することができる。
【0146】
このような画像記録を用いた製版プロセスにおいては、フルカラー印刷に必要となる4枚の色版(CMYK版)を2枚ずつの色版の組に分け、それぞれの組について、2枚の版材を印刷版P11、P12としてドラム1上に装着して2つの色成分画像をそれぞれ記録する。たとえばC版とM版との2枚の版材からなる第1の組をドラム1上に配列させて装着し、それらに対してC色成分画像とM色成分画像とを並行して記録する。次に、Y版とK版との2枚の版材からなる第2の組をドラム1上に配列させて装着し、それらに対してY色成分画像とK色成分画像とを並行して記録する。このようにして完成した4枚の色版をそれぞれ使用してYMCKの各カラー成分画像を印刷媒体たとえば紙上に印刷することにより、印刷されたフルカラー画像内の記録物の輪郭が、色成分ごとにずれたり不鮮明になったりすることを防止することができる。
【0147】
<4.第4の実施の形態>
<4.1.位置決めピンの取り付け位置のズレによる記録画像の変形>
図20は、ドラム1上に立設された複数の位置決めピンによって2枚の印刷版をドラム1に配置する配置方法について説明するための図である。また、図21は、図20に示すように固定され画像記録された印刷版を平面的に展開した図である。
【0148】
図20(a)に示すように、印刷版P11は、ドラム1上に立設された2本の位置決めピンDP11、DP12によって位置決めされて配置される。具体的には、印刷版P11の上方に形成された切欠部分CP11に位置決めピンDP12を嵌め合わせ、かつ、印刷版P11上部の印刷版上端直線PU11部分を位置決めピンDP11に押し当てることにより、印刷版P11の印刷版上端直線PU11とドラム1の回転軸RA1とが平行になるよう、印刷版P11がドラム1上の所定の場所に位置決めされる。そのため、第2記録ヘッド20の副走査方向と回転軸RA1とが平行となる場合、第2記録ヘッド20によって印刷版P11に記録される画像の記録開始点を結んだ記録領域上端直線LU11と、印刷版上端直線PU11とを平行とし、印刷版上端直線PU11と記録領域上端直線LU11との距離を距離DD1とすることができる。そして、これら位置決めピンDP11、DP12によって位置決めされた印刷版P11は、図示しないクランプ部材によってドラム1の外周面に保持される。
【0149】
また、第1記録ヘッド10の副走査方向と回転軸RA1とが平行な場合、位置決めピンDP13、切欠部分CP12、および位置決めピンDP14を使用して印刷版P12をドラム1上に配置することにより、第1記録ヘッド10によって印刷版P12に記録される画像の記録開始点を結んだ記録領域上端直線LU12と、印刷版上端直線PU12とを平行とし、印刷版上端直線PU12と記録領域上端直線LU12との距離を距離DD2とすることができる。
【0150】
このように、記録領域上端直線LU11および記録領域上端直線LU12を回転軸RA1と平行とし、かつ、記録領域上端直線LU11と印刷版上端直線PU11との距離DD1と、記録領域上端直線LU12と印刷版上端直線PU12との距離DD2とを同一とすることにより、フルカラー製版の各色版用に輪郭が略同一な色成分画像を描画する場合であっても、第1記録ヘッド10および第2記録ヘッド20を使用し、4色の色版画像のうちいずれか2つを同時に印刷版P12およびP11に記録することができる。
【0151】
しかし、図20(b)に示すように、位置決めピンDP21またはDP22の取り付け位置の精度が良くなく、回転軸RA1に平行な直線RA2と印刷版P21の上端部を示す印刷版上端直線PU21とのなす角度θ2が、2つの記録ヘッド10、20を同時に使用して輪郭が略同一な色成分画像を記録するのに必要とされる角度の許容範囲以上となる場合がある。
【0152】
このとき、第2記録ヘッド20によって印刷版P21上で画像が記録される画像記録領域PA21(実線で囲まれた部分)は、例えば、図21(b)に示すように、位置決めピンDP21およびDP22がドラム1の所定位置に取り付けられた時の画像記録領域PA23(一点鎖線で囲まれた部分)と比較して、位置Pt21を中心に図面下方向に角度θ2だけ回転させたものとなる。そのため、第2記録ヘッド20による画像記録の開始点を結んだ記録領域上端直線LU21(実線)は、画像記録領域PA23の記録領域上端直線LU23(一点鎖線)と比較して下方向に移動したものとなる。
【0153】
また、2つの位置決めピンの取り付け位置の精度が良くないため、図21(c)に示すように、画像記録領域PA24(実線で囲まれた部分)の記録領域上端直線LU24と、所定位置に位置決めピンを取り付けた場合における画像記録領域PA25(一点鎖線で囲まれた部分)の記録領域上端直線LU25との距離DD3が、2つの記録ヘッド10、20を同時に使用して略同一な輪郭の色成分画像を記録するのに必要とされる距離の許容範囲以上となり、記録領域上端直線LU24(実線)が記録領域上端直線LU25(一点鎖線)と比較して下方向に移動する場合もある。ピンが取り付けられた場合の基準画像領域と比較して、下方向に平行移動し、かつ、回転軸RA1に対して回転した位置に画像領域が存在することもある。
【0154】
このように、位置決めピンの取り付け位置の精度が所定範囲内とならない場合、印刷版に対して正確な位置に画像を記録することができず、第1記録ヘッド10によって描画される色成分画像の輪郭と、第2記録ヘッド20によって描画される色成分画像の輪郭とを略同一な形状とすることができない。また第1記録ヘッド10により描画された色成分画像と位置決めピンDP13、DP14との相対的位置関係を、第2記録ヘッド20により描画された色成分画像と位置決めピンDP11、DP12との相対的位置関係と略同一にすることができない。そのため、これら2つの記録ヘッド10、20によってカラー製版の各色版を作成し、続いて、描画された色版を使用してフルカラー印刷を行うと、印刷されたカラー画像内の各色成分画像の輪郭が、ズレたり不鮮明になったりすることが生じる。
【0155】
そこで、本実施の形態では、第1の実施の形態の画像記録装置とほぼ同様な装置を使用し、ドラム1上の異なった場所に固定された2枚の印刷版P11、P12に記録される2つの色成分画像の輪郭を略同一の形状にするとともに、各色成分画像と各色成分画像に対応する位置決めピンとの相対的位置関係をすべての印刷版において略同一とするため、位置決めピンの幾何学的な位置関係に基づく補正処理について説明する。なお、本実施の形態で使用する画像記録装置のハードウェア構成は、(1)画像データim1、im2を回転移動や平行移動によって変換する画像変換手段106、107をさらに備えることを除いて第1の実施の形態の画像記録装置と同一なため、ここでは、第1の実施の形態の画像記録装置との相違点についてのみ説明する。
【0156】
<4.2.第4の実施の形態における画像記録装置のハードウェア構成>
図22は、本実施の形態における制御手段のハードウェア構成を説明するための図である。また、図23は、本実施の形態における制御手段の機能ブロック図である。図22および図23に示すように、本実施の形態における画像記録装置のハードウェア構成は、制御手段8に画像変換手段106、107が追加された点を除いて第1の実施の形態の制御手段とほぼ同一である。そのため、ここでは、画像変換手段106、107について説明する。
【0157】
画像変換手段107は、図21(b)、(c)に示すように、位置決めピンの取り付け位置が許容範囲外となり、印刷版に対して正確に画像を記録することができない場合に、第2記録ヘッド20によって記録される画像データim2を変換して画像データim4を生成する手段である。図23に示すように、画像変換手段107は、画像データメモリ85と画像処理手段82との間に追加される。
【0158】
図23に示すように、画像データim2は、画像データメモリ85から画像変換手段107に入力される。画像変換手段107には、予め実験等によりも求めた回転軸RA1と画像記録領域の記録領域上端直線とのなす角θ2(図20(b)参照)、および、画像記録領域の主走査方向のズレ量DD3(図20(c)参照)が、格納されており、元画像データim2は、これら角度θ2およびズレ量DD3とを使用することにより平行移動および回転移動されて画像データim4に変換される。
【0159】
画像変換手段106は、画像変換手段107と同様な機能を有する変換手段であり、第1記録ヘッド10で記録される画像データim1を変換して画像データim3を生成する手段である。図23に示すように、画像変換手段106は、画像データメモリ85と画像処理手段81との間に追加される。画像変換手段106において、予め実験等によって求められた回転および平行移動パラメータを使用することにより、元画像データim1は、平行移動および回転移動された画像データim3に変換される。
【0160】
<4.3.第4の実施の形態の画像記録装置の補正処理>
ここでは、図22に示す本実施の形態における制御手段のハードウェア構成を説明するための図を使用し、画像変換手段106、107において実施される位置決めピンの位置ズレに関する補正処理について説明する。
【0161】
図22に示すように、画像データim2は、画像データメモリ85から画像変換手段107に入力される。画像変換手段107において、回転軸RA1と画像記録領域の記録領域上端直線とのなす角θ2、および、画像記録領域の主走査方向のズレ量DD3(図20(c)参照)を使用することにより、元画像データim2が画像データim4に変換される。
【0162】
そして、変換された調整済みの画像データim4は、データバス87を介して画像処理手段82に出力される。画像処理手段82では、画像データim4に基づき、ドットクロックdc2と同期するように描画信号d2を生成する。そして、描画信号d2は、第1の実施の形態と同様に第2記録ヘッド20に入力され、印刷版に色成分画像が記録される。
【0163】
また、同様な方法により、画像変換手段106で変換された画像データim3が第1記録ヘッド10によって印刷版に記録される。
【0164】
図22に示すように、画像データim1は、画像データメモリ85から画像変換手段106に入力される。画像変換手段106において、予め格納されている回転および平行移動パラメータを使用することにより、画像データim1は、移動・回転処理により画像データim3に変換される。そして、変換された調整済みの画像データim3は、データバス87を介して画像処理手段81に出力される。画像処理手段81では、画像データim3に基づき、ドットクロックdc1と同期するように描画信号d1を生成する。そして、描画信号d1は、第1の実施の形態と同様に第1記録ヘッド10に入力され、印刷版に色成分画像が記録される。
【0165】
なお、画像変換手段106、107によって元画像データim1、im2をそれぞれ画像データim3、im4に変換する時期について、各ドットクロックに対応する画像データim3、im4の変換処理に要する時間(すなわち、ドットクロックに対応する画像データim3、im4の変換処理に必要となる画像データim1、im2を画像データメモリ85から読み出し、続いて、画像変換手段106、107において、読み出した画像データim1、im2を画像データim3、im4に変換するのに要する時間)がドットクロックdc1、dc2によって規定される時間内に完了する場合は、画像記録処理を実行するときに行ってもよい。一方、変換処理がドットクロックdc1、dc2によって規定される時間内に完了しない場合は、画像変換手段106、107のそれぞれに図示しない画像データメモリを設け、予め変換した調整済みの画像データim3、im4を、それぞれ当該画像データメモリに保存し、記録ヘッド10、20による画像記録処理を実行する際は、当該画像データメモリから画像データim3、im4をそれぞれ読み出せばよい。
【0166】
また、補正データメモリ84およびサブメモリ83aによる主走査方向および副走査方向の補正処理は、第1の実施の形態と同様な処理によって行われる。
【0167】
<4.4.第4の実施の形態の画像記録装置の利点>
第4の実施の形態では、位置決めピンの取り付け位置の精度が所定範囲内とならない場合、(1)画像変換手段106によって変換された画像データim3を画像データim1に代えて画像処理手段81に出力することにより、また(2)画像変換手段107によって変換された画像データim4を画像データim2に代えて画像処理手段82に出力することにより、位置決めピンの取り付け位置によらず、第1記録ヘッド10によって記録される色成分画像の輪郭と、第2記録へッド20によって記録される色成分画像の輪郭とを略同一な形状に調整することができる。また、各色成分画像と各色成分画像に対応する位置決めピンとの相対関係がすべての印刷版において略同一となるように調整することもできる。
【0168】
第3の実施形態と同様に、このような画像記録を用いた製版プロセスにおいては、フルカラー印刷に必要となる4枚の色版(CMYK版)を2枚ずつの色版の組に分け、それぞれの組について、2枚の版材を印刷版P11、P12としてドラム1の外周面に保持して2つの色成分画像をそれぞれ記録する。このようにして完成した4枚の色版をそれぞれ使用してYMCKの各カラー成分画像を印刷媒体たとえば紙上に印刷することにより、印刷されたフルカラー画像内の記録物の輪郭が、色成分ごとにずれたり不鮮明になったりすることを防止することができる。
【0169】
第4の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、サブメモリ83aを使用することにより、第1記録ヘッド10の補正処理のための補正データメモリ84のアクセスと、第2記録ヘッド20の補正処理のための補正データメモリ84のアクセスとが重なることを防止している。そのため、図23に示すカウンタ94とカウンタ101、102とを使用することにより、比較的簡易な回路構成で補正データメモリ84に読出しアドレスを供給することができる。
【0170】
また、第4の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、第2記録ヘッド20で使用する補正データda格納用メモリとして、ドラム1が1回転する間に1個の記録ヘッドが必要とするだけのデータ量(すなわち、図6に示すi軸方向1列分の補正データ量)を格納可能なサブメモリ83aを使用し、必要に応じて補正データメモリ84から補正データdaを読み出してサブメモリ83aに格納することができる。そのため、補正データメモリ84と同様なメモリ空間を有する別の補正データメモリを用意し、補正データメモリ84に格納されている補正データdaと同様なデータを重複して保持する必要がなく、ハードウェア資源およびソフトウェア資源の節約を図ることができる。
【0171】
<5.第5の実施の形態>
<5.1.主走査方向の撓み補正>
図24は、本実施の形態における画像記録装置のボールネジ11、21およびベース部9の撓みを説明するための図である。図24に示すように、ベース部9は、少なくとも2つのベース部支持手段9aによって支持されており、その上部には、2つのネジ支持手段23が固定されている。
【0172】
2つのネジ支持手段23には、副走査方向に2本のボールネジ11、21が固定されている。なお、本実施の形態のドラム1は、図24に示すように、その外周面に2枚の印刷版P31、P32を保持することができる程度の長さを有しており、ベース部9は、副走査方向に3000mm以上の長さとなり大型化している。そのため、図24に示すようにベース部9をベース部支持手段9a上に固定した場合、ベース部9は、従来の画像記録装置のベース部と比較して、自重による撓みの影響を大きく受ける。その結果、ベース部9の形状は、図24中の一点鎖線から実線のように変形する。
【0173】
第1記録ヘッド10および第2記録ヘッド20を副走査方向に案内するガイド12(図2参照)もベース部9と同様に自重による撓みの影響を大きく受けて変形する。また、第1記録ヘッド10を副走査方向に移動させるボールネジ11については、大型化による自重増大に加え、第1記録ヘッド10の荷重を受けて図24に示すように変形する。同様に第2記録ヘッド20を副走査方向に移動させるボールネジ21についても、大型化による自重増大に加え、第2記録ヘッド20の荷重を受けて、図24のように変形する。
【0174】
このように、ボールネジ11、21、ガイド12およびベース部9は、ドラム1の主として大型化のため従来の画像記録装置と比較して撓みの影響を大きく受ける。そのため、ボールネジ11、ガイド12、ボールネジ21にガイドされて移動する記録ヘッド10、20の移動方向とドラム1の回転軸RA1とが相対的に歪むこととなり、その結果、印刷版に記録される画像も撓み歪んだものとなる。
【0175】
図25(a)は、これら撓みの影響を受けない場合の印刷版に記録される画像の例を示す図である。図25(a)に示すように、印刷版P31の印刷版上端直線PU31と、画像記録領域PA31の記録領域上端直線LU31とを平行にすることができ、また、印刷版P32の印刷版上端直線PU32と、画像記録領域PA32の記録領域上端直線LU32とを平行にすることができ、さらに、印刷版上端直線PU31と記録領域上端直線LU31との距離DD31と、印刷版上端直線PU32と記録領域上端直線LU32との距離DD32を同一にすることができる。そのため、記録ヘッド10、20を使用することにより、画像記録領域PA31と画像記録領域PA32とにカラー製版の各色版のような略同一形状の画像を、2枚同時に記録することができる。
【0176】
一方、図25(b)は、撓みの影響を受けた場合の印刷版に記録される画像の例を示す図である。図24に示すように、ボールネジ11、21、ベース部9のそれぞれは、中心部分が最も撓む。そのため、画像記録領域PA41の記録開始点を結んだ記録領域上端直線LU43は、荷重を受けない場合の記録領域上端直線LU41と比較して、記録領域上端直線LU43の左端部から副走査方向のプラス方向に向かって徐々に下降(主走査方向のプラス方向にシフト)し、また、画像記録領域PA41の記録終了点を結んだ記録領域下端直線LL43も、荷重を受けない記録領域下端直線LL41と比較して、記録領域下端直線LL43の左端部から副走査方向のプラス方向に向かって徐々に下降する。同様に、画像記録領域PA42の記録開始点を結んだ記録領域上端直線LU44は、荷重を受けない記録領域上端直線LU42と比較して、記録領域上端直線LU44の右端部から副走査方向のマイナス方向に向かって徐々に下降(主走査方向のプラス方向にシフト)し、また、画像記録領域PA42の記録終了点を結んだ記録領域下端直線LL44も、荷重を受けない場合の記録領域下端直線LL42と比較して、記録領域下端直線LL44の右端部から副走査方向のマイナス方向に向かって徐々に下降する。
【0177】
このように、ボールネジ11、21、およびベース部9が撓むことにより、記録ヘッド10、20によってそれぞれ記録される画像記録領域PA42、PA41の領域形状が相違し、相対的に歪んだものとなる。そのため、これら撓みの影響を受けた状態でカラー製版の各色版のような略同一形状の画像を、印刷版P42、P41のそれぞれに記録することが非常に困難となる。
【0178】
そこで、本実施の形態では、第4の実施の形態の画像記録装置のハードウェア構成が同様な装置を使用し、これら撓みの影響を受けた場合であっても、記録ヘッド10、20によってそれぞれ記録される印刷版の画像の歪みの影響を除去し、各画像を略同一の形状にする補正について説明する。なお、本実施の形態は、後述するように画像変換手段106、107に格納する画像変換パラメータが異なる点を除いて第4の実施の形態の画像記録装置と同一なため、以下では、第4の実施の形態の画像記録装置との相違点(撓み補正)についてのみ説明する。
【0179】
<5.2.主走査方向の撓み量調整データの取得手順>
ここでは、主走査方向の撓み量の調整データを取得する方法について説明する。図26は、ボールネジ11、21およびベース部9の撓み量を取得方法を説明するための図である。図26に示すように、撓み補正では、まず、画像変換手段106、107のそれぞれに後述する画像変換パラメータを格納せずに、印刷版P41に対して第2記録ヘッド20を使用し、画像記録領域PA41の上端部を示す記録領域上端直線LU43を記録するとともに、印刷版P42に対して第1記録ヘッド10を使用し、画像記録領域PA42の上端部を示す記録領域上端直線LU44を記録する。
【0180】
次に、撓みの影響を受けない場合の画像記録領域PA41の記録開始点を結んだ記録領域上端直線LU41(破線)と、記録領域上端直線LU43(実線)の各部分との距離DD41(単位:mm)を複数測定する。このとき、距離DD41の測定は、例えば、ドラム1の表面を副走査方向に250分割して得られる分割領域に対応する部分毎に行ってもよい。
【0181】
続いて、先ほど測定したすべての距離DD41を、画像変換手段107において画像変換に使用する撓み量調整データdf2に変換する。ここで、撓み量調整データdf2とは、印刷版P41に記録領域上端直線LU41を画像記録の開始点とするような撓みの影響を受けない画像を記録するため、第1の実施形態の画像データim2を変換するのに使用される調整データであり、例えば、副走査方向に250分割して得られる分割領域に対応する部分毎に求められる。撓み量調整データdf2は、距離DD41を、ドラム1外周面の1ドットクロックdc2あたりの回転距離で除することにより求めることができる。そして、データim2を撓み量調整データdf2分だけ主走査方向のマイナス方向に移動させる変換処理を行うことにより、撓みの影響を受けない画像を印刷版P41に記録することができる。そして、求められた撓み量調整データdf2を、例えば画像変換手段107に格納する。
【0182】
同様に、距離DD42をドラム1の外周面のドットクロックdc1あたりの回転距離で除することにより求められる撓み量調整データdf1を画像変換手段106に格納する。そして、撓み量調整データdf1によって画像データim1を副走査位置に応じて主走査方向のマイナス方向に移動させる変換処理を行うことにより、撓みの影響を受けない画像を印刷版P42に記録することができる。
【0183】
<5.3.撓み量調整データによる補正処理>
ここでは、図22に示す第4の実施の形態における制御手段のハードウェア構成を説明するための図を使用し、画像変換手段106、107において実施される撓み量の補正処理について説明する。
【0184】
本実施の形態では、画像変換手段106において、撓み量調整データdf1を使用し、元画像データim1を画像データim3に、また、画像変換手段107において、撓み量調整データdf2を使用し、元画像データim2を画像データim4にそれぞれ変換する。
【0185】
図22に示すように、画像変換手段106には画像データメモリ85から画像データim1が入力される。当該画像データim1は、撓み量調整データdf1に基づき、主走査方向に移動された画像データim3に変換される。そして、変換された調整済みの画像データim3は、データバス87を介して第1画像処理手段81に出力される。第1画像処理手段81では、画像データim3に基づきドットクロックdc1と同期するように描画信号d1を生成する。そして、描画信号d1は第4の実施の形態と同様に第1記録ヘッド10に入力され、印刷版に画像が記録される。
【0186】
また、画像変換手段107において、画像変換手段106と同様な方法により画像変換処理が行われる。画像変換手段107には画像データメモリ85から画像データim2が入力される。入力された画像データim2は、撓み量調整データdf2に基づき、画像データim2を主走査方向に移動した画像データim4に変換される。そして、変換された調整済みの画像データim4は、データバス87、第2画像処理手段82を経て、第2記録ヘッド20によって印刷版に印刷される。
【0187】
なお、画像変換手段106、107によって元画像データim1、im2をそれぞれ画像データim3、im4に変換する時期について、第4の実施の形態と同様に各ドットクロックに対応する画像データim3、im4の変換処理に要する時間がドットクロックdc1、dc2によって規定される時間内に終了する場合は、記録ヘッド10、20による画像記録処理を実行するときに行ってもよい。一方、変換処理がドットクロックdc1、dc2によって規定される時間内に終了しない場合は、画像変換手段106、107のそれぞれに図示しない画像データメモリを設け、予め変換後の画像データim3、im4を、それぞれ当該画像データメモリに保存し、記録ヘッド10、20による画像記録処理を実行する際には、当該画像データメモリから画像データim3、im4をそれぞれ読み出せばよい。
【0188】
また、補正データメモリ84およびサブメモリ83aによる主走査方向および副走査方向の補正処理は、第1の実施の形態と同様な処理によって行われる。
【0189】
<5.4.第5の実施の形態の画像記録装置の利点>
第5の実施の形態では、ボールネジ11、21、ガイド12およびベース部9が撓みの影響を受ける場合、(1)画像変換手段106において撓み量調整データdf1に基づいて変換された画像データim3を画像データim1に代えて第1画像処理手段81に出力することにより、また、(2)画像変換手段107において撓み量調整データdf2に基づいて変換された画像データim4を画像データim2に代えて第2画像処理手段82に出力することにより、画像データの供給開始タイミングが調整され、撓みの影響を受けない画像を印刷版に記録することができ、第1記録ヘッド10によって記録される色成分画像の輪郭と第2記録ヘッド20によって記録される色成分画像の輪郭とを略同一の形状に調整することができる。そのため、ドラム1に2枚の印刷版を固定し、記録ヘッド10、20によって同時に色版を作成することができる。
【0190】
また、制御手段8に画像変換手段106、107を除いて第1の実施の形態と同様なハードウェア構成を有するため、本実施の形態は、第1の実施の形態と同様な効果(サブメモリ83aによる回路構成の簡易化、ハードウェア資源およびソフトウェア資源の節約)を有する。
【0191】
<6.第6の実施の形態>
第4の実施の形態において、図20に示すような2枚の印刷版をドラム1の外周面に保持した場合について、位置決めピンの取り付け位置のズレによって生じる問題、(1)回転軸RA1に対する画像記録領域の記録領域上端直線の傾き、(2)記録領域上端直線の主走査方向のズレ、について説明し、その補正処理について説明したが、この傾きやズレは、第4の実施の形態の画像記録装置を使用し、第1記録ヘッド10および第2記録ヘッド20の片方のみを用いて、図27に示すような2枚の印刷版に対して画像を記録する場合であっても同様に問題となる。
【0192】
第6の実施の形態に係る画像記録装置においては、第1記録ヘッド10および第2記録ヘッド20の一方が故障等によって使用不可になった場合、使用可能な記録ヘッドのみを用いてドラム1に装着された2枚の印刷版に対して順次、画像記録を行うようにしている。今、ドラム1に対して図27の様な状態で2枚の印刷版P52、P51が固定されており、第2記録ヘッド20が使用不可になったとする。この場合には、第2記録ヘッド20をドラム1に対向しない位置まで待避させた上で、第1記録ヘッド10によって印刷版P52、P51の順に画像記録を行う。
【0193】
印刷版P52は、位置決めピンDP53とDP54とによって位置決めされている。しかし、どちらかの位置決めピンの位置精度不足のため印刷版P52が所定の取り付け位置から図中一点鎖線で示すように、DD5だけ主走査方向にずれて取り付けられていたとする。
【0194】
もう一つの印刷版P51は、位置決めピンDP51とDP52とによって位置決めされている。しかし、どちらかの位置決めピンの位置精度不足のために印刷版P51が所定の取り付け位置よりも角度θ5だけ回転して取り付けられていたとする。
【0195】
先に図22を用いて説明したように、第1および第2記録ヘッド10および20の両方を用いて行う通常の画像記録であれば、画像変換手段106は、印刷版P52用の画像データim1に、予め格納されていたパラメータ(ここでは平行移動パラメータ)を適用して、平行移動変換された調整済の画像データim3として出力する。また、画像変換手段107は、印刷版P51用の画像データim2に、予め格納されていたパラメータ(ここでは回転パラメータ)を適用して、回転変換された調整済の画像データim4として出力する。
【0196】
この第6の実施の形態では、以下のように画像記録を行う。画像変換手段106は、印刷版P52に対して画像記録を行うために使用される元画像データim1を、予め格納されていたパラメータに従って画像変換を行い調整済の画像データim3とした上で、第1画像処理手段81に送る。これは第4の実施の形態における処理と同様であるが、この第6の実施の形態では、印刷版P51に対して画像記録を行うために使用される元画像データim2も画像変換手段106において画像変換が行われ、調整済の画像データim4とされて、第1画像処理手段81に送られる。但し、画像変換手段106は、元画像データim2を画像変換する際には、画像変換手段107に予め格納されていた回転パラメータを読み出して元画像データim2に適用するようにする。
【0197】
このように処理することによって、第1記録ヘッド10のみで2枚の印刷版P51、P52に対して画像記録を行う場合でも、その輪郭が略一致するような、互いに対応する複数の色成分画像を2枚の印刷版上に画像記録することが可能になる。
【0198】
<7.第7の実施の形態>
第5の実施の形態では、図24に示すように、ボールネジ11、22、ガイド12、およびベース部9が撓む場合について、印刷版に記録される画像の問題点および撓み補正処理について説明したが、この撓みによる問題は、第5の実施の形態の画像記録装置を使用する際に第1記録ヘッド10および第2記録ヘッド20の片方のみを用いて、図25に示すような2枚の印刷版に対して画像を記録する場合であっても同様に問題となる。この場合にも、第6の実施の形態で説明したような手法の適用により、一方の記録ヘッドのみで、その輪郭が略一致するような、互いに対応する複数の色成分画像を2枚の印刷版上に画像記録することが可能である。
【0199】
<8.第8の実施の形態>
第5および第7の実施の形態では、画像データの変換によって主走査方向の撓み補正を行っていたがこれは以下の手法によっても実現可能である。図28は、第8の実施の形態における画像記録装置の制御手段のハードウェア構成を説明するブロック図であり、図29は同制御手段の機能ブロック図である。なお、これらは第1の実施の形態におけるそれらとほば同一であるので相違点について説明する。
【0200】
図28に示すように、第8の実施の形態では、カウンタ123、124が新たに付加されている。また、補正データメモリ84には、補正データda1、da2に加え、主走査方向の撓み補正用の補正データda3がさらに格納されている。
【0201】
補正データda3について説明する。補正データda3は、主走査原点から記録ヘッド10または20によって画像記録が開始される位置までの主走査方向距離を、PLLクロックpc単位で規定するデータである。すなわち、図24を用いて先述したように、ベース部9、ガイド12およびポールねじ11、12が主走査方向に撓んでいる場合に、主走査原点からの記録開始位置をすべての副走査位置において同一にすると、図25(b)に示すように、印刷版P31、P32上の画像記録領域PA41、PA42の記録領域上端直線LU43、44は撓んでしまう。補正データda3は、上記記録領域上端直線LU43、44を図25(b)中で点線で示すLU41、LU42のように補正して印刷版上端直線PU31、32と平行にするためのデータであり、複数の副走査位置における主走査原点から記録領域上端直線LU43、44までの主走査方向距離に対応するデータである。
【0202】
また、補正データda3は、ドラム1を副走査方向に250分割した位置毎に測定されて取得された密度の低いデータを、演算によって、ドラム1が1回転する間の記録ヘッド10、20の副走査方向の移動量(1ピッチという)に相当する単位まで解像度が上げられたデータである。すなわち測定によって得られたデー夕が演算によって増分されている。
【0203】
カウンタ123、124には、主走査原点位置を示す原点信号osがエンコーダ7から入力し、ドラム1の回転位相を示すPLLクロックpcがPLL86から入力する。
【0204】
カウンタ123、124へは、原点信号osが入力したタイミングで、対応する記録ヘッド10、20の現在副走査位置に応じた補正データda3が読み出されて設定される。カウンタ123、124は原点信号osが入力したこのタイミングからPLLクロックpcのカウントを開始する。そして、記録補正データda3に対応するだけのPLLクロックpcがカウントされた段階で、記録開始タイミング信号st1、st2を第1、第2画像処理手段81、82に向けて送出する。
【0205】
第1、第2画像処理手段81、82は、記録開始タイミング信号st1、st2をトリガーにして、画像データメモリ85から送出される画像データim1、im2に基づくドットクロックdc1、dc2に同期した描画信号d1、d2の送出を開始し、第1、第2記録ヘッド10、20に供給する。
【0206】
こうして、印刷版P31、P32には、主走査方向の撓みのない画像記録領域PA31、PA32が形成されるようになる(図25(a)参照)。また、印刷版P31における印刷版上端直線PU31から記録領域上端直線LU31までの距離DD31と、印刷版P32における印刷版上端直線PU32から記録領域上端直線LU32までの距離DD32とは同一になる。そのため、記録ヘッド10、20を使用することにより、画像記録領域PA31と画像記録領域PA32とにカラー製版の各色版のような輪郭が略同一形状の色成分画像を、2枚同時に記録することができる。
【0207】
なお、第8の実施の形態では、主走査方向撓みを補正するための補正データda3は第1記録ヘッド10および第2記録ヘッド20で共有されたが、これを各記録ヘッド10、20毎に準備することも可能である。
【0208】
<9.変形例>
以上、本発明について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0209】
(1)第1ないし第8の実施の形態では記録材料を保持するのに円筒外面状のドラム1を用いているが、これに限定されるものでなく、例えば、円筒状の保持部材の内面を保持面として記録材料を保持し、当該円筒内面内において記録ヘッドを回転走査させる形式、いわゆる内面円筒型画像記録装置でも実施することができる。
【0210】
(2)また、第1ないし第8の実施の形態では、記録ヘッドの副走査位置をドラム1の回転軸に連結されたエンコーダ7からの信号に基づいて取得したが、ボールネジを駆動する駆動モータにエンコーダを取り付け、該エンコーダからのエンコーダパルス信号に基づいて取得するようにしてもよい。
【0211】
(3)第1および第2の実施形態において、ドラム1には1枚の印刷版のみを装着するのではなく、印刷版を複数枚装着し、それぞれの印刷版に対し異なる記録ヘッドで個別に画像記録を行うようにしてもよい。
【0212】
(4)また、第1および第2の実施の形態では、簡略化のため、主走査方向の画像歪みはドラム1の製造誤差に起因し、副走査方向の画像歪みは案内レール12の取り付け誤差によって起因するとして説明したが、これら以外の要因によって生じる画像歪みであっても本発明により補正が可能である。たとえばエンコーダ7の取り付け誤差で主走査方向の画像歪みが生じることがある。また、画像歪みとその要因との対応関係は上記以外の関係も考えられる。たとえば、ドラム1の製造誤差によって副走査方向の画像歪みが生じることもあるし、案内レール12の取り付け誤差によって主走査方向の画像歪みが生じることもある。いずれの場合であっても本発明の適用は可能である。また、これら変形例は、第4ないし第8の実施形態についても同様に適用可能である。
【0213】
(5)さらに、第1および第2の実施の形態において、本発明が解決しようとする画像歪みは、必ずしも複数の記録ヘッドが同一の部材を共有する場合にのみ発生するわけではない。たとえば、上記実施の形態では各記録ヘッドは別々のボールネジによって副走査方向に送られているが、これら別々のボールネジが各記録ヘッドに対してほぼ同様の主走査位置ずれまたは副走査位置ずれを引き起こす場合がある。これは各製品(ボールネジ)が持っている特性に由来することが多い。本発明は、複数の記録ヘッドによって共有されない部材により引き起こされた画像歪みであっても解決することができる。また、これら変形例は、第4ないし第8の実施形態についても同様に適用可能である。
【0214】
(6)第3ないし第5および第8の実施の形態において、2つの記録ヘッドを使用して、カラー製版の色版のような略同一な画像を2枚の印刷版に記録しているが、これに限定されるものでない。例えば、3つ以上の記録ヘッドを使用して、各記録ヘッドに対応する3つの印刷版に画像を記録してもよい。
【0215】
(7)第3の実施の形態では、図15に示すように、補正データメモリ84に補正データda1を、補正データメモリ84aに補正データda2をそれぞれ格納して補正処理を行っているが、これに限定されるものではない。例えば、図30に示すように、第1の実施の形態の画像記録装置のFPGA83にパルス調整器104、105を追加し、補正データメモリ84とサブメモリ83aとにより補正処理を行ってもよい。具体的に言うと、(A)補正データメモリ84のメモリ空間の各セルにドット調整データdm1、調整データds1および送り量調整データdr1、dr2を格納し、(B)データ分離器97には、補正データda1としてドット調整データdm1、調整データds1および送り量調整データdr1を、またデータ分離器98には補正データda2として、ドット調整データdm2、調整データds2および送り量調整データdr2を、それぞれ出力する。そして、画像記録時には、(C)図8に示すタイムチャートにより第1の実施の形態と同様な補正処理を実行する。その結果、本変形例を適用することにより、第3の実施の形態においても第1の実施の形態と同様な効果、すなわち、サブメモリ83aによる回路構成の簡易化、ハードウェア資源およびソフトウェア資源の節約などを得ることができる。また、本変形例を適用することにより、変形例(4)および(5)を適用することも可能となる。
【0216】
(8)第4および第8の実施の形態において、記録ヘッドに対応する印刷版を配置する位置決めピンの組み合わせが1通りの場合について説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、印刷版に対する位置決めピンの組み合わせが複数存在する場合、その数に応じた画像変換パラメータを使用してもよい。
【符号の説明】
【0217】
1 ドラム
3、14、24 ベルト駆動手段
4、15、25 駆動モータ
5、6 クランプ部材
7 エンコーダ
8 制御手段
10 第1記録ヘッド
11、21 ボールネジ
12 案内レール
20 第2記録ヘッド
23 ネジ支持手段
60 ネットワーク
81 第1画像処理手段
82 第2画像処理手段
83 FPGA
83a サブメモリ
83b ROM
84 補正データメモリ
85 画像データメモリ
86 PLL回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対応する複数の画像データに基づいて、複数の記録材料に複数の画像をそれぞれ記録する画像記録装置において、
略円筒面形状の保持面で前記複数の記録材料を並列的に保持する保持要素と、
前記保持面に対向して並列的に配置された複数の記録ヘッドのうち、実際に記録を行う一の記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに前記複数の画像データを順次供給する画像データ供給要素と、
前記保持面の軸線方向に沿って前記記録ヘッドを移動させる移動要素と、
前記記録ヘッドの移動信号を前記移動要素に与える移動信号供給要素と、
前記複数の画像データと前記各々の移動信号のうちの少なくとも一部を調整することによって、前記記録ヘッドによる前記複数の記録材料のそれぞれの走査の幾何学的不整合を補償する調整要素と、
を備え、
前記調整要素は、
前記実際に記録を行う一の記録ヘッドに対応する画像変換パラメータに基づいて前記複数の画像データを変換し、それによって複数の調整済画像データを得る画像変換要素、
を備え、
前記実際に記録を行う一の記録ヘッドは、前記複数の調整済画像データに基づいて、前記複数の記録材料に順次画像を記録する画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像記録装置において、
前記移動要素は、
前記記録ヘッドを前記軸方向に沿って案内するためのガイド要素と、
前記ガイド要素に沿って前記記録ヘッドを前記軸方向に駆動する駆動要素と、
を備え、
前記調整要素は、前記ガイド要素と前記保持面との相対的な歪みに応じて前記複数の画像データを調整する画像記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像記録装置において、
前記調整要素は、前記記録ヘッドへの前記複数の画像データの供給開始タイミングを調整する画像記録装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像記録装置において、
前記保持要素は、
前記複数の記録材料を前記保持面上に位置決めする位置決め要素、
を備え、
前記調整要素は、
i)前記記録ヘッドの移動方向と、
ii)前記位置決め要素によって規定される記録材料保持位置と、
の相対位置関係に基づいて前記複数の画像データを調整する画像記録装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像記録装置において、
前記画像変換要素は、前記複数の画像データを回転変換することによって前記調整済画像データを得る画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−215623(P2011−215623A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109366(P2011−109366)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【分割の表示】特願2008−283133(P2008−283133)の分割
【原出願日】平成14年10月11日(2002.10.11)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】