説明

画像認識装置、複写装置及び画像認識方法

【課題】画像認識の処理速度を向上させることが可能な画像認識装置を提供する。
【解決手段】画像認識装置10は、原稿9から画像情報8を読み取る画像読取手段20と、第1判断手段30と、第2判断手段40とを備え、包囲画像1aによって被包囲画像1bが囲われてなる特定画像1を画像情報8の中から識別するものである。第1判断手段30は、画像情報8の中に包囲画像1aが含まれているか否かの判断を行う。第2判断手段40は、第1判断手段30が画像情報8の中に包囲画像1aが含まれていると判断した場合に、包囲画像1aの中央Cを中心とした抽出領域41aを3×3分割して、9個の処理対象画像4a〜4iを抽出した後、各処理対象画像4a〜4iと特定画像テンプレート42aとを照合することにより、画像情報8の中に特定画像1が存在するか否かの判断を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像認識装置、複写装置及び画像認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の画像認識装置が開示されている。この画像認識装置は、原稿から画像情報を読み取る画像読取手段を備え、包囲画像によって被包囲画像が囲われてなる特定画像を画像情報の中から識別するものである。
【0003】
より詳しくは、この画像認識装置は、画像情報の中の任意の位置にある抽出領域を4分割して、4個の処理対象画像を抽出した後、各処理対象画像と特定画像テンプレートとを照合することにより、画像情報の中に特定画像が存在するか否かの判断を行うものである。
【0004】
このような構成である画像認識装置は、例えば、画像情報に基づく印刷を行う印刷手段を備えた複写装置に搭載される。そして、この画像認識装置は、画像情報の中に特定画像が存在すると判断した場合に、その後の印刷処理の中止等の不正コピー防止対策を実施することができる。こうして、この画像認識装置は、紙幣や機密書類等の原稿に含まれる特定画像を識別し、不正コピーを防止することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平07−226839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複写装置が紙幣や機密書類等の不正コピーに悪用されることを防止するため、画像認識装置の判定精度を保つ必要があるとともに、その判定に要する時間の短縮が求められていた。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、画像認識の処理速度を向上させることが可能な画像認識装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、上記課題を解決するため、従来の画像認識装置について詳細に分析し、下記の問題点を発見した。
【0009】
すなわち、紙幣や機密書類等の原稿に印刷された印影等の特定マークは、一般的に円形状、多角形状その他の包囲模様と、包囲模様によって囲われる被包囲模様とからなる。被包囲模様は包囲模様と比較して複雑な形状であり、特徴的な模様を有する可能性が高い。そして、このような特定マークが画像読取手段に読み取られた結果得られる画像情報には、包囲模様に対応する包囲画像と、被包囲模様に対応する被包囲画像とが含まれる。つまり、画像情報には、特定マークに対応する特定画像が含まれる。
【0010】
ここで、上記従来の画像認識装置は、画像情報の中の任意の位置にある抽出領域を4分割して、4個の処理対象画像を抽出するものである。
【0011】
このため、特徴的な模様を有する可能性が高い被包囲画像の中央部分が各処理対象領域によって分断されることとなり、分断された被包囲画像が含まれる各処理対象領域と特定画像テンプレートとを照合しても判定精度が低下してしまうという不具合が生じ易かった。
【0012】
また、抽出領域を分割せず、1個の処理対象画像を抽出する場合には、処理対象領域内の情報量が大幅に増加して、画像認識の処理速度が大幅に低下してしまうという不具合が生じ易かった。
【0013】
発明者らは、これらの問題点を解決すべく鋭意研究し、本発明をするに至った。
【0014】
本発明の画像認識装置は、原稿から画像情報を読み取る画像読取手段を備え、包囲画像によって被包囲画像が囲われてなる特定画像を該画像情報の中から識別する画像認識装置であって、前記画像情報の中に前記包囲画像が含まれているか否かの判断を行う第1判断手段と、該第1判断手段が該画像情報の中に該包囲画像が含まれていると判断した場合に、該包囲画像の中央を中心とした抽出領域をn×n分割(nは3以上の奇数)して、n×n個の処理対象画像を抽出した後、各該処理対象画像と特定画像テンプレートとを照合することにより、該画像情報の中に該特定画像が存在するか否かの判断を行う第2判断手段とを備えることを特徴とする(請求項1)。
【0015】
このような構成である本発明の画像識別装置は、まず、第1判断手段によりあたりを付け、次に第2判断手段により詳細な識別処理を実施する2段階の流れとなるため、処理速度を向上させることができる。また、この画像識別装置は、抽出領域をn×n分割(nは3以上の奇数)するので、特徴的な模様を有する可能性が高い被包囲画像が分断され難くなる。さらに、包囲画像の中央に位置する処理対象画像では、特徴的な模様を有する可能性が最も高くなる。このため、この画像識別装置は、中央の処理対象画像を重点的に確認することによって、判定精度を向上させることができる。
【0016】
したがって、本発明の画像識別装置は、画像認識の処理速度を向上させることが可能であるともに、判定精度を向上させることも可能である。
【0017】
抽出領域は、正方形であることが好ましい。この場合、抽出領域をn×n分割(nは3以上の奇数)しても、各処理対象画像を同一の大きさの正方形とすることができるので、識別処理ルーチンの共通化や簡略化が可能となる。
【0018】
包囲画像は、円形状であることが好ましい。この場合、原稿が画像読取手段に対して角度を有して配置されても、第1判断手段が画像情報の中に包囲画像が含まれているか否かの判断を容易に行うことができる。
【0019】
本発明の画像認識装置において、前記第1判断手段は、前記画像情報の中から、前記処理対象画像より大面積である事前処理対象画像を抽出し、各該事前処理対象画像に基づいて、該画像情報の中に前記包囲画像が含まれているか否かの判断を行うものであることが好ましい(請求項2)。
【0020】
第1判断手段は、一般的に、第2判断手段と比較して識別処理の際の負荷が少ない。このため、この画像認識装置は、第1判断手段が扱う事前処理対象画像を大きな処理単位とすることにより、処理速度を一層向上させることができる。
【0021】
本発明の画像認識装置において、前記第1判断手段は、前記画像情報の任意の位置にある事前抽出領域を2×2分割して、4個の前記事前処理対象画像を抽出するものであり、前記第2判断手段は、前記抽出領域を3×3分割して、9個の前記処理対象画像を抽出するものであることが好ましい(請求項3)。
【0022】
この画像認識装置において、第1判断手段及び第2判断手段の分割数を増やしすぎると処理の煩雑化を招く傾向となる。このため、上記の構成とすることにより、この画像認識装置は処理の煩雑化を抑制しつつ、判定精度を向上させることができる。
【0023】
本発明の画像認識装置において、前記第1判断手段は、各前記事前処理対象画像と包囲画像テンプレートとを照合して得た類似度のピーク値を利用して、前記画像情報の中に該包囲画像が含まれているか否かの判断を行うことが好ましい(請求項4)。
【0024】
この場合、この画像認識装置は、第1判断手段の識別処理において、まぎらわしい情報を排除し、判定精度を向上させることができる。
【0025】
本発明の画像認識装置において、前記第2判断手段は、各前記処理対象画像と前記特定画像テンプレートとを照合して得た類似度のピーク値を利用して、前記画像情報の中に前記特定画像が存在するか否かの判断を行うことが好ましい(請求項5)。
【0026】
この場合も、この画像認識装置は、第2判断手段の識別処理において、まぎらわしい情報を排除し、判定精度を向上させることができる。
【0027】
本発明の画像認識装置において、前記第1判断手段が前記画像情報の中に前記包囲画像が含まれていると判断した場合及び/又は前記第2判断手段が該画像情報の中に前記特定画像が存在すると判断した場合において、該特定画像の色彩を判断する第3判断手段を備えることが好ましい(請求項6)。
【0028】
このように、第3判断手段による色彩の判定を第1判断手段及び/又は第2判断手段による識別処理と重ねて実施することで、この画像認識装置は、判定精度を一層向上させることができる。
【0029】
本発明の画像認識装置において、前記第2判断手段は、最初に、前記抽出領域の中央に位置する1つの前記処理対象画像の照合を行うものであることが好ましい(請求項7)。
【0030】
最初に特徴的な模様を有する可能性が一番高い処理対象画像を判断することにより、その段階で不一致と判断できれば以後の処理を中止することができる、このため、この画像認識装置は、余分な処理を省いて処理速度を一層向上させることができる。
【0031】
本発明の画像認識装置において、前記第2判断手段は、各前記処理対象画像と前記特定画像テンプレートとを相対的に回転させつつ、各前記処理対象画像の照合を行うものであり、前記抽出領域の中央に位置する1つの該処理対象画像を照合した結果、合致すると判断された回転角度を基に、他の該処理対象画像を照合するものであることが好ましい(請求項8)。
【0032】
この場合、この画像認識装置は、他の処理対象画像について無駄な回転処理を行わなくても良くなり、処理速度を一層向上させることができる。
【0033】
本発明の画像認識装置において、前記第1判断手段及び/又は前記第2判断手段は、予め前記画像情報に対して平滑処理を施すことが好ましい(請求項9)。
【0034】
この場合、この画像認識装置は、平滑処理されてノイズが除去された特定画像を識別処理するので、判定精度を向上させることができる。
【0035】
本発明の複写装置は、本発明の画像認識装置と、該画像認識装置の前記画像読取手段によって読み取られた前記画像情報に基づく印刷を行う印刷手段とを備える(請求項10)。
【0036】
このような構成である複写装置は、上述の画像認識装置が奏する作用効果によって、より速く、かつより確実に不正コピーを防止することができる。
【0037】
本発明の画像認識方法は、原稿から画像情報を読み取り、包囲画像によって被包囲画像が囲われてなる特定画像を該画像情報の中から識別する画像認識方法であって、前記画像情報の中に前記包囲画像が含まれているか否かの判断を行い、該画像情報の中に該包囲画像が含まれていると判断した場合に、該包囲画像の中央を中心とした抽出領域をn×n分割(nは3以上の奇数)して、n×n個の処理対象画像を抽出した後、各該処理対象画像と特定画像テンプレートとを照合することにより、該画像情報の中に該特定画像が存在するか否かの判断を行うことを特徴とする(請求項11)。
【0038】
このような構成である本発明の画像認識方法も、上述した本発明の画像認識装置と同様の理由により、画像認識の処理速度を向上させることが可能であるとともに、判定精度を向上させることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0040】
図1に示すように、実施例の画像認識装置10は、例えば、プリンタ、コピー機、FAX等の複写装置(図示しない)に搭載されるものである。画像認識装置10は、原稿9から画像情報8を読み取る画像読取手段20と、画像情報8を画像読取手段20の読み取り特性、複写装置の出力特性、又はユーザーが指定する出力サイズ若しくはコピー変倍率等の出力形態に合わせて補正する第1画像処理手段50とを備えている。
【0041】
また、画像認識装置10は、第2画像処理手段70と、第1判断手段30と、第2判断手段40と、第3判断手段80とを備えている。第2画像処理手段70と第1判断手段30と第2判断手段40と第3判断手段80とは、画像情報8の中に特定画像1が存在するか否かを後述する手順により段階的に識別処理するものである。
【0042】
ここで、特定画像1とは、紙幣や機密書類等の原稿9に印刷された印影等の特定マークに対応するものである。実施例では、特定マークは、円形状の包囲模様と、包囲模様に囲われる被包囲模様としての「a」字とからなる。そして、原稿9に特定マークが印刷されている場合、画像情報8には、包囲模様に対応する円形状の包囲画像1aと、被包囲模様に対応する「a」字状の被包囲画像1bとが含まれている。
【0043】
以下、画像読取手段20、第1画像処理手段50、第2画像処理手段70、第1判断手段30、第2判断手段40及び第3判断手段80の構成をより詳しく説明する。
【0044】
<画像読取手段>
画像読取手段20は、原稿9を主走査方向に沿って読み取りつつ、相対移動する原稿9の画像情報8を副走査方向に沿って読み取るスキャナーである。なお、画像読取手段20は、原稿9から画像情報8を読み取り可能なものであれば、どのような構成のものでもかまわない。
【0045】
<第1画像処理手段>
第1画像処理手段50は、画像読取手段20の下流側に設けられており、上流側から順に、A/Dコンバータ51と、Dレンジ補正部52と、読み取りガンマ補正部53と、変倍処理部54と、フィルタ部55と、マスキング部56と、GCR部57と、記録ガンマ補正部58と、二値化部59と、記録部60とにより構成されている。なお、第1画像処理手段50は、上記の構成に限定されない。
【0046】
A/Dコンバータ51は、画像読取手段20により読み取られた画像情報8をアナログ信号からデジタルデータに変換する。この際、RGB(R:赤、G:緑、B:青)に分けて、デジタルデータに変換される。
【0047】
Dレンジ補正部52は、画像読取手段20を構成する光源の照度の不均一やセンサの感度の不均一から発生する画素ごとのダイナミックレンジの不均一を補正する。
【0048】
読み取りガンマ補正部53は、画像読取手段20の明暗直線性を補正する。
【0049】
変倍処理部54は、画像読取手段20と記録部60との解像度のちがいを修正するため、又はユーザーの指定するコピー変倍率とするため、画像情報8を拡大縮小する変倍処理を行う。
【0050】
フィルタ部55は、画像情報8のノイズの除去のための平滑フィルタ処理や、文字の精鋭性の向上のための協調フィルタ処理を行う。
【0051】
マスキング部56は、画像読取手段20と記録部60との色空間の違いを変換する(RGBからCMY(C:シアン、M:マゼンダ、Y:イエロー)に変換)。近年では三次元ルックアップテーブルによる方法が一般的である。
【0052】
GCR部57は、入力CMYから黒成分を生成するとともにCMYから黒成分を除去する。つまり、CMYデータをCMYKデータに変換する。
【0053】
記録ガンマ補正部58は、記録部60のドットゲイン等による濃度直線性を補正する。
【0054】
二値化部59は、誤差拡散法やディザ法によって記録部60で記録可能な二値データに変換する。
【0055】
記録部60は、上述のA/Dコンバータ51と、Dレンジ補正部52と、読み取りガンマ補正部53と、変倍処理部54と、フィルタ部55と、マスキング部56と、GCR部57と、記録ガンマ補正部58と、二値化部59とにより補正された画像情報8を記録し、複写装置等に画像情報8を出力する。また、記録部60は、画像情報8の中に特定画像1が存在すると判断された場合に、外部への画像情報8の出力を中止する等の不正コピー防止措置を実施する不正コピー防止部60aを有している。
【0056】
<第2画像処理手段>
第2画像処理手段70は、第1画像処理手段50のDレンジ補正部52より下流側であって、第1画像処理手段50の読み取りガンマ補正部53から記録部60までと並列に設けられている。そして、第2画像処理手段70は、上流側から順に、ガンマ補正部71と変倍処理部72と、フィルタ部73と、二値化部74とにより構成されている。
【0057】
ガンマ補正部71は、第1画像処理手段50において、A/Dコンバータ51と、Dレンジ補正部52とによりダイナミックレンジ補正された画像情報8を受け取る。そして、ガンマ補正部71は、画像読取手段20の明暗直線性を特定画像1の識別処理に適するように補正する。特に、特定画像1の識別処理には、ダーク部分やハイライト部分は必要ないため、コントラストの強いトーンカーブが使用される。
【0058】
変倍処理部72は、画像読取手段20の解像度から、特定画像1の識別処理に適した解像度に変倍処理を行う。このときの変倍率は、ユーザーが指定するコピー変倍率に依存しない。
【0059】
フィルタ部73は、画像情報8のノイズの除去や、文字の精鋭性の向上のためのフィルタ処理を行う。実施例では、特定画像1の識別処理にエッジ情報を使用していないので、画像情報8に対してノイズ除去のための平滑フィルタ処理を行う。
【0060】
二値化部74は、入力RGB値の輝度に応じて二値化を行う。輝度への変換は一般的な変換ではなく、特定マークに多く用いられる色に偏重した重み付けを行う。具体的には、例えば、一般の輝度変換が、
輝度=0.30×R+0.59×G+0.11×B
であるのに対して、実施例の輝度変換は、
輝度=0.10×R+0.50×G+0.40×B
となっている。
【0061】
<第1判断手段>
第1判断手段30は、第2画像処理手段70の下流側に設けられている。第1判断手段30は、上流側から順に、事前処理対象画像抽出部31と、包囲画像マッチング部32と、ピーク値検出部33と、判定部34とにより構成されている。
【0062】
事前処理対象画像抽出部31は、図2(a)の中央に示すように、画像情報8の任意の位置にある事前抽出領域31aを2×2分割して、4個の事前処理対象画像3a、3b、3c、3dを抽出する。
【0063】
事前抽出領域31aは正方形とされている。これにより、各事前処理対象画像3a、3b、3c、3dを同一の大きさの正方形とすることができるので、識別処理ルーチンの共通化や簡略化が可能となっている。そして、図2(c)に示すように、事前抽出領域31aに比べて、後述する抽出領域41aはより小さな面積で選択されている。抽出領域41aが事前抽出領域31aより小さくされているのは、抽出領域41aを3×3分割して得られる処理対象画像4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4iについての識別処理には事前処理対象画像3a、3b、3c、3dの外周エッジの情報が必要ないからである。また、事前処理対象画像3a、3b、3c、3dは、後述する処理対象画像4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4iより大面積で選択されている。これは、第1判断手段30が一般的に第2判断手段40と比較して識別処理の際の負荷が少ないことから、第1判断手段30が扱う事前処理対象画像3a、3b、3c、3dを大きな処理単位とすることにより、処理速度を一層向上させることができるからである。
【0064】
包囲画像マッチング部32は、各事前処理対象画像3a、3b、3c、3dと、図2(b)に示す包囲画像テンプレート32aとを照合し、相関係数を求めることで類似度を計算する。この際、図2(a)の中央に示す各事前処理対象画像3a、3b、3c、3dのX方向及びY方向の相対距離を画素単位で変化させて、図2(a)の周囲に示す8通りの組合せを作り、合計9通りの組合せごとに各事前処理対象画像3a、3b、3c、3dの相関係数を加算する。そして、それらの最大の値を事前抽出領域31aにおける類似度とする。この際、各事前処理対象画像3a、3b、3c、3d間の相対距離が奇数のときは、中心点の座標に端数がでるが端数を切り捨て、又は切り上げて同一点とする。
【0065】
なお、包囲画像マッチング部32において、各事前処理対象画像3a、3b、3c、3dのX方向及びY方向の相対位置の組合せは9通りに限定されず、相対距離をより細かく変化させて、例えば25通り等にしてもかまわない。また、図2(a)及び(b)における「○」及び「×」は、本来は双方とも画素単位に相当する「●」とするのが適当であるが、重なった状態を判別しやすくするため、便宜上変更しているだけである。
【0066】
ピーク値検出部33は、画像情報8の中で事前抽出領域31aを細かく移動させながら算出した類似度の中で、一定値以上で局所的にピーク値となるものを検出する。この際、一定値以上で局所的にピーク値となる類似度が検出されれば、画像情報8の中に包囲画像1aが含まれているということになり、図1に示すように、その類似度が算出された位置を包囲画像1aの中央Cとして決定する。他方、一定値以上となる類似度が検出されなければ、画像情報8の中に包囲画像1aが含まれていないということになる。
【0067】
判定部34は、ピーク値検出部33の結果に基づき、画像情報8の中に包囲画像1aが含まれていると判断した場合、第3判断手段80及び第2判断手段40に判定結果すなわち特定画像1が存在し得るという情報を伝達する。
【0068】
こうして、第1判断手段30は、画像情報8の中に包囲画像1aが含まれているか否かの判断を行うことが可能となっている。
【0069】
<第3判断手段>
第3判断手段80は、第1判断手段30の下流側に設けられており、色彩情報処理部81と判定部82とにより構成されている。
【0070】
色彩情報処理部81は、第2画像処理手段70のフィルタ部73及び二値化部74からの入力信号に基づき、包囲画像1aの色彩情報を処理する。この際、下地の色の影響を受けないように、二値化部74で高濃度と判定された部分、すなわち印刷された特定マークのインクが形成されている部分の画素のRGB値のみの平均値を求める。
【0071】
判定部82は、色彩情報処理部81で得られた平均値が所定の範囲内にある場合、包囲画像1aの色彩情報が特定マークの色彩情報に類似すると判断して、第2判断手段40に特定画像1が存在し得るという情報を伝達する。他方、判定部82は、色彩情報処理部81で得られた平均値が所定の範囲内にない場合、包囲画像1aの色彩情報が特定マークの色彩情報に類似しないと判断して、第2判断手段40に対して、画像情報8の中に特定画像1が存在しないという結果を伝達する。
【0072】
こうして、第3判断手段80は、画像情報8の中に含まれている包囲画像1aの色彩情報が特定マークの色彩情報に類似するかの判断を行うことが可能となっている。
【0073】
<第2判断手段>
第2判断手段40は、第3判断手段80の下流側に設けられている。第2判断手段40は、上流側から順に、処理対象画像抽出部41と、特定画像マッチング部42と、ピーク値検出部43と、判定部44とにより構成されている。
【0074】
処理対象画像抽出部41は、図3(b)に示す抽出領域41aを図3(a)に示すように、包囲画像1aの中央Cを中心として3×3分割して、9個の処理対象画像4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4iを抽出する。
【0075】
抽出領域41aは正方形とされている。これにより、各処理対象画像4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4iを同一の大きさの正方形とすることができるので、識別処理ルーチンの共通化や簡略化が可能となっている。
【0076】
処理対象画像抽出部41は、図3(c)に示すように、抽出領域41aを5×5分割して、25個の処理対象画像を抽出してもよい。ただし、第2判断手段の分割数を増やしすぎると処理の煩雑化を招く傾向となるので、3×3分割するほうが好ましい。
【0077】
なお、処理対象画像抽出部41は、図3(d)〜(f)に示すように、抽出領域をp×p分割(pは偶数)するものではない。なぜなら、特徴的な模様を有する可能性が高い被包囲画像1bが各処理対象領域によって分断されることとなり、判定精度が低下してしまうからである。
【0078】
特定画像マッチング部42は、図3(a)に示す各処理対象画像4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4iと、図5に示す特定画像テンプレート42a及びそのバリエーション群とを照合し、相関係数を求めることで類似度を計算する。
【0079】
この際、特定画像マッチング部42は、最初に抽出領域41aの中央に位置する1つの処理対象画像4eの照合を行い、次に、他の処理対象画像4a、4b、4c、4d、4f、4g、4h、4iの照合を行う。その理由は、最初に特徴的な模様を有する可能性が一番高い処理対象画像4eを判断することにより、その段階で不一致と判断できれば以後の処理を中止することができ、余分な処理を省いて処理速度を一層向上させることができるからである。
【0080】
特定画像マッチング部42は、最初に抽出領域41aの中央に位置する1つの処理対象画像4eの照合を行う際、図4の(a)〜(i)の二重枠で示すように、処理対象画像4eと特定画像テンプレート42aとの相対位置を画素単位でX方向及びY方向にずらしながらチェックする。ずらし方は、1画素ずつでもよい数画素以上の組合せでもよい。こうすることで、処理対象画像4eの歪みや位置ずれを吸収できる。他の処理対象画像4a、4b、4c、4d、4f、4g、4h、4iの照合を行う際も同様にずらしながらチェックする。
【0081】
また、特定画像マッチング部42は、最初に抽出領域41aの中央に位置する1つの処理対象画像4eの照合を行う際、処理対象画像4eと、図5に示す特定画像テンプレート42aのバリエーション群との照合も行う。特定画像テンプレート42aのバリエーション群は、特定画像1が任意の角度で回転配置されている場合であっても識別可能とするため、特定画像テンプレート42aを回転させたものである。
【0082】
図5では、特定画像テンプレート42aが角度30°刻みで回転配置された12パターンのバリエーション群を示しているが、最上段の3パターンのみを用意しておき、残りの9パターンについては、最上段の3パターンのいずれかを数列変換処理してもよい。また、図6に示すように、特定画像テンプレート42aを3×3分割して、各ブロックをX方向又はY方向に相対移動させることによって、特定画像テンプレート42aのバリエーション群を増やしたのと同等の効果を得ることができる。この場合には、予め用意されている所定の角度刻みのパターンでは対応できない微小な角度刻みにも対応できるので、所定の角度刻みを大きくとることができ、用意する特定画像テンプレート42aのバリエーション群の数を減らすことができる。また、この場合、第1判断手段30と第2判断手段40との間での位置ずれや倍率ひずみも吸収できる。
【0083】
こうして、特定画像マッチング部42は、処理対象画像4eと特定画像テンプレート42aとを相対的に回転させつつ、処理対象画像4eの照合を行い、その結果、合致すると判断された回転角度を基に、他の処理対象画像4a、4b、4c、4d、4f、4g、4h、4iを照合する。これにより、他の処理対象画像4a、4b、4c、4d、4f、4g、4h、4iについて無駄な回転処理を行わなくても良くなり、処理速度を一層向上させることができる。
【0084】
図1に示すように、ピーク値検出部43は、特定画像マッチング部42において算出した類似度の中で、一定値以上で局所的にピーク値となるものを検出する。この際、一定値以上で局所的にピーク値となる類似度が検出されれば、画像情報8の中に特定画像1が存在するということになる。他方、一定値以上となる類似度が検出されなければ、画像情報8の中に特定画像1が存在していないことになる。
【0085】
判定部44は、ピーク値検出部43の結果に基づき、画像情報8の中に特定画像1が存在すると判断した場合、記録部60の不正コピー防止部60aへ検出結果を伝達する。そして、不正コピー防止部60aは、外部への画像情報8の出力を中止する等の不正コピー防止措置を実施する。
【0086】
こうして、第2判断手段40は、画像情報8の中に特定画像1が存在するか否かの判断を行うことが可能となっている。
【0087】
このような構成である実施例の画像認識装置10は、記録部60に記録された画像情報8を外部に出力することができる。そして、例えば、画像情報8を受け取った複写装置は、印刷手段により画像情報8に基づく印刷を行うことが可能となっている。また、この画像認識装置10は、紙幣や機密書類等の原稿9の画像情報8に含まれる特定画像1を識別し、不正コピーを防止することが可能となっている。
【0088】
ここで、この画像認識装置10は、上述の第1判断手段30と第2判断手段40とを備えている。このため、まず、第1判断手段30によりあたりを付け、次に第2判断手段40により詳細な識別処理を実施する2段階の流れとなっているため、処理速度を向上させることができている。また、この画像識別装置10は、抽出領域41aを3×3分割するので、特徴的な模様を有する可能性が高い被包囲画像1bが分断され難くなっている。さらに、包囲画像1aの中央Cに位置する処理対象画像4eでは、特徴的な模様を有する可能性が最も高くなっている。このため、この画像識別装置10は、中央の処理対象画像4eを重点的に確認することによって、判定精度を向上させることができている。
【0089】
したがって、実施例の画像識別装置10は、画像認識の処理速度を向上させることができているとともに、判定精度を向上させることもできている。
【0090】
また、この画像認識装置10において、事前処理対象画像3a、3b、3c、3dは、処理対象画像4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4iより大面積である。このように、第1判断手段30が扱う事前処理対象画像3a、3b、3c、3dを大きな処理単位とすることにより、処理速度を一層向上させることができている。
【0091】
さらに、この画像認識装置10において、第1判断手段30は事前抽出領域31aを2×2分割し、第2判断手段40は抽出領域41aを3×3分割していることから、処理の煩雑化を抑制しつつ、判定精度を向上させることができている。
【0092】
また、この画像認識装置10において、第1判断手段30及び第2判断手段40は、類似度のピーク値を利用して判断を行っていることから、識別処理において、まぎらわしい情報を排除し、判定精度を向上させることができている。
【0093】
さらに、この画像認識装置10は、第3判断手段80による色彩の判定を第1判断手段30による識別処理と重ねて実施することで、判定精度を一層向上させることができている。
【0094】
また、この画像認識装置10において、第2判断手段40は、最初に特徴的な模様を有する可能性が一番高い中央の処理対象画像4eを判断し、その段階で不一致と判断できれば以後の処理を中止することができるので、余分な処理を省いて処理速度を一層向上させることができている。
【0095】
さらに、この画像認識装置10は、中央の処理対象画像4eを照合した結果、合致すると判断された回転角度を基に、他の処理対象画像4a、4b、4c、4d、4f、4g、4h、4iを照合するので、他の処理対象画像4a、4b、4c、4d、4f、4g、4h、4iについて無駄な回転処理を行わなくても良くなっており、処理速度を一層向上させることができている。
【0096】
また、この画像認識装置10は、予め画像情報8に対して平滑処理を施していることから、平滑処理されてノイズが除去された特定画像1を識別処理することができ、判定精度を向上させることができている。
【0097】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は画像認識装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】実施例の画像認識装置の構成を示す説明図である。
【図2】実施例の画像認識装置に係り、第1判断手段の事前処理対象画像抽出部及び包囲画像マッチング部の処理方法を示す説明図である。
【図3】実施例の画像認識装置に係り、第2判断手段の処理対象画像抽出部及び特定画像マッチング部の処理方法を示す説明図である。
【図4】実施例の画像認識装置に係り、第2判断手段の特定画像マッチング部の処理方法を示す説明図である。
【図5】実施例の画像認識装置に係り、第2判断手段の特定画像マッチング部の処理方法を示す説明図である。
【図6】実施例の画像認識装置に係り、第2判断手段の特定画像マッチング部の処理方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0100】
1…特定画像
1a…包囲画像
1b…被包囲画像
3a、3b、3c、3d…事前処理対象画像
4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g、4h、4i…処理対象画像
8…画像情報
9…原稿
10…画像認識装置
20…画像読取手段
30…第1判断手段
31a…事前抽出領域
32a…包囲画像テンプレート
40…第2判断手段
41a…抽出領域
42a…特定画像テンプレート
80…第3判断手段
C…包囲画像の中央

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿から画像情報を読み取る画像読取手段を備え、包囲画像によって被包囲画像が囲われてなる特定画像を該画像情報の中から識別する画像認識装置であって、
前記画像情報の中に前記包囲画像が含まれているか否かの判断を行う第1判断手段と、
該第1判断手段が該画像情報の中に該包囲画像が含まれていると判断した場合に、該包囲画像の中央を中心とした抽出領域をn×n分割(nは3以上の奇数)して、n×n個の処理対象画像を抽出した後、
各該処理対象画像と特定画像テンプレートとを照合することにより、該画像情報の中に該特定画像が存在するか否かの判断を行う第2判断手段とを備えることを特徴とする画像認識装置。
【請求項2】
前記第1判断手段は、前記画像情報の中から、前記処理対象画像より大面積である事前処理対象画像を抽出し、
各該事前処理対象画像に基づいて、該画像情報の中に前記包囲画像が含まれているか否かの判断を行うものである請求項1記載の画像認識装置。
【請求項3】
前記第1判断手段は、前記画像情報の任意の位置にある事前抽出領域を2×2分割して、4個の前記事前処理対象画像を抽出するものであり、
前記第2判断手段は、前記抽出領域を3×3分割して、9個の前記処理対象画像を抽出するものである請求項2記載の画像認識装置。
【請求項4】
前記第1判断手段は、各前記事前処理対象画像と包囲画像テンプレートとを照合して得た類似度のピーク値を利用して、前記画像情報の中に該包囲画像が含まれているか否かの判断を行う請求項2又は3記載の画像認識装置。
【請求項5】
前記第2判断手段は、各前記処理対象画像と前記特定画像テンプレートとを照合して得た類似度のピーク値を利用して、前記画像情報の中に前記特定画像が存在するか否かの判断を行う請求項1乃至4のいずれか1項記載の画像認識装置。
【請求項6】
前記第1判断手段が前記画像情報の中に前記包囲画像が含まれていると判断した場合及び/又は前記第2判断手段が該画像情報の中に前記特定画像が存在すると判断した場合において、該特定画像の色彩を判断する第3判断手段を備える請求項1乃至5のいずれか1項記載の画像認識装置。
【請求項7】
前記第2判断手段は、最初に、前記抽出領域の中央に位置する1つの前記処理対象画像の照合を行うものである請求項1乃至6のいずれか1項記載の画像認識装置。
【請求項8】
前記第2判断手段は、各前記処理対象画像と前記特定画像テンプレートとを相対的に回転させつつ、各前記処理対象画像の照合を行うものであり、
前記抽出領域の中央に位置する1つの該処理対象画像を照合した結果、合致すると判断された回転角度を基に、他の該処理対象画像を照合するものである請求項7記載の画像認識装置。
【請求項9】
前記第1判断手段及び/又は前記第2判断手段は、予め前記画像情報に対して平滑処理を施す請求項1乃至8のいずれか1項記載の画像認識装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項記載の画像認識装置と、
該画像認識装置の前記画像読取手段によって読み取られた前記画像情報に基づく印刷を行う印刷手段とを備えた複写装置。
【請求項11】
原稿から画像情報を読み取り、包囲画像によって被包囲画像が囲われてなる特定画像を該画像情報の中から識別する画像認識方法であって、
前記画像情報の中に前記包囲画像が含まれているか否かの判断を行い、
該画像情報の中に該包囲画像が含まれていると判断した場合に、該包囲画像の中央を中心とした抽出領域をn×n分割(nは3以上の奇数)して、n×n個の処理対象画像を抽出した後、
各該処理対象画像と特定画像テンプレートとを照合することにより、該画像情報の中に該特定画像が存在するか否かの判断を行うことを特徴とする画像認識方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−83991(P2008−83991A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263112(P2006−263112)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】