説明

画像診断支援システム、及び画像診断支援プログラム

【課題】ネットワークの通信効率、各装置の動作効率、読影時の作業効率のうちの少なくとも一つを低下させることがないように、共有オブジェクト等に代表される医療情報を必要としているクライアント装置に対して、そのコンテンツの全部又は一部を適切に送信等することができる画像診断支援システム等を提供すること。
【解決手段】例えば、サーバ装置において、ユーザ及び利用場面により情報区分を判定し、判定された情報区分に基づいて提供情報を判定する。この判定された当該提供情報のみを含むように共有オブジェクトを加工し、これをクライアント装置に提供する。クライアント装置側では、必要最小限な情報のみを含む共有オブジェクトが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療情報を必要としているユーザに対して、ネットワークの通信効率、各装置の動作効率、読影時の作業効率のうちの少なくとも一つを低下させることがないように、医療情報の送信有無の判定、或いは医療情報を送信する場合においてそのコンテンツを適切に取捨選択等することができる画像診断支援システム、及び画像診断支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療行為の専門分野は細分化されている。例えば、画像診断においては、患者の診断画像の取得、取得された診断画像の読影及びレポート作成、レポート結果に基づく診断結果や治療方針の説明、等の各作業に分割される。各作業は、各専門家(担当の医師又は担当技師)によって担当され、これら全ての作業によって、患者に対する診断等の医療行為が達成される。各専門家は、前段の作業において他の専門家が作成した情報に基づいて、且つ適宜過去の診断情報等を参照することにより、各作業を実行する。
【0003】
上記各作業は、医師端末、診断画像を取得するX線CT装置、MRI装置等の医用画像診断装置、診断画像を記憶するPACSサーバ(医用画像保管装置)、診断画像を読影するための画像参照装置、画像診断レポート作成支援装置等のそれぞれにおいて、ネットワークを利用して行われる。例えば、主治医は、自身の端末において、病院情報システム(HIS: Hospital Information System)から情報を取得し、読影レポート等を参照しながら必要事項を入力し、放射線科情報システム(RIS: Radiology Information System)を利用してオーダ(検査依頼)の発行を行う。医用画像診断装置を操作する技師等は、ネットワークを介して、発行されたオーダを受け取り、当該オーダの内容に基づいて撮影範囲、撮影条件等を決定し、必要な画像収集を実行する。取得された画像は、自動的に又は所定の操作に応答して、ネットワークを介して医用画像保管装置に保管される。画像参照装置又は画像診断レポート作成支援装置は、例えば読影医師による経過観察を目的として、医用画像保管装置に保管された画像、過去のレポート等を取得する。画像診断レポート作成支援装置等においては、診断の根拠とする画像(キー画像)の選択、レポート作成が実行される。作成されたレポート、選択されたキー画像等は、ネットワークを介して医用画像保管装置に送信され保管される。
【0004】
さらに近年、この様な作業が細分化された画像診断において、過去の検査情報を効率的に利用可能とするためのシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。これは、過去の撮影に用いられた条件やキー画像に関する情報、撮影時に参照した過去の検査に関する情報をそのコンテンツとして有するオブジェクトを情報として共有化するものである。ユーザは、任意の装置において任意のタイミングで共有オブジェクトを参照することで、過去の診断に利用されたキー画像や撮影条件を知るとができ、例えば過去の検査を高精度で再現し比較読影に適した画像を撮影することができる。また、過去を参照して撮影された検査は、その参照履歴も共有オブジェクトに保持するため、読影時に、その情報から参照すべき比較相手を自動で特定し表示することが可能となり、読影医の読影にいたる準備行為を大きく低減することが可能となる。
【特許文献1】特願2006−319356
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、共有オブジェクトを利用するシステムが導入された場合、例えば共有オブジェクトに対応していない表示装置(表示クライアントなども含む)は、共有オブジェクトを通常の画像情報と区別しないで取り扱ってしまう。そのため、例えば、次の様な不具合が発生する可能性がある。
【0006】
すなわち、サーバ装置側は、共有オブジェクトを通常の画像情報と区別していないため、クライアント装置(例えば、ビューワ等)側が必要としていない共有オブジェクト自体を送信してしまう場合がある。係る場合には、ネットワーク上において無駄なデータの送信、取得が行われることになり、ネットワークの通信効率、各装置の動作効率が低下することになる。
【0007】
また、例えばクライアント装置において必要としていない共有オブジェクトが表示された場合には、読影に必要な画像(例えば、キー画像等)の表示エリアが小さくなる。そのため、共有オブジェクトの一部又は全部の削除動作など、無駄な作業が生まれ、読影時における作業効率が低下する可能性がある。
【0008】
さらに、共有オブジェクトに限らず、医用画像レポート、画像データ等の各種医療情報を、サーバ装置、クライアント装置間でネットワークを介して送受信する場合においても、この様なネットワークの通信効率、各装置の動作効率、読影時における作業効率の低下は大きな課題であると言える。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、ネットワークの通信効率、各装置の動作効率、読影時の作業効率のうちの少なくとも一つを低下させることがないように、共有オブジェクトやレポートに代表される医療情報を必要としているクライアント装置に対して、そのコンテンツの全部又は一部を適切に送信等することができる画像診断支援システム、及び画像診断支援プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0011】
本発明の第1の視点は、複数の医療情報を記憶すると共に、ユーザ識別情報と利用場面に関する情報との組み合わせ毎に、前記複数の医療情報のうちの所定の医療情報をユーザに提供するか否かを定義するテーブルを記憶する記憶手段と、ユーザから、参照とする検査の特定情報、及びユーザ識別情報と利用場面に関する情報との組み合わせを受け付ける受付手段と、前記テーブルに基づいて、前記受付られた組み合わせにおいて前記医療情報を提供するか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が前記医療情報を提供すると判定した場合において、前記検査の特定情報に基づいて、前記医療情報を前記記憶手段から収集する収集手段と、収集した前記医療情報を表示する表示手段と、を具備することを特徴とする画像診断支援システムである。
【0012】
本発明の第2の視点は、撮影条件、撮影範囲、診断の根拠となるキー画像位置のうちの少なくとも一つを画像に付帯させた複数のオブジェクトを記憶する第1の記憶手段と、ユーザ識別情報と利用場面に関する情報との組み合わせ毎に、前記オブジェクトをユーザに提供するか否かを定義する第1のテーブルを記憶する第2の記憶手段と、ユーザから、参照とする検査の特定情報、及びユーザ識別情報と利用場面に関する情報との組み合わせを受け付ける受付手段と、前記第1のテーブルに基づいて、前記受付られた組み合わせにおいてオブジェクトを提供するか否かを判定する判定手段と、前記判定手段がオブジェクトを提供すると判定した場合において、前記検査の特定情報によって特定されるオブジェクトを前記第1の記憶手段から収集する収集手段と、前記検査の特定情報によって特定されるオブジェクトを表示する表示手段と、を具備することを特徴とする画像診断支援システムである。
【0013】
本発明の第3の視点は、コンピュータに、ユーザから、参照とする検査の特定情報、及びユーザ識別情報と利用場面に関する情報との組み合わせを受け付けさせる受付機能と、前記受付られた組み合わせにおいて、撮影条件、撮影範囲、診断の根拠となるキー画像位置のうちの少なくとも一つを画像に付帯させたオブジェクトをユーザに提供するか否かを、ユーザ識別情報と利用場面に関する情報との組み合わせ毎に定義する第1のテーブルに基づいて判定させる判定機能と、前記オブジェクトを提供すると判定された場合において、前記検査の特定情報によって特定されるオブジェクトを、オブジェクト保管装置から収集させる収集機能と、前記検査の特定情報によって特定されるオブジェクトを表示させる表示機能と、を実現させることを特徴とする画像診断支援プログラムである。
【発明の効果】
【0014】
以上本発明によれば、ネットワークの通信効率、各装置の動作効率、読影時の作業効率のうちの少なくとも一つを低下させることがないように、共有オブジェクトやレポートに代表される医療情報を必要としているクライアント装置に対して、そのコンテンツの全部又は一部を適切に送信等することができる画像診断支援システム、及び画像診断支援プログラムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0016】
なお、以下の実施形態においては、説明を具体的にするため、医療情報としての共有オブジェクトを必要としているクライアント装置に対して、サーバ装置がそのコンテンツの全部又は一部を適切に送信等する画像診断支援システム、及び画像診断支援プログラムについて説明する。しかしながら、取り扱う医療情報は共有オブジェクトに拘泥されず、例えば医用レポート、医用画像データに対しても、本発明の技術的思想は適用可能である。
【0017】
図1は、本実施形態に係る画像診断支援システムが実現される病院内ネットワークシステム1の構成を示した図である。同図に示すように、本病院内ネットワークシステム1は、医用画像診断装置2、クライアント装置3、サーバ装置としての医用画像保管装置5を具備している。
【0018】
[医用画像診断装置]
医用画像診断装置2は、X線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、核医学診断装置、X線診断装置等の画像診断装置である。本実施形態では、説明を具体的にするため、医用画像診断装置2はX線CT装置である場合とする。
【0019】
また、医用画像診断装置2は、患者に関する診断画像を取得する撮影系の他に、制御部21、共有オブジェクト加工部23、送受信部25、表示部、データ記憶部、操作部(参照符号のないものは図示せず)等を具備している。
【0020】
制御部21は、本医用画像診断装置2の静的又は動的な動作を、統括的に制御する。
【0021】
共有オブジェクト生成部23は、過去の医療行為実施時において使用された情報(例えば、位置決め画像、撮影位置、撮影範囲、撮影条件、画像生成条件等)を有効に利用するために、画像情報と付帯(文字または数値)情報とから構成される共有オブジェクトを生成するものである。この共有オブジェクトの構成については、後で詳しく説明する。
【0022】
送受信部25は、ネットワークNを介して、画像、共有オブジェクト等の医療情報を、他の機器から受信し又は他の機器へ送信する。
【0023】
[クライアント装置]
クライアント装置3は、サーバ装置(本実施形態では、医用画像保管装置5)に対して共有オブジェクトを要求する装置であり、制御部31、送受信部33、表示部、データ記憶部、操作部(参照符号のないものは図示せず)等を有する。
【0024】
制御部31は、過去の検査において取得された画像情報等の取得要求を医用画像保管装置5に対して送信する際に、現在のユーザID(例えば、ログイン時や上記取得要求指示時において入力されるユーザID)、当該クライアント装置3を識別するための装置ID、当該クライアント装置3において使用されているアプリケーション名を自動的に送信する。また、制御部31は、医用画像保管装置5から受け取るデータを用いて、各種画像、共有オブジェクト等を表示部に所定の形態で表示するための制御を行う。
【0025】
送受信部33は、所定の操作に応答して、過去の検査において取得された画像情報等の取得要求指示、現在のユーザID、装置ID、アプリケーション名等を、医用画像保管装置5に対して送信する。また、送受信部33は、加工された共有オブジェクトデータ等を医用画像保管装置5から受信する。
【0026】
[医用画像保管装置]
医用画像保管装置5は、医用画像診断装置2において生成された画像等を、患者ID、シリーズUID等によって管理し保存する。また、医用画像保管装置5は、医用画像診断装置2において生成された共有オブジェクトを解析し、各種データを所定の場所に保管する。さらに、医用画像保管装置5は、後述する画像診断支援機能を実現する画像診断支援システムとして動作する。
【0027】
本医用画像保管装置5は、データベース50、データ保管部51、操作部52、表示部53、送受信部54、判定部55、共有オブジェクト加工部56、情報収集部57、制御部58を具備している。
【0028】
データベース50は、各種画像の実体データや共有オブジェクトの実体データの保管場所(所在)を特定するための情報(所在特定情報)を管理しているデータベースである。また、データベース50は、画像診断支援機能において利用される利用管理テーブル、提供情報管理テーブルを記憶する。
【0029】
ここで、利用管理テーブルとは、ユーザと利用場面との組み合わせ毎に、共有オブジェクトを提供するか否か、及び共有オブジェクトを提供する場合においてそのコンテンツを決定するための情報区分を定義するものである。また、提供情報管理テーブルとは、各情報区分毎に、共有オブジェクトに含めるコンテンツ(提供情報)を定義するものである。
【0030】
図2は、利用管理テーブルの一例を示している。同図に示すように、利用管理テーブルでは、利用場面(同図の例では、アプリケーション名及び使用装置)とユーザとの組み合わせ毎に、共有オブジェクトを提供するか否か、及び共有オブジェクトを提供する場合の情報区分が定義されている。
【0031】
図3は、提供情報管理テーブルの一例を示している。同図に示すように、提供情報管理テーブルでは、各情報区分毎に、位置決め画像、撮影条件、画像条件等の共有オブジェクトに含めるべきコンテンツが定義されている。
【0032】
データ保管部51は、送受信部54を介して画像データ、共有オブジェクト等の各種データを受け取り、適切な場所に書き込み・保管する。また、データ保管部51は、保管場所が決まったとき、削除されたとき、または変更になった場合には、データベース50と通信し、データベース50が管理する共有オブジェクト管理情報や所在特定情報を修正する。なお、このデータ保管部51は、必ずしも医用画像保管装置5内に内蔵されている必要はなく、ネットワーク上の別の場所にあってもよい。
【0033】
操作部52は、キーボードや各種スイッチ、マウス等を備え、オペレータからの指示を入力可能な装置である。
【0034】
表示部53は、操作画面や所定の画像を表示するためのモニタである。
【0035】
送受信部54は、ネットワークNを介して、画像、共有オブジェクト等の医療情報を、他の機器から受信し又は他の機器へ送信する。
【0036】
判定部55は、送受信部54を介して受け取ったユーザ及び利用場面の組み合わせと利用管理テーブルとに基づいて、当該ユーザ及び利用場面において共有オブジェクトを提供するか否か、及び共有オブジェクトを提供する場合の情報区分を判定する。また、判定部55は、判定された情報区分と提供情報管理テーブルとに基づいて、当該情報区分に対応する提供情報を判定する。
【0037】
共有オブジェクト加工部56は、判定部55において判定された提供情報に従って、当該提供情報のみを含むように既存の共有オブジェクトを加工する。
【0038】
情報収集部57は、クライアント装置3から要求された各種情報、判定部55において判定された情報区分に対応する提供情報を、データ保管部51或いはネットワーク上の他の装置から収集する。
【0039】
制御部58は、本医用画像保管装置5の静的又は動的な動作を、統括的に制御する。また、制御部58は、データ保管部51に記憶された専用プログラムを図示していないメモリ上において展開することで、後述する画像診断支援機能等を実現する。
【0040】
(共有オブジェクト)
次に、共有オブジェクトについて説明する。共有オブジェクトとは、例えば図4示すように、医療行為実施時において使用された情報(例えば、位置決め画像、撮影位置、撮影範囲、撮影条件、画像生成条件、キー画像に関する情報、レポートに関する情報等)を有効に利用するために、画像情報と付帯(文字または数値)情報とから構成され、例えば検査毎又はシリーズ毎にDICOM規格に従う画像として生成・管理される。なお、シリーズとは、時間(いつ生成されたものか)、空間(どこで生成されたものか)、情報の臨床特性(どのような臨床的意味を持つものか)を符号として情報を分類するものである。
【0041】
[画像情報]
共有オブジェクトが具備する画像情報とは、位置又は範囲を参照するための一つまたは複数の位置決め画像(例えば、X線CT装置で用いられるスキャノグラム、MRI装置でのパイロットスキャンによるコロナル像等。「スカウト画像」、「ローカライザ」とも呼ばれる。)である。ここで、範囲とは、実際に医用画像診断装置がX線や高周波等によりエネルギーを供給し、検出器が供給されたエネルギーに基づく信号検出或いは画像生成の対象とする物理範囲である。例えば、X線CT装置1の場合、検出器で検出された投影データに基づいて再構成される体軸方向の範囲(再構成範囲)であり、MRI装置の場合はスキャン範囲である。範囲は、一般的にスキャン前に取得される位置決め画像上に点線等で明示され、体軸方向の画像生成ピッチを示す線と共に示されることもある。また、この画像情報には、必要に応じて、位置決め画像上にキー画像位置を示すマーカを含めたり、さらにキー画像そのもの(キー画像の実体データ)を含める場合もある。
【0042】
なお、後述する画像診断支援機能において編集処理が認容されると、当該画像情報として管理されているキー画像の実体データ、位置決め画像上にキー画像位置等は、医用レポート作成支援システム3から受け取った編集指示に従って編集される。
【0043】
[付帯情報]
共有オブジェクトが具備する付帯情報は、当該共有オブジェクトに対応する検査・シリーズの特定情報、当該検査において参照した検査・シリーズの特定情報、当該共有オブジェクトに対応する検査に関するレポートの特定情報、当該共有オブジェクトに対応する検査のキー画像に関する情報、当該共有オブジェクトに対応する検査・シリーズの再現情報の5種類に大きく分類することができる。以下、各情報について説明する。
【0044】
[付帯情報1:当該共有オブジェクトに対応する検査・シリーズの特定情報]
この付帯情報は、当該共有オブジェクトと他の共有オブジェクトを区別するための情報であり、当該(共有)オブジェクトの識別子(オブジェクトUID)、管理対象シリーズ識別子(管理対象シリーズUID)、管理対象検査識別子(管理対象検査UID)を含む。
【0045】
オブジェクトUIDは、当該オブジェクトと他のオブジェクトを区別するため(特定するため)の情報であり、各装置のオブジェクト生成部により、共有オブジェクト生成時に重複しない体系で発番される。管理対象シリーズUID、管理対象検査UIDは、それぞれ当該共有オブジェクトがその管理対象とするシリーズ、管理対象とする検査を特定するめの情報である。
【0046】
[付帯情報2:当該検査において参照した検査・シリーズの特定情報]
この付帯情報は、当該共有オブジェクトと他の共有オブジェクトとの関連性を示すための情報であり、親(共有)オブジェクト識別子(親オブジェクトUID)、関係シリーズ識別子(関係シリーズUID)、当該シリーズUID、関係検査識別子を含むものである。
【0047】
親オブジェクトUIDは、当該オブジェクトを生成する場合に参照されたオブジェクト(親オブジェクト)を特定するための情報である。関係シリーズUIDは、当該共有オブジェクトと同一の条件(例えば、撮影条件、位置決め画像等)を用いたシリーズを特定するための情報である。この関係シリーズUIDは、その性質上、オブジェクト固有情報内において複数個存在する場合がある。このとき、同時にそのシリーズの付帯情報(シリーズ日時、シリーズ番号、シリーズ記述、造影種別)などもシリーズUIDと関連付けて付帯させることが好ましい。当該シリーズUIDは、当該共有オブジェクトにより撮影条件等が示されるシリーズを特定するための識別子である。
【0048】
なお、各UIDによって特定されるデータとは、リンクが張られている、従って、各UIDに基づいてリンク先のデータにアクセスすることで、その画像群の派生の検査経過を迅速に辿ることが可能になる。また、共有オブジェクトの作成日、作成時間をオブジェクト固有情報に含めても良い。
【0049】
[付帯情報3:当該共有オブジェクトに対応する検査に関するレポートの特定情報]
この付帯情報は、当該検査において生成されたレポートを特定するための識別子(レポート識別子)である。なお、所定の検査について、一旦作成されたレポートが後日修正されたり、別途新たなレポートが生成される場合がある。これらのレポートに異なる識別子が発番されているときには、全てのレポート識別子、又は所定の条件に従って選択されたレポート識別子を含むものとする。
【0050】
[付帯情報4:当該共有オブジェクトに対応する検査のキー画像に関する情報]
この付帯情報は、医用画像保管装置5側のコンポーネントで読影や画像診断で用いられるキー画像を特定するための情報(例えば、DICOM規格のSOPInstanceUID等)、キー画像の実体データ、キー画像の位置や方向等(例えば、z軸座標位置、観察時の方向、拡大率、WW/WLといった情報等)を特定するため情報である。また、キー画像がMPR像である場合は、当該付帯情報に、画像生成条件と同様にキー画像となるMPR画像についての位置や方向、生成条件等を含めるようにしてもよい。
【0051】
後述する画像診断支援処理においては、レポート作成者であるユーザ及び当該レポート作成に用いられた装置の組み合わせに応じて、編集処理の可否、及び編集処理の種別が判定され、その判定結果に応じて当該付帯情報が管理される。
【0052】
[付帯情報5:当該共有オブジェクトに対応する検査又はシリーズの再現情報]
この付帯情報は、過去の検査又はシリーズにおいて実行された処理を再現するための情報であり、撮影条件、画像生成条件等を含むものである。
【0053】
撮影条件とは、撮影動作によって患者から画像生成の元となる物理的なデータを収集するために必要な物理的条件である。この条件の内容は、モダリティの種類に依存する。例えば、X線CT装置の撮影条件は、スキャンの開始位置と範囲(寝台移動量)、X線管球のKV/mA、得られる画像スライスの総幅に対する1回転での寝台移動量(ビームピッチ)といった物理量である。しかしながら、撮影条件の内容は、この例に拘泥されない。例えば、検査時の被検体挿入方向(装置に足から入るか頭から入るかの情報)、造影剤投与の有無、投与量、薬剤の種類、患者の体位(診断上で寝る方向、姿勢)等を含める構成としてもよい。さらに、最近は被曝低減のために一定の画質になるようにKV/mAを自動制御する機能があるが、そのような場合は、制御量である画像ノイズ(SD値)を撮影条件に含める構成としてもよい。
【0054】
また、例えばMRI装置の場合は、撮影範囲、患者の挿入方向や体位、磁場強度、パルスシーケンス、検出コイル種類、検出コイルの設置場所、心電同期、呼吸同期の有無、寝台送風の有無、撮影中心の身体部位、装着位置といったパラメータを撮影条件に含めることができる。
【0055】
画像生成条件とは、撮影によって得られた物理データから画像を再構成するためのパラメータであり、例えば再構成範囲、時相、画像の位置、方向、厚さ、FOV(拡大率)、再構成関数等のフィルタ処理パラメータなどである。また、この画像生成条件には、各種医用画像診断装置や画像参照装置において実行されるボリュームレンダリングやMPR処理等の画像処理において使用される条件も含まれる。例えば、MPR処理の場合は、基準座標と法線ベクトル、スライス厚、範囲などが相当する。
【0056】
なお、再構成条件の範囲については、再構成範囲を示した位置決め画像を付帯することにより定義してもよい。係る場合は、一つの共有オブジェクトの中に、複数の再構成範囲を示す複数の位置決め画像が格納されることになる。
【0057】
また、各UIDによって特定されるデータとは、リンクが張られている、従って、各UIDに基づいてリンク先のデータにアクセスすることで、その画像群の派生の検査経過を迅速に辿ることが可能になる。また、共有オブジェクトの作成日、作成時間をオブジェクト固有情報に含めても良い。
【0058】
以上の付帯情報を保持することによって、検査読影開始時に前回画像と比較可能な画像を漏れなく適正に撮影することができるようになる。なお、共有オブジェクトは、上記に示した全ての情報を有する必要はなく、医療行為実施時において使用された情報を有効に利用可能とするものであれば、利用される装置や目的に応じてその内容は種々変更可能である。例えば、医用画像診断装置(モダリティ)に用いる共有オブジェクトは、患者ID、スキャン範囲(再構成範囲)に関係する位置情報、ランドマークからなる付帯情報と、画像情報としてのリファレンス像とから構成することもできる。また、PACSに用いる共有オブジェクトでは、患者ID、キー画像の位置情報・ランドマークからなる付帯情報と、画像情報としてのリファレンス像から構成するとしてもよい。さらに、リファレンス像を必要とせず、単に過去の撮影条件等のみを利用する仕様を望む場合には、撮影条件等を含む付帯情報のみからなる構成にて共有オブジェクトを生成すればよい。
【0059】
以上の付帯情報を保持することによって、検査読影開始時に前回画像と比較可能な画像を漏れなく適正に撮影することができるようになる。なお、共有オブジェクトは、上記に示した全ての情報を有する必要はなく、過去の医療行為実施時において使用された情報を有効に利用可能とするものであれば、利用される装置や目的に応じてその内容は種々変更可能である。例えば、医用画像診断装置(モダリティ)に用いる共有オブジェクトは、患者ID、スキャン範囲(再構成範囲)に関係する位置情報、ランドマークからなる付帯情報と、画像情報としてのリファレンス像とから構成することもできる。また、PACSに用いる共有オブジェクトでは、患者ID、キー画像の位置情報・ランドマークからなる付帯情報と、画像情報としてのリファレンス像から構成するとしてもよい。さらに、リファレンス像を必要とせず、単に過去の撮影条件等のみを利用する仕様を望む場合には、撮影条件等を含む付帯情報のみからなる構成にて共有オブジェクトを生成すればよい。
【0060】
図5は、共有オブジェクトの生成・管理の流れの一例を示したフローチャートである。同図に示すように、まず、医用画像診断装置2において、例えば過去の共有オブジェクトを参照しながらスキャン計画が実行され、撮影(画像取得)が実行される(ステップS1、S2)。
【0061】
共有オブジェクト生成部23は、患者情報、参照利用された共有オブジェクト、当該撮影において用いられた位置決め画像、撮影条件等に基づいて、共有オブジェクトを生成する。このとき、通常の画像データと区別するため、或いは事後の検索を容易にするために、例えば付帯情報に共有オブジェクトであることを示す情報を埋め込むようにしてもよい。
【0062】
送受信部25は、撮影によって取得された画像データ、生成された共有オブジェクトのデータを、ネットワークを介して医用画像保管装置5に送信する(ステップS3)。
【0063】
次に、送受信部54によって受信された共有オブジェクトは、解析部57において解析され(ステップS4)、当該共有オブジェクトに関する所在特定情報、共有オブジェクト管理情報が生成される(ステップS5)。また、当該共有オブジェクトの実体データは、データ保管部51の所定の場所に保管される(ステップS6)。
【0064】
保管された共有オブジェクトは、例えば後日の撮影において参照データとして利用される。すなわち、送受信部25から医用画像保管装置5に対して共有オブジェクトデータの要求が送信されると(ステップS7)、制御部58は、例えば患者情報等と共有オブジェクト管理情報とに基づいて、参照に用いられる共有オブジェクトを特定する。また、制御部58は、所在情報テーブルを用いてデータ保管部51を検索し、当該共有オブジェクトに含めるべき各種情報を抽出する(ステップS8)。抽出された各種情報は、参照用の共有オブジェクトとして医用画像診断装置2に送信される(ステップS9)。医用画像診断装置2は、共有オブジェクトを受信し、当該共有オブジェクトを参照しながらスキャン計画が実行され、撮影(画像取得)が実行される(ステップS10、S11)。
【0065】
(画像診断支援処理)
次に、本実施形態に係る医用画像保管装置5において実行される画像診断支援機能を用いた処理(画像診断支援処理)について説明する。
【0066】
図6は、第1の実施形態に係る画像診断支援処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、クライアント装置2の制御部21は、現在の検査において参照するために、過去の検査において取得された画像情報等の取得要求、及び患者ID、参照すべき検査を特定するためのID、シリーズID等を、送受信部25を介して医用画像保管装置5に送信する。また、クライアント装置2の制御部21は、この取得要求等と共に、操作者のユーザID、クライアント装置2の装置ID(例えば、ステーションID、AE(Application Entity)等)、クライアント装置2において使用されているアプリケーション名を、送受信部25を介して医用画像保管装置5に送信する(ステップS20)。
【0067】
次に、医用画像保管装置5の判定部55は、利用管理テーブルを参照することで、受信したクライアント装置2から受信したユーザID、装置ID、アプリケーション名の組み合わせに基づいて、共有オブジェクトの表示の有無、及び情報区分を判定する(ステップS21)。例えば、クライアント装置2からユーザ及び使用場面の組み合わせとして、「Dr.TARO」(ユーザID)、「読影端末1」(装置ID)、「共有オブジェクトビューア」(アプリケーション名)受信した場合には、判定部55は、利用管理テーブルを参照し、「共有オブジェクトを表示する」と判定すると共に、情報区分は「すべて」であると判定する。また、例えば、クライアント装置2からユーザ及び使用場面の組み合わせとして、「Dr.TARO」(ユーザID)、「読影端末1」(装置ID)、「Dicomビューア」(アプリケーション名)受信した場合には、判定部55は、利用管理テーブルを参照し、「共有オブジェクトを表示しない」と判定すると共に、情報区分は「なし」であると判定する。
【0068】
次に、判定部55は、ステップS21において判定された情報区分と提供情報管理テーブルとに基づいて、当該情報区分に対応する提供情報(共有オブジェクトに含めるべき情報)を判定する(ステップS22)。例えば、ステップS21において情報区分が「すべて」と判定された場合には、判定部55は、図3に示した提供情報管理テーブルに従って、「位置決め画像」、「撮影範囲」、「撮影条件」、「画像生成条件」、「検査履歴」、「キー画像に関する情報」等の全ての情報が提供情報であると判定する。また、例えば、ステップS21において情報区分が「撮影条件1」と判定された場合には、判定部55は、提供情報管理テーブルに従って、「位置決め画像」、「撮影範囲」、「撮影条件」、「検査履歴」の各情報が提供情報であると判定する。
【0069】
次に、情報収集部57は、データベース50を参照することで、ステップS21において受け取った患者ID、検査ID、シリーズID等に関連する画像データ、共有オブジェクトデータの所在を特定し、データ保管部51、或いは必要に応じてネットワークを介して他の装置から、画像データ、共有オブジェクトデータの実体データを収集する(ステップS23)。
【0070】
次に、共有オブジェクト加工部57は、情報区分に従って判定された提供情報のみが含まれるように、共有オブジェクトデータを加工する(ステップS24)。例えば、ステップS22において、「位置決め画像」、「撮影範囲」、「撮影条件」、「検査履歴」が共有オブジェクトに含めるべき提供情報として判定された場合には、共有オブジェクト加工部57は、この4項目に対応する情報以外の情報を削除、或いは読み取り不可能な形態に処理することで、情報区分に対応する提供情報のみが含まれるように、共有オブジェクトを加工する。なお、共有オブジェクトに含まれる情報のうち、情報区分に対応する提供情報以外の情報を読み取り不可能な形態にする場合には、ネットワークの通信効率の観点から、データサイズがなるべく小さくなるように処理することが好ましい。また、本実施形態では、「位置決め画像」、「撮影範囲」、「撮影条件」、「検査履歴」等の各情報は、DICOM規格に従う付帯情報として保持されている。このDICOM規格においては、決められた識別子を利用して各情報を区別し、取得することができる。
【0071】
次に、送受信部54は、収集された画像データ、及び加工された共有オブジェクトデータを、ネットワークを介してクライアント装置3に送信する(ステップ25)。クライアント装置3側では、受け取った画像データに基づいて必要な画像が所定の形態で表示されると共に、加工後の共有オブジェクトデータに基づいて、情報区分に従った提供情報が所定の形態で表示される(ステップS26)。
【0072】
なお、ステップS21において「情報区分なし」と判定された場合には、ステップS22〜S26のそれぞれにおいて、共有オブジェクトに関する処理は省略される。
【0073】
(効果)
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0074】
本画像診断支援システム1によれば、ユーザと利用場面との組み合わせにより、共有オブジェクトの提供の有無、及び共有オブジェクトを提供する場合の情報区分を判定し、判定された情報区分に基づいて共有オブジェクトに含めるべき提供情報を判定する。さらに、判定された当該提供情報のみを含むように共有オブジェクトを加工し、例えばネットワークを介してこれをクライアント装置に提供する。従って、サーバ装置側は、クライアント装置側が共有オブジェクトを必要としていない場合には、共有オブジェクトを送信せず、また、クライアント装置側が共有オブジェクトを必要としている場合には、必要最小限な情報のみを含む共有オブジェクトが提供される。このため、ユーザは不用な情報の削除等の無駄な作業を行う必要がなく、読影時における作業効率が低下する要因を排除することができる。また、無駄なデータの送受信や再生処理を行うことがないため、ネットワークの通信効率、各装置の動作効率が低下する要因を排除することができる。
【0075】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0076】
例えば現在の検査に利用しようとして共有オブジェクトを取得したときに、撮影条件やリファレンス画像等に関する実体データ(又は実体データを特定するための情報)が格納されておらず、代わりに参照すべき他の共有オフジェクト(関連共有オブジェクト)を特定するための情報(例えば、そのUID、所在を示す情報、リンク情報等。以下、「関連共有オブジェクト特定情報」と呼ぶ。)が格納されている場合がある。
【0077】
そこで、本実施形態では、係る場合において、さらに関連共有オブジェクトへアクセスし、情報区分に対応する提供情報を取得し得る医用画像診断支援システム1について説明する。
【0078】
図7は、第2の実施形態に係る利用管理テーブルの一例を示している。図2に示した利用管理テーブルと比較した場合、ユーザIDと利用場面との組み合わせ毎に「世代」が定義されている点が異なる。ここで、「世代」とは、取得した共有オブジェクト内に、関連共有オブジェクト特定情報が格納されている場合に、当該取得した共有オブジェクトを第1世代として、そこから関連共有オブジェクトをいくつまで遡ってアクセスし、必要な情報の検索をするかを定義する指標である。
【0079】
図8は、第2の実施形態に係る画像診断支援処理の流れを示したフローチャートである同図に示すように、まず、クライアント装置2の制御部21は、過去の検査において取得された画像情報等の取得要求、患者ID、検査ID、シリーズID、操作者のユーザID、装置ID、アプリケーション名を、送受信部25を介して医用画像保管装置5に送信する(ステップS30)。
【0080】
医用画像保管装置5の判定部55は、利用管理テーブルを参照することで、受信したクライアント装置2から受信したユーザID、装置ID、アプリケーション名の組み合わせに関する共有オブジェクトの表示の有無、情報区分及び世代を判定する(ステップS31)。例えば、クライアント装置2からユーザ及び使用場面の組み合わせとして、「Dr.TARO」(ユーザID)、「読影端末1」(装置ID)、「共有オブジェクトビューア」(アプリケーション名)受信した場合には、判定部55は、利用管理テーブルを参照し、「共有オブジェクトを表示する」と判定すると共に、情報区分は「すべて」であると判定する。また、判定部55は、利用管理テーブルを参照し、当該組み合わせに関する世代を「第2世代」と判定する。
【0081】
次に、判定部55は、判定された情報区分と提供情報管理テーブルとに基づいて、当該情報区分に対応する提供情報を判定する(ステップS32)。情報収集部57は、データベース50を参照することで、ステップS21において受け取った患者ID、検査ID、シリーズID等に関連する画像データ、共有オブジェクトデータの所在を特定し、データ保管部51、或いは必要に応じてネットワークを介して他の装置から、画像データ、共有オブジェクトデータの実体データを収集する(ステップS33)。
【0082】
次に、判定部55は、収集された共有オブジェクトに、関連共有オブジェクト特定情報が含まれているか否かを判定する(ステップS34)。その結果、関連共有オブジェクト特定情報が含まれてないと判定された場合には、ステップS36に移行する。
【0083】
一方、関連共有オブジェクト特定情報が含まれていると判定された場合には、情報収集部57は、関連共有オブジェクト特定情報によって特定される関連共有オブジェクトへアクセスし、これに含まれる情報を取得する(ステップS35)。
【0084】
なお、ステップS35においてアクセスした関連共有オブジェクトに、さらに参照すべき共有オブジェクトを特定するための情報が含まれている場合において、ステップS31において第3世代と判定された場合には、さらに関連共有オブジェクトにアクセスすることになる。
【0085】
次に、共有オブジェクト加工部57は、情報区分に従って判定された提供情報のみが含まれるように、共有オブジェクトデータを加工する(ステップS36)。送受信部54は、収集された画像データ、及び加工された共有オブジェクトデータを、ネットワークを介してクライアント装置3に送信する(ステップ37)。クライアント装置3側では、受け取った画像データに基づいて必要な画像が所定の形態で表示されると共に、加工後の共有オブジェクトデータに基づいて、情報区分に従った提供情報が所定の形態で表示される(ステップS38)。
【0086】
なお、ステップS31において「情報区分なし」と判定された場合には、ステップS32〜S38のそれぞれにおいて、共有オブジェクトに関する処理は省略される。
【0087】
以上述べた構成によれば、利用する共有オブジェクトに撮影条件やリファレンス画像等に関する実体データが格納されておらず、代わりに関連共有オブジェクト特定情報が格納されている場合であっても、必要な情報を取得し得る他の共有オブジェクトまで遡ることがで必要な情報を取得することができ、第1の実施形態と同様の効果を実現することができる。
【0088】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
【0089】
第1及び第2の実施形態では、情報区分に対応する提供情報のみが含まれるように、サーバ装置側において共有オブジェクトを加工した。これに対し、本実施形態では、共有オブジェクトに含まれる情報のうち情報区分に対応する提供情報のみが表示されるように、
クライアント装置において表示制限をかけるものである。
【0090】
図9は、第3の実施形態に係る医用画像診断支援システム1の構成を示した図である。図1の構成と比較した場合、クライアント装置2が判定部35をさらに具備する点が異なる。
【0091】
判定部35は、医用画像保管装置5から受け取った共有オブジェクトに含まれる情報のうち、医用画像保管装置5から受け取った情報区分に対応する提供情報を判定する。
【0092】
制御部31は、共有オブジェクトを表示する場合において、判定部35において情報区分に対応する提供情報のみが表示されるように表示部を制御する。
【0093】
図10は、第3の実施形態に係る画像診断支援処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、クライアント装置2の制御部21は、過去の検査において取得された画像情報等の取得要求、患者ID、検査ID、シリーズID、操作者のユーザID、装置ID、アプリケーション名を、送受信部25を介して医用画像保管装置5に送信する(ステップS40)。
【0094】
医用画像保管装置5の判定部55は、利用管理テーブルを参照することで、受信したクライアント装置2から受信したユーザID、装置ID、アプリケーション名の組み合わせに関する共有オブジェクトの表示の有無、情報区分を判定する(ステップS41)。
【0095】
また、判定部55は、共有オブジェクトを表示すると判定した場合には、当該組み合わせに関する情報区分と提供情報管理テーブルとに基づいて、当該情報区分に対応する提供情報を判定し、当該提供情報がどの様なものであるかを示す提供情報リストを生成する(ステップS42)。例えば、情報区分が「撮影条件1」である場合には、判定部55は、「位置決め画像」、「撮影範囲」、「撮影条件」、「検査履歴」が提供情報であると判定し、当該4つが提供情報であることを示す提供情報リストを生成する。
【0096】
次に、情報収集部57は、データベース50を参照することで、ステップS21において受け取った患者ID、検査ID、シリーズID等に関連する画像データ、共有オブジェクトデータの所在を特定し、データ保管部51、或いは必要に応じてネットワークを介して他の装置から、画像データ、共有オブジェクトデータの実体データを収集する(ステップS43)。
【0097】
次に、送受信部54は、収集された画像データ、共有オブジェクトデータ等、及び提供情報リストを、ネットワークを介してクライアント装置3に送信する(ステップ44)。
【0098】
次に、クライアント装置3の判定部35は、受け取った提供情報リストに基づいて、共有オブジェクトデータに含まれる情報のうち、提供情報に対応する情報を判定する(ステップS45)。また、クライアント装置3の制御部31は、共有オブジェクトに含まれる情報のうち情報区分に対応する提供情報のみが表示されるように、表示制限をかけて共有オブジェクトを表示部に表示する。
【0099】
なお、ステップS41において「情報区分なし」と判定された場合には、ステップS32〜S46のそれぞれにおいて、共有オブジェクトに関する処理は省略される。
【0100】
以上述べた構成によっても、第1又は第2の実施形態と同様の効果を実現することができる。
【0101】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。本実施形態は、取り扱う医療情報を共有オブジェクト及び医用レポートとして、第1乃至第3の実施形態のうちのいずれかの画像診断支援処理を行うものである。
【0102】
図11は、第4の実施形態に係る利用管理テーブルの一例を示した図である。図2に示した例と比較した場合、ユーザID及び利用場面の組み合わせ毎に、医用レポートの提供の有無及びキー画像のみの提供の有無が定義されている点が異なる。
【0103】
医用画像保管装置5の判定部55は、例えばステップS21、ステップS31、ステップS41のいずれかにおいて、図11に示した利用管理テーブルを参照することで、既述の判定に加えて、現在のユーザ及び使用場面の組み合わせについての医用レポートの提供有無を判定する。例えば、クライアント装置2からユーザ及び使用場面の組み合わせとして、「Dr.Taro」(ユーザID)、「読影端末1」(装置ID)、「Dicomビューア」(アプリケーション名)受信した場合には、判定部55は、当該読影端末1では、画像はアノテーション付き画像やDICOM規格におけるKey Image Noteで指定されたキー画像を表示すると判定し、また、医用レポートを併せて表示すると判定する。
【0104】
また、図示しないが、必要に応じて、別途各情報区分毎に、医用レポートに含めるコンテンツ(提供情報)を定義する提供情報管理テーブルを予め生成しデータベース50に記憶しておくことで、共有オブジェクトの場合と同様の手法により、医用レポートについても、情報区分に応じて提供する医用レポートに含めるべき情報を判定することができる。その結果、クライアント装置側に提供する医療情報が例えば医用レポートを含む場合であっても、第1乃至第3の実施形態と同様の効果を実現することができる。
【0105】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0106】
(1)本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0107】
(2)上記各実施形態においては、クライアント装置2と医用画像保管装置5(サーバ装置)とを別体とした。しかしながら、これに拘泥されず、一つの装置に各装置の機能を実装する構成としてもよい。また、例えば医用画像保管装置5の一部の機能をクライアント装置2側に設ける構成としてもよい。
【0108】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上本発明によれば、ネットワークの通信効率、各装置の動作効率、読影時の作業効率のうちの少なくとも一つを低下させることがないように、共有オブジェクトやレポートに代表される医療情報を必要としているクライアント装置に対して、そのコンテンツの全部又は一部を適切に送信等することができる画像診断支援システム、及び画像診断支援プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る画像診断支援システムが実現される病院内ネットワークシステム1の構成を示した図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る利用管理テーブルの一例を示している。
【図3】図3は、提供情報管理テーブルの一例を示している。
【図4】図4は、共有オブジェクトの構成を説明するための図である。
【図5】図5は、共有オブジェクトの生成・管理の流れの一例を示したフローチャートである。
【図6】図6は、第2の実施形態に係る画像診断支援処理の流れを示したフローチャートである。
【図7】図7は、第2の実施形態に係る利用管理テーブルの一例を示している。
【図8】図8は、第2の実施形態に係る画像診断支援処理の流れを示したフローチャートである。
【図9】図9は、第3の実施形態に係る医用画像診断支援システム1の構成を示した図である。
【図10】図10は、第3の実施形態に係る画像診断支援処理の流れを示したフローチャートである。
【図11】図11は、第4の実施形態に係る利用管理テーブルの一例を示した図である。
【符号の説明】
【0111】
1…病院内ネットワークシステム、2…医用画像診断装置、3…クライアント装置、5…医用画像保管装置、21…制御部、23…共有オブジェクト加工部、25…送受信部、31…制御部、32…送受信部、35…判定部、50…データベース、51…データ保管部、52…操作部、53…表示部、54…送受信部、55…判定部55、56…共有オブジェクト加工部、57…情報収集部、58…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の医療情報を記憶すると共に、ユーザ識別情報と利用場面に関する情報との組み合わせ毎に、前記複数の医療情報のうちの所定の医療情報をユーザに提供するか否かを定義するテーブルを記憶する記憶手段と、
ユーザから、参照とする検査の特定情報、及びユーザ識別情報と利用場面に関する情報との組み合わせを受け付ける受付手段と、
前記テーブルに基づいて、前記受付られた組み合わせにおいて前記医療情報を提供するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が前記医療情報を提供すると判定した場合において、前記検査の特定情報に基づいて、前記医療情報を前記記憶手段から収集する収集手段と、
収集した前記医療情報を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする画像診断支援システム。
【請求項2】
前記医療情報は、撮影条件、撮影範囲、診断の根拠となるキー画像位置のうちの少なくとも一つを画像に付帯させた複数のオブジェクト、過去の検査において取得された画像データ、医用レポートのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の画像診断支援システム。
【請求項3】
撮影条件、撮影範囲、診断の根拠となるキー画像位置のうちの少なくとも一つを画像に付帯させた複数のオブジェクトを記憶する第1の記憶手段と、
ユーザ識別情報と利用場面に関する情報との組み合わせ毎に、前記オブジェクトをユーザに提供するか否かを定義する第1のテーブルを記憶する第2の記憶手段と、
ユーザから、参照とする検査の特定情報、及びユーザ識別情報と利用場面に関する情報との組み合わせを受け付ける受付手段と、
前記第1のテーブルに基づいて、前記受付られた組み合わせにおいてオブジェクトを提供するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段がオブジェクトを提供すると判定した場合において、前記検査の特定情報によって特定されるオブジェクトを前記第1の記憶手段から収集する収集手段と、
前記検査の特定情報によって特定されるオブジェクトを表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする画像診断支援システム。
【請求項4】
前記第2の記憶手段は、ユーザ識別情報と利用場面に関する情報との組み合わせ毎に、情報区分を定義する第2のテーブルと、情報区分毎にオブジェクトに含めるべき提供情報を定義する第3のテーブルと、を記憶し、
前記判定手段は、前記第2のテーブルに基づいて、前記受付られた組み合わせに対応する情報区分を判定すると共に、前記第2のテーブルに基づいて、当該受付られた組み合わせに対応する情報区分における提供情報を判定し、
前記提供情報のみを含むように、前記検査の特定情報によって特定されるオブジェクトを加工する加工手段をさらに具備し、
前記表示手段は、前記加工されたオブジェクトを表示すること、
を特徴とする請求項3記載の画像診断支援システム。
【請求項5】
前記第2の記憶手段は、ユーザ識別情報と利用場面に関する情報との組み合わせ毎に、情報区分を定義する第2のテーブルと、情報区分毎にオブジェクトに含めるべき提供情報を定義する第3のテーブルと、を記憶し、
前記判定手段は、前記第2のテーブルに基づいて、前記受付られた組み合わせに対応する情報区分を判定すると共に、前記第2のテーブルに基づいて、当該受付られた組み合わせに対応する情報区分における提供情報を判定し、
前記検査の特定情報によって特定されるオブジェクトを表示する場合において、前記提供情報のみが表示されるように前記表示手段を制御する制御手段をさらに具備すること、
を特徴とする請求項3又は4記載の画像診断支援システム。
【請求項6】
前記収集手段は、前記検査の特定情報によって特定されるオブジェクトに参照すべき他のオブジェクトに関する情報が含まれている場合には、さらに前記参照すべき他のオブジェクトに含まれる情報を収集することを特徴とする請求項3乃至5のうちいずれか一項記載の画像診断支援システム。
【請求項7】
前記利用場面に関する情報は、前記ユーザが前記オブジェクトの表示に利用する装置の識別情報及び当該前記オブジェクトの表示に利用する装置に使用されているアプリケーション名のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項3乃至6のうちいずれか一項記載の画像診断支援システム。
【請求項8】
コンピュータに、
ユーザから、参照とする検査の特定情報、及びユーザ識別情報と利用場面に関する情報との組み合わせを受け付けさせる受付機能と、
前記受付られた組み合わせにおいて、撮影条件、撮影範囲、診断の根拠となるキー画像位置のうちの少なくとも一つを画像に付帯させたオブジェクトをユーザに提供するか否かを、ユーザ識別情報と利用場面に関する情報との組み合わせ毎に定義する第1のテーブルに基づいて判定させる判定機能と、
前記オブジェクトを提供すると判定された場合において、前記検査の特定情報によって特定されるオブジェクトを、オブジェクト保管装置から収集させる収集機能と、
前記検査の特定情報によって特定されるオブジェクトを表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする画像診断支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−259707(P2008−259707A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105330(P2007−105330)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】