画像記録装置
【課題】画像記録装置において、流動性材料を貯溜する可変容器の容量変化に伴う可変容器内の圧力の変化を抑制する。
【解決手段】画像記録装置のサブタンク部43では、貯溜されるインクの増減に伴って可動部813が移動して可変容器81の容量が変化する。可変容器81の容量が小さくなると、可変容器81の復元力により容器内の負圧が増大する。アーム82には弾性部材により時計回りに回転する力が加えられ、可変容器81の容量を増加させる方向の力が可動部813に加えられる。可動部813の上下方向への移動は、運動変換機構83によりアーム82の先端部822の移動に変換される。可変容器81の容量が小さくなるに従って可動部813の移動方向とアーム82の回転の接線方向との成す角度は小さくなる。このため、弾性部材により可変容器81に付与される力が減少し、可変容器81の容量変化による可変容器81内の圧力の変化を抑制することができる。
【解決手段】画像記録装置のサブタンク部43では、貯溜されるインクの増減に伴って可動部813が移動して可変容器81の容量が変化する。可変容器81の容量が小さくなると、可変容器81の復元力により容器内の負圧が増大する。アーム82には弾性部材により時計回りに回転する力が加えられ、可変容器81の容量を増加させる方向の力が可動部813に加えられる。可動部813の上下方向への移動は、運動変換機構83によりアーム82の先端部822の移動に変換される。可変容器81の容量が小さくなるに従って可動部813の移動方向とアーム82の回転の接線方向との成す角度は小さくなる。このため、弾性部材により可変容器81に付与される力が減少し、可変容器81の容量変化による可変容器81内の圧力の変化を抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物上に画像を記録する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクの微小な液滴を吐出するヘッドを印刷の対象物に沿って走査することにより、対象物上に画像を記録するインクジェットプリンタが用いられている。インクジェットプリンタでは、インクは、例えば、アルミニウムや樹脂により形成された袋状のパウチから吐出部へと供給される。インクの供給に際しては、パウチ内のインクに負圧を与えることにより、ヘッドからのインクの吐出量の適正化を図る技術が知られている。
【0003】
特許文献1の画像形成装置では、板ばねにより形成された支えばねにより、インクパックの袋体の容積が大きくなる方向に、インクパックの一部を引き上げることにより、インクパック内部のインクに適当な負圧が付与される。インクパック内のインクが減少すると、支えばねの変形は大きくなり、インクパック内の負圧が大きくなりすぎる。そこで、インクパック内のインクがある程度まで減少すると、支えばねがインクパックから離れ、インクパック自身の剛性に由来する弾性力のみで、内部のインクに負圧を生じさせる。これにより、インクパック内の負圧の過剰な増大が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−103079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、大量のインクを消費する産業用のインクジェットプリンタ等では、大容量のメインタンクにインクを貯溜し、メインタンクとヘッドとの間に、メインタンクから供給されるインクを一時的に貯溜するサブタンクが設けられることがある。このような装置では、サブタンク内のインクに負圧を与えることにより、あるいは、水頭圧によりメニスカス圧を発生させるために、サブタンク内のインクに正圧を与えることにより、ヘッドからのインクの吐出量の適正化が図られる。
【0006】
特許文献1の負圧調整機構では、支えばねがインクパックから一度離れると、支えばねによる負圧調整は行うことができない。したがって、当該負圧調整機構では、内部のインクの増減が繰り返されるサブタンクの負圧を適切に調整することはできない。また、支えばねがインクパックから離れる際に、インクパック内の負圧が急激に小さくなるため、ヘッドからのインクのボタ落ちの発生等、印刷が不安定になるおそれもある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、画像記録装置において、流動性材料を貯溜する可変容器の容量変化に伴う可変容器内の圧力の変化を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、対象物上に画像を記録する画像記録装置であって、流動性材料の微小液滴を対象物に向けて吐出する吐出部と、前記対象物を前記吐出部に対して相対的に移動する移動機構と、前記対象物の相対移動に同期して前記吐出部からの流動性材料の吐出を制御することにより前記対象物上に画像を記録する記録制御部と、前記吐出部に流動性材料を供給する供給部とを備え、前記供給部が、供給源から供給された流動性材料を貯溜するとともに前記吐出部へと流動性材料が送出され、貯溜する流動性材料の増減に伴って可動部が移動することにより容量が変化する可変容器と、回転軸を中心として回転するアームと、前記可変容器の前記可動部の移動を前記アームの作用点の移動へと変換し、前記可変容器の容量が小さいほど、前記作用点の移動距離に対する前記可動部の移動距離の割合を大きくする運動変換機構と、復元力により、前記アームに対して前記回転軸を中心として回転する力を加えることにより、前記運動変換機構を介して前記可動部に、前記可変容器の容量を増加させる方向の力を与える弾性部材とを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像記録装置であって、前記弾性部材が、ねじりコイルばねである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像記録装置であって、前記可変容器が、可撓性を有する袋状である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の画像記録装置であって、前記可動部が、前記可変容器の表面の一部を含む部位であり、前記運動変換機構が、板状部材を備え、前記板状部材の主面と前記可動部とが面にて接合され、前記可動部の移動が前記主面にほぼ垂直な方向への前記板状部材の移動として前記運動変換機構に伝達される。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の画像記録装置であって、前記運動変換機構が、前記可動部に接続され、前記可動部の移動方向および前記回転軸に垂直な方向に延びるガイドを有するガイド部材を備え、前記作用点が、前記ガイドに沿って移動する。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画像記録装置であって、前記運動変換機構が、前記アームの前記作用点に取り付けられ、前記回転軸に平行な軸を中心として回転するローラをさらに備え、前記ローラが、前記ガイドに沿って滑らかに移動する。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の画像記録装置であって、前記供給部が、前記アームおよび前記弾性部材の組み合わせを2組備え、前記アームおよび前記弾性部材の組み合わせが、前記可動部を挟んで前記可変容器の両側に配置される。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、画像記録装置において、流動性材料を貯溜する可変容器の容量変化に伴う可変容器内の圧力の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一の実施の形態に係る画像記録装置を示す図である。
【図2】供給部の構成を示す図である。
【図3】サブタンク部の平面図である。
【図4】サブタンク部の正面図である。
【図5】サブタンク部の側面図である。
【図6】可変容器の容量とメニスカス圧との関係を示す図である。
【図7】可変容器の容量とメニスカス圧との関係を示す図である。
【図8】可変容器の容量とメニスカス圧との関係を示す図である。
【図9.A】サブタンク部の一部を示す図である。
【図9.B】サブタンク部の一部を示す図である。
【図9.C】サブタンク部の一部を示す図である。
【図10.A】他のサブタンク部の構成を示す図である。
【図10.B】他のサブタンク部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る画像記録装置1の構成を示す図である。画像記録装置1は、対象物上に流動性材料であるインクの微小液滴を吐出して画像を記録する(すなわち、画像の印刷を行う)インクジェットプリンタである。本実施の形態では、長尺状の印刷用紙である基材9を対象物として、基材9に対するカラー画像の記録が行われる。
【0018】
画像記録装置1は、基材9を所定の搬送経路に沿って移動する移動機構2、インクの微小液滴を基材9に向けて吐出する吐出部3、吐出部3にインクを供給する供給部4、基材9上のインクを乾燥する乾燥部5、基材9に記録された画像を検査する検査部6、および、これらの構成を制御する記録制御部71を備える。画像記録装置1では、記録制御部71により、吐出部3からのインクの吐出が、基材9の吐出部3に対する相対移動に同期して制御されることにより、基材9上に画像が記録される。
【0019】
図1に示すように、移動機構2は、第1搬送機構21a、第2搬送機構21b、および、複数の移動用ローラを22を備える。各移動用ローラ22は、紙面に垂直な軸を中心として回転する。基材9は、移動機構2により、図1中の右側に位置する巻き出し部11から巻き出され、吐出部3、乾燥部5および検査部6を順に通過した後、図1中の左側に位置する巻き取り部12に巻き取られる。
【0020】
吐出部3は、それぞれが互いに異なる色のインクを吐出する複数のヘッドユニット33を備える。複数のヘッドユニット33は、図1中の左右方向に配列される。各ヘッドユニット33の下端には、複数の吐出口が所定の配列方向に配列される。吐出口の配列方向は、吐出部3を通過する際の基材9の移動方向に垂直、かつ、基材9の記録面に平行な方向であり、図1中では、紙面に垂直な方向である。各ヘッドユニット33の複数の吐出口は、配列方向に関して基材9の記録面の記録範囲全体に亘って(ここでは、基材9の幅のほぼ全体に亘って)配列される。画像記録装置1では、記録制御部71により移動機構2および吐出部3が制御されることにより、吐出部3からインクを吐出しつつ、基材9が吐出部3の下方にて所定の移動方向に1回のみ相対移動することにより(すなわち、吐出部3の下方を図1中の右側から左側へと1回のみ通過することにより)、基材9の記録面上に画像が記録される。換言すれば、画像記録装置1では、いわゆる、ワンパス印刷が行われる。
【0021】
供給部4は、それぞれが互いに異なる色のインクを貯溜する複数の供給用容器を備える。複数の供給用容器は、複数のヘッドユニット33に接続される。以下では、複数の色のうちの1色のインクの供給について説明するが、他色のインクの供給についても同様である。図2は、供給部4における1色のインクの供給に係る構成を、吐出部3のヘッドユニット33と共に示す図である。実際には、供給部4には、複数色のインクのそれぞれの供給に係る同様の構成が設けられる。
【0022】
供給部4は、メインタンク41、第1流路42、サブタンク部43および第2流路44を備える。メインタンク41は、インクを貯溜する比較的大型のタンクであり、吐出部3へとインクを供給する供給源である。第1流路42は、メインタンク41およびサブタンク部43に接続されるチューブである。第1流路42上にはポンプ421が設けられ、ポンプ421が駆動されることにより、第1流路42を介してメインタンク41からサブタンク部43へとインクが導かれる。
【0023】
サブタンク部43では、メインタンク41から供給されたインクが、後述する可変容器81(図3ないし図5参照)に一時的に貯溜される。第2流路44は、サブタンク部43およびヘッドユニット33に接続されるチューブである。サブタンク部43の可変容器81は、ヘッドユニット33よりも高い位置に配置される。ヘッドユニット33からインクが吐出されると、ヘッドユニット33内のインク流路の圧力が低下し、サブタンク部43の可変容器81に貯溜されたインクが、第2流路44を介してヘッドユニット33へと送出される。
【0024】
図3ないし図5はそれぞれ、サブタンク部43を示す平面図、正面図および側面図である。サブタンク部43は、可変容器81、4本のアーム82、運動変換機構83、2つの弾性部材84およびベース部85を備える。ベース部85は薄板状であり、XY平面に略平行に広がる底部851、および、底部851の(+Y)側および(−Y)側の端部から(+Z)側へとXZ平面に略平行に広がる2つの側壁部852を備える。図4では、図の理解を容易にするために、(−Y)側の側壁部852の図示を省略している。
【0025】
可変容器81は、可撓性を有する袋状の扁平な容器(すなわち、Z方向の厚さが小さい、いわゆる、パウチ)である。本実施の形態では、可変容器81は、ポリエチレンテレフタレート(PET)の表面にアルミニウムがコーティングされたシートにより形成される。可変容器81の(−Z)側の主面である下面812は、ベース部85の底部851の上面に固定される。可変容器81の(+Z)側の主面である上面811は、Z方向に略垂直であり、上面811の中央部を含む部位は、Z方向(すなわち、上下方向)に移動可能な可動部813である。換言すれば、可動部813は、可変容器81の表面の一部を含む部位である。可変容器81の(−X)側には、第2流路44が接続される。
【0026】
メインタンク41(図2参照)から可変容器81にインクが供給されると、可変容器81の可動部813が(+Z)方向(すなわち、ベース部85から離れる方向)に移動し、可変容器81の容量が増加する。また、可変容器81からヘッドユニット33(図2参照)へとインクが送出されると、可変容器81の可動部813が(−Z)方向に移動し、可変容器81の容量が減少する。すなわち、可変容器81の容量は、可変容器81内のインクの増減に伴って可動部813が上下方向に移動することにより変化する。
【0027】
可変容器81の(+Y)側および(−Y)側には、それぞれ2本のアーム82が、Y方向およびZ方向に垂直なX方向に配列される。各アーム82は、Y方向を向く回転軸821を中心として回転する。回転軸821は、ベース部85の側壁部852に固定される。アーム82は、回転軸821から(+Z)方向かつ(−X)方向に延びており、アーム82の(+Z)側の先端部822(すなわち、回転軸821とは反対側の端部)は、可変容器81の上面811よりも(+Z)側に位置する。
【0028】
4本のアーム82のうち(+X)側の2本のアーム82の回転軸821には、ねじりコイルばねである弾性部材84が取り付けられる。換言すれば、供給部4のサブタンク部43は、アーム82および弾性部材84の組み合わせを2組備え、アーム82および弾性部材84の組み合わせは、可動部813を挟んで可変容器81のY方向の両側に配置される。弾性部材84は、その復元力により、アーム82を回転軸821を中心として図4中の時計回りに回転する力(すなわち、トルク)を加える。また、アーム82が、図4中において反時計回りに回転する(すなわち、先端部822が(−X)方向かつ(−Z)方向に移動する)に従って、弾性部材84の復元力による時計回りのトルクは増大する。
【0029】
可変容器81の(+Y)側の2本のアーム82の先端部822は、X方向に延びる板状の接続部材861により接続され、互いに対する相対位置が固定されている。可変容器81の(−Y)側の2本のアーム82の先端部822も、X方向に延びる板状の接続部材861により接続され、互いに対する相対位置が固定されている。したがって、可変容器81の(+Y)側および(−Y)側のそれぞれにおいて、X方向に並ぶ2本のアーム82の回転は同期する。また、当該2本のアーム82には、1つの弾性部材84の復元力により、図4中の時計回りに回転する力が加えられる。
【0030】
運動変換機構83は、接続プレート831、2つのガイド部材832、および、4つのローラ833を備える。接続プレート831は、XY平面に略平行に広がる板状部材である。接続プレート831の下面834は、可変容器81の可動部813と面にて接合される。本実施の形態では、接続プレート831の下面834に広範囲に亘って接着剤が面状に塗布され、可変容器81の可動部813と接合される。なお、接続プレート831の下面834と可変容器81の可動部813とは、実質的に面状に接合されるのであれば、例えば、互いに平行に延びる2本の線状に塗布された接着剤により接合されてもよい。また、接続プレート831の下面834と可変容器81の可動部813とは、接着剤による接着以外の方法により接合されてもよい。可変容器81の可動部813の移動は、接続プレート831の下面834にほぼ垂直なZ方向への接続プレート831の移動として運動変換機構83に伝達される。
【0031】
2つのガイド部材832はそれぞれ、接続プレート831の(+Y)側および(−Y)側において、接続プレート831から(+Z)側へと広がる板状部材である。ガイド部材832は、XZ平面に略平行となるように、接続プレート831に略垂直に配置され、(−Z)側の端部が接続プレート831に接続される。すなわち、ガイド部材832は、接続プレート831を介して、可変容器81の可動部813に接続される。ガイド部材832は、(+Z)側の端部近傍に開口する2つのガイド835を有する。ガイド835は、可変容器81の可動部813の移動方向および回転軸821に垂直なX方向に延びる。
【0032】
4つのローラ833はそれぞれ、4本のアーム82の先端部822に取り付けられる。ローラ833は、Y方向を向く軸836(すなわち、アーム82の回転軸821に平行な軸)を中心として回転する。4つのローラ833はそれぞれ、4つのガイド835内に配置される。ローラ833は、ガイド部材832のガイド835の(+Z)側のエッジに当接する。アーム82が回転軸821を中心として回転すると、ローラ833は、ガイド835に沿ってX方向に滑らかに移動する。上述のように、可変容器81の(+Y)側および(−Y)側のそれぞれにおいて、2本のアーム82の先端部822は接続されているため、当該2本のアーム82の先端部822に取り付けられた2つのローラ833は、同期してX方向に移動する。
【0033】
可変容器81内のインクがヘッドユニット33(図2参照)に送出されて減少すると、可変容器81の可動部813が(−Z)方向へと移動し、運動変換機構83の接続プレート831、および、2つのガイド部材832も(−Z)方向へと移動する。上述のように、接続プレート831の下面834は、扁平な可変容器81の可動部813と面接合されており、可変容器81の下面812はベース部85に面接合されている。このため、可変容器81の可動部813が(−Z)方向に移動すると、接続プレート831およびガイド部材832も、ほぼ(−Z)方向に移動する((+Z)方向への移動においても同様)。したがって、接続プレート831およびガイド部材832のZ方向以外への移動を制限する移動制限部(すなわち、接続プレート831およびガイド部材832をZ方向に案内する案内部)は、設ける必要がない。
【0034】
サブタンク部43では、各ガイド部材832の移動により、各ガイド部材832の2つのガイド835内に配置される2つのローラ833を介して、当該2つのローラ833に接続された2本のアーム82の先端部822に(−Z)方向の力が働く。その結果、アーム82は、回転軸821を中心として図4中の反時計回りに回転し、アーム82の先端部822は、(−X)方向かつ(−Z)方向に移動する。また、ローラ833は、ガイド835内において(−X)方向に移動する。
【0035】
一方、メインタンク41(図2参照)から可変容器81へとインクが供給され、可変容器81内のインクが増加すると、可変容器81の可動部813が(+Z)方向へと移動し、運動変換機構83の接続プレート831、および、2つのガイド部材832も(+Z)方向へと移動する。その結果、アーム82は、回転軸821を中心として図4中の時計回りに回転し、アーム82の先端部822は、(+X)方向かつ(+Z)方向に移動する。また、ローラ833は、ガイド835内において(+X)方向に移動する。
【0036】
サブタンク部43では、可変容器81の可動部813の移動が、運動変換機構83により、アーム82の先端部822の移動へと変換される。アーム82の先端部822は、可変容器81の可動部813の移動によるアーム82の回転の作用点となっている。
【0037】
アーム82には、上述のように、弾性部材84の復元力により、図4中の時計回りのトルクが加えられている。これにより、可変容器81の可動部813に、可変容器81の容量を増加させる方向の力が、運動変換機構83を介して与えられる。その結果、可変容器81内のインクに負圧(ヘッドユニット33内の吐出口近傍におけるインクのメニスカス生成に寄与する圧力であり、以下、「メニスカス圧」という。)が付与され、ヘッドユニット33からのインクの吐出量が適正化される。
【0038】
図6は、弾性部材84を省略したと仮定した場合における可変容器81の容量と可変容器81内のインクに付与されるメニスカス圧との関係を示す。図6の横軸では、左側から右側に向かうに従って容量が大きくなり、縦軸では、下側から上側に向かうに従ってメニスカス圧が大きくなる(すなわち、インクに付与される負圧の絶対値が大きくなる)。横軸および縦軸に関する当該説明は、図7および図8においても同様である。図6中の上側の線91は、可変容器81からヘッドユニット33に送出されるインクの量が、メインタンク41から可変容器81に供給されるインクの量よりも多いため、可変容器81内のインクの量が減少していく過程を示す。下側の線92は、可変容器81からヘッドユニット33に送出されるインクの量が、メインタンク41から可変容器81に供給されるインクの量よりも少ないため、可変容器81内のインクが増加していく過程を示す。以下、線91,92により示される過程をそれぞれ、「インク減少過程」および「インク増加過程」という。
【0039】
インク減少過程およびインク増加過程では、可変容器81の容量が小さくなるに従ってメニスカス圧は大きくなり、可変容器81の容量が大きくなるに従ってメニスカス圧は小さくなる。これは、可変容器81の容量が小さくなるに従って、可変容器81の元の形状からの変形の程度が大きくなり、可変容器81の復元力が大きくなるためである。インク減少過程における可変容器81の容量変化に対するメニスカス圧の変化の割合(すなわち、線91の傾き)は、インク増加過程における可変容器81の容量変化に対するメニスカス圧の変化の割合(すなわち、線92の傾き)よりも小さい。
【0040】
図6にて示すインク減少過程およびインク増加過程のメニスカス圧は、吐出部3からのインクの吐出量が過大になること(いわゆる、ボタ落ち)を防止することができる程度には大きくない。そこで、従来の画像記録装置(以下、「比較例の画像記録装置」という。)では、可変容器の表面の一部を板ばね等の弾性部材に接続し、可変容器の一部を弾性部材で引っ張ることによりメニスカス圧を増大させることが行われている。
【0041】
図7は、比較例の画像記録装置における可変容器の容量とメニスカス圧との関係を示す。図7中の上側の線93はインク減少過程を示し、下側の線94はインク増加過程を示す。図7では、図6中の線91,92を破線にて併せて描いている(図8においても同様)。比較例の画像記録装置では、弾性部材を設けたことにより、線91,92に比べてメニスカス圧は増大している。弾性部材は、可変容器の容量が小さくなるに従って大きく変形するため、弾性部材の復元力により可変容器内のインクに発生する負圧も大きくなる。したがって、インク減少過程およびインク増加過程の双方において、可変容器の容量変化に対するメニスカス圧の変化の割合は、弾性部材が設けられない場合に比べて大きくなる。すなわち、線93の傾きは線91の傾きよりも大きくなり、線94の傾きは線92の傾きよりも大きくなる。
【0042】
このように、可変容器の容量によりメニスカス圧が大きく変化する場合、メニスカス圧の変動範囲の全体に亘って正常なインクの吐出が行えるようにするために、可変容器とヘッドユニットとの間の第2流路等における圧損を小さく抑える必要がある。一方、吐出部からのインクの吐出を安定させてインクの吐出量の均一性を向上するためには、インク減少過程およびインク増加過程において、可変容器の容量にかかわらず、メニスカス圧の変化をできるだけ小さくする(理想的には、メニスカス圧が一定である)ことが好ましい。
【0043】
本実施の形態に係る画像記録装置1では、後ほど詳述するように、サブタンク部43において、可変容器81の容量が小さくなるに従って、弾性部材84の復元力により可変容器81に付与される力が減少する。これにより、図8の線95,96に示すように、インク減少過程およびインク増加過程において、可変容器81の容量変化に対するメニスカス圧の変化の割合を、比較例の画像記録装置に比べて小さくすることができる。すなわち、線95,96の傾きを小さくすることができる。
【0044】
図9.Aないし図9.Cはそれぞれ、サブタンク部43の(−Y)側のアーム82近傍を示す図である。図9.Aないし図9.Cでは、アーム82近傍の部位の一部を省略して描いている。また、アーム82に働く力やトルクを太実線の矢印にて図中に示す。図9.Aは、可変容器81内のインクの量が多い状態を示し、図9.Cは、可変容器81内のインクの量が少ない状態を示す。また、図9.Bは、可変容器81内のインクの量が、図9.Aに示す状態と図9.Cに示す状態との間の中間的な状態を示す。以下では、(+X)側のアーム82に注目して説明する。
【0045】
図9.Aないし図9.Cではそれぞれ、弾性部材84(図3および図5参照)の復元力によりアーム82に発生する時計回りのトルクをT1〜T3で示す。トルクT1〜T3は、T1<T2<T3の関係を有する。力Ft1〜Ft3は、トルクT1〜T3によりアーム82の先端部822に発生するアーム82の回転の接線方向(すなわち、アーム82の先端部822と回転軸821とを結ぶ直線に垂直な方向)の力を示す。力Ft1〜Ft3は、Ft1<Ft2<Ft3の関係を有する。
【0046】
力Fd1〜Fd3は、ガイド部材832や接続プレート831の重量、ヘッドユニット33(図2参照)によるインクの吸引力等により、アーム82の先端部822に加えられる(−Z)方向の力である。力Fr1〜Fr3は、アーム82の回転の接線方向における力Fd1〜Fd3の分力である。図9.Aないし図9.Cに示すように、力Fr1〜Fr3がそれぞれ、力Ft1〜Ft3に等しい場合、すなわち、力Fd1〜Fd3が、可変容器81や弾性部材84の復元力等によるメニスカス圧と釣り合っている場合、可変容器81の可動部813は静止している。また、力Fr1〜Fr3がそれぞれ、力Ft1〜Ft3よりも大きくなると、可動部813が(−Z)方向に移動し、可変容器81からヘッドユニット33にインクが供給される。
【0047】
図9.Aないし図9.Cでは、上述のように、力Ft1〜Ft3は、Ft1<Ft2<Ft3の関係を有するが、可変容器81の容量が小さくなるに従ってアーム82が倒れ、可動部813の移動方向(すなわち、可動部813を移動させる力がアーム82の先端部822に作用する方向)とアーム82の回転の接線方向との成す角度θ1〜θ3は、θ1>θ2>θ3となる。このため、力Fd1〜Fd3は、Fd1>Fd2>Fd3となる。すなわち、可変容器81の容量が小さくなるに従って、可動部813を(−Z)方向に移動させるために必要な力が減少する。換言すれば、可変容器81の容量が小さくなるに従って、弾性部材84の復元力により可変容器81に付与される力(すなわち、可変容器81の容量を増加させる方向の力)が減少する。可動部813およびアーム82の先端部822の移動距離に注目すると、可変容器81の容量が小さいほど、アーム82の先端部822の移動距離に対する可動部813の移動距離の割合は大きくなるため、上記作用が、てこの原理により実現される。なお、角度θ1〜θ3は、アーム82の先端部822に加えられる力Fd1〜Fd3と、アーム82の回転の接線方向との成す角度でもある。
【0048】
以上に説明したように、画像記録装置1では、可変容器81の容量が小さくなるに従って、弾性部材84の復元力により可変容器81に付与される力が減少することにより、インク減少過程およびインク増加過程において、可変容器81の容量変化による可変容器81内の圧力の変化を抑制することができる。これにより、吐出部からのインクの吐出を安定させてインクの吐出量の均一性を向上することができる。また、可変容器81とヘッドユニット33との間の第2流路44等における圧損を大きくすることができるため、例えば、第2流路44を長くしてサブタンク部43の配置の自由度を向上することができる。また、第2流路44の径を大きくしたり、第2流路44の本数を増やす等、サブタンク部43から吐出部3の吐出口に至る経路に保持されるインクの量を増大することもできる。
【0049】
画像記録装置1では、弾性部材84としてねじりコイルばねが利用されることにより、可変容器81に対して容量を増加させる方向の力を加える構造を簡素化することができる。また、可変容器81が可撓性を有する扁平な袋状のパウチであり、可変容器81の上面811の可動部813に、運動変換機構83の接続プレート831が面接合される。当該構造により、可動部813が大きく傾斜することがないため、可動部813の移動が運動変換機構83に安定して伝達される。
【0050】
画像記録装置1では、運動変換機構83において、アーム82の先端部822に取り付けられたローラ833が、ガイド部材832のガイド835に沿って滑らかに移動することにより、摩擦を抑制しつつアーム82の回転を可動部813に伝達することができる。また、2組のアーム82と弾性部材84との組み合わせが可変容器81の両側に配置されることにより、アーム82の回転を可動部813全体におよそ均一に伝達することが容易となる。また、可変容器81のY方向の両側の部位において、同じ力に対する変形の程度に偏りがある場合、ねじりコイルばねである2つの弾性部材84のねじり量を異ならせることにより、当該偏りを補正して変形の程度をおよそ等しくすることもできる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0052】
例えば、ローラ833が省略され、アーム82の先端部822が、ガイド部材832のガイド835に沿って移動することにより、アーム82の回転が可動部813に伝達されてもよい。また、可変容器81の(+Y)側および(−Y)側のアーム82が接続され、1つのみ設けられた弾性部材84の復元力が、4本のアーム82に伝達されてもよい。可変容器81の可動部813を大きく傾けることなく移動させることができるのであれば、可変容器81のY方向の一方側のみに、1組のアーム82と弾性部材84との組み合わせが設けられてもよい。弾性部材84としては、トーションバー、板ばね、弦巻ばね等が利用されてもよい。
【0053】
可変容器81は、必ずしも可撓性を有する袋状である必要はなく、例えば、樹脂や金属により形成された可撓性を有さない筒状の容器であってもよい。この場合、例えば、底部および側壁部を有する容器本体内に、インクの増減に伴って上下方向に移動する蓋が設けられることにより、可変容器の容量が変化する。可動部である蓋が十分な剛性を有するものである場合、可動部に接合される接続プレートは省略されてもよい。
【0054】
サブタンク部43では、可変容器81の容量が小さいほど、アーム82の先端部822の移動距離に対する可動部813の移動距離の割合は大きくなるのであれば、必ずしも、可変容器81の容量が小さくなるに従ってアーム82が倒れ、可動部813の移動方向とアーム82の回転の接線方向との成す角度が小さくなる必要はない。例えば、図10.Aおよび図10.Bに示すサブタンク部43aでは、可変容器81の可動部813と面にて接合された接続プレート831にワイヤ837の一端が取り付けられ、ワイヤ837の他端が、定滑車838を介してアーム82aの先端部822に取り付けられてもよい。アーム82aの回転軸821には、ねじりコイルばねである弾性部材84が取り付けられる。弾性部材84は、その復元力により、アーム82aを回転軸821を中心として図10.Aおよび図10.B中の時計回りに回転する力を加える。
【0055】
サブタンク部43aでは、可変容器81の容量が大きい場合は、図10.Aに示すように、アーム82aが倒れており、可動部813を移動させる力がアーム82aの先端部822に作用する方向とアーム82aの回転の接線方向との成す角度は大きい。そして、可変容器81の容量が小さくなるに従って、図10.Bに示すように、アーム82aが起き上がり、可動部813を移動させる力がアーム82aの先端部822に作用する方向(以下、「作用方向」という。)とアーム82aの回転の接線方向との成す角度は小さくなる。
【0056】
このため、サブタンク部43aでは、上述のサブタンク部43と同様に、可変容器81の容量が小さいほど、アーム82aの先端部822の移動距離に対する可動部813の移動距離の割合が大きくなる。なお、可動部813を移動させる力の作用方向におけるアーム82aの先端部822の移動距離と、可動部813の移動距離とは、サブタンク部43と同様に比例する。その結果、可変容器81の容量が小さいほど、弾性部材84の復元力により可変容器81に付与される力が減少し、可変容器81の容量変化による可変容器81内の圧力の変化を抑制することができる。
【0057】
上記実施の形態に係る画像記録装置1では、移動機構2により、基材9が吐出部3の下方にて所定の移動方向に移動するが、画像記録装置の設計によっては、吐出部3を移動する機構が設けられてもよい。また、画像記録装置1では、基材9が吐出部3の下方を1回通過するのみで基材9への画像の印刷が完了するワンパス印刷が行われるが、他の方法により画像の記録が行われてもよい。例えば、基材9の長手方向に配列された複数の吐出口を有する吐出部を、基材9の幅方向に移動する機構が設けられ、基材9の上方にて吐出部が基材9を1回横切る毎に、基材9が所定距離だけ長手方向に移動することを繰り返すことにより、基材9への画像の記録が行われてもよい。画像記録装置1では、また、画像記録装置では、矩形の基材を保持するステージ、および、ステージを所定の移動方向に移動するステージ移動機構が設けられてもよい。このように、基材9を吐出部3に対して相対的に移動する移動機構は様々な構成にて実現可能である。
【0058】
画像記録装置1における画像の記録の対象物は、長尺状の印刷用紙である基材9以外にも、矩形状の印刷用紙やシート状のプラスチックフィルム、プラスチックにて形成される板状部材等であってもよい。また、画像記録装置1では、吐出部3からインク以外の流動性材料の微小液滴が吐出され、当該流動性材料により対象物上に画像が記録されてもよい。例えば、流動性材料として金属粒子を含むペーストが選択され、ペーストの微小液滴を基板上に吐出することにより、基板上に配線パターンが画像として記録されてもよい。
【0059】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。
【符号の説明】
【0060】
1 画像記録装置
2 移動機構
3 吐出部
4 供給部
9 基材
41 メインタンク
71 記録制御部
81 可変容器
82,82a アーム
83 運動変換機構
84 弾性部材
813 可動部
821 回転軸
822 先端部
831 接続プレート
832 ガイド部材
833 ローラ
834 (接続プレートの)下面
835 ガイド
836 軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物上に画像を記録する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクの微小な液滴を吐出するヘッドを印刷の対象物に沿って走査することにより、対象物上に画像を記録するインクジェットプリンタが用いられている。インクジェットプリンタでは、インクは、例えば、アルミニウムや樹脂により形成された袋状のパウチから吐出部へと供給される。インクの供給に際しては、パウチ内のインクに負圧を与えることにより、ヘッドからのインクの吐出量の適正化を図る技術が知られている。
【0003】
特許文献1の画像形成装置では、板ばねにより形成された支えばねにより、インクパックの袋体の容積が大きくなる方向に、インクパックの一部を引き上げることにより、インクパック内部のインクに適当な負圧が付与される。インクパック内のインクが減少すると、支えばねの変形は大きくなり、インクパック内の負圧が大きくなりすぎる。そこで、インクパック内のインクがある程度まで減少すると、支えばねがインクパックから離れ、インクパック自身の剛性に由来する弾性力のみで、内部のインクに負圧を生じさせる。これにより、インクパック内の負圧の過剰な増大が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−103079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、大量のインクを消費する産業用のインクジェットプリンタ等では、大容量のメインタンクにインクを貯溜し、メインタンクとヘッドとの間に、メインタンクから供給されるインクを一時的に貯溜するサブタンクが設けられることがある。このような装置では、サブタンク内のインクに負圧を与えることにより、あるいは、水頭圧によりメニスカス圧を発生させるために、サブタンク内のインクに正圧を与えることにより、ヘッドからのインクの吐出量の適正化が図られる。
【0006】
特許文献1の負圧調整機構では、支えばねがインクパックから一度離れると、支えばねによる負圧調整は行うことができない。したがって、当該負圧調整機構では、内部のインクの増減が繰り返されるサブタンクの負圧を適切に調整することはできない。また、支えばねがインクパックから離れる際に、インクパック内の負圧が急激に小さくなるため、ヘッドからのインクのボタ落ちの発生等、印刷が不安定になるおそれもある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、画像記録装置において、流動性材料を貯溜する可変容器の容量変化に伴う可変容器内の圧力の変化を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、対象物上に画像を記録する画像記録装置であって、流動性材料の微小液滴を対象物に向けて吐出する吐出部と、前記対象物を前記吐出部に対して相対的に移動する移動機構と、前記対象物の相対移動に同期して前記吐出部からの流動性材料の吐出を制御することにより前記対象物上に画像を記録する記録制御部と、前記吐出部に流動性材料を供給する供給部とを備え、前記供給部が、供給源から供給された流動性材料を貯溜するとともに前記吐出部へと流動性材料が送出され、貯溜する流動性材料の増減に伴って可動部が移動することにより容量が変化する可変容器と、回転軸を中心として回転するアームと、前記可変容器の前記可動部の移動を前記アームの作用点の移動へと変換し、前記可変容器の容量が小さいほど、前記作用点の移動距離に対する前記可動部の移動距離の割合を大きくする運動変換機構と、復元力により、前記アームに対して前記回転軸を中心として回転する力を加えることにより、前記運動変換機構を介して前記可動部に、前記可変容器の容量を増加させる方向の力を与える弾性部材とを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像記録装置であって、前記弾性部材が、ねじりコイルばねである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像記録装置であって、前記可変容器が、可撓性を有する袋状である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の画像記録装置であって、前記可動部が、前記可変容器の表面の一部を含む部位であり、前記運動変換機構が、板状部材を備え、前記板状部材の主面と前記可動部とが面にて接合され、前記可動部の移動が前記主面にほぼ垂直な方向への前記板状部材の移動として前記運動変換機構に伝達される。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の画像記録装置であって、前記運動変換機構が、前記可動部に接続され、前記可動部の移動方向および前記回転軸に垂直な方向に延びるガイドを有するガイド部材を備え、前記作用点が、前記ガイドに沿って移動する。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画像記録装置であって、前記運動変換機構が、前記アームの前記作用点に取り付けられ、前記回転軸に平行な軸を中心として回転するローラをさらに備え、前記ローラが、前記ガイドに沿って滑らかに移動する。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の画像記録装置であって、前記供給部が、前記アームおよび前記弾性部材の組み合わせを2組備え、前記アームおよび前記弾性部材の組み合わせが、前記可動部を挟んで前記可変容器の両側に配置される。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、画像記録装置において、流動性材料を貯溜する可変容器の容量変化に伴う可変容器内の圧力の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一の実施の形態に係る画像記録装置を示す図である。
【図2】供給部の構成を示す図である。
【図3】サブタンク部の平面図である。
【図4】サブタンク部の正面図である。
【図5】サブタンク部の側面図である。
【図6】可変容器の容量とメニスカス圧との関係を示す図である。
【図7】可変容器の容量とメニスカス圧との関係を示す図である。
【図8】可変容器の容量とメニスカス圧との関係を示す図である。
【図9.A】サブタンク部の一部を示す図である。
【図9.B】サブタンク部の一部を示す図である。
【図9.C】サブタンク部の一部を示す図である。
【図10.A】他のサブタンク部の構成を示す図である。
【図10.B】他のサブタンク部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る画像記録装置1の構成を示す図である。画像記録装置1は、対象物上に流動性材料であるインクの微小液滴を吐出して画像を記録する(すなわち、画像の印刷を行う)インクジェットプリンタである。本実施の形態では、長尺状の印刷用紙である基材9を対象物として、基材9に対するカラー画像の記録が行われる。
【0018】
画像記録装置1は、基材9を所定の搬送経路に沿って移動する移動機構2、インクの微小液滴を基材9に向けて吐出する吐出部3、吐出部3にインクを供給する供給部4、基材9上のインクを乾燥する乾燥部5、基材9に記録された画像を検査する検査部6、および、これらの構成を制御する記録制御部71を備える。画像記録装置1では、記録制御部71により、吐出部3からのインクの吐出が、基材9の吐出部3に対する相対移動に同期して制御されることにより、基材9上に画像が記録される。
【0019】
図1に示すように、移動機構2は、第1搬送機構21a、第2搬送機構21b、および、複数の移動用ローラを22を備える。各移動用ローラ22は、紙面に垂直な軸を中心として回転する。基材9は、移動機構2により、図1中の右側に位置する巻き出し部11から巻き出され、吐出部3、乾燥部5および検査部6を順に通過した後、図1中の左側に位置する巻き取り部12に巻き取られる。
【0020】
吐出部3は、それぞれが互いに異なる色のインクを吐出する複数のヘッドユニット33を備える。複数のヘッドユニット33は、図1中の左右方向に配列される。各ヘッドユニット33の下端には、複数の吐出口が所定の配列方向に配列される。吐出口の配列方向は、吐出部3を通過する際の基材9の移動方向に垂直、かつ、基材9の記録面に平行な方向であり、図1中では、紙面に垂直な方向である。各ヘッドユニット33の複数の吐出口は、配列方向に関して基材9の記録面の記録範囲全体に亘って(ここでは、基材9の幅のほぼ全体に亘って)配列される。画像記録装置1では、記録制御部71により移動機構2および吐出部3が制御されることにより、吐出部3からインクを吐出しつつ、基材9が吐出部3の下方にて所定の移動方向に1回のみ相対移動することにより(すなわち、吐出部3の下方を図1中の右側から左側へと1回のみ通過することにより)、基材9の記録面上に画像が記録される。換言すれば、画像記録装置1では、いわゆる、ワンパス印刷が行われる。
【0021】
供給部4は、それぞれが互いに異なる色のインクを貯溜する複数の供給用容器を備える。複数の供給用容器は、複数のヘッドユニット33に接続される。以下では、複数の色のうちの1色のインクの供給について説明するが、他色のインクの供給についても同様である。図2は、供給部4における1色のインクの供給に係る構成を、吐出部3のヘッドユニット33と共に示す図である。実際には、供給部4には、複数色のインクのそれぞれの供給に係る同様の構成が設けられる。
【0022】
供給部4は、メインタンク41、第1流路42、サブタンク部43および第2流路44を備える。メインタンク41は、インクを貯溜する比較的大型のタンクであり、吐出部3へとインクを供給する供給源である。第1流路42は、メインタンク41およびサブタンク部43に接続されるチューブである。第1流路42上にはポンプ421が設けられ、ポンプ421が駆動されることにより、第1流路42を介してメインタンク41からサブタンク部43へとインクが導かれる。
【0023】
サブタンク部43では、メインタンク41から供給されたインクが、後述する可変容器81(図3ないし図5参照)に一時的に貯溜される。第2流路44は、サブタンク部43およびヘッドユニット33に接続されるチューブである。サブタンク部43の可変容器81は、ヘッドユニット33よりも高い位置に配置される。ヘッドユニット33からインクが吐出されると、ヘッドユニット33内のインク流路の圧力が低下し、サブタンク部43の可変容器81に貯溜されたインクが、第2流路44を介してヘッドユニット33へと送出される。
【0024】
図3ないし図5はそれぞれ、サブタンク部43を示す平面図、正面図および側面図である。サブタンク部43は、可変容器81、4本のアーム82、運動変換機構83、2つの弾性部材84およびベース部85を備える。ベース部85は薄板状であり、XY平面に略平行に広がる底部851、および、底部851の(+Y)側および(−Y)側の端部から(+Z)側へとXZ平面に略平行に広がる2つの側壁部852を備える。図4では、図の理解を容易にするために、(−Y)側の側壁部852の図示を省略している。
【0025】
可変容器81は、可撓性を有する袋状の扁平な容器(すなわち、Z方向の厚さが小さい、いわゆる、パウチ)である。本実施の形態では、可変容器81は、ポリエチレンテレフタレート(PET)の表面にアルミニウムがコーティングされたシートにより形成される。可変容器81の(−Z)側の主面である下面812は、ベース部85の底部851の上面に固定される。可変容器81の(+Z)側の主面である上面811は、Z方向に略垂直であり、上面811の中央部を含む部位は、Z方向(すなわち、上下方向)に移動可能な可動部813である。換言すれば、可動部813は、可変容器81の表面の一部を含む部位である。可変容器81の(−X)側には、第2流路44が接続される。
【0026】
メインタンク41(図2参照)から可変容器81にインクが供給されると、可変容器81の可動部813が(+Z)方向(すなわち、ベース部85から離れる方向)に移動し、可変容器81の容量が増加する。また、可変容器81からヘッドユニット33(図2参照)へとインクが送出されると、可変容器81の可動部813が(−Z)方向に移動し、可変容器81の容量が減少する。すなわち、可変容器81の容量は、可変容器81内のインクの増減に伴って可動部813が上下方向に移動することにより変化する。
【0027】
可変容器81の(+Y)側および(−Y)側には、それぞれ2本のアーム82が、Y方向およびZ方向に垂直なX方向に配列される。各アーム82は、Y方向を向く回転軸821を中心として回転する。回転軸821は、ベース部85の側壁部852に固定される。アーム82は、回転軸821から(+Z)方向かつ(−X)方向に延びており、アーム82の(+Z)側の先端部822(すなわち、回転軸821とは反対側の端部)は、可変容器81の上面811よりも(+Z)側に位置する。
【0028】
4本のアーム82のうち(+X)側の2本のアーム82の回転軸821には、ねじりコイルばねである弾性部材84が取り付けられる。換言すれば、供給部4のサブタンク部43は、アーム82および弾性部材84の組み合わせを2組備え、アーム82および弾性部材84の組み合わせは、可動部813を挟んで可変容器81のY方向の両側に配置される。弾性部材84は、その復元力により、アーム82を回転軸821を中心として図4中の時計回りに回転する力(すなわち、トルク)を加える。また、アーム82が、図4中において反時計回りに回転する(すなわち、先端部822が(−X)方向かつ(−Z)方向に移動する)に従って、弾性部材84の復元力による時計回りのトルクは増大する。
【0029】
可変容器81の(+Y)側の2本のアーム82の先端部822は、X方向に延びる板状の接続部材861により接続され、互いに対する相対位置が固定されている。可変容器81の(−Y)側の2本のアーム82の先端部822も、X方向に延びる板状の接続部材861により接続され、互いに対する相対位置が固定されている。したがって、可変容器81の(+Y)側および(−Y)側のそれぞれにおいて、X方向に並ぶ2本のアーム82の回転は同期する。また、当該2本のアーム82には、1つの弾性部材84の復元力により、図4中の時計回りに回転する力が加えられる。
【0030】
運動変換機構83は、接続プレート831、2つのガイド部材832、および、4つのローラ833を備える。接続プレート831は、XY平面に略平行に広がる板状部材である。接続プレート831の下面834は、可変容器81の可動部813と面にて接合される。本実施の形態では、接続プレート831の下面834に広範囲に亘って接着剤が面状に塗布され、可変容器81の可動部813と接合される。なお、接続プレート831の下面834と可変容器81の可動部813とは、実質的に面状に接合されるのであれば、例えば、互いに平行に延びる2本の線状に塗布された接着剤により接合されてもよい。また、接続プレート831の下面834と可変容器81の可動部813とは、接着剤による接着以外の方法により接合されてもよい。可変容器81の可動部813の移動は、接続プレート831の下面834にほぼ垂直なZ方向への接続プレート831の移動として運動変換機構83に伝達される。
【0031】
2つのガイド部材832はそれぞれ、接続プレート831の(+Y)側および(−Y)側において、接続プレート831から(+Z)側へと広がる板状部材である。ガイド部材832は、XZ平面に略平行となるように、接続プレート831に略垂直に配置され、(−Z)側の端部が接続プレート831に接続される。すなわち、ガイド部材832は、接続プレート831を介して、可変容器81の可動部813に接続される。ガイド部材832は、(+Z)側の端部近傍に開口する2つのガイド835を有する。ガイド835は、可変容器81の可動部813の移動方向および回転軸821に垂直なX方向に延びる。
【0032】
4つのローラ833はそれぞれ、4本のアーム82の先端部822に取り付けられる。ローラ833は、Y方向を向く軸836(すなわち、アーム82の回転軸821に平行な軸)を中心として回転する。4つのローラ833はそれぞれ、4つのガイド835内に配置される。ローラ833は、ガイド部材832のガイド835の(+Z)側のエッジに当接する。アーム82が回転軸821を中心として回転すると、ローラ833は、ガイド835に沿ってX方向に滑らかに移動する。上述のように、可変容器81の(+Y)側および(−Y)側のそれぞれにおいて、2本のアーム82の先端部822は接続されているため、当該2本のアーム82の先端部822に取り付けられた2つのローラ833は、同期してX方向に移動する。
【0033】
可変容器81内のインクがヘッドユニット33(図2参照)に送出されて減少すると、可変容器81の可動部813が(−Z)方向へと移動し、運動変換機構83の接続プレート831、および、2つのガイド部材832も(−Z)方向へと移動する。上述のように、接続プレート831の下面834は、扁平な可変容器81の可動部813と面接合されており、可変容器81の下面812はベース部85に面接合されている。このため、可変容器81の可動部813が(−Z)方向に移動すると、接続プレート831およびガイド部材832も、ほぼ(−Z)方向に移動する((+Z)方向への移動においても同様)。したがって、接続プレート831およびガイド部材832のZ方向以外への移動を制限する移動制限部(すなわち、接続プレート831およびガイド部材832をZ方向に案内する案内部)は、設ける必要がない。
【0034】
サブタンク部43では、各ガイド部材832の移動により、各ガイド部材832の2つのガイド835内に配置される2つのローラ833を介して、当該2つのローラ833に接続された2本のアーム82の先端部822に(−Z)方向の力が働く。その結果、アーム82は、回転軸821を中心として図4中の反時計回りに回転し、アーム82の先端部822は、(−X)方向かつ(−Z)方向に移動する。また、ローラ833は、ガイド835内において(−X)方向に移動する。
【0035】
一方、メインタンク41(図2参照)から可変容器81へとインクが供給され、可変容器81内のインクが増加すると、可変容器81の可動部813が(+Z)方向へと移動し、運動変換機構83の接続プレート831、および、2つのガイド部材832も(+Z)方向へと移動する。その結果、アーム82は、回転軸821を中心として図4中の時計回りに回転し、アーム82の先端部822は、(+X)方向かつ(+Z)方向に移動する。また、ローラ833は、ガイド835内において(+X)方向に移動する。
【0036】
サブタンク部43では、可変容器81の可動部813の移動が、運動変換機構83により、アーム82の先端部822の移動へと変換される。アーム82の先端部822は、可変容器81の可動部813の移動によるアーム82の回転の作用点となっている。
【0037】
アーム82には、上述のように、弾性部材84の復元力により、図4中の時計回りのトルクが加えられている。これにより、可変容器81の可動部813に、可変容器81の容量を増加させる方向の力が、運動変換機構83を介して与えられる。その結果、可変容器81内のインクに負圧(ヘッドユニット33内の吐出口近傍におけるインクのメニスカス生成に寄与する圧力であり、以下、「メニスカス圧」という。)が付与され、ヘッドユニット33からのインクの吐出量が適正化される。
【0038】
図6は、弾性部材84を省略したと仮定した場合における可変容器81の容量と可変容器81内のインクに付与されるメニスカス圧との関係を示す。図6の横軸では、左側から右側に向かうに従って容量が大きくなり、縦軸では、下側から上側に向かうに従ってメニスカス圧が大きくなる(すなわち、インクに付与される負圧の絶対値が大きくなる)。横軸および縦軸に関する当該説明は、図7および図8においても同様である。図6中の上側の線91は、可変容器81からヘッドユニット33に送出されるインクの量が、メインタンク41から可変容器81に供給されるインクの量よりも多いため、可変容器81内のインクの量が減少していく過程を示す。下側の線92は、可変容器81からヘッドユニット33に送出されるインクの量が、メインタンク41から可変容器81に供給されるインクの量よりも少ないため、可変容器81内のインクが増加していく過程を示す。以下、線91,92により示される過程をそれぞれ、「インク減少過程」および「インク増加過程」という。
【0039】
インク減少過程およびインク増加過程では、可変容器81の容量が小さくなるに従ってメニスカス圧は大きくなり、可変容器81の容量が大きくなるに従ってメニスカス圧は小さくなる。これは、可変容器81の容量が小さくなるに従って、可変容器81の元の形状からの変形の程度が大きくなり、可変容器81の復元力が大きくなるためである。インク減少過程における可変容器81の容量変化に対するメニスカス圧の変化の割合(すなわち、線91の傾き)は、インク増加過程における可変容器81の容量変化に対するメニスカス圧の変化の割合(すなわち、線92の傾き)よりも小さい。
【0040】
図6にて示すインク減少過程およびインク増加過程のメニスカス圧は、吐出部3からのインクの吐出量が過大になること(いわゆる、ボタ落ち)を防止することができる程度には大きくない。そこで、従来の画像記録装置(以下、「比較例の画像記録装置」という。)では、可変容器の表面の一部を板ばね等の弾性部材に接続し、可変容器の一部を弾性部材で引っ張ることによりメニスカス圧を増大させることが行われている。
【0041】
図7は、比較例の画像記録装置における可変容器の容量とメニスカス圧との関係を示す。図7中の上側の線93はインク減少過程を示し、下側の線94はインク増加過程を示す。図7では、図6中の線91,92を破線にて併せて描いている(図8においても同様)。比較例の画像記録装置では、弾性部材を設けたことにより、線91,92に比べてメニスカス圧は増大している。弾性部材は、可変容器の容量が小さくなるに従って大きく変形するため、弾性部材の復元力により可変容器内のインクに発生する負圧も大きくなる。したがって、インク減少過程およびインク増加過程の双方において、可変容器の容量変化に対するメニスカス圧の変化の割合は、弾性部材が設けられない場合に比べて大きくなる。すなわち、線93の傾きは線91の傾きよりも大きくなり、線94の傾きは線92の傾きよりも大きくなる。
【0042】
このように、可変容器の容量によりメニスカス圧が大きく変化する場合、メニスカス圧の変動範囲の全体に亘って正常なインクの吐出が行えるようにするために、可変容器とヘッドユニットとの間の第2流路等における圧損を小さく抑える必要がある。一方、吐出部からのインクの吐出を安定させてインクの吐出量の均一性を向上するためには、インク減少過程およびインク増加過程において、可変容器の容量にかかわらず、メニスカス圧の変化をできるだけ小さくする(理想的には、メニスカス圧が一定である)ことが好ましい。
【0043】
本実施の形態に係る画像記録装置1では、後ほど詳述するように、サブタンク部43において、可変容器81の容量が小さくなるに従って、弾性部材84の復元力により可変容器81に付与される力が減少する。これにより、図8の線95,96に示すように、インク減少過程およびインク増加過程において、可変容器81の容量変化に対するメニスカス圧の変化の割合を、比較例の画像記録装置に比べて小さくすることができる。すなわち、線95,96の傾きを小さくすることができる。
【0044】
図9.Aないし図9.Cはそれぞれ、サブタンク部43の(−Y)側のアーム82近傍を示す図である。図9.Aないし図9.Cでは、アーム82近傍の部位の一部を省略して描いている。また、アーム82に働く力やトルクを太実線の矢印にて図中に示す。図9.Aは、可変容器81内のインクの量が多い状態を示し、図9.Cは、可変容器81内のインクの量が少ない状態を示す。また、図9.Bは、可変容器81内のインクの量が、図9.Aに示す状態と図9.Cに示す状態との間の中間的な状態を示す。以下では、(+X)側のアーム82に注目して説明する。
【0045】
図9.Aないし図9.Cではそれぞれ、弾性部材84(図3および図5参照)の復元力によりアーム82に発生する時計回りのトルクをT1〜T3で示す。トルクT1〜T3は、T1<T2<T3の関係を有する。力Ft1〜Ft3は、トルクT1〜T3によりアーム82の先端部822に発生するアーム82の回転の接線方向(すなわち、アーム82の先端部822と回転軸821とを結ぶ直線に垂直な方向)の力を示す。力Ft1〜Ft3は、Ft1<Ft2<Ft3の関係を有する。
【0046】
力Fd1〜Fd3は、ガイド部材832や接続プレート831の重量、ヘッドユニット33(図2参照)によるインクの吸引力等により、アーム82の先端部822に加えられる(−Z)方向の力である。力Fr1〜Fr3は、アーム82の回転の接線方向における力Fd1〜Fd3の分力である。図9.Aないし図9.Cに示すように、力Fr1〜Fr3がそれぞれ、力Ft1〜Ft3に等しい場合、すなわち、力Fd1〜Fd3が、可変容器81や弾性部材84の復元力等によるメニスカス圧と釣り合っている場合、可変容器81の可動部813は静止している。また、力Fr1〜Fr3がそれぞれ、力Ft1〜Ft3よりも大きくなると、可動部813が(−Z)方向に移動し、可変容器81からヘッドユニット33にインクが供給される。
【0047】
図9.Aないし図9.Cでは、上述のように、力Ft1〜Ft3は、Ft1<Ft2<Ft3の関係を有するが、可変容器81の容量が小さくなるに従ってアーム82が倒れ、可動部813の移動方向(すなわち、可動部813を移動させる力がアーム82の先端部822に作用する方向)とアーム82の回転の接線方向との成す角度θ1〜θ3は、θ1>θ2>θ3となる。このため、力Fd1〜Fd3は、Fd1>Fd2>Fd3となる。すなわち、可変容器81の容量が小さくなるに従って、可動部813を(−Z)方向に移動させるために必要な力が減少する。換言すれば、可変容器81の容量が小さくなるに従って、弾性部材84の復元力により可変容器81に付与される力(すなわち、可変容器81の容量を増加させる方向の力)が減少する。可動部813およびアーム82の先端部822の移動距離に注目すると、可変容器81の容量が小さいほど、アーム82の先端部822の移動距離に対する可動部813の移動距離の割合は大きくなるため、上記作用が、てこの原理により実現される。なお、角度θ1〜θ3は、アーム82の先端部822に加えられる力Fd1〜Fd3と、アーム82の回転の接線方向との成す角度でもある。
【0048】
以上に説明したように、画像記録装置1では、可変容器81の容量が小さくなるに従って、弾性部材84の復元力により可変容器81に付与される力が減少することにより、インク減少過程およびインク増加過程において、可変容器81の容量変化による可変容器81内の圧力の変化を抑制することができる。これにより、吐出部からのインクの吐出を安定させてインクの吐出量の均一性を向上することができる。また、可変容器81とヘッドユニット33との間の第2流路44等における圧損を大きくすることができるため、例えば、第2流路44を長くしてサブタンク部43の配置の自由度を向上することができる。また、第2流路44の径を大きくしたり、第2流路44の本数を増やす等、サブタンク部43から吐出部3の吐出口に至る経路に保持されるインクの量を増大することもできる。
【0049】
画像記録装置1では、弾性部材84としてねじりコイルばねが利用されることにより、可変容器81に対して容量を増加させる方向の力を加える構造を簡素化することができる。また、可変容器81が可撓性を有する扁平な袋状のパウチであり、可変容器81の上面811の可動部813に、運動変換機構83の接続プレート831が面接合される。当該構造により、可動部813が大きく傾斜することがないため、可動部813の移動が運動変換機構83に安定して伝達される。
【0050】
画像記録装置1では、運動変換機構83において、アーム82の先端部822に取り付けられたローラ833が、ガイド部材832のガイド835に沿って滑らかに移動することにより、摩擦を抑制しつつアーム82の回転を可動部813に伝達することができる。また、2組のアーム82と弾性部材84との組み合わせが可変容器81の両側に配置されることにより、アーム82の回転を可動部813全体におよそ均一に伝達することが容易となる。また、可変容器81のY方向の両側の部位において、同じ力に対する変形の程度に偏りがある場合、ねじりコイルばねである2つの弾性部材84のねじり量を異ならせることにより、当該偏りを補正して変形の程度をおよそ等しくすることもできる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0052】
例えば、ローラ833が省略され、アーム82の先端部822が、ガイド部材832のガイド835に沿って移動することにより、アーム82の回転が可動部813に伝達されてもよい。また、可変容器81の(+Y)側および(−Y)側のアーム82が接続され、1つのみ設けられた弾性部材84の復元力が、4本のアーム82に伝達されてもよい。可変容器81の可動部813を大きく傾けることなく移動させることができるのであれば、可変容器81のY方向の一方側のみに、1組のアーム82と弾性部材84との組み合わせが設けられてもよい。弾性部材84としては、トーションバー、板ばね、弦巻ばね等が利用されてもよい。
【0053】
可変容器81は、必ずしも可撓性を有する袋状である必要はなく、例えば、樹脂や金属により形成された可撓性を有さない筒状の容器であってもよい。この場合、例えば、底部および側壁部を有する容器本体内に、インクの増減に伴って上下方向に移動する蓋が設けられることにより、可変容器の容量が変化する。可動部である蓋が十分な剛性を有するものである場合、可動部に接合される接続プレートは省略されてもよい。
【0054】
サブタンク部43では、可変容器81の容量が小さいほど、アーム82の先端部822の移動距離に対する可動部813の移動距離の割合は大きくなるのであれば、必ずしも、可変容器81の容量が小さくなるに従ってアーム82が倒れ、可動部813の移動方向とアーム82の回転の接線方向との成す角度が小さくなる必要はない。例えば、図10.Aおよび図10.Bに示すサブタンク部43aでは、可変容器81の可動部813と面にて接合された接続プレート831にワイヤ837の一端が取り付けられ、ワイヤ837の他端が、定滑車838を介してアーム82aの先端部822に取り付けられてもよい。アーム82aの回転軸821には、ねじりコイルばねである弾性部材84が取り付けられる。弾性部材84は、その復元力により、アーム82aを回転軸821を中心として図10.Aおよび図10.B中の時計回りに回転する力を加える。
【0055】
サブタンク部43aでは、可変容器81の容量が大きい場合は、図10.Aに示すように、アーム82aが倒れており、可動部813を移動させる力がアーム82aの先端部822に作用する方向とアーム82aの回転の接線方向との成す角度は大きい。そして、可変容器81の容量が小さくなるに従って、図10.Bに示すように、アーム82aが起き上がり、可動部813を移動させる力がアーム82aの先端部822に作用する方向(以下、「作用方向」という。)とアーム82aの回転の接線方向との成す角度は小さくなる。
【0056】
このため、サブタンク部43aでは、上述のサブタンク部43と同様に、可変容器81の容量が小さいほど、アーム82aの先端部822の移動距離に対する可動部813の移動距離の割合が大きくなる。なお、可動部813を移動させる力の作用方向におけるアーム82aの先端部822の移動距離と、可動部813の移動距離とは、サブタンク部43と同様に比例する。その結果、可変容器81の容量が小さいほど、弾性部材84の復元力により可変容器81に付与される力が減少し、可変容器81の容量変化による可変容器81内の圧力の変化を抑制することができる。
【0057】
上記実施の形態に係る画像記録装置1では、移動機構2により、基材9が吐出部3の下方にて所定の移動方向に移動するが、画像記録装置の設計によっては、吐出部3を移動する機構が設けられてもよい。また、画像記録装置1では、基材9が吐出部3の下方を1回通過するのみで基材9への画像の印刷が完了するワンパス印刷が行われるが、他の方法により画像の記録が行われてもよい。例えば、基材9の長手方向に配列された複数の吐出口を有する吐出部を、基材9の幅方向に移動する機構が設けられ、基材9の上方にて吐出部が基材9を1回横切る毎に、基材9が所定距離だけ長手方向に移動することを繰り返すことにより、基材9への画像の記録が行われてもよい。画像記録装置1では、また、画像記録装置では、矩形の基材を保持するステージ、および、ステージを所定の移動方向に移動するステージ移動機構が設けられてもよい。このように、基材9を吐出部3に対して相対的に移動する移動機構は様々な構成にて実現可能である。
【0058】
画像記録装置1における画像の記録の対象物は、長尺状の印刷用紙である基材9以外にも、矩形状の印刷用紙やシート状のプラスチックフィルム、プラスチックにて形成される板状部材等であってもよい。また、画像記録装置1では、吐出部3からインク以外の流動性材料の微小液滴が吐出され、当該流動性材料により対象物上に画像が記録されてもよい。例えば、流動性材料として金属粒子を含むペーストが選択され、ペーストの微小液滴を基板上に吐出することにより、基板上に配線パターンが画像として記録されてもよい。
【0059】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。
【符号の説明】
【0060】
1 画像記録装置
2 移動機構
3 吐出部
4 供給部
9 基材
41 メインタンク
71 記録制御部
81 可変容器
82,82a アーム
83 運動変換機構
84 弾性部材
813 可動部
821 回転軸
822 先端部
831 接続プレート
832 ガイド部材
833 ローラ
834 (接続プレートの)下面
835 ガイド
836 軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物上に画像を記録する画像記録装置であって、
流動性材料の微小液滴を対象物に向けて吐出する吐出部と、
前記対象物を前記吐出部に対して相対的に移動する移動機構と、
前記対象物の相対移動に同期して前記吐出部からの流動性材料の吐出を制御することにより前記対象物上に画像を記録する記録制御部と、
前記吐出部に流動性材料を供給する供給部と、
を備え、
前記供給部が、
供給源から供給された流動性材料を貯溜するとともに前記吐出部へと流動性材料が送出され、貯溜する流動性材料の増減に伴って可動部が移動することにより容量が変化する可変容器と、
回転軸を中心として回転するアームと、
前記可変容器の前記可動部の移動を前記アームの作用点の移動へと変換し、前記可変容器の容量が小さいほど、前記作用点の移動距離に対する前記可動部の移動距離の割合を大きくする運動変換機構と、
復元力により、前記アームに対して前記回転軸を中心として回転する力を加えることにより、前記運動変換機構を介して前記可動部に、前記可変容器の容量を増加させる方向の力を与える弾性部材と、
を備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像記録装置であって、
前記弾性部材が、ねじりコイルばねであることを特徴とする画像記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像記録装置であって、
前記可変容器が、可撓性を有する袋状であることを特徴とする画像記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像記録装置であって、
前記可動部が、前記可変容器の表面の一部を含む部位であり、
前記運動変換機構が、板状部材を備え、
前記板状部材の主面と前記可動部とが面にて接合され、前記可動部の移動が前記主面にほぼ垂直な方向への前記板状部材の移動として前記運動変換機構に伝達されることを特徴とする画像記録装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像記録装置であって、
前記運動変換機構が、前記可動部に接続され、前記可動部の移動方向および前記回転軸に垂直な方向に延びるガイドを有するガイド部材を備え、
前記作用点が、前記ガイドに沿って移動することを特徴とする画像記録装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像記録装置であって、
前記運動変換機構が、前記アームの前記作用点に取り付けられ、前記回転軸に平行な軸を中心として回転するローラをさらに備え、
前記ローラが、前記ガイドに沿って滑らかに移動することを特徴とする画像記録装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の画像記録装置であって、
前記供給部が、前記アームおよび前記弾性部材の組み合わせを2組備え、
前記アームおよび前記弾性部材の組み合わせが、前記可動部を挟んで前記可変容器の両側に配置されることを特徴とする画像記録装置。
【請求項1】
対象物上に画像を記録する画像記録装置であって、
流動性材料の微小液滴を対象物に向けて吐出する吐出部と、
前記対象物を前記吐出部に対して相対的に移動する移動機構と、
前記対象物の相対移動に同期して前記吐出部からの流動性材料の吐出を制御することにより前記対象物上に画像を記録する記録制御部と、
前記吐出部に流動性材料を供給する供給部と、
を備え、
前記供給部が、
供給源から供給された流動性材料を貯溜するとともに前記吐出部へと流動性材料が送出され、貯溜する流動性材料の増減に伴って可動部が移動することにより容量が変化する可変容器と、
回転軸を中心として回転するアームと、
前記可変容器の前記可動部の移動を前記アームの作用点の移動へと変換し、前記可変容器の容量が小さいほど、前記作用点の移動距離に対する前記可動部の移動距離の割合を大きくする運動変換機構と、
復元力により、前記アームに対して前記回転軸を中心として回転する力を加えることにより、前記運動変換機構を介して前記可動部に、前記可変容器の容量を増加させる方向の力を与える弾性部材と、
を備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像記録装置であって、
前記弾性部材が、ねじりコイルばねであることを特徴とする画像記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像記録装置であって、
前記可変容器が、可撓性を有する袋状であることを特徴とする画像記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像記録装置であって、
前記可動部が、前記可変容器の表面の一部を含む部位であり、
前記運動変換機構が、板状部材を備え、
前記板状部材の主面と前記可動部とが面にて接合され、前記可動部の移動が前記主面にほぼ垂直な方向への前記板状部材の移動として前記運動変換機構に伝達されることを特徴とする画像記録装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像記録装置であって、
前記運動変換機構が、前記可動部に接続され、前記可動部の移動方向および前記回転軸に垂直な方向に延びるガイドを有するガイド部材を備え、
前記作用点が、前記ガイドに沿って移動することを特徴とする画像記録装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像記録装置であって、
前記運動変換機構が、前記アームの前記作用点に取り付けられ、前記回転軸に平行な軸を中心として回転するローラをさらに備え、
前記ローラが、前記ガイドに沿って滑らかに移動することを特徴とする画像記録装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の画像記録装置であって、
前記供給部が、前記アームおよび前記弾性部材の組み合わせを2組備え、
前記アームおよび前記弾性部材の組み合わせが、前記可動部を挟んで前記可変容器の両側に配置されることを特徴とする画像記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9.A】
【図9.B】
【図9.C】
【図10.A】
【図10.B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9.A】
【図9.B】
【図9.C】
【図10.A】
【図10.B】
【公開番号】特開2012−158016(P2012−158016A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17825(P2011−17825)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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